■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 最新50

CROSS OVER

1 :ちゃぽ :2010/04/17(土) 19:52
初めて小説書きます。
つたない所もあると思いますがよろしくお願いします。

ももみやです。
2 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:03
「もう、おかーさんなんか大嫌い!」
「ちょっ、雅待ちなさい。雅!!」



夏焼雅、高校3年生。もうすぐ18歳。
高校最後の夏休み、母親と喧嘩して家を飛び出した。

当ても無く夜の街をふらふらと歩いてたら
「あれーお姉ちゃん1人?おじさんと一緒に遊ばない?」

酔っぱらいのサラリーマンに絡まれた。
関わるとろくな事がないと、無言でその場を離れようとした。
「無視しないで。おじさんお金持ってるから好きな所連れてってあげるよ」
男は腕をつかんできた。

「離して下さい。急いでるんで」
捕まれた腕を振り払おうと、足掻くが男はびくともしない。
それどころかいっそう絡んできた。

「やめて。やめてったら」
悲鳴のような声を上げるが周りの人は誰も助けてくれない。
見て見ぬ振りをしている。
3 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:03
そんな中
「おまわりさーん。こっちですよー。早く早く」
その声に男は慌てたように逃げ去った。
開放された雅は腰が抜けてその場に座り込んだ。

「大丈夫?立てる?」
震える手を握って優しく声をかけてくれた。
顔をあげると見知った顔がそこにあった。

「あれ。みや?」
「も・・・もも?」
4 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:04
そこにいたのはうちの1つ上の先輩。
嗣永桃子。
そんなに親しい間柄ではなかったが共通の友人を通じて知り合った。

「ずっとこんな所にいるのも危ないから移動しよう」
雅を支えるように立ち上がらせ、歩いていく。

「ももんちここから近いんだ。寄って行きなよ」
無言のまま頷く。
歩く最中も桃子は震える手を握っていてくれた。
5 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:05
桃子の家に連れられた。
「ちょっと散らかってるけどごめんね」と、部屋に通された。
「みや、ココアでいいかな?」
頷くと桃子はキッチンに消えた。

1人になるとさっきの事を思い出し怖くなった。
力一杯振り払ったのに全然びくともしなかった。
もしあそこにももがいなかったらと思うとぞっとする。

桃子はすぐにココアを2つ持って戻ってきた。
「あったかいうちにどーぞ」
一口飲むと何故か涙が出てきた。

泣き止むまで桃子はずっと側にいて背中をさすってくれた。
ようやく落ち着いてきた雅はぽつりぽつりと話し出す。
6 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:08
「おかーさんと喧嘩しちゃって家を飛び出して。それで行く当てもないし、ぶらぶらしてたらへんなおじさんに絡まれちゃって・・・」
「あの辺治安がよくないんだから、ふらふら歩いてたら危ないんだよ。ほんとももがいなかったらどうなってたか・・・」
雅は返す言葉も無く一言「ごめん」と謝る。

そんな雅に桃子は溜息を落とすと
「まあ、みやも無事だったからいいとするか」
明るく言い放つ。
7 :_ :2010/04/17(土) 20:12

8 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:14
時刻は夜の10時。

「みやも落ち着いたみたいだし、もう遅いから送っていくよ」
「やだ・・・・・・」
「えっ?」
「やだ、帰りたくない」

母親と喧嘩したままの雅は家に帰りたくない。
帰ったら今日のことを否が応でも説明しなければならない。

駄々をこねていると桃子は再度溜息を吐く。
「せめて家に連絡だけでも入れないと」
その言葉にも頭を振って否定する。

「じゃあみや、お風呂でも入っておいで。そこら辺にあるタオルとか使っていいから」
「いいの?」
「しょーがないでしょ。でも明日の朝、早く帰るんだよ。着替えは後で出しとくから」

桃子の言葉に素直にお風呂を借りる事にした。
9 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:14
お風呂から出ると布団が用意してあった。
「疲れたでしょ?寝てていいよ。もももお風呂入ってくるから」
お風呂に入ろうと立ち上がる桃子に
「あっ・・・あの、もも」
「ん?」と、振り返る。

「あの・・・今日はありがとう」
照れくさくなって布団に頭から被った。
くすっと笑われて、「おやすみ」の声と同時に電気が消えた。

桃子がお風呂から上がったのにも気付かず、雅はそのまま夢の中へ旅立った。
10 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:16

11 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:17
朝、カチャカチャとフライパンの音がして目が覚めた。
寝起きでまだ頭が働かない。
ここは・・・・・・周りを見渡していると
「あ、みや起きた?ごはんもうちょっとで出来るから顔洗ってきたら?」

ふらふらと洗面所へ行き、顔を洗うとさっぱりした。
テーブルに着くと、トーストと黄身がつぶれた目玉焼きとポタージュが用意されていた。

「ごめんね。もも料理あんまり上手くなくて・・・」
「ううん、泊めてもらっただけでも十分」
お世辞にもそんな事無いよとは言えなかった。
12 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:17
「じゃあ食べようか」
桃子の声で食べ始めるが、食事中は二人とも無言で黙々と食べ続けた。

「お母さんと喧嘩したって言ってたけど、何かあったの?」
沈黙を破って桃子は一番聞かれたくないことをズバッと聞いてきた。
「それは・・・」言いたくなくて口を濁す。

「昨日みやを泊めたからには、ももには事情を聞く権利があると思うんだけどな」
その言葉に渋々重い口を開いた。
13 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:19


◆◆◆◆◆

14 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:21
時はさかのぼる事昨日の夕食


父親は最近仕事が忙しいらしく夕食はもっぱら母親と2人だ。
「今日もおとーさん残業なの?」
「そうなの、今抱えてる仕事を終えて引継ぎをしなきゃいけないみたいで大変なのよ」
「ふーん」とあまり興味がないのか生返事で答えた。

そんな雅をよそに母親は深刻そうな顔で
「あのね、雅。雅にまだ話してなかったんだけど・・・」
「なぁに改まって」

「お父さん最近お仕事頑張ってるでしょ?その頑張りが認められて課長に昇進することになったの。それで大阪の方へ行ってくれないかって話が出てて」
「へー大変だね」
「それで8月の末には向こうに引越ししなきゃいけないの」
15 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:22
その時の雅はてっきり父親だけが大阪に行くものとばっかり思っていた。
「8月ってもう1ヶ月もないじゃん。おとーさんも大変だね、ごはんとか1人でやっていけるの?」
「何言ってるの?家族みんなが行くに決まってるでしょ」

「はぁー?何言ってんの、うちやだよ。そんなんおとーさん1人で行けばいーじゃん!」
「馬鹿言わないの!お父さんが3人で行くって言ってるんだから」

「なんでおとーさんの都合に合わせなきゃなんないの?」
納得が出来ず母親にわめき散らす。

後半年で卒業だし。
友達とも離れたくない。
16 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:23
「我侭言わないの!もう決まった事なんだから」
「いいよ、じゃあうちだけこっちに残る」
「出来るわけないでしょ!高校生が1人で生活なんて」
「どーせ高校卒業したら家出ようと思ってたし!」

ぱんっ
音と共に頬に痛みが走る。

「おかーさん何か大嫌い」
左頬を押さえ、泣きながら家を飛び出した。
17 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:23


◆◆◆◆◆

18 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:26
桃子は黙って話を聞いていた。

「そっか・・・。でもお父さんの気持ち、分からないでもないなぁ」
「ももまで何で?」
「もも、今1人暮らししてるでしょ?1人でいると家族のありがたみがすごく分かるんだ」

桃子はいつものへらへらした顔とは違って、真剣な顔をして語りだす。


――ももはね、夢のために今の学校を選んだ。でもこの学校に通うには家からだと遠いし、不便だからってお父さんが1人暮らしを勧めてくれた。
でもお母さんがよくももに言うんだぁ。桃子が1人暮らし始めてからお父さん、寂しがってるから時間があったら帰ってらっしゃいって。
帰ったら帰ったらでももには強がっちゃって、また帰って来たのか、なんて言うんだけどね。
みやのお父さんも、みや1人残して行ってもし何か遭ったらって思うと心配なんだよ。
いつでも自分の目の届くところにいてほしいんだよ、きっと。
19 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:27
その言葉に雅は返す言葉もなかった。

――みやがこっちに残りたいって気持ちはよく分かるよ。でもただヤダヤダ言ってるだけじゃあ、単なる我侭だよ。
もし、ももがみやのお父さんだとしても無理矢理にでも連れて行くよ。
ちゃんとみやの気持ち、伝えなきゃ。このままじゃお父さんも分かってくれないよ?
・・・ね、1回ご両親と話し合った方がいいよ

素直に「分かった」と答える。
いつも桃子には反発ばかりしていたが、今の言葉には説得力があった。

「話ぐらいももでよかったらいつでも聞くからさ」
「・・・うん」
「じゃあお母さん心配してるだろうから早く帰ってあげて」
20 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:28
雅は素直に家に帰った。
でもいざ家の前に着くと、母親にどういう風に顔を合わせればいいかわからない。
家の前をうろうろと歩いていると買い物へ行く母親とばったり会った。

「あんた何家の前でうろうろしてるの?近所迷惑だから早く家に入りなさい」
「あの・・・その・・・・・・昨日は」
「ちょうどいいわ。今から買い物に行って来るからお留守番よろしくね。」
雅の言葉を遮って母親は何事も無かったかのように話す。

「うん・・・いってらっしゃい」
雅は戸惑いながらも答える。

昨日家に帰らなかったこと、絶対叱られると思ってた。
普段通りの母親の様子に拍子抜けした。


後から知った話では、雅が寝てる間に桃子は母親に電話を入れてくれていたらしい。
21 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:29

22 :CROSS OVER :2010/04/17(土) 20:30
その日の晩、今日も2人での夕食。


「あの、おかーさん」
「なぁに?」
「昨日は大嫌いって言って、その・・・ごめんなさい」

勇気を振り絞って昨日のことを謝る。
そして桃子から言われた、両親と話し合うこと。

「いいのよ。お母さんもかっとなっちゃってごめんなさいね」
「ううん。それでね・・・ちゃんとおとーさんの話も聞きたいかなって。おとーさんいつ早く帰ってくる?」
「確か今週末には一段落するだろうって言ってたわよ」
「わかった。じゃあその日に話しよ?」
23 :ちゃぽ :2010/04/17(土) 20:33
中途半端ですが今日はおしまい
とりあえずストックが続く限りサクサク更新できたらなぁ・・・
24 :名無飼育さん :2010/04/18(日) 01:38
ももみやキタ!
つづき待ちます。
25 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:13


◆◆◆◆◆

26 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:14
そして土曜日。


緊張のあまり手が冷たくなってきた。
雅が話したいと言ったにも関わらず何を話したらいいか分からず黙り込んだ

ままだった。
27 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:15
そんな雅をよそに父親は口を開いた。

「お母さんから聞いたと思うけど、この9月から大阪に転勤になった。雅もあと半年で卒業って時期に悪いとは思う。
でもな、俺は家族3人で一緒に暮らしたい」

――俺の親父は仕事人間で金さえ入れてたらいいだろっていう人間だった
今思うとそれが親父なりの愛情表現につもりみたいだけどな
でも家庭のことは疎かで、おふくろは俺の前では笑ってたけど影で泣いてた
俺も子供ながらに寂しくていつも兄貴の後ろばっかりついて回ってたよ
雅も今更寂しいって年でもないかもしれないけど、俺は、家族は一緒にいるべきだと思う
それにいずれ雅も大人になれば家を出て行っちまう。それまでは俺の我侭だけど家族3人仲良く暮らしたい
だから雅も一緒に大阪へ行ってくれ
28 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:16
黙って父親の話を聞いていた。

「おとーさんの言いたいことはわかった」
「じゃあ、一緒に行ってくれるか」

「ううん、そうじゃなくて・・・そうじゃないんだけど、うち、頭ん中整理できなくて・・・。ちょっと考える時間下さい」
雅はそのまま階段を駆け上がった。

「ちょっと雅待ちなさい。まだ話終わってないでしょう?」
「いいんだ。俺も唐突だったし、雅も混乱してるんだろう」
29 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:16
下から雅を呼ぶ声がしたが今は何も聞きたくなかった。


そのまま部屋に閉じこもり色々考えを巡らす。
だけどいくら考えても分かんない・・・。

――話ぐらいももでよかったらいつでも聞くからさ

ふと桃子の言葉を思い出した。
時刻は夜の11時。
もう遅いかと思ったが思い切って電話をかけた。
30 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:17
――プル、プルルル、プルルル
さすがにもう寝てるか。
諦めて電話を切ろうとしたら

《もしもし、みや?こんな時間にどうしたの?》
「あっ、遅くにごめん・・・」
《それは別にいいんだけど、何かあった?》
「あのね・・・今日、おとーさんと話したんだ」
《うん》
「それでうち混乱してて、どうしたらいいか分かんなくて」
矢継ぎ早に話す。

《ちょっ、みや落ち着いて。ね?》
「うん、だけどうち・・・」
《みや、今日は早く休んだ方がいいよ。混乱してるみたいだし一晩ゆっくり

休んでもう一度整理してごらん?》
「でも!」
《ね。もう遅いし、それに電話じゃあ伝わりにくいし明日うちにおいで?何

時でもいいから》
「・・・うん」
《じゃあおやすみ》

その日桃子に言われた通り早めに就寝した。
31 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:18

32 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:19
「ちょっと出てくる」
「雅!こんな朝早くからどこ行くの?」
「昼過ぎには帰ってくるから」


朝起きてごはんも食べずに桃子のアパートを目指した。
桃子の家はうちから歩いて15分の所にある。

アパートの前に着いて時間を見るとまだ7時だった。
ちょっと早かったかと、引き返そうかと思ったが
「何時でもいいから」と言ってくれた言葉を信じてチャイムを押した。

すぐに桃子は出てきてくれた。
部屋に通され、お茶を用意してくれた。
33 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:20
「どう?一晩休んで考えがまとまった?」
無言で首を振る。

「じゃあ、みやにとってお父さんってどんな人?」
黙って考えを巡らす。
(うちにとっておとーさんって・・・)


―――家族を一番に考える人かな
うちが熱を出した時なんか救急車を呼ぼうとしてた。
おかーさんが慌てておとーさんの事止めてた。単なる風邪なのにね・・・
いくら仕事が忙しくても運動会とか参観日とか、絶対来てくれてた。
小さい頃は素直に嬉しかった。
でも中学に上がる頃には恥ずかしくなって来なくていいよって意地張っちゃった時も
「まあまあいいじゃないいか。俺が雅の成長を見たいんだから」って笑ってた。
そんなおとーさん悲しませたくない。
うち一緒に大阪行ったほうがいいのかなぁ。
34 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:22
弱気になる雅に、桃子は優しく諭すように言う。
「でもそれはお父さんの気持ちでしょ?みやの気持ちはどうなの?このまま大阪行って後悔しない?」

―――うちは・・・うちは、ここを離れたくない

「うちあんまり頭よくなくて今の高校に入るのにいっぱい勉強した。先生からも絶対無理だからやめろって言われたけど、
それでも無理を言って受験した。ほんと死ぬ物狂いでやった。いつもテストもあんまり点数よくなかったりするけど、
それでも最後までいまの学校にいたい。友達だっているし、何より今の仲間と一緒に卒業したい・・・」

「それがみやの素直な気持ちでしょ?お父さんにも今のこと言ってごらん。きっと分かってくれるよ」
「でも・・・。おとーさん聞いてくれるかな?」
「それは1番みやが分かってるんじゃないの?気持ちは口に出して言わないと、思ってるだけじゃ伝わらないよ」
35 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:23
「うん・・・。でも1人じゃあやっぱり不安だからももも一緒にいて」
「でももも部外者だからお父さんもいい顔しないと思うんだけど」
「それでもお願い。一緒にいて?」

縋る様な目で見つめる。
「はー、しょうがないなぁ。でもお父さんが駄目って言ったらもも帰るからね」
「うん。ありがとう」

ぐー。
話が終わるのと同時にお腹が鳴った。
顔を真っ赤にしてお腹を押さる。

桃子は遠慮なく笑っていた。
「みや、ごはん食べて来なかったの?」
「だって、それどころじゃなかったし・・・」
「ちょっと待ってね。昨日の残り物でよかったら用意するから」
36 :CROSS OVER :2010/04/19(月) 20:27
>>24
まだ当分ももみやしない感じですが気長にご覧下さい
37 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:36
夏焼家。



「ただいま」

雅の声に母親はすぐさま奥から出てきた。
「雅どこへ行ってたの?お父さんずっと待ってるわよ」

「あら、そちらは?」
「はじめまして、嗣永桃子です」
「挨拶なんかいいよ、上がって」
引きずるように家に上げる。

桃子を連れて父親のいる書斎へ向かった。
部屋の前で深呼吸して襖を開け中へ入る。

「雅帰ったのか。おかえり。ん?お友達か?」
「うん、友達っていうか高校の先輩」
「はじめまして、嗣永桃子です」
「どうも雅の父です」
38 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:36
「嗣永さんと言ったかな?」
「はい」
「折角来て下さった所申し訳ないんだが今から大事な話し合いをしなくちゃあいけないんだ。悪いけど席をはずすか帰ってもらえないだろうか?」

「ほらみや、やっぱり言った通りでしょ?すいません、今帰りますから」
「駄目、帰らないで。お願いだから一緒にいて」
帰ろうとする桃子の手を掴んだ。

「おとーさん、うちがお願いしたの。一緒にいてって。ね、いいでしょ?」
雅の必死な様子に黙認してくれたようだ。

「で、雅は結論出たのか?話を聞かせてもらおうか」
39 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:38
――うん、あのね・・・おとーさん。うち、おとーさんの気持ち、よく分かった。
でもやっぱりここから離れたくない。友達だっていっぱいいるし今の学校ちゃんと卒業したい・・・。
中学の時死ぬ気で勉強して補欠入学だったけどそれでも留年もせずに今までやってこれた。
今いるみんなと、友達と一緒に卒業したい!あと半年だし最後までいさせてほしい。

雅の素直な気持ちをぶつける。

「だからこっちに残らせて下さい」
「残ってどうするつもりだ?」
「だからあの・・・学校の近くにアパートでも借りて・・・」

「馬鹿言ってるんじゃない!1人暮らしなんてまだ早すぎる!それに雅はまだ子供じゃないか。
子供が親の元で暮らさないでどうする」

父親の勢いに身を縮める。
そんな雅に桃子は大丈夫だよと言わんばかり微笑んでみせた。
そして今まで黙っていた口を開いた。
40 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:39
―――あの・・・部外者の私が言うのも差し出がましいんですが、雅さんはお父さんが思ってるほど子供じゃないですよ。
失礼ですけど雅さんから色々と事情は聞きました。お父さんの家族を大事にしたいって気持ち、凄くよく分かりました。
でも雅さんの学校を、友達を大切にしたいって気持ちも大切にしてあげて下さい。無理矢理連れて行ったらきっと心に傷が残ります。
お父さんは雅さんに傷を残したいんですか?雅さんなら大丈夫ですよ。家族の話をする時の雅さん目、すごく優しいんです。
そんな雅さんだからお父さんの期待を裏切るようなことはしないですよ。

「だが・・・」

「大丈夫ですよ、雅さんこんなにいい子に育ってるじゃないですか。雅さんをみてるとどんな風に育ったか分かりますもん。雅さんを信じてあげて下さい」

沈黙が続く。


41 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:39
沈黙を破ったのは父親だった。

「・・・分かった、こっちに残るのは許可しよう。だが1人暮らしはだめだ。若い年頃の娘が1人なんて危ない」
「じゃあ、どうしたらいいの?」
結局話は振り出しに戻った。

「兄貴の所に預けよう」
「でも、おじさんちだと学校に通うには遠すぎるよ」

恐縮そうにも桃子は告げる。
「あの、だったらうちで預かりますよ」
その言葉に雅は桃子の顔を見る。
そんな雅を無視して父親と話を続けている。
42 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:40
「そんな、よそ様に迷惑なんて掛けられません」
「迷惑なんて。ちょうど私のアパート、1部屋空いてますし昨日雅さんから相談を受けた時からずっと考えてたんです」

桃子は雅の方を見て茶目っ気たっぷりに
「みやが嫌じゃなければだけどね」
と、ウインクのおまけまでしてきた。
(ウインクになってなかったけど・・・)
そんな桃子を呆然と見つめることしか出来なかった。

そんな2人を尻目に父親は諦めたかのように何も言ってこなかった
43 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:40
「雅」
うちを呼ぶ声に慌てて向き直す。

じーっと雅の顔を見る。
目を逸らさず見つめ返していると
父親は溜息を1つ落とす。

ちゃんと朝は自分で起きれるか
――・・・・・・
どうなんだ
――・・・起きれる
宿題は忘れずに出来るか
――たっ多分
多分?
――ううん、出来る
嗣永さんに迷惑をかけないか
――かけない
ちゃんと言うことを聞けるか
――聞ける
あと、週1回は必ず家に電話を入れる
――うん
月1回は大阪に来て家族みんなで食事をする
――うん

雅はすべての質問に真摯に答える。
44 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:41
「はー分かった、俺の負けだよ。でも雅半年だぞ。卒業したら大阪に来い、いいな?」
「うん。おとーさん、ありがとう」

そして雅に向かっていた視線が桃子に向けられる。

「嗣永さん本当にいいんですか?こいつが無理矢理言って仕方なしに言ってくれたんじゃあないんですか?」
「そんなことないです。私も小さい頃父の転勤で何回か転校させられたことありますし、雅さんの気持ち、よく分かりますから」
「そうですか。こんな馬鹿な娘ですがよろしくお願いします」

父親が頭を下げる。
桃子は駆け寄って頭を上げさせる。

「私も1人暮らしで寂しかったものですから雅さんが来てくれると嬉しいんで気になさらないで下さい」

桃子の言葉に張り詰めていた空気がようやく緩んだ。
45 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:42
「ああ、もうこんな時間か」
その声に時計を見ると夜の8時を回っていた。

「おい、おまえ」
部屋の外に控えていたのだろう、母親はすぐに顔を覗かせた。

「はい、なんでしょう」
「折角だから嗣永さんにご飯でも食べてって貰おうと思うんだが、食事の用意は出来ているか?」
「すいません、まだなんです」
「なら丁度いい寿司でも取りなさい。特上4人前だ。・・・という事だ。嗣永さん食べてって下さい」
「でも・・・」
「遠慮は要らない。これから雅がお世話になるんだからな」
「じゃあ喜んでいただきます」

そして4人で和気藹々と食事をした。

「もう遅いから泊まっていきなない」と言う父親に、桃子は明日大学が早いからと丁重に断って帰っていった。

桃子の帰りを見送る中、父親は「雅もいつの間にかこんなに大きくなったんだな。俺も年をとる訳だ」と、雅の頭をクシャっと撫でる。
「それにしても雅、いい先輩を持ったな」
その言葉に、照れくさそうに「うん」と答えた。
46 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:42

47 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:43
その夜。
雅はベットの上で改めて桃子のことを考えた。


ももは佐紀ちゃんの友達という認識でしかなかった。

――清水佐紀。
雅の仲のよい先輩。
桃子と同い年で、佐紀を通じて桃子と知り合った。

なんで佐紀ちゃんがももの友達なんてやってるんだろうと不思議に思ってた。
ぶりっこでへらへら笑ってて、いつも何考えてるか分かんない。
いつか佐紀ちゃんに聞いてみたことがあった。

『よくももの友達なんてやってられるね』
『みやったらまたそんな事言うんだから・・・』
『だって、ぎゃあぎゃあうるさいだけじゃん』
『みやはももとはそんなに付き合いないからそんな事言えるんだよ。ももはあれでいて色々考えてるんだよ?やる時はやるし、結構頼りになるんだから』
『佐紀ちゃんたら買いかぶりすぎなんじゃないのぉ?』

あの時のうちはいくら佐紀ちゃんの言葉だからって全然信用していなかった。
うちはももの表面しか見ていなかった。
さり気ないところで色々助けてくれた。
今回のことで佐紀ちゃんが言っていたことがよく分かった。

48 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:44

49 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 10:44

50 :ちゃぽ :2010/04/25(日) 10:45
時間があったらまた夜にでも・・・
51 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:03
数日後。


社交的なももはうちの両親に気に入られちょくちょく夕飯を食べに来ていた。
時にはうちが家に帰るとおかーさんとリビングで世間話をしていたくらいだ。

そしてうちの知らないうちにあれよあれよと話が決まっていった。
ももはいいって言ったがそういう訳にはいかないだろうと、両親と一緒に嗣永家に挨拶しに行った。


最初は両家とも余所余所しかったがいつの間にか
子供を差し置いて親同士、話が弾んで意気投合しているようだ。
52 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:04
「雅ちゃんがこっちにいる間は私どもが責任を持って面倒みますから安心してくださいね」
「はい、桃子ちゃんが一緒だと思うと心強くて安心して向こうに行けますわ」
母親同士、話が弾んでいるようだ。

父親達は祝杯をあげるがごとくお酒を浴びるように飲んでいた。
すでに出来上がってて話しにならない。

「雅ちゃん、自分のうちだと思ってくつろいでいいからね。何か不便なことがあったらうちの桃子に言ったらいいし」
「はぁ」
「ちょっ、お父さん、勝手なこと言って・・・」

桃子はぶつぶつと言っていたが桃子の父親は桃子の声が届いてないようだった。
53 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:05
そんな桃子に、うちの父親も
「桃子ちゃん、雅の事頼むね。ああ見えて寂しがり屋な所があるから」
「おとーさんも何言ってるの!うち寂しがり屋じゃないし。1人だって全然へーきなんだから!」

