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冬短編

1 :名無飼育さん :2009/12/22(火) 23:07
色んな世代を出したいです。

とりあえずもうすぐクリスマスなんだから、
わけもなくうきうきしてもいいと思う。
139 :7 頭の中、いろいろ :2009/12/24(木) 20:30


***

140 :7 頭の中、いろいろ :2009/12/24(木) 20:30
「後藤」
「はい」
「悪いけど、これ第二支社にすぐ運んでくれない?」
「あ、はい構いませんけど……第二支社って」

「後藤の地元でしょ?明日休みだし、これ渡してもらえればゆっくりしてきていいから」


「………うそ」

「ん?どうした、都合悪い?」
「……いえ…行きます!!!ありがとうございます!」
「?うん、いや…いつもお疲れ」
「お疲れ様ですっ」
真希は慌てて交通費と資料を用意し、コートを抱えて走り出す。
141 :7 頭の中、いろいろ :2009/12/24(木) 20:30
外はやはり寒い。
寒いけれど、コートを羽織る時間すら惜しい。

それまで迷っていたことが吹き飛んで、思い出が溢れ出す。
イルミネーションの電飾の一粒一粒に収めても
収まりきらないくらいの思い出が止まらない。
目の前がキラキラしている。


なんかすっごいプレゼントをありがとう、サンタさん。
142 :7 頭の中、いろいろ :2009/12/24(木) 20:31


「サンタさぁああぁーん!!!」


曇りの空の上でせっせと働いているであろうサンタに真希は感謝を込めて叫んだ。
泣きそうだけれど、最高な笑顔で叫んだ。

143 :7 頭の中、いろいろ :2009/12/24(木) 20:31


***

144 :7 頭の中、いろいろ :2009/12/24(木) 20:31


かじかむ手で開いたタイムカプセルには、


145 :7 頭の中、いろいろ :2009/12/24(木) 20:31

***

146 :7 頭の中、いろいろ :2009/12/24(木) 20:31

**
147 :7 頭の中、いろいろ :2009/12/24(木) 20:32
おわり
148 :名無飼育さん :2009/12/24(木) 20:34
メリークリスマス。

とりあえずクリスマスまでに更新したい内容は全て掲載し終えました。
おつき合い頂きありがとうございました。

冬はまだまだ続きます。
149 :名無し読者 :2009/12/24(木) 23:02
久しぶりにこの3人が揃ってる動画見たくなりました
150 :名無飼育さん :2009/12/25(金) 04:02
6の意外な組み合わせが気になってた時期があるのでなんか読めてうれしかった
151 :名無飼育さん :2010/01/05(火) 18:55
ほのぼの笑える話から少しビターな話まであって読んでいて楽しかったです
152 :名無飼育さん :2010/01/11(月) 01:36
エッグの子は正直、分かんないんですが、どれも素敵な話でした!中でもかめよし・がきこは・まのこん・プッチは素晴らしかったです
153 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:37
現代。
日本のとある場所。
とある中学校での小さくて大きな出来事。


今年もバレンタインデーのシーズンがやってきました。
デパートでは様々なチョコレートが並び、
バレンタインの気持ちを高めるBGMが絶えず流れていました。

女の子が皆様々な表情を浮かべ、チョコレートを選びます。
色々な事情と気持ちを抱え、チョコレートに気持ちを託すのです。
その媒体を選ぶのもセンス。悩みどころではあるのです。

とくに、本命チョコが初めてな女の子は。
154 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:37
色々なパターンがありますが、
下調べから入念に行うべく本屋でレシピ本を探す子もいます。

ある本屋。
料理本コーナーに辿り着いた時、二人の女の子が鉢合わせました。
偶然にも、お互い良く見知った顔です。


「「……あ」」


出会ったのは、愛理ちゃんと千聖ちゃんでした。
155 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:37
「…何、邪魔しに来たの?」
「そんなんじゃないんだけど。いちいち突っかかってこないでよ」
「突っかかってるのはどっちよ」
「そっちでしょ?ていうか邪魔だから違う本屋に行ってよ」
「嫌よ。千聖が違う本屋に行って」
「まーいいよ。愛理には出来ないだろうから、あたしが譲る!」

