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作者フリー 短編用スレ 8集目

1 :名無飼育さん :2012/08/28(火) 01:40
このスレッドは作者フリーの短編用スレッドです。
どなたが書かれてもかまいませんが、以下の注意事項を守ってください。
・アップするときはあらかじめ“完結”させた上で、一気に更新してください。
・最初のレスを更新してから、1時間以内に更新を終了させてください。
・レス数の上限は特にありませんが、100レスを超えるような作品の場合、
 森板(短編専用)に新スレッドを立てることをお薦めします。
 なお、レス数の下限はありません。
・できるだけ、名前欄には『タイトル』または『ハンドルネーム』を入れるようにしてください。
・話が終わった場合、最後に『終わり』『END』などの言葉をつけて、
 次の人に終了したことを明示してください。
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前スレ 作者フリー 短編用スレ 7集目
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2 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:42
もう一度、振り向かせて。
(やすみよゆい。このお話に出て来る“唯”とは
岡田さんではなく脇田さんの事です。
途中で前スレの容量がいっぱいになってしまったので
再度最初から投下します)
3 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:43
「おいしいっ!これなまらおいしいっ」

唯ちゃんは一口ずつあんみつを口に入れる度、感嘆の声を漏らしていた。

今日は、唯ちゃんが気になっているという甘味処に連れて来てもらっていた。
噂通り、夏の暑さを吹き飛ばしてくれるかのような美味しさだった。
盛り付けも凝っていて見た目も楽しめる。

小さな幸福感が押し寄せる。
こんなに美味しいのなら、保田さんにも食べさせてあげたい。
今ここに保田さんがいたらどんな反応するんだろう。
保田さんも、おやつをもらった子供みたいな満面の笑みを浮かべて、おいしいって言うんだろうな。
その光景を思い浮かべて、私の口元は一瞬ほころんでしまう。
そんな私の様子を、唯ちゃんは見逃しはしなかった。

「三好さん思い出し笑い?思い出し笑いする人ってエロいんですよ」
「…うん、そこは否定しない」
唯ちゃんの怪訝そうな視線も、私は素直に受け止める。
4 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:44
もうすぐ保田さんに会える。
冬には保田さんと同じ舞台に立てる事になっている。
まだ夏も終わっていないのに…ついつい先の事ばかり考えてしまう。
ブログでも、冬の舞台を待ちわびている心情を
ストレートに綴ってしまっていた。
もう一度東京で舞台に立てるなんて
夢にも思わなくて、感慨も一入だったから。
きっとブログを見た人は気が早いと笑ってるんだろうな。

でも、今の私の心を一番占めているのは舞台ではなく、保田さんの事。
私は…保田さんの事ばかり考えている。
5 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:44
...

会計を終え店を出た途端、唯ちゃんの大声が私の鼓膜を揺さぶった。

「あー!!」
「ど、どうしたの!?」
「食べるのに夢中で写真撮るの忘れてました!」
「い…いいじゃん、また今度来れば」
「一人じゃ意味ないんですよう。三好さん、また付き合ってくれます?」
「うん、私でいいなら」
「約束ですよ?」

唯ちゃんは念を押すように私の顔を覗き込む。
「別にスイーツ巡りくらい、いくらでも付き合うから」
6 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:45
唯ちゃんとそんな言葉を交わしつつも、
相変わらず思い浮かぶのは保田さんの顔。

ここ数日私はずっとこんな調子だ。
保田さんと再び会える日が待ち遠しくてたまらない。
浮かれてるって指摘されても仕方ないと思う。

だけど同時に、私は誰にも言えない不安を押し隠していた。

保田さんと再会できるのはいい。
でも本当はその後が怖いんだ。
冬の舞台が終われば、“また”私と保田さんは
ただの赤の他人に戻る…その事実を受け入れる事が。
7 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:46
保田さんの隣は居心地が良くて、舞台が一緒だったあの頃は、
そこが私の特等席のように感じていた。
当たり前のようにそう信じてた。

だけど、舞台という枠組みから解放され外の世界に戻ると、
次第に保田さんからの連絡は減っていった。

私のいない世界に日に日に順応していく保田さんを尻目に、
私は静かにフェードアウトした。
東京から去った私に対し、保田さんが
どんな想いを抱いたのかさえ知る事ができないままに。
8 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:46
私達は同じ空の下にいる。
確かに保田さんは実在して、私も今こうして同じ世界で息をしてる。
だけど、途方も無く遠い。

あの頃は、手を伸ばせばすぐに触れられる場所にいてくれた。
呼べば応えてくれた。
手に触れたら握り返してくれたのに。
こうしていると、東京にいた日々が幻みたいだ。

“みーよがいてくれるから頑張れる”
彼女の言葉はきっとウソなんかじゃなかった。
あの瞬間、私と保田さんは誰よりも通じ合っていた。
だけど保田さんの形成する世界に、おそらく今私は存在しない。
きっと自分が能動的にならない限り、
保田さんの人生に私が登場する事はない。
所詮はその程度。
今の保田さんにとって私はいてもいなくても同じ…
多分、そんな希薄な存在。

今の私達は赤の他人。
舞台を通じてでしか、私は保田さんに近付く事もできない。
保田さんには大切な人が多過ぎるから。
9 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:47
...
唯ちゃんと肩を並べて歩いていると、
ふと、懐かしい香りが鼻をかすめた気がした。
今すれ違った人のフレグランスの香りだ。
その瞬間、私は反射的に振り返ってしまう。

微かな期待。
そしてそれは一瞬にして打ち砕かれ、代わりに失望感だけが残される。
…ほらね。
香りが同じなだけで、全然違う人じゃないか。

「三好さん?」
苦笑いする私を、唯ちゃんが不思議そうな顔をして見つめて来る。
「…知り合いでも見つけたとか?」
「ううん。人違いだったみたい」

彼女がこんなところにいるわけがないのに。
それに保田さんと最後に会ってから、もう半年以上経ってるんだ。
香水だって変えてるはず。
保田さん、特に飽きっぽい人だしね。
10 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:48
頭では理解してるのに、それよりも先に心が反応してしまう。
欠けたパーツを探すように、無意識に私は
保田さんの姿を追い求めてる。
この気持ちの数分の一でも、保田さんが私を想ってくれていたらいいのに。

必要とされたい。
愛されたい。
だけど誰でもいいわけじゃない。
私は、保田さんにとってのかけがえのない人になりたい。
保田さんの大切な人達の枠にすら入れない私なんかが、
分不相応だとも思う。

それでも、望まずにはいられない。
11 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:49
その時だった。
私の鼻先に、ぽつりと冷たい雫が落ちた。

「?」
顔を上げると、空は厚い雲が覆い鈍色に変わっていた。

雨…?

「げぇっマジ?傘忘れた」

唯ちゃんの焦った声を聞きながらも、私は空から視線を外さずにいた。

そっか…もうそろそろ秋雨の時期なのか。
北海道は梅雨がない代わりに、8月中旬を過ぎたら秋雨に入るのが通例だ。
そんな事もすっかり記憶から抜け落ちていた。
私にとっては数年ぶりの北海道の夏。

そう…ここは東京じゃなくて北海道なんだ。
ここに、保田さんがいるわけがない。
12 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:50
「うわあ、もうビショビショ」

唯ちゃんはハンカチを取り出し、私の体を濡らす水滴を
拭き取ろうとしてくれる。
そのハンカチには見覚えがあった。
私が誕生日に唯ちゃんにプレゼントしたものだ。

「…それ、使ってくれてるんだ」
「当然ですよ、せっかく三好さんがプレゼントしてくれたんだし。
それに三好さんのセレクトする物って可愛いですもん。
毎日でも持ち歩きたくなりますよ」

そんな風に言ってもらえて、嬉しくないわけがない。
女の子の喜ぶ顔を見るのは好きだ。
私が何かする事でその子が笑顔になってくれるなら、
こっちまで幸せになれる。
13 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:51
私が可愛らしい小物を見繕ってプレゼントする度、
保田さんは少女のように無邪気に喜んでくれた。

それが見たい一心で、舞台が一緒だった頃、
私はよく保田さんにプレゼントしたものだった。

二か月もすれば、あの笑顔にまた会える。
きっと保田さんはあの頃と何も変わらないんだろう。
あの頃と同じ温かさで私を受け入れてくれて、
終わりが近付けば、優しく…そっと突き放す。
そうやって、きっと何度も同じ事を繰り返すつもりなんだろう。
私が変わろうとしない限り。

保田さんは目の前の人間には親身に接する人だ。
だったら…私が彼女の領域に踏み込むしかないんだ。
たとえ、彼女の大切な人達を押しのけてでも。
14 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:52
「…私にそんな事ができる度胸があるなら、とっくにしてたけど」

「え、三好さん?何て?」

どうやら思案していた事が言葉となって口から出てしまっていたらしい。
小動物のように、唯ちゃんがきょとんとした顔で私を見上げている。
彼女の問いには答えず、代わりに私はある提案をする。

「ねえ。せっかくだし、そこの雑貨屋でお揃いの傘買わない?」
「やった!三好さんとお揃い!」

その瞬間、唯ちゃんはハンカチを持つ手でガッツポーズを作る。
人目がなければその場で小躍りしてそうな勢いだ。
15 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:52
「それじゃ早く行きましょ!」

そう言って、唯ちゃんは私の手をさっきより強く握り直した。
彼女の手が心地良いと感じてしまう自分に愕然とする。

このまま唯ちゃんの柔らかい手を素直に受け入れてしまえば、
もうこんな風に不安になる事もないかもしれない。
唯ちゃんを好きになれば、楽になれる。

でも、私は既に漠然と悟っていた。

私はきっともう、保田さんしか求められない。
保田さんは私の心を残酷な優しさで苛む人だけど、
これ以上ないほどの幸せをくれたのも、確かに保田さんなんだから。
16 :もう一度、振り向かせて。 :2012/08/28(火) 01:53
おわり
17 :みやびちゃんってば可愛いなー、もうっ! :2012/08/30(木) 14:24

「お、岡井ちゃん。久しぶり。」


木曜の18時頃。夕方だと言うのに蒸し返る暑さの中、やっとの思いで事務所にたどり着いた。
汗でぴったりと肌に付いたカットソーをはがしてパタパタと空気を送っていたところ、吉澤さんがデスクに座ってコーヒーを飲んでいた。
まるで会社員かのように。

「わー。久しぶりですね。」
「なんか岡井ちゃんも大人になったな。冷めた挨拶しやがって。」
「いえいえいえっ。そんなことないですよー。暑いんですよー。」
「だよね。今日暑いよね。」
「はいー。」
「コーヒー飲む?」
「でも苦いのは・・・。」
「大丈夫。シュガー&ミルク。」
「格好つけて言うなあ。」
「シュガー、アーンド、ミルック!」
「わかりましたよもう。」

吉澤さんは会社用の黒のプラスチック製マグカップを取っ手の向きを変えて渡してくれた。
丁寧にカップを両手で覆う。

「いや、熱いし!」
「だれがアイスって言ったよ。」
「そうですけど・・・しかも黒いし!ブラックブラック!!」
「千聖。最近のコーヒーは黒いミルクがあるんだぜ。」
「いや、絶対うそ。私でもわかるうそ。」
「お前先輩を信じられないわけ?」

あん?
って見慣れたなー、その顔。

「わかりましたよ、もー。」

なんでこんな暑い日に熱くて苦いコーヒーなんか・・・。

「ぅあちっ・・・!!!」
「ぶハハハハハハ!!!」
「にがっ!!」
「はっは!!くはは!!」
「もー。吉澤さーっん!!」

涙目で吉澤さんに怒りを訴えると、吉澤さんの後方のドアが開いて、スタイル抜群の女性が入ってきた。


「あれー?ちぃさぁとぉー。久しぶりー。」
「あぁっ!石川さーん!」
「髪型大人っぽくなっちゃってー。あれ、コーヒーなんて飲むの?」
「いや、これは吉澤さんがぁ。」
「岡井ちゃん。アブチョジョーク。アブチョジョーク。」
「よっすぃ、また千聖いじめてたんでしょー。」
「アブチョジョークって。」
「岡井ちゃん。そのコーヒーまずいから捨ててきて。」


なにーーー!!!




