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「街」
- 1 :おるぷち :2012/03/05(月) 22:28
- 初のアンリアル物書こうと思います。
今まで何作か書かせてもらったのですが
ノロノロ進行のせいかドンドン現実と
時代のギャップが出てきてしまって(-_-;)
登場人物も初挑戦の人ドンドン出す予定です。
短編〜中編をひとつの街を舞台に
ちょっとずつ繋がってる感じで行こうと思います。
はじめましての方も
お久しぶりな方もよろしくお願いします。
- 2 :「街」 :2012/03/05(月) 22:29
-
「街」episode1
「うちらは絶賛成長中」
出演・岡井千聖 萩原舞 矢島舞美 - 3 :「街」 :2012/03/05(月) 22:30
- お風呂が壊れたらしい。
いや、正確にはボイラーが壊れて
お湯が出ないんだとか。
だから今日はウチのお風呂に入れない。
学校の帰り。
お母さんからの電話は
そんな内容だった。
明日には工事の人が来るから
今日だけ、らしい。
それは仕方がないんだけど。
- 4 :「街」 :2012/03/05(月) 22:30
- 「そうゆー訳だから千聖
あんた、友達の家とか銭湯とか
どっかで入ってきなさいね」
「ええー?お母さん達は?」
「お母さんはおばあちゃんとこで
お父さんは会社のお風呂。」
「ふうーん。」
どうしようかなあ、、、。
友達の顔をグルグル思い浮かべようとしたら
「あっ!!チャイム。お客さんみたいだから」
なんて慌ただしく電話を切られてしまった。
- 5 :「街」 :2012/03/05(月) 22:31
- まあ、いいんだけどさ。
どうしようかな。
愛理んとこか、なっきぃんとこか。
てか、あたしもおばあちゃんトコでいいんだけどなあ。
考えながらバス停に向かって歩いてると
また着信。お母さん。
「さっきの舞美ちゃんだったのよ。
回覧板持ってきてくれたの。
お風呂お願いしといたから。
あんた舞美ちゃんとこでお世話になりなさい。」
え、いま。舞美ちゃんって言った?
- 6 :「街」 :2012/03/05(月) 22:31
- 舞美ちゃんはお隣さん。
小学生の頃。いや舞美ちゃんが中学生になっても。
世話好きなのか近所のちびっこと
遊んでくれる、みんなのお姉さん的存在。
もちろんお隣のあたしも
イッパイイッパイ遊んでもらった。
むしろ特権とばかりに他の子よりも
いっぱい遊んで貰ってたんだよね。
優しくてキレイなお姉さんが
お隣なのは自慢だったもん。
かなりボケてるけど大好きなお姉さんだ。
親や友達に言えない悩みも
舞美ちゃんにはなんでも打ち明けられたっけ。
今は中々遊ぶ事も少なくなったけど
お隣の矢島家は勝手知ったるって奴だ。
- 7 :「街」 :2012/03/05(月) 22:32
- だけど。
だけど。
「いや、いいよ、そんなん銭湯でも行くし」
「なに遠慮してんの!
昔はしょっちゅう入り浸ってたじゃない。
最近なかなか会えなくて寂しいって
舞美ちゃん言ってたわよ」
「そうだけど…」
「それに舞ちゃんも!」
舞ちゃん。
その名前にドキリとする。
- 8 :「街」 :2012/03/05(月) 22:33
- 舞ちゃんは舞美ちゃんの家に
居候している子で
詳しくは知らないけど
舞美ちゃんのお母さんの親友の子とか
そんな感じで夏休みになると必ず
舞美ちゃんの家に遊びに来てて、
だから夏になると3人で良く遊んでて
というか、むしろ舞ちゃんと2人で
舞美ちゃんに悪戯ばっかしてた。
今思うと我ながらヤンチャと言うかなんというか。
結構ひどい事もしたけど舞美ちゃんて
全然怒らなかったなあ。感心する。
て、それはどうでも良くて。
舞ちゃん。
- 9 :「街」 :2012/03/05(月) 22:33
- 舞ちゃんは行きたかった高校が自宅から遠くて
舞美ちゃんの家が近いからって
矢島家に居候してる1つ下の子。
今までみたいに夏だけじゃなくて
一年中いっぱい遊べるって嬉しかった。
実際、舞ちゃんが引っ越してきスグの頃は
学校違うのに結構いっぱい遊んでたんだけど。
最近は全然遊んでないし会ってもいない。
それは全部あたしのせいだけど
舞ちゃんのせいでもあって。
なんか、なんてゆーか。
とにかく舞ちゃんは今は無理。
なんか、なんか、なんか。
- 10 :おるぷち :2012/03/05(月) 22:34
- 本日はここまで。
こんな感じで進めていきたいと思います。
℃-uteさんは初なのでドキドキです。 - 11 :名無し :2012/03/09(金) 17:44
- おお!岡井ちゃん!
なかなか珍しいですね。
期待してます - 12 :名無飼育さん :2012/03/12(月) 13:48
- いよいよ新作ですか!
今回は今までとは趣が異なるお話のようでこれからも楽しみにしています。
- 13 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/13(火) 23:36
- あたしの頭ん中はグルグルしてんのに
そうゆう事だから、とか何とか言って
お母さんからの電話はさっさと切れた。
なんて強引なんだろう。うちの母は。
半ば呆れながらも脳みそのほとんどは
舞ちゃんに支配され中。
いや、そんな事してる場合じゃない。
どうにかしなきゃ。
そうだ、舞美ちゃん。
ウンウン舞美ちゃんだ。
- 14 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/13(火) 23:37
- 「もしもし舞美ちゃん!?」
即効、舞美ちゃんに電話したら1コールで出た。
おお、素早い。
そういや舞美ちゃんってボケボケなのに
動きは素早いし足も速くて
高校の頃は陸上部でインハイとか行ってた。
て、これも今はどうでも良くて。
とにかく舞美ちゃんに電話繋がって良かった。
あんま電話する事なんてないから
番号変わってたらどうしようかと思ったよ。
舞美ちゃんのことだから
番号変わっても連絡してこなさそう。
て、どうなんだろ?分かんないけど。
- 15 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/13(火) 23:37
- 「久しぶりだねえ、ちさと。
元気だった?」
「うん、元気!元気だけどお母さんが!」
「そうそう、聞いたよ。お風呂でしょー。
待ってるからさあ。おいでよ」
「いや、悪いし。あたし銭湯でも行くし」
「銭湯?そう言えば新しくできたよね。
いいなあ、あたしも行こうかな。
うん、そうしよう。一緒に銭湯行こう」
「へ?ま、舞美ちゃん?」
「そうだ、舞も誘おう。じゃあ、また後でね。迎え行くし」
「ちょ、舞美ちゃん!…って切れてるし!」
- 16 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/13(火) 23:38
- そうだった。舞美ちゃんって結構
押しが強くて人の話聞かないんだった。
ブランクあって忘れてたよ。
ああ、舞美ちゃん。
マイペースにもほどがあるよ。
人の話聞いてよぉー。
舞美ちゃんって確か二十歳だよね。
成人だよね、おかしいでしょ。あの人。
いや、もう舞美ちゃんらしいけどさあ。
- 17 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/13(火) 23:38
- あー、そんな事より。
舞ちゃんだよ。舞ちゃんとお風呂とか無理でしょ。
どう考えても無理。無理すぎる。
どうしよう。なんとか断らなきゃ。回避しなきゃ。
だって。
だって。
だって。
- 18 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/13(火) 23:39
- 舞ちゃんってば急に
身長もググッと伸びちゃって
あたしなんかあっという間に追い越されちゃって
手も足もスラッと長く伸びちゃって
服装もなんか大人っぽくて
時々ドキッとするような
遠いとこ見てるような表情なんかして
誰この人?みたいなさあ。
制服姿で学校の友達と一緒のトコを
偶然、街中で見かけた事があった。
なんか話しかけれなくて
逃げるようにして家に帰ったっけ。
舞ちゃんが遠い人になっちゃったって
ズガーン!って急に感じちゃったんだよね。
- 19 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/13(火) 23:39
- もー、まいったな。
あの夏の日の舞ちゃんはどこ行ったんだ?