髪を下ろした部活ジャージ姿の千聖ちゃんが、
三つ編み制服姿の愛理ちゃんに背中を向けました。


二人は同じ中学、同じ学年。
そして同じ人を好きになってしまったのです。
156 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:38
二人はふくれっ面で帰路につきました。
愛理ちゃんは運転手つきメルセデスで。千聖ちゃんは徒歩で。

ずっと帰路の間、もやもやとした気持ちとレシピブックを抱えていました。
他の人よりも、あいつにだけは言われたくない。
互いに、何故かとても相手が気に入らなくて仕方がないのです。


愛理ちゃんは、千聖ちゃんにだけは負けたくありませんでした。

千聖ちゃんは貧乏だし、男の子みたいにうるさくてがさつだし、
女子として負けている要素があると思ったことはありませんでした。
それなのに、千聖ちゃんは友達がたくさんいて、
いつもみんなの中心で楽しそうに笑っていました。

負けたくない。
私の方があの人を好きだから。
千聖には他にもたくさん友達がいるじゃない。
一緒に遊んでる男子で、千聖を好きな子がいるって聞いたし。

千聖よりもずっと、私の方がお似合いだもん。


「じいや!今すぐフランスのショコラティエを呼んで!」
157 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:38
千聖ちゃんもまた、愛理ちゃんにだけは負けたくなかったのです。

愛理ちゃんはお金持ちなのを鼻にかけてるし、
受けを狙った行動が寒すぎるし、雰囲気美少女なのは薄々感じています。
それなのに、頭がいいし、ひとつひとつの動きが上品で
本当に女の子っぽいと憧れてしまう気持ちがあるのは事実でした。
千聖ちゃんが前に好きだった男の子は、愛理ちゃんにメロメロでした。

負けたくない。
今度こそ、愛理には負けたくない。
あたしなんて、結婚だって考えてるんだから。
どうせお金持ちと結婚する愛理とは覚悟が違う。

愛理よりもずっと、あたしの方が頑張ってるもん。


「おばちゃん!あたしにお菓子作り教えて下さい!」



二人は考えました。

自分にしか作れないチョコレート。
あいつには絶対作れないチョコレート。
158 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:38


***

159 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:39
愛理ちゃんはフランスの有名なショコラティエと一緒に色々なものを試しました。
チョコレートとはとても繊細で、思春期の女の子のようだと言われました。

さまざまな個性がある。
同じ方法で接することは出来ない。
甘やかすだけでは良さを引き出せないし、
だからといって少しでも手を抜けば一気にそっぽをむいてしまう。

だからこそ魅力的だし、素晴らしいお菓子なんだと。


『アイリもチョコレートだよ』
『……私も…?』
『そうさ。とっても魅力的なチョコレートだよ。
 そして、君のお友達にも色々なチョコレートがいるだろう。
 ほろ苦くて大人っぽいビター、甘くて優しいホワイト、
 チョコレートの中にシャンパンソースを閉じ込めた不思議な魅力のボンボン』

フランス語の聞き取りなど朝飯前の(朝にはライ麦パンと決めているけれど)
愛理ちゃんは、ショコラティエの優しい笑顔と共に、学校の友達を思い浮かべました。
160 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:39
見かけは大人っぽいのに子供みたいなところがあるえりかちゃん。
見かけは幼いのに大人っぽいところもある舞ちゃん。
厳しいところもあるけど、ちょっと間抜けなところもある愛ちゃん。
爽やかで真っすぐで天然で裏表がない舞美ちゃん。
真面目だけど不思議な魅力があって、女の子らしい早貴ちゃん。
元気いっぱいだけど時々すごく大人っぽくて綺麗な栞菜ちゃん。