18 :名無飼育さん :2012/08/30(木) 14:25
・・・
19 : みやびちゃんってば可愛いなー、もうっ! :2012/08/30(木) 15:00

カップの中身を捨てるために、コーヒーメーカーがある場所まで歩み寄る。
まだ口の中が苦いよ・・・。

「あれ。どこに捨てればいいんだ?」

きょろきょろしていると、目の前に黄色いポスターが視界に入った。

「!!!!!」
ベリーズのポスターじゃんっ!!みやびちゃん可愛い!!!

「おーい、岡井ちゃん。ちょっとこのMVどう思うー。って、聞いてねー。」

可愛いなぁ。可愛いなぁ。みやびちゃん。
お姫様みたいだよなぁ。
でもロングもいいけどやっぱりショートだよなあ。

「おい。岡井少年。」

左肩をポンと叩かれて久々のあだ名で吉澤さんは私を読んだ。

「また夏焼?好きだねぇ。それよりこのMV見てよ。」
吉澤さんは私の左肩を持ったまま、反転させてデスクの上のパソコンに連れて行く。
いや、まだコーヒー捨ててないのに。

「そんな雅ちゃん雅ちゃんって。叶わない恋はやめとけ。」
「違うんですよー。みやびちゃん超可愛いんですよー。」
「千聖ってほんと昔から夏焼ファンだよね。って、コーヒー早く片しなさいよ。」
「あー。もう、この間の超HAPPY SONGのときはすげー幸せだったなあ。」
「まさに岡井ちゃんにとって超HAPPYなSONGじゃん。」
「それでー、この間のMV撮影の時なんてー。」
「いやいやいや、ちょっと待て。まさにその曲はさぁ、岡井ちゃんにとって超HAPPYなSONGじゃん。」
「みやびちゃんが抱きついてきたらなんかテンパっちゃってー!!」
「一度スルーされたら2度言うとこ、私に似てきたね。よっすぃー。」
「うそ。まじで。もうやめる。」
「なにそれー。」
「いきなり後ろから抱きつかれたと思ったらみやびちゃんでー。もうびっくりしてー。」
「あ、そういえばこの間MV見たよ。岡井ちゃんマジなんだもん。あれMVとしてアリなの?」
「もうディレクターもわかって編集してるよね。この間のSATOYAMAなんて、夏焼と他の子の絡みで千聖すごい悔しそうだったの放送されてたし。」
「いやー、恥ずかしいっすけどねー。」
「嬉しそうじゃん。」

てへへ。右手で頭を掻くと、左手で持っていたカップを石川さんが取り上げた。
ふーふーしている。まさか飲む気じゃ・・・。

「まぁ夏焼ってキッズの中でも顔整ってtttshgjshg・・苦っ!!!」

途中なんて言いました?

「ぶはははは!!!梨華ちゃん超ウケる!!」
「もうっ。千聖!!捨ててきてよこのまずいコーヒー。」


なにーーーー!!!







20 :みやびちゃんってば可愛いなー、もうっ! :2012/08/30(木) 15:15

2度も捨てに行くハメになるとは。
あ、このシンクに捨てればいいんじゃん。

「梨華ちゃん。それSATOYAMAじゃなくてMVのメイキングの時だから。」

私の左傍から、鼻にかかった聞き慣れた声がした。

「わっ。里田さん。」
「岡井ちゃん。久しぶり。」
「わー。久しぶりですー。ほんと久しぶりですねー。」

里田さんは私の左肩に手を置いて、反転し、吉澤さんたちの元へ歩み寄る。
またコーヒー捨てられない・・・。

「出た。田中夫人。」
「ちょっとよっすぃいい加減そのあだ名やめてくれるー?」
「おもしろいんだもん。」
「あれSATOYAMAじゃなかったかー。メイキングだったんだ。」
「確かにあの岡井ちゃんは必死だったね。3回くらい巻戻して見ちゃった。」
「好きだねー。まいちん。ハロオタ。YOUTUBE見すぎ。」
「でも旦那に隠れてYOUTUBE見てんだよねー。さすがにがっつきすぎかと思って。」
「うん。それがいいよまいちゃん。」

この3人が話始めると会話が止まらないなー。
っていうかコーヒー捨てたい。

「あのー。そんなにがっついてましたか。私。」
「「え?うん。」」

里田さんと石川さんが即答。吉澤さんは私が手に持っているコーヒーをチラっと見て私の目を見た。

「もうやっちゃえば。夏焼と。」



なんですてー!!!!!!



21 :みやびちゃんってば可愛いなー、もうっ! :2012/08/30(木) 15:30
両手で持ち直したコーヒーがカタカタと揺れる。

「あは。岡井ちゃん顔赤いよ。」
「よっすぃまたテキトーにそういうこと言うねぇほんとに。梨華ちゃんも散々被害にあったでしょ。」
「うん。もう慣れた。テキトーだもん。ほんと。」
「まあ、夏焼人気だからねー。あの顔だし。スター性バッチリ。私に似ている。」
「ほほー。あんだけ可愛くて王子的役割も似合いそうだよね。確かに。」
「まいちゃんも考え方一緒じゃない。」
「でも・・・でも、みやびちゃんは私なんて眼中に無いし・・・」

コーヒーカップを握りしめてモジモジする。

「「「あー・・・まあね。」」」

揃ってるー。


「なんか夏焼ってさ。みやびちゃんみやびちゃんって追いかけてくるタイプを好きにならなそうじゃない?
「ガーン、じゃあ私完全にダメじゃないですか。」
「だからそうだって言ってんじゃんかよ。早くコーヒー捨ててこい。」
「ちょっとよっすぃ。言い過ぎ。千聖が泣きそうじゃない。」

しかも吉澤さんが入れたコーヒーなのに。

「あ、じゃあ私一口もらっちゃおっかな。」
「えっ。でもこれは・・・。」
両手で握っていたカップを上から里田さんが取り上げる。
めっちゃ苦いんですよ、石川さんだって・・・。石川さん仏像みたいな顔で見てる。


「そしたらさー。誰が似合うkugisugs!!ごふぉ!!!!」
「うわ。まいちんきったね。飛び散ったし。」
「なにこれ!!まず!!」
「だから早く捨ててきてよー千聖。」


ほんとにこの人たちは・・・


22 :みやびちゃんってば可愛いなー、もうっ! :2012/08/30(木) 15:58

「って、ていうかー。そんなに言うならみやびちゃんが誰と合うか教えてくださいよー」
「YOUTUBEではね。よく菅谷とか嗣永とセットにされてること多いよ。」
里田さんほんとに好きだなーYOUTUBE。なんて検索してんだろ。

「でも菅谷ってー。みやっ。みやっ。ってタイプでしょ?」
ちょっと追いかける風に両肘を曲げて顔の前で両手を左右に振る石川さん。似ていない。
吉澤さんはデスクやパソコンに飛んだコーヒーをティッシュで拭きながら言葉を続けた。

「んー。だから夏焼と同等の清水とか須藤とか。ちょっと小馬鹿にされてるけど実は手の上で回してる嗣永とか。」
「あれ。徳永は?」
口の周りのコーヒーを手で拭いながら話す里田さん。汚いですよ。夫人が。
それを見た吉澤さんが眉間に皺を寄せて里田さんにティッシュ箱を手渡す。

「徳永?あー・・・なんか・・・元気って感じだよね。」
「どういうことですか?」
「よっすぃの想像の中には無いってこと。」
「熊井ちゃんは?」
「あー、熊井ちゃんはー・・・背高いよね。」
「まんまじゃないですか?」
「よっすぃの想像の中には無いってこと。」

じゃあ雅ちゃんに似合うとかじゃなくて、ただの吉澤さんの主観じゃん。
その私の考えを察した里田さんが言葉を出した。
「だから言ったじゃん。テキトーだって。」

ほんとだ。

「嗣永だったらー。一見、嗣永が攻めそうなんだけどー。一回しちゃうとハマって逆に襲っちゃうみたいな」
「ちょ、やめてくださいよ吉澤さん!!そんな風に雅ちゃんを見ないで!!」
「大丈夫、岡井ちゃん。テキトーなの。全部テキトーなの。」
「照れ屋だからね。後ろから攻めたいんだろうなー。」

そ、そんな・・・みやびちゃんがももちゃんとそんな・・・

カタカタカタ・・・再びコーヒーが揺れ始める。

「須藤の場合はねー。完全に夏焼が上だね。誘うのも夏焼。撮影中とかにコソって耳打ちすんだよ。」
「想像できるけどなんて?」
「今日・・・うち来ない?ふっ・・・」
「息吹きかけるわけか。よっすぃホント頭の中成長しないよねー。おもしろい人だよほんとに。」
「うわー!!!もうやめてーーーーー!!!!!」

みやびちゃんが!!あのみやびちゃんがそんなことするわけないって!!
もうやめてくださいよしざわさん!!!!

「ちょ、千聖落ち着いて!!!」
「だってそんなみやびちゃんがっ!!可愛いみやびちゃんがそんなエロっ。っえろ。」
「岡井ちゃん、岡井ちゃん。コーヒー溢してる。溢れてるよ。」
「よっすぃが変なこと言うからじゃん!!」

だってーーーーーー!!!!


23 :みやびちゃんってば可愛いなー、もうっ! :2012/08/30(木) 16:07

「おはようございまぁーす」

ドアから入って来たのはももちゃん・・・と、みやびちゃん!!!

「おはようござ・・・あれ、もも。太った?」
「えっ。うそ。ほんと?」
「ウエストが・・・」

みやびちゃんが・・・後ろから・・・ももちゃんの腰を・・・

「おはようございまーす」

茉麻!!!

