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CROSS OVER

1 :ちゃぽ :2010/04/17(土) 19:52
初めて小説書きます。
つたない所もあると思いますがよろしくお願いします。

ももみやです。
2 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:03
「もう、おかーさんなんか大嫌い!」
「ちょっ、雅待ちなさい。雅!!」



夏焼雅、高校3年生。もうすぐ18歳。
高校最後の夏休み、母親と喧嘩して家を飛び出した。

当ても無く夜の街をふらふらと歩いてたら
「あれーお姉ちゃん1人?おじさんと一緒に遊ばない?」

酔っぱらいのサラリーマンに絡まれた。
関わるとろくな事がないと、無言でその場を離れようとした。
「無視しないで。おじさんお金持ってるから好きな所連れてってあげるよ」
男は腕をつかんできた。

「離して下さい。急いでるんで」
捕まれた腕を振り払おうと、足掻くが男はびくともしない。
それどころかいっそう絡んできた。

「やめて。やめてったら」
悲鳴のような声を上げるが周りの人は誰も助けてくれない。
見て見ぬ振りをしている。
3 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:03
そんな中
「おまわりさーん。こっちですよー。早く早く」
その声に男は慌てたように逃げ去った。
開放された雅は腰が抜けてその場に座り込んだ。

「大丈夫?立てる?」
震える手を握って優しく声をかけてくれた。
顔をあげると見知った顔がそこにあった。

「あれ。みや?」
「も・・・もも?」
4 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:04
そこにいたのはうちの1つ上の先輩。
嗣永桃子。
そんなに親しい間柄ではなかったが共通の友人を通じて知り合った。

「ずっとこんな所にいるのも危ないから移動しよう」
雅を支えるように立ち上がらせ、歩いていく。

「ももんちここから近いんだ。寄って行きなよ」
無言のまま頷く。
歩く最中も桃子は震える手を握っていてくれた。
5 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:05
桃子の家に連れられた。
「ちょっと散らかってるけどごめんね」と、部屋に通された。
「みや、ココアでいいかな?」
頷くと桃子はキッチンに消えた。

1人になるとさっきの事を思い出し怖くなった。
力一杯振り払ったのに全然びくともしなかった。
もしあそこにももがいなかったらと思うとぞっとする。

桃子はすぐにココアを2つ持って戻ってきた。
「あったかいうちにどーぞ」
一口飲むと何故か涙が出てきた。

泣き止むまで桃子はずっと側にいて背中をさすってくれた。
ようやく落ち着いてきた雅はぽつりぽつりと話し出す。
6 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:08
「おかーさんと喧嘩しちゃって家を飛び出して。それで行く当てもないし、ぶらぶらしてたらへんなおじさんに絡まれちゃって・・・」
「あの辺治安がよくないんだから、ふらふら歩いてたら危ないんだよ。ほんとももがいなかったらどうなってたか・・・」
雅は返す言葉も無く一言「ごめん」と謝る。

そんな雅に桃子は溜息を落とすと
「まあ、みやも無事だったからいいとするか」
明るく言い放つ。
7 :_ :2010/04/17(土) 20:12

8 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:14
時刻は夜の10時。

「みやも落ち着いたみたいだし、もう遅いから送っていくよ」
「やだ・・・・・・」
「えっ?」
「やだ、帰りたくない」

母親と喧嘩したままの雅は家に帰りたくない。
帰ったら今日のことを否が応でも説明しなければならない。

駄々をこねていると桃子は再度溜息を吐く。
「せめて家に連絡だけでも入れないと」
その言葉にも頭を振って否定する。

「じゃあみや、お風呂でも入っておいで。そこら辺にあるタオルとか使っていいから」
「いいの?」
「しょーがないでしょ。でも明日の朝、早く帰るんだよ。着替えは後で出しとくから」

桃子の言葉に素直にお風呂を借りる事にした。
9 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:14
お風呂から出ると布団が用意してあった。
「疲れたでしょ?寝てていいよ。もももお風呂入ってくるから」
お風呂に入ろうと立ち上がる桃子に
「あっ・・・あの、もも」
「ん?」と、振り返る。

「あの・・・今日はありがとう」
照れくさくなって布団に頭から被った。
くすっと笑われて、「おやすみ」の声と同時に電気が消えた。

桃子がお風呂から上がったのにも気付かず、雅はそのまま夢の中へ旅立った。
10 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:16

11 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:17
朝、カチャカチャとフライパンの音がして目が覚めた。
寝起きでまだ頭が働かない。
ここは・・・・・・周りを見渡していると
「あ、みや起きた?ごはんもうちょっとで出来るから顔洗ってきたら?」

ふらふらと洗面所へ行き、顔を洗うとさっぱりした。
テーブルに着くと、トーストと黄身がつぶれた目玉焼きとポタージュが用意されていた。

「ごめんね。もも料理あんまり上手くなくて・・・」
「ううん、泊めてもらっただけでも十分」
お世辞にもそんな事無いよとは言えなかった。
12 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:17
「じゃあ食べようか」
桃子の声で食べ始めるが、食事中は二人とも無言で黙々と食べ続けた。

「お母さんと喧嘩したって言ってたけど、何かあったの?」
沈黙を破って桃子は一番聞かれたくないことをズバッと聞いてきた。
「それは・・・」言いたくなくて口を濁す。

「昨日みやを泊めたからには、ももには事情を聞く権利があると思うんだけどな」
その言葉に渋々重い口を開いた。
13 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:19


◆◆◆◆◆

14 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:21
時はさかのぼる事昨日の夕食


父親は最近仕事が忙しいらしく夕食はもっぱら母親と2人だ。
「今日もおとーさん残業なの?」
「そうなの、今抱えてる仕事を終えて引継ぎをしなきゃいけないみたいで大変なのよ」
「ふーん」とあまり興味がないのか生返事で答えた。

そんな雅をよそに母親は深刻そうな顔で
「あのね、雅。雅にまだ話してなかったんだけど・・・」
「なぁに改まって」

「お父さん最近お仕事頑張ってるでしょ?その頑張りが認められて課長に昇進することになったの。それで大阪の方へ行ってくれないかって話が出てて」
「へー大変だね」
「それで8月の末には向こうに引越ししなきゃいけないの」
15 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:22
その時の雅はてっきり父親だけが大阪に行くものとばっかり思っていた。
「8月ってもう1ヶ月もないじゃん。おとーさんも大変だね、ごはんとか1人でやっていけるの?」
「何言ってるの?家族みんなが行くに決まってるでしょ」