『君が苦手だと思うチョコレートがあるように、
 苦手な友達もチョコレートだと思うと、少しは優しく出来そうじゃないかい?』


苦手な人。
苦手なもの。
…。

千聖も、チョコレート。


千聖を例えるならば、クランチをたくさん入れたチョコレート。
弾けるような明るさと、優しさを持っている。

…困る。
クランチチョコレートは大好きだから。
161 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:39


***

162 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:39
千聖ちゃんは近所のケーキ屋さんにお菓子作りを教わることにしました。
おばさんの作るケーキは優しい味がして、
クリスマスや誕生日にはいつもここのケーキを食べることが楽しみでした。

「チョコレートってさ、湯せんで溶かして型に入れれば何とかなると思ってない?」
「へ?うん」
「でもさ、その単純な作業も基礎からしっかりやってあげないと、
 仕上がりが全然変わってくるんだよ」
「そうなの?」
「気持ちがこもっていれば味なんてとか言うけどさ、
 相手に一番美味しいものを食べてもらいたいって思うのも気持ちだと思うんだよね、私は」


おばさんが優しく笑うので、ここのケーキがなぜ美味しいのかがよくわかりました。
ケーキ一つ一つに、おばさんの思いやりが詰まっているから。
163 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:40
「だからこそ、基礎からみっちりやれば、きっと初心者でも
 すごく美味しいチョコレートが作れると思うんだよね」
「…うんっ」

「で?その愛理ちゃんだっけ?お金持ちの子」
「愛理が何?」
「その子、チョコ作るんだ」
「多分、本を買いに来てたから」
「偉いねー、ちゃんと作ろうって思ったんだ。ただのお金持ちじゃないね」
「?」
「いい材料は、いい料理の手伝いでしかないからね」

千聖ちゃんには、少し難しい含みでした。


「言っておくけど、チョコ作りはすっごく大変だよ?頑張れる?」
「…が、頑張れるよ!よろしくお願いします!」

千聖ちゃんは思ったよりも奥の深いチョコレートに向かいながら、
先ほどのおばさんの言葉を思い出していました。

愛理ちゃんはただのお金持ちではない。

そうかもしれない。
なんかよく男の子同士で恋愛してる変な漫画を読んでるし、
河童がどうたら言ってるし、カラオケで何か変な歌が大好きだし、
こんなあたしをちゃんとライバルだって思ってくれているらしい。
164 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:40



そして、いよいよバレンタイン当日。


165 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:41
「…おはよ」
「おはよ…」

愛理ちゃんも千聖ちゃんも寝不足でした。
今まで、思っていたよりもずっと奥深いチョコレートにかかりっきりだったせいです。
正直もうチョコレートはしばらく見たくないですが、
前よりもチョコレートは好きになったような気がします。


ふと千聖ちゃんの視界に白いものが目に入りました。
愛理ちゃんの指から手首にかけてがっちり包帯が巻かれていました。

「愛理、怪我したの?」
「怪我っていうか、火傷。じいやが大げさなのよ」

そう言って、愛理ちゃんは鬱陶しそうに包帯を外しました。
いつも汚れや怪我を気にしている愛理ちゃんとは思えない発言でした。
いや、もしかしたらじいやが心配するから
怪我などしないようにしていたのかもしれません。

「これ」
「え?」
「千聖の怪我の方が深いじゃん。不器用だよね本当に」
「う、るっさいな」

愛理ちゃんは、千聖ちゃんの怪我をした手に絆創膏を貼り、
自分に巻かれていた包帯を千聖ちゃんに綺麗に巻き直しました。
166 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:41


「……ありがとう」


お互い大変だったからこそ、互いの苦労がわかりました。


「うらみっこなしね」
「それには賛成だけどさ、不公平だと思う」
「は?なんでさ」
「もしふられても、千聖ならきっと明日には忘れてそうだし」
「バカって言いたいの?」
「でも、それっていいところだと思うよ。いつまでも悲しい気持ちでいるより」