舞美ちゃんに悪戯してニヒヒって笑ってた
あたしの舞ちゃんじゃないみたい。
いや、最初から舞ちゃんはあたしのじゃないけど。
でもでもだけど。
ああー、どうしようどうしよう。
いつものバスに乗ってる間も
いつものバス停で降りた時も
まだまだずっとグルグル頭は舞ちゃんだらけ。
そのまんま我が家に無事帰宅。
- 20 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/13(火) 23:40
- 「ただいまー」
って居間に顔出したら舞美ちゃんが
お母さんとクッキーとお茶を楽しんでた。
「おっかえりぃ〜」
ニコニコ手なんて振ってる舞美ちゃん。
「舞美ちゃんなんでもう居るの?
大学生って暇なの?」
あ、そういや回覧板持ってきたんだから
その時にはもう帰ってたのか。
「今日はねえ、先生がお休みで生徒もお休みなんだよ。」
なんだそれ?分かるような分からないような。
ようするに大学生って結構暇なのかな。
- 21 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/13(火) 23:41
- 「ちさとの制服姿久しぶりに見るねー。」
「そうだっけ?」
「そうだよ。舞ちゃんトコとは違う制服だし新鮮。
いいなー、制服。若いっていいなあ。」
「舞美ちゃんも着たでしょ。なにババ臭い事言ってるの。」
舞ちゃんの名前が出てきた事にドキドキしながら
憎まれ口を叩くけど舞美ちゃんはやっぱりニコニコだ。
「あの、さあ。」
「うん?」
「舞ちゃん、は?」
- 22 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/13(火) 23:41
- 「ああ、舞ねえ。今日は部活で遅くなるんだって。」
「そうなんだ。」
じゃあ、お風呂は舞美ちゃんと2人でかな。
「早く終わったら行くって言ってたけど。」
「そ、そう。」
なにその曖昧なのやめてよ、却ってドキドキするじゃん。
「でも今日は難しいみたい。
来れなかったらまた一緒に行こうね」
って、なんだよ。もう。来れないって事じゃん。
期待させないでよ、ってあれ?
いやいやコレでいいんだって。
何ちょっと残念とか思ってんの。
変だよ、あたし。
「着替えてくるっ!!」
そう言ってバタバタ2階に駆け上がって
自分の部屋に入って大きく息を吐いた。
- 23 :おるぷち :2012/03/13(火) 23:45
- 本日はここまでです。
岡井ちゃん岡井ちゃんと
ぶつぶつ言いながら更新W
>11 :名無しさん
ありがとうございます!
期待に添える話が書けるといいなあ
>12 :名無飼育さん
ありがとうございます。
よーやく新作です!
ぽつぽつアイデアは浮かぶものの
煮詰まらなくて遅くなりました。
楽しんでもらえると嬉しいです - 24 :みおん :2012/03/14(水) 00:13
- 続きがすごく気になります
- 25 :名無飼育さん :2012/03/15(木) 10:52
- 岡井ちゃんが中心の小説とは珍しい。
面白いですー! - 26 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/20(火) 20:33
- いつからだろう。
舞ちゃんの顔まともに見れなくなったの。
街で見かけた時?
会いたいけど会いたくない。
寂しいけど会いたくない。
舞ちゃんのバカ。
なんて、あたしの勝手な気持ちだって
分かってるけど。
このモヤモヤどうしたらいいんだろう。
- 27 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/20(火) 20:34
- 再び居間に戻ると今度は
舞美ちゃんがご飯を食べてた。
良く食べるなあ。
なんで細いの?
あーあー。でっかい口でトンカツ食べて
美人が台無し。
「ちさとも早く食べなさい。」
そう言われてあたしも手を洗って
自分の席に着く。
「舞美ちゃん自分の家で食べなくていいの?」
「うん。今日はお父さん出張で帰ってこないし。」
「え、じゃあ舞ちゃんは?」
「ちゃんと用意してあるわよ。」
お母さんが口を挟んできた。
なんだ、そっか。
- 28 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/20(火) 20:34
- 舞美ちゃんちはお母さんがいない。
舞美ちゃんが生まれたスグ後に亡くなったらしい。
だから普段は舞美ちゃんが家事をやっている。
と言っても実はお金持ちな矢島家は
ハウスキーパーさんを週に3回雇ってるんだけど。
まー、そんな感じだから
舞ちゃんが引っ越してくるの、
舞美ちゃん大喜びだったんだよね。
確かに広い家にひとりってのは寂しい。
おじさんは忙しい人だし。
「そう言えば昔さあ」
ん?と舞美ちゃんの方を見ると
もうスッカリご飯を食べ終えていた。
はやっ!
- 29 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/20(火) 20:35
- 「ちさとと舞ちゃんに
ご飯に大量の砂糖かけられたよね。」
ぶほっ。
「もー、ちさと。汚いなあ。」
いやいや急に変な事思い出すからじゃん。
それに。
「舞美ちゃん気付かずに食べてたじゃん。」
「そうだっけ?」
「そうだよ。悪戯大失敗だよ。」
せっかく悪戯しても気付いてもらえないなんて
切ないったら。それに、あんな量の砂糖ご飯。
2人して心配になっちゃって慌てて止めたんだから。
「舞美ちゃんって昔からボケてるよね」
「えー、なんで?」
なんでって、この話の流れで聞く?
