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mini

1 :名無し :2009/01/11(日) 01:42

ちょう短編書いていきたいと思います。
べりきゅうちゃん中心です。
150 :名無飼育さん :2010/02/18(木) 08:22
愛理に頑張ってほしい!
いつも悲恋が多いから・・・
151 :distance :2010/02/24(水) 01:38

堰が切れて溢れ出した愛理の想いは、その大きさの分強い力を持っていた。
抑えられていた時間の分、一度開いたら滝の如く勢いをつけて雅に向かっていっ
た。
152 :distance :2010/02/24(水) 01:39

楽屋ではもちろん、仕事への移動の車内でも、帰り道でも、短い休憩時間に自動
販売機へ向かう時さえも。
仕事以外の時間はすべてといっていいほど、
愛理は雅に付いて回った。
そしてどんな時でも二人きりになる隙を見つけて、雅に触れたがった。
じゃれあいのそれではなく、触れた所から伝わる熱が言葉より強い想いを乗せて
いる、
確実に今までのラインを飛び越えるような、触れ方。
153 :distance :2010/02/24(水) 01:39

雅の目の前の見慣れているはずの女の子が差し出すものは、全く見覚えのないも
のだった。

それは不安と同時に不思議な感覚を雅に与えた。

知らないもの、分からないもの、少し怖くて、だけどなぜか惹かれる――新しい
もの。

雅はいつだって新しいことに気をとられてしまう。
新商品や新学期、新しい流行。真新しいものはなんだって雅の目に輝いて映るか
ら、つい心を、奪われる。

154 :distance :2010/02/24(水) 01:40


今日も当たり前のように膝の上に座われた。首に回された腕と太股の重みが思考
を鈍らせる。


白い肌にくっきりと浮かび上がる鎖骨の形が綺麗だと思った。
その上を流れる黒髪が綺麗だと思った。
水分が多そうな瞳が綺麗だと思った。

初めて気付いた美しさは雅を魅きつけるのに充分だった。

155 :distance :2010/02/24(水) 01:40


「みや」

囁かれて、ついに手を伸ばす。

愛理結構白いよね。
梨沙子とどっちが白いだろう。
白さの質が違う気がする。
梨沙子はマシュマロみたいな、甘いお菓子を連想させる感じ。


梨沙子――。

何気なく浮かんだ単語に手が止まる。
156 :distance :2010/02/24(水) 01:41



157 :distance :2010/02/24(水) 01:41


なくしてもいいと思っていた。
雅が手に入るなら、無くしたって傷付いたって、構わない。

梨沙子を見て叶わないと分かっていたから、誰にも秘密で、こっそり、ずっと好
きだった。
諦めかけて、気持ちを決めたのに、どうしても恋を手放せなかった。
棄てられないと分かったら覚悟を決めた。
恋だって勝負だ。勝ち目が無くても賭けざるを得ない勝負だ。
ずっと守っていた線を飛び越えて、ズルまでした。
独占できるように。もっと側に居られるように。誰よりも側に、居られるように


思いを込めて、好きな人の名前を呼ぶ。




「みや」
158 :作者 :2010/02/24(水) 01:44
レスありがとうございます。
短いのぽつぽつ書きたかったのに気づいたら長いものになってしまう。
お付き合いいただけたら幸いです。
159 :名無飼育さん :2010/02/25(木) 02:47
愛理ちゃん優勢ですが梨沙子の反撃はあるのでしょうか?
雅ちゃんは押しに弱そうだからな〜。
160 :作者 :2010/03/07(日) 23:14
なかなか続きが書けない!ので、えー、本編とはまったく関係がない昔書いたうめすずが発掘されたのでちょっとのせてみます。、、、供養させてください。
161 :next step :2010/03/07(日) 23:15



next step
162 :next step :2010/03/07(日) 23:16

時計の秒針が動く音が気になるくらい、静まり返っている、真っ暗な空間。

目を閉じても眠れる気がしなくて、
隣で寝ているえりかちゃんのほうに顔を向けてみる。
起きているかどうか、真っ暗だからよく分からないけど、
なんとなく眠ってしまっただろうなと思う。
同じベッドで眠っても、いつだって指一本触れてくれない人だから。
163 :next step :2010/03/07(日) 23:17