「あれ、どうしたの二人。」
「ももがね・・・激太り。」
「ちょっとー!!なにこしょこしょ言ってんのよー!!」

みやびちゃんが・・・茉麻に・・・耳打ち・・・


「岡井ちゃん?」
「どした岡井ちゃん。」
「大丈夫?千聖。」

みやびちゃんは・・・みやびちゃんはそんな人じゃ・・・









「わーー!!千聖が鼻からコーヒー流して倒れた!!!!」
「よっすぃ!ティッシュ!ティッシュ!」
「エロいなーこいつ。」




おわし。
24 :名無飼育さん :2012/08/30(木) 23:41
タイトルから吹いたwwwwwwww
内容も、さらっとボケが入ってて笑えた。
OGと絡む岡井ちゃんが新鮮だな。
25 :名無飼育さん :2012/08/30(木) 23:43
タイトルから吹いたwwwwwwww
内容も、さらっとボケが入ってて笑えた。
OGと絡む岡井ちゃんが新鮮だな。

次作を読みたい。
26 :おるぷち :2012/08/31(金) 19:41
うぉ。
めっちゃ面白い。
岡井ちゃんこそ可愛いなあ。
27 :You&I :2012/09/03(月) 17:04
川沿いの土手道を舞美は、千奈美の横顔をたまに、ちらりと窺いながら歩いていた。
千奈美から電話があった。「会えないかな?」と言われて二つ返事で承諾した。家に帰ったばかりだったし、あと一時間もすれば日付が変わるという時間だったけれど、相手が千奈美ならばそんなものは関係が無かった。無二の親友が、自分に会いたいと言うのだ。それに、電話での千奈美の声は、普段の明るさとはかけ離れていたから、舞美のほうが彼女に会いたくなった。

「夜は大分涼しくなったよね。もう、夏も終わりかなー」
沈黙したままでいることをやめたくて、声をかける。猛暑だ、真夏日だと騒いでいた天気予報が、晩はいくらかしのぎやすくなってきた、と路線変更をしだしたのを今朝、テレビで見た。千奈美が、何か話したいことがあるのだろうとは分かる。それは言い出しにくいことなのだろうとも分かる。だからと言って、こちらまで黙っているわけにもいかない。
28 :You&I :2012/09/03(月) 17:11
「ねぇ、ちぃ。昼間はさあ、まだまだ日焼けしちゃうくらい、日差しも強. いし、汗ダラダラになるしで、めっちゃ暑いんだけど、今はそうでもなくない?」
隣を歩く千奈美は、上はノースリーブ、下はショートパンツを着ていて、柄や色使いに気を遣っていることが見受けられるコーディネートだった。
「ほんっとーに、日焼けとか勘弁してほしい」手をグーに握りしめて、顔は正面を向いたまま千奈美は言った。
「気にしてるもんね、ちぃ」
「うん。焼けたくない」
千奈美が話題に乗ってくれたことに、安堵する。
夜遅くだから、川近くの住宅には明かりがほとんど点いていない。この土手道も、舞美たちの他に姿は無かった。街路灯に照らされて、川面が陰影を持って一方向に進んでいくのを見て、川が流れているのだな、と分かる。それくらい、静かな夜だった。

「…ほんっとーに、勘弁してほしい」
「そんなに焼けたくないんだ」
「違うの」

茶化した風に言った舞美に対して、彼女の返事はとても硬い口調だったから、ああ、話が始まるのだな、と思った。次の街路灯まで、暗がりの中を歩く。

「あのね、千奈美ね。……別れたんだ」
「…え?」

足が止まる。千奈美は止まらない。急ぎ足になって隣に追い付くと千奈美は言葉を続けた。「今日二人で遊んだのね。それはもう、いつも通りって感じに馬鹿みたいなことして、笑って、楽しんでた」「…うん」「朝から待ち合わせして、前から一緒に行こうねって約束してた所に行って」

力の入った拳が震える。その振動が口元に伝わったかのように声が震え出す。
29 :You&I :2012/09/03(月) 17:14
「ちぃ………」千奈美の背中をさすって、手を取って川原へと導く。草の上に腰を下ろして、ただただ肩を抱き寄せた。自身に伝わる振動に心を痛める。どうして、こんな良い子を振るのかな。舞美は、溜息を吐く。憤慨したと同時に、このセリフに聞き覚えがあるな、と思って、それから、思い出した。

他ならぬ千奈美に言われたのだ。3、4年くらい前に舞美が初めて失恋をした時に千奈美が、言ったのだった。

それはもうすごい怒りようだった。腰に手をあて、眉間に刻み込まんばかりにシワを寄せ、いつもの5倍くらい大きな声を張り上げて、「どうして、こんな良い子を振るのかなあ!!」と放課後の教室で叫んだ。周りに人はいなかったけれど、もしかすると、聞いた人があったかもしれない。それほどに響いた声だったから。
30 :You&I :2012/09/03(月) 17:19
あの時を思い出すと、頬が緩んでくる。振られた自分よりも相手に怒りを露わにして、不機嫌になった彼女が可笑しくて。振られた自分なのに、愛されているんだなと、自信を持てたことが嬉しくて。

「千奈美」
本名で彼女を呼ぶ。
「……なに?」
「私、千奈美のこと好きだよ」
「あはは。知ってるよー、今更じゃん。千奈美も舞美のこと好きだよ」

赤い目をこちらに向けて、でも、笑いながら彼女は言った。川の水が右から左へと、どこが流れの始まりとも分からぬままにゆるやかに過ぎ去っていく。
すると、おもむろに舞美は立ち上がり、口元に手を当てて、息をお腹いっぱい吸い込んだ。

「私は、千奈美のことが大好きだああぁぁぁ〜〜〜〜っ!!!」
有らん限りの思いを込めて、叫んだ。
「ちょっと! 舞美!?」
「優しくて、面白くて、友達思いの千奈美が大好きだああぁぁぁ!!」
31 :You&I :2012/09/03(月) 17:23
千奈美が驚いているのに構わずにもっと大声を出してやると、「もう、やめてってば!」立ち上がった千奈美に思い切り口を押さえつけられる。
「まはっははら、はらひて」千奈美の長い指が、口のついでに鼻まで塞いでしまったために、息が出来なくて、必死の思いで手を離してくれと頼む。「ああ、ごめんごめん」舞美はスーハースーハーと何度か呼吸を整えて人心地をつく。
ガラッと窓を開ける音がして、今の聞こえたのかも、と思って初めて、夜分にあるまじき叫び声を上げてしまったことに、周辺の皆さんへの申し訳なさを覚えた。

「あはは。頭で考えるより先に行動しちゃった」
「もうびっくりさせないでよ〜」
歯を見せて、眉を下げて笑う千奈美。
「いつものちぃだ」

舞美は満面の笑みを浮かべて、千奈美に抱きついた。予測の出来ない行動を繰り出す舞美に対し「なに、意味分かんないよ」と言いつつも抵抗をすることはせずに、少しだけ体重をかけてくる。舞美は細い体を支えながら思う。

次があるよ、とかもっと良い人いるじゃん、とかそんなことは言わない。あの日の放課後からの幾数年で、舞美はいくつかの恋をした。そして今は、今のところは、思いを寄せる人もいない。流れ行く川のごとく、どこが終わりで、そんなものがいつやって来るのかなんて、誰にも分からない。
32 :You&I :2012/09/03(月) 17:26
「あー、やっぱ舞美と会って良かったわ」

体を離して、背伸びをし、体を反らしながら千奈美が言った。くっついていたことが照れ臭いから、誤魔化すような動作をしているのだろう。その声に嬉しそうな色を見出すのは自惚れではないはずだ。

「千奈美さ、よく分かんないんだけど今日の内にすっきりしときたかったんだよね。なんて言うの、気持ちの整理をつけたかったっていうか。表現合ってんのか分かんないけど」

引きずりたくない、といった所かもしれない。今日の出来事を今日の間に完結させて、明日はすっきり目覚めたかったと。千奈美らしいな、と舞美は微笑む。微笑むついでに教えてみる。
「とっくに日付変わってるけどね」「マジ!? ごめんね。遅くに連れ出したりして。本当今更なんだけど会ってくれてありがとう舞美。助かったよ、ありがとう」お礼を繰り返す彼女に、ううん、と首を横に振る。

今日が昨日になって、また今日になってと時を刻むことも一つの区切りを生み出すけれど、針が12時を指したからといって、気持ちがゼロを示すかどうか。
33 :You&I :2012/09/03(月) 17:31
気付くと、二人して川原に腰を落ち着けて、川を眺めていた。はじまりやおわりがどこにあるのかは誰にも分からないから、自分の思うがままにに決めてしまえばいいのだ。今からはさっきとは違う自分であることを。

「あ、月が映ってる」
「どこ?」

川面に指を向けて、月の位置を千奈美に示してやる。「本当だ!」と子供のようにはしゃぐ彼女は実に可愛いかった。
さっきまで月は映っていなかったから、曇ってたんだな、とふと空を見上げると「わあっ」「なに?」「ちぃ、上見て、上」言ったとおりに千奈美が顔を空に向ける。

「わっ、すっごい」

遠く黒く広がる大空に、月を始め、大きく輝くもの、小さく瞬くものなど、とても数え切れないほどの星が光を放って二人を照らしていた。あるものは、誰にも負けぬと意気込んでいるかのように煌めきを見せつけ、あるものは、はるか遠くからここを目指してきたように真っ直ぐな輝きを飛ばしていた。

「すごいねぇ〜。めちゃくちゃきれいだね」
瞳に星空を映しこんで、千奈美が感激した面持ちで言う。
「私、こんなにたくさんの星初めて見た」
「だよね。千奈美も生まれて初めてっていうくらいに、これだけの星見たよ」
「そうだよね」

空を眺め渡していると、知っている星座を発見した。アルタイルと、ベガ、そしてデネブの3つの星が夜空に描くトライアングル。

34 :You&I :2012/09/03(月) 17:35
「あれが、夏の大三角だよ。ちぃ」
「夏のダイサンカク? どれ?」
さっきみたいに、今度は、空を指差す。

「ほら、あのめっちゃ光ってるやつと、その右下のとあと、ほらあれ」
「ああー、分かった気がする」

木琴のような軽やかに跳ねた声で応える。長年の友人歴から、こりゃ、分かってないな、と判断を下すが、たいして落胆も無い。千奈美だから、別にいっか、と思う。

「あー、今、舞美と一緒に星見られて幸せだなって思う」空を見上げながらそう言って、千奈美は体操座りをした体を揺らす。言われた舞美は相好を崩す。そして、テレビから仕入れた知識を披露する。

「織姫と彦星ともう一個の星で三角形を作ってるんだよ」
「へえ。もう一個ってなんなの」
「忘れちゃった」
「まあ、教えられても千奈美覚えらんないから、いいや」

この調子なら、今日の悲しみもすぐに忘れられそうな雰囲気だと、幾分失礼なことを舞美は思う。「夏の……、何だっけ」「大三角」それだ、と千奈美は手を打ち鳴らす。
思いの外、パンっといい音が響いて「うるさいよ、ちぃ」と注意すると「いやいやあなたに言われたくないんですけど」と肩を小突かれる。それもそうだね、と言って、そうだよ、と言われて顔を向き合わせていたら、何だかお腹の底がもぞもぞとこそばゆくなって、それは千奈美も同じみたいで、お互い肩を震わせてながらも、声を出すのを堪えていたが、どちらかが耐え切れずに「はっ」吹き出すと、もうダメだった。
あはは、あははは、と二人して笑い転げる。面白いことなんて言っていないのに、笑いが止まらなくて、腹筋が痛くなるくらいに笑った。そうしているうちにごろん、と草の上に仰向けになっていた。
35 :You&I :2012/09/03(月) 17:38
再び沈黙が訪れたけれど、土手道を歩いているときとは雰囲気が違っていた。いつもの空気だった。穏やかな心持ちで、夜空を見つめる。今まで見たことないほどに無数の星が列とも、群れともつかぬ団体となって光っている。