さすがすぎるよ。
- 30 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/20(火) 20:36
- そんなこんなでご飯を食べ終えて
銭湯に行く準備をする。
舞ちゃんからの連絡はない。
「来ないみたいだし2人で行こうか。」
舞美ちゃんがニッコリ笑って言ったから
やっぱり、あたしは残念なような
ホッとしたような気持ちで頷いた。
「ちさとと2人って久しぶりだね」
「うん。舞美ちゃん大学忙しそうだし」
「そうじゃなくてさ。最近うち来ないじゃん。
舞ちゃんと遊んでないでしょ」
「え?」
- 31 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/20(火) 20:37
- 「遊びに来てても舞ちゃんとばっかで
あたしとは遊んでくんないけどさ。」
「そんな事ないじゃん」
「あるよー。夏休み以外はあたしと遊ぶのに
舞ちゃん来ると舞ちゃんとばっかじゃん。
昔っからそうだよね。ちさとって分かりやすい」
「分かりやすいって何が?」
「何がって…分かってないの?」
「だから何が?」
「…ま、いいや。」
いいのかよ!!意味分かんないし。
「で?喧嘩でもしたの?」
「へ?」
「舞ちゃんと」
- 32 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/20(火) 20:38
- 「別にしてないよ、喧嘩なんて。
ほら舞ちゃん部活忙しいみたいで。
和太鼓に夢中ってゆうか。
発表会あるって言ってたじゃん」
「発表会なら終わったよ。
ちさと来なかったね」
ああ、そうだった。
見に来てって言われたのに行かなかったんだ。
「あ〜、そうそう。その日は
あたしも学校の用事あってさ。
行きたかったんだけど。」
- 33 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/20(火) 20:39
- なんて。本当は行ったんだけど。
会場の隅っこで知り合いに会わないようにして
舞ちゃんに見つからないようにして
こっそり見に行ったんだ。
なんで、そんなんしたんだろ。
自分でも意味分かんない。
「ちさとってバカだね」
「はあ!?」
突然の舞美ちゃんの言葉にビックリして
舞美ちゃんを見上げると
意味ありげに笑われた。
「なに笑ってんの!」
「んー、可愛いなあと思ってさ。
もうちょっと大人になれるといいね」
「はぁ!?舞美ちゃんに言われたくないし」
- 34 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/20(火) 20:39
- 自分が子どもだなんて
そんなの分かってるよ。
分かってるから悔しいんじゃん。
早く大人になりたい。
舞ちゃんよりも早く。
うんと大人になりたい。
でも舞美ちゃんには言われたくない。
「なんでよー、私は大人だよ?」
やっぱりニコニコ笑ってるし。
「舞美ちゃんって怒らないよね。」
そう言うと嬉しそうに
「大人は子どもに怒らないんだよ」
なんて。
うちのお母さんにもそのセリフ
言ってやってくんないかな。
- 35 :おるぷち :2012/03/20(火) 20:44
- 本日はここまでです。
果たして今現在
一番オトナなのは誰なんでしょう?w
>24 :みおんさん
本当ですかー。
気になるなんて嬉しいお言葉です。
>25 :名無飼育さん
実は…先にストーリーが浮かんで
これは岡井ちゃんだな、ってなったんですよw - 36 :名無飼育さん :2012/03/22(木) 12:33
- んー、マイマイさんですかね…と予想 >一番オトナ
- 37 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/26(月) 23:02
- 銭湯について脱衣場でも
ぽーっとしてたら舞美ちゃんは
サッサと全部脱いで
「先行ってるね。」
って。確かにぽーっとしてたけど
早すぎるよ、舞美ちゃん。
背中に「ウキウキ、わくわく♪」って
書いてあるのが見えるよ。
どこが大人なんだか。
ま、舞美ちゃんが張り切るのも分かるけど。
だって新しい銭湯は広くてキレイで
お風呂の種類もイッパイで
露天もあるし電気風呂だってある。
今いる脱衣場だってロッカーいっぱい。
ドライヤーもいっぱい。
アチコチに椅子もあるからお年寄りも安心。
って、何観察してんだか。
あたしも早く入ろうっと。
大浴場のガラス戸を開けると
おお、洗い場もイッパイだ。
想像以上に広くてビックリだ。
- 38 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/26(月) 23:03
- 平日だからか満員って訳じゃなくて
スグに空いてる洗い場をゲットできた。
裸のままウロウロ探すの嫌だもんね。
頭洗ってると空いていた隣に
誰かが座った気配。
シャワーのシブキかけないように
ちょっと気をつけつつ洗い続けて
最後に流し終えた瞬間
つい癖でブンブンと頭を振ってしまった。
そう、犬みたいに。
「あ〜〜〜!ご、ごめんな…って、え?」
隣に謝ろうと顔を向けたら
「舞…ちゃん?」
- 39 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/26(月) 23:04
- 「あいかわらずだね、ちさとは。」
呆れた顔。ちょっと冷たい目。
でも口元はニヤってしてて
それは、あたしが失敗した時に良く見せる
皮肉の顔(と、あたしがあ名付けた)だった。
「な、な、な、なんで…?
ぶ、ぶ、ぶ部活。部活って舞美ちゃんが」
皮肉の顔のまま舞ちゃんはザックリ言い放った。
「最近、舞の事避けてるでしょ。」
“うん”とも“違う”とも言えない。
気付かないはずはない。
だって舞ちゃんだもん。
てか、その言い方だと舞美ちゃん嘘ついてた?
それとも舞ちゃん?
- 40 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/26(月) 23:04
- 「なんで?舞なんかした?」
「したような、してないような。」
「なにそれ?ちさとの癖に生意気。」
癖にってのび太じゃないんだから。
なんて言えずにいると
「今日は逃がさないから。」
宣言されてしまった。
うう、怖い。
舞ちゃんは怒ると本当に怖い。
一個下なのに、なんでだか
舞ちゃんの方が格上なのだ。昔から。
あたしは舞ちゃんに頭が上がらない。
なんでだろ。
いっつも強気な舞ちゃん。
いっつも千聖を引っ張ってくれる。
- 41 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/26(月) 23:05
- 「洗い終わったの?」
「え?うん。」
「じゃ、お風呂行こう。舞、泡風呂がイイ。」
舞ちゃんは避けてるって話は
何も聞いてこなかった。
学校の友達とか部活の事とか
家での舞美ちゃんの事とか
最近ハマってるお菓子の事とか
そんな普通の事をイッパイ話してるだけ。
あたしも同じように普通の話をするだけ。
なんか、昔に戻れた気がした。
最初はギコチなかったけど
最後は爆笑してて、その声で舞美ちゃんが
見つけたー!って寄ってきたくらい。
- 42 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/26(月) 23:05
- 舞美ちゃんは電気風呂と戦ってたとか言いながら
ニコニコとあたし達に混ざって
やっぱり普通の話をした。
千聖が望んでたのはこんな関係。
こんな空気。
変わらない、この感じ。
それ以下でもそれ以上でもない。
でも、どっか胸の奥が引っかかるのは何でだろう。
いい加減、時間がたった頃
舞美ちゃんがのんびりと
「そういや舞ちゃん間にあったんだね。」
なんて言った。
て、事は舞ちゃんが部活って嘘ついたのか。
舞ちゃんの方を見ると舌をペロッと出してた。
テヘペロ★ってさぁ、カワイイけどさあ。
- 43 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/26(月) 23:05
- まあ、舞美ちゃん嘘ついてもすぐ分かるしね。
その辺、舞ちゃんは巧みだよね、うん。
なんて納得してると
「誰かさんが舞を避けるからー。」
なんてサラッと言うと舞美ちゃんが
ザバッと勢いよく立ちあがって
「もう出るネ!!ゆっくりしてて!!」
て、気ぃ使った感アリアリでお風呂から飛び出した。
うう、、気まずいんですけど。
舞美ちゃんを目で追ってたけど
あっという間にいなくなちゃったから
仕方なくお湯に肩までたっぷりと沈める。
横から舞ちゃんの視線を感じる。
なんか言わなきゃ。
- 44 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/26(月) 23:06
- なんか、なんかって思うけど
こうゆー時、ほんと言葉って出てこない。
なんで舞ちゃん相手にこんなに
堅くならなきゃいけないの?