「はぁー?何言ってんの、うちやだよ。そんなんおとーさん1人で行けばいーじゃん!」
「馬鹿言わないの!お父さんが3人で行くって言ってるんだから」

「なんでおとーさんの都合に合わせなきゃなんないの?」
納得が出来ず母親にわめき散らす。

後半年で卒業だし。
友達とも離れたくない。
16 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:23
「我侭言わないの!もう決まった事なんだから」
「いいよ、じゃあうちだけこっちに残る」
「出来るわけないでしょ!高校生が1人で生活なんて」
「どーせ高校卒業したら家出ようと思ってたし!」

ぱんっ
音と共に頬に痛みが走る。

「おかーさん何か大嫌い」
左頬を押さえ、泣きながら家を飛び出した。
17 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:23


◆◆◆◆◆

18 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:26
桃子は黙って話を聞いていた。

「そっか・・・。でもお父さんの気持ち、分からないでもないなぁ」
「ももまで何で?」
「もも、今1人暮らししてるでしょ?1人でいると家族のありがたみがすごく分かるんだ」

桃子はいつものへらへらした顔とは違って、真剣な顔をして語りだす。


――ももはね、夢のために今の学校を選んだ。でもこの学校に通うには家からだと遠いし、不便だからってお父さんが1人暮らしを勧めてくれた。
でもお母さんがよくももに言うんだぁ。桃子が1人暮らし始めてからお父さん、寂しがってるから時間があったら帰ってらっしゃいって。
帰ったら帰ったらでももには強がっちゃって、また帰って来たのか、なんて言うんだけどね。
みやのお父さんも、みや1人残して行ってもし何か遭ったらって思うと心配なんだよ。
いつでも自分の目の届くところにいてほしいんだよ、きっと。
19 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:27
その言葉に雅は返す言葉もなかった。

――みやがこっちに残りたいって気持ちはよく分かるよ。でもただヤダヤダ言ってるだけじゃあ、単なる我侭だよ。
もし、ももがみやのお父さんだとしても無理矢理にでも連れて行くよ。
ちゃんとみやの気持ち、伝えなきゃ。このままじゃお父さんも分かってくれないよ?
・・・ね、1回ご両親と話し合った方がいいよ

素直に「分かった」と答える。
いつも桃子には反発ばかりしていたが、今の言葉には説得力があった。

「話ぐらいももでよかったらいつでも聞くからさ」
「・・・うん」
「じゃあお母さん心配してるだろうから早く帰ってあげて」
20 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:28
雅は素直に家に帰った。
でもいざ家の前に着くと、母親にどういう風に顔を合わせればいいかわからない。
家の前をうろうろと歩いていると買い物へ行く母親とばったり会った。

「あんた何家の前でうろうろしてるの?近所迷惑だから早く家に入りなさい」
「あの・・・その・・・・・・昨日は」
「ちょうどいいわ。今から買い物に行って来るからお留守番よろしくね。」
雅の言葉を遮って母親は何事も無かったかのように話す。

「うん・・・いってらっしゃい」
雅は戸惑いながらも答える。

昨日家に帰らなかったこと、絶対叱られると思ってた。
普段通りの母親の様子に拍子抜けした。


後から知った話では、雅が寝てる間に桃子は母親に電話を入れてくれていたらしい。
21 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:29

22 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:30
その日の晩、今日も2人での夕食。


「あの、おかーさん」
「なぁに?」
「昨日は大嫌いって言って、その・・・ごめんなさい」

勇気を振り絞って昨日のことを謝る。
そして桃子から言われた、両親と話し合うこと。

「いいのよ。お母さんもかっとなっちゃってごめんなさいね」
「ううん。それでね・・・ちゃんとおとーさんの話も聞きたいかなって。おとーさんいつ早く帰ってくる?」
「確か今週末には一段落するだろうって言ってたわよ」
「わかった。じゃあその日に話しよ?」
23 :ちゃぽ :2010/04/17(土) 20:33
中途半端ですが今日はおしまい
とりあえずストックが続く限りサクサク更新できたらなぁ・・・
24 :名無飼育さん :2010/04/18(日) 01:38
ももみやキタ!
つづき待ちます。
25 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:13


◆◆◆◆◆

26 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:14
そして土曜日。


緊張のあまり手が冷たくなってきた。
雅が話したいと言ったにも関わらず何を話したらいいか分からず黙り込んだ

ままだった。
27 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:15
そんな雅をよそに父親は口を開いた。

「お母さんから聞いたと思うけど、この9月から大阪に転勤になった。雅もあと半年で卒業って時期に悪いとは思う。
でもな、俺は家族3人で一緒に暮らしたい」

――俺の親父は仕事人間で金さえ入れてたらいいだろっていう人間だった
今思うとそれが親父なりの愛情表現につもりみたいだけどな
でも家庭のことは疎かで、おふくろは俺の前では笑ってたけど影で泣いてた
俺も子供ながらに寂しくていつも兄貴の後ろばっかりついて回ってたよ
雅も今更寂しいって年でもないかもしれないけど、俺は、家族は一緒にいるべきだと思う
それにいずれ雅も大人になれば家を出て行っちまう。それまでは俺の我侭だけど家族3人仲良く暮らしたい
だから雅も一緒に大阪へ行ってくれ
28 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:16
黙って父親の話を聞いていた。

「おとーさんの言いたいことはわかった」
「じゃあ、一緒に行ってくれるか」

「ううん、そうじゃなくて・・・そうじゃないんだけど、うち、頭ん中整理できなくて・・・。ちょっと考える時間下さい」
雅はそのまま階段を駆け上がった。

「ちょっと雅待ちなさい。まだ話終わってないでしょう?」
「いいんだ。俺も唐突だったし、雅も混乱してるんだろう」
29 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:16
下から雅を呼ぶ声がしたが今は何も聞きたくなかった。


そのまま部屋に閉じこもり色々考えを巡らす。
だけどいくら考えても分かんない・・・。

――話ぐらいももでよかったらいつでも聞くからさ

ふと桃子の言葉を思い出した。
時刻は夜の11時。
もう遅いかと思ったが思い切って電話をかけた。
30 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:17
――プル、プルルル、プルルル
さすがにもう寝てるか。
諦めて電話を切ろうとしたら

《もしもし、みや?こんな時間にどうしたの?》
「あっ、遅くにごめん・・・」
《それは別にいいんだけど、何かあった?》
「あのね・・・今日、おとーさんと話したんだ」
《うん》
「それでうち混乱してて、どうしたらいいか分かんなくて」
矢継ぎ早に話す。