一つの星の周りに、たくさんの星があるから、どれをその星の隣に位置していると言い切っていいのか分からない。夏の大三角を説明するのにも苦労した。いつか。舞美は考える。お互いの横に誰かが寄り添うときがくるだろう。誰かが千奈美の隣に。そのとき自分はどうしているのだろうか、と思い、首を右に倒すと彼女の横顔が目に入った。

「寝てるし……」舞美を呼び出した彼女は、口を開けて、すやすやと眠っていた。風に、前髪を揺らすその寝顔に目を細めながら、首を戻して、空を眺める。きらきらと光が降り注いでくる。これからも、千奈美と親友でいられたら良いな、と思った。また恋人が出来ても、近くにいられる存在でありたいな。寝返りをうち、千奈美の横顔を眺めていたら、そんな風に思えてきた。

そうしていると、星の明かりが何だか温かく感じられて、舞美は、いつ千奈美を起こそうかな、と考えながら、ゆっくりと瞼を下ろしたのだった。
36 :You&I :2012/09/03(月) 17:40
終わり


タイトルは、「友愛」の意味も込めています。
37 :名無飼育さん :2012/09/04(火) 09:01
面白かった。文章が滑らかで読みやすく、落ち着いた雰囲気。
好きです。乙でした。
38 :名無飼育さん :2012/09/06(木) 07:03
やっぱりこの二人はカップルというより親友、相棒ですよね
この二人の関係性がとても良く表現出来ていると思います
おつでした
39 :Quiet Storm :2012/09/10(月) 14:59

「ん…はぁっ」

窓を叩く激しい雨の音、不穏な風のうなりに混じる、舞美の湿った甘い声。
荒れ狂う外の世界と切り離されてまるで別世界の、うちの部屋。
舞美とうちの声、衣擦れの音だけがこの世界を作っている。

これから台風来るね、なんて朝の電話で話してたから今日はもう来ないもんだと思ってたのに。
買い出しにコンビニ行こうとドアを開けたら外に立ってた恋人に驚き(急に開いたドアに舞美も驚いてたけど)、どったの、と訊いたら、台風来る前に会いに来ちゃったとはにかんだ。

ああ、もう。
持ってたコンビニ袋ごと舞美の手を握りしめ、嬉しいよと耳元に囁いてキスをしてから手を繋いで部屋に入れた。うちがわざとキザにふるまうとアワアワしちゃう舞美はたったそれだけで既に真っ赤で、おみやげがとか冷蔵庫とか何か言ってるんだけど、超どうでもいいとか思って手から奪った袋をテーブルの上に置いてそのまま舞美を押し倒した。
40 :Quiet :2012/09/10(月) 15:01
カーテンを閉めなくても空の色そのままに薄暗いベッドの上で、白くぼぅっと浮かぶ舞美の肌に夢中で唇を寄せ、左手で強く抱き寄せる。
どこに触れても感じやすい舞美だけど、こーいう時に抱きしめられるのが一番好きだってうちは知ってる。

「あっ…みや、みや」

「舞美?好きだよ」

ガタガタと鳴る窓の音の合間に切なそうにうちの名前を読んでくれる可愛い唇に、キスをする。
舞美の声が一段と高くなったから、声ごと飲み込むみたいに深く深く口づけると、舞美も苦しそうに応えてくれる。
41 :Quiet :2012/09/10(月) 15:02
普段から笑顔で穏やかで天然でドジもするけど、常に周りに気を配って自分の役割とか振る舞いをコントロールしている舞美の、こんな姿を見るのがうちは好きだ。
本人には言ったことないけど。
テンパってるとこならよく見るけど、こんなふうに切羽つまったみたいにうちの名前を呼んだりなりふり構わず快楽に身をまかせたりするところなんて、いつもの舞美からは想像が出来ない。

うちの前では何の遠慮もせずに舞美が舞美でいられる。
すべてをうちにまかせてくれる。

なんて、自惚れもいいとこだけどたぶん本当のことだからしょうがない。
そんなこといちいち本人に確かめないけど、舞美の声が、姿が、表情が、いつでもうちにそう教えてくれる。
42 :Quiet :2012/09/10(月) 15:03
舞美の目を見つめて、右手を動かし続ける。
うちの視線に気づいた舞美が一瞬微笑んで、うちの肩を掴んでいた手を外した。
あ、寂しいと思ったら急にうちの頭を両手で掴んで自分の顔に引き寄せ、舞美はむちゃくちゃなキスをした。

愛おしくてしょうがなくなって、ていうか自分がもう限界で思わず、舞美やばい、とうちが言うと舞美は、いいよ、と言ってうちが一番感じるところに手を伸ばしたから、うちはみっともないくらいの声をあげて舞美より先に果ててしまった。
43 :Quiet Storm :2012/09/10(月) 15:04
「さっきの反則でしょ」

「だってみやがすごく気持ち良さそうだったから」

うちの髪を撫でてくれる舞美の腕の中で、ぶつぶつと文句を言ってみる。
ほんとは全然不満なんてないんだけど、今日はうちが先に舞美をって思ってたから悔しまぎれの照れ隠しとヒソカに嬉しいから憎まれ口を叩く。

「だって舞美、イってない」

「それがねえー、ちゃんとイったんですよーみやの可愛い声聴いてたら」

「バカ」

心底嬉しそうな声で言う舞美の背中を軽く叩く。
もうほんとバカ。
ていうかほんと好き。
44 :Quiet Storm :2012/09/10(月) 15:06
気づくといつの間にか外は明るくなり、風の音も止んでいた。
嵐はもうすっかり過ぎ去ってしまったようだった。

「外行こっか」

舞美が言うから、さっき放置したままのおみやげたちを冷蔵庫にしまい(今食べようよと文句を言う舞美の声は無視した。舞美が帰ってから1人で食べるんだ)、2人で服を着て外に出る。

台風一過のいつもの道は、木の枝とか看板とか何かの紙切れとかその他もろもろでとにかくめちゃくちゃで、舞美と一緒に歩いていても初めて来た道のように見えた。

商店街に差し掛かるとまだ誰も人が歩いていなくって不思議な感じ。
普段ははあんなににぎやかなのに、今歩いているのは舞美とうちの2人だけ。
シャッターは全部閉まってるし、音楽も何も鳴っていない。
夜なら当たり前の景色なんだけど、こんな明るい空の下でそこらじゅうにゴミとか転がってて壁には葉っぱとか張りつきまくってるし、とにかく異様な光景。
45 :Quiet Storm :2012/09/10(月) 15:07
「すごいね。何か世紀末とかってこんな感じなのかな」

「この世にうちら2人きりみたいなノリだよね」

舞美も同じような感想なのが嬉しい。
手をぎゅっと握ったら舞美が、さっきもそう思ってたよ、とうちの顔をのぞき込んで笑う。

「どゆこと?」

「さっきみやの部屋にいた時も外はあんな感じだし、みやとあたしだけがこの世にいるみたいな気がしてた。で、そうなってもいいやって思ってたらみやに抱きしめられてさ」

不覚にも言葉に詰まり、しかもにやにやしてしまった。
いいね舞美、いいよ。
舞美のそんなとこも好きだよ。

と、いつものうちに戻ってそれを声に出して本人に言ったら、あたしも、とほっぺにキスされた。
46 :Quiet Storm :2012/09/10(月) 15:08
この世にうちら2人だけだろうがそうじゃなかろうが、うちは舞美とこうやってずっと歩いてくのがいいな。

なんて思ってたら急激におなかが空いたので、いつものとこでご飯を食べることにした。
そろそろ人も出歩き始めたみたいし、どの店もまたシャッターを上げ始めるだろう。

毎日笑う、毎日遊ぶ、毎日食べる、毎日眠る。
そんなうちの日常には舞美がいる。

幸せすぎてどうにかなりそう、と思ってたら舞美が何かにつまづいたので転びそうになったので慌てて抱き寄せる。

「ちょっと頼むよ舞美」

「へへ、転んでもみやがいるからいいよ」

不覚にもまたにやけてしまった。
47 :Quiet Storm :2012/09/10(月) 15:09
顔をあげると目的地では今まさにおじさんがシャッターを開けようとしているところで、明らかに舞美の意識がそこ一直線でうちのことなんて今は意識の欠片にもないことがわかったので今度は何も言わないことにした。

舞美と手をつないだまま顔だけふと振り返ると、雨に濡れた道路がきらきらと輝いていて、今日みたいな日をずっと忘れたくないし忘れないだろうな、となぜだか思った。

舞美が忘れたとしても、うちはたぶん忘れない。

この世にはうちらだけじゃないし、たとえうちらだけだったとしてもこうやって舞美と2人で生きていくんだ。

改めてそう思ったことで何となく、うちらの未来がほんの少しだけ見えたような気がした…まあ、気がしただけだけどね。
48 :Quiet Storm :2012/09/10(月) 15:11
うちのおなかがぐぅと鳴る。
舞美が笑ってうちの手を引き、歩くスピードを上げる。

何の心配もしないでこうやって手を引かれて歩いて、今日は何を食べようかなあとかぼんやり考えるのもまた幸せなことだな、と思った。
とあとで舞美に言ってみようと思いながらうちらは一緒にドアを開け、漂ういい匂いに2人して歓声をあげたのだった。


☆おしまい☆
49 :Quiet さくしゃ :2012/09/10(月) 15:14
あら…偶然910の日に書いてしかも投稿するとかね、しかも今気づいたとかね。
すっかり℃ヲタです。
タイトルはスモーキーロビンソン。
50 :せきらんうんとかみなり :2012/09/11(火) 21:37

今夜は雨が降るでしょう。洪水に気をつけてください。
降水量がうんたらと気象予報士のおじさんが淡々と説明するのを今朝ニュースでみた。
雨が降るのは9時以降。部活がない私には関係がない。
そうやって他人事にした結果傘を持ってこないという選択をして、呑気に青い空を見上げて登校した。
お昼ごはんを花音と食べながら窓の外を見たときには、遥か向こうにもくもくと積乱雲が名前の通り積もっていた。
「花音、あれ。」
「やば。でも夜だよね?雨は。」
「っていってたよね。憂佳傘ないや。」
「ぱっぱと帰れば大丈夫じゃない?」
花音はお気に入りのお母さん手作り卵焼きを頬張って、空から目を離して、おいひいと目を細めた。
ハムスターかなにかなのかと思うような頬が可愛い。