そう思ってたら
「ちさとのバーカ」
舞ちゃんが物凄く平坦な口調で
心の底からバカにした感じで言ってきた。
しかもお湯の中でオナカのお肉つまんだし!
さすがにカチンときた!
「!!!!な、なにがっ!!!」
「バレてないと思ってんだろうけどさぁ」
「な、な、なにが。」
「舞の太鼓発表会見に来てたでしょ。」
「!!!なんで知ってるの!?」
- 45 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/26(月) 23:06
- あ、、、、。シマッタ。
「舞がちさと見逃す訳ナイじゃん。」
「でも」
あの日は帽子を深くかぶってマフラー巻いて…
「ちさとの持ち物なんて全部知ってるし。」
「あ。」
「バカでしょ?」
「ハイ。」
でも、それでも、あの広い会場の
あのたくさんの客の中で
見つかるなんて思わなかったのに。
「舞をなめんなよ。」
「ごめん」
なんか良く分かんないけど謝ってた。
舞ちゃんに凄まれると謝らずにはいられないって
どうなんだ、岡井千聖。
- 46 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/26(月) 23:08
- 「それに。」
まだあるの?
「三ヶ月くらい前、街で逃げたでしょ。」
「え?」
それも気付いてたの???
「なんで舞に話しかけてこないの。
コソコソしてるなんてオカシイじゃん」
「友達といたから…じゃましちゃ悪いと思ってさ。」
やっとの思いでそう答えると
「発表会は?」
「…」
「明らかに舞の事避けるために変装してたよね。」
うう、熱いのにうすら寒い。
「白状しなさい。」
「そんなの、あたしだって分かんないんだもん。」
「はぁ?」
「だって舞ちゃんが悪いんだからね。」
「なんで舞が悪いのさ?」
明らかにムッとした顔。怖い。
- 47 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/03/26(月) 23:09
- 「だって、なんか、なんかオトナみたいなんだもん。」
バシャバシャとお湯を顔にかける。
なんとなく動かないと落ち着かない。
どうにもできない。
なにかがもどかしい。
「ちさと。」
名前を呼ばれて手首を掴まれた。
真剣な顔した舞ちゃん。
と、思ったらニヤリと笑った。
「バッカじゃないの。舞は舞だし。
そりゃあ、もう16だし少しはオトナにもなるけど。」
「あ、あたしだって17なんだけど?」
そう言うと、ふんと鼻で笑われた。
- 48 :おるぷち :2012/03/26(月) 23:10
- 本日はここまでです。
なんか中途半端ですね(汗
ようやく本物のマイマイさん登場ですー!
>36 :名無飼育さん
やっぱ、そうですかねー。
したら舞美ちゃんが「なんでよー!」と
煩そうですけどねーw - 49 :名無飼育さん :2012/03/28(水) 12:41
- ちさまい可愛いなー
連載している℃作品は少ないので嬉しいです
これからも楽しみにしてます! - 50 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/04/02(月) 22:36
- なんだよ、ちくしょう。
「バッカじゃないの、いくつだろうと
ちさとはちさとじゃん。舞は舞。
そんでちさとは舞のだし。
無視するとかありえないでしょ。」
「は!?いつから舞ちゃんの!?」
「昔っからに決まってんでしょ。」
当たり前、って舞ちゃんがふんぞり返る。
なに、そのドヤ顔。
でも、なんか凄い嬉しいのは何で?
お風呂のせいだけじゃなくて
顔がすっごい熱い。
- 51 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/04/02(月) 22:37
- 舞ちゃんを見ると
“なんだよ”って風な目で見てくる。
そうだ、この感覚。
うちらは目で会話できる仲だったんだ。
「もしかして、ちさとはさあ。
舞がちさとから離れてくとでも思ったの?」
「…うん」
「んな訳ないじゃん。てか、一生離れてやんないから。」
「え〜」
「文句あんの!?」
って、舞ちゃん顔赤い。なんて。
今言ってもお風呂のせいにされるよね。
そうゆー自分だって顔がニヤけてんの分かってるけど。
- 52 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/04/02(月) 22:38
- 「自分で言って照れてやんの。」
舞ちゃんてば、たまに凄いカワイイんだから。
そう思うと更にニヤけてしまう。
「う、うっさい!もう出るっ!!」
「ちょ、待ってよ。あたしも出るし。」
ズンズン進む舞ちゃんを追いかける。
変なの、ちょっと前までは避けてたのに。
今は舞ちゃんの背中追いかけてる。
もっと、うんと前みたい。
あたし、ずっと舞ちゃんを追いかけてた。
- 53 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/04/02(月) 22:38
- そんな舞ちゃんはズンズン歩いて
「ちさとのロッカーどこ?」
って、あたしが答える前に番号の付いた鍵チェックして
素早くあたしの隣にロッカー移動してきた。
ドンドン服を着ながら
あたしに早口でまくしたてる。
「大体ねえ、千聖が“あたし”って言うのが変だし」
「ええ〜」
「髪の毛なんて伸ばしちゃって女の子みたいだし」
「あの、女の子なんですけど。」
「ポニーテールなんてしちゃってさ。」
「別にいいじゃん。」
「大体さあ、乳でかいし」
「はぁ!?」
ちら、と人の胸見たかと思ったら目ぇ逸らして
何言っちゃってんの?この人。
- 54 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/04/02(月) 22:39
- 「…クラスの男子にコクられたって?」
「ええ!?なんで知ってんの?」
愛理となっきぃにしか言ってないのに。
「愛理が言ってた。」
やっぱり。
て、なんで睨んでるの。
「何で愛理に言って舞に黙ってんの!?」
声、低いし。なんで怒ってるの。
だから舞ちゃん怖いんだってば。
そう思いつつ答える。
「なんでって…愛理にはたまたま会った時に流れで
そうゆー話になっただけだし。
それにスグ断ったしさぁ。」
「…」
舞ちゃん見た事ないような複雑な顔してる。
- 55 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/04/02(月) 22:40
- 「なんで?」
「え、なんでって別に好きじゃなかったし」
「誰か好きな人いるの?」
「ええ!?…好き、とか付き合うとか
よく分かんないよ。」
今まで一番ドキドキしたのなんて
舞ちゃん相手だって言ったらどんな顔すんの?