矛先が雅にまで向かってきて、このままではまたいつ向けられるか分からない。
「もううち、家に帰るからね」
身の危険を感じて退散する事にした。

すると、桃子の母親が「桃子、女の子1人じゃあ危ないから送って行ってあげなさい」
その言葉に桃子は
「ももだって女の子だし、危ないって」
と、すぐさま突っ込む。

「他所んちの子心配する前に自分の子供心配しなよ」
と、本日2度目となるぶつぶつを言っていたが、これも桃子の母親には届いてなかった。
「明日ももバイト朝から入ってて早いからこのままアパートに帰るからね」

桃子の声は誰にも届かなかった。
54 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:06
夜道を2人歩く。
最近ばたばたしていて桃子とちゃんと話をしてなかった事に気付く。
取り留めのない話をしているうちに家の前に着いた。

「もも、送ってくれてありがとう」
「いーよ。お母さんはあんな事言ってたけど帰るついでだし」

全然気にした様子もなくあっけらかんと答える。
「それじゃあ」と帰ろうとする桃子を慌ててひき止める。

「あのさ・・・結局、ももうちのおとーさんに付き合ってあんまりごはん食べてないんじゃない?うちもお腹減ってるし、上がってって?うち何か作るし」

なんとなく離れ難くて無理矢理理由をこじ付けて桃子を誘う。
そして鍵を出そうとかばんに手を入れる。
55 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:07
「あー!!」
「どうしたの?」

3人揃って家を出たから家の鍵は母親が持ってた。
雅の分の鍵は家の中だった。

「鍵忘れた・・・」
「・・・・・・」

「・・・ぷっははははは・・・」
桃子の笑い声が木霊する。
中々笑いが止まらない桃子に「そんなに笑わなくてもいいじゃん」と拗ねる。
56 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:08
「みやったら外見は大人っぽいのに中味はどっか抜けてるんだから」
「しょーがないじゃん。忘れちゃったもんは!」逆に開き直ってみせる。
「じゃあ今日はももの部屋にご招待♪」

「いいよ、おかーさんとこ取りに戻るから」
雅はつい桃子にはつんけんどんな態度をしてしまう。
そんな雅に桃子は余裕そうに
「ねぇ、前々から思ってたんだけどみやってツンデレ?さっきまでのみやは可愛かったのに急につんつんしてきちゃってさ」

「はぁー?何いってんの!じゃあうち行くから」
何か恥ずかしくなって余計にキツイ口調になる。

桃子は笑いを堪えているのか口元が緩んでいるが、そんな雅を軽くあしらうかの様に明るく話しかけてきた。
「そんなこと言わずにね?ももお腹すいたし、何か食べにいこ?」
雅の腕を掴んで強引に連れて行かれた。



57 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:10
結局あの後、ラーメンを食べに行った。
(夜遅くてラーメン屋しか開いてなかった)
そして、そのまま雅は桃子のアパートに泊まった。



朝起きると昼の1時だった。

辺りを見渡すも、ももの姿はなかった。
そっかバイト朝早いって言ってたっけ。
昨日はラーメンを食べてどーだこーだと騒いで
もものアパートに着いた時には疲れ果ててそのまま寝ちゃったんだ。
58 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:11
起き上がりテーブルの上を見ると、メモとサンドウィッチが置いてあった。


――――――――――――――――――――――――――――――
 バイトに行ってきます。
 サンドウィッチあるから食べてね。
 合鍵置いとくから、今度から好きな時に来ていいからね。

 P.S.
 寝顔可愛かったよ


 もも
――――――――――――――――――――――――――――――


合鍵を片手に持つと「新婚さんみたい。」
自分の言葉に顔が赤くなっていく。
「うち、何言ってんだろ」
誤魔化すようにサンドウィッチにかぶりついた。
59 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:11
そうだ、泊めてもらったお礼に晩ごはん作ってあげよう。
そうと決まれば話が早い、材料を買って来ないと。

ももって何が好きなんだろう?後で聞いておかなきゃあ。
とりあえず今日はうちの得意なオムライスにしよう。
2学期からこんな生活が始まるのかな、と1人にやけてしまった。



桃子が帰ってきて2人揃ってオムライスを食べた。
嫌いなグリンピースが入ってるやら、卵は半熟じゃないと嫌だやら、色々と文句を言っていたが、食べ終わったお皿を見るときれいに食べてくれていた。
(グリンピースを除いては)
今度作る時はもっといっぱい入れてやろうと思った。


60 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:12

61 :CROSS OVER :2010/04/25(日) 20:12

62 :名無飼育さん :2010/05/04(火) 19:08
続き期待してます
63 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:32
引っ越しの日は8月26日に決まった。
2週間前のことだった。



両親は自分達の引っ越しの準備で忙しいし、雅の分まで引っ越し業者に任せるのもなんだから自分の分は自分で、
出来る範囲でやろうとコツコツと荷物を運んだりした。
ちょうど夏休みとあって時間はいっぱいある。
うちはいいって言ったけどもももちょこちょこと暇を見つけては手伝ってくれた。
64 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:33
「今更だけどももと一緒でよかったの?」
「はぁ?」
作業していた手を止め、桃子の方を振り向く。

「あの時は咄嗟にうちで預かりますって言っちゃったけど、どっちかっていったら佐紀ちゃんの方が仲良かったし、懐いてたじゃん?」
「そうだけど」
「佐紀ちゃんも最近1人暮らしはじめたみたいだしそっちに頼んでみてあげようか?」

桃子の言葉に少し傷付く。
「ももは・・・うちがいるの迷惑?」
まっすぐ桃子の顔が見れず俯いた。

「んな分けないじゃん!ただもも達佐紀ちゃんを通じて知り合ったでしょ?」
その言葉にほっとする。
65 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:35
「顔を合わせばそれなりに話もしてたけどみやってばももにあんまり懐いてくれなかったでしょ?この前の来事がなければそのまま音信不通になってたかもしれないじゃん」
「・・・うん」
「こんなに長い時間みやと一緒にいることもなかったし、だから何か不思議だなぁって。みやがツンデレキャラだってこともよーく分かったし」
「またそればっかり、この前佐紀ちゃんに会った時に「みやってツンデレだったの?」って言われたんだから。うちのイメージが崩れるからやめてよ」

「はいはい分かった分かった」
「ホントに?」
「うん、みやが意地っ張りってことがね。大分みやの性格が分かってきたよ」
「だ〜か〜ら違うって!・・・うちは逆にももの事よく分かんなくなった・・・」
その言葉に2人は顔を見合わせ笑い出した。
66 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:35
この際だから聞いておきたいことがある。
雅は今まで言いたくても言えなかったことをポツリと話し出した。

「・・・ももには感謝してるよ?」
「どうしたの?藪から棒に」
「高校の時はいつもももには生意気な態度しかしてなかった。はっきり言ってももの事馬鹿にしてたと思う」
「ホントはっきり言うね〜」

桃子は苦笑いをしていた。

「なのにこんなにまで親身になって色々してもらって、終いには部屋まで提供してもらって、何か申し訳なくて・・・」
「みやったらそんな事気にしてたの?」
「だって・・・」
「言ったじゃん。1人で寂しかったからみやが来てくれると嬉しいって」
「それはおとーさんを納得させるためじゃ・・・」
「みやってばももの事信用してなかったの?」
「そう言う訳じゃあ・・・」
口を濁らせる。
67 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:37
「じゃあ改めて言うね」
桃子の言葉をじっと待つ。


「みや一緒に暮らそう?お父さんには名目上預かるって言ったけど、もも達はルームメイトなんだから。勿論対等の。ここはもうみやの家でもあるんだから遠慮はいらないからね」
「うん・・・うん・・・。もも、ありがとう」
桃子の言葉に少し涙ぐんだ。

「じゃあ、これからよろしく」
右手を出す桃子。
涙を拭い、雅も右手を差し出した。
「うん、よろしく」
しっかりと握手する2人。



結局その日は全然作業が進まなかった。
でも、何かすっきりした。
・・・今日ももと話せてよかった。
今までは合鍵を使うのもどこか後ろめたい気持ちがあった。
明日からは堂々と合鍵を使って家に行ってやろう。
うちの家に。
68 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:38

69 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:38

70 :CROSS OVER :2010/05/05(水) 20:38

71 :ちゃぽ :2010/05/05(水) 20:44
ちょっと短いですが今回の更新はこれにて・・・
週1くらい更新できるように頑張ります
あと出来れば感想などいただければ嬉しいです


>>62 名無飼育さん
お待たせしました
ちょっと忙しくて更新さぼってました
72 :名無飼育さん :2010/05/16(日) 17:14
ついに新生活がスタートしちゃうんですね(^v^)

楽しみです!!!!!!!
73 :名無飼育さん :2010/05/16(日) 19:31
次が気になるッ!!!
74 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:40
次の日雅は早く目が覚めた。


――遠慮はいらないからね
桃子の言葉に自然に頬が緩まる。
いてもたってもおられず、桃子の、いや雅の家に向かった。

合鍵を使い中へ入る。
まだ部屋の中はしーんと静まり返っていた。
時計をみるとまだ7時を回ったところだった。
目覚ましもかけずにこんなに早く自分で起きれたことに驚きだ。
75 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:42
ももが起きてくるまで雑誌でも見せてもらおう。
えーっと占いのページは・・・あったあった。

うちの運勢は・・・。
【大波が次々とやってくるような変化の多い時期です】
ふーん、まあ引っ越しとかあるし、当たってるっちゃ当たってるかな。
で、肝心の恋愛運は・・・、何々。
【思いがけない場所とタイミングでの出会いが期待できるとき。この夏が勝負です。
あなたは積極的で明るく前向きで、面倒見のいいお人好しですが、実はさびしがりやな面を持っています。
そんなあなたには喜ばせ上手でやさしさは人一倍、人を安心させるムードも持っているうお座の人と相性抜群です。
運命の人は案外あなたの身近にいるかも。この機会に周りを良く見てみては?】
へー、でもうちうお座の知り合いっていたっけ?
まあいっか、続き続き。
【今まで何とも思ってなかったあの人の意外な一面を知ってくらっとくるかも?自分の気持ちに正直になって!】
ふーん、どうせ占いなんて当てになんないんだけどね・・・。
76 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:43
雑誌を閉じてぼやーっとしていると、
しばらくして桃子は大きな欠伸をしながら部屋から出てきた。
雅の前を素通りして洗面所へ行った。

あれ?うちのこと気付いてない?

そのまま大人しくしてると、また雅の前を横切った。
冷蔵庫を開け牛乳をコップに注ぎ、口に含んだ瞬間ようやく桃子と目が合った。
手を振ってみると桃子は豪快に牛乳を吹いた。
77 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:43
「な、なんでいるの?」
桃子は吹いた牛乳はそのままに慌てて問いかけてきた。

「なんでってひどいなぁ。ももがいつでも来ていいって言ったんじゃん」
「そりゃそうだけど、こんな朝早くから来るとは思わなかったし」
「なんか目が覚めちゃって、・・・来ちゃった♪」
「来ちゃったって・・・。もー寿命が縮んだよ」

「うちこんなに豪快に牛乳を吹いた所初めて見た」
「誰の所為だと思ってんの?もーみやも手伝ってよ片付けるの」
「やだよ汚い」
「み〜や〜」
「うそうそ。手伝うって」
「みやはその辺きれいに拭く!ももは着替えてくるから」
素直に「は〜い」と返事をして言われた通りきれいにした。
78 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:44
掃除が終わったのと桃子が着替えたのがほぼ同時だった。

「で、今度は何?」
「何が?」
「またお母さんと喧嘩でもしたの?」
「なんで?」
桃子の言葉に頭が斜めになる。

「みやが早くから起きてうちにいるって事は何かあったってことでしょ?」
「うちをそんなトラブルメーカーみたいに言わないでよ!」
「違うの?」
「違うっつーの!」
「じゃあ何?」
「ただもも何してるかなぁって」
「はー。ももはみやの気まぐれに朝から振り回されたのか・・・」
桃子はがっくりと肩を落とした。

「今日は久しぶりにバイトもなくてのんびりしようと思ってたのに・・・」
桃子がぼそぼそと何か言っていたがよく聞こえなかった。

「ねえ、お腹すいたんだけど朝ごはんか何か頂戴?」
「ごはんまでたかる気かよ!」
79 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:45
桃子から朝ごはんを強奪?して雅のお腹も満足した。

「ねえ、どっか遊びに行こ?」
「えぇ〜、めんどくさい。もも久しぶりの休みなんだよ」
「もももまだ若いんだから街に繰り出そうよ!」

桃子は意外とめんどくさがり屋らしく中々重い腰を上げない。

「うち、駅前のクレープ屋さんに行きたいんだぁ」
「・・・・・・」
「あそこのクレープ、生クリームたっぷりでおいしいんだって」
ピクッ「・・・」

おっ、ちょっと反応した。
もう一押しか?

「なんか今開店1周年とかでセールしてるみたいだよ?」
ピクピクッ「・・・」

「確か今日中って言ってたかな?」
「しょーがないなぁ、みやがどうしてもって言うんだったらついてってあげてもいいよ」

おっ、折れた。勝った。
でも何か上から目線だし。
・・・まいっか。

「うん、行こ?」
「ちょっと待ってて。もも支度してくるから」

桃子が部屋に戻って用意する間また雅はぼーっとしていた。
80 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:46
そういえばちゃんと2人でどっか行くの始めてかも?
佐紀ちゃんと千奈美の4人でなら何回か遊びに行った事あるけど。
まさかももと2人で出かけるようになるとは。

――徳永千奈美。
雅と同じ学校で2人でいるといつも馬鹿ばっかりやってしまう。
そんな気心がしれた仲だ。
佐紀とは小学校の頃からの仲らしい。


そもそも家族以外の誰かと暮らすようになるとは・・・。
千奈美に言ったら絶対馬鹿にされるに決まってる。
だってちょっと前の自分なら「ありえないし」って爆笑してる所だ。


考えにふけっていたら桃子が出てきたのに全然気付かなかった。

「みや、行くよ?」
桃子は既に玄関に向かっていて、雅は慌てて後を追いかけた。
81 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:46

82 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:46
駅前に着くと沢山の人だかりだった。
セールとあっていつになくいっぱいのお客さんで賑わっていた。

「みや、もしかしてここ?」
「そうだよ。早く並ぼう?」

桃子はまためんどくさそうに
「え〜、もも並ぶのやだ。別のところにしよ?」
折角なおった機嫌がまた悪くなってきた。

「ここまで来たんだから、並ぼうよ」
ぶつぶつ言う桃子を引っ張って無理矢理列の最後尾に連れて行った。

「これでおいしくなかったらもも怒るからね」
捨て台詞を吐いて渋々並んでくれた。
83 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:48
中々列が捌けなくて順番が回ってきたのが並び始めて1時間経ってからの事だった。

ようやく席に着き食べ始めると、桃子の機嫌が徐々によくなっているのが見て分かった。

よかった、機嫌が直って。
ほっと胸を撫で下ろした。

クレープを食べながら和やかに談笑する。

「そういえばみやの誕生日この25日なんだってね」
「うん。そうだけど、誰から聞いたの?」
「みやのお母さん」
「へ?なんで?」
「26日って結構中途半端な日じゃん?なのになんでその日に引っ越しするのかなぁって、聞いてみたの」
「うん」
「そしたら25日がみやの誕生日だから、その日だけはどうしても一緒に過ごしたいからって。あとねホントはお父さん、23日には大阪に来てくれって言われたらしいけど会社に無理言って伸ばして貰ったんだって」
84 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:48
初耳だった。

「あっこれお父さんには内緒ね。ほんとはお母さんからも口止めされていたんだけど、やっぱりみやが知ってる方がいいと思って喋っちゃった」


――お父さんたら雅を桃子ちゃんに預けるって決めた後も「心配だ、やっぱり俺が大阪行きを断ればよかったか?」なんてグチグチ言ってるのよ。
もうしょうがないでしょっていつもなだめてるんだけどね。
「せめて雅の誕生日くらいは絶対一緒に過ごすからな!!」って、雅にもお友達とか都合があるでしょうに困ったお父さんなのよ。
85 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:49
その言葉に照れ臭くなって
「子供じゃないんだから別に誕生日くらい祝ってくれなくてもいいのに」
って、ついつい正反対なことを言ってしまった。

桃子は雅が素直じゃないこと分かってるみたいで
「だからみやも25日は空けといてあげてね」
優しい目で雅を見つめる。

「何かね〜、もも結婚願望ってなかったんだけど。みやのご両親見てると、結婚っていいなぁって思うよ」
「そう?年がら年中ラブラブな空気出されてうちは困ってるよ」
「なるほど。そういう2人をいつも見てるから逆にみやは素直じゃないのか。ふむふむ」
「勝手な事ばっかり言って・・・」

呆れてものが言えない。
そんな雅に桃子は肯定と受け取ってなお続けた。
86 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:50
「最初の頃はみやの言葉にちょっと傷付いたりしたけど、思い返せばすべて愛情の裏返しだった訳だ。みやったら最初からもものこと大好きだったんだね」
「ち〜が〜う〜。どっからその発想がくるの?いやもものは妄想だ、妄想に決まってる」
「照れなくてもいいんだから。もももみやのこと好きだよ」

桃子の言葉に一瞬で赤くなった。

「みや赤くなった、かわい〜♪」
「うるさい。もも黙って!」

桃子は逃げるように前を走っていった。
「こら待てー!」雅は後を追いかけた。

走っている雅の頬は自然に緩んでいた。
87 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:56

88 :CROSS OVER :2010/05/17(月) 14:56

89 :ちゃぽ :2010/05/17(月) 15:02
忙しさにかまけてどうもさぼり癖がついてしまって・・・orz

>>72 名無飼育さん
新生活はもうちょっと待ってて下さい
本当は2人の同居がメインなはずなのに中々そこまでたどり着けなくて・・・

>>73 名無飼育さん
あざーっす
次は早めに更新出来るようにします!!
90 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:32
◆◆◆◆◆

誕生日当日。



実は今日は千奈美達が誕生日パーティーをしてくれるはずだった。
雅は渋々予定をキャンセルしてもらった。

平日だけど父親は無理矢理休みをもらったらしく一日中家にいる。
いや家にいた。

今、うちはネズミーランドに来ている。
この年になって何が楽しくて家族でテーマパークに行かなければならないのか・・・。
うちが溜息をつく横で目一杯楽しんでいるあいつに恨みがましい目で見る。

「みやも早くおいでよ!一緒にミッキーと写真とって貰おう?」
91 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:34
昨日の夜の事だった。

誕生日の日、雅はてっきり夕食の時にお祝いしてくれるもんと思って昼間はすでに予定を入れていた。
ところが父親は無茶苦茶な話をしてきた。

「明日は朝一でディズニーランドに行くからな」
「はぁ〜?何それ」
「もうチケットだって取ってあるんだ。フリーパスだぞ?」

「お父さんこのために奮発したのよ」
「おい、余計なことは言わんでいい」

「あのうち、明日は予定が・・・」
興奮している2人には聞こえていないらしい。

「明日は朝が早いぞ〜。さあ寝るか」
「そうね、明日が楽しみだわ。ね、お父さん」
「ああ。雅もさっさと寝ろよ。寝坊したら置いて行くからな」

2人は早々に寝室に行った
雅は1人、リビングに置き去りにされた。


「置いてってくれていいんだけど・・・」
雅の言葉は誰にも届いていなかった。


92 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:36
朝起きると、既に準備万端な両親の姿に頭が痛くなった。
家の前にはレンタカーが止まっていた。

「なんでわざわざレンタカーなんて借りてるの?うちの車でも十分3人乗れるのに」
「まあそれは着いてからのお楽しみだ」

訳が分からないまま車に乗り込んだ
朝早かった為雅は乗ったと同時に眠りについた。


車が止まったみたい。
もう着いたのかと目を開けてみると、見知った顔があった。

車の中で雅はずっとムスっとしていた。
93 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:36
「みや、まだ機嫌直んないの?折角お父さんがみやの為にって用意してくれたんだから楽しもうよ」
「・・・もも」
「何?」
「ももは知ってたでしょう?」
「何を?」

桃子は目が泳いでいる。

「今日ディズニーランドに行くことになってたの!」
「何のことかな?」
「しらばっくれないでよ!」

そんな雅達の会話に父親が割って入ってきた。

「桃子ちゃんを攻めないでくれよ。俺が内緒にしててくれって頼んだんだ」
「おとーさんが?」
「雅をびっくりさせたかったんだ」

「家族3人だけじゃあ雅が嫌がると思って、無理を言って桃子ちゃんの家族にお願いして来て貰ったんだ」
「・・・・・・」

その言葉に桃子を攻めるのを止めざるを得なかった。
桃子は両手を合わせて「ごめんね」と謝ってきた。

94 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:37
◆◆◆◆◆


父親の言葉に納得はいかなかったが、ずっと怒っててもしょうがないと割り切ることにした。

「もも、そんなん後でいいからジェットコースター乗ろう?」

桃子の手を掴んで乗り場に走る。


コースターから降りて「次は何に乗ろうか」と桃子の方を振り向くとそこに姿はなかった。
どこに行ったんだろうと探すと、桃子はまだコースターから降りてその場にしゃがみこんでいるみたいだ。
慌てて桃子の元へ駆け寄ると泣いていた。
周りの人の目が気になるため、急いで桃子を立たせてベンチのある所へ連れて行った。
95 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:38
「もも、大丈夫?」
無言で首を振る。
「ジェットコースター苦手なら言ってくれたら無理矢理誘わなかったのに・・・」
ただ首を振って嗚咽を漏らすだけで何が言いたいのか分からない。
とりあえず桃子が落ち着くまで、雅はずっと背中をさすっていた。

ようやく、桃子が泣き止んで話が出来る状態になった。

「ごめんね。もも、ジェットコースター苦手で・・・」
「言ってくれればよかったのに」
「だって・・・今日みやの誕生日じゃん?」
「うん」
「だからみやの希望は叶えてあげたかったんだもん。それに当分乗ってなかったから大丈夫になったかなって」

ももの言葉に素直に嬉しいと思う。
でも・・・

「うちだけが楽しんでもしょうがないじゃん。ももも楽しめるので遊ぼう?」
「うん、ごめんね?」
「またそればっかり。もう謝るのとかなしね!」
「うん、ありがとう」
「じゃあ、向こうの方でパレードやってるみたいだからそれ見にいこ?」
96 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:39
そしてパレードを見終わると親達と合流してお昼にした。
ごはんを一杯食べ桃子のテンションもあがってきたようだ。

桃子は雅に耳打ちしてきた。

――午後からは家族ごとで別れて回ろ?きっとお父さんもみやと回りたいはずだよ。
今日の計画だってすごく嬉しそうにももに話してくれたんだよ?
恥ずかしがらないで親孝行だと思って、ね?

桃子に言われた通り午後から別れて回るように提案してみた。

「雅無理しなくていいぞ?桃子ちゃんに言われたんだろう?」
「ち、違うよ」図星を付かれてどもる。

「子供がそんなこと気にするな。俺は雅が楽しんでくれたらそれだけで嬉しいんだ」
「おとーさん」
「桃子ちゃんも迷惑じゃあなかったら雅と回ってやってくれないか?おじさん達と回ったって楽しくないからね。若いもんは若いもん同士楽しんで来なさい」
「でも・・・」
「ほら早く。時間なんてすぐ経っちまうぞ?」

おとーさんには敵わないなぁ。
今朝だって怒ってないで早く機嫌直せばよかった・・・。
小さい声で「おとーさん、ありがとう」と、囁いて桃子を連れて行った。
97 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:39
あっという間に楽しい時間は過ぎていった。
もう帰る時間かと寂しく黄昏ていると、

桃子の父親が
「僕達から雅ちゃんにプレゼントがあるんだ」
と、小洒落たレストランに連れてってくれた。

「夏焼さんには家族水入らずなんだからって断ったのに、僕達家族まで誘って下さって。何かお礼がしたいなって、考えたんだ。折角だからみんなで食事でもって事になって。気に入ってもらえるといいんだけど・・・」
「ここもも達いつも来るんだけどおいしいんだよ?」
98 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:40
和気藹々と談笑しながら食事を進める。
大方食べ終わると

「僕達はそろそろおいとまします。今日は色々とありがとうございました。
後は水入らずでどうぞごゆっくり」
「みや、誕生日おめでとう。プレゼントはあした渡すね」
「うん」
「おじさん、おばさんも今日はありがとうございました。じゃあおやすみなさい」

嗣永一家は慌しく早々に引き上げてった。
99 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:40
「お父さん、今がチャンスですよ」
母親は父親に肘で突いてなにやら合図を送っているみたい。
何がしたいんだろうと不思議に思っていると。

「雅、俺達からプレゼントだ」
「プレゼントはディズニーランドじゃなかったの?」
「まあそれもだが、どっちかって言うとこっちの方がメインだ。ほら受け取れ」

受け取って、箱をじっと見つめる。
「・・・開けていい?」
「ああ、もちろん」
100 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:41
開けてみると前から欲しかった腕時計がそこにあった。
父親と母親の顔をみる。
2人とも笑顔で雅を見ていた。

「これ、うちが欲しいって言ってた時計。・・・・・・ありがとう。大事にするね」
感動に浸っていると大きなケーキが運ばれてきた。

「すごい・・・。これもおとーさんから?」
「いや、俺は頼んでないが・・・」

ボーイさんが「嗣永様から承っております」
「やられた。嗣永さんに出し抜かれるとは・・・」

悔しそうに頭を掻いて
「俺のプレゼントが霞んじまったじゃないか」
と、ぶっきらぼうに言っていた。

そんな事ないよ。すっごく嬉しかったんだから。
まだまだ素直になれないうちは心の中でそう呟いた。


流石にあの後全部ケーキは食べ切れなくてお持ち帰りにしてもらった。
101 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:42
帰りのタクシー。
雅はすぐ船を漕ぎ出した。

「雅、寝てていのよ。疲れたでしょう」
母親の声に頷き、夢の世界へ旅立った。
腕にはしっかりと時計をして・・・。


102 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:42

103 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:43

104 :CROSS OVER :2010/05/25(火) 20:43

105 :名無飼育さん :2010/05/25(火) 21:54
良い家族だ−ww
106 :名無飼育さん :2010/05/28(金) 05:41
とてもおもしろいです。
続き期待してます。
107 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 13:43
朝起きると自分のベットの中だった。
昨日の服のまま眠っていた。

そっか、うちタクシーであのまま寝ちゃって・・・。
おとーさんが運んでくれたのかな?