えりかちゃんはいつも優しい。
寂しい時とか辛い時、自然と傍に居てくれる。
些細な変化に気づいてくれて、大事にされてるって日々感じてる。

でもあたしは、もう出会った頃みたいな子供じゃない。
それだけじゃ、足りないんだ。
恋には足りないよ。



最近少しだけ不安。
余裕の笑顔で佇んでいる彼女を見ていると、全部自分の独りよがりなんじゃないか、って思うときがある。
あたしだけが、えりかちゃんにもっと近付きたいって思ってるのかな、って。

本当にそうだったら、、、。考えるだけで苦しくて聞くことが出来ない、臆病者。
それなら。
言葉以外の方法で、えりかちゃんを知りたい。
あたしを知ってほしい。
164 :next step :2010/03/07(日) 23:18


暗闇の中そっと左手の先を動かして、隣の右腕に触れてみる。


「……んー?」

間延びした声がすぐ近くから届いた。
起きてたんだ、という事実に驚いて、嬉しくなる。


「えりかちゃーん」
「ん?」
「寝れないよう」
「珍しいねえ」

少し、触れている手に力を込める。


「へへ」

笑ってぴたりと体をくっつけた。あったかい。
165 :next step :2010/03/07(日) 23:21
「……甘えん坊ー」

長い腕があたしをまるごと包んだ。
少し笑ったえりかちゃんの顔が目の前に来る。
長い睫毛に縁取られている瞳は、すごく綺麗だ。
視線を下ろしていくと形の良い唇が目に入って、
引き寄せられるみたいに口づけた。

柔らかい感触。

「ふふ」

笑い声と共に、気持ち良さに浸る前に唇は離された。
それから素早く頬にキスが落とされる。

「ねんねしましょうねー」

ふざけた声と言葉であしらわれる。

瞬間。

ぷちん、と何かキレる音がした。

子供じゃない、って言ってるじゃん――
166 :next step :2010/03/07(日) 23:21



頭に血が上る。衝動が身体を動かす。華奢な肩を強く掴むと、驚いて揺れるえりかちゃんの瞳を睨みつけて、

強引に唇をえりかちゃんのものに押し付ける。
少し離して、唇を舐める。隙間から舌を侵入させる。


「んっ」


掴んでいた右腕が逃れようと暴れたので、掌を滑らせて括れた腰に降ろした。
そのまま引き寄せて身体を密着させる。

身体の攻防戦とは反対に、舌をゆっくりと動かす。
柔らかさを味わうように口内をくるりと一周する。
舌と舌が触れ合った瞬間、えりかちゃんの腰がびくりと跳ねた。

お、反応した!
なんて思っていたら顔を離される。
167 :next step :2010/03/07(日) 23:23



「あいり!」
「なあに」
「なにじゃないっしょ、ちょっと」


困ってる顔。

それ、恋人にこういうことされて、する表情じゃないよ。
気が落ちる。
怒りは徐々に悲しみへと変化していく。


「なんでえりかちゃんはなにもしてくれないの」
「……え?」
「全然触ってくれない。もっとあたしは近付きたいのに全然、えりかちゃん、」

鼻がつん、と痛くなる。口がうまく回らなくなる。
あ、やばい泣くかも。
一人で怒って泣いて困らせて、なにやっているんだろう。
ほんとにあたしの、独りよがりだったんだ――
168 :next step :2010/03/07(日) 23:24


そう実感するといよいよ涙が零れてきそうだった。
堪えなきゃ、と目と口を引き結ぼうとする。
その上に、ついさっきまで感じていた感触が覆った。
目を開けると、キスをするときの距離のえりかちゃん。


「ごめん」

言葉と一緒に、また口づけられる。


「なんか、ちょっと触ると」

額に、頬に、耳に。キスが降って来る。
あったかい気持ちが篭められてるのがわかる優しいキス。


「止まんなくなっちゃいそうで」

最後に唇に。
それはさっきみたいなキスじゃなくて。
169 :next step :2010/03/07(日) 23:24



「……はぁっ」

呼吸まで奪われるみたいなキス。
簡単にこじ開けられて、捕らえる。
動きに全然着いていけなくて、追いかけるのがやっと。

「……触れなかった」

えりかちゃんがあたしの上に居るのに気付いたのは、解放された時だった。
えりかちゃんの長い髪が頬を掠めて、華やかな香りが少し遅れて降りてきた。


「……愛理を傷付けたくない」

小さな声は可哀相なくらい自信なさ気に響いた。
自分のほうがよっぽど傷付いた顔をしていること、知らないんだろうな。
悲しげな目をしているえりかちゃんを見て分かった。
170 :next step :2010/03/07(日) 23:31