そんな事思ってるなんて知らずに
舞ちゃんは顔をふにゃりと崩して
「ちさと、こどもー!」
すんごい顔で睨んでた人とは思えないほど
嬉しそうに言った。
なんだよ、一個下の癖に。
- 56 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/04/02(月) 22:40
- こどもだなんて、分かってるけど
舞ちゃんに言われたくないし。
「舞ちゃんはどうなんだよぉ」
「舞?付き合った事はないけど
好きな人くらいいるもん。」
がびーーーーーーん。
て、なに。がびーーんって。
ちょ、ちょ、ちょ、それより。
好きな人って?舞ちゃんに?
「え!誰?ちさとの知ってる人?」
「あ、“ちさと”に戻ってる」
「だって舞ちゃんが言うから。」
なんとなく素直に変えてしまったじゃないか。
- 57 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/04/02(月) 22:41
- 話そらされたって分かってるのに
舞ちゃんがまた嬉しそうに笑うからなにも言えない。
「舞は前の髪型のがイイと思う。短いの。」
当然切るよね?って顔。
なに、その自信。
しかも、なんで話戻ってるの?
大体さぁ。
「髪伸ばしたのだって舞ちゃんが言ったからじゃん。」
ボソッとつぶやいたけど
舞ちゃんには聞こえなかったみたい。
そうだ、そうだよ。思い出した。
- 58 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/04/02(月) 22:41
- 髪が短かった頃。
もちろん、それは舞ちゃんが遊びに来てた夏。
一緒に遊んでたら学校の女の子達に会って
その後舞ちゃんが言ったんだ。
「髪の毛伸ばしなよ、女の子が
女の子にキャーキャー言われてるの変」
別にキャーキャー言われた覚えもなければ
言われたとしても髪のせいなのかは
分かんないけど今よりも更に素直だった
ちさとは髪を伸ばすって約束したんだよね。
- 59 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/04/02(月) 22:42
- ねえ、舞ちゃん。
今も昔も。ちさとは舞ちゃんの言う事が絶対みたい。
そんで、舞ちゃんがそうゆー事言うのってさ。
それってもしかして
「ヤキモチ?」
ちさとの質問、聞こえてるくせに
舞ちゃんは何も応えてくれなかった。
だけどさ、さっきよりも耳が赤くなってたの
気付いてるんだからね。
舞ちゃんって素直じゃナイ。
でも、そのヤキモチって
千聖が舞ちゃんに抱いた気持ちと同じなのかな。
- 60 :「街」うちらは絶賛成長中 :2012/04/02(月) 22:42
- 髪の毛とか背の高さとか
自分の知らない誰かといる時の顔とか。
遠くへ行っちゃわないでって
そうゆう気持ち。
これって、なんて名前の気持ちなのか
今はまだ知らなくていいって思っちゃダメかな。
舞美ちゃんは早くオトナになれなんて言ったけど
うちらは成長中で嫌でもオトナになっちゃうから
今は、まだ。
焦らなくてもイイよね?
「ねえ、舞ちゃん。久しぶりに舞美ちゃんに
なんか悪戯しちゃおうよ」
振り向いた舞ちゃんの顔は
昔と同じニヒヒと笑った少女の顔だった。
- 61 :おるぷち :2012/04/02(月) 22:46
- 本日はここまでです。
「街」episode1
「うちらは絶賛成長中」 も、これで終了。
次回は違う人達が出てきます。
とは言え、また今回の登場人物も
どっかで出てくる事もあると思います。
次のepisodeには出ないですけど。
>49 :名無飼育さん
とゆー訳でスミマセン(汗
隙間産業的にw℃-ute作品描いてみたんですけど
喜んでくれた人がいて良かったです。
- 62 :名無飼育さん :2012/04/03(火) 12:31
- かわいいお話ですね〜
次は誰が出てくるのか楽しみです。 - 63 :みおん :2012/04/04(水) 00:18
- なかなか面白かったです。
テヘペロ★流行りですよね、やってるところ見たくなってきました。
次のepisodeも楽しみに待っていますw
℃-uteはもっと小説になってもいいと思うんです - 64 :名無飼育さん :2012/04/05(木) 01:18
- 私も℃作品って今ほとんどなくて悲しい思いをしてるので
とっても楽しく読ませていただきました。
ちょっとくすぐったいようなでもってほんのり萌え〜な感じで和みました。
ちさまい可愛い! - 65 :「街」彼女の横顔 :2012/04/08(日) 22:54
- 「街」episode 2
「彼女の横顔」
出演・吉澤ひとみ 石川梨華 藤本美貴 他
- 66 :「街」彼女の横顔 :2012/04/08(日) 22:54
- 小雪の舞う、いつもの街路樹で
あたしは初めて彼女を見つけた。
ちらほらと白い物を落とす空を見上げ、
頬を染めてる横顔がすげぇキレイで
あたしはどうやら一目惚れってやつをしたらしい。
彼女はしばらく雪を見上げていたけど
やがて薄いピンクのストールに顎まで埋め
ゆっくりと歩き始めた。
それを雪の妖精?なんて
一瞬でも思っただなんてガラにもない。
ぜってぇ友達には言えない話だ。
さらに、その時あたしの頭ん中を
ケメちゃんが歌う「恋の奴隷」が流れてたなんて
かなりマヌケな話だ。
- 67 :「街」彼女の横顔 :2012/04/08(日) 22:55
- ♪あなたと会ったその日から
恋の奴隷となりました♪
「だぁ〜〜もうっ!