カレンダーを見ると赤い丸がしてある。
今日は引っ越しの日。
昨日の楽しかった時間が嘘のように刻々と時間は過ぎていく。

今日でこの家ともお別れか。
・・・感傷になんか浸ってる暇はない。
早く起きて自分も準備をしなきゃ。
108 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 13:44
家中のものは既に整頓されており、後は業者に運んで貰うだけだった。
雅の荷物も細々としたものは既に桃子のアパートに運び切っていた。
でも流石にダンボールに山済みにされた荷物やベットやタンスといった大きいものは当日軽トラを借りて運ぶ手筈になっていた。

学校関係の物は然る事ながら雅の私物はたくさんあって、すべて桃子のアパートに持ち込むわけにはいかなかった。
ぬいぐるみや明らかに着ない服などかさばる物は渋々大阪の方の荷物に仕分けてある。
その選別作業に時間を要したくらいだった。

家主である桃子はどうしても抜けられない用事があるとかで勝手に家に上がらせてもらった。
ベットが運び込まれようやく雅の生活の基盤が出来上がった。

そして両親との別れの時が迫る。
109 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 13:44
駅のホーム。

2人は大阪に行ってしまう。
なんて声をかけたらいいか分かんない。
雅が二の足を踏んでいると、

「実はな、これ」2人の腕が差し出された。
そこには雅のしてるものと色違いの腕時計が・・・。

「俺達家族は離れてたって繋がってるんだからな!」
「・・・うん」
「何か遭ったらちゃんと電話してこいよ飛んでいくから。何があっても雅の味方なんだから!」
「うん、大丈夫だよ。もう子供じゃないんだから」

父親の言葉に泣きそうになったが、心配させまいと強がってみせた。
ホームに新幹線が入ってきた。
110 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 13:46
「じゃあな。元気でいろよ?」
「うん」
「体には気を付けるのよ?」
「うん」

扉が閉まり、2人を見送る。


1人で改札を出るとそこには桃子がいた。

「来ちゃった」
「何で?用事があるって・・・」

突然の行動にびっくりする。

「急いで済ませたの。なんとなくみや1人でいたくないかなって」

無言で歩く。
111 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 13:46
雅はポツリと口を開いた。

「おとーさん達行っちゃった・・・」
桃子は雅の顔を覗き込んで「寂しい?」と聞いてきた。
雅は素直に「寂しい・・」と答えた。

「帰ろっか?」
「どこに?」
「もちろん、もも達の家に」

桃子の顔を見ると満面の笑みでこっちを見ていた。

「じゃあ競争ね」
走り出す桃子。

呆気に取られていたが
遠くから「みや〜、置いてくよ〜」の声で
雅は走り出した。
112 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 13:49

113 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 13:49

114 :ちゃぽ :2010/05/30(日) 13:55
ちょっと短いですがまた夜にでも書きにきます
相変わらずの亀更新ですが気長に待ってて下さい


>>106 名無し飼育さん 
ちょっと美化しすぎな感じもしますが、その辺は了承してくださいw

>>107 名無し飼育さん
楽しんでいただけたら嬉しいです
115 :ちゃぽ :2010/05/30(日) 13:56
すいませんレスが1個ずつずれてましたorz
116 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 20:17
アパートに着く頃には2人とも息が上がっていた。

「みや先行ってて」
「いいけど、何かあるの?」
「いいから、いいから」

桃子の様子に不審に思いながらも鍵を開ける。

パーン!!
「「Happy Barthday! みや!」」

扉を開けたとたんクラッカーの音と共に佐紀と千奈美が出てきた。
後ろではにやにやした桃子がクラッカーを構え

パーン!
「おめでとう、みや」

雅は2段階でのドッキリに「びっくりしたぁ」と目を見開いていた。
驚いたまま固まっている雅に桃子は背中を押した。

「主役がぼや〜っとしてどうすんの?入った入った」
「う、うん」
117 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 20:18
リビングに入ると朝とはうって変わってきれいに飾ってあった。
ケーキがどーんと真ん中に陣取って、周りを沢山のデリバリーやお菓子が囲んである。

「うわぁ〜、すごいこんなに。みんなありがとう」
感嘆の声を上げ3人のサプライズに感謝する。

「でも、約束は明日のはずだったよね?」
「そりゃあパーティーって言えばサプライズに決まってんじゃん」

千奈美は1人得意気な顔をして話す。
補足するように佐紀が後を続ける。

「ももに今日のみやの予定を聞いたら見送りに行った後はすぐ家に戻るって言ってたって。で、どうせならビックリさせたいよねって話になって」
「大変だったんだよ、これ準備するの。みやが駅に行ってる間に急いで飾り付けしたりして」
「そうそう、料理も時間的にムリだからデリバリーを取ろうってことになったり」
「時間あってもキャプテンの料理はムリだし!」
118 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 20:18
キャプテンというのは佐紀のことだ。
二人は小学校の頃から付き合いがあり、佐紀がキャプテンをしてたとかで千奈美は未だキャプテンと呼んでいる。

二人のやり取りに苦笑する桃子に今度は矛先が向けられてきた。

「ももはいつの間にかいなくなってうちらに押し付けるし・・・」
千奈美は不服そうにしている。
「まあまあ、ももは家を提供してくれた訳だしね」
佐紀は相変わらず千奈美のお守り役っぷりを発揮してくれた。

「ごめんね、ちょっと用があって。でもちゃんとみやを連れて来たんだから・・・ねっ」
「細かいことは置いといて。主役が揃ったことだし、パーティー始めよう?」
佐紀の一声でどうにかその場は落ち着いた。

「じゃあ改めて誕生日」
「「「おめでとー!」」」
「ありがとう」
119 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 20:19
個々でもそれなりに騒がしいのに、4人揃うと近所迷惑になるんじゃあないかって程騒々しい。
雅は両親と別れた寂しさも吹き飛ぶほどの盛り上がりに最高潮になる。

乙女たちの胃袋は無限大だった。
あれほど一杯あった料理やお菓子もあっと言う間に残り少なくなった。
胃が満足するとガールズトークに花開く。

「ねぇ、2人っていつの間に仲良くなったの?」
「それわたしも気になった」
千奈美の素朴な疑問に佐紀も賛同する。

「何でって、ねえ・・・」
「まあ色々あって」
2人にまで雅の事情を話すのは躊躇われたため桃子と共に口を濁す。

そんな2人に不審に思ったのか千奈美は
「何かあやしーよね。実は2人付き合ってんじゃないの?」
「何言ってんの?ちぃは。そんな訳ないじゃん」
何故か慌てた風に答えてしまう雅だった。
120 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 20:20
「その焦りよう、怪しいなあ」
「違うってば。もものことなんか何とも思ってないんだから」
雅は速攻否定する。

「その言葉傷つくなぁ。もも、あれだけみやに尽くしたのに」
傍観していた桃子も口を挟みだして雅の形勢は圧倒的に悪くなった。

確かに最近はもものこと見直して結構尊敬してたりするけど、そんなんじゃあない・・・よね?
自問自答してみる。

「それはその・・・」
言葉を探しあぐねていると佐紀が助け舟を出してきた。

「まあまあ、みやも千奈美も抑えて。ももも面白がって口挟まないの!言葉はあれだけど千奈美なりにみやの事心配してるんだよ」
「ちょ、キャプテン。何言って・・・」
「そうなの?」
「みやがご両親と離れてこっちに残るって聞いて「みや大丈夫なのかな。結構寂しがり屋な所あるし。お母さんに頼んでうちに住めるようにしてもらう」なんて言ってたんだよ」
「ちぃ・・・」

千奈美は照れくさいのかバツが悪そうに下を向いている。
そんなに自分の事を思ってくれていたのかとうれしく思う。
121 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 20:20
「何か悩んでるみたいだけど全然うちには話してくれないって千奈美寂しそうだったよ?だからみやも千奈美のこともっと頼ってあげて?」
佐紀の言葉に雅は2人にことの経緯を話してなかったことを申し訳なく思う。

重い空気が流れる。


「佐紀ちゃんちょっと」
桃子が佐紀を連れてキッチンの方へ行く。
「もも、あのまま2人ほっといていいの?」
佐紀は連れて来られたことに不満そうにつぶやく。

「みやも徳さんも意地っ張りな所あるでしょ?こういう時は第三者がいない方がいいんだよ」
「でも・・・」
「佐紀ちゃんは相変わらず心配性だなぁ」

戸棚をごそごそとしている桃子に佐紀は心配そうな眼差しを送る。

「この際胸の内全部吐き出したほうがすっきりするんだよ」
「そーゆーもんかな」
「そーゆーもんだよ」

佐紀は桃子の様子に不安を覚えながらも桃子の事だから考えがあるのだろうと流れに身を任せることにした。

「それより佐紀ちゃん貰い物のクッキーがあるんだけど食べない?4人で食べるには少ないからどうしようかと思ってたんだ」

桃子の言葉に本当に大丈夫かと頭が痛くなる佐紀であった。
122 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 20:21
そんな桃子と佐紀の会話は露知らずこちらの2人は深刻そうに話していた。

「ちぃ、ごめんね。うち自分の事でいっぱいいっぱいだったら・・・」
「そりゃあキャプテンやももに比べたら全然頼りないけど、うちなりにみやのこと心配してたんだよ?」
「ごめん。ちぃのこと頼りないとかじゃなくて、心配かけたくなかったんだ」

雅は心配かけたくなかった。
千奈美はもっと頼って欲しかった。
2人の想いが交差することはなかった。

「いつだってみやは1人で解決しようとする」
「・・・・・・」
「泣き言を言って困らせるのはうちばっかり」
「・・・うち、そんなつもりじゃあ」
「じゃあどんなつもり?」
「うち、口ベタだし・・・」
「・・・ほら、最後まで言ってくれないじゃん」
123 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 20:22
「そんな事ない。確かに今回はももに頼ってちぃには全然相談しなかった」
「・・・」
「でも、例え悩みがあってもちぃの笑顔を見てるだけで癒されるっていか・・・。悩んでる事がどうでもよくなってくる。だからちぃのこと頼りにしてないとかじゃない」

照れもあってついついちぃには言葉が疎かになってるって自覚ある。
ちぃだけじゃない、うちは肝心なところで言葉が足らない。
最近ももにも言われた、気持ちは口に出さないと伝わらないって。

「うちね。ちぃが、みんながいるからここから離れたくなかったんだ。だから必死でこっちに残る方法考えて・・・。おとーさんにも、ももにも無理言ってここに置いてもらってる」
「うちだって何か役に立ちたかったもん」

「うん・・・ごめん。今度からちゃんと話す」
「ほんとに?」
「うん。だからうちの事、許してくれる?」

上目使いで千奈美の様子を伺う。
千奈美は考えているのかずっと下を向いたままだ。
沈黙が続き、気まずい。
124 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 20:22
「もういいよ」千奈美のその声にはっと顔を向ける。
ふと顔を上げた千奈美はいつもの顔に戻っていた。
「しょうがないなぁ。その代わり今度宿題写させてよ?」

千奈美に「ありがとう」と心の中で呟き雅も普段通りの声で答えた。

「無理、この前ちぃの丸写しした時中澤先生にばれて怒られたじゃん」
「そうだっけ」
「ちぃはあの日早退したから知らないかもしれないけど、うちあの後大目玉くらって大変だったんだよ」
「まじで?」
「そう。「単純な足し算の所も二人揃って間違えとるし、お前ら仲良すぎやな?」ってねちねち言われて仕舞いには違うプリントやらされて・・・。思い出しただけで寒気がする」

雅の心底恐ろしそうな様子に千奈美は笑い出した。
「笑い事じゃないよ」と言いながらも千奈美が笑ってくれたことに安堵し、雅もつられて笑い出した。
125 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 20:23
そんな様子を遠くから見ていた佐紀と桃子は
「ほら、大丈夫だったでしょ?」
「うん」
「この年頃の娘は箸が転げればそれだけで笑えるんだから」
「何かもも、年寄りくさいよ」

佐紀の言葉に心外だと言わんばかりにポカポカと佐紀の背中を叩き出した。

「佐紀ちゃんたらひどい。こんなにピチピチな子に向かって」
「ごめんごめん」
「もー」

こちらも笑いに包まれて部屋の空気があっという間に軽くなった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていった。
残すはプレゼントタイムのみとなった。
126 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 20:23
佐紀からは雅好みのアクセサリーだった。

「佐紀ちゃんありがとう。こんな感じの欲しかったんだ」
「気に入ってもらって良かったよ」

前から佐紀ちゃんとは服とかアクセサリーとかの趣味が合ってよくショッピングにも付き合ってもらってた。


千奈美からは雅が寝坊しないようにと特大の目覚まし時計だった。

「ちぃもありがとう。でもうちよりちぃの方がこれ必要なんじゃないの?」
「そんなことないもん。うちはママが起こしてくれるから」
「堂々と言う程の事でもないじゃん」

確かにいつもうちはギリギリだけど遅刻はしたことない。
うちはおとーさんと約束したんだし大丈夫だよ・・・・・・多分。
127 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 20:24
桃子からはキーケースだった。

「ももありがとう。でも何でキーケース?」
「だってみやってば結構抜けてるから、これだったら鍵なくさないでいいかなって」
「またそればっかり。ももってばうちの事どんだけバカにしてんの?」
「だってもも、みやの前科色々知ってるよ?」

本人達は本気で喧嘩しているがはたから見ればじゃれ合っているようにしか見えない。
まあ桃子の方は軽くあしらってるだけだが。

「やっぱり2人、付き合ってるんじゃないの?ねえキャプテン」
「だよねぇ。あんなに無邪気なみや、あんまり見たことないし」
「ってかうちら邪魔かな?」
「プレゼントも渡した事だし帰ろっか」

雅達が口論している間に佐紀達は帰路につくことにした。
128 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 20:24

129 :CROSS OVER :2010/05/30(日) 20:24

130 :ちゃぽ :2010/05/30(日) 20:27
ちょっと多めに更新しました
ようやく2人の生活がはじまりそうです
131 :名無飼育さん :2010/06/02(水) 23:49
桃子、大人だね。
いよいよ新生活ですね。
楽しみです!!
132 :名無飼育さん :2010/06/06(日) 18:49
1週間がとても待ち遠しい日々をおくってます。桃子が大人な感じが好きです。
キャプテンや千奈美も出てきていい感じだし。みやももの生活もほんとにスタートだし、これからも期待しつつ待ったます。
133 :CROSS OVER :2010/06/06(日) 21:56
言いたいことも言い終わり、一段落して周りを見ると佐紀達の姿が無い。

「あれ?ちぃ達は?」
「何か帰ったみたいだよ?」
「いつの間に?ってかもも知ってたの?」
「みやがもものこと離してくれなかったから」
「違うっつーの!・・・2人とも一言言ってくれたらよかったのに」

ちゃんとお礼言いたかったのに。
何にも言わずに帰っちゃうんだから。
2人の薄情者。
これもももの所為だ。
ももがうちをからかうからだ。

「いいじゃん、また呼べば。それでお泊り会とか開けば。ね?」
「・・・うん」
「じゃあ、片付けしようか」
134 :CROSS OVER :2010/06/06(日) 21:57
桃子の声に辺りを見渡すと食べかすやゴミが散乱としてた。
散らかすだけ散らかして手伝わずに帰った2人を恨む。

どうにか片付けも終わりほっとするも、時刻は11時を回っていた。

「はー疲れたお風呂入って寝よ?」
「うん。あっもも先にどうぞ」
「いいよ。今日の主役なんだからみやから入りなよ」
「ううん。やっぱりももからで」
「じゃあ、間を取って2人で入る?」
「それはやだ」

雅はお風呂は1人で入りたい人だった。
人と入るのは照れくさいし、苦手だ。

「そんな事言わずに。今日から一緒に暮らしていくんだから。何事も裸の付き合いだよ」

もっともらしいことを言っているがももの口車に乗ってたまるか。
これだけはがんとして拒否する。

「しょーがない、今日の所は我慢するか。じゃあみや先入っていいよ」

珍しく桃子は簡単に引いてくれた。
とりあえずは桃子の気が変わらないうちに早く入ってしまえと慌てて脱衣所に逃げ込んだ。
135 :CROSS OVER :2010/06/06(日) 21:58
手足を伸ばし今日の疲れを落とそうとゆっくりと湯船に浸かる。
心地よい温度のお湯が雅の心をほぐしてくれる。
気持ちよく浸かる雅にお風呂場の扉が開く音が聞こえる。

「やっぱり一緒に入ろ?」

声と同時に桃子が侵入してきた。
桃子はタオルで隠すことなく堂々としている。

「ちょっ、うちが入ってるんだから。出てってよ」

雅は慌てて後ろを向き、桃子に出て行くよう脱衣所の方を指差す。
ところが桃子は出て行く気がないのか呑気に鼻歌を歌いながらシャワーを浴びている。
桃子の様子に何を言ってもしょうがないと諦める。
シャワーを終えて湯船に入ってくる。
136 :CROSS OVER :2010/06/06(日) 21:58
「みや、そっち詰めて」
「もも、狭い。入ってこないでよ」

唯でさえ狭い湯船に、いくら女の子2人といえど窮屈だ。
足がぶつかり合う。
顔を見合わせながら入る。照れ臭くてたまらない。

「嫌だって言ったじゃん」
「まあまあ、さっきまで佐紀ちゃん達がいたからみやとゆっくり話せてないなぁって」
「じゃあ何?」
「いや、特にこれと言って言うほどのもんもないんだけど」
「はぁ〜?」

前からももは適当な所があるとは思っていたがこれほどだったとは・・・。
だったらわざわざお風呂にまで来ることないのにと、脱力する。
137 :CROSS OVER :2010/06/06(日) 21:59
「もう、もものばか!」

雅は桃子にシャワーのお湯をかけてやった。顔面から。
桃子も大事な前髪にお湯をかけられて、黙っておらず浴槽のお湯を思いっきりかけてきた。

「やったな〜。お返しだ」

子供のようにお湯をかけあって遊んだ。
仕舞いにはくすぐり攻撃までしてきた。

「ちょっ、どこ触ってんの!?」
「さあ?もも、この湯気で全然分かんないし」

絶対分かっててやってる。
やり返してやろうと、立ち上がるもふらっと桃子の方に倒れ込む。
雅の意識はそこで途絶えてしまった。



疲れを落とすためにお風呂に入ったはずなのに、余計疲れを倍増させてしまった。
これももものせいだ。
もう絶対ももとはお風呂に入らない。
雅は心に決めたのだった。
138 :CROSS OVER :2010/06/06(日) 22:02

◆◆◆

目を覚ますと横には桃子の顔があった。
あまりの近さに飛び起きた。
心臓の音が聞こえるんじゃないかというほど雅の心臓はドクドクと高鳴りをみせた。

「なんでももがここに?」

ああそうか昨日ももとお風呂に入ってそれから・・・。
「はっ」急いで自分の体をみる。
服着てる、どうして?

もしかしてももが・・・。
うちの裸みられた?
一瞬で顔が赤くなった。
139 :CROSS OVER :2010/06/06(日) 22:03
雅が1人じたばたしていると桃子が起きた。
「あっ、みや、おはよー」
舌っ足らずに挨拶をする。

「あ、あの昨日、うち・・・」
「ん?」
「その・・・服」
「ああ。服ならももが着せたよ?」

その言葉にがっくりと肩を落とす。
やっぱり見られた。

「何?ももが服着せちゃあいけなかった?」
「そういう訳じゃあ・・・」

雅の言葉に要領が得ないのか不思議そうな顔をする桃子だった。
それは一瞬のことですぐにやーっとした顔になった。

「裸見られたこと気にしてんの?」
「うっ」
「みやの胸が小さいのくらい知ってるのに。今更どーって事ないでしょ」

唯でさえ赤い顔がさらに赤くなった。
140 :CROSS OVER :2010/06/06(日) 22:03
「女同士なんだからそんなん気にすること無いのに」
「ももは胸大きいからそんな事言えるんだよ。ほんと、これからは絶対やめてよ!」
「はいはい」

一応納得はしてくれたが信用ならない。
またやるに決まってる。
対策を考えなければ・・・。

「そうだ。もも、ルール決めよ?」
「ルール?」
「そう、ルール」

自分の発言にナイス。
絶対お風呂は別々にしてやる。

「一応同居するにあたって、ルールとか決めとかないと」
「食事当番とか?」
「そんな感じ」
141 :CROSS OVER :2010/06/06(日) 22:04
ももが途中ちゃちゃを入れるから中々進展しなかったがどうにか決めることが出来た。

1.お風呂は別々に!←これ絶対!!
2.お風呂の順番はじゃんけんで決めて、負けたほうが掃除もする
3.食事は交代制もしくは2人で作る
4.部屋の掃除は各自がして、共同の場は休みの日に一緒にする
5.遅くなる時は必ず連絡する


とりあえずはこの5つをルールとして後は追々考える事にした。

「何かこの5つ決めるだけですっごく疲れた」
「そう?ももは全然そんなことないけど」
「うちは疲れたの!」

これからずっとももと一緒だと思うと頭が痛くなりそうだ。
142 :CROSS OVER :2010/06/06(日) 22:04

143 :ちゃぽ :2010/06/06(日) 22:17
新生活スタートと言っておきながら今回はちょっとさわりだけな感じもしますが、気長に読んでもらえると・・・
最近レスがついててやる気倍増です


>>131 名無し飼育さん
楽しんで頂けたら嬉しいです

>>132 名無し飼育さん
ありがとうございます
なるべく1週間に1回のペースを崩さないように頑張ります
144 :名無飼育さん :2010/06/07(月) 06:09
初日からこれですか。いや〜ん ドッキドキ〜w
しかしももがお姉さんしてて素敵ですね
145 :CROSS OVER :2010/06/13(日) 09:19
「そういえば何でうち、ももの部屋で寝てたの?」
「覚えてなの?みやの部屋まだ片付いてないの」
「あー、そうだった。荷物だけ入れてそのままおとーさん達の見送りに行ったんだった」
「だからしょうがないからももの部屋に連れて来たのに」
「ごめん、忘れてた」

ももの言う通りうち抜けてるのかなぁ。
前までそんな事なかったはずなのに。

落ち込む雅に追い討ちをかけるがごとく桃子が口を開ける。
ただ事ではない感じにドキリと身構える。
146 :CROSS OVER :2010/06/13(日) 09:20
「そんなおっちょこちょいなみやにつかぬ事を聞くんだけど」
「・・・何?」
「夏休みの宿題って、当然終わってるよね」
「・・・・・・」
「今日27日って知ってるよね?」
「・・・・・・」
「夏休みも後4日しかないんだよ」
「・・・・・・」

どうしよう、まだ全然終わってない。
この夏休みは引っ越し作業で家がごたごたしてたからすっかり忘れてた。
去年に比べ少ないと言えど宿題はそれなりにある。
それもほとんど手をつけていないままの・・・。
いつもは最後の1週間でちぃと分担して四苦八苦しながら1日の朝ギリギリに終わる。
でもちぃは「今年は受験生だしみやに頼らないで1人で頑張る」って言ってた。
絶対間に合わない。
147 :CROSS OVER :2010/06/13(日) 09:20
桃子は顔面蒼白になる雅に大体の状況が分かった。
とりあえず雅の様子を観察しているみたいだ。

「もも、一生のお願い。手伝って!」

雅は懸命にお願いする。
そんな雅に溜息を落とす。

「とりあえず持ってきてごらん。手伝う手伝わないは見てからね」
「うん」

雅は今までになくすばやい動きをみせた。
急いで自分の部屋に向かい扉を開ける。
開けた瞬間すべてが終わった。
148 :CROSS OVER :2010/06/13(日) 09:21
中々戻ってこない雅に不審に思った桃子が部屋にやってきた。
「何やってんの?」
雅はダンボールの山を1つずつ開け宿題のノートやらプリントを探していた。

「プリント、どこやったか分かんない・・・」

こんな自分が情けなく思う。
何故かももには情けない所ばかり見せてしまう。
人に弱味を見せるのは嫌いなうちは意地ばっかり張っていた。
でも今更ももには体裁を気にしたところで意味がない。

「ほんとみやは世話が焼けるね」
「ごめん」

桃子は腕をまくってやる気を見せた。
一緒に探してくれるらしい。
捜索すること1時間。
ようやく目的の品が見つかった。

ページをめくる前に桃子は恐る恐る質問してきた。

「みや、さすがに半分はやってる・・・わけないか」
「うん」
「もー、これ4日で終わるの?」
「・・・終わんない。だからももお願い」
149 :CROSS OVER :2010/06/13(日) 09:21
桃子は溜息を落とし部屋から出て行った。
雅はとうとう呆れて見捨てられてしまったかと落胆する。