あたしだけじゃない。えりかちゃんも怖かったんだ。
二人の関係を壊してしまうことに怯えていたんだ。


確信して決心した。そっとあたしの上から退こうとして動きかけた腕を掴む。
離す気なんてなかった。

「あたしはえりかちゃんにもっと近付きたいよ」


少し顔を浮かせて頬にキスをした。

「傷付かないから」


傷付くわけがない。痛みだって涙だって、えりかちゃんのくれるものなら全部愛しい。

だから……

「……して?」

壊れるのは、失うことは、同時に新しいものが生まれることなんだから。
一緒に作ればいいんだよ。えりかちゃんとなら、できる。
二人なら怖くないよ。


えりかちゃんの頬をさらりと撫でる。

ゆっくりと頷いたえりかちゃんの瞳は、さっきとは全く違う、強い光を抱いていた。



近付く唇に閉じた瞼が、次の場所へと行く二人の合図。
171 :作者 :2010/03/07(日) 23:33

おわりです。ありがとうございました。distance頑張りますので、暫しお待ちを。
172 :名無飼育さん :2010/03/08(月) 16:58
またまたうめすずが読めて嬉しいです。
distanceもお待ちしています。
ぼちぼち書いてくださいね。
173 :distance :2010/03/11(木) 23:04





あれ、
なんか
おかしいな
174 :distance :2010/03/11(木) 23:05


季節が変わっていくほどの些細な変化率だった。


ほんの少しづつ
だけど確実に以前とは違う雅を梨沙子は見つめていた。
物に触れる仕草、考え事をしているときの仕草、人に話し掛けるときの仕草。
一瞬に、何か引っ掛かる。

「梨沙子つぎー」
「あ今行く」


ピンクの迷彩衣装を着込んで腕組をして難しい顔で突っ立っていたのはさぞ滑稽だっただろう。
千奈美がからかいたそうな顔をして呼んでいる。
175 :distance :2010/03/11(木) 23:06

次のカットはバストアップショットだっけ。
グリーンの背景へ小走りで向かう。
近づいていくと扉の近くに居る雅と佐紀に気付いた。

――ああ、やっぱり、なんか。


胸のはしっこにもやもやが掛かりはじめる。
見ないほうがいい、今は考えるな。振り切るように頭の中で唱えてカメラの前に立った。
仕事となるとスイッチが自動的に切り替わるようになったのは
いつだったか。覚えていないほどだ。
それはメンバーの全員に言えることだった。カメラの前に立つ時はプロ。幼い頃から埋め込まれた潜在意識。

すれ違い様千奈美に脇腹を突かれたのも上手く頭を切り替えるきっかけになって、どうにか一発OKを貰った。
176 :distance :2010/03/11(木) 23:07


個人の撮りが終わり、短い休憩を挟んだ後は、全員での撮影だ。
ダンスは二、三日前に完成したばかりだったが、
今回は特に難しい振りも無かったので、誰もミスを出さずに終盤にかかった。
友里奈が衣装のグローブを着け忘れていた事以外は何事も無く順調に撮影は終わる。


「OK!」
「ありがとうございました!」
「ありがとうございましたー!」

声と同時に空気が一気に弛緩する。

現場のスタッフに頭を下げながらメンバーの後に従い梨沙子は背景の外に出ていく。


「ありがとうございましたー」
177 :distance :2010/03/11(木) 23:07


耳慣れた一番好きな声が飛び込んだ。

「梨沙子おつかれー」


機嫌の良いときの声だ。
笑おう、そう思って振り返った。
頭をポン、と触れる感触。こちらを見る眼差し。
確信する。

やっぱり――違う。

雅はそのまま梨沙子を追い越し、前を行くメンバーに紛れて行った。

傍目から見たら何の差も感じられないだろう。メンバーですら見えない領域が梨沙子には見えていた。
雅の事は誰よりも敏感に耳を澄ませてきたからこそ分かる。

違和感の正体。上手くは言葉にすることが出来ないけど、
距離が開いた気がした。
長い間動くことが無かった距離が、見えない何かに遮られた感覚。
178 :distance :2010/03/11(木) 23:08