《ちょっ、みや落ち着いて。ね?》
「うん、だけどうち・・・」
《みや、今日は早く休んだ方がいいよ。混乱してるみたいだし一晩ゆっくり

休んでもう一度整理してごらん?》
「でも!」
《ね。もう遅いし、それに電話じゃあ伝わりにくいし明日うちにおいで?何

時でもいいから》
「・・・うん」
《じゃあおやすみ》

その日桃子に言われた通り早めに就寝した。
31 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:18

32 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:19
「ちょっと出てくる」
「雅!こんな朝早くからどこ行くの?」
「昼過ぎには帰ってくるから」


朝起きてごはんも食べずに桃子のアパートを目指した。
桃子の家はうちから歩いて15分の所にある。

アパートの前に着いて時間を見るとまだ7時だった。
ちょっと早かったかと、引き返そうかと思ったが
「何時でもいいから」と言ってくれた言葉を信じてチャイムを押した。

すぐに桃子は出てきてくれた。
部屋に通され、お茶を用意してくれた。
33 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:20
「どう?一晩休んで考えがまとまった?」
無言で首を振る。

「じゃあ、みやにとってお父さんってどんな人?」
黙って考えを巡らす。
(うちにとっておとーさんって・・・)


―――家族を一番に考える人かな
うちが熱を出した時なんか救急車を呼ぼうとしてた。
おかーさんが慌てておとーさんの事止めてた。単なる風邪なのにね・・・
いくら仕事が忙しくても運動会とか参観日とか、絶対来てくれてた。
小さい頃は素直に嬉しかった。
でも中学に上がる頃には恥ずかしくなって来なくていいよって意地張っちゃった時も
「まあまあいいじゃないいか。俺が雅の成長を見たいんだから」って笑ってた。
そんなおとーさん悲しませたくない。
うち一緒に大阪行ったほうがいいのかなぁ。
34 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:22
弱気になる雅に、桃子は優しく諭すように言う。
「でもそれはお父さんの気持ちでしょ?みやの気持ちはどうなの?このまま大阪行って後悔しない?」

―――うちは・・・うちは、ここを離れたくない

「うちあんまり頭よくなくて今の高校に入るのにいっぱい勉強した。先生からも絶対無理だからやめろって言われたけど、
それでも無理を言って受験した。ほんと死ぬ物狂いでやった。いつもテストもあんまり点数よくなかったりするけど、
それでも最後までいまの学校にいたい。友達だっているし、何より今の仲間と一緒に卒業したい・・・」

「それがみやの素直な気持ちでしょ?お父さんにも今のこと言ってごらん。きっと分かってくれるよ」
「でも・・・。おとーさん聞いてくれるかな?」
「それは1番みやが分かってるんじゃないの?気持ちは口に出して言わないと、思ってるだけじゃ伝わらないよ」
35 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:23
「うん・・・。でも1人じゃあやっぱり不安だからももも一緒にいて」
「でももも部外者だからお父さんもいい顔しないと思うんだけど」
「それでもお願い。一緒にいて?」

縋る様な目で見つめる。
「はー、しょうがないなぁ。でもお父さんが駄目って言ったらもも帰るからね」
「うん。ありがとう」

ぐー。
話が終わるのと同時にお腹が鳴った。
顔を真っ赤にしてお腹を押さる。

桃子は遠慮なく笑っていた。
「みや、ごはん食べて来なかったの?」
「だって、それどころじゃなかったし・・・」
「ちょっと待ってね。昨日の残り物でよかったら用意するから」
36 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:27
>>24
まだ当分ももみやしない感じですが気長にご覧下さい
37 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:36
夏焼家。



「ただいま」

雅の声に母親はすぐさま奥から出てきた。
「雅どこへ行ってたの?お父さんずっと待ってるわよ」

「あら、そちらは?」
「はじめまして、嗣永桃子です」
「挨拶なんかいいよ、上がって」
引きずるように家に上げる。

桃子を連れて父親のいる書斎へ向かった。
部屋の前で深呼吸して襖を開け中へ入る。

「雅帰ったのか。おかえり。ん?お友達か?」
「うん、友達っていうか高校の先輩」
「はじめまして、嗣永桃子です」
「どうも雅の父です」
38 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:36
「嗣永さんと言ったかな?」
「はい」
「折角来て下さった所申し訳ないんだが今から大事な話し合いをしなくちゃあいけないんだ。悪いけど席をはずすか帰ってもらえないだろうか?」

「ほらみや、やっぱり言った通りでしょ?すいません、今帰りますから」
「駄目、帰らないで。お願いだから一緒にいて」
帰ろうとする桃子の手を掴んだ。

「おとーさん、うちがお願いしたの。一緒にいてって。ね、いいでしょ?」
雅の必死な様子に黙認してくれたようだ。

「で、雅は結論出たのか?話を聞かせてもらおうか」
39 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:38
――うん、あのね・・・おとーさん。うち、おとーさんの気持ち、よく分かった。
でもやっぱりここから離れたくない。友達だっていっぱいいるし今の学校ちゃんと卒業したい・・・。
中学の時死ぬ気で勉強して補欠入学だったけどそれでも留年もせずに今までやってこれた。
今いるみんなと、友達と一緒に卒業したい!あと半年だし最後までいさせてほしい。

雅の素直な気持ちをぶつける。

「だからこっちに残らせて下さい」
「残ってどうするつもりだ?」
「だからあの・・・学校の近くにアパートでも借りて・・・」

「馬鹿言ってるんじゃない!1人暮らしなんてまだ早すぎる!それに雅はまだ子供じゃないか。
子供が親の元で暮らさないでどうする」

父親の勢いに身を縮める。
そんな雅に桃子は大丈夫だよと言わんばかり微笑んでみせた。
そして今まで黙っていた口を開いた。
40 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:39
―――あの・・・部外者の私が言うのも差し出がましいんですが、雅さんはお父さんが思ってるほど子供じゃないですよ。
失礼ですけど雅さんから色々と事情は聞きました。お父さんの家族を大事にしたいって気持ち、凄くよく分かりました。
でも雅さんの学校を、友達を大切にしたいって気持ちも大切にしてあげて下さい。無理矢理連れて行ったらきっと心に傷が残ります。
お父さんは雅さんに傷を残したいんですか?雅さんなら大丈夫ですよ。家族の話をする時の雅さん目、すごく優しいんです。
そんな雅さんだからお父さんの期待を裏切るようなことはしないですよ。