いきなり愛理ちゃんに褒められたのかよくわからないことを言われ、千聖ちゃんは焦りました。


「…愛理だって、手先器用じゃん…」
「……手先が器用でも、友達は出来ないよ」
「…愛理のこと好きな男子とか、いっぱいいるよ」
「友達じゃないもん…」
167 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:41

何となくわかっていたけれど。
きっと自分はこの人がうらやましいんだと、悔しいけれど素直に認めることにしました。


そして新しく思ったこと。

もしかしたら、相手にとって、自分はうらやましいのかもしれない。
誰かにはこのどうしようもない自分にもよく見える部分があるのかもしれない。
そう思うと、自分のことも好きになれそうでした。
168 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:42


***

169 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:42
二人がそれぞれ渡したチョコは、偶然か必然かとてもよく似たものでした。
シンプルだけれど、その味は格別。
そっくりだけれど、世界にたった一つのチョコレート。
勿論、それを二人が知る由もありません。

バレンタインが終わった後すぐに、愛理ちゃんでもない千聖ちゃんでもない
可愛らしい彼女がチョコを渡した彼に出来たことはちょっと寂しかったのですが、
二人はなんだか少しだけ大人になれたような気がしました。
170 :8 世界に一つのチョコレート :2010/02/14(日) 01:42
おわり
171 :名無飼育さん :2010/02/14(日) 01:45
ハッピーバレンタイン。

>>149
>>150
>>151
>>152
ありがとうございます。
172 :名無飼育さん :2011/11/18(金) 17:13
鈴木さんも岡井さんも可愛い
どのお話も好きです
ゆっくり待っています
173 :9 きっと言語の代替品 :2011/12/06(火) 14:46
「……んー…ねぇ、みやぁー」
「ん?」
「眠い。寝る」
「え」
「おやすみー」
「ええー?…ちぃ、ちーぃー」
「………」
「………まじで?」

お喋りもいつもよりスローテンポで、ちょっと眠いのかもなんて思ってたら。
ちぃはガールズトークの真っただ中に急に目を閉じて寝息を立て始めた。
うそでしょ、と思ったけどもうこれ起きないな、と思った。
全く、さっきのお弁当絶対食べすぎだったもん。

「…はぁ」
とはいえ眠ってしまっては仕方ない。
さっき思い出した昨日の話も、眠い人を起こして話すほどの内容ではない。
自分の膝にかけていたブランケットをそっとちぃの肩からかけて、そっとその場を立ち去る。
あたしも眠ってしまおうかと思っても、今は別に眠いわけでもないし。


ブーツをコツコツ鳴らしながらあてもなく、何となく向かった先。
ついたての向こうにいる熊井ちゃんの頭がはみ出てる。楽しそうな話し声が聞こえる。

視線を右へ動かすと、少し先のソファに一つの人影。
174 :9 きっと言語の代替品 :2011/12/06(火) 14:46
遠目にもわかる。
…あれは、桃だ。

ベリーズは比較的全員が固まったり、
あるいはかっちりと行動するメンバーが分かれたりはしないので、
一人で過ごす子も多い。
その中でも特に桃は、常に誰かとつるんでいたいあたしとは違うんだと思う。

ゆっくりと近づいて行っても、気づかれる様子がない。
更に歩み寄って。


「桃ー、…あれ」

なんとこっちまで眠っていた。
うとうとって感じでもなさそうだ。うつむいて音もなく眠っている。
大きな声を出そうとして、やめた。

最近は特に、桃の眠っている姿をよく見るような気がする。
前にもそんなことがあった。
あれは、桃が大学に進学することを決めた時。
撮影やイベントの合間にうとうととしているのを見て、
忙しいんだな、と思いながらも、あたしは気の利いた言葉なんて何も言えなかった。