知りたいような、知りたくないような気がした。
あまり良い予感ではなかった。
だけど今知らなければ、もっと距離が開いてしまう予感がしていた。
昔から自分の直感には自信があった。
あたしには、なんとなく、が一番信頼できるんだ。
179 :distance :2010/03/11(木) 23:09


メンバーの誰より先に楽屋に入った雅は私服に着替えると、鞄から携帯を取り出す。
ロッカーに寄り掛かりメールをチェックしている内に
着替えの終わったメンバーが「お疲れ」と一声残して続々と去っていった。

普段なら喋ったりふざけあったりしてダラダラと楽屋に残っているのだが、
撮影開始が遅かったせいで外はすっかり真っ暗になっていたので、今日は支度が済むと皆すぐに帰っていく。

返信を一通り終えてパチンと携帯を閉じて顔を上げる頃には
部屋には雅と梨沙子の二人だけになっていた。

コートを羽織ってマフラーまで締めて、完全に外に出ることができる格好の梨沙子に雅は首を傾げる。
180 :distance :2010/03/11(木) 23:09

「あれ梨沙子、帰んないの?」

「みや待ってた。一緒に帰ろう?」


黒いレザーのバックを両手に抱えながら梨沙子は雅に微笑みかけた。
二人の家はダンススタジオを挟んで反対方向なので、『一緒に帰る』と言っても駅までの短い道程だけだ。
夜一人で歩いても特に危険はないだろうほどの距離、
わざわざ自分を待つ必要はあるのだろうか――雅は不思議に思いながらも、
深く考えずに笑顔で頷き、揃って部屋を後にした。
181 :distance :2010/03/11(木) 23:10

建物を一歩出た瞬間に真冬の空気が全身を包む。
夜になって一層張り詰めたような冷たさは、運動で暖まっていた身体に容赦無く襲い掛かる。
雪が降ってもおかしくない寒さだ。


「さむっ!」
反射的に雅は首を竦めてマフラーに顔を埋めた。


「寒い寒い寒い」

機械的に早口で繰り返す梨沙子を見ると、解けかけているマフラーが風に靡いている。

雅は少し笑って梨沙子の首に手を伸ばして、長く垂れた白いマフラーの端を掴んだ。
立ち止まった梨沙子の正面に立つ。一度くるりと首周りに回して、綺麗に巻き直す。
あまり強く締め付けないよう配慮しながら形を整えてやると、軽くマフラーをぽん、と叩いた。


「できた」


マフラーから顔を上げると、至近距離で目が合う。
暗闇でも解るくらい梨沙子は悲しい顔をしていて、
驚きから白いマフラーを掴んだまま雅の動きが止まった。
182 :distance :2010/03/11(木) 23:15



わかった。
違和感の正体。

二人を繋いでいたはずの"何か"が切れた。

どんなに気づかれなくても、こちらを向いてくれなくても、それだけを信じて思い続けてきた、唯一の光だった。
不確かで見えなくて頼りないけど、同時に世界で二人だけを結んでいた特別の証だった。
絶対的な絆だった。

それが切れたことが確かに分かった。
雅の笑い方も温度も、それが裁ち切られたことを伝えていた。


運命だって、思っていた。
確かに手の中にあったはずのものを無くした衝撃と圧倒的な喪失感が体中を蝕む。
それでも泣き出しそうな気持ちを必死に抑えた。雅に迷惑はかけたくなかった。
それでも梨沙子は雅が好きだった。