「だが・・・」

「大丈夫ですよ、雅さんこんなにいい子に育ってるじゃないですか。雅さんをみてるとどんな風に育ったか分かりますもん。雅さんを信じてあげて下さい」

沈黙が続く。


41 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:39
沈黙を破ったのは父親だった。

「・・・分かった、こっちに残るのは許可しよう。だが1人暮らしはだめだ。若い年頃の娘が1人なんて危ない」
「じゃあ、どうしたらいいの?」
結局話は振り出しに戻った。

「兄貴の所に預けよう」
「でも、おじさんちだと学校に通うには遠すぎるよ」

恐縮そうにも桃子は告げる。
「あの、だったらうちで預かりますよ」
その言葉に雅は桃子の顔を見る。
そんな雅を無視して父親と話を続けている。
42 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:40
「そんな、よそ様に迷惑なんて掛けられません」
「迷惑なんて。ちょうど私のアパート、1部屋空いてますし昨日雅さんから相談を受けた時からずっと考えてたんです」

桃子は雅の方を見て茶目っ気たっぷりに
「みやが嫌じゃなければだけどね」
と、ウインクのおまけまでしてきた。
(ウインクになってなかったけど・・・)
そんな桃子を呆然と見つめることしか出来なかった。

そんな2人を尻目に父親は諦めたかのように何も言ってこなかった
43 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:40
「雅」
うちを呼ぶ声に慌てて向き直す。

じーっと雅の顔を見る。
目を逸らさず見つめ返していると
父親は溜息を1つ落とす。

ちゃんと朝は自分で起きれるか
――・・・・・・
どうなんだ
――・・・起きれる
宿題は忘れずに出来るか
――たっ多分
多分?
――ううん、出来る
嗣永さんに迷惑をかけないか
――かけない
ちゃんと言うことを聞けるか
――聞ける
あと、週1回は必ず家に電話を入れる
――うん
月1回は大阪に来て家族みんなで食事をする
――うん

雅はすべての質問に真摯に答える。
44 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:41
「はー分かった、俺の負けだよ。でも雅半年だぞ。卒業したら大阪に来い、いいな?」
「うん。おとーさん、ありがとう」

そして雅に向かっていた視線が桃子に向けられる。

「嗣永さん本当にいいんですか?こいつが無理矢理言って仕方なしに言ってくれたんじゃあないんですか?」
「そんなことないです。私も小さい頃父の転勤で何回か転校させられたことありますし、雅さんの気持ち、よく分かりますから」
「そうですか。こんな馬鹿な娘ですがよろしくお願いします」

父親が頭を下げる。
桃子は駆け寄って頭を上げさせる。

「私も1人暮らしで寂しかったものですから雅さんが来てくれると嬉しいんで気になさらないで下さい」

桃子の言葉に張り詰めていた空気がようやく緩んだ。
45 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:42
「ああ、もうこんな時間か」
その声に時計を見ると夜の8時を回っていた。

「おい、おまえ」
部屋の外に控えていたのだろう、母親はすぐに顔を覗かせた。

「はい、なんでしょう」
「折角だから嗣永さんにご飯でも食べてって貰おうと思うんだが、食事の用意は出来ているか?」
「すいません、まだなんです」
「なら丁度いい寿司でも取りなさい。特上4人前だ。・・・という事だ。嗣永さん食べてって下さい」
「でも・・・」
「遠慮は要らない。これから雅がお世話になるんだからな」
「じゃあ喜んでいただきます」

そして4人で和気藹々と食事をした。

「もう遅いから泊まっていきなない」と言う父親に、桃子は明日大学が早いからと丁重に断って帰っていった。

桃子の帰りを見送る中、父親は「雅もいつの間にかこんなに大きくなったんだな。俺も年をとる訳だ」と、雅の頭をクシャっと撫でる。
「それにしても雅、いい先輩を持ったな」
その言葉に、照れくさそうに「うん」と答えた。
46 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:42

47 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:43
その夜。
雅はベットの上で改めて桃子のことを考えた。


ももは佐紀ちゃんの友達という認識でしかなかった。

――清水佐紀。
雅の仲のよい先輩。
桃子と同い年で、佐紀を通じて桃子と知り合った。

なんで佐紀ちゃんがももの友達なんてやってるんだろうと不思議に思ってた。
ぶりっこでへらへら笑ってて、いつも何考えてるか分かんない。
いつか佐紀ちゃんに聞いてみたことがあった。

『よくももの友達なんてやってられるね』
『みやったらまたそんな事言うんだから・・・』
『だって、ぎゃあぎゃあうるさいだけじゃん』
『みやはももとはそんなに付き合いないからそんな事言えるんだよ。ももはあれでいて色々考えてるんだよ?やる時はやるし、結構頼りになるんだから』
『佐紀ちゃんたら買いかぶりすぎなんじゃないのぉ?』

あの時のうちはいくら佐紀ちゃんの言葉だからって全然信用していなかった。
うちはももの表面しか見ていなかった。
さり気ないところで色々助けてくれた。
今回のことで佐紀ちゃんが言っていたことがよく分かった。

48 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:44

49 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:44

50 :ちゃぽ :2010/04/25(日) 10:45
時間があったらまた夜にでも・・・
51 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:03
数日後。


社交的なももはうちの両親に気に入られちょくちょく夕飯を食べに来ていた。
時にはうちが家に帰るとおかーさんとリビングで世間話をしていたくらいだ。

そしてうちの知らないうちにあれよあれよと話が決まっていった。
ももはいいって言ったがそういう訳にはいかないだろうと、両親と一緒に嗣永家に挨拶しに行った。


最初は両家とも余所余所しかったがいつの間にか
子供を差し置いて親同士、話が弾んで意気投合しているようだ。
52 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:04
「雅ちゃんがこっちにいる間は私どもが責任を持って面倒みますから安心してくださいね」
「はい、桃子ちゃんが一緒だと思うと心強くて安心して向こうに行けますわ」
母親同士、話が弾んでいるようだ。

父親達は祝杯をあげるがごとくお酒を浴びるように飲んでいた。
すでに出来上がってて話しにならない。

「雅ちゃん、自分のうちだと思ってくつろいでいいからね。何か不便なことがあったらうちの桃子に言ったらいいし」
「はぁ」
「ちょっ、お父さん、勝手なこと言って・・・」

桃子はぶつぶつと言っていたが桃子の父親は桃子の声が届いてないようだった。
53 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:05
そんな桃子に、うちの父親も
「桃子ちゃん、雅の事頼むね。ああ見えて寂しがり屋な所があるから」
「おとーさんも何言ってるの!うち寂しがり屋じゃないし。1人だって全然へーきなんだから!」