どこかで、桃がそんな大切なことをあたしにも言わず一人で決めたことに腹を立てていて、
なんだか気に食わなかったっていうのもある。
桃の人生なんだから、桃がどうしようと自由だと頭ではわかっているつもりなんだけど。
175 :9 きっと言語の代替品 :2011/12/06(火) 14:46
そして最近は、桃一人での仕事が増えた。

桃は弱音を吐かないし、疲れた様子なんて全然見せないで頑張るから。
ふと忘れてしまいそうになる。

ベリーズの活動をして、一人でテレビの収録をして、アンケートや写真の書きものをして、
それから大学の勉強をする。
そんな大変なことをしているなんて見せないから。
でも、やっぱ、絶対、大変だよね。

…弱音を吐いて、なんて、そんなのなんか、言えないし。
でもやっぱ無理はしないで欲しい。


羽織ったスタッフジャンパーの足もとがはだけてて、見ているだけでなんだか寒そう。
傍にあった誰かのスタッフジャンパーをゆっくりと足元にかける。

寝起きも良くって、少しの音でも起きやすい桃だから
かなり慎重に行動してもすぐに気付かれることが多いんだけど、
膝の上にジャンパーをかけ終わっても桃はぴくりともしなかった。
かなり熟睡みたい。
176 :9 きっと言語の代替品 :2011/12/06(火) 14:47
ぴたりと閉じられたアヒルの赤ちゃんみたいな唇からは
いつものやかましい声は聞こえない。
薄い化粧で、眠っていると一層生気がなく見える。
寝顔は普段からは想像もつかないほどに実は少しシャープで辛口なつくり。
その寝顔に外側に毛先がはねたツインテールが妙な違和感。

変な髪型。
若づくりしちゃって。
化粧、もっとしなよ。

なんて、心だけで思ってみる。

桃子には、肝心なことは何一つ言えないくせにキツいことばっかり言うけど、
いつも何を言ったって桃は笑ってる。
どんな風に扱われたって、桃は泣かないし、折れない。
そのはずなのに、なんだかたまに不安を感じたりする。

いつも笑っていつもウザくていつもぶりっこ。
でもいつも誰よりストイックでいつも自分に対して厳しくて。
いつもファンには優しくて。

そんな当たり前にあるはずの桃が、壊れてしまいそうな不安。
なんの根拠もないただの思い込み。
たまにあたしの中をいっぱいに埋め尽くすわけのわからない恐怖。
177 :9 きっと言語の代替品 :2011/12/06(火) 14:47
じっと真面目にリハーサルを行う桃子の横顔。
何かを考えて、そっと目を伏せる無表情。
体調が悪かった時にふと舞台裏で見せる悔しそうな後ろ姿。
その全部を包み込んで笑うステージでの一瞬一瞬に懸けている姿。

ある日突然気がついてしまった瞬間から、
桃を目で追っていたことに気がついたのはいつだっけ。
悔しいくらい、桃はいつの間にかあたしを惹きつけていた。
照れくさくてどうしても言葉になんかならないけど。


眠る桃の隣に腰掛けてただじっと寝顔を見つめているだけで、
すごい勢いで忙しくパンクしそうなほど色々考えてしまう、
こんな気持ちを存在する単語に当て嵌めたところで現状が変わりはしない。

もどかしくて、…いとおしいんだ。
自覚したって言葉には出来ない。


もも、と唇と心だけで呼んだ。
桃は動かない。

ふと、色のない頬はもしかして陶器みたいに冷たいんじゃないか。
このまま桃は二度と動かないんじゃないか。
やっぱりわけのわからない不安感。
なんでだろう?
なんでこんなに怖くなっちゃうのかわからない。
178 :9 きっと言語の代替品 :2011/12/06(火) 14:47
急に手からこぼれおちそうになった桃の存在を確認したくて、思わず伸ばした手が直前でためらう。

桃は、桃でしょ?
そうだよね?
いつだって、あたしの近くにいるでしょ?
ずっとくっついてなくても、あたしの認識できる範囲にいるよね?
よくわかんないけど、たまに不安になるよ。
言わないけど。
言えないから。