ぎゅっと手を閉じて堪える。
梨沙子が顔をあげると硬い表情の雅と視線が交じる。

梨沙子の瞳が切なげにゆっくりと細められた。

「ありがとう」
183 :distance :2010/03/11(木) 23:17


昔から梨沙子は雅に何か世話をされると眩しいくらいの笑顔を見せていた。
飼い主が家に帰ってきた時の子犬のような、嬉しくてたまらないというのが滲み出ている笑顔。
どれだけ月日が経っても変わらないそれに慣れていた雅は、梨沙子の初めての反応に唐突に突き放された気がした。
胸の中心がザクリと切られたように痛んで、何かを言う前に
梨沙子を捕まえた。思い切り、抱きしめる。
自分が辛いと感じたことも切ないと感じた理由も、何に対してのありがとうかも
全く分からないまま梨沙子を抱きしめた。
縋る気持ちで抱きしめた。


梨沙子の限界はそこまでだった。
酸素を求めて陸を跳ねる魚ほど胸が苦しかった。
184 :distance :2010/03/11(木) 23:19


雅がきつく閉じ込めたはずの腕を静かに離し、梨沙子は何も言わずに
背を向けて歩きはじめる。
足音とともに影はどんどん小さくなっていく。

その後ろ姿を見ながら雅はまだ立ち尽くしていた。
夜の闇の黒に決して溶け込まない白が眩しいな、とただぼんやり眺めながら思った。

動けずにいる雅と振り返らない梨沙子との距離がどんどん開いていく。

雅が歩き出す頃には、とっくに闇の中の白は消えた後だった。


それぞれ胸に同じ暖かさと痛みを抱えて、別々で歩いて行った。
185 :名無飼育さん :2010/03/13(土) 06:47
これは…彼女の頑張りが実ったと思っていいのでしょうか…?
186 :名無飼育さん :2010/03/16(火) 00:28
なんか・・・

なんか辛いよお!
187 :SAGE :2010/04/04(日) 22:01
こうきたか…
続き楽しみに待ってます。
188 :disance :2011/11/25(金) 07:53
***

息を吐き出すと白くなって、すっと空気に溶けて消える。
それが面白くて、雅は何度も繰り返していた。そして一通り楽しむと振り向いて
、少し離れた場所に立つ愛理に笑いかけた。

「愛理もやろうよー」


透き通る冬の青空の下、輝く太陽。反射する雪。雅の笑顔。その眩しさのどれも
にに、愛理は目を細めながら頷いた。
支給された白いベンチコートをシャカシャカと鳴らしながら駆け寄って隣に並ぶ


不意に手の甲同士が触れる。
すると、どちらともなく二つの手は繋がれた。
それが嬉しくて、愛理はこっそり微笑んだ。

雅がしていたように、はー、と愛理も大きく息を吐く。それはやはり即座に白く
染まった。

「おぉー」

目を輝かせながら同じ事を繰り返す。数分前の雅と同じ表情で愛理は寒さと戯れ
る。

「冬ってかんじー」
「だねえ」

雅が繋がった手にキュッと力を込める。愛理はさっきより堂々と笑った。それを
見た雅も笑顔になる。


「ねえ桃はー!」



189 :disance :2011/11/25(金) 07:53
Buono!での久しぶりの仕事だった。
冬の曲なので、と安易に雪景色の地を選んでMV撮影。
年末に向けてスケジュールが詰まるなかでの、
泊まり掛けの仕事は、三人にとってはちょっとした息抜きにもなっていた。
都会で細長いビルを行き来する生活からの解放感で、三人とも活き活きとした笑
顔を見せていた。
そのせいか、予定していた時間よりも随分と早い上がりが告げられた。


「八時上がりとか、久々じゃない?」
「やばい、嬉しすぎる。何しよー!」
「課題できる…!!」

仕事が終わり家についたら、大体夜も更けきっていて。
次の日も早い時間から仕事が入っているので、シャワーだけ浴びて即就寝、が続
いた毎日を送っていた三人。
かなりテンションが上がる状況だ。