矛先が雅にまで向かってきて、このままではまたいつ向けられるか分からない。
「もううち、家に帰るからね」
身の危険を感じて退散する事にした。

すると、桃子の母親が「桃子、女の子1人じゃあ危ないから送って行ってあげなさい」
その言葉に桃子は
「ももだって女の子だし、危ないって」
と、すぐさま突っ込む。

「他所んちの子心配する前に自分の子供心配しなよ」
と、本日2度目となるぶつぶつを言っていたが、これも桃子の母親には届いてなかった。
「明日ももバイト朝から入ってて早いからこのままアパートに帰るからね」

桃子の声は誰にも届かなかった。
54 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:06
夜道を2人歩く。
最近ばたばたしていて桃子とちゃんと話をしてなかった事に気付く。
取り留めのない話をしているうちに家の前に着いた。

「もも、送ってくれてありがとう」
「いーよ。お母さんはあんな事言ってたけど帰るついでだし」

全然気にした様子もなくあっけらかんと答える。
「それじゃあ」と帰ろうとする桃子を慌ててひき止める。

「あのさ・・・結局、ももうちのおとーさんに付き合ってあんまりごはん食べてないんじゃない?うちもお腹減ってるし、上がってって?うち何か作るし」

なんとなく離れ難くて無理矢理理由をこじ付けて桃子を誘う。
そして鍵を出そうとかばんに手を入れる。
55 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:07
「あー!!」
「どうしたの?」

3人揃って家を出たから家の鍵は母親が持ってた。
雅の分の鍵は家の中だった。

「鍵忘れた・・・」
「・・・・・・」

「・・・ぷっははははは・・・」
桃子の笑い声が木霊する。
中々笑いが止まらない桃子に「そんなに笑わなくてもいいじゃん」と拗ねる。
56 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:08
「みやったら外見は大人っぽいのに中味はどっか抜けてるんだから」
「しょーがないじゃん。忘れちゃったもんは!」逆に開き直ってみせる。
「じゃあ今日はももの部屋にご招待♪」

「いいよ、おかーさんとこ取りに戻るから」
雅はつい桃子にはつんけんどんな態度をしてしまう。
そんな雅に桃子は余裕そうに
「ねぇ、前々から思ってたんだけどみやってツンデレ?さっきまでのみやは可愛かったのに急につんつんしてきちゃってさ」

「はぁー?何いってんの!じゃあうち行くから」
何か恥ずかしくなって余計にキツイ口調になる。

桃子は笑いを堪えているのか口元が緩んでいるが、そんな雅を軽くあしらうかの様に明るく話しかけてきた。
「そんなこと言わずにね?ももお腹すいたし、何か食べにいこ?」
雅の腕を掴んで強引に連れて行かれた。



57 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:10
結局あの後、ラーメンを食べに行った。
(夜遅くてラーメン屋しか開いてなかった)
そして、そのまま雅は桃子のアパートに泊まった。



朝起きると昼の1時だった。

辺りを見渡すも、ももの姿はなかった。
そっかバイト朝早いって言ってたっけ。
昨日はラーメンを食べてどーだこーだと騒いで
もものアパートに着いた時には疲れ果ててそのまま寝ちゃったんだ。
58 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:11
起き上がりテーブルの上を見ると、メモとサンドウィッチが置いてあった。


――――――――――――――――――――――――――――――
 バイトに行ってきます。
 サンドウィッチあるから食べてね。
 合鍵置いとくから、今度から好きな時に来ていいからね。

 P.S.
 寝顔可愛かったよ


 もも
――――――――――――――――――――――――――――――


合鍵を片手に持つと「新婚さんみたい。」
自分の言葉に顔が赤くなっていく。
「うち、何言ってんだろ」
誤魔化すようにサンドウィッチにかぶりついた。
59 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:11
そうだ、泊めてもらったお礼に晩ごはん作ってあげよう。
そうと決まれば話が早い、材料を買って来ないと。

ももって何が好きなんだろう?後で聞いておかなきゃあ。
とりあえず今日はうちの得意なオムライスにしよう。
2学期からこんな生活が始まるのかな、と1人にやけてしまった。



桃子が帰ってきて2人揃ってオムライスを食べた。
嫌いなグリンピースが入ってるやら、卵は半熟じゃないと嫌だやら、色々と文句を言っていたが、食べ終わったお皿を見るときれいに食べてくれていた。
(グリンピースを除いては)
今度作る時はもっといっぱい入れてやろうと思った。


60 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:12

61 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:12

62 :名無飼育さん :2010/05/04(火) 19:08
続き期待してます
63 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:32
引っ越しの日は8月26日に決まった。
2週間前のことだった。



両親は自分達の引っ越しの準備で忙しいし、雅の分まで引っ越し業者に任せるのもなんだから自分の分は自分で、
出来る範囲でやろうとコツコツと荷物を運んだりした。
ちょうど夏休みとあって時間はいっぱいある。
うちはいいって言ったけどもももちょこちょこと暇を見つけては手伝ってくれた。
64 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:33
「今更だけどももと一緒でよかったの?」
「はぁ?」
作業していた手を止め、桃子の方を振り向く。

「あの時は咄嗟にうちで預かりますって言っちゃったけど、どっちかっていったら佐紀ちゃんの方が仲良かったし、懐いてたじゃん?」
「そうだけど」
「佐紀ちゃんも最近1人暮らしはじめたみたいだしそっちに頼んでみてあげようか?」

桃子の言葉に少し傷付く。
「ももは・・・うちがいるの迷惑?」
まっすぐ桃子の顔が見れず俯いた。

「んな分けないじゃん!ただもも達佐紀ちゃんを通じて知り合ったでしょ?」
その言葉にほっとする。
65 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:35
「顔を合わせばそれなりに話もしてたけどみやってばももにあんまり懐いてくれなかったでしょ?この前の来事がなければそのまま音信不通になってたかもしれないじゃん」
「・・・うん」
「こんなに長い時間みやと一緒にいることもなかったし、だから何か不思議だなぁって。みやがツンデレキャラだってこともよーく分かったし」
「またそればっかり、この前佐紀ちゃんに会った時に「みやってツンデレだったの?」って言われたんだから。うちのイメージが崩れるからやめてよ」

「はいはい分かった分かった」
「ホントに?」
「うん、みやが意地っ張りってことがね。大分みやの性格が分かってきたよ」
「だ〜か〜ら違うって!・・・うちは逆にももの事よく分かんなくなった・・・」
その言葉に2人は顔を見合わせ笑い出した。
66 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:35
この際だから聞いておきたいことがある。
雅は今まで言いたくても言えなかったことをポツリと話し出した。