叫びたいような泣きたいような気持ちは、臆病と気にしいが押さえつける。
限りなく触れそうで触れない距離にある指先から、ほんのりと桃をまとう空気にある温度を感じる。

触れたい。
優しく。
触れさせて欲しい。


…ああ、ダメだ。
もうわけわかんない。

起こしてしまわないようにここを離れよう。
誰かと話していればきっと気も紛れるはず。


さっと立って背を向けると、くい、と羽織っている上着の裾をつかまれた。
179 :9 きっと言語の代替品 :2011/12/06(火) 14:47
「!!」
驚いて振り返る。
まだうとうととしたまま、桃がしっかりとあたしをつかまえていた。

「…桃っ」
「……どこいくの、みーやん…」

かすれた声と無表情。
どこまでも深く黒い瞳があたしをまっすぐとらえる。
ただの一人の人間でしかない桃はいつもとのギャップのせいか、
危なっかしいほどに無防備に見える。

「ごめん、起こしちゃった?」

横に座り直して顔を覗き込む。
すると桃は少し眠気を振り払うように、否定も込めて首を振った。

「んーん、みーやんの夢見て」
「え?」
「みーやんが桃から離れて行っちゃう夢、それで、目が覚めた」

じっと見つめて、なんか、顔の形は笑ってる、っていうものだけど。

ねえ桃。
どうして、その笑顔は下手なの。
温度の低い表情で見つめられると、胸の奥がじくじくじわじわ、何だか変な感じになる。
180 :9 きっと言語の代替品 :2011/12/06(火) 14:48
「そっか」
そっけない返事。全然ダメ。
どう言えば桃が笑ってくれるのかわからなくて悔しい。

笑ってるようなそうでもないような顔のままで、軽くうつむいた横顔の桃が言葉を続けた。

「怖かったけどねぇ、なんか」
「ん?」
「みーやんは離れていってるのに、『これは夢だよ』ってみーやんが近くで言ってくれてるの」
「なにそれ、あたし二人いるの?」
「そう、桃が見てる夢の中のみーやんと、夢を見てる現実の桃の傍にいる、このみーやんは違うでしょ?」
「うん」
「最初は怖かったけど、少しずつ自分で、これは夢だって思い始めてね」

なんとなくわかるようなわからないような感覚。
夢の中で夢だとわかる感覚。

低いままのトーンの声を聞いていると、ゆっくりと顔が上がって目がしっかりと合う。


「そしたらだんだん夢の中なのにみーやんのにおいがして…
 あれみーやんだぁーって。そこで起きたら、ほんとにいたから。
 なんかすごいうれしかった」

桃の目がゆっくりと細められて。
欲しかった笑顔がまっすぐに注がれて。
181 :9 きっと言語の代替品 :2011/12/06(火) 14:48
「…っ」

こんなの慣れっこなはずなのに、いちいち恥ずかしくてたまらない自分が情けない。

「みーやん、耳赤いよー?あっもしかして桃の可愛さに照れちゃったー?」
「ばっ、そんなわけないでしょっ」

そう言いながら、自分の耳や頬が熱くなっているのはわかった。
悔しい。
桃の前じゃ、結局強がりも何もかもばれてるみたい。
でも例え全部バレてたって、やっぱり言えないんだけど。

「さくらんぼみたいだよ、耳たぶ」

そう言って素早く伸びてきた桃の手があたしの左の耳たぶに触れる。
手つきがなんだかやさしくて、なんだかやらしくて、余計に熱が生まれてくる。
くすぐったい。
なのにゾクゾクして気持ちいい。
恥ずかしい。
182 :9 きっと言語の代替品 :2011/12/06(火) 14:48
「ふふ、みーやんかわいいね」
「何言って…っ」