5時間目の世界史の時間ずっと空を見ていた。
雲ができていく過程がありありとわかる。
濃く白い雲。触ったら弾力がありそうだなあなんて考えたし、
小さい頃夏祭りで買ったわたあめの口解けを思い出した。
花音と少しのお小遣い持って、毎年同じ神社に行って、
屋台の香りが漂う人ごみの中をはぐれないように花音の手を引いて歩いた。
まだランドセルに背負われてるような時の頃、
花音は本当に小さくて手を離したらあっという間に人に飲まれてしまいそうだった。
今はさすがにそんなことはない。
でも、身長差は変わらず、花音は小さい。
今年も行きたいな。浴衣きて、花音はじゃがバター食べるんだろうな。
しょうがないなあって演技をしながら一口くれるのが待ち遠しい。
切ったばかりのショートカットのまあるくて小さい頭と、自分の頭が並んで花火を見上げている姿を想像していた。

51 :せきらんうんとかみなり :2012/09/11(火) 21:38

せきらんうん、かあ。

夏の午後に見られる雲はぐんぐんかさを増してゆく。
あんな雲でも最初は小さいのだろうか。
上昇気流に運ばれて積み重なる。
もくもくもこもこ。
密度を高めながら大きくなるのは、私の気持ちと似ているなあ、なんて詩的なことを考えながらシャーペンを回した。
いつからかなのかわからない。
花音とはちっちゃな頃からずっと一緒だからいつから特別に思うようになったかは不確かだ。
気がついたのは中学の時、花音を好きな男子がいて告白して付き合うとなった、あの時。
花音がはずかしそうに、照れた顔で相談してきた。
くりくりの目は三日月に、口角がくるっと上がって、頬は赤い。
白いほっぺたに浮き上がってるそばかすが隠れてしまいそうだ。
その場では堪えて、家に帰ってすぐ普段は飲まない炭酸を一気飲みしたらむせて涙目になったのを覚えてる。
パパが良い飲みっぷりとビールを飲みながら笑ってたけど、私はちっとも笑えなかった。
もやもや曇り空の心。
あの日に生まれた雲は日々色を変え形を変え、真っ黒い塊になることもあれば、たまにはピーカンの快晴になってどこかに旅に出ることもある。
ただ、確かに日に日に雲は大きくなり、雨となって花音に落ちていきそうになる。
早くしないとまた誰かにとられちゃうよ。
あの小さい肩が抱かれるのも、夏祭りの約束を奪われるのも、
それ以上のことも、やだ。
私のものにしたいとは思わないけど他の誰かに触れられるのは許せない。
私が一番近くにいるのが当たり前なんだ。
52 :さきらんうんとかみなり :2012/09/11(火) 21:38

世界史が終わり、最後の体育の授業が終わる頃にはこれはまずい、といわんばかりの空の色だった。
灰色の雲があっという間に近づいて青色をどこかに隠してしまって、ゴロゴロザアザアと唸る音が窓を閉めていても聞こえる。
クラスの誰もが先生の話そっちのけで帰宅の手段を考えたり話し合ったりするから
先生も半ば諦めて、気をつけて帰れよと、それだけ伝えた。
玄関で上履きから外靴に履き替えたものの、みんな外を見て立ち尽くしている。
私も、花音もそれに倣った。
「どうしよっかな。傘ないし。」
「ママに連絡してみる。」
花音はスマホを出してお母さんに電話をかけ始めた。
あ、ケース変わってる、と指差すと、一昨日替えたって自慢げに口角を上げる。
お気に入りなのかとても嬉しそうなのが伝わってくる。
そんなやりとりをしている間にただいま電話に出られませんと音声が聞こえて花音は電話を切った。
「出ないよー。」
「ゆうかんちも今日パパもママも仕事だからたぶん無理。」
「どうしよっか。」
二人して空を眺めてもやむ気配は無いし、天気予報が間違っていなければ一晩中雨でしばらくはやまないだろう。
早く降りだしているとは言えいつやむのか。
内心二人とも、待っていてもしょうがないと思っていたみたい。
黙ってかばんの中を整理して臨戦態勢に入る。
花音のお気に入りの傘は花音サイズだから肩がはみ出るのだけど、
これだけ降っていればはみ出てるかそうで無いかなんてたいした問題ではないのだ。
せーのっせーで、雨の中に傘一つ転げるように飛び出したものの、雷とか、歩調合わせるのだとか、おっかなびっくり自然にゆっくりになる。
あっという間に制服の肩口に落ちた水のあとはそれ以上の水滴にかき消されて肩が冷たい。
私の方が背が高いから私が傘を持ち花音が濡れないように傾けた。
「憂佳濡れちゃうよ。」
小さな手が傘を真ん中に戻そうとする。
いいのに。花音のことは憂佳が守りたいのに。
「いいよ。花音が濡れちゃう。」
花音の肩ももうびっしょりだった。半袖から伸びる腕だって、ぶつからないように外側に掛けた鞄も。
「早く帰らせてくれればよかったのにね。」
「ほんと。制服乾くかな。」
上はいいけどスカートは大変だからあまり汚したくない、なんて望みは空に笑われたのか、一瞬閃光が走って少ししてから地響きみたいな轟音が耳をつんざく。
「きゃっ。」
「わっ。」
花音が跳んで身を寄せる。ただでさえ小さいのにもっと小さくなる。
うさぎが小屋の隅に縮こまっているみたいに。
肩が制服越しに触れるのをいつもならそんなに気にならないのに、今日はなんでか少し違う。なんでだろ。
雨が降ると空気が濃くなる。
「今近かったよ。こわーい。」
「近いね。」
傘をさす腕に腕を回してくっついてくる。
どっちに落ちたのかきょろきょろあたりを見回す仕草がより小動物らしくて可愛い。
意外と怖がりな花音。夜寝る前に変な想像して怖くなるって言ってたことを思い出す。
幼い頃、お化けが苦手な私をさんざんからかって、
カーテンに包まっているのを見て満足げに笑っていた。
53 :せきらんうんとかみなり :2012/09/11(火) 21:39

「傘さしてたら落ちるかなぁ。」
少しのイタズラ心で呟いた言葉がほんとに怖かったのか、やめてよ、って悲鳴をあげる。
「冗談だよ。」
「ほんとやめてそういうの。」
呆れたみたいな口調だけど納得してないのか、傘閉じようか、と言い始める。
そんなことしたらびっしょびしょになっちゃう。
「大丈夫だよ。花音の家もうすぐだし、濡れると風邪ひくから早く帰ろう?」
なるべく優しい声で言うと無言のまま頷いた。
弱気な口元が愛しい、と思う間に、もう一度雷が落ちる。それもかなり近いところで。
後ろから殴られたみたいな衝撃に一瞬何も考えられなくなって、
気がついたら花音は私の腕の中に収まっていた。
「やだやだこわい。無理。」
右肩だけ濡れていたのに、私がびっくりして傘を落としてしまったからみるみる間に乾いていた部分が雨を吸っていく。
花音の前髪が水でまとまり顔にひっついてる。
傘を拾いたいのに花音は腕の中でちっちゃくなってるから離すわけにもいかない。
「花音、大丈夫だよ。」
「だって今近かった。」
ぽんぽん、背中を叩くと水を吸ったシャツが肌に張り付いて体温も吸ってしまう。
雨は冷たいのに、花音は温かい。
独特の温度がシャツ越しに伝わると、急に耳のあたりだとか首の白さが気になって、
自分の中にも妙な色が含まれた湿気が入ってくるみたいな、変な感じになった。
こういう気持ちには時々なるけど、今日みたいに、こんな花音を腕の中に収めてることはなかったからどうともならなかった。
せきらんうんとかみなりのせい。
花音。呼ぶと目が少し赤くて、鼻も染まりそうな気配。
私より背が低いから少し屈むだけでずっと望んでいた距離は埋まった。
うるさいくらいの雨の音が一瞬途絶えた。夏の日。
54 :せきらんうんとかみなり :2012/09/11(火) 21:42

終わりだにょん
55 :名無飼育さん :2012/09/14(金) 06:42
可愛い。とても読み易くて、一瞬で引き込まれました。
ゆうかりんは永遠。
56 :名無飼育さん :2012/09/23(日) 19:54
初めて書かせていただきます。
マナー違反があったら申し訳ありません。

みやももで、夏っぽいものです。

57 :同じ体温 :2012/09/23(日) 19:55
「みやー」

「...なに」

「みーやー」

「.....なに」


不機嫌な雅の声。
それでも桃子は気にしないでしつこく雅の名前を呼ぶ。

「みーやんってばー」

「だからなに!!」

とうとう大きな声をだされてしまった

「みーやんあつい」

「だったら離れればいいじゃん!」

扇風機の前。

扇風機の首をまわさずに涼しさと風を独占してる雅に、桃子は後ろからべったりと抱きついている。
ただでさえ暑いのに雅にひっついているから暑さは倍だ。

それでも桃子は雅にくっついて離れない。

58 :同じ体温 :2012/09/23(日) 20:00

「とかいってー
みや嫌がってないじゃーん」

そして雅もそんな桃子を振り払おうとはしていなかった。

「ちがうし!
暑くて動けないだけだし...」

少し慌てながら言い返した雅の様子に、桃子は自分を振り払わないほんとの理由を見抜いていた。

素直じゃない恋人。

桃子はそんなところも含めて雅のことが好きだった。

しかしそんなところをからかうのはもっと好きなことだった。

「えーそうなのー?
なんか顔赤いけど...」

「あ、暑いから!!」

「へー」

にやりと笑って桃子は言葉を続ける。

「...ほんと溶けそうだよねー」
「だったら離れてって言ってんじゃん!」

「...じゃあ離れる」

素っ気ない雅の言葉に、桃子はわざと拗ねたような声をだし、
雅の首にまわしていた腕を離す。
そのまま雅の体から離れようとすると雅に腕をつかまれた。

「...エアコン。
つけたら涼しくなるんじゃない」
ぶっきらぼうな言葉とつかまれた腕。

思った通りの反応だったが、
その威力は予想以上で、桃子は雅に対しての愛おしさが溢れるのを感じた。

「みーやん!!」

そして勢い良く雅の体を抱きしめる。

「もう!だから暑苦しいってば!」

さらに赤くなった頬は、
雅がいった通り、暑さのせいにしてあげた。

さっきよりもあがった体温。

溶けるように暑いが、
雅となら溶けてもいいなと桃子は思った。

2人が同じ熱を共有していることが嬉しかった。
59 :名無飼育さん :2012/09/23(日) 20:00
end
60 : :2012/09/25(火) 21:05

「もっと楽にしたら?」

雅の部屋のソファの上、
無意識に体を縮こませていたらそう声をかけられた。

桃子が雅の部屋に通うようになってから暫くたつが、桃子と二人きりの時、いつもとは違う雅の周りに漂う雰囲気には、何故だか威圧されてしまう。


「うちの部屋じゃん。
なにいまさら緊張してんの」

そう言う雅は先程からずっと、やすりで自分の爪を短く整えている。


爪は切るより削ったほうがいいらしい。
なんでも、爪は切ると痛むとか..