「・・・ももには感謝してるよ?」
「どうしたの?藪から棒に」
「高校の時はいつもももには生意気な態度しかしてなかった。はっきり言ってももの事馬鹿にしてたと思う」
「ホントはっきり言うね〜」

桃子は苦笑いをしていた。

「なのにこんなにまで親身になって色々してもらって、終いには部屋まで提供してもらって、何か申し訳なくて・・・」
「みやったらそんな事気にしてたの?」
「だって・・・」
「言ったじゃん。1人で寂しかったからみやが来てくれると嬉しいって」
「それはおとーさんを納得させるためじゃ・・・」
「みやってばももの事信用してなかったの?」
「そう言う訳じゃあ・・・」
口を濁らせる。
67 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:37
「じゃあ改めて言うね」
桃子の言葉をじっと待つ。


「みや一緒に暮らそう?お父さんには名目上預かるって言ったけど、もも達はルームメイトなんだから。勿論対等の。ここはもうみやの家でもあるんだから遠慮はいらないからね」
「うん・・・うん・・・。もも、ありがとう」
桃子の言葉に少し涙ぐんだ。

「じゃあ、これからよろしく」
右手を出す桃子。
涙を拭い、雅も右手を差し出した。
「うん、よろしく」
しっかりと握手する2人。



結局その日は全然作業が進まなかった。
でも、何かすっきりした。
・・・今日ももと話せてよかった。
今までは合鍵を使うのもどこか後ろめたい気持ちがあった。
明日からは堂々と合鍵を使って家に行ってやろう。
うちの家に。
68 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:38

69 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:38

70 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:38

71 :ちゃぽ :2010/05/05(水) 20:44
ちょっと短いですが今回の更新はこれにて・・・
週1くらい更新できるように頑張ります
あと出来れば感想などいただければ嬉しいです


>>62 名無飼育さん
お待たせしました
ちょっと忙しくて更新さぼってました
72 :名無飼育さん :2010/05/16(日) 17:14
ついに新生活がスタートしちゃうんですね(^v^)

楽しみです!!!!!!!
73 :名無飼育さん :2010/05/16(日) 19:31
次が気になるッ!!!
74 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:40
次の日雅は早く目が覚めた。


――遠慮はいらないからね
桃子の言葉に自然に頬が緩まる。
いてもたってもおられず、桃子の、いや雅の家に向かった。

合鍵を使い中へ入る。
まだ部屋の中はしーんと静まり返っていた。
時計をみるとまだ7時を回ったところだった。
目覚ましもかけずにこんなに早く自分で起きれたことに驚きだ。
75 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:42
ももが起きてくるまで雑誌でも見せてもらおう。
えーっと占いのページは・・・あったあった。

うちの運勢は・・・。
【大波が次々とやってくるような変化の多い時期です】
ふーん、まあ引っ越しとかあるし、当たってるっちゃ当たってるかな。
で、肝心の恋愛運は・・・、何々。
【思いがけない場所とタイミングでの出会いが期待できるとき。この夏が勝負です。
あなたは積極的で明るく前向きで、面倒見のいいお人好しですが、実はさびしがりやな面を持っています。
そんなあなたには喜ばせ上手でやさしさは人一倍、人を安心させるムードも持っているうお座の人と相性抜群です。
運命の人は案外あなたの身近にいるかも。この機会に周りを良く見てみては?】
へー、でもうちうお座の知り合いっていたっけ?
まあいっか、続き続き。
【今まで何とも思ってなかったあの人の意外な一面を知ってくらっとくるかも?自分の気持ちに正直になって!】
ふーん、どうせ占いなんて当てになんないんだけどね・・・。
76 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:43
雑誌を閉じてぼやーっとしていると、
しばらくして桃子は大きな欠伸をしながら部屋から出てきた。
雅の前を素通りして洗面所へ行った。

あれ?うちのこと気付いてない?

そのまま大人しくしてると、また雅の前を横切った。
冷蔵庫を開け牛乳をコップに注ぎ、口に含んだ瞬間ようやく桃子と目が合った。
手を振ってみると桃子は豪快に牛乳を吹いた。
77 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:43
「な、なんでいるの?」
桃子は吹いた牛乳はそのままに慌てて問いかけてきた。

「なんでってひどいなぁ。ももがいつでも来ていいって言ったんじゃん」
「そりゃそうだけど、こんな朝早くから来るとは思わなかったし」
「なんか目が覚めちゃって、・・・来ちゃった♪」
「来ちゃったって・・・。もー寿命が縮んだよ」

「うちこんなに豪快に牛乳を吹いた所初めて見た」
「誰の所為だと思ってんの?もーみやも手伝ってよ片付けるの」
「やだよ汚い」
「み〜や〜」
「うそうそ。手伝うって」
「みやはその辺きれいに拭く!ももは着替えてくるから」
素直に「は〜い」と返事をして言われた通りきれいにした。
78 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:44
掃除が終わったのと桃子が着替えたのがほぼ同時だった。

「で、今度は何?」
「何が?」
「またお母さんと喧嘩でもしたの?」
「なんで?」
桃子の言葉に頭が斜めになる。

「みやが早くから起きてうちにいるって事は何かあったってことでしょ?」
「うちをそんなトラブルメーカーみたいに言わないでよ!」
「違うの?」
「違うっつーの!」
「じゃあ何?」
「ただもも何してるかなぁって」
「はー。ももはみやの気まぐれに朝から振り回されたのか・・・」
桃子はがっくりと肩を落とした。

「今日は久しぶりにバイトもなくてのんびりしようと思ってたのに・・・」
桃子がぼそぼそと何か言っていたがよく聞こえなかった。

「ねえ、お腹すいたんだけど朝ごはんか何か頂戴?」
「ごはんまでたかる気かよ!」
79 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:45
桃子から朝ごはんを強奪?して雅のお腹も満足した。

「ねえ、どっか遊びに行こ?」
「えぇ〜、めんどくさい。もも久しぶりの休みなんだよ」
「もももまだ若いんだから街に繰り出そうよ!」

桃子は意外とめんどくさがり屋らしく中々重い腰を上げない。

「うち、駅前のクレープ屋さんに行きたいんだぁ」
「・・・・・・」
「あそこのクレープ、生クリームたっぷりでおいしいんだって」
ピクッ「・・・」

おっ、ちょっと反応した。
もう一押しか?