ゆっくりと伸びてきた腕が首に回って、桃の顔が近づいてくる。
思わずすくませた肩だってきっとばれてる。
桃に包まれると、当然桃のにおいがする。ほんのり甘くて安心するにおい。

ふんわりとした感覚を感じていると、唐突に、耳たぶが温かいなにかに挟まれる。
「!」
びくっ、としたあたしにもお構いなしに、続けざまにざらっとした湿ったものになぞられる。

「やだ…!」
「だって、みーやんの耳たぶおいしそうなんだもん」

熱い息が耳の奥まで入ってきてそのまま脳みそを溶かしていきそう。

ぞわぞわ。どきどき。くらくら。ふわふわ。じわじわ。ずきずき。

ああ、このままきっと食べられてしまう。
そんなわけのわからない感覚に身体の力が入らなくなる。
怖い。
でもやめないで。
183 :9 きっと言語の代替品 :2011/12/06(火) 14:48
ぼんやりと目を開けると、どこまでも青白い首筋が目の前にある。

誘われるように鼻先でそっと触れると、桃の体温がじわりと伝わった。
熱くて、さっきより桃のにおいを強く感じる。

桃はここにいる。
確かめるように小さな身体を抱きしめる。
けれど頼りないあたしはどこかすがりつくような抱擁。
桃の心音が響いているのしか聞こえない。
自分の心音だって同じくらいなはずなのに、変なの。


抱き合って、沈黙。
その間ずっとずっと、色んなことが止まらずに次々と生まれては消えてまた生まれて。
同じことがさっき生まれてた気がするけどよくわからないまま素早く次の言葉が浮かんできて。
ずっと桃のことが、桃とあたしのことが頭の中で巡ってる。

それなのにやっぱり何も言葉にならない。
何も言葉にしてない。
どうしたらいいのかわからない。
だけど自分の気持ちははっきりしてる。
ごめんねも大好きも。
184 :9 きっと言語の代替品 :2011/12/06(火) 14:49


きっと言葉の代わりに、桃は優しくキスをくれる。
きっと言葉の代わりに、あたしもキスを返す。

きっと言葉の代わりに、見て、触れて、感じて。

それで、あたしは泣きそうなほど満たされてしまうから。
それで、桃の頬がチークをさしたように染まるから。
それで、きっとあたしたちはつながってるから。

185 :9 きっと言語の代替品 :2011/12/06(火) 14:49



互いを縛る約束や関係の言葉はなく。


やがて撮影が再開されれば、何もなかったかのようにして。
桃はいつもの桃で。
あたしもいつものあたしで。
途中少し目が合って、何もなかったように目線を外して。

撮影が終わればあたしは元気になったちぃと笑って。
桃は梨沙子と話してて。
必要ならば会話はするけれど、大切なことはきっと言わないまま。



それで、今日もきっと言葉の代わりに桃と抱き合って眠る。



186 :9 きっと言語の代替品 :2011/12/06(火) 14:49
おわり
187 :名無飼育さん :2011/12/06(火) 14:52
お久しぶりです。
今回は諸事情によりみやももです。

こういうなんかベタベタした感じのを久々に書いたため
今までどういう風に書いていたのか忘れてます。
とはいえベリは全然書いてないのでベリヲタさんには違和感があるかもしれません。
わたしの思ったみやももはこんな感じということで許してください。

最近はフリースレで「おい しい も の」というのを書きました。
9期10期これから期待してます。
保田さんおたおめ&中澤さん結婚おめでとうございます。

>>172
こんな沈黙のスレに久々に来たらレスが!
驚きましたと同時にとてもうれしいです、ありがとうございます。

長々と言いわけを残し、ではまたいつか。
188 :名無飼育さん :2011/12/06(火) 19:25
なんと、フリースレで「お、いいな」と思った作品の作者さんでありましたか
フレッシュでキャラも個性的でほのぼのしてて可愛いですよね

みーやんという呼び名が懐かしいです
でも、これはこれで全然ありだと思います
ももみやご馳走様でした

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