圭ちゃん、その歌やめろよぉー」
「なぁんでよ、イイ歌でしょ。」
不服そうに唇を尖らせる圭ちゃんの横で
やぐっつぁんが更に不服そう。
そもそも、この曲は彼女と出会う前日に
やぐっつぁんが悪戯してテキトーに入れたカラオケを
圭ちゃんが完璧に歌いあげてしまったものだった。
悪戯が失敗に終わったのがかなり悔しいらしい。
「大体さー、こんな昭和の古い歌知ってるなんて
圭ちゃんはやっぱ年齢誤魔化してる。
50過ぎでしょ、本当は」
「なーに言ってんのよ、スナックやってんだから
オジサマ方のハートを掴む曲は知ってんのよ。」
そんな風に澄まし顔のケメちゃんは
確かにここ「スナックケメコ」のママなのだ。
そもそもスナックってとこが昭和っぽいよなあ。
- 68 :「街」彼女の横顔 :2012/04/08(日) 22:55
- あの日から。
つまり彼女を知ってから。
3ケ月とちょっとが過ぎた。
雪の降る季節はとっくに過ぎ去り
桜がもうすぐ満開を迎える季節となった。
3週間に一度、彼女はあの街路樹の通りにある
大きな図書館へ行く。
そのサイクルが分かるようになるまで
毎週水曜日はあの街路樹の端に自転車を停めて
必死に目をこらしていた。
もっと詳しく言うと最初の1週間は毎日行った。
そのためにわざわざ仕事のシフトを変えたりもした。
今までのあたしには考えられない事だ。
- 69 :「街」彼女の横顔 :2012/04/08(日) 22:56
- その内、あの日が水曜日だった事に気付いて
毎週水曜日かも?と思い
その後3週間に1度の水曜日と掴んだのだ。
と、言ってもあの日を含めて3回だけ、だから
確実とは言い難いんだけど
図書館の貸し出し期間が3週間なのだから
おそらくそうなのだろうと思っている。
行き先が図書館なのだから
もっと早くに気付けばよかった。
あたしとした事が…。
- 70 :「街」彼女の横顔 :2012/04/08(日) 22:56
- 彼女の借りる本は実に様々で
ミステリ小説もあれば生物や化学の本、
美術書や宇宙の本もあった。
色々な事に興味があるんだなあ、なんて
何気ないふりで彼女を見つめ続けた。
って、これじゃストーカー予備軍だ。
予備軍、ってのはさすがに家までは
尾行してないしって事なんだけど
友人の美貴に言わせると
「十分ヤバい」だそうだ。
うん、あたしもそう思う。
逆の立場ならキモイし怖い。
そうは思っても3週間に1度遠くから眺める位
いいじゃないか、と思ってしまう。
彼女は図書館で本を返し、また新しい本を借り
近くのモダンなカフェで紅茶を飲む。
- 71 :「街」彼女の横顔 :2012/04/08(日) 22:57
- 「街路樹から図書館、そんでカフェまで尾行してんでしょ?
借りた本までチェックしてるとかさぁ、どうなの」
美貴の冷たい視線を思い出すと背中がひやっとする。
同時に頬が赤くなる。
そんなあたしを見て美貴は
「いやぁ残念だなあ。まさかよっちゃんが!
あの、よっちゃんが!」
なんて繰り返し最後は
「中学生レベルだよねー。」
なんてニヤニヤした。
ストーカーと言ったり中学生と言ったり。
なんて嫌な奴だ。コイツに言うんじゃなかった。
しかし藤本美貴と言うこの女は
誘導尋問が恐ろしくうまく
様子のオカシイあたしに素早く気付いて
言葉巧みにあたしの秘密を暴いたのだ。
ああ、なんて恐ろしい女!!
- 72 :「街」彼女の横顔 :2012/04/08(日) 22:57
- 「ちょっと、よっちゃん。声に出てるから。」
「あれ?」
そんな、あたし達のやり取りを
ケメちゃんとやぐっつぁんが面白そうに眺めてる。
「よっすぃがミキティに勝てる訳ないよね」
なんて余計な事を言いながら。
そもそもコイツとの付き合いは
学生時代の焼き肉屋でのバイトからで
あたしと美貴ともう1人とで
しょっちゅう、つるんでた。
最近はもう1人は忙しいらしくて
もっぱら美貴と2人、
週に1度はこの店で飲んでるって訳だ。
この店を見つけたのは、もう1人、なんだけどなあ。
そんな昔に思いを馳せてる間に
美貴の語気はどんどん荒くなっていく。
- 73 :「街」彼女の横顔 :2012/04/08(日) 22:58
- 「とにかくぅ〜、声かけろっつーろ。
遠くから眺めてるらけってぇのは〜
どうなんらっちゅーの」
簡単に言ってくれるよ、この女。
あたしは自慢じゃないが
自分から声掛けたことなんてないんだ。
「そうれすねー、おモテになりまふからぁ〜
いっつも勝手にどんどんやってきまふもんねぇ。」
こいつ、飲みすぎだろ。
さっきから呂律が…何杯目だ?
やけに絡んでくるし。
まあ、荒れる理由はどうせひとつだけ。
- 74 :「街」彼女の横顔 :2012/04/08(日) 22:58
- 「…彼と喧嘩でもしただろ。」
そう言うとピクリと眉を動かし
「喧嘩?そんなんしてませーーん。
ずぇんぶ、あっちが悪いから叱っただけでぅー」
そっからは彼の愚痴。
こんなに言ってても、どうせ明日には仲直りするんだ。
いつもの事。
いや、むしろ今日迎えに来る気がするな、うん。
そう思った途端カランカランとドアベルが鳴り
見なれた男が姿を現した。
「あー、もう美貴ちゃん帰ろう。」
「やぁらー。美貴まだ帰んなぁーい!」
そんなん言いつつ目が嬉しそうだぞ、美貴。
言葉の語尾が甘え切ってるぞ。
普段はおっさんの癖に彼の前になると
途端に乙女なんだから。
「吉澤さんすいません。連れて帰りますね。」
「はいはい、気をつけて。結婚やめるなら今の内っすよ」
軽口をたたくあたしに美貴がギロッと目を光らせた。
おーこわっ!!
彼は軽く笑ってうちらに会釈をし
美貴を背負うようにして帰って行った。
- 75 :おるぷち :2012/04/08(日) 23:02
- 本日はここまでです。
凄いいしよし作家さんが
多数いらっしゃる中恐縮です(汗
62 :名無飼育さん
とゆー訳で次は鉄板カップリングとなりました。
63 :みおんさん
ありがとうございます。
テヘぺロいいですよねw
学生の青春ポイのは結構好きなんです。
>64 :名無飼育さん
ありがとうございます。
また℃-ute達の話も書くので
読んでくれたら嬉しいです - 76 :?1/4?3 :2012/04/11(水) 13:37
- 次はいしよし!
てっきりモベキマスくくりかと!
振り幅有りますねー。
この話も楽しみです。 - 77 :「街」彼女の横顔 :2012/04/15(日) 17:46
- そんなやり取りをした数日後。
いつものように自転車で走ってたら
可愛らしいカフェの窓際に美貴がいるのを見つけた。
な、なんて似合わないんだ!