「なんか今開店1周年とかでセールしてるみたいだよ?」
ピクピクッ「・・・」

「確か今日中って言ってたかな?」
「しょーがないなぁ、みやがどうしてもって言うんだったらついてってあげてもいいよ」

おっ、折れた。勝った。
でも何か上から目線だし。
・・・まいっか。

「うん、行こ?」
「ちょっと待ってて。もも支度してくるから」

桃子が部屋に戻って用意する間また雅はぼーっとしていた。
80 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:46
そういえばちゃんと2人でどっか行くの始めてかも?
佐紀ちゃんと千奈美の4人でなら何回か遊びに行った事あるけど。
まさかももと2人で出かけるようになるとは。

――徳永千奈美。
雅と同じ学校で2人でいるといつも馬鹿ばっかりやってしまう。
そんな気心がしれた仲だ。
佐紀とは小学校の頃からの仲らしい。


そもそも家族以外の誰かと暮らすようになるとは・・・。
千奈美に言ったら絶対馬鹿にされるに決まってる。
だってちょっと前の自分なら「ありえないし」って爆笑してる所だ。


考えにふけっていたら桃子が出てきたのに全然気付かなかった。

「みや、行くよ?」
桃子は既に玄関に向かっていて、雅は慌てて後を追いかけた。
81 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:46

82 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:46
駅前に着くと沢山の人だかりだった。
セールとあっていつになくいっぱいのお客さんで賑わっていた。

「みや、もしかしてここ?」
「そうだよ。早く並ぼう?」

桃子はまためんどくさそうに
「え〜、もも並ぶのやだ。別のところにしよ?」
折角なおった機嫌がまた悪くなってきた。

「ここまで来たんだから、並ぼうよ」
ぶつぶつ言う桃子を引っ張って無理矢理列の最後尾に連れて行った。

「これでおいしくなかったらもも怒るからね」
捨て台詞を吐いて渋々並んでくれた。
83 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:48
中々列が捌けなくて順番が回ってきたのが並び始めて1時間経ってからの事だった。

ようやく席に着き食べ始めると、桃子の機嫌が徐々によくなっているのが見て分かった。

よかった、機嫌が直って。
ほっと胸を撫で下ろした。

クレープを食べながら和やかに談笑する。

「そういえばみやの誕生日この25日なんだってね」
「うん。そうだけど、誰から聞いたの?」
「みやのお母さん」
「へ?なんで?」
「26日って結構中途半端な日じゃん?なのになんでその日に引っ越しするのかなぁって、聞いてみたの」
「うん」
「そしたら25日がみやの誕生日だから、その日だけはどうしても一緒に過ごしたいからって。あとねホントはお父さん、23日には大阪に来てくれって言われたらしいけど会社に無理言って伸ばして貰ったんだって」
84 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:48
初耳だった。

「あっこれお父さんには内緒ね。ほんとはお母さんからも口止めされていたんだけど、やっぱりみやが知ってる方がいいと思って喋っちゃった」


――お父さんたら雅を桃子ちゃんに預けるって決めた後も「心配だ、やっぱり俺が大阪行きを断ればよかったか?」なんてグチグチ言ってるのよ。
もうしょうがないでしょっていつもなだめてるんだけどね。
「せめて雅の誕生日くらいは絶対一緒に過ごすからな!!」って、雅にもお友達とか都合があるでしょうに困ったお父さんなのよ。
85 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:49
その言葉に照れ臭くなって
「子供じゃないんだから別に誕生日くらい祝ってくれなくてもいいのに」
って、ついつい正反対なことを言ってしまった。

桃子は雅が素直じゃないこと分かってるみたいで
「だからみやも25日は空けといてあげてね」
優しい目で雅を見つめる。

「何かね〜、もも結婚願望ってなかったんだけど。みやのご両親見てると、結婚っていいなぁって思うよ」
「そう?年がら年中ラブラブな空気出されてうちは困ってるよ」
「なるほど。そういう2人をいつも見てるから逆にみやは素直じゃないのか。ふむふむ」
「勝手な事ばっかり言って・・・」

呆れてものが言えない。
そんな雅に桃子は肯定と受け取ってなお続けた。
86 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:50
「最初の頃はみやの言葉にちょっと傷付いたりしたけど、思い返せばすべて愛情の裏返しだった訳だ。みやったら最初からもものこと大好きだったんだね」
「ち〜が〜う〜。どっからその発想がくるの?いやもものは妄想だ、妄想に決まってる」
「照れなくてもいいんだから。もももみやのこと好きだよ」

桃子の言葉に一瞬で赤くなった。

「みや赤くなった、かわい〜♪」
「うるさい。もも黙って!」

桃子は逃げるように前を走っていった。
「こら待てー!」雅は後を追いかけた。

走っている雅の頬は自然に緩んでいた。
87 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:56

88 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:56

89 :ちゃぽ :2010/05/17(月) 15:02
忙しさにかまけてどうもさぼり癖がついてしまって・・・orz

>>72 名無飼育さん
新生活はもうちょっと待ってて下さい
本当は2人の同居がメインなはずなのに中々そこまでたどり着けなくて・・・

>>73 名無飼育さん
あざーっす
次は早めに更新出来るようにします!!
90 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:32
◆◆◆◆◆

誕生日当日。



実は今日は千奈美達が誕生日パーティーをしてくれるはずだった。
雅は渋々予定をキャンセルしてもらった。

平日だけど父親は無理矢理休みをもらったらしく一日中家にいる。
いや家にいた。

今、うちはネズミーランドに来ている。
この年になって何が楽しくて家族でテーマパークに行かなければならないのか・・・。
うちが溜息をつく横で目一杯楽しんでいるあいつに恨みがましい目で見る。

「みやも早くおいでよ!一緒にミッキーと写真とって貰おう?」
91 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:34
昨日の夜の事だった。

誕生日の日、雅はてっきり夕食の時にお祝いしてくれるもんと思って昼間はすでに予定を入れていた。
ところが父親は無茶苦茶な話をしてきた。

「明日は朝一でディズニーランドに行くからな」
「はぁ〜?何それ」
「もうチケットだって取ってあるんだ。フリーパスだぞ?」

「お父さんこのために奮発したのよ」
「おい、余計なことは言わんでいい」

「あのうち、明日は予定が・・・」
興奮している2人には聞こえていないらしい。

「明日は朝が早いぞ〜。さあ寝るか」
「そうね、明日が楽しみだわ。ね、お父さん」
「ああ。雅もさっさと寝ろよ。寝坊したら置いて行くからな」

2人は早々に寝室に行った
雅は1人、リビングに置き去りにされた。


「置いてってくれていいんだけど・・・」
雅の言葉は誰にも届いていなかった。


92 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:36
朝起きると、既に準備万端な両親の姿に頭が痛くなった。
家の前にはレンタカーが止まっていた。