爪を噛んでしまうような癖がある自分と、些細なことでも気にかけている雅とではこういうところで、
俗に言う「女子力」というのもの差がでている。

しかし、おしゃれ番丁などとよばれる雅が、あまりごてごてとしたネイルをしないのは、きっと桃子の存在があるからだろう。

61 : :2012/09/25(火) 21:08

さっきから会話らしい会話のない静かな部屋には、
さりさり、と雅が爪を削る音だけが小さく聞こえている。

雅はいつも桃子の前で爪を整える。
まるで見せつけるように...

意図的であろうとなかろうと、
そんな風に目の前で雅の指をちらつかせられると嫌でも意識してしまう。

これからあの指が自分の身体に触れるのか...

そう考えるだけで、じりじりと自分の熱があがってくるのを感じた。
62 : :2012/09/25(火) 21:13

緊張、というより
期待しているのだろう。

だからこそ桃子は、雅が爪を整えるこの時間に、いつまでたっても慣れない。

おあずけをくらうようなこの時間に、知らぬ間に焦らされている...

「ん、できた」

自分の顔の前に手をかざし、
手入れし終わった爪を確認する雅。

「これでもものこと傷つけないね」

そう言って意味深に微笑む雅に、おもわず喉が鳴ってしまった。

「ベッド、いこっか」

待ち望んだこの瞬間。

桃子は雅の手をとり、返事のかわりに
綺麗に整えられた雅の爪にキスを落とした。


63 : :2012/09/25(火) 21:14

end

64 :名無飼育さん :2012/09/29(土) 06:33
みやもも大好きです!
今後も楽しみにしています!
65 :大人になるって難しい :2012/09/29(土) 22:06
大人になるって難しい
66 :大人になるって難しい :2012/09/29(土) 22:07
電車から降りると、自然と周囲と同じように、自分も人並みに飲まれていく。
今日はオフの日で、時間に大分余裕があるので、プラットホームをのんびり歩いて行った。
ふと自分の前を歩いている女性に目が付く。
黒いサングラスを掛けている彼女はホームをいそいそと駆けて行こうとした。
女性に走って追いつくと腕を回して軽くヘッドロックを掛ける。
そしてそのまま無理矢理引っ張って、あまり人気のなさそうな場所に連れ込む。
抵抗してじたばた身じろぎしようとする体を力を加えて抑えつけながら、サングラスを外させる。
するとよく見知った顔が現れた。

「あー、なんだやっぱり圭ちゃんか」
「なんだって何よ。随分含みのある言い方ね」
「別に何にも」
「何かあるでしょう?」
「何にもないってば。人を疑り過ぎじゃあないの」

圭ちゃんは「いや、そうなんだけどさあ」と言うが、あまり納得がいかなそうに苦笑していた。
目をぱちくりとさせる度に長いつけまつげが揺れる。

「圭ちゃんそのつけま邪魔そうだよ。外した方がいいんじゃない?」
「やだよ。大人っぽく見せたいからこれでいいの!」
「う、うーん……」

乙女心は極めて難解で繊細なのだと、改めて痛感した。
67 :大人になるって難しい :2012/09/29(土) 22:09
「それにね、最近本命ができちゃったからますます気合い入れないといけないっつーか」
「え?!マジで!誰誰?教えて」
「教えない。どうせまた梨華ちゃんと一緒に人を散々ネタにして遊ぶんでしょ」
「しないよ。そんなこと絶対」

まあたぶんするけどね、と続けると圭ちゃんはやっぱりねと言って深いため息をついた。
圭ちゃんが本気の恋愛かあ、と考えこんでいるうちについ吹きだしてしまいそうになり、口を押さえる。
でも、自分の周囲にも恋愛をして、結婚をして、家庭に入っている人間がいたから、それはさほど不思議なことにも思えなかった。
自分は一体これからどのような人生を歩んでいくのだろう。
ふとそのような考えが浮かび、しばし思いに耽ってみる。

「圭ちゃんはさあ、そのうち(その人と)結婚とか考えてるの?」
「へ?いきなりなによー。たぶんしないと思うよ、結婚」

驚いて、目を大きく見開く。

「え、だってさっき本命いるって言ったじゃん?」
「いるよ。いるけどさ、そういうんじゃないんだよ」
「都合のいい相手ってこと?」
「違う。違うよ」

ふいに構内をぴゅうと強い通り風が吹きぬける。
圭ちゃんは妙にキザったらしく、わざとらしく、風によって顔に垂れかかった前髪をかきあげた。
そしてらんばんびらん、しゅびだでぃんと意味不明なメロディーを口ずさむ。
その仕草が、今日はなんだかよくわからないけれど、格好よく見えたのだ。
ちょっぴり悔しかった。
68 :大人になるって難しい :2012/09/29(土) 22:09
おわり
69 :デザートデート :2012/10/09(火) 07:42
楽屋のドアを開けると全員が揃っていた。おはよう、とメンバーと挨拶を交わす。空いていた席に腰を下ろしながら、また自分が最後か、と桃子は思った。
「もも取材だったんでしょ。お疲れ。チロルチョコ食べる?」
「ありがとう、貰うね」
隣に座る千奈美から包みを受け取る。テーブルの上にはコンビニの袋が二つ載っている。一つはポッキーやスナック菓子で膨らんでおり、もう一つは入れていたものが無くなってしぼんでいた。そこに入っていたのはきっとプリンだ。千奈美の向かいで友理奈が美味しそうにプリンを食べている。
「くまいちょー、それ美味しい?」
「美味しいよ。なんてったって抹茶プリンだからね」
得意気に言ってみせる様子が子供っぽくて、桃子は相好を崩す。
「あ、そうだ。お茶も買ったんだけどね、オマケが付いてきたからももにあげる」
はい、と友理奈から手渡された小さなフィギュアを見て桃子は首を傾げた。黒い羽織りを着て、ランドセルを背負った少女。その頭のてっぺんは髪の毛がピョコンと立っている。
「ちょっと、くまいちょー。なにコレ」
「ん? フィギュアだよ。え、なんのって?」
聞けば人気のホラー映画の最新作に登場するゾンビなんだとか。ホラーと聞いただけで桃子は背中に冷たいものが通った気がして肩をすくめた。
「千奈美と熊井ちゃんね、その映画見に行くんだよ二人で」
フィギュアをポッキーで指し示して千奈美が言った。
「そうなんだ。ももホラーなんて絶対ムリ」
激しく首を横に振って怖さを振り払う。すると奥の席で漫画を読んでいた茉麻が顔を上げた。
70 :デザートデート :2012/10/09(火) 07:44
「ももち本当に怖がりだねー」
「茉麻が平気すぎなんだよー。ももはか弱い女の子だから怖いのがムリでもしょうがないの」
「あー、ももひどーい。まあがか弱くないみたいじゃん」
「あ、違うの茉麻ごめんね。謝るね。ゆ…」
「そういうの楽屋ではいらないかなー」

千奈美が遮る。桃子もそこまでこだわることでもないのでくって掛かることはしない。千奈美の言うとおり、楽屋であるし。
「映画と言ったらねえ、まあも佐紀ちゃんと梨沙子と一緒に映画見に行くんだよ」
桃子は茉麻の後ろの化粧台に目をやる。雅を挟んで右に佐紀、左に梨沙子が背中を見せて並んで座っている。三人は額を突き合わせてファッション誌を見ていた。ページをめくっては何か話しているのが鏡に映った表情から見て取れた。

「茉麻たちは何の映画見るの?」
「なんだっけ、タイトルが出てこないや。佐紀ちゃん映画のタイトルなんだったっけ?」
「え?なに茉麻」
71 :デザートデート :2012/10/09(火) 07:45
髪をかきあげながら振り返って、佐紀は聞き返す。随分と髪が伸びたな、と桃子は思った。梨沙子も話を耳にしたのか振り返る。
「まあ、あれだよ」
梨沙子が映画のタイトルを言った。桃子も聞いたことがあるものだった。あー、それそれ、と茉麻は右手を手招くように動かした。案の定「まあ、おばさんみたい」と梨沙子に笑われていた。
「みやは一緒に行かないの?」
桃子は雅の背中に向けて訊ねた。
「みやは家族と一緒に行ったんだって。それで面白かったらしいからうちらも見ようよってなったの」
桃子の問いかけに対して梨沙子が説明をする。聞かれた本人は雑誌に夢中のようだったから仕方ないかもしれない。
桃子は鼻白んだ心持ちだった。千奈美と友理奈。茉麻に佐紀、梨沙子で映画を見に行くという。
「誰も、ももを誘ってくれないんだね」
そして、なんだか寂しかった。
72 :デザートデート :2012/10/09(火) 07:46



◇◇◇◇◇◇◇


73 :デザートデート :2012/10/09(火) 07:48
楽屋のドアが開いて、桃子が来たのだな、と雅は思った。化粧台に備え付けられた鏡越しに姿を確認する。独特のツインテールが揺れているのが目に入った。取材を終えてきたらしい。皆が桃子に声をかけるのに合わせて、振り返って、おはようと言ったら、桃子は「おはよう」と目を合わせて返してきた。こっちは鏡越しに見るのでも緊張するというのに。
桃子は相変わらず白い顔をしているなと雅は思った。
両隣に座る佐紀と梨沙子と一緒に、雅が持ってきた最新号のファッション誌を見ていく。秋のトレンド、お馴染みのダイエット特集、モデルの着こなしなどチェックすることは多い。

三人であれやこれやと話に花を咲かせていたら、佐紀が茉麻に呼ばれた。雅がそのやりとりを聞くともなしに聞いていると、桃子が自分に声をかけてきた。雑誌に熱中していたから反応するのが遅れたが確かに雅へ向けて訊ねたと思う。梨沙子が話を受けたので雅は黙っていたが桃子の様子が気になった。鏡に映る横顔を盗み見ると、唇を突き出して、わざとらしく拗ねた表情を作っていた。そして、こう言った。

「誰も、ももを誘ってくれないんだね」

雅は、あっ、と思った。
74 :デザートデート :2012/10/09(火) 07:50
「じゃあももうちらとホラー見に行く?」
千奈美がポッキーをもぐもぐと食べながら気軽に言った。答えは見えている。
「だからー怖いのムリなんだってば」
「だよねー」
はははは、と楽屋に響く大きな声で千奈美が笑う。むー、とさらに唇を突き出す桃子。
「ももちさ、しあさって予定入ってる?」
「あー、うん入ってる」
茉麻が訊ねてきても芳しい返事はできなかった。
「あれだね。みんなさ、もものことを思って誘わなかったんだよ」
ポッキーの袋を開けて、いつもの笑顔で千奈美が言う。「もも大学とかテレビとかで忙しそうだからって」
「気遣ってくれるのはもちろん嬉しいよ。でもさ、一言あってもいいと思うんだよね。『ももち、映画見に行かない?』って。そしたらももちだって『嬉しいお誘いなんだけど予定があって行けないの。許してにゃん』ってできるじゃん。みんな楽しんできてね、とかも言えるじゃん」
「許してにゃん言いたいだけじゃん」
と茉麻が笑う。「面倒くさいよ。そのやりとりいらないでしょ」佐紀は呆れている。梨沙子は桃子が責められているのが面白いのかニヤニヤしている。
雅は友理奈を見る。鏡の左側に映る彼女はニコニコとしているが、いつも半笑いなので楽しんでいるのかよく判らない。千奈美はポッキーを口にしつつ「はっ」と不満の声を漏らして、桃子から「なによー、ちぃちゃんももちをデートに誘ってよー」と絡まれていた。それを見て茉麻がまた笑った。「じゃあももうちらとホラー見に行く?」
千奈美がポッキーをもぐもぐと食べながら気軽に言った。答えは見えている。
「だからー怖いのムリなんだってば」
「だよねー」
はははは、と楽屋に響く大きな声で千奈美が笑う。むー、とさらに唇を突き出す桃子。
「ももちさ、しあさって予定入ってる?」
「あー、うん入ってる」
茉麻が訊ねてきても芳しい返事はできなかった。
「あれだね。みんなさ、もものことを思って誘わなかったんだよ」
ポッキーの袋を開けて、いつもの笑顔で千奈美が言う。「もも大学とかテレビとかで忙しそうだからって」
「気遣ってくれるのはもちろん嬉しいよ。でもさ、一言あってもいいと思うんだよね。『ももち、映画見に行かない?』って。そしたらももちだって『嬉しいお誘いなんだけど予定があって行けないの。許してにゃん』ってできるじゃん。みんな楽しんできてね、とかも言えるじゃん」
「許してにゃん言いたいだけじゃん」
と茉麻が笑う。「面倒くさいよ。そのやりとりいらないでしょ」佐紀は呆れている。梨沙子は桃子が責められているのが面白いのかニヤニヤしている。
雅は友理奈を見る。鏡の左側に映る彼女はニコニコとしているが、いつも半笑いなので楽しんでいるのかよく判らない。千奈美はポッキーを口にしつつ「はっ」と不満の声を漏らして、桃子から「なによー、ちぃちゃんももちをデートに誘ってよー」と絡まれていた。それを見て茉麻がまた笑った。
75 :デザートデート :2012/10/09(火) 07:51
楽屋は笑いに満ちていた。鏡に映る桃子も笑顔だ。しかし。雅はさきほどの桃子の台詞とその時の表情が気になっていた。

「誰も、もものこと誘ってくれないんだね」

芝居がかった口調で発せられたあの言葉。冗談としてメンバーは捉えているようだったが、ひょっとしたら違うんじゃないかと雅は思った。千奈美のポッキーを貰って楽しそうに話している桃子の姿が鏡を通して見える。だけど。さっきの言葉を口にした桃子の横顔は。伏せられた目を覆う長い睫毛が揺れているように見えたのは。
そう見えたのは一瞬のことだったけれど、放っておけない、と雅は思った。
76 :& ◆i.twkzJbf. :2012/10/09(火) 07:52

◇◇◇◇◇◇◇

77 :デザートデート :2012/10/09(火) 07:54
「美味しかったー」
友理奈は手の中にくるめていたプリンのカップをコンビニの袋に入れた。ゴミ箱へ捨てに行こうとするので「ももちが捨てるよ。貸して」と袋を受け取る。入り口の脇に置かれたゴミ箱に一番近いのは桃子だったから申し出た。椅子から立ち上がりゴミを捨てて席に戻る。途中、化粧台の鏡を何の気もなしに見やると、雅と目が合って桃子は少し驚いた。そして次の瞬間にはもっと驚くことになった。

「もも、デザート食べに行くよ!」

ラジオのパーソナリティを長く務めている上、近頃のテレビ出演でコメントの力を磨いているつもりだが、とっさに言葉が出なかった。
目が合った、と思った瞬間、ガタッと音を立てて勢いよく立ち上がった雅は勢いそのままに振り返り、桃子を見据えて先の台詞を言ったのだった。
呆気にとられていたのは他のメンバーも同じだった。「え?」と千奈美が半笑いの顔で小さく声を出したのをきっかけにして桃子は頭の働きを取り戻した。
78 :デザートデート :2012/10/09(火) 07:56
「みんな聞いた? ももち、みやにデートに誘われちゃった!!」
「そんなんじゃないし」
「またまたー。みやったらー。素直になっていいんだよ。このこのー」
「はあ? デザート食べに行こうって言っただけじゃん」
そっけない口振りの割には目が優しかった。茉麻はニヤニヤしている。

「みやさ、なんでデザートなの? まあそこが気になるんだけど」
「なんで? なんでって」
雅の視線が泳いでふと止まる。友理奈と目が合ったらしい。
「そう、熊井ちゃんがプリン食べてたからさっ」
「おほ」
突然自分の名前が出てきたので友理奈は目を見開いて驚いている。
「あたしが食べてたのはプリンじゃなくて抹茶プリンだけどね」
「そうなの? じゃあ、抹茶食べに行こうよ抹茶。判った? もも」
デザートに意味は無かったらしい。抹茶って食べるものなのかなあ、と桃子はぼんやりと考えたが今は判らなくてもいいことだった。
「うん! 行く行く」
顔が綻んでいるのが自分でも判る。体の芯から広がってくるものがあって、体がぽかぽかしてきた気がする。
「抹茶。二人、抹茶食べに行くの? あたしも行きたい」
「えっ、くまいちょーも?」
「だめ?」
桃子は言葉に詰まった。立ち上がっている桃子と椅子に座る友理奈。普段からは考えられないが、この状況だと僅かながらも桃子のほうが目線が高くなっていて、だから友理奈は上目遣いでこちらを見つめることになる。桃子は細く息を吐き出す。常々、子供っぽいなと可愛がっている相手にこんな風におねだりをされては断りようもなかった。
79 :デザートデート :2012/10/09(火) 08:02
「くまいちょーも一緒でいいよね、みや」
「え? あー。ももがいいならあたしは全然なんでもいいよ」
雅の返事には力が無かった。さっきの勢いは何だったんだと桃子は不思議に思う。
「じゃあ、まあも連れてってよ。最近抹茶が気になるんだよねー」
「まあさんも?」
友理奈が目をきらきらと輝かせる。やはり子供のようだ。 
「みや、あたしも行きたい」
と願い出たのは佐紀だ。横で梨沙子も熱い視線を雅に向けている。
「千奈美も行きたーい。てかさ、もうみんなで行こうよ」
すると口々にそうしよう、そうしようとなって、いつにしようか、と各々が手帳を引っ張り出して予定を教え合った。

楽屋内は一挙にまた賑やかさを取り戻した。「その日は寝ることにしてる」という千奈美の発言に「嘘つけ」と笑っている雅を見ていたら、誘いをかけてきたことが思い返されて、またじんわりと胸のうちが温まるのを覚えた。しかし、どことなくさっきとは違う温かさのような気がして、何が違うのかな、と桃子は思った。





さて残念なことに、結局、みんなで抹茶を食べに行く計画は無しになってしまった。全員の予定が合わなかったのだ。

80 :& ◆i.twkzJbf. :2012/10/09(火) 08:03

◇◇◇◇◇◇◇
81 :デザートデート :2012/10/09(火) 08:05
後日。日曜日の深夜。ラジオは桃子のはしゃいだ声を流している。

「────はい、そう、結局みんなで行けなかったんですよねえ。お休みの日が揃わなくって。それは凄く残念だったんですけど、なんとここでビッグニュースです。リスナーの皆さんいいですかーいきますよー。なんと、わたくしももちはあの夏焼雅さんと、デザートデートをしちゃいましたー。パチパチパチパチ。フゥーッ。いやこれね、どういうことかと、言いますと! 全員の予定は確かに合わなかったんですよ。でも、だけどもだけどですよ。みやとももちの予定がぴったりと合う日があったんですよね。みんなが予定入ってるときに二人がフリーなときがあってー。それだったら最初のとおりに二人でデザート食べに行こうかってなりまして。待ち合わせして、デザート食べに行きましたよ。良い感じのお店でね。みやが選んだ場所だったんですけれども。抹茶のデザートもね食べましたよ。お店のメニューにあったんで。いや楽しかったですね。まさにデートですよ。楽しすぎてデザートいっぱい食べちゃったから、あの、正直ももち、ちょっとだけですけど、お肉がついちゃったんですよ。でもこれももちのせいじゃないですからね。みやがデザート食べに行こうって言うからこうなったんであってね。だから、ふくよかなももちはイヤだなって方はね、ももちじゃなくて、みやに文句を言ってくださーい。お願いしますね。うふふ」

82 :デザートデート :2012/10/09(火) 08:05



83 :デザートデート :2012/10/09(火) 08:06



◇デザートデート◇

84 :終わり :2012/10/09(火) 08:09
終わりです。キュフフ。


意味不明な点や、もっとあーしろこーしろといった要望等がありましたらじゃんじゃか仰ってください。
85 :名無飼育さん :2012/10/09(火) 10:46
大変素敵でした!
世界にひろがれみやももの輪!
86 :名無飼育さん :2012/10/10(水) 10:13
みやももとても良かったです
87 :置き甚平 :2012/10/26(金) 19:29
箪笥の三段目を開けたら、夏服に混じって、見覚えがあるようでないような衣服が
入っているのを見つけた。

石田はそれを取り上げ、目の前に広げて確認してみる。
正体を知った途端大げさに仰け反って

「……お……置き甚平……っ!」

と言った。
88 :置き甚平 :2012/10/26(金) 19:34
人生で無駄な時間ベスト3のうちのひとつ、それは通勤時間だ!

という石田母の教えに従い、将来を見据えた結果、学校は遠く会社は近い、という
今の場所に移り住んで一年になる。
そして、そこに鞘師がたまにお邪魔するようになって半年。

仕事をこなすにつれ、鞘師だけ入り時間の早いソロ仕事というのも増え始め、
始発では間に合わないことがある、という話を本人に聞いた石田からの提案だった。

「タクシー代もったいないですし、うち、結構友達とか呼んで泊めたりする家だったんで」
「えー……でも……」
「あのですね、……今こっちでは母親と二人でしか住んでないので、
 正直寂しいねって話してたりしてて、だから」
「……いいのかな、ウチなんかが」
「いいんですよっ。それに、家に帰るより寝る時間が増えると思うし」
「そ、それいいね……魅力的過ぎる……!」
「へへっ、悪くない話でしょ?」

夏の間に何度か迎え入れているうち、彼女は“置き甚平”をするようになった。
もっとも本人の意志でそうしたのではなくて、朝起きたての汗だくの二人を見た石田の母が、
ついでに洗濯するから置いていけ、と言ったのが発端だ。
平身低頭する鞘師に向かって、みんな私の娘。みたいなものだと大笑いした母親を見て、
石田はとても恥ずかしく思った。
箪笥自体には空きがあったし、先輩の衣服であるから、置き甚平そのものは気軽に受け入れた。

そしてあっという間に外が肌寒い気温になったが、忙しいのもあって、衣替えらしい衣替えを
しないままに秋を迎える。
やっと一日OFFの日ができて、ちゃんとした衣替えをしようか、と、しばらく開けていなかった
箪笥の三段目を開けた。

かくして石田は、鞘師の置き甚平との再会を果たしたのである。
89 :置き甚平 :2012/10/26(金) 19:36
渋谷で買い物した時に商品を入れられたビニールバッグ(透けないように、色は黒)に
甚平を詰めて、会社の廊下で会った鞘師にそれを渡す。

「これ、鞘師さんの甚平です」
「え? あれっ? なんで?」
「もう秋ですよ? 着ないでしょうから」
「じゃなくて、なんで亜佑美ちゃんがウチの甚平を」
「え、うちに置いてたじゃないですか」
「……ああ!」

ぱん、と鞘師の両手が小気味良い音を立てる。
なんとまあこの先輩、石田の家に置き甚平していたことを忘れていたようだ。

「二着あったはずなのに、どっちも探しても出てこなくて、なんでだーって思ってた!」

だそうである。思わず笑ってしまった。
これを探しているのは知っていたが、まさか二着も見失っていたとは。
この娘。、忘れ物多し、の悪癖は、まだ治りそうにない。

「とりあえず良かったですね」

これにて一件落着、と話をまとめようとしたのだが、鞘師は受け取った袋を覗き込んで、
何か考え込んでいる。
そして唐突に

「この子さ、もし良かったら、亜佑美ちゃんちの子にしていいよ」

と言いながら、袋を傾けて中身を示してきたのだ。
90 :置き甚平 :2012/10/26(金) 19:38
「へっ?」
「もう寒いから着れないけど、次のシーズンになら」
「いやっ、ちょっと待ってください。何でですか?」

わざわざ持ってきたのに、という言葉は飲み込んで、石田は問いただす。
鞘師は申し訳なさそうに眉を顰めながら答える。

「んーと、今ウチ服の片付けしてて、量を減らそうと思ってて……」
「……もう要らない、って?」
「いや要らない訳じゃないよ?
 でもほら、あの、あれ子供用で……来年……着れなくなるかも……」

なるほど、申し訳なさそうにしている理由がわかった。

「……へー、それで、私ならもう背が伸びないからと」
「違う違う違う、そうゆうんじゃないから!」

片手を顔の前でぶんぶん左右に振って否定する鞘師。
石田はいじけたふりをした。

「どーせ、どーせね!
 確かにもう伸びなさそーな気は自分でもしてますよーだ、フン!」
「あ、亜佑美ちゃん! 誤解だぁ!」

袋を持ったまま肩を掴まれてがくがく揺らされた。
石田はその慌てぶりが可笑しくて、揺らされながら笑った。
わかっている。
着られそうな相手、ではなくて、着られないかもしれない自分、
に主題が置かれていることなんて。
でも、ちょっとからかいたかった。
91 :置き甚平 :2012/10/26(金) 19:40
「ほら! 亜佑美ちゃんなら大事にしてくれそうだし!」

鞘師はまだ肩を掴んだまま言い訳をしている。
石田はその手に自分の手を重ねて、やんわりと抑止した。

「……ふふ、いいですよ。大事にします」

自然と口をついて出た台詞は、直前の言葉を返しただけなのに、
かなり恥ずかしいものになった。

「よ、ヨロシク」

鞘師もそれに気付いたのかサッと手を引き、口元をむにむにさせて照れを誤魔化していた。
石田は目のやり場に困って、とりあえずスマホで今の時間を確認してみる。
鞘師の今日のスケジュールはなんとなく記憶にあったから、表示された時刻に危機感をおぼえた。
そもそも廊下でバッタリ会ったのも、会社から出る途中だったからかもしれない。

「あ、時間! すいません、もう行かないと駄目ですよね?」
「あ、うん、もう行く! あのさ、今度さっ」

フツーに亜佑美ちゃんち遊びに行きたいなっ

鞘師は最後にそんな台詞を残して、石田の元を去って行った。
……なんだか、また“置いて”いかれた気がする。

いつのまにか持たされた袋の中身。
残されて寂しいと思う気持ち。

そして、期待感。
92 :名無飼育さん :2012/10/26(金) 19:42
置き甚平/おわり
93 :名無飼育さん :2012/10/27(土) 02:05
おおお!鞘石来てたー↑↑↑
朝起きたての汗だくの二人!!!夢ふくらみますねー(違
りほりほの甚平がブログでお目見えしない謎が解けましたな
94 :名無飼育さん :2012/11/01(木) 00:21
鞘石!!
2人の特徴を掴んでて、面白かったです。
本当にこうゆう会話をしてそうw
95 :しゅわしゅわバン! :2012/12/01(土) 01:10


うち、結構やきもち焼きだって言うことに最近すごく気づいた。
物事を追求するのが好きだし、これっていうことを決めてかからないとダメなタイプ。
絶対浮気とかされたら証拠固めるタイプだと思う…。

ついこないだも…

「里保はあれやね、独占欲が強いとよ!自分の好きな人が誰かと一緒におるとすぐ割り込んで行くやろ?」
「そんなことない!」
「いやーいやいや、そうは言うけど衣梨知ってるけんね〜」
「な、何をだよぉ」
「里保こないだあゆみんと聖がくっついとったら割り込んどったやん。トォー!とかいいよって」
「う…」
「どっちにかなぁ〜、聖かな〜?あゆみんかな〜?」
「なんっ、何いってんだー!もー!!」

そのあとえりぽんはヒッヒッヒとか笑って回りながら去っていった…。
そして残された私はとてつもない屈辱感に襲われた。

悔しい。
分かってる、分かってるんだ。

だってどうしようもないんだもん。
なんでこんなことになってしまったんだ…。
96 :しゅわしゅわバン! :2012/12/01(土) 01:11
「しさん…鞘師さーん!」
「へっ!?」

なんだか声が聞こえたと思ってたら亜佑美ちゃんが声をかけてたみたい。

「う…」
「う、ってなんですか、しかもその顔」
「いやぁ…あの」

今まであなたのこと考えてましたとかとてもじゃないけど言えるわけない。

「さっきから呼んでたのにもー」
「あ、何の用?」
「またそれもー、冷たいなぁ鞘師さん」
「そんなつもりないよ!」

ニヤニヤしながら亜佑美ちゃんが見てくる。
…う、遊ばれてる。
こういうときこの人の年上っぽさを実感する。実際年上だけどさ。

「あー、呼んだのはサイダーいりますかっていう話…ってちょっ」
「サイダー!!??」
「ちょっと、力強いですちょっと!」
「あぅ、ごめん…」

サイダーと聞いて勢い余ってしまった…反省。

「スタッフさんの地元で売ってるサイダーなんですって!地サイダー?」
「あ、ホント!?やった!ウヒヒ」

ついつい顔が緩んでしまう。
恐るべしサイダー。
こっちもニヤニヤしてしまったところで、亜佑美ちゃんがちょっと変な顔をしていた。

「どしたの?」
「えっ、いやぁ…鞘師さん手…」
「えっ?あ…あっ、あああごごめん!!」

さっき勢い余って両手を掴んでしまってたままだった。
あーうん、亜佑美ちゃんの手は柔らかいですね。もうちょっと感触を味わっておきたかったです…。
今更気づいても遅いけど。
97 :しゅわしゅわバン! :2012/12/01(土) 01:11
そういえばなんか持ってると思ってたけど、サイダーだったんだね。

「えっと、どーぞ」
「おおぉぉ…」
「超嬉しそう」
「んふふ、だって嬉しいもん」

くれたのはスタッフさんだけど、渡してくれたのは亜佑美ちゃんだもん。そりゃ嬉しいよ。

「えっ…」
「え?」
「私が渡したから嬉しいんですか?」
「え?」
「いや、今だって渡してくれたのは亜佑美ちゃんだから嬉しいって」
「えっ、嘘、うち今口に出てた?」
「出てましたけど…」
「嘘っ、えっマジで!?」
「は、はい…いやまぁでもぉ、なんか照れますねぇ」

そういってくねくねし始めた。
でもうちはそれどころではない。
なんてことを言ってしまったんだ…。

「あー、うん…うん…恥ずかしいな」
「あんなこと言っておいて〜」
「うちだって口に出てるとはまさか思ってなくて…」

油断しすぎだよ鞘師里保。
なんでこんなことに!

そもそも!えりぽんが余計なことをうちにいうから!
変な風に意識してしまったではないか!
98 :しゅわしゅわバン! :2012/12/01(土) 01:12
「でも嬉しいです。鞘師さん私のことそんな風に思ってくれてたんですね」
「へっ…」
「照れちゃいますけどね!へへへ…」
「…亜佑美ちゃんかわいい」
「えっ!!」
「………はっ!!」
「ちょっ、鞘師さぁん、やめてくださいよ〜もぉ〜」

「うああああ〜〜」

頭を抱えてうずくまる。
ううう、何やってんだ、何をやってんだ!
だだ漏れてる!

油断しすぎだよ。
でも亜佑美ちゃんがかわいいのが悪いんだ!
しょうがないんだ!

でも微妙に亜佑美ちゃんは鈍感なのかな?
なんだかうちはからかわれてるだけのような気がしなくもない。

そう考えるとちょっとだけ寂しくなってしまう。

「鞘師さんほら、そろそろ立ちましょうよ。サイダーがダメんなっちゃう」
「はっ!それはいけない」

さっきから結構な感じでサイダーを動かしてる。
あけたときに大爆発だけは避けたい。

「サイダー大丈夫かな…」
「まぁ振り回したわけじゃないし、たぶん大丈夫じゃないですかね?」

そう言って、頬をかく亜佑美ちゃん。
ん?

「亜佑美ちゃんなんか顔赤い?」
「…っ!」

びくんと跳ねたみたいに、亜佑美ちゃんが固まった。
えっ、何。

「もう…鞘師さんのせいですからね!!かわいいとか言うから!」

じゃあ私もういきますから!と言われ、さっさと行ってしまった…。
そして置き去りにされるうち。
99 :しゅわしゅわバン! :2012/12/01(土) 01:12
「えっ…と」

赤くなったのはうちのせい?
かわいいって言ったから?

亜佑美ちゃんはいつから赤くなってた?
っていうか、なんか手掴んだときからなんか変な顔してた?

ん?んーーー?


「里保」
「うわびっくりした」
「里保はやっぱ一言多いとよ」

ドアに隠れてえりぽんがニヤニヤしてる。
見られてた。
見られてたのか…。

恥ずかしすぎる。
死にたい…。

「い、いつから…?」
「へっへっへ。いつからやろね〜?」

うちこそ真っ赤だったと思う。
顔が熱い。

あと…亜佑美ちゃんはもしかしたら鈍感じゃないのかも…しれない。
そう考えると、少し救われたというか、落ち着いたというか。

色んなことが頭を巡る。
そして目の前のえりぽんはニヤニヤしながら走ろうとしてる。

もう亜佑美ちゃんのせいだ!あとえりぽんのせいだ!
うちがこんな分からんのは!

「のあああー!ちょっ、待てっ、教えてから行け〜!」
「いやだね〜」
「うああああ〜〜!」

ちなみに…えりぽんと追いかけっこをした後サイダーを開けたとき、大爆発が待っているとはこのときのうちは知る由もなかったのである。
100 :しゅわしゅわバン! :2012/12/01(土) 01:12
おわり

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