よくよく考えたら美貴とは夜しか会った事ない気がする。
夜の女・藤本美貴。
うん、似合う。
そのカフェは赤と白と黒のチェックを基調とした
本当に可愛らしくも、どこかロック調の店。
ドーナツとカフェラッテが美味しいんだと
勤務先のスポーツジムで受付してる
女の子達が話してたのを思い出す。
- 78 :「街」彼女の横顔 :2012/04/15(日) 17:47
- そんな店の窓際の席でアタリマエみたいに
なにかを飲んでる美貴が面白過ぎて
Café Bounoと書かれたその店のドアを開く。
ツインテールの店員が声をかけてきたけど
ちょっと知り合いが…と言って真っ直ぐ美貴に向かう。
向かっている途中で美貴と目が合い
わざと意地悪そうにニヤッと笑うあたし。
美貴の顔には“げぇっ”と書いてある。
あたしは面白くて仕方なくて更に歩くと
美貴に連れがいた事に気付く。
観葉植物の影になっていて見えなかったのだ。
あたしに背を向けている、その女性は
まだ、あたしに気付いていないようで
変な顔してる美貴に
“どうしたの?”なんて言っている。
- 79 :「街」彼女の横顔 :2012/04/15(日) 17:48
- えらく高い声だなーと思いつつ
思いっきりニヤニヤした顔で笑いながら
「み〜〜き〜〜〜。大変お似合いな店に
まっ昼間からいらっしゃいますねー?」
「美貴ちゃん、お友達?」
ちょ、美貴ちゃんって!
その呼び名に笑いを噛み殺しながら
美貴の連れの方に振り向き
「どうもー。お友達の吉澤って…」
言いかけて、あたしは固まった。
ウソだろ?
彼女だ。
あの、雪の妖精の。
その、彼女がなんで美貴と?
てか、今目の前に居るってのが信じられない。
- 80 :「街」彼女の横顔 :2012/04/15(日) 17:49
- 「あ、あたし美貴ちゃんの幼馴染で石川です。」
にこっと笑う彼女。
やっぱりカワイイ。そして美しい。
やばい。間近で見ると更にすげぇ…すごすぎる。
「石川、さん?」
「ハイ」
あたし、話してるよ。
妖精と!いや、石川さんと!!
「石川、なにさん?」
「梨華です。梨に華やか、で。」
「自分で華やかとか言うかね」
聞き慣れた声に美貴の事を思い出した。
梨華ちゃんは美貴に
「なによぉー」
なんて、頬をふくらまして抗議してる。
ちょ、可愛すぎる。
- 81 :「街」彼女の横顔 :2012/04/15(日) 17:49
- 美貴め。こんなカワイイ幼馴染いるなんて
言ってなかったじゃないか!!
「で?よっちゃんは何してんの?」
「へ?ああ、通勤途中で美貴見かけたから」
「じゃー、さっさと通勤しろよ」
「いや、まだ時間あるし。つか美貴がカフェって!」
「違うし!梨華ちゃんの趣味だし!」
「え〜、美貴ちゃんココのチョコケーキ好きでしょ」
梨華ちゃんの声に明らかに仏頂面の美貴。
あたしに見られたのが、そんなに嬉しいか。
あたしは美貴をニヤニヤと見る。
本当は梨華ちゃんを眺めてたいけど
さすがに緊張してしちゃうから。
- 82 :「街」彼女の横顔 :2012/04/15(日) 17:50
- 「梨華ちゃんには似合うけど美貴はちょっとなあ。」
「うふふふふ」
「ちょっと、美貴の幼馴染ナンパすんな。」
「してないじゃん、本当の事じゃん。
美貴なんかケメコか焼き肉屋のイメージしかねえし!」
「人の事言えるか!!」
そんな、あたし達のやり取りに
梨華ちゃんが更にクスクス笑う。
笑い方まであたし達とは大違いだ。
くふぅーーー!かぁわいいなぁ〜〜!!
「時間あるなら吉澤さん?も何か飲んで行きません?」
「え!?」
って、、、うぉっ!!
椅子に座る彼女は立ってるあたしに対して
自動的に上目遣い。それ反則だろって。
か、か、かわいい。
- 83 :「街」彼女の横顔 :2012/04/15(日) 17:51
- 「よっちゃん、早く仕事行った方がいいって!」
美貴がシッシッと手を振る。
ほお、そうゆー態度。
「梨華ちゃんに誘われたら断れないなあ♪」
なんて、ちゃっかり梨華ちゃんの横に座る。
梨華ちゃんはまたウフフと笑う。
そんな彼女をチラッと横目で見てから
店員を呼ぶと、さっきのツインテールが来た。
「はぁい。ももちの本日のお薦めはピーチティーでっす♪」
聞いてないし。小指立ってるし。
「コーヒー」
「ももちの本日のお薦めはピーチティーでっす♪」
「本日のコーヒー。」
「…かしこまりましたー!」
ピョコンとおじぎしていく店員。
- 84 :「街」彼女の横顔 :2012/04/15(日) 17:51
- 「ずいぶん変わった店員だね。」
「ごめんなさい。」
なぜか謝る彼女。不思議顔をするあたしに
「あたしの従妹なの。」
って、ちょっと恥ずかしそうな梨華ちゃん。
シマッタ。
「ああ、それで!普通、お客さんにあの態度はないよね。」
「…いつでもああなの。」
「…お、おもしろい子だね」
正面の美貴は大爆笑。このやろう。
「もう美貴ちゃん笑いすぎ」
「そうだぞ、美貴ちゃん!」
「美貴ちゃん言うな!」
「えー?小さい頃から呼んでるのに」
「いや、梨華ちゃんじゃなくて」
え〜?と唇をとがらせる梨華ちゃん。
だから可愛いです。。。
- 85 :「街」彼女の横顔 :2012/04/15(日) 17:52
- 「あ、そうだ。吉澤さんはなんて呼んだらいいかなあ?」
「よっちゃんなんかお前とかオイでイイって」
「もう!美貴ちゃんは!下の名前なんていうの?」
「ひとみ。吉澤ひとみ」
「じゃあ、ひとみちゃんだね」
そう言った途端さっきよりも大爆笑する美貴。
うん、そうだよな。
あたしも、それは勘弁してほしい。
でも美貴は笑いすぎ。
身を乗り出してデコピンをお見舞いしてやる。
「いっでぇーーーーー!!」
「ふん。天罰」
- 86 :「街」彼女の横顔 :2012/04/15(日) 17:53
- そんなギャーギャー騒ぐあたし達を
店員が注意しに来たのは言うまでもない。
ちなみに「ももち」ではなく
ショートカットのクール系だった。
さっきチラと見えた黒髪ロングの店員といい
ここのカフェは(性格はともかく)ビジュアル点高いな。
ま、梨華ちゃんがダントツすぎて霞んじゃうけど。
なんてな!