「なんでわざわざレンタカーなんて借りてるの?うちの車でも十分3人乗れるのに」
「まあそれは着いてからのお楽しみだ」

訳が分からないまま車に乗り込んだ
朝早かった為雅は乗ったと同時に眠りについた。


車が止まったみたい。
もう着いたのかと目を開けてみると、見知った顔があった。

車の中で雅はずっとムスっとしていた。
93 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:36
「みや、まだ機嫌直んないの?折角お父さんがみやの為にって用意してくれたんだから楽しもうよ」
「・・・もも」
「何?」
「ももは知ってたでしょう?」
「何を?」

桃子は目が泳いでいる。

「今日ディズニーランドに行くことになってたの!」
「何のことかな?」
「しらばっくれないでよ!」

そんな雅達の会話に父親が割って入ってきた。

「桃子ちゃんを攻めないでくれよ。俺が内緒にしててくれって頼んだんだ」
「おとーさんが?」
「雅をびっくりさせたかったんだ」

「家族3人だけじゃあ雅が嫌がると思って、無理を言って桃子ちゃんの家族にお願いして来て貰ったんだ」
「・・・・・・」

その言葉に桃子を攻めるのを止めざるを得なかった。
桃子は両手を合わせて「ごめんね」と謝ってきた。

94 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:37
◆◆◆◆◆


父親の言葉に納得はいかなかったが、ずっと怒っててもしょうがないと割り切ることにした。

「もも、そんなん後でいいからジェットコースター乗ろう?」

桃子の手を掴んで乗り場に走る。


コースターから降りて「次は何に乗ろうか」と桃子の方を振り向くとそこに姿はなかった。
どこに行ったんだろうと探すと、桃子はまだコースターから降りてその場にしゃがみこんでいるみたいだ。
慌てて桃子の元へ駆け寄ると泣いていた。
周りの人の目が気になるため、急いで桃子を立たせてベンチのある所へ連れて行った。
95 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:38
「もも、大丈夫?」
無言で首を振る。
「ジェットコースター苦手なら言ってくれたら無理矢理誘わなかったのに・・・」
ただ首を振って嗚咽を漏らすだけで何が言いたいのか分からない。
とりあえず桃子が落ち着くまで、雅はずっと背中をさすっていた。

ようやく、桃子が泣き止んで話が出来る状態になった。

「ごめんね。もも、ジェットコースター苦手で・・・」
「言ってくれればよかったのに」
「だって・・・今日みやの誕生日じゃん?」
「うん」
「だからみやの希望は叶えてあげたかったんだもん。それに当分乗ってなかったから大丈夫になったかなって」

ももの言葉に素直に嬉しいと思う。
でも・・・

「うちだけが楽しんでもしょうがないじゃん。ももも楽しめるので遊ぼう?」
「うん、ごめんね?」
「またそればっかり。もう謝るのとかなしね!」
「うん、ありがとう」
「じゃあ、向こうの方でパレードやってるみたいだからそれ見にいこ?」
96 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:39
そしてパレードを見終わると親達と合流してお昼にした。
ごはんを一杯食べ桃子のテンションもあがってきたようだ。

桃子は雅に耳打ちしてきた。

――午後からは家族ごとで別れて回ろ?きっとお父さんもみやと回りたいはずだよ。
今日の計画だってすごく嬉しそうにももに話してくれたんだよ?
恥ずかしがらないで親孝行だと思って、ね?

桃子に言われた通り午後から別れて回るように提案してみた。

「雅無理しなくていいぞ?桃子ちゃんに言われたんだろう?」
「ち、違うよ」図星を付かれてどもる。

「子供がそんなこと気にするな。俺は雅が楽しんでくれたらそれだけで嬉しいんだ」
「おとーさん」
「桃子ちゃんも迷惑じゃあなかったら雅と回ってやってくれないか?おじさん達と回ったって楽しくないからね。若いもんは若いもん同士楽しんで来なさい」
「でも・・・」
「ほら早く。時間なんてすぐ経っちまうぞ?」

おとーさんには敵わないなぁ。
今朝だって怒ってないで早く機嫌直せばよかった・・・。
小さい声で「おとーさん、ありがとう」と、囁いて桃子を連れて行った。
97 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:39
あっという間に楽しい時間は過ぎていった。
もう帰る時間かと寂しく黄昏ていると、

桃子の父親が
「僕達から雅ちゃんにプレゼントがあるんだ」
と、小洒落たレストランに連れてってくれた。

「夏焼さんには家族水入らずなんだからって断ったのに、僕達家族まで誘って下さって。何かお礼がしたいなって、考えたんだ。折角だからみんなで食事でもって事になって。気に入ってもらえるといいんだけど・・・」
「ここもも達いつも来るんだけどおいしいんだよ?」
98 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:40
和気藹々と談笑しながら食事を進める。
大方食べ終わると

「僕達はそろそろおいとまします。今日は色々とありがとうございました。
後は水入らずでどうぞごゆっくり」
「みや、誕生日おめでとう。プレゼントはあした渡すね」
「うん」
「おじさん、おばさんも今日はありがとうございました。じゃあおやすみなさい」

嗣永一家は慌しく早々に引き上げてった。
99 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:40
「お父さん、今がチャンスですよ」
母親は父親に肘で突いてなにやら合図を送っているみたい。
何がしたいんだろうと不思議に思っていると。

「雅、俺達からプレゼントだ」
「プレゼントはディズニーランドじゃなかったの?」
「まあそれもだが、どっちかって言うとこっちの方がメインだ。ほら受け取れ」

受け取って、箱をじっと見つめる。
「・・・開けていい?」
「ああ、もちろん」
100 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:41
開けてみると前から欲しかった腕時計がそこにあった。
父親と母親の顔をみる。
2人とも笑顔で雅を見ていた。

「これ、うちが欲しいって言ってた時計。・・・・・・ありがとう。大事にするね」
感動に浸っていると大きなケーキが運ばれてきた。

「すごい・・・。これもおとーさんから?」
「いや、俺は頼んでないが・・・」

ボーイさんが「嗣永様から承っております」
「やられた。嗣永さんに出し抜かれるとは・・・」

悔しそうに頭を掻いて
「俺のプレゼントが霞んじまったじゃないか」
と、ぶっきらぼうに言っていた。

そんな事ないよ。すっごく嬉しかったんだから。
まだまだ素直になれないうちは心の中でそう呟いた。


流石にあの後全部ケーキは食べ切れなくてお持ち帰りにしてもらった。

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