暫くして桃子が部屋に戻ってきた。

「みや宿題持って」
「へ?」
「だから宿題もってももの部屋に来てってば」

この部屋じゃあ勉強する場所がなかった。
桃子はそれが言いたかったらしい。
素直に勉強道具を抱え桃子の部屋に再びやってきた。

「さっき何で部屋から出てったの?」
「あーあれ?バイト休ませて貰えないかって電話してた」
「ご、ごめん。うち、ももに迷惑ばかりかけてる」
「いーよ。みやを預かるって決めた時から覚悟してるし・・・って冗談だからね?」
150 :CROSS OVER :2010/06/13(日) 09:22
桃子は冗談と言っているが実際迷惑をかけているのは変わりない。
黙り込む雅に桃子は諭すように答える。

「申し訳ないって思うんだったらこれからはちゃんと計画的にやるんだよ?」
「・・・うん」
「はい、じゃあ反省はこれで終わり。後は前に進むだけだからね」

2人の勉強会が始まった。
でも手伝うといっても、ももは答えを教えてくれるものではなかった。
分からないことに対して助言はしてくれるけど、答えは自分で導き出さなければならない。
思ったよりはかどらないが、今までうちが分からないと投げ出していた問題がももの教えで段々分かってきた。
以外にももの教え方が上手で頭の悪いうちでもわかりやすかった。
そういえば佐紀ちゃんがももは頭いいよって言ってたっけ。

雅が黙々と問題を解く間、桃子も何やらレポートらしきものをやっていた。
度々雅が質問し、その都度手を止めて教えてくれる。
やはり申し訳なく思うが既にバイトを休ませてしまった桃子には、早くこの宿題を終わらせることが一番だと思い今までかつて無いほどの集中力を発揮した。
151 :CROSS OVER :2010/06/13(日) 09:22
ふと顔を上げると辺りは暗くなっていた。
桃子の方を向くも姿がない。
リビングへ行くと夕飯の用意をする桃子がいた。

雅が出てきたのに気付いた桃子は
「声掛けたんだけど、集中してるみたいだったから。待ってねもうちょっとで出来るから」

あまりに集中しすぎて放心状態になった。
ソファーに座ってぼーっとテレビを見た。
少しして桃子に肩を揺すられて初めて呼ばれているのに気が付いた。
ちょっとご立腹そうな桃子がいた。
152 :CROSS OVER :2010/06/13(日) 09:23
「もーご飯出来たって何回も言ってるのに」
「ご、ごめん。何か疲れちゃって」

食事の最中も桃子に色々話しかけられた気がするが雅の頭は許容量を超えてしまった。
ごはんを食べお風呂に入ってようやく生気が戻ってきた。
寝る前も宿題に手をつけて
そして寝る時になって大事なことを思い出した。

「うちの部屋まだ寝れる状態じゃない!」

桃子はそんな事かと呆れていた。
昼間ずーっと宿題に追われていたんだから片付ける暇なんてある訳がない。
どうしようかと思考を巡らせているとなんでもない風に桃子が話す。

「ももの部屋で寝ればいいじゃん」
「いいよ。うち、リビングで寝るし」
「じゃあ、もももそこで寝る」
「何でそんなに一緒に寝たがるの?」
「何か枕を並べて寝るのって楽しいじゃん」
153 :CROSS OVER :2010/06/13(日) 09:23
まあ確かに友達とのお泊り会では夜通しおしゃべりに華が開いたものだ。
次の日は決まって寝不足だったがまた次もやろうねと満足だった。
桃子はそれが言いたかったらしい。

「うちもう疲れて眠い・・・」
「え〜、おしゃべりしようよ。昼間あれだけみやに付き合ったんだから」
「でも、まだ宿題も終わってないし明日も早く起きてやらなきゃあ」

不服そうな顔をする桃子に雅はどうすることも出来ない。
仕方なく桃子の申し出を受け入れる。
2人で布団をリビングに運び布団を並べる。

桃子のマシンガントークに最初のうちは相槌をうっていたが、慣れない長時間の勉強に疲れ果てた雅の意識は遠ざかっていった。


154 :ちゃぽ :2010/06/13(日) 09:27
今日は早めの更新です
また夜時間があったらきます


>>144 名無し飼育さん
うちの桃子はちょっと大人な感じで、逆にみやびちゃんはへタレ仕様になってますw
155 :名無飼育さん :2010/06/14(月) 05:31
更新の度にももの素敵なお姉さんっぷりがアップしていってるような
これからも楽しみです
156 :名無飼育さん :2010/06/16(水) 11:48
みや可愛いですね、もも大人っぽいですし!
次回も期待してます!
157 :CROSS OVER :2010/06/16(水) 22:51
桃子の助けがあって、夏休みを1日を残して宿題のすべてを終わらせることが出来た。
しかし最終日にはやるべき事が残っていた。
後回しにしていた雅の部屋の片付けだ。
結局あれから雅の部屋が使えなかったためリビングで枕を並べて寝る羽目になった。
元々きれい好きな雅は半日もあればものの見事に整頓されていた。

「あれだけ散らかってたのにすごいねぇ」
「まあね」

桃子は感心して雅を見直す。
雅も褒められて悪い気はしない。

「でもなんでノートとかあんなに探す羽目になったんだろう?」
「それはちょっと忘れてただけじゃん!」

分かった上でわざと雅に聞いてくる。
雅をからかうことを楽しんでいる節さえある。
その手にのってたまるか。
158 :CROSS OVER :2010/06/16(水) 22:52
最近桃子の性格がよく分かってきた。
いや身を持って分からされた。
なんか桃子の手の平で転がされているような感じだ。
雅の何歩も先を歩いている。
まあ確かに桃子の方が年上だし、それが当たり前ではあるけど何か釈然としない。
普段は子供っぽいくせにいざとなったら頼りになるし、大人だ。
雅も心を改め素直になろうと思えば、桃子の方から茶化したりしてくるからたちが悪い。
そんな桃子にどうしても意地を張ってしまう事がしばしば。
159 :CROSS OVER :2010/06/16(水) 22:52
雅は基本素直で、年上の人には可愛がってもらうことが多い。
無意識に甘える癖があるみたいだ。
佐紀が在学中は抱きついたり、かまってオーラをよく出していた。
ところが同じ年上の桃子には何故か素直になれなかった。
会えば意地ばっかり張っていたし、時には下に思ったりさえしてた。
自分の事ながらよく分からない。
でも佐紀の時みたいに素直に甘えれないのは桃子にも問題があると思う。
第一に桃子は雅をからかう。ツンデレとかへんな言葉で雅を陥れようとする。
『ももはみやよりお姉さんなんだから佐紀ちゃんみたいに甘えていいんだよ』なんて口では優しいこと言ってるがその時の桃子は目が笑ってたり口元がニヤニヤしてたりする。
そして桃子の外見にも問題がある。
2人が並んでいたら絶対雅の方が年上に見えてしまう。
いまだツインテールにしたり、髪の毛を染めたりしない桃子は中学生にも間違えられたくらい。
そんな桃子に甘えているところを他の人に見られていたら・・・。
雅のこか・・・沽券に関わる。
160 :CROSS OVER :2010/06/16(水) 22:53
でも同居の一件で桃子のいい所、たくさん知った。
桃子の手はいつも暖かかった。
怖くて震えてた時。
不意に触れた時。
これからよろしくと手を握り合った時。
桃子の手は雅のものより一回り小さいが雅には大きく感じて安心させてくれた。

そう言えば入学式の日1人迷子になった時、係をしていた2年生に体育館に連れて行ったもらったっけ。
辺りには誰もいなくてどうしようと心細かった雅に『こっちだよ』と手を引かれてその手の温もりに安心できた。
どうにか式には間に合って先生に怒られずに済んだ。
後からお礼を言ってないことに気付いたがあの時はパニクってたから顔も名前も覚えてなかった。
機会があればお礼を言おうと思っていたが、日々の生活にその時の事はすっかり雅の記憶から消えてしまっていた。

何で今になってあの時の事を思い出したんだろう。
・・・ああ、今日荷物の整理をしてる時に1年の頃の写真が出てきたからかな。
今更思い出した所であの人はもう卒業しちゃってる筈だからどうしようもないんだけどね。
161 :CROSS OVER :2010/06/16(水) 22:53
雅はふとあれは桃子だったのかも・・・と考える。
顔も名前も覚えていない雅は唯一その人の手のぬくもりだけは覚えていた。
桃子の手があの2年生のものとよく似ている気がする。
雅もたまたま思い出しただけであの2年生が迷子だった雅のことを今更覚えている訳がない。
桃子に聞いたところで冷やかされるに決まっている。
もうこの事は忘れよう。
高校1年生にもなって迷子だなんて恥ずかしすぎる。
162 :CROSS OVER :2010/06/16(水) 22:54
急に黙り込む雅に桃子は心配になったのか顔を覗き込んできた。
自分の世界に入っていたため桃子の行動に心臓が飛び上がる。

「な、なに?」
「何かぼーっとしてるみたいだから大丈夫かなって」
「ちょっと考え事してて・・・」
「熱でもあるんじゃないの?」

桃子は雅のおでこに自らのをくっつけた。

「・・・」
「う〜ん、熱はないみたい。でも顔が赤いみたいだけど?」
「何ともない。大丈夫だから!」

慌てる雅を不審に思いながらも「みやが大丈夫って言うなら・・・」と引いてくれた。
163 :CROSS OVER :2010/06/16(水) 22:54
まただ。
この前もももを見て心臓がドキドキしてた。
何だろう?
もしかしてうち、もものこと・・・。
ってそんな訳ないない。
ついさっきまで慌しく動いてたし、その余韻だって。
マジももだなんて一番にありえないし!
自分の中での仮説をすぐさま否定する。


お昼ごはんを食べ終わると自室に戻った。
ベットに横になっているといつの間にか眠っていた。
流石に慣れない勉強尽くしの日々に精神的にも肉体的にも疲れていたらしい。
164 :ちゃぽ :2010/06/16(水) 22:55
夜といいながら3日過ぎてしまいましたw
ストックが減っていくのが心もとないですが出来るだけ更新頑張ります!(`・ω・´)


>>155 名無し飼育さん
ル ’ー’リ<ももはもともと大人ですよ

>>156 名無し飼育さん
みやびちゃんはアフォの子に徹してもらってますw
165 :名無飼育さん :2010/06/21(月) 08:05
これから二人がどのように進展していくのか楽しみです
ニヤニヤしながら待ってます
166 :CROSS OVER :2010/06/21(月) 20:26
そして新学期がはじまった。
千奈美から貰った目覚まし時計が早速役立った。
携帯のアラームもセットしていたが念の為にと10分後に目覚まし時計もセ

ットしてみた。

しかし雅が目を覚ましたのは携帯のアラームじゃなかった。
目覚ましによって起きる事ができた。
あの凄まじい破壊力、今まで雅がかつて出会った事のない品だった。

宿題も桃子のお陰で無事終わり、胸を張って登校することができた。
驚いたことに千奈美も宿題を終わらせていた。
眠そうな顔を見る限りギリギリまでやっていたのだろうと察しが付く。
167 :CROSS OVER :2010/06/21(月) 20:29
「ちぃ本当に終わったの?」
「当たり前でしょ。みやこそ終わってるの?」
「うちだってやる時はやるんだから」
「どうせももにでも手伝って貰ったんじゃないの?」

千奈美の言葉にドキッとしたが顔に出さないように口早に答える。
「ち、違うよ。1人でやったし!ちぃこそホントに1人でやったの?」
「うち?うちだってちゃ、ちゃんと1人でやったよ!」

ふ〜ん。絶対怪しいなぁ〜。まあうちも人のこと言えないし・・・。
まあとりあえずは無事?宿題も提出できたことだし、新学期初日は好スタートってところだ。
168 :CROSS OVER :2010/06/21(月) 20:29
後から聞いた話ではやっぱり千奈美も佐紀に手伝って貰ってたとか。
桃子からの情報では佐紀も色々大変だったらしい。
2人は同じ大学に通っててよく一緒にお昼をとってるとかでその時に聞いたみたい。

――千奈美はあれだけ大口を叩いて1人でやると宣言したのだから今更雅に頼る訳にはいかないって。
佐紀のアパートに転がり込んで手伝ってもらったらしい。
佐紀も千奈美に3日間つぶされた。
仕舞いには終わらなくて佐紀も漢字の書き取りとかやる羽目になったとかで登校日には欠伸をしながら姿を見せたとか。

お互い頭の悪い後輩を持ったもんだねーって冗談交じりに話したって言ってた。
そりゃ頭が悪いのはホントの事だけどそんなはっきり言わなくてもいいじゃんと心の中で呟いた。


169 :CROSS OVER :2010/06/21(月) 20:29
ようやく新学期もはじまって2人の生活も起動に乗りそれなりに上手くいってるように思えた。
・・・はずだったが一緒に生活してくると色々と見えてくるものがあった。

部屋が汚いとか思う所は色々あったが1番気になることはやっぱり食事だ。
はじめは一緒に作ったりしていたが、最近はうちが体育祭の練習で忙しく帰る時間が遅くなることが多い。
必然的にももが作ってくれることが多くなる。
勿論作ってくれることには感謝しているがそろそろ我慢の限界だ。

まあ本人も料理は下手だと宣言しているし、しょうがないっちゃしょうがないかもしれないけど・・・。
でも半年近くも1人暮らしをしていた訳だからそれなりに出来るのではと思ってた。
日によってはそれなりに食べられるものも随分あるにはあるんだか、いい時と悪い時の差が酷い。
170 :CROSS OVER :2010/06/21(月) 20:30
一番凄まじかったのはもも曰くタコライスだった。
タコライスって名前にたこって入ってるからホントにタコ入れるって勘違いしやすいんだけど実際入ってなかったりする。
タコスの具をごはんに乗せたようなものだ。
ももの料理にはタコの頭におじやみたいなごはんが詰め込まれていて、周りにはタコの足が丸々盛り付けられていた。
比較的料理の好きなうちにとってみればありえないことだ。
焼きそばを作った時なんか何故か麺が緑色で何か団子っぽくなってた。
食べてみるとギリ食べられなくないけどこれは焼きそばではなかった。

一度ももに聞いてみた事があった。
今までどうやって生活してきたのと。
そしたら夕飯はバイトがある時はバイト先の賄いで済ませていた。
食費も浮くし一石二鳥だよ。
だからバイト先は絶対飲食店を選んでたとか・・・。
ちゃっかりしてると言うか何と言うか開いた口が塞がらなかった。
171 :CROSS OVER :2010/06/21(月) 20:30
まあ佐紀ちゃんの料理に比べたら比にならないほどまともなんだけど。
いつだったかちぃと2人でオムライスを作ってくれたことがあってあの時のことを思い出すだけで気持ち悪くなってくる。
ごはんはケチャップ味なはずなのにソースやピーナッツバターを入れたり、創作料理もいいとこだ。
仕舞いには11種類もの調味料を混ぜて作ったソース?をたっぷりかけてあって、口に入れなくても匂いだけで体は食べちゃだめだと拒否反応を起こしていた。
ももと2人で意を決してスプーンを口に運んだ。
結果、2人して洗面所に駆け込むはめに。
あの後作った本人達も食べてちぃはうちらと同じ反応を見せたが、佐紀ちゃんに至っては「どうしたの3人とも。食べないの?」と黙々と食べていた。
それから佐紀の料理には気を付けろという暗黙の了解が生まれたくらいだ。
172 :CROSS OVER :2010/06/21(月) 20:31
何て言うか料理って一種のセンスだよね。
うちは勉強とか頭を使うことは苦手だけど運動とか料理とか体を動かす系はかなり得意だ。
反対にももとか佐紀ちゃんは頭はいいけど料理はからっきしだったりする。

一応共同生活といった観点からももは交代でって言ってたけど、人には向き不向きってもんがあるもんね。
料理するのは全然苦じゃないし、うちの健全なる食生活の為にもやはりうちが作った方が良さそうだ。

ももにそう話すと即効反対された。
料理は苦手ではあるけど嫌いではないらしい。
何でも今から花嫁修業の一環だとか。

でもうちも生死に関わる
精一杯説得を開始した。

バイトで遅い時とかももの帰りを待っているとお腹が空く、待ってられない。
お風呂だってうちが先に入ることが多くなってももにばっかり掃除をしてもらうようになる。
平等じゃあなくなる。
だからうちが食事を作って、ももがお風呂の掃除をする、これが1番平等だと思う。
買い物だって学校が終わるのが早いうちが行く方がいい。
173 :CROSS OVER :2010/06/21(月) 20:31
前にももに買い物を頼んだ時のことだ。
うちのメモには卵、玉葱、グリンピース、ケチャップと書いたはずなのに、グリンピースは入ってなくて代わりにチョコレートとかおやつが買い物袋に一緒に入っている。
最初の頃はまあいっかと黙認していたがこれが毎回続くとちょっとこれはと思うようになってきた。

休みの日に2人でショッピングセンターに行った時もだ。
うちが籠を持っていると、どこからともなくおやつやらカンパチやらももの好きな物ばかり入れて来る。
それをうちは無言で戻していく。
戻したと思ったらももも負けまいと次から次に籠に入れてくる。
そんなももにいつもけんかになる。
うちがきつく言うと渋々戻す。
がっくり肩を落とすももに一個だけだからねと言うと、うれしそうにおやつを持ってくる。
おとーさんを説得してくれた時は頼りになると思ったけど、垣間見るももは子供っぽかったりする。
どっちがホントのももなんだろう。

174 :CROSS OVER :2010/06/21(月) 20:31
話は逸れたけど、ともかくうちが食事関係はやった方がいいとももに無理矢理納得させた。
ももも渋々了承した。
でも「休みの日はももが作るからね」と、これだけは頑として譲らなかった。
まあ休みの日ぐらい胃薬でどうにかなるだろうし、全然やらせないとなるとうるさいからこれぐらい我慢するか。
175 :ちゃぽ :2010/06/21(月) 20:36
ちょこちょこと小ネタを踏まえつつ本日の更新ですw

>>165 名無し飼育さん
じれったい2人なので気長に待っていただければ・・・
176 :名無飼育さん :2010/06/30(水) 21:01
おもしろいです
みやびちゃん、がんばってw
177 :CROSS OVER :2010/07/04(日) 20:07
そして雅が本格的に夕飯の担当に決まった。
そう言えばそもそも桃子の夜のバイトの理由は賄い目当てだった。
雅が夕飯を作ることに決まって桃子は夜のバイトをする必要がなくなった。
でも家賃や学費は親に出してもらっていたが生活費は自分でどうにかすると親に宣言していたから別のバイトはするつもりらしい。
もともと夜が弱い桃子だったから昼間や夕方のバイトにかえることに躊躇はなかった。
とりあえず今はコンビニのバイトをしているらしい。
結構雅の学校に近い所にあって雅もちょこちょこ冷やかしに顔を出している。
178 :CROSS OVER :2010/07/04(日) 20:08
「いらっしゃいませ〜」
「やっほー」
「みやまた来たの?」
「客に向かってまた来たのってどうなの?」
「だって何にも買わないじゃん。もも店長さんに睨まれてるんだから。どうせ連れてくるんなら何か買ってくれる子を連れて来いって」

溜息混じりに桃子に睨まれる。
雅はそんな桃子に全然怯んだ様子もなく堂々と答える。

「うち買ってんじゃん」
「5回に1回くらいガリガリ君をね」
「だって財布さみしーもん。高校生が毎回買い食いなんて出来る訳ないじゃん」

うちの学校バイト禁止だし、親の仕送りだって限られているんだから。
内緒でバイトしてた子が見つかって大目玉食らったって言ってたし、うちはそんな危ない橋渡りたくないもん。
179 :CROSS OVER :2010/07/04(日) 20:08
「だったらなんで毎度毎度もものシフトの時ばっかり来てんの?」
「なんでって単なる暇つぶし。ここエアコン効いてて涼しいし、立ち読みし放題じゃんお金掛かんなくて一石二鳥!!」
「みやがそんな言葉知ってるなんて・・・」
「そんぐらい知ってるし!!」

桃子と他愛もない話をしていると店長らしき人が来て咳払いをした。
桃子が慌てた様子で雅を追っ払おうとしてきた。

「みや仕事の邪魔だから用がないんだったら帰った帰った」
「わかったよ、帰りますよーだ」

雅は素直にその場を去った。
180 :CROSS OVER :2010/07/04(日) 20:09
「さて、これからどーしよっかな?まだ家に帰るには早いしちぃでも誘ってどっか行こっかな」
携帯を取り出して弄っていると

「みや!」
桃子の声に振り返ると独特な走り方をして雅の元へ駆け寄った。

「どーしたの?」
「これ」
桃子の手にはいつも雅が買うガリガリ君が・・・。
???
意味が分からず凝視していると桃子は業を煮やしたかのように雅の手にガリガリ君を押し付けた。

「これあげる」
「いいの?」
「うん、何か無理矢理追い出しちゃって悪かったかなって」
「気にしなくていいのに・・・」
「いいの、ももが気になっただけだからみやは気にしないで」
181 :CROSS OVER :2010/07/04(日) 20:09
うちが勝手に居座ってただけなんだからももが気にすることないのに。
ももの気遣いに逆に申し訳なく思う。

「じゃあもも戻るね」
そして嵐のごとく走って行った。
そんな桃子に慌てて声を掛ける。
「もも!」
雅の声に振り向いた。

「今日の夕飯ソーメンだからね」
「ほんと?やったー」
「だから早く帰ってきなよ」
「分かった。楽しみにしてるね」
桃子は足早に戻って行った。

やっぱり予定変更。
今から買出しに行こう。
ソーメンって家にあったっけ?
まあいいや、いっぱい食べるだろうし残ったって問題なし!
ももソーメン好きだから喜んで食べてくれるよね。
182 :CROSS OVER :2010/07/04(日) 20:10
今日はちょっと豪勢に具をいっぱいのせて冷やし中華風に。
具は卵、きゅうり、ハム、エビ、椎茸・・・こんなもんでいっか。
卵はももが好きなちょっと甘めにして。
エビも大奮発、1人5尾!
ソーメンは・・・4束じゃ少ないかなぁ?
いいや、残ったらどーせ次の日ももが食べてくれるし6束茹でちゃえ。

盛り付けも終わって冷蔵庫に冷やしている間にちょっと一息。
学校からのプリントに目を通す。
『三者面談のお知らせ』

これどーしよっかな。
大阪からわざわざ来てもらうのも何だしなぁ。
どうせ大学行くつもりないし。
おかーさん居なくてもうち1人で大丈夫だよね。

1人納得してプリントを丸めてゴミ箱に放り投げた。
そして雅の中から三者面談について消去された。
183 :CROSS OVER :2010/07/04(日) 20:11
雅がテレビを見ていると「ただいまー」の声がした。
声と同時に部屋に入ってきた。

「おかえり、もも」
「うん、ただいま」
「ソーメン出来てるよ」
「じゃあ、食べよ?」

まだ時刻は5時半過ぎといった所だ。
雅達の普段の食事は大体7時が常である。

「ちょっと早過ぎじゃない?」
「いいの。ももはソーメンのために急いで帰ってきたんだから」
「・・・まあ、いいけど」
「みやったら話分かるじゃん」
「その代わり夜中お腹すいたとか言わないでよ?」
「うんうん」

桃子の勢いに圧されて用意を始めた。
よっぽどソーメンが食べたいのか桃子の行動の早いこと。
雅が準備を終える前から既に箸を片手に食卓に着いていた。
184 :CROSS OVER :2010/07/04(日) 20:11
「じゃーん。冷やし中華風ソーメンでーす」
「うわー、おいしそう。さすがみや」
「でしょ?今日はちょっと奮発しちゃった」

最後の仕上げに刻みのりを散らして出来上がり。
顔を見合わせて
「「いただきます」」

桃子がどういう反応をするか雅は気になって様子をうかがっていた。
市販のめんつゆでも別に良かったが折角だからとつゆも手作りにしてみた。
だしも昆布とかつおから取ってちょっと本格的に。

「ちゅるちゅる・・・ごっくん」
「・・・どう?」

雅の問いかけにも答えずまたソーメンに箸が伸びる。
黙々と食べ進める桃子に心配になる。
185 :CROSS OVER :2010/07/04(日) 20:11
「ねぇ、ももってば」
「ん?何?」
「だから味とかどう?」
「おいしーよ?箸が止まんなくてぱくぱく食べちゃった」

桃子の答えに安心して雅も食べようと箸を伸ばすも確か5尾ずつお皿に盛ったはずのエビちゃんがあと3尾しかない。
まさかと思い桃子の方を向くとそこには雅のエビちゃんがまさに口に運ばれようとしているではないか。

「ちょ、もも待って」
「何?」
「そのエビ、うちのじゃないの?」

桃子はにまーと笑顔を見せ、そのまま口の中に入れ見事に雅の視界からエビがなくなった。
186 :CROSS OVER :2010/07/04(日) 20:11
「やっぱエビはおいしいねぇー」
「もーもー!!うちのエビ返せー」
「もう食べちゃったもん♪」
「もー、うちだって楽しみにしてたんだから」
「いいじゃん。ほら、まだみやのお皿には3個もあるよ?」