そんなあたしを美貴がジトーっと見ていたのに
一応は気付いたけど、それがどんな意味を持つのか
その時のあたしは知る由もなかった。
- 87 :おるぷち :2012/04/15(日) 17:55
- 本日はここまでです。
御園座で観る桜は格別でした。
梨華ちゃん熱高まり中〜!
アイス最中もおいしかったw
>76 :?1/4?3さん
大人も少女もいっぱい出します!
くくりとかは特にありません。
よろしくお願いします! - 88 :名無飼育さん :2012/04/16(月) 00:06
- いしよし素敵です!!
梨華ちゃんはやっぱり美しい! - 89 :名無飼育さん :2012/04/16(月) 13:54
- 和やかな娘。小説って感じで好きです。
- 90 :「街」彼女の横顔 :2012/04/23(月) 23:30
- その1週間くらい後。
ケメコに美貴が梨華ちゃんを連れてきた。
先にカウンターで飲んでたあたしは
思わず高いスツールからずり落ちそうになった。
「り、梨華ちゃん?」
「えへへー。来ちゃった!ひとみちゃんいて良かったー」
「良くないし。」
仏頂面の美貴。どうした?
「美貴ちゃんがね、ひとみちゃんとココで
良く飲んでるって言うから付いてきちゃった」
「無理矢理ね」
低い声の美貴。だから何でお前はそんなに不機嫌なんだ?
- 91 :「街」彼女の横顔 :2012/04/23(月) 23:31
- 「あたしスナックとかって行った事なくてー」
「そうなんだ。」
そんな美貴におかまいなしで梨華ちゃんは
ニコニコとあたしに話しかけてくれる。
やっぱ可愛いなあ。
「いらっしゃい。立ってないで座ったら?」
カウンターの向こうからケメちゃんが声をかける。
「そうだよ、座んなよ、ミキティも」
カウンターの端に座るやぐっつぁんからも声がかかる。
てか、やぐっつぁんって毎日いるんじゃないか?
別にいいんだけど。
声をかけられて梨華ちゃんは嬉しそうにあたしの隣に
美貴はその隣に腰をかける。
- 92 :「街」彼女の横顔 :2012/04/23(月) 23:31
- 「美貴ー、お前なんでそんな仏頂面なの?
悪人顔に磨きかかってるぞ。」
茶化すように言うと
「うっさいなー」
「美貴ちゃんは恥ずかしいんだよねー。」
梨華ちゃんが何でも知ってますって顔で言う。
「美貴が恥ずかしい奴なのは知ってるよ?」
そう言うと梨華ちゃんはコロコロと笑い
美貴はますます仏頂面。
「あたしに美貴ちゃんの過去の話とか?
おうちでの話とか?色々されたくないみたい。
全然お友達も紹介してくれないのよ?」
- 93 :「街」彼女の横顔 :2012/04/23(月) 23:32
- 「なんで梨華ちゃんに美貴のお友達
紹介しなきゃなんないわけ?」
「なんかマズイ事でもあるの?」
「べ、べつに、ないけどさあ。」
うーん。なんか梨華ちゃんのがお姉さんみたいだ。
なかなか見れる美貴じゃないな。
もしかして、そうゆートコを見せたくなかったのかな。
分からんでもないけどなあ。
なんか嫉妬するより微笑ましく感じるわ、これ。
- 94 :「街」彼女の横顔 :2012/04/23(月) 23:32
- 「梨華ちゃん達って幼馴染なんだよね?」
「そうよ、ずーっと小さい頃から一緒。」
梨華ちゃんはニコニコと色んな事を話してくれた。
美貴がガキ大将を泣かせた事。
自分の飼ってるワンコにデレデレな事。
寝起きが最悪でいつも学校に
引きずるように連れて行った事。
その横で美貴がずっと
苦虫を噛み潰したような顔をしつつも
止めても無駄と言うように黙って酒を飲んでいた。
- 95 :「街」彼女の横顔 :2012/04/23(月) 23:33
- 梨華ちゃんはおしゃべりが大好きみたいで
お酒片手に本当に色々話してくれた。
時々話が飛ぶもんだから理解するのに
時間かかったりもしたけど
コロコロ変わる表情がすごく可愛くて
なんか得した気分になった。
あー、やっぱ梨華ちゃん可愛いなあ。
最初はキレイって思ったけど
実際話してるとカワイイんだな。
まいったな。
- 96 :「街」彼女の横顔 :2012/04/23(月) 23:33
- 「うふふ。ひとみちゃんは私のお話
ちゃんと聞いてくれるから嬉しいな。
美貴ちゃんなんて全然聞いてくれないんだから」
「だって梨華ちゃんの話オチないし
意味分かんない事多いしー。」
時々入る2人のやり取りは
なんかこう…姉妹のような
古くからの友人のような。
幼馴染ってこうゆーもんなのかな?
あたしには、そんな人いないから
良く分かんネーけどなんかいいな。
- 97 :「街」彼女の横顔 :2012/04/23(月) 23:34
-
だけど。
だけどさ。
梨華ちゃんって表情が豊かなのはいいけど
ちょっと分かりやす過ぎる。
- 98 :「街」彼女の横顔 :2012/04/23(月) 23:34
- 美貴の彼が店に迎えに来て
「じゃあ、またね。」
なんて手を振って美貴が帰る時。
美貴が梨華ちゃんを気遣って
「一緒に帰る?車で送らせるよ。もう遅いしさ。」
なんて言って、でも梨華ちゃんが
「まだお話してたいし、大丈夫だから。」
「じゃあ、まだ寒いから美貴のマフラー貸してあげる」
まだ店の中なのに梨華ちゃんの細い首に
自分のマフラーくるくる巻いて。
「危ないからタクシー使いなよ?」
なんて言ってさ。なんか、そのやり取りの時の顔がさ。
- 99 :「街」彼女の横顔 :2012/04/23(月) 23:35
- 切ないみたいな嬉しいみたいな困ったような感じで。
美貴も美貴でなんで急にそんな
梨華ちゃんに気遣いだしてんの?みたいな
なんか変な空気で。
だって女友達って感じじゃないだろ、これ。
美貴の彼は先に外に出て待ってて
だからこそ、更にこの空間が変な感じ。
あたしって結構そうゆーの鋭い方だし。
なんか、これは。幼馴染じゃなくね?
- 100 :おるぷち :2012/04/23(月) 23:38
- 本日はここまでです。
( `.∀´)もうちょっと続くわよ
(〜^◇^)うちら出演者名に入ってないのどうゆー事?
( `.∀´)他って事ね…
>88 :名無飼育さん
梨華ちゃんの一番きれいなのは
横顔だと思うのは自分だけでしょうか
>89 :名無飼育さん
ありがとうございます!
大きな事件はなくて日常っポイのを
タラタラ書くのが好きなんですよw
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