「やっぱまずはゆっくりお風呂でー、ペディキュア直して……あーしたいこと多
すぎる!楽しみー!!ね、愛理」

嬉しさを満面に出しながら雅は愛理を振り返った。

もちろん愛理も、時間がなくて最近後回しにしがちだった事をいくつも頭に思い
浮かべていた。
トリートメントに、久しぶりの長めのボディケア、友達にメールの返信……。

――だけど。


「愛理?」

雅の顔を見て、最優先に気付いた。

「……うん、楽しみ」

訝しげな雅に笑顔を返して、部屋へ促すように背中にれた。
ともすれば力が籠りそうな指先を押さえながら、あくまでもそっと。







.
190 :disance :2011/11/25(金) 07:54
左足の小指の爪を丁寧に撫で下ろす筆先を見ていた。ベ
ッドにうつ伏せて、肘だけついた体制で暫く愛理は雅を見詰めていた。
見詰めて、焦れていた。
隙間なく作業をしている雅に、焦れていた。

足をパタと鳴らしてみる。
無反応。
いや、無反応どころか、気付いてすらいないだろう。
それどころか、もしかしたら。
私がいることすら忘れているかもしれない。

考えが頭に過ると、一気に不安が押し寄せる。
お出かけの途中でお母さんをふと見失った小さな子供みたいだ。
私は確実に裁ち切ったはずだ。
だから結んだ。
はにかんで頷いた顔が焼き付いている。
みやは私のもの。
私のなんだ。
私のだよね?



「みやっ」

声が切迫した色で音になった。
191 :disance :2011/11/25(金) 07:54
「どした?」

その音に反応して雅は顔を上げる。
少し驚いた丸い瞳が愛理を捉えた。


――この瞳を。
私は手に入れたはずだ。


愛理は立ち上がると、徐に雅に近付き、隣に座った。
確認して、確信したかった。
雅の心も。私の行動も。
間違ってなんかいないと、認めて欲しかった。


「愛理」

愛理に首だけ向けている雅は、尚も先ほどと同じ瞳でその動きを追っていた。

192 :disance :2011/11/25(金) 07:55
軽く俯いていた愛理はゆっくりと顔を上げ、再び目を合わせる。
それから緊張気味に腕を伸ばし、指先だけで雅の頬に触れた。
自分以外の温度に反応して、雅の気が全て愛理に集中する。
二人の纏う空気がしんと鎮まった。


「みやは……」

一言でいい。


「私・・・」

193 :sage :2011/11/27(日) 21:37
待ちわびて、諦めていた続編がきて呆然としてます。
まだ続きを書いてくれるのかという驚嘆と、好きでいた物の懐かしさで複雑な思いですが、とにかく嬉しいです。
194 :名無飼育さん :2012/04/11(水) 11:04
ここの鈴木さんが好きです。
これからも期待して待ってます。
195 :distance :2012/12/12(水) 22:18
――訊いたところで。

頭に浮かんだ自分の声が愛理の言葉を奪った。
訊いたところで、本当の答えが返ってくることはない。
本当の答えを、みやは知らないんだから。

「愛理?」

雅の訝しがる瞳が何よりも真実を語っていた。


私はこの先ずっと、それを隠さなきゃいけない。
本当の答えを、本来あるべき姿を奪ったのは私だ。


「遊んでー」
196 :distance :2012/12/12(水) 22:18
「わ、って危ない!ペディキュアぬってんの!」

愛理はゆるい声を出しながら雅に全身でもたれ掛かった。
反射の速度で愛理を受け止めながら、慌てて雅はマニキュアの小瓶を片手で避ける。

「もーちょっとで終わるから」

ぽんぽん、と愛理の頭を優しい手が促す。
その暖かさが愛理を溶かして、涙がじわりと込み上げてきた。
まぶたの縁に滲んだ事に気がついてすぐに拭ったけれど、
それが雅の優しさからなのか罪の意識からだったのかは、自分でも分からなかった。



197 :名無し :2012/12/12(水) 22:22
ヘドが出る更新ペースですいません。。
完結までこぎ着ける気持ちはあります。

ついでに、ほかのSSもぺいっと投下することもあるかと思います。
雑なスレで本当にご迷惑おかけしますが、もしまだ読んでくださっている方が居ましたら、何卒よろしくです。
198 :名無飼育さん :2012/12/14(金) 08:28
これからもこの物語を読むことができて、嬉しいです。
どんな形になるのか楽しみです。
ほかの物語も読んでみたいので、楽しみにしてます。
199 :名無し飼育さん :2013/01/05(土) 22:02
続きキテター!
嬉しいですっ
何度でも読み返しながら更新を待ってます

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