全然反省の色がない。
今度絶対懲らしめてやる。
おっと今はそれどころじゃあない。
早くこの3尾のエビちゃんを避難させないと。
これ以上ももに取られてたまるか。
ホントだったらもっと味わって食べたかったのに、と内心勿体無いと思いながらも急いで食べた。
187 :CROSS OVER :2010/07/04(日) 20:12
結局あの後も味わって食べる所かがさがさっと急いで食べる羽目になった。
あれだけあったソーメンも何やかんやと言いながらもすべて完食してしまった。
何故か2人共対抗意識を燃やしまくってて、桃子が食べれば雅が食べ、雅が食べれば桃子が食べの繰り返しで最後の1本まで取り合った。

食べ終わった後も2人して胃薬すら取り合った次第だ。
「胃薬までどんだけー?マジウケるんだけど」
「ホントだよ。こんなん取り合ってどうするって」
顔を見合わせて吹き出す。
そして部屋中が笑いの渦に包まれた。

188 :ちゃぽ :2010/07/04(日) 20:16
ちょっとご無沙汰してしまって・・・orz
先週は福岡行って完全燃焼してました

>>176 名無し飼育さん
ノノl∂_∂'ル<べ、別に頑張るつもりなんてないし!
ル ’ー’リ<みやったらテレ屋さんなんだから
189 :CROSS OVER :2010/07/18(日) 21:12
今日も特別変わった事もなく平凡な朝を迎えた。
朝から他愛もない話をしながら食卓を囲む2人だった。
今日は燃えるゴミの日でゴミ箱の中身を移している時だった。
この前雅が捨てたはずの三者面談のプリントがゴミ箱に入っておらずゴミ箱の奥に転がっていた。
運悪くそのプリントを桃子が発見してしまい、これは何かと追及されてしまった。

プリントには今日の3時から面談がありますので時間厳守でお願いしますと書いてある。
桃子にお母さんに言ってあるのかと問われるも言っているわけがない。
190 :CROSS OVER :2010/07/18(日) 21:12
桃子はやや緊迫した面持ちで雅に問いかける。
「どうして?」
「わざわざ来てもらわなくても・・・」
「そういうわけにはいかないでしょ」

桃子は今からお母さんに電話しても間に合うか、いやギリギリでどうにか、と時計を気にしていた。
考えがまとまったのか雅に向き直り告げる。

「みや電話してみな」
「今からじゃ無理だって」
「いいから電話するの!」
191 :CROSS OVER :2010/07/18(日) 21:13
渋々電話する雅だった。
ところが何回電話しても繋がらない、留守みたいだ。
そう言えば、ふと思い出す雅だった。

「2,3日前おとーさんが福岡の方に出張になったとかで、それに着いて行くって言ってたような・・・。どーしよ、もも」
「うーん、ならもものお母さんに変わりに行ってもらおうか?」
「そんな迷惑掛けられないよ。1人でも大丈夫だよ、うちは初めからそのつもりだったし・・・」
「だめだよ。じゃあ・・・・・・よし決めた。ももが行く」
「ももがぁ?いいよ恥ずかしいし」
「お母さんに言わなかった罰だよ。しっかり恥ずかしい思いをすればいいよ」
「そんなぁ〜」
192 :CROSS OVER :2010/07/18(日) 21:14
雅はすっとんきょんな声を上げた。
こんな事なら始めっから素直に言っておけばよかった。

「さあもう学校に行く時間だよ、早く支度して」

雅は中々復活出来ずにその場にうな垂れたままだった。

「あっ2時半には学校に行くから正門の所に迎えに来てね」
「え、あの・・・」
「つべこべ言わずにいってらっしゃい」

雅は反論も聞いて貰えないまま桃子に家を追い出された。
193 :CROSS OVER :2010/07/18(日) 21:15
◆◆◆

本当にももは来るんだろうか。
今日は全然授業に身が入らずそわそわするばかりだ。
そして2時半教室の窓から外を見てみるとももの姿が・・・。
カーテンの陰に隠れどうしようかと悩んでいると携帯が振動した。
ももからのメールだ。
フォルダを開けると「みや早く来ないと教室乗り込んで行くよ?」
顔面蒼白になり急いでももの元へ走っていった。

「みや遅いよ、もも2時半って言ったじゃん」
「だって本当に来るとは思ってなかったんだもん」


そして何やかんやと話しているうちにあっという間に約束の時間の10分前になっていた。
渋々進路指導室に向かう。
194 :CROSS OVER :2010/07/18(日) 21:15
桃子に急かされ、心の準備も出来てないまま指導室に入っていった。
「失礼します」
2人連なって入ると早速中澤先生に見つかった。

「あれ嗣永やないか?」
「お久しぶりです中澤先生」

何で2人は顔見知りなんだろう・・・あっそうかももは卒業生だった。

「夏焼、何で嗣永を連れてきとるんや?親御さんはどうした」

どうやって説明しようかと口をぱくぱくさせているとももが変わりに答えてくれた。
195 :CROSS OVER :2010/07/18(日) 21:15
「みやのご両親今大阪の方に住んでましてその間うちで預かってるんですよ。だから一応私が保護者代わりみたいなもんで・・・」
「そうか・・・って夏焼!先生その話聞いてないで」
「すっすいません忘れてました」急いで謝る。
「まあええ。嗣永が一緒なら大丈夫やろ」
「先生買い被りすぎですよ」

思いのほか空気が軽く雅も安堵していたが、それは最初だけだった。

「で進路の方は決めたんか」
「一応専門学校にいこうかと」
「で?」
「は?」

先生の言っている意味が分からず聞き返す。
隣では桃子も驚いた顔をしていた。
196 :CROSS OVER :2010/07/18(日) 21:16
「せやから専門にしても色々あるやろ?コンピューター系、医療系、ファッション系やら」
「それはまだ・・・」
「あほかそういうのは進路決めたとは言わんわ!せめてどういう系がええんかもう一回考えて来い。嗣永、お前も保護者ならしっかり教育せい!」
「はい、すいません」

桃子もさすがに先生の前では縮こまっていた。

197 :CROSS OVER :2010/07/18(日) 21:17
教室から出ると二人揃って大きく息を吐き出した。
そして気分転換にと屋上に行った。

「中澤先生、相変わらずだなぁ。久しぶりに叱られちゃった」
「もももよく叱られてたの?」
「そりゃしょっちゅうね。でもあれほど生徒思いの先生も中々いないもんだよ?」
「へー、意外」
「まあ、ももも始めはこの先生うるさいなぁって思ってたし、・・・って今はももの話はいいの」

折角和やかだった空気がまた緊迫したものに変わった。
桃子は雅の方を向き大きく溜息をついた。
198 :CROSS OVER :2010/07/18(日) 21:17
「みやが抜けてるのは分かってたけど、ここまでとは」
「何それひどくない?」
「卒業まで半年もないんだよ?」
「そんなん分かってるよ」
「ううん、分かってないよ」

――まあももも人に言えるほど大した人でもないけどやっぱ将来って大事だよ?
1年先輩からアドバイスさせてもらうと、とにかく大学、専門学校、就職、いずれにしてもまずはみやのやりたい事を見つけなよ。
まずはそこからだね。まあ見つからないから取り敢えず大学でも行っとくってのも手だけど。
ちょうどいい機会だから日頃の自分を見つめ直すのもいいかもね。
でもだからといって焦りは禁物だから。
199 :CROSS OVER :2010/07/18(日) 21:17
「じゃあももは大学に戻るから」
「うん、来てくれてありがとう」
「今度はちゃんとご両親に言うんだよ?」
「分かってる」
桃子は講義を休んで来てたらしく早々に帰って行った。

自分を見つめ直すか・・・。
雅は1人屋上で空を眺めながら溜息を落とす。

200 :ちゃぽ :2010/07/18(日) 21:19
本日は終了です

201 :名無飼育さん :2010/07/23(金) 12:39
もも良い子すぎる
202 :名無飼育さん :2010/08/01(日) 19:11
ももがすごくお姉さんに見えちゃいました。
この話がかなりお気に入りです。
203 :名無飼育さん :2010/08/22(日) 20:02
いつも覗かせてもらってます。
続きを待ってます。最近は、ももみやよりみやあいりが増えてるので少し淋しいです。
204 :ちゃぽ :2010/08/25(水) 23:00
だいぶ前回の更新から間が開いてしまって申し訳ないです。
今回はみやびちゃんの誕生日ということでCROSS OVERの方はお休みして短いお話を1つ。
と言いつつもまだ最後まで書き終わってないのできりの良い所までw
残りは近日中に上げます。
急いで書いたので誤字脱字は目をつぶっていただければw
205 :ちゃぽ :2010/08/25(水) 23:02


『Happy Birthday』

206 :Happy Birthday :2010/08/25(水) 23:03
――みや、誕生日おめでとう――



ありがたい事に今年もハワイに行ける事になった。
ファンの人はもちろん、あたし達ベリーズ、みんなすごく楽しみにしてた。
最近はずっとゲキハロで暗記暗記の毎日にちょっと頭が爆発寸前。
あたしとももはBuono!のライブで随分みんなに遅れをとっていて毎日台本と睨めっこ状態。
そんな毎日から開放されると思うとちょっと・・・いや、かなり嬉しい。
まあ、覚える作業さえ乗り越えればあとはどうにかなるんだけどね。


そんなこんなであっという間にハワイに旅立つ日になった。
23日の昼に日本を発っって22日の夕方ハワイに到着した。

去年の春にもハワイを訪れたけどやっぱり時間の計算が分からない。
なんで日にちが前に戻るんだろう。
何回マネージャーさんに聞いても分かんない。
でも何か得した感じがするし・・・まあいっか、そんなの気にしてもしょうがない。

到着した日は時差ボケの人もいるし、早々にホテルにチェックインしてその後、各自自由に過ごした。
高校生メンバーが増えてから1人部屋を用意して貰う事が多くなって、今回も各自1人ずつ部屋を割り当てられていた。
あたし自身も前日は楽しみで中々寝付けず時差ボケの関係もあって、日頃ならちぃ達と騒ぐところを比較的早く床についた。
207 :Happy Birthday :2010/08/25(水) 23:03
翌日は丸々1日オフで自由行動だった。
部屋でゆっくりする人もいれば街に出て買い物をしたりと三者三様だった。

次の日は朝早くから撮影だった。
アロハロの第2弾で、今回は水着での撮影がある。
あまり気は進まないけどこれもお仕事だからしょうがない。
24日は写真集用とDVD用の撮影で25日は町に繰り出しての撮影だった。
今回もくじでチーム分けをするわけだけど、雅がくじを引く前に着々と決まっていって、まだくじを引いていないのは雅、桃子、茉麻の3人だ。
残りのくじはAが1枚とCが2枚。
まさかとねぇと事の成り行きを見守っていると案の定茉麻がAを引き雅、桃子共にくじを引くことなくペアが決まってしまった。

「なんでももとな訳?」
「も〜みやったら照れなくてもいいんだから。ももと一緒で嬉しいでしょ?」
「んな訳ないし!」

茶目っ気たっぷりな顔で言ってくるもいつものように軽くあしらう。
相手にしたら負けだ。
調子に乗ってあれこれある事ない事言うに決まってる。
208 :Happy Birthday :2010/08/25(水) 23:04
そんなこんなで雅たちが騒いでいるのを尻目に他の5人は早々にチーム毎に出発していた。
AチームBチームは見事にべりつぅ組と王国組に分かれていた。

(いいなぁ、あたしも王国組入りたかったなぁ。よりによってももとだし・・・)

「何かみや明らかにがっかりしてる」
「そっそんなことないし!!」

一瞬ももに心を読まれたかとドキッとした。

「だって羨ましそうな顔してたもん」
「そんな事ないって、さあ時間も限られてるんだからサクサク行くよ」
「そうやって誤魔化すんだから」
「いいから行くよ」

まだブツブツ言っているももを引きずるように半ば強引に連れまわした。
最初ももの機嫌を損ねてしまったけど時間が経つにつれ自然と笑顔が戻ってきた。
店員さんに絵を見せたりジェスチャーを交えながら自分達の欲しいものを購入したり、家族へのお土産を選んだりとそれなりに楽しい時間が過ごせた。

最後のお店でアクセサリーとか見てたら丁度あたし好みのものがあったんだけど思いの他ここに来るまでに時間を使い過ぎてしまって、どうしようかなと悩んでるうちに時間が来てしまった。
スタッフさんがしきりに時計を指差すもんだから渋々集合場所に戻った。
209 :Happy Birthday :2010/08/25(水) 23:04
あたし達が戻ると他のみんなはようやく来たと若干ブーイングを浴びた。
ちぃなんて「もー2人が遅いからお腹すいた。早くご飯食べに行こ」と先陣切って進んでいた。
そんな中肩身が狭いあたし達2人はみんなの最後尾をゆっくり歩いた。

「最初はどうかなって思ったけど、ももと一緒でよかったよ」
「ほんとに?」
「うん。だって去年なんかちぃと一緒で悲惨だったんだから」
「そう言えば2人してマネーガクーンなんて恥ずかしい事やってたね」
「そうそう、後からDVD借りて見たら顔から火を噴きそうだったもん」
「確かに。あれはないよね」
「そんなん言ってるももだって最年少の梨沙子に頼り切ってたじゃん」
「去年は梨沙子に花を持たせてあげただけだもん」
「はいはい、そう言う事にしといてあげるよ」

ワイワイとそんな話をしているとお店に到着したらしい。
前の方からあたしを呼ぶ声がして、ももとはそこで別れてちぃ達の元へ駆け寄った。

お腹いっぱい食べると後はみんな部屋に戻って各々好きに過ごしていいとのことだった。
撮影も早めに終わったって事もあってこれからホテルに戻ってあたしの誕生日をお祝いしてくれるらしい。
210 :Happy Birthday :2010/08/25(水) 23:05
誰の部屋に集まるか若干揉めたけど発案者のちいの部屋って事で話は落ち着いた。
唯でさえ女の子2人揃えば騒がしいのに、7人集まるとかなり賑やかでこれでもかって程にどんちゃん騒ぎになった。

7人全員揃ってトランプとか王様ゲームとかで盛り上がっていた。
でも途中ももとまあは昼間歩き過ぎて疲れたからと9時頃には部屋に戻ってしまった。

それからだいたい2時間後、明日もリハーサルとか色々あるし朝が早いからとようやくあたし達も解散して各自部屋で体を休めることにした。

あたしもお風呂に入ってさあ寝ようかとベットに横になるも、何故か目が冴えて眠れない。
異国の地で興奮しているのか、いつもなら比較的すぐ夢の中に旅立てるのだけど今日はそうもいかないみたいだ。
30分くらい横になって眠気が訪れるのを待っていたけど一向に眠れそうにない。

「しかたないちょっと散歩でもしてこよっかな」

マネージャーさんには部屋から出ないようにと釘を刺されていたけど気分転換にと下のロビーに行ってみた。
夜も遅いから下に行く時も誰にも出会わなかったし、すっかり安心しきっていた。

明かりが落とされていてよく見えないけど誰かいるみたい。
やばっと思い引き返そうとするも何だか後姿に見覚えがあった。
あまり高くない身長、あのプリッとしたおしり、そしてコンパクトな足。
おそるおそる声を掛けてみた。
211 :Happy Birthday :2010/08/25(水) 23:05
「もも?」
「・・・誰?」
「あたし、みや」
「みや?」

思った通りそこにいたのはももだった。
疲れたからと言って早々に部屋に引き上げて寝ているはずのももがどうしてここにいるのか不思議に思う。

「そう。そんな所で何してるの?」
「みやこそどうしたの、こんな時間に」

質問に質問で返されたけど何の疑問もなく素直に答えた。

「あたしはちょっと散歩」
「ふーん」
「ももの方こそどうしたの?てっきりもう寝てるもんだと思ってた」
「うん、まあそうなんだけど・・・目が覚めちゃってね」
「そっか」
「「・・・・・・」」

会話が続かず空気が重い。
沈黙が続く。
212 :Happy Birthday :2010/08/25(水) 23:05
ももと2人になると時々こんな感じになってしまう。
ステージの上だとか人前だとウザイくらいぶりっこしてるのに、ふと回りに誰もいなくて2人っきりになった時とか、1人本を読んでる時とかなんか物静かで違う意味で扱いに困る。
そして時々射抜くような目でこちらを見ていることがある。
その度にあたしは心臓が跳ね上がるのをいつも気付かない振りしてる。
で、結局どうしたらいいか分かんなくて無理矢理理由を付けてその場から逃げるように去ってみたり、携帯をいじったりしてももが視界に入らないようにしてきた。

今も昼間の時と空気が違ってて息が詰まりそうだ。
そんな沈黙を破るが如くももの方から話しかけてきた。

「丁度いいや。今からももの部屋に来ない?渡したいものがあるんだ」
「今から?」
「うん。どうせみやの事だから眠れなくてブラブラしてたんでしょ?5分でいいから、ね?」
「まあいいけど…」

ももに連れられ今来た道を逆走し、ももの部屋に着いた。
渡したい物があると言ってきたのに部屋に入ってからももは一向に行動に移す気配がない。

「もも、何?用がないんだったらそろそろ部屋戻りたいんだけど・・・」
「えっとね・・・はい」

ももは何やら包みみたいな物を手に持っていた。
受け取っていいものか躊躇していると、ももは待ちきれないのかあたしにそれを押し付けてきた。
213 :Happy Birthday :2010/08/25(水) 23:06
「何これ?」
「誕生日プレゼント」
「プレゼント?」
「そう」
「でもプレゼントは荷物になるから日本に戻ってからって話じゃなかったの?」
「そうだけど、・・・いいから開けてみてよ」

ももの行動を不思議に思いながらも素直に包みを開けてみた。
そこには昼間時間がなくて買うのを諦めたネックレスがあった。

「これ・・・」
「何かみやに似合いそうだなって」
「いつ買ったの?あの店時間なくて買い物する暇なかったじゃん」
「そんな事はいいじゃん。それより気に入ってもらえた?」
「・・・うん。ありがともも」

あたしの言葉にももはほっとした様子だった。

「実はね、今月はハローとかBuono!のライブでプレゼント買いに行く暇がなくてこのハワイで探そうと思ってたんだ」
「めずらしー、ももいっつも1ヶ月後とかざらなのに」
「そうなんだけど・・・やっぱ当日渡したいじゃん」
「確かちぃには1ヶ月遅れであげたって言ってなかったけ?」
「・・・それは、ちょっと忘れてただけじゃん」
「ふーん、まあいいやこれありがとね」
「うん。そうだ、あとちょっとで今日は終わっちゃうけど・・・」
214 :Happy Birthday :2010/08/25(水) 23:06
――みや、誕生日おめでとう――

ももはまっすぐにあたしの方を向き、視線が絡み合った。
そのまっすぐな視線に耐えられずあたしは言葉少なくその場を立ち去ろうとした。

「うん、その・・・ありがとね。じゃあおやすみ」

ところが一瞬もものほうが早く、あたしの腕を掴んだ。

「待って、逃げないで。ももの話聞いて」
「・・・」
「今日はお願いだから逃げないで」

ももの真剣な声に体を止めた。
すると強引に腕を引っ張られももの方に向き直った。
そして射抜くような視線を向けられた。

――捕まった。
真剣なももの瞳に目を逸らすことが出来なくなった。
215 :Happy Birthday :2010/08/25(水) 23:07
「みやっていつもももと2人っきりになると逃げるようにいなくなる」
「そんな事・・・」
「ない?本当に?さっきだって逃げようとしてたじゃん」
「・・・」
「みんながいる時はそうでもないのに2人になったとたん目は合わしてくれない、態度も素っ気ないし」
「・・・」
「もも、嫌われてるのかな?」

さっきまでの強引なももはどこへやら、段々語気が弱くなっていた。
そんなももの様子にあたしは慌てて否定の言葉を並べた。

「そんな事ない!!」
「でもいつもももの事ウザイとかぶりっことか言って相手にしてくれないじゃん」
「それはそうかもしれないけど、嫌ってなんかない」
「・・・だったらなんで?」

ももは黙ってあたしの言葉を待っている。
口下手なあたしは言葉が足らず、気付かないうちにももの事を傷つけていたみたい。
216 :Happy Birthday :2010/08/25(水) 23:07
「それは・・・。ももと2人でいると自分が自分でいられなくなるみたいで・・・」
「・・・」
「なんか心臓が早くて落ち着かないっていうか」
「・・・」
「そんな自分をどうしたらいいか分かんなくて・・・いつもももから逃げてた」
「・・・」
「だからももの事嫌いな訳じゃないから」

言葉を探しながらも素直な気持ちをももに伝えた。
ももは顔を下に向けていて表情が見えない。
黙ったままのももに不安になる。
沈黙が続く中ふとももが顔を上げた。

「ねえ、それってもも、自惚れてもいいの?」
「なっ・・・」
「だってみやの話聞いてるとももの事が大好きだって言ってるように聞こえる」

ももの言葉に顔に熱が集まるのを感じる。
あたしはももの質問に答えられず口をパクパクしていると、なおもももは話を続けた。
217 :Happy Birthday :2010/08/25(水) 23:07
「みやはももの事好きなんじゃないの?」
「・・・」
「ねえ、みや?」
「・・・そう言うももはどうなの?」
「もも?」
「うん」
「ももはみやのこと好きだよ?」

ももはあまりにもあっさりと言ってくるもんだから普通に聞き流しそうになった。

「へ?」
「あれ、聞こえなかった?じゃあもう一回言うね」

――ももはみやのことが好きだよ――

ただでさえ顔が熱いのにさらに真っ赤になったような気がする。
何かこの空気甘すぎる。
あたしは耐えられず、ももをそのままにまた逃げるようにその場を立ち去った。
218 :ちゃぽ :2010/08/25(水) 23:10
では今日のところはここまで。
この続きは出来れば週末くらいには上げれたらいいなぁ。


みやびちゃん、お誕生日おめでとう!!
18歳が素敵な年でありますように。
219 :名無し飼育さん :2010/08/26(木) 23:15
いいところでっ
後編楽しみにしてます。
一日遅れだけど雅ちゃんお誕生日おめでとうございます。
220 :ちゃぽ :2010/08/29(日) 15:53
ようやく書きあがったので続きをどうぞw
221 :Happy Birthday :2010/08/29(日) 15:55
気付いたら結局さっきまでいたロビーに戻っていた。
顔の熱が収まるのをじっと待っていたけど、思い出すのはさっきのももの言葉だ。
収まるどころか更に熱が上がっているようにさえ思える。

――ももはみやのことが好きだよ――

「そんな事言われたって困るよ・・・」

心の整理がつかないって。
今の今まで無自覚だったんだから。
よりによって本人に気付かされるなんて・・・。
ももの事今までそんな目で見たことなかったし、どうしろって言うんだよ。
1人ブツブツ呟いていると、ふと今の自分の状況に気が付いた。

「やば、明日も撮影あるから早く寝ないと。隈なんか作ったらマネージャーさんに怒られる」

ももの事も気になるけど今はそんなこと言ってられない。
早く部屋に戻って寝よ。
222 :Happy Birthday :2010/08/29(日) 15:55
また来た道を戻り、さあ部屋に入ろうかとポケットに手を入れるもその手は空を切った。
そんなはずはないと、急いで他の場所も探してみるも見つからない。
落ち着いて部屋を出る前の自分の行動を思い出してみよう。
確かカードキーはテーブルの上においてて、部屋を出る時に・・・。

自己嫌悪になる。
どうしよう。今からマネージャーさんの部屋に行っても起きてるかどうか分かんないし、もし起きてても絶対怒られる。
言い付け破って部屋の外に出てたのもバレて、きっと外出禁止にされる。
それだけは絶対阻止しなければ。
となると・・・。

223 :Happy Birthday :2010/08/29(日) 15:55
で、結局あたしはまたここに来ている。

コンコン。

真夜中とあって控えめにノックする。
・・・小さすぎたか。
もう一度、今度は少し大きめにノックしてみた

ドンドン。

すると中から声がした。

『・・・どちら様ですか?』

良かった、まだ起きていたみたいだ。

「あたし、みや」
『みや?』

ももは驚きながらも扉を開けてくれた。
224 :Happy Birthday :2010/08/29(日) 15:56
「どうしたの?部屋に戻ったんじゃなかったの?」
「そうなんだけど・・・」

あたしが言いあぐねていると、ももは立ち話もなんだからと部屋に引き入れてくれた。

「どうしたの?さっきは突然出て行っちゃったと思ったら、また戻ってくるし」
「・・・」
「あっ、もしかしてももが恋しくなったのかな?もー、みやったらそれならそうと言ってくれたら良かったのに」
「何言ってんの。そんな訳ないっつーの!」
「またまた。やっぱりみやはここでもツンデレ本領発揮だね」

ニヤニヤしてあたしをからかっていたももは急にまじめな表情になった。
あたしの心臓はすぐさま反応した。
そんなあたしを他所にももはポツリと話し出した。
225 :Happy Birthday :2010/08/29(日) 15:56
「ねえ、やっぱりももの勘違いだったのかな?てっきりみやはもものことが好きだと思ったんだけど・・・」
「・・・」
「そっか・・・勘違いだったか。・じゃあさっきももが言ったことは忘れて?」
「・・・さっき?」
「ももが・・・みやのこと好きって言ったこと」
「な・・・んで」
「だって迷惑でしょ?何とも思ってない人から好きって言われても」

恥ずかしくてももの顔が見れずにいたあたしだったけど、ももの言葉にすぐさま顔を上げた。
ももは何か苦しそうな顔をしていて、そんな顔をさせたのが自分かと思うといても経ってもいられなかった。

「迷惑なんかじゃない!そりゃあさっきは恥ずかしくて部屋を出ちゃったけど」
「じゃあもも、自惚れてもいいの?」
「・・・」
「みや?」
「・・・うん」
226 :Happy Birthday :2010/08/29(日) 15:56
ももはあたしの言葉を聞くなりあたしを抱きしめた。
あたしは恥ずかしくてジタバタしてたけど、それでもももは離してくれなくて。
そっとももの背中に腕を回すと、もものあたしを抱きしめる腕が強くなった気がした。

暫く無言で2人抱き合っていたけど、その沈黙を破ったのはももだった。

「ねえ、もものこと好き?」
「・・・・・・き」
「何?聞こえなかった」
「もう言った」
「そんなこと言わないで、ね?」
「・・・ムリ」

ももは抱きしめていた腕を緩め、あたしと目を合わした。

「やっぱり好きな人には好きって言ってもらいたいじゃん。・・・ね、お願い」

お得意の上目遣いをしてお願いをしてくる。
わざとらしいその上目遣いにすら可愛いと思ってしまう自分は相当もものことが好きらしい。
227 :Happy Birthday :2010/08/29(日) 15:57
「・・・すき」
「もう一回」
「好き」
「もう一回」
「ももが好き」
「もももみやのこと好きだよ」

そのままももの顔が近づいてきた。
そして2人の影が重なった。

目を開けるとそこには嬉しそうなももの姿があった。
あたしは照れくさくて目を逸らそうとしたけど、一瞬早くももはあたしの頬を優しく包み込んだ。
もうももの目を逸らせない。
引き込まれるようにあたしはももの顔に近づいていった。

2人の距離が離れてもももは頬を包む手を放してくれなくて、視線を外すことが出来なかった。
照れくさそうにおでこを合わせて、何故か一緒になって笑った。
228 :Happy Birthday :2010/08/29(日) 15:57
「みや。このままももの部屋に泊まって行きなよ、ね?」
「・・・うん」

甘い雰囲気のまま流されるがごとくあたしは頷いた。
もものベットに並んで入るとあたし自身忘れていたことを聞かれた。

「で、結局何で部屋に来たの?みやのことだからもも当分避けられると思ってたんだけど」
「・・・部屋に入れなくて」
「なんで?」
「カードキー持って出るの忘れちゃって」
「・・・」

ももは一瞬の沈黙の後、肩を震わせて笑いを堪えているみたいだった。
あたしはと言うとそんなももを恨めしそうに見つめていた。
そんな中も2人の手は繋がれたままで、そして寄り添うように眠りについた。
229 :Happy Birthday :2010/08/29(日) 15:57

230 :Happy Birthday :2010/08/29(日) 15:58
翌朝。。。

幸せな気持ちで眠りについてたあたしは布団を剥がされて、急に夢の世界から現実に引き戻された。
起きて一番最初に目に入ったものといえば隣にいるももではなくカメラだった。

起き抜けで頭の働かないあたしは状況が全然分からない。
周りをみると寝起きドッキリと書かれたボードを持っているまあに、明らかに起き立てのキャプテン、ちい、熊井ちゃん、梨沙子・・・つまりここに寝ていたあたしともも以外の

5人が勢ぞろいしていた。
隣にいるはずのももはと言うと未だ熟睡していた。

みんなフリーズしていて、いち早く復活したのは流石というべきか我がベリーズ、キャプテンだった。
続いて復活したまあとちいは急いで梨沙子と熊井ちゃんの目を手で覆ってことの成り行きを見えない用にしていた。
231 :Happy Birthday :2010/08/29(日) 15:58
「・・・何、2人ってそういう関係だったの?」
「ち、違うよ。昨日はたまたま一緒に寝ることになって」
「・・・」
「ホントだってば。あたしがカードキー忘れて部屋を出ちゃったからしかたなく・・・」

キョプテンの言葉にすぐさま否定するも信じてないようだ。
そのキャプテンの視線はと言うとあたしの目から手元に移動していた。
何かとその視線を追うとそこには・・・。

(あっ、昨日手をつないで寝て・・・そのまま・・・)

急いで繋がれている手を解こうと手を引くも、思いのほか硬く繋がれていてそのままももの手を引っ張る形になってしまった。
そして眠っていたもももようやく目を覚ました。
232 :Happy Birthday :2010/08/29(日) 15:59
「ん、・・・みゃ?」

ももは周りが見えていないらしくあたしの方に擦り寄ってきて、そのままあたしを抱き締めまた眠りについた。
当然あたしの言い分は信じてもらえず、みんな逃げるように部屋から出て行った。

「ちょ、みんなどこ行くの!キャプテン!ちい!まあ!熊井ちゃん!梨沙子!ねえ、みんなー」

無残にもあたしの声が届くことはなかった。
ことの原因となったももはと言うと気持ち良さそうな顔で寝入っていた。
ももを起こしてみんなの誤解を解いてもらおうと揺り動かそうとした。
233 :Happy Birthday :2010/08/29(日) 15:59
「みや・・・ダイスキ。・・・むにゃむにゃ・・・」

もものその寝言に起こそうと動かした手が止まった。

「・・・まあいっか」

自然とあたしはももの頬をつんつんとしてて、その度にももはフフフと笑っていた。
ももに誘われるがごとくあたしはまた眠りについた。
そしてキャプテンの怒声が聞こえるまであたし達は仲良く眠っていた。



それからと言うと移動のバスや新幹線はもちろんのこと、ホテルや楽屋の席は決まってももと一緒になった。
当然このVTRがお蔵入りしたことは言うまでもない。


234 :Happy Birthday :2010/08/29(日) 16:00

おしまい


235 :ちゃぽ :2010/08/29(日) 16:12
みやびちゃんの誕生日を思い出したのが3日前の23日だったのでちょっと今回は焦ってしまったorz
次回また生誕を書くことがあったら計画的に書こう。
脳内でこっそり後日談を考えてしまったのはナイショでw


さて、次回の更新はCROSS OVERの方に戻ります。
こちらの方も中々亀さんなのでサクサク更新出来るように頑張ります


236 :名無し飼育さん :2010/09/08(水) 01:40
やっぱりももみやイイ!
今後も期待です。
237 :ちゃぽ :2010/09/19(日) 20:53
またごぶさたしてしまってorz
最近はちょっと私生活のほうが忙しくて中々更新する暇がなくて・・・
とりあえず続きをどうぞ
238 :CROSS OVER :2010/09/19(日) 20:54
>>199

三者面談が終わり、あれよあれよと言う間に中間テストまで残りわずかとなった。
今回は最低でも前回の順位をキープしなければならない。
勉強を頑張ると父親に約束をした。
その約束を守らなければ大阪に連れ戻されるかもしれない。

雅にしては珍しく1週間前からテスト勉強に励んだ。
放課後は図書館に寄って千奈美と一緒にやいやい言いながらも頑張っていたのだが・・・。
実際家に帰ってノートを見返してみると落書きばかり、勉強した痕跡すら残ってない。
(おかしいなぁ、確かに勉強をやったはずなのに・・・。まあ明日頑張ればいっか)
しかし、翌日も前日と何ら変わりもなく勉強した気になっていただけだった。
239 :CROSS OVER :2010/09/19(日) 20:54
そしてテスト前日。
「どーしよう!!明日テストなのにこの問題とか全然分かんない。なんで?あれだけ勉強したのに」

雅の騒ぐ声に何事かと桃子が雅のもとを訪れた。
「大声出してどうしたの?」
「ももぉ〜」
桃子の姿を確認するやいなや泣きついた。
「何?みや?」
不審に思いながらも雅を受け止める桃子だった。

「明日テストなのにもうだめ・・・」
「何で?この1週間、放課後図書室に寄って勉強したんじゃなかったの?」
「それはそうなんだけど・・・・・・これ」

雅は恥ずかしさを我慢して放課後の勉強の証であるノートを見せた。

「・・・何これ?」

そこには先生の悪口や落書き、終いには桃子や佐紀の似顔絵などといった勉強に関係ないものばかり。
落書きの隙間には申し訳ないほど小さく数式が書いてあるだけだった。
240 :CROSS OVER :2010/09/19(日) 20:54
「1週間・・・ちぃとこれだけ・・・」
「はぁ?こんなん勉強じゃないじゃん。全然してないのと一緒だよ」
「・・・・・・」
「こりゃあみやが大阪に行く日は近いね」
「そんな・・・」
「だってこのままじゃ前回の順位も怪しいんじゃないの?」
「あの・・・もも?」
「何?」

思いっきり頭を下げ桃子にお願いをする。

「お願い。勉強教えて下さい。うち大阪に行きたくない}

何も反応がない桃子に雅は痺れを切らしてそーっと桃子の方を覗くとそこには呆れた顔をして雅を見ている姿があった。

「そんな事じゃないかと思ってたよ」
「ごめん」
「だから謝るんだったらなんで最初から言わないの?もう明日なんて時間ないじゃん。分かってたらもっと計画的に出来たのに」
「どういう事?」
「夏休みの宿題の時もあんな感じだったからてっきり今回のテストも泣きついてくると思ってたのに」
「だから尚更ももの力を借りずに頑張ろうと思って、ちぃと2人でやってたんだけど・・・」
241 :CROSS OVER :2010/09/19(日) 20:55
毎度の事ながら桃子が大きく溜息を吐いてから雅に尋ねてきた。

「で、明日はどの教科があるの?」
「数学、生物、倫理」
「先生って○○先生、××先生、□□先生のまま?」

桃子の言葉に不思議に思いながらも素直に答える。

「○○先生は知らないけどあとはあってるよ。でも何で?」
「結構毎年先生によっては似たような問題出すからね。ももも先輩に聞いた事あるし」
「そうなんだ」
「時間も限られてるから出来るだけ効率的にしたいから去年のを参考にして勉強する事にして、確か去年のは実家においてあるから取ってくる。みやは取り敢えずその問題解いておく事!!」
「わ、わかった」

桃子は矢継ぎ早に質問するやいなやそのままアパートを飛び出して行った。
呆然とその様子を見ていた雅だったがこのままではいけないと、急いで問題に取り掛かった。

ところが、雅1人では案の定ペンが止まった。
教科書を取り出し色々見てはいるがどの公式を使ったらいいか分からない。
当分教科書とノートを睨めっこしていた。
242 :CROSS OVER :2010/09/19(日) 20:55
桃子が帰ってきたのはようやく1問解けた所だった。
時計を見ると既に1時間経過していた。

「取り敢えず生物と倫理は毎年似たような問題ばっかり出てるみたいだから、これをそのまま暗記したらいいから」

そう言って桃子は去年のテストを見せてくれた。
生物90点。
倫理95点。
見たことのない点数がずらりと並んでいた。

「すごっ」
「点数は見なくていいから」

桃子は若干恥ずかしそうに点数の所を手で隠した。

「で、問題は数学・・・だよね」
「うん。数学と英語が1番やばい」
「考えててもしょうがない、やるっきゃないね」
「・・・うん」
243 :CROSS OVER :2010/09/19(日) 20:55
数学はいくら過去問があっても、どの問題でどの公式を使えばよいかは結局は自分で考えなければならない。
使いこなせなければ問題は解ける訳がない。
だからこれは雅が分からない所を1から洗い直して行く必要があった。

ところがあまりの雅の理解の無さに半分点が取れれば御の字といった所だ。
応用までは手が回らないから基本の問題を重点的にやることになった。

最初は苦戦してみせた雅だったが相変わらず桃子の教え方の上手いこと。
雅が答えを導き出せるよう上手にヒントを出したり、公式の簡単な覚え方などを教えてくれた。

桃子の教えもあって赤点は免れそうだ。
数学はどうにか目処が立って来たので今度は生物と倫理に取り掛かることにした。

「この2教科はとにかく暗記。覚えること」
「うち暗記って苦手なんだけど・・・」
「つべこべ言ってないでほら、覚える!」
「う、うん」
「去年とまるっきり同じとはいかないかもしれないけど、大体8割は同じような問題だから新たに勉強し直すよりもずっと楽だよ」


244 :CROSS OVER :2010/09/19(日) 20:56
気が付けばすでに日付けが変わっていた。
桃子に言われた通りとにかく覚えることに全力に尽くした。
雅の頭はパンパンに膨れ上がって口からは白いものが出ていた。

「これ以上やっても頭に入んないだろうからもう寝よう?」
「でも、まだ何かやってないと心配で・・・」
「だーめ、寝るの。一夜漬けってホントはあんまりよくないんだけど少しは寝ないと」
「なんで?」
「寝てる間に今日覚えたこと頭の中で整理してくれるんだよ。みや、今頭ん中ごちゃごちゃしてない?」
「うん。初めの公式とかすでに怪しいもん」
「でしょ?このまま起きててテストに臨んでも半分も覚えてないかもしれないよ。だから寝ることも大事なんだよ」
「分かった、寝る」
「その代わり5時に起きて最終チェックね」
「え〜。うち起きられないよ」
245 :CROSS OVER :2010/09/19(日) 20:56
桃子に無言で見つめられる。
無言の圧力に耐えられず「お、起きます」と一言発した。

「でもホントに起きれなかったら・・・」
「大丈夫。その時はちゃーんと起こしてあ・げ・る」

桃子の笑みに背筋が凍った。
急いで千奈美にもらった強力目覚まし君のセットをした。


246 :CROSS OVER :2010/09/19(日) 20:57
朝、強力目覚まし君のおかげで難なく起きれることが出来た。
桃子に言われた通り、何か昨日より頭の中がすっきりしているような気がする。
リビングに行くとそこにはすでに桃子がいた。

「おはよう」
「おはよー」
「昨日はよく眠れた?」
「うん。1分もしないうちに意識がなくなったよ」
「じゃあ始めよっか」
「え、朝ごはんは?」
「みやがちゃんと出来るまでお預け」
「そんなー」
「はい、これ」

桃子からりんごジュースを手渡され言われるがまま一気に流し込んだ。
247 :CROSS OVER :2010/09/19(日) 20:57
「ぷはっ」
「いい飲みっぷりだねー」
「まあね、でも何でジュース?」
「朝はまず糖分をとって脳に栄養をあげないと頭がよく働かないんだよ?」
「へー」
「あと、飴なんかも即効性があっていいよ」

桃子の知識の多さに感心するばかりだ。
感心するばかりではなく雅も勉強をはじめなければ。

「じゃあこの数学のプリントから解いてみて。制限時間は30分ね。はい、よーいどん」
「えっ、えっ?」

いきなりの展開に慌てる雅だったが1問ずつ着々と進めていった。
(あれ、解る。これも・・・これも)

そのプリントには基本問題ばかりずらっと並んでいたが昨日までの雅だったら全然出来ないものばかりだった。
制限時間が来る前に問題を解き終わってしまった。
時間までは見直しをしていた。
248 :CROSS OVER :2010/09/19(日) 20:57
PPP・・・・・・。
タイマーが30分経ったのを示した。
「はい、しゅーりょー」
「終わったー」
「じゃあ5分休憩の後、次は生物ね」
「えー、休憩短いよ」
「しょうがないじゃん家出るまで時間ないんだから。文句言わないの」
「へーい」

同じように生物、倫理もプリントを解いていった。
時々ケアレスミスをしていたが全然分からなかったと言うことはほとんどなかった。
採点が終わり桃子は解説をしてくれた。
相変わらず桃子の教え方は的を得ていてすごく分かり易かった。
249 :CROSS OVER :2010/09/19(日) 20:58
「まあこのくらい出来たら大丈夫じゃないかな」
「もものお陰だよ」
「ううん。みやが頑張ったからだよ」

喜びに打ち震えていると気付いたら7時半だった。

「いけない、もうこんな時間。急いでごはん作るからね」

雅は慌ててエプロンを持ってキッチンへ向かうとそこには既に朝食の用意がしてあった。
雅がプリントを解いている間に採点をしつつも用意をしてくれてたみたいだ。
清々しい気持ちで朝食を食べ、本当に今日がテストの日かってほど落ち着いていた。
250 :CROSS OVER :2010/09/19(日) 20:58
「じゃあ時間だしうち行くね」
「みや、待って」

パタパタとスリッパの音をたてながら桃子は玄関まで追いかけてきた。

「何?」
「忘れ物」

桃子はそう言って雅の手を両手でギュっと握った。
雅は咄嗟に手を引こうとしたが思いの他強く握ってあったため外れなかった。

「な、何?」
「みやが落ち着いてテストに臨めるようにおまじない」

最初は挙動不審だったが次第に桃子のぬくもりが雅に移ったのか落ち着いてきた。

「大丈夫だよ?みやなら出来る」
「うん」
「頑張ってね」
「うん」

桃子の手が離れ名残惜しいような気もしたが、時間も迫っているため急いで学校に向かった。
251 :ちゃぽ :2010/09/19(日) 21:01
ちょっと半端ですが今日はこの辺で・・・
明日また来ます
252 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:10
「よっす」
「あ、みやよっす」

千奈美と顔を合わせると雅たちの間で流行っている挨拶をした。

「ねえねえ、勉強した?」
「うん、ばっちり」
「うっそだー、その割りに隈とか出来てないし諦めたんでしょ?」
「違うっつーの、ちぃと一緒にしないでよ。徹夜はよくないんだよ」
「何言ってんの?いつもみやってば徹夜明けでテストに来てたくせに」
「そ、それはそうだけど・・・。今回はちゃんと寝て朝5時に起きて勉強したんだから!」

そう言う千奈美の顔には明らかに徹夜しましたと言わんばかりにしっかり隈が出来ていた。
253 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:10
「そうか、分かった。ももに泣きついたんでしょ?いいなぁ。うちもキャプテンちに押しかければよかった」
「何でももって決め付けるの?うち1人でやったかもしれないじゃん」
「じゃあ違うの?」
「・・・違わないけど」
「やっぱりももに泣き付いたんじゃん」
「でも、ホント今回は自信あるんだぁ」
「ふーん。ってうちにはみやと喋ってるよゆーなんてないの!」

千奈美は急いで自分の席に戻りノートを凝視している。
釣られて雅も席に着いた。

一応ももに太鼓判いや小太鼓判もらったから大丈夫とは思うんだけど、やっぱりうちももう1回見直ししよ。

254 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:10
◆◆◆

どうにか1日目のテストが終了した。
途中生物でド忘れして頭が真っ白になった。
桃子が朝「みやなら出来る」と言って握ってくれた手を見て、どうにか落ち着きを取り戻せた。

1日目が終わったからといってまだ安心は出来ない。
またももにお願いしなければ。
おとーさんにちゃんと出来るんだからって胸張って言えるように頑張らないと。
ちぃも佐紀ちゃんち行って教えて貰うって言ってたし、うちも負けてらんない!

255 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:10
「ただいまー・・・って誰もいるわけないか」

1人でつっこみをしながら玄関の扉を開ける。
家に入ると珍しく桃子がいた。

「なんでいるの?」
「なんでって、ひどっ。ももはみやがまた泣きついて来るだろうから午後からは自主休講してきたのに」
「・・・ホントに?」
「自主休講は冗談だけど休講になったのは本当。先生の都合で急遽休みになったんだ。だからみやの勉強見てあげようかなって」
「よかった。うちもももにお願いしようと思ってたんだ」
「でしょ?そんな事だろうと思ってたよ」
256 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:11
ももにお願いする手間が省けた。
この際背に腹はかえられない、うち1人で勉強したってたかが知れてる。
今回は頑張っていつもとは違うんだぞってとこ見せてやる。

昨日は去年の過去問を参考に出来たけど明日のはそうはいかない。
古文、地理、リーディング。
暗記はもちろんのこと、苦手な英語も入っている。
はっきり言って授業を聞いていただけのほとんど0からのスタートな訳だ。
この1週間は無駄にしただけだったし、考えただけで頭が痛い。
取り敢えずももの言う通りにやるだけだ。

雅は急いで制服から部屋着に着替えた。
そして雅と桃子の2人だけの講義が始まったのだった。
257 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:11
思いの他桃子はスパルタだった。
雅が寝そうになると、どこから持ってきたのかハリセンを構えて思いっきりはたいてきた。
どうにか目処が立った頃には雅の頭にはたんこぶが1つ出来ていた。

「折角覚えたのにももがいっぱい頭はたくから、覚えた単語とか忘れそう」
「大丈夫大丈夫。結構覚えてるもんだから」
「ホントに?もー心配だなぁ」
「へーきだよ。さて、もう今日は遅いから寝よ?」
258 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:11
時計を見ると午前3時を回った所だった。
桃子は欠伸を噛み殺していたが、疲れが顔に出ていた。
いくら桃子でもさすがに1日で3教科分を教えるのは骨が折れたみたいだった。
ヤマを張ってそこを重点的にやったが、後はそこが出ることを祈るばかりだ。

雅は比較的夜型人間なので少々は大丈夫なのだが、流石にこうも頭を使ってばかりいると体は睡眠を欲求していた。
おやすみと声を掛けると即座にベットに潜り込んだ。

259 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:12
◆◆◆


今までこんなに勉強したことがないってほどやって、一生分の脳みそをフル活用した感じだ。
そんなこんなで地獄の1週間が終わりを告げた。

「終わったー」
「さあ遊ぶぞー」

千奈美と2人で騒いでいると中澤先生から雷が落ちた。

「こらー!夏焼、徳永騒ぐな!テストが終わったからといってまだ油断できんで?お前らは追試の常習犯てことを忘れるな!」
「せんせー、うちら今回ちょっと自信あるんですー」
「「ねー」」
「毎回そんな事言って結局は追試受けとるやないか」
「今回こそは大丈夫なんです!!」
「何せうちらにはもも(キャプテン)がついてるもんねー」
「そうか、それは楽しみやな」
「「じゃあせんせーさよーなら」」
「おー気をつけてな」

260 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:12
中澤先生に開放されると雅と千奈美は街に繰り出して行った。

「ちぃ、これからどうする?」
「そうだなぁ、カラオケでも行っとく?」
「いいねー、カラオケ。うちテスト勉強ばっかでストレス溜まってんだ」
「うちも〜。思いっきり歌お!」

行き先をカラオケ屋にした2人は足早に目的地を目指した。
目的地に向かいながら談笑を続けていた。

「ねえ、キャプテンやももも呼ばない?」
「そうだね。2人も呼んでパーッとやろっか」
261 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:12
各々が桃子と佐紀にメールを打った。
すると千奈美の携帯が鳴った。
佐紀からだった。
丁度佐紀と桃子は一緒にいるが今から講義が入っていて来れないらしい。
残念に思っていると講義が終わった後でいいなら来るとのことだった。

「それなら待ってるよ。丁度うちらフリーで入ってとことん歌うつもりだったから。じゃあ終わったらまた連絡ちょうだい。また後でね」
「ももたち来るって?」
「うん、講義終わったら来るって。だから先行ってよ」

262 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:13
『ジーン、ジーン、ジンギスカーン♪〜』

昨日までの疲れは何とやら、2時間ぶっ続けで歌い通しだった。
ジンギスカンを歌い終わった時にタイミングよく雅の携帯が鳴った。
ディスプレイを見ると桃子からだった。
慌てて部屋の外へ出る。

「もしもし、もも?」
「あ、やっと繋がった」
「えっ、何?」
「さっきから佐紀ちゃんと徳さんの携帯にもかけたりしてるのに全然繋がらないんだもん。これで繋がらなかったら帰ろっかって言ってたところだよ」
「ごめんごめん。ちぃと2人して熱唱してたから気付かなかった」
「もー、終わったら連絡するって言ったじゃん」
「だからごめんって。で、今どこにいるの?」
「今、○○駅前。みやたちは?」
「カ○オケ館に来てるよ。29号室にいるから。早く来ないと'桃色片思い'歌っちゃうよ?」
「それはももの18番!!すぐ行くからちゃんと取っててよ」
263 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:13
その言葉を最後に桃子に電話を切られた。
すぐ来るらしいと千奈美に告げると嬉しそうに頬を緩ませた。
その様子に?になるがその時は追求しなかったし、あまり深く思わなかった。

ものの5分して予告どおり桃子達は現れた。
あっという間にマイクを握って曲を入れている。

『桃子がいくよ!123』

桃子は早速桃色片思いを熱唱した。しかもフリ付きで。
そして毎度のことながら小指がしっかりと立っていた。
264 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:13
続いて佐紀もDIAMONDSを歌ってそれなりに盛り上がってきた。
雅や千奈美も負けずにとマイクを奪い合って、ヒートアップするばかりだった。
雅もテスト勉強の鬱憤を晴らすべく熱唱していたが、だいぶ発散出来たのか落ち着きを取り戻してきた。

千奈美はまだまだ歌い足りないみたいで次々と曲を入れていた。
今は幸せビーム!好き好きビーム!をテンション高めで歌っている。

そんな中桃子1人眠たそうに船を漕いでいる。
雅が曲を選んでいると左肩に重みを感じた。
何かと横を向くとそこには雅にもたれ掛かって眠る桃子の姿があった。
265 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:13
「ちょっともも何寝てんの?」

肩を揺らして起こそうとすると佐紀に止められた。

「寝かせてあげなよ。ももここん所あんまり寝てなかったみたいだから」
「何で?」
「何でって、・・・ももってば浮かばれないね」
「??」
「みや、プリント持ってる?」
「ももがくれたやつ?持ってるよ、これでしょ」

雅は今日も使ったプリントを鞄から出し佐紀に見せる。
266 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:14
「これ、みやが分かりやすいようにって要点まとめたりしてさ。これ作るのも睡眠時間削ってやってたんだよ?みやの保護者としてちゃんと面倒みないといけないからって」
「・・・」

知らなかった。
プリントもてっきり去年ももがテスト勉強に使ったものだとばかり思ってた。

「レポートの提出の期限も迫ってたし、程ほどにしときなよって言ったんだけど、人に教えるのももも自身いい勉強になるからって笑ってた。そしたらわたしの家にも千奈美が勉強教えてって押しかけて来てね・・・結構大変だったんだけど、わたしはもものプリントのお陰でだいぶ手間が省けたんだけどね」
「・・・」
「だからみやもたまにはももにも素直になってあげて?ももってば意外と頼られるのって嬉しいみたいだし、ね?」
「・・・うん」
267 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:14
佐紀の話にちょっとしんみりといていると突然千奈美が割って入ってきた。

『ねぇ、みんなうちの歌ちゃんと聞いてる?』

すっかり忘れてた。
ちぃって意外とほっとかれるの苦手みたいでいっつも誰かしらとつるんでる。
ってももが起きる。

そう思って桃子の方を急いで向くと眉間に皺を寄せているが目は覚めていないようだった。
ほっと溜息を吐くとまた佐紀の方に振り返る。

「こんな大音量の中で眠れるって相当疲れてたんだね」
「・・・うん」
268 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:14
『キャプテン!』

無視されたと思ったのかまたもやマイク越しに千奈美が叫んできた。
佐紀もごめんごめんと謝って千奈美の相手をするべくマラカスを手に持った。

雅は桃子の寝顔を見ながら優しく頭を撫でてあげた。
すると何だか桃子が笑ったような気がした。

その後も色々と歌ったが、流石に5時間も歌いっぱなしだといくら若い雅達といえど疲れてきた。
ようやくお開きにしようかとなっても相変わらず桃子は眠ったままだった。
269 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:15
「みや、ももどうすんの?」
「起こすのも可哀想だからうちがおぶって帰る」
「大丈夫?もも起こした方が早いんじゃない」
「だって、ももこんなに疲れてんのうちのせいだし、ゆっくり寝かせてあげたい」
「そっか、でも1人じゃ大変でしょ。わたしら荷物ぐらい持ってってあげるよ」

佐紀の申し出をありがたく思うが、ここから雅たちの家と佐紀たちの家は真逆の位置にある。
佐紀も隠していたがさっきから欠伸を何回もしていた。
桃子同様疲れているはずだ。
桃子1人ぐらい雅1人でどうにかなる。

「ほんと大丈夫だから。今日は無理言って来てくれてありがと佐紀ちゃん。ちぃも今日は楽しかった。またメールするね。じゃあね2人とも」

いつもの帰り道を雅は桃子をおぶって帰る。
雅の耳元からは規則正しい寝息が聞こえてくる。
270 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:15
「もも、寝てる?って寝てるよね。・・・あのね。うち、ももには感謝してるんだよ?今回だって睡眠時間削ってまでうちの勉強見てくれたり、・・・今回だけじゃなくてもいつもうちが知らないところで色々やってくれてたりして。・・・その・・・ありがともも。ももには迷惑ばっかかけてるけど、もももうちを頼ってね。うちが出来ることなら何でもするから。・・・・・・ってももが寝てる時に言ってもしょーがないじゃん」

うち何照れてんだろ?
こんなんだからいつもももがツンデレツンデレ言ってからかうんだ。

少し冷静になろうとゆっくり歩くも少し雅の足取りが重くなってきた。

「それにしても2人にはああは言ったけど結構大変かも。思ったより重い・・・」
「ちょっとみや。乙女に向かって重いってひどーい」

急に首が絞められた。
雅は軽くむせ込んで桃子の方を向く。
271 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:15
「ちょ、もも起きてたの?」
「ううん、寝てた。さっき目が覚めた」
「てゆーか起きてるんなら早く降りてよ」
「やだ。みやの背中落ち着くんだもん」
「落ち着くじゃない!!うちは疲れるの!」
「ちぇ」
「ちぇじゃない!」

桃子はぶつぶつ言いながら雅の背中から降りた。
ようやく重労働から開放された雅は大きく伸びをした。

ってかさっきの、もも聞いてたんじゃ・・・。
272 :CROSS OVER :2010/09/20(月) 18:15
「あ、あのもも?」
「ん?」
「さっきのうちが言ってた事・・・聞いてたりする?」
「ん?何の事?」

桃子の言葉にほっとするも、桃子の顔はにやーと笑っていた。
その顔を見て、雅は顔が赤くなってきた。

「嘘!聞いてたでしょ!起きてるんだったら早く言ってよ」
「だって目が覚めて起きようと思ったらみやが急に語りだしたんだもん。そしたら起き出すタイミング失っちゃって」
「それは・・・」
「でも、もも嬉しかったよ?」
「もうその話はいいから」

桃子の顔を見てられなくて雅は家までの距離を走り出した。

273 :ちゃぽ :2010/09/20(月) 18:20
いつもよりちょっと長めに更新しました
時間を見つけてちょこちょこ書き足してはいるんですけど、忙しくて中々更新する暇がありません
放棄する気はないので気長に待っていただけたらと思います
当面の目標は季節を抜かれないように頑張ります
274 :名無し飼育さん :2010/09/29(水) 23:27
なんか甘酸っぱくていいですね
続きを待ってますZ
275 :名無飼育さん :2011/04/02(土) 16:47
待ってます!
276 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:47
その夜。
ようやくテスト勉強の毎日から開放されて、桃子と2人でリビングでくつろいでいた。

「みや今日の科目はどうだった?」
「ばっちりとは言えないけどいつもに比べるとかなり出来たかも」
「そっか、それは良かった」
「ってかほんとももって教え方うまいよね」
「そう?みやにそう言ってもらうと嬉しいな」
「ももが先生だったらすごく分かりやすくていいのに」
「ホントに?・・・実はもも、学校の先生になるのが夢なんだぁ」
「へぇー、すごい」
「みやには話した事なかったっけ?」
「うん」
277 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:47
そう言えば教育学部に通ってるんだっけ。
佐紀ちゃんが言ってた。
ももってどうやって進路決めたんだろ?
うちもそろそろ決めないとまた中澤先生にどやされる。
折角だから聞いてみよっかな?

「ねえ、ももってどうやって進路決めたの?」
「どうやってって。・・・まあ何となくというか」
「うち、聞いてみたい」
「そんなたいした話じゃ」
「それでもいい。なんかヒントになるかもしれないじゃん」
「そっか、みやまだ進路決まってないんだよね」
「うん、だから」
「みやがそんなに言うなら・・・」
278 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:48
――ももね、小さい頃からなんとなくだけど学校の先生になりたいなぁって思ってたんだ。

もものお母さん、昔小学校の先生やってて色々話し聞いてたら何かいいなって思ったのが最初。ただ憧れって感じかな。
強くなりたいと思い出したのは結構最近かな?まあ最近っていうか高2のある時をきっかけにしてだけど。
進路調査って2年の時からするじゃん。先生の他に特にやりたい事ってなかったし、取り敢えず希望に学校の先生って書いてたんだ。
で、その時の担任が祐ちゃんだったんだ。あっ祐ちゃんって中澤先生の事ね。
祐ちゃんったら「ほんまに教師になりたいんか?軽い気持ちで思とるんなら止めたほうがええで?」なんて言って来るんだよ。
普通だったら応援してくれるもんじゃないの?
でももも、その言葉にすぐ反論できなかった。漠然と先生になりたいって思ってただけで、ももの中には確固とした理由がなかった。
279 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:49
ももの中でがらがらと崩れてった。
かといって今更自分は何をしたいんだろう、何になりたいんだろう。はっきり言って行き詰まった。
そんな時祐ちゃんが放課後色々話を聞いてくれた。教師って言うものも教えてくれた。大変なこと、やめようかと思ったこと、嬉しかったこと。
「教師を辞めてやるって何回思ったことか。特にな3年の担任なんてなるもんじゃないで?保護者からは子供の内申がどーの、推薦がどーのうるさいし、
本人達にも受験でピリピリした心をほぐしてやらなあかんし。・・・でもな、それでもあいつらの笑顔を見てるとどうでもよーなって来る。
先生合格したよ、先生のおかげで卒業できたよ、なんてな。だから教師はやめられんのや」
そんな話から最後には祐ちゃんの愚痴になったりしてね。うふふ。
280 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:50
ついこの間も道歩いてたらばったり会ってねまたお話しちゃった。
「最近は張り合いのあるやつがおらんでつまらん。祐ちゃん祐ちゃん言ってくれてたのもおまえらの代までやな。何年か前までは三十路三十路ってからかってくるやつもおったのに」
お酒飲んでるわけじゃないのに酔っ払ったみたいに絡んでくるんだよ?そうだ、みやも祐ちゃんって呼んであげなよ?きっと喜ぶよ。
って話が脱線しちゃったね。ようは祐ちゃんは生半可な気持ちで教師になってほしくなかったんだよ。今までもやめていった人たくさん見てきたし、教師って仕事は夢だけじゃ食っていけないからって。
でもももは祐ちゃんの親身になって相談に乗ってくれる姿、生徒に熱心に指導している姿、みんなと笑い合っている姿をみて改めて教師っていいなぁって思うようになったんだ。
それを祐ちゃんに言ったらやっぱりミーハー気分じゃないかって最初は怒ってたけど、最終的にはももの気持ち分かってくれて応援してくれた。
「うちの姿を見て教師になりたいって嗣永も奇特なやつや」って呆れてたけど、何かうれしそうだった。
何か思い出話みたいになったけど、要はもももいいなぁって思ったのが初めだった訳だし、何事も興味を持つことから始めたらいいかもよ。
281 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:50
「例えばさ、ファッションとかみや得意じゃん。どう?」
「うち、ファッションは好きだけどあくまでも趣味っていうか。仕事には結びつかないなぁ」
「じゃあ料理とかは?みやの作るごはんおいしいんだよねぇ」
「料理ね・・・」
「結構みやに向いてるかもよ。まあこれは1つの可能性として、他にも色々目を向けてみたら?」
「うん」
「前にも言ったかもしれないけど焦ったらだめだよ。今焦って決めたらきっと後で後悔するようになるよ。どうせなら自分のやりたい事をしたいじゃん」
「そうだよね・・・うん。ももありがと」
「どーいたしまして」

282 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:51
その夜、桃子に言われたことを考えながらベットに横になった。

そーいえばうちいつから料理し始めたんだっけ?
はじめはお菓子作りが大好きで毎週日曜日には色々作ってた。
おとーさんとおかーさんがおいしいって言ってくれてすごく嬉しかったの覚えてる。
そのうち小学校高学年になると包丁を持たせてもらえるようになって、夕飯の手伝いもよくしたなぁ。
で、はじめは包丁が上手く使えなくてよく指を切って手が絆創膏だらけだったっけ。
それでおとーさんが見てられないからやめてくれって何回も止めてた。
いつの間には大抵のものは自分で作れるようになったけど。
それにしても・・・料理かぁ。
・・・はー、今日はもう寝よ、ここん所テスト漬くしで疲れたし。
明日はテスト休みだからいっぱい寝よ。


283 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:51

284 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:51
雅は折角の休みだと言うのに最近は早起きをして勉強をしていたからその癖で早々と目が覚めてしまった。
2度寝をしようと試みるも今日に限って目覚めがよく、寝られそうになかった。
仕方なく朝食をとろうとリビングに行くといつものように桃子は起きていた。

「おはよ」
「!!みやどうしたの?今日休みだったよね?」

ももの驚きようにちょっと腹が立つ。
確かに休みの日は予定がなかったら昼まで寝てることが多いけど、そんなに驚くことないじゃん。

「知ってるよ!うちだってたまには早く起きる事だってあるんだっつーの!」
「そ、そうだよね。ごめんごめん」
285 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:52
桃子は最初こそ驚いてみせたが、すぐに普通通り話しかけてきた。

「てっきり昼まで起きてこないと思ってももの分しか用意してないんだよね。待ってね、すぐみやの分作るから」
「いいよ、自分でやるから。唯でさえ最近ずっとももにばっかりやらせてたから」
「そう?じゃあ悪いんだけど先にとらせてもらうね。今日は1限目から講義入ってて急ぐんだ」

雅が朝食の用意が終わって食べ始めようとする頃、ちょうど桃子は食べ終わって片付けようとしていた。
最近ずっと一緒に食事をすることが多かったから少し寂しく思う。

「もも、いいよ置いてて。うちがやるから」
「でも・・・」
「いいから。急ぐんでしょ?」
「うん、ごめんね」
286 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:52
桃子は荷物を取りに行ったのか、いったん部屋に戻ったがすぐに出てきた。
「いってきます」と言うやいなや、ばたばたと慌しく玄関に向かった。
雅は桃子の姿を目で追いながら優雅に食べていたがふと思い立って玄関にいる桃子の所へ向かった。

「もも」
「何?」
「夕飯何がいい?」
「どうしたの?急に」
「ただ何がいいかなって」
「うーんとね。・・・・・・海鮮ちらし丼!!」
「分かった、用意しとく」
「え?ホントに?いつもはそんな高いもん作れるかーって怒るのに」
「・・・嫌ならいいけど」
「ううん。もも、みやの作った丼食べたい!!」
「うん、分かった」
「わー楽しみだな。そうだ、今日は早く帰ってくるからね」
「うん」
「具はね・・・。エビでしょ、イクラでしょ、ウニにカンパチそれから・・・」

桃子は1人の世界に入ってしまった。
確か急いでるんじゃあ・・・。

「もも時間いいの?」
「いっけなーい!遅刻しちゃう。じゃあみや、いってきます」
「いってらっしゃい」
287 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:52
玄関の扉がバタンと閉まると静寂な世界となった。

「さて、これからどうしよっかな」

お昼まで寝て過ごすはずが予定外に早起きしてしまって丸々半日空いてしまった。

「とりあえずご飯を食べて・・・、掃除でもしよっかな」

最近忙しくて疎かになっていたからリビングでも綺麗にしよう。
もももたまにしてくれてるけど微妙にずぼらだから角っことかほこりが溜まったまんまなんだよね。
折角うちが綺麗にしたと思ったらお菓子の食べくずをぼろぼろこぼしたり、ソーメンのつゆこぼしてしみにしたり・・・。
この前だって一緒にラーメン食べに行った時も、カバンの中に麺をこぼしてきて大変だった。

「やめよ、思い出しただけで腹立ってくる」
288 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:53
難なく部屋の掃除も終わり、またすることがなくなってしまった。
ついでに桃子の部屋も掃除してあげようかと思ったがレポートの資料とか何か色々山積みになってて、下手に触って分からなくなっても悪いと思いやめた。
と、言うのは建前でどこから手を付けていいか分かんなかったし、あまりの凄まじさにやる気が失われた。

「今から買出しに行くのも早いしなぁ。どうしよっかな」

ぼーっとソファに座っていたが、ただこのまま時間を消費するのも勿体無い。

ちぃを誘ってどっか行くのもいいけど昨日カラオケ行ったばっかだし。
うーん。
・・・そうだ、久しぶりにお菓子でも作ろう。
ももにお礼も兼ねて。
確かもも、フルーツタルト好きだったよね。
うん、うちにしてはいい考えじゃん。
そうと決まったら夕飯の材料と一緒に今から買出しに行こう。

それからの雅の行動は早かった。
「これで桃子ちゃんと一緒に食事にでも行ってきなさい」と、この前父親から貰ったお金で豪勢に魚介類を買い込んだ。
もちろんお菓子の材料も忘れずに。
289 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:53
買出しが終わって家に戻ると早速フルーツタルトを作ることにした。
まずはタルト生地からだ。
店にタルトが売ってあったが折角だから全部雅が作ろうと生地から作ることにした。
お菓子作りが得意と豪語する雅はその言葉に偽りなく、いとも簡単に作ってしまった。

「出来た。後は冷蔵庫で冷やしておけばOK。さて、次はメインの海鮮ちらし丼でも作ろうかな」

といっても材料を切って酢飯を炊いておくだけなんだけどね。
どうせならももの目の前で盛り付けてあげた方が喜ぶだろうし。
ご飯はもう炊けてるからおひつに移して酢飯だけ作っておくか。

準備が終わったのはほぼ3時だった。
今日は早くから起きて色々やった雅は今頃になって眠気が襲ってきた。
ちょうどいいからとソファーに横たわり一眠りすることにした。


290 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:53

ガタっ。
物音がして雅は目が覚めた。
気付くともう外は暗くなっていた。

「・・・ん?今何時だろ」

起き上がって周りを見渡すとそこには申し訳なさそうに小さくなっている桃子がいた。

「何小さくなってんの?」
「ごめん。起こすつもりはなかったんだ。のどが渇いて水飲もうとしてて」
「いいよ別に。こんな所で寝てたうちが悪いんだし。ってもも、今何時?」
「ん、今?今は9時だよ」
「9時!?」
「そう9時」
291 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:54
桃子の事を疑っている訳じゃあないけど自分の目で時計を確認してみる。
《PM9:00》
何度見ても時計は9時を示していた。

「うわー!!ごめん、寝すぎた。もう、ももも起こしてくれれば良かったのに」
「だってみや、気持ち良さそうに寝てたから起こすの可哀想かなって」
「でもお腹すいたでしょ?」
「そうでもないよ」

気を使ってそう言ってくれたみたいだが、タイミングよく桃子のお腹が鳴った。
ぐー。
桃子は明後日の方向を向いているが、その音は明らかに桃子のものだった。
292 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:54
「ごめん、急いで用意するから」
「ももも手伝うよ」
「そう?じゃあお汁温めてくれる?」
「うん、任せて!」

お汁くらいだったらももに任せても大丈夫だろう。
さてうちは丼の盛り付けをしなければ。

桃子は汁を用意し終わったのか雅の手元ばかりをじーっと見ていた。
雅の手で丼が出来上がっていく様を、今か今かと待っていた。
もし桃子が犬だったらよだれ垂らして尻尾が取れるくらい振っているだろう。

「もうちょっとで出来るから座って待ってなよ」
「ううん、みやが作ってるの見てる」
「あんまり見られてるとやりにくいんだけど」
「だってマジックみたいなんだもん」
「何いってんの?そんな訳ないじゃん」
「そうだけど、でもももの手もみやのと同じはずなのに、ももはみやみたいに出来ないもん。だからすごいなって思って」
「誰がやったって一緒だよ」
293 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:54

桃子の言葉にちょっと嬉しく思うが雅は照れくさそうにそっぽを向く。
桃子はそんな雅の様子に気付いてないのか、まだかまだかとそわそわしていた。

「・・・出来た」

雅の一声で桃子はかつてないほど素早い動きを見せた。
丼を食卓に並べ自身は席について雅の様子をうかがっていた。

「じゃあ「いただきます」」

結構待たせていたから桃子の食べる勢いは衰えることなかった。
半分くらい食べ終わったところでようやく落ち着いてきたのか桃子は口を開けた。

「ねえみや。何で今日はこんなに豪勢なの?」

・・・やっぱり聞かれたか。
恥ずかしいからあんまり言いたくないんだけど。
ってなんかすごい期待したような目で見てくるし!!
294 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:55
「あの・・・ね。勉強みてもらったお礼」
「お礼?」
「うん。ちょうどおとーさんから「2人で好きなもの食べなさい」って臨時収入もらったし、どーせならももの食べたい物作ってあげよっかなって」
「そうなんだ。あっ、だからこの前パパさんが「ももちゃんにそのうちびっくりする事があるかもよ?」って言ってたんだ。後でパパさんにお礼言っとかなきゃ。みやもありがとね」
「べ、別にお礼なんていいよ。って何?パパさんって。それにももちゃん?」
「ん?パパさんはパパさんだよ。みやったら自分のお父さんの事忘れたの?」
「そんな訳ないじゃん!そうじゃなくていつの間にそんなに仲良くなったの?」

確かうちの誕生日の日に会ったのが最後だったはずだし、その時はおじさんって呼んでたよね。
おとーさんも桃子ちゃんだったし。
295 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:55

「あれ?パパさんから聞いてない?結構連絡取り合ってるんだけど」
「はぁ〜?何それ」
「みやの事が心配だから色々教えてほしいって。時々近況報告とかして、まあ最近はみやの事だけじゃなくて世間話とかもしたりしてさ。3日に1回くらいの割合で」

3日に1回?
うちと連絡取るのより多いじゃん!
週1回の連絡だって面倒だって言うのに。
あっ、だからか。
最近あんまりそっちはどうだとか、困ってることはないかとかあんまり聞いてこなくなったのは。

黙り込む雅をそっちのけで桃子は最近はこんな話をした、あんな話をしたなどと、1人盛り上がっていた。
そんな中雅は何故は面白くなさそうに話を聞いていた。

「ふーん」
「何その興味なさそうな返事」
「別に」

桃子はそんな雅の様子にむっとするもすぐさま豹変してニコニコとしてきた。
296 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:55
「ももがパパさんと仲いいからってヤキモチ焼いてるんでしょ?」
「そんなんじゃないから!」
「隠さなくてもいいって。大丈夫だから、みやのお父さん取ったりしないから」

桃子の言葉に雅はずっこけた。
仮に桃子と父親が仲良かったとして、何で桃子にヤキモチを焼かなければならないのか。
ファザコンじゃあるまいし、やめて欲しい。

「バカじゃないの?」
「ひどい、あのみやにバカにされた」
「ももにヤキモチ焼く訳ないじゃん」
「じゃあパパさんに焼いたの?ももを取られたくなくて?もーみやったら照れる。大丈夫だよももとパパさんは何でもないからね」

雅が口を挟む間もなく桃子の妄想が炸裂している。
仕舞いには父親との連絡はみやが焼くから電話の頻度を落とすと、訳の分からないことをのたまってきた。
雅は桃子の爆走を止めることが出来ず好きにさせていた。
仕方なく雅は箸を進めることにし、黙々と食べることに専念した。
297 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:56
「ちょっとみや聞いてる?」
「うん。聞いてる聞いてる」

つっかかってくる桃子は面倒ことこの上ない。
相手にしていたらこっちの身がもたない。
適当に聞いて流すのが1番だと佐紀にも教わっていた。

「絶対聞いてないでしょ」
「そんなことないって。それより早く食べなよ。お腹空いてたんでしょ?」
「何かはぐらかされてる気がするんだけど」
「そんなことないない。食べないんだったらうちが貰うよ?」

桃子の丼に手を伸ばそうとすると、それよりも早く桃子は胸に抱え込んだ。
そしてまた急いで食べ始めた。
これで注意が逸れた。
雅もまた食べることに集中し、お互い食べ終わるまで会話もないままであった。
298 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:56
「ごちそーさまでした」
「はい、お粗末様でした」

食べ終わった後は2人で片づけをした。
お腹も満たされて並んでソファーに座った。

「ところでももはいつ帰ってたの?」
「もも?ももはね、6時くらいかな」
「ほんとごめん。ちょっとだけのつもりが本格的に寝ちゃってたみたい」
「いいって。おいしかったし」
「あっ、そうだ」

雅は肝心なものを忘れていた。
折角作ったフルーツタルトの存在を。
夕飯をいっぱい食べた後だがデザートは別腹と言うことで大丈夫だろう。
299 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:56
「じゃーん。本日の目玉商品2段だよ」
「わー、タルトじゃん。どうしたの?」
「作った」
「みやが?」
「うん」

桃子は先ほどと同じく尻尾を振り回しているかのごとく期待した目でタルトを見つめている。
そんな様子に雅は無意識に笑みが零れる。

「食べていい?」
「えー、どうしよっかな。さっきももったらうちの事からかって遊ぶんだもん」
「ごめん。謝るから、ね?とっても可愛いみやびちゃん、食べてもいい?」
「心が篭ってなーい」
「美人で可愛くて料理上手なみやびちゃん食べてもいいですか?」
「しょーがないな。ちょっと待ってて、カットするから」
「はーい」
300 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:56
桃子はホント幸せそうな顔をしてタルトを頬張っている。

ほんとももったら食べ物に関する時だけ異様に執着するんだから。
子供っぽいというか、何というか。
・・・やっぱ作ってよかったな。
こんなに喜んでくれるんならたまには作ってやるか。

桃子の為に作ったとはいえ、雅もスイーツには目がない。
桃子がおいしそうに食べている姿を見れば上手に出来ていたらしいのは分かるが、雅自身味見もしていないのだからせめて1/3は貰って食べようと思っていた。
雅が物思いにふけっているといつの間にか雅用にと分けていた1/3にも手を出そうとしていた。
雅は慌てて桃子にストップをかけた。

「ちょっともも、それうちの分!!」
「えー、いいじゃん。お礼って言ってたじゃん」
「それとこれは話が別。うちだって食べたいもん」
「ぶー」
301 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:56

不満そうに雅を見つめる桃子だった。
危ない。
食べ物を前にして隙を見せたらあっという間に桃子に食べられてしまう。
桃子に負けないように急いで食べ始めた。
雅自身食事はゆっくり落ち着いて食べたい派だったが、桃子と同居を始めて弱肉強食という言葉を身を持って体験することになった。
前に佐紀が言っていた、桃子と食べる時は気を付けろという事がようやく分かった。
気を抜いたら食われる。
不満そうにこちらを見つめる桃子を尻目に黙々とタルトを味わった。

うん。思ったより上手に出来てた。
自分で言うのも何だけどこれはももが横取りしようとする訳だ。
何かじーっと見られてて食べにくい。
・・・しょうがない。
302 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:57
「もも一口食べる?」
「うん」

雅の一言に桃子はパーッと満面の笑みになって、まだかまだかと口を開けて待っていた。

「自分で食べなよ」
「いいじゃん、食べさせてよ。あーん」

桃子とタルトを見比べていたが渋々フォークを桃子の口元に持っていった。
タルトを頬張る桃子は幸せそうに口をもぐもぐと動かしていた。
そんな姿についついもう一口、そしてもう一口と結局ほとんどあげてしまった。

「あーおいしかった。みやまた作ってね」
「まーいいけど次はちゃんとうちの分取っといてよ?」
「えー」
「・・・そんな事言うならもう作ってあげない」
「うー、努力はする」
303 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:57
一応約束させたけどこれは次回も危ないな。
次までに対策を練らなければ。

そう言えば最近は作ってなかったけど、おとーさんおかーさんも「おいしいおいしい」言っていつも食べてくれてたなあ。
みんなのおいしいって頬張っている顔が何より嬉しかった。
だからそんな笑顔が見たくてついつい自分の分まであげちゃてていっつも怒られてたっけ。
「私達の分はいいからちゃんと雅も食べなさい」ってね。

雅が物思いにふけって黙り込んでいたら、怒らせてしまったのかと桃子は焦って訂正してきた。

「うそうそ、ちゃんとみやの分残すって。だから怒らないで」
「・・・」
「次はちゃんと半分こにするから」
「・・・」
「みや〜」
304 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:57
ちょっと桃子の焦った様子に面白くなって黙ったままでいると桃子の眉が段々と下がってきたのが分かった。
さすがにこれ以上いじめるのも可哀想なので訂正しといた。

「別に怒ってないよ」
「ほんとに?」
「うん。ちょっと考え事してただけ」
「考え事?」
「うちって自分が思ってるより料理好きなんだなぁって」

雅の発言に桃子はキョトンとした表情をみせた。

「気付いてなかったの?」
「へ?」
「みやっていつも楽しそうに料理してるよ?」
「そう・・・かな」
「うん。そりゃあみんなと遊んでる時も楽しそうだけどそれとは違った感じっていうか・・・」
「??」
305 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:58
雅の顔にハテナが浮かんでいる。
そんな雅の様子にも慣れたのか桃子は雅の分かりやすいように説明してくれた。

「ほら去年の佐紀ちゃんの誕生日だっけ?みやが色々作ってくれたじゃん。その時みやってこんな特技があったんだぁ、人は見かけによらないんだなって関心したんだよ」
「ちょっと、それかなり失礼じゃない?」
「まあまあ話には続きがあるんだって。その時ってもも達そこまで仲良くなかったじゃん?
みやっていたずら好きでいつもはっちゃけてるって言うか無駄に元気じゃん。どちらかって言うと問題児っぽくてちょっと手に負えない感じ?だったけど料理を作ってるみやは真剣そのものでいつもとは別人のようだった。
いつもみたいになあなあじゃなくて料理には一切の妥協はしたくないって感じで、でもその中にも作るのがほんと楽しいって言うのが伝わってきた。
ああこの子は料理するのがほんと大好きなんだなあって。
一緒に暮らすようになってからも全然変わってなくて、みやの作ってくれるごはんホントおいしいんだよ。
ももが作るって言っても中々キッチン譲ってくれないし、実をいうとみやがごはんを作ってくれるようになってから、もも2sも太っちゃったんだよね」
306 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:58
「そうだったんだ」
「そうだよ。だからてっきりみやってそういう方面に進むのかなって思ってたんだけど、あんまり興味なさそうだったし」
「うちの中では料理って生活の一部っていうか当たり前な感じだったから・・・気付かなかった」
「そっか。じゃあ改めてどう?料理、みやに合ってると思うんだけどなぁ」

桃子の言葉に雅は目からうろこだった。

確かにうちは料理好きだし、何よりうちが作ったものをおいしいって言って食べてくれる姿が大好きだった。
最近は特に食べることが好きなももには作りがいがあった。
いつもおいしそうに残さず食べてくれるし、必ず何か一個褒めてくれる。
また明日も頑張ろうかなって気にさせてくれる。

過去の自分を振り返ってみると自分の料理に対する情熱が見え隠れしていた。
改めて桃子の方を向いてみるとニヤニヤした顔で雅の方を窺っていた。
307 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:58
「・・・何その顔」
「ん?いや〜やっぱりみやって自分の事は鈍感なんだなあって」
「・・・ももは分かってたの?」
「まあね。だってみやって分かりやすいじゃん?」
「だったら進路の相談した時に教えてくれたらいいじゃん」

拗ねるような口調になってしまうのはしょうがない。
実際分かってて教えてくれなかった桃子に雅は恨めしいような目で見つめてしまった。

「いや、それは自分で気付かないと。人から言われたから決めたんじゃあ後味悪いじゃん?」
「そうだけど・・・」
「だからみやが自分で気付くかなって色々ヒント出してみたんだけど。まあ結局最後は答え出しちゃったけどね」
「・・・」
308 :CROSS OVER :2011/04/23(土) 13:59
桃子はうふふと面白そうに笑っていた。
雅はそんな姿に面白くなさそうにそっぽを向いてみせた。

「明日学校行ったら色々調べてみたらいいよ。大学、専門、就職とか・・・ね」
「・・・うん」

進路のことで頭がいっぱいになった雅に変わって後の片付けは桃子がすべてやってくれた。
雅はそのままお風呂に入って今はベットの上だ。

「いくら悩んでもやっぱり分かんないや」

・・・・・・そうだ先生だ。
ももも中澤先生によく相談したって言ってたし。
うん、そうしよう。
そうと決まればもう寝よう。
なんか昼間寝たはずなのに眠いや・・・。

それにしても結局うちってももの手の上で転がらされているみたい。
何かたった1年しか年は離れてないのにこんなにも考え方って違うものなのかな・・・。
まあうちも来年になったらももみたいにしっかりしてくるもんね。

・・・年のせいではなく単なる頭の差だけどやはり雅が気付くことはなかった。


309 :ちゃぽ :2011/04/23(土) 14:06
>>274-275
長らくお待たせしまいました

久しぶりすぎて…orz
相変わらずの亀更新すぎて自分でも呆れています
取りあえず完結までは頑張るので長い目で待っていて下さい
310 :名無し :2011/11/10(木) 23:54
二人のあったかいやりとりが好きです
更新楽しみにしています
311 :ちゃぽ :2011/11/15(火) 19:21
◆◆◆

そして翌日。
雅は放課後中澤先生に相談することにした。

「せんせー、相談があるんですけど・・・」
「どないした?夏焼」
「進路のことで」
「進路?お前もようやく決めたか。ちょっと待っとれ、ここじゃなんだから進路指導室にでもいこか」

2人並んで進路指導室に向かう。

「で、どこに行くことに決めたんや?」
「や、それはまだなんですけど・・・」
「は〜あ?なんやまだやったんか。じゃあ話ってなんや?」
「・・・うち料理するのが好きでそういう方面で何かないかなあって」
「ほう、じゃあコックさんにでもなりたいんか?」
「・・・いえ」
「じゃあお菓子屋さんか?」
「・・・いえ」
「じゃあ何になりたいんや?」
「・・・それがまだ」
「じゃあ何か、ただ漠然と調理関係の仕事に就きたいと?」
「はぃ」
312 :CROSS OVER :2011/11/15(火) 19:22
雅は中澤先生の反応が怖くて最初は合っていた視線が段々下がって、どんどん語尾が小さくなっていた。

「こら夏焼、こっちを見んかい」
「・・・」

雅は覚悟を決めて先生の方を再度見るも先生は全然怒った様子はなかった。

「そんなにビクビクせんでも取って食ったりはせんて」
「はぁ」
「で、なんで急に料理関係の仕事がいいって言い出したんや?」
「・・・思い付いたのは昨日なんですけど、よくよく考えれば昔から料理が好きだったなあって」
「嗣永にでも言われたんか?」
「な、なんで?」
「やっぱりな。嗣永もお節介なやっちゃなあ。・・・まあ今回は時間も少ないからしょうがないか」
「??」

「何でもない、今言った事は気にするな」
「はぁ」
「それにしてもあんなに扱いにくいやつをよー手懐けたもんや」
「へ?」
「今でこそ祐ちゃん祐ちゃんゆーって懐いとるが、あれは結構扱いにくい奴やった」
「そーですか?まあ若干絡みづらい所もありますけど、結構頼りになるって言うか、色々助けてもらってます」
「ほー。何や結構いいコンビなんか」
「そんな事ないですよ」
「そうか、そうか。あいつは一匹狼なところがあったからうちも少し心配しとったんやけど、その様子じゃあ大丈夫そうやな」
313 :CROSS OVER :2011/11/15(火) 19:23
先生の言葉に若干引っかかるものがあるが、それ以上話してくれる気がないらしくまあいいかと雅はその話は流した。
そして肝心の進路の話に戻った。


「きつい事をゆーようやけど、はっきり言って今のお前の頭じゃあ今から大学を目指してもただ受験料を溝に捨てるおようなもんや」
「・・・」
「あくまでも今の状態のままやけど。まあ今後の頑張り次第ではどうなるか分からんがな」

いくら本当のことでも先生の言葉にちょっとグサっときた。
落ち込みかけた所にすぐさま先生からフォローがあった。

「おいおい、話はまだ終わってないで?はよーから落ち込むな」
「はぁ・・・」
「つまりうちが言いたいのは大学行ってダラダラ過ごすよりは、これこそ夏焼が言っていた専門学校に行くのがいいんやないかって事。調理師の資格も取れるし視野ももっと広がるで?」
「調理師?」
「そや。今何をしたいか分からんからぼーっと過ごすよりはとりあえずは手に職なりと取っといた方が後々のためになるかもしれんし」
「・・・」
「専門行ってる間に何をしたいか具体的なもんが見つかるかもしれんしな。まあ夏焼が大学行きたいっていうんなら先生も止めはせんがな」
「・・・」
「もちろん就職って手もある。でも高卒で料理関係はあんまりいい求人は今の所ないしな」
「・・・はぁ」
314 :CROSS OVER :2011/11/15(火) 19:24
全然考えてなかったとは言えこうもはっきりお前の頭じゃ無理と面と向かって言われると、じゃあどうしたらいいんだろうと不安になる。
元を正せば早くから進路について考えていなかった雅の責任だが、せっつかれて無理矢理出した答えで本当に大丈夫だろうか。
今になってようやく焦ってきた雅に先生は落ち着いた声で諭した。

「夏焼、今更焦るな。焦ったところでしょーもない。じっくり考えーや」
「・・・はい」
「とりあえずここら辺にある資料で欲しいのがあったらコピーしてやるから持って帰ってじっくり見てみ」
「はい」

雅はどれが自分に役立つものかよく分からないまま、あれこれと色々とコピーしてもらった。
そして今日は先生にも言われた通り家に帰ることにした。

315 :CROSS OVER :2011/11/15(火) 19:24
◆◆◆

その後1週間ぐらい資料を眺めたり桃子に聞いたり色々してみた。
雅としては調理師専門学校がいいかなって気もするけど、はたしてそれで本当にいいのか。
決定的な何かが不足しててイマイチ雅の中で消化不良でずっとモヤモヤしたものが胸中を巡っていた。

自分の将来がかかってると思うといつもの雅みたく安易に決めることが出来ない。
唯でさえ優柔不断で流されやすい雅だから料理関係の学校に行きたいのは自分の意見ではなく他の人の意見にただ従っているのではないかと自信がない。
これを桃子に相談してもきっと桃子の言ってくれる意見に従ってしまいそうな気がする。
雅は色々悩んだ結果やっぱりもう一度中澤先生に相談してみることにした。

316 :CROSS OVER :2011/11/15(火) 19:24
「この前は料理関係がいいと言ってたんですけど、本当にそれでいいのか何か自信なくなっちゃって・・・」
「なんや、夏焼の料理に対する気持ちはそんなもんやったんか?」
「・・・」
「なら質問を変える。夏焼はどんな事思いながらいつも料理してる?」
「いつもですか?・・・んー。ただおいしいって思って貰えるように?」
「・・・じゃあ料理してて何が楽しい?もしくは嬉しい?」
「やっぱり自分の料理でみんなを笑顔に出来ることかな。おいしいって言って幸せそうな顔をして食べてくれるのを見るとうちも嬉しいし」
「ほんならこれから夏焼はどないしたい?」
「うち、うちは・・・」
317 :CROSS OVER :2011/11/15(火) 19:25
――自分の手でみんなを幸せにしたい。
・・・笑顔でいっぱいにしたい。
うちの両親はうちが何作っても、例えちょっと焦げてて自分では不満足な出来の時でさえ、おいしいおいしいって食べてくれる。
それはたぶんうちが言うのもあれだけど親馬鹿みたいなもんだし、いつも不本意に思ってた。
でもももと暮らすようになって今日のはしょっぱかった、今日のは甘いなんて、結構口うるさくて・・・。
自分はまともに料理出来ないくせに口だけは肥えてていつも注文がうるさいんですよ。
まあ色々言ってもちゃんと全部食べてくれるんですけどね。
でもそれが嬉しかったりして、次はももの口を唸らせてやる、なんて意気込んで作ってる自分がいるけど。
最近ではももの好みも分かってきてあんまり言って来なくなった。
でも相変わらず今日のご飯もおいしいよって言って幸せそうな顔をしてうちの作ったものを食べてくれる。
そんなももをみてうちも幸せな気分になる。
だからももだけじゃなくたくさんの人に笑顔になってほしい。

自分の気持ちを素直に先生に伝えてみた。
ところが雅の話を聞いている先生は突然背中を掻きだした。

318 :CROSS OVER :2011/11/15(火) 19:25
「どうしたんですか?」
「いや、何かあてられたってちゅーか。無性に背中が痒くなってきての」
「??」
「分からんのならそれでもええ」
「はぁ」
「まあ夏焼の料理への情熱はよー分かった。ちゃんと自分の中で形になっとるやないか。それやったらやっぱり専門学校がええんやないか?」
「専門?」
「調理師の資格だって取れるし、折角だから料理の勉強して本格的にその道極めて来たらどうや?」
「・・・はい!」
「じゃあ明日にでも進路調査表に書いてちゃんと出すんやで」
「はい!」

最初はももに言われてその気になってたけど、言われる前から気付かなかっただけで自分の中にはちゃんと形になってたんだ。
自分の料理が好きって気持ちは誰に言われたからじゃない。
前からうちの中で眠ってたんだ。
319 :CROSS OVER :2011/11/15(火) 19:25
雅はなんだか嬉しくなって、この気持ちを誰かに伝えたくなって。
真っ先に浮かんだ桃子の携帯に電話をかけた。

《みや、どうしたの?》
「もも、うち進路決めたよ」
《え?何?》
「進路決めたよ!!」
《そっか、良かったね!》


雅は桃子との電話を終え、家に帰るとテーブルの上にはケーキが。
そして「よかったね、おめでとう。これから頑張るんだよ!!」というメモが一緒に置いてあった。
桃子はというと夕飯の買い物に行ってるらしく家にはいなかった。

夜はどうしてもと桃子が夕飯を作った。
数少ない桃子の得意料理である卵料理のオンパレードだった。
すごくおいしいとは言いがたかったけど2人は笑顔を絶やすことなく夕食を堪能した。

320 :CROSS OVER :2011/11/15(火) 19:25
その日の夜、珍しく夢を見た。

テーブルを囲んで子供2人と…あれはうちとももがいた。
4人で楽しそうに食事をしていた。
うちの手料理をももと子供たちの3人で取り合っていてそれを微笑ましそうに見ている自分の姿があった。

目覚ましのベルで目が覚めて、夢はそこで途切れてしまった。
何故か起きたてにも関わらず頭が冴えていた。

「…ってなんでもも?そこは未来の旦那さまでしょ!!」

1人誰に言う訳でもなく突っ込みつつも笑みがこぼれていた。
321 :ちゃぽ :2011/11/15(火) 19:28
お久しぶりです。
最近はなんだか飼育が賑わってていいですね。
自分もその波に乗れるように頑張ります!!
322 :名無飼育さん :2012/01/20(金) 12:13
ううー続き気になる!!
みやが純粋鈍感で可愛いすぎますね!
そしてもも優しくて惚れちゃいそうです。
323 :CROSS OVER :2012/01/23(月) 22:10
今日は創立記念日で学校が休みだった。
ついこの前文化祭が終わってようやくの休息だった。
雅は久々にぐっすり寝ようと朝寝坊を決め込んでいた。
ところが電話の音に起こされる。
何かと思えば桃子から今日提出の大事なレポートを忘れたから持って来いとの事だった。
嫌だと断ったがテスト勉強みてあげたり、色々相談のってあげたの誰だっけと雅の痛いところを突いてきた。
渋々ながら持っていくことになった。

雅が大学に着いて手渡すと時刻は丁度12時。
お礼にと学食をおごってくれた。
同じ大学の佐紀もいて3人で食事をとることになった。
和やかに談笑していると見たことない人が桃子に近寄ってきた。
324 :CROSS OVER :2012/01/23(月) 22:11
「おーい、ももー」
「舞美どうしたの」

桃子は慌ててその人の方へ駆け寄る。
所々聞こえる会話には講義の話みたいだ。
先生の都合で急遽5限目に講義が入ったらしい。

矢島舞美。
大学で知り合って仲良くなった桃子達の友達らしい。
何でも桃子と同じく教師を目指しているとか。

親しそうに話す2人を見つめる。
そんな雅に佐紀は「あの2人最近仲いいんだよね」と意味深な感じに言う。
「ふーん」
雅は何でもない感じに答えるも視線は2人から離れなかった。
2人で桃子達の様子を窺っていると、不意に桃子が舞美に抱き付いた。
それを見て何故か胸がもやもやする。
眉間にしわが寄る雅。
それを見て佐紀はフッと笑う。
325 :CROSS OVER :2012/01/23(月) 22:11
「ももは誰これかまわず抱きつく癖があるんだよね〜」
「・・・」

佐紀の言葉に無言のままでいると桃子が雅達の元へ戻ってきた。

「ごめん。ももこれから講義入っちゃったから行かなきゃ」
「いいよ、いってらっしゃい」
「みやも折角きてもらったのにごめんね」
「別に・・・。ちょうど佐紀ちゃんとも会いたかったし」
「ももー急がないと」
「今行くー。じゃあね」

桃子と舞美が去り佐紀と2人になった。
「・・・」
無言で2人の去って行った方向を見る。
すると佐紀が雅が今一番考えたくない事を聞いてきた。
326 :CROSS OVER :2012/01/23(月) 22:12
「ねぇ。前から思ってたんだけど、みやってももの事好きだったりする?」
「なんで?」
「みや見てたら何となくそうなのかなって」
「そんな事ないって。うちももの事なんて好きじゃないってば」
「ほんとに?」
「うん。前も言ったじゃん」
「でも高校の時に比べてみやのももを見る目全然違うよ」
「そりゃ色々あってももの事見直したのは事実だけど、そんなんじゃ・・・」
どんどん語尾が小さくなる。

「自覚ないんだ」
「え?何?」
「ううん、なんでもない。(みやが気付いてないんだったら言ってもしょうがないよね・・・)」

佐紀の言葉に?マークが広がる。
そんな雅はそのままに話を続ける佐紀。

「わたしはみやの事応援するからね」
「・・・だからそんな事言われても困る」
「大丈夫だって。それにしてもみやって恋愛に奥手だと思ってたけどこれほどとはね…」
「・・・・・・」

佐紀の言葉に困惑を隠せない。
327 :CROSS OVER :2012/01/23(月) 22:13
「そもそもももの方はどう思ってるか分かんないし・・・」
「ももはみやの事それなりに気に入ってると思うよ?」
「何で分かるの?」
「ももはいつも飄々としてて結構どこに気持ちがあるのか分かんない所あるじゃん。でもわたしが知るかぎりだとあれだけ一緒にいるのみやだけだよ?
高校でもそれなりに友達付き合いしてたけど、1人でいるのが好きだったみたいだし。時々ふらっといなくなって1人で屋上にいたりしてさ。
そんなももの方から同居を言ってきたんでしょ?それなりに気に入ってる子じゃないとそんなことしないよ」
「でも・・・」
「でもじゃないの!さっきだってももが舞美に抱き付いた時、みやは無意識かもしれないけど舞美のこと睨んでたんだよ」
「そんな事ない」

佐紀に言われようがこれは雅の中で認める訳にはいかなかった。
桃子はあくまでもルームメイトに過ぎない。
328 :CROSS OVER :2012/01/23(月) 22:13
雅が難しい顔をしているのを横目で見ながら微笑んでいる佐紀だったが、時計を見ると慌てたように雅に声を掛けてきた。

「ごめん、みや。わたしこれからサークルに顔出さなきゃいけないんだった。折角だからキャンパス案内してあげたかったんだけど・・・」
「・・・いいよ別に」
「ほんとごめんね。この話はまた今度しようね」
「もういいって」
「まあまあそん事言わずに。じゃあわたし行くね」

佐紀は雅の不機嫌な様子にも動じず笑いながらキャンパスを駆けて行った。
329 :CROSS OVER :2012/01/23(月) 22:13
――だからうちももの事なんか何とも思ってないんだから。
佐紀ちゃんたらしきりにうちともものことくっつけようとしてるし。
ああ、もう何かイライラする。
元はといえばももがレポート忘れるのが悪いんだ。
今日は1日寝て過ごそうと思ってたのに。
しょうがないちぃでも誘ってケーキバイキングに行くとするか。

その後ちぃとこれでもかってほどケーキを存分に食べた。
いっぱい食べればすっきりすると思ったのに。
それなのにまだ胸に何かつっかえてるものがあった。

330 :ちゃぽ :2012/01/23(月) 22:14
>>322
こんな僻地にありがとうございます。
こうやって待ってくれる人がいると思うとやる気倍増です。
久々に創作意欲が湧いてきてただ今絶賛執筆中です。
更新頻度を上げられるように頑張ります!(`・ω・´)
331 :とりあえず名無し :2012/01/24(火) 00:14
おおお更新来てる!!!
私も好きな作品で何度か読み返してるので嬉しいです!
期待してます!
332 :CROSS OVER :2012/01/26(木) 21:26
そんな胸のつっかえも文化祭の準備やら毎日の雑務に追われている内にどこかへ行ってしまっていた。
桃子の方も何やらレポート提出や研究発表が重なったとかでバタバタと忙しい毎日を送っていた。
雅としても佐紀から色々桃子のことで言われて顔を合わせにくかった事もあって、心を落ち着かせるのに十分な時間となった。

そんな2人がようやく時間が合い、前々から約束をしてた買い物にでかけることになった。
久々のお出かけとあって、雅のテンションはいつに増して高くてご機嫌だった。

ところが途中舞美に出会ってから誰が見ても明らかなほど不機嫌なオーラをかもし出していた。
そんな雅を露知らず桃子は折角だからと舞美を喫茶店に誘う。
雅自身この桃子とのお出かけを楽しみにしていたのだからはっきり言って面白くない。

2人が話す内容は雅の分からない大学の事ばかり。
どんどん雅の口数が少なくなっていく。
そんな中桃子がトイレに席を外し、舞美が話しかけてきた。
333 :CROSS OVER :2012/01/26(木) 21:26
「雅ちゃんって言ったっけ?」
「・・・そうですけど」
「私の思い込みかもしれないけど、何か敵視されてるような気がするんだけど」
「そんなことありません」

舞美に話し掛けられる今も不機嫌な顔のままの雅であった。
そんな雅に舞美はくすっと笑ってみせた。

「何が可笑しいんですか?」

雅は舞美の態度が気に入らない。
警戒心を強くした。
334 :CROSS OVER :2012/01/26(木) 21:26
「雅ちゃん、何か勘違いしてるみたいなんだけど」
「何をですか?」
「私、彼女いるからね?」
「はぁ?」
「いや、何か君が私たちの仲を疑ってるみたいだから」
「べ、別に聞いてないし」
「そう?でも私とももは友達で君が思っているような関係じゃあないからね」
「あんたが言ってる意味が分かんない。別にももとあんたの仲なんてどうでもいいし!」

でも雅は先ほどに比べて頬が緩んでいた。
舞美はニコニコと笑って雅の様子を見ていた。
335 :CROSS OVER :2012/01/26(木) 21:27
「ねえ、私たち友達になれると思うんだけど」
「うちは別に・・・」
「まあまあそう言わず、ね?私のことは舞美でいいから。雅ちゃんの事はももが呼んでるみたいにみやでいいかな?」
「・・・好きにすれば?」

雅のそんな様子に舞美は更に笑っていた。
その様子に懐柔になりかけた雅はまた不機嫌になった。

「何笑ってんですか?」
「ごめんごめん。いやこれがいつもももが言ってるツンデレかと思って」
「はぁ?」
「ももってば大学でみやのことよく話すんだよ。色々武勇伝は聞いてるよ?」
「何を聞いたんですか?」
336 :CROSS OVER :2012/01/26(木) 21:27
雅が今にも舞美につっかかって行こうとしてると呑気な声で桃子はトイレから戻ってきた。

「ごめんね、おまたせ。何かトイレ込んでてさっ」

問いたださなければならない元凶である桃子の出現により雅の矛先が舞美から桃子に移った。

「もも!うちのこと大学で色々言い降らしてるって聞いたんだけど!」
「えっ??何のこと?」
「しらばっくれてもネタは上がってんだから」
「話が見えないんだけど?」
「だからうちの失敗談とかを大学で色々話してるって」
「ももそんなの話してないよ?」
「うそだ!だってあいつが色々聞いてるって」

舞美がいる方へ指を指すもそこには誰もいなかった。

「あれ?何処行った?」

舞美が座っていた席に何やらメモが置いてあった。
337 :CROSS OVER :2012/01/26(木) 21:28
――――――――――――――――――――――――――――――

 みやへ

 さっき言ったのは冗談です
 でもももはいつもