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えいえんの娘。A

59 :4.世間を欺くには、世間と同じ顔色をなさらなくては :2017/03/03(金) 23:06
「加護ちゃん。おはようございます。この病棟一番のナース天使なっちこと安倍なつみです。よろしくねぇ」

深々と頭を下げた看護士を横目に見ながら、この人物はいったいなんなのだろうと加護は思った。
それから自分が生きていて病院に運ばれたのだとわかった。
なんでよ、という小さな愚痴は安倍の耳に届いてしまったようだ。
悲しそうな顔で加護の右手を両手で優しく包み込む。

「どうしたの? 悲しいの?」

優しく撫でられると、幼かった頃の両親や繁華街で出会った優しく扱ってくれたおじさんたちが頭に浮かんだ。
ぐすっ、いけない。涙より先に鼻水が出そうになる。

「なっちがいるから大丈夫だよ」

うんうん、安心してと続けながら優しく手を撫でてくるこの看護士はやっぱりなんなんだ。地球を侵略しにきた宇宙人かもしれない。

「ごめんね、変なナースがおしかけちゃって」

ベッドを区切るカーテンをさっと開けて、白衣をまとった保田が入ってくる。
ちょっと圭ちゃん! 変じゃないよ! なっちは天使だよ!
看護士の抗議を保田はいつものようにはいはいと流し、慣れた手つきでカーテンの外へ追い出した。

「こんにちは。加護さん。担当の精神科医、保田圭です」

保田は挨拶とともに右手を差し出した。
加護の使える右手が天井に向かって伸びていくのを見て、ガッチリと掴む。加護の手は寝起きだからか、まだあたたかみが残っている。
こちらはまともそうだ。でも、今まで搬送された病院と違って外科や内科じゃないようだと加護は気づいた。
いつ運ばれたのだろうか。長い時間、眠っていたような気もする。
何も覚えてない。時刻がわからない。
そんな加護の表情を見てか、今後の日程を伝え始めた。

「土曜の午後だから診察は月曜までないよ。ここは閉鎖病棟だから携帯の持ち込みはダメなんだ。ただ、本人確認を兼ねて荷物はお母さんに渡したから安心して」

もしお見舞いや持ち込んでいいものが何かわからなかったらさっきの看護士に聞いて。変な子だけど、根は真面目で優しい子だから。
保田はそう言って笑った。
せーしんかとは何を治すところなのか加護には理解できないまま、また眠りにつく。
薬がよく効いてるのであろう加護の右手をそっと布団に戻す。
今は何もかも忘れてゆっくり寝てねと声をかけ、保田は病室を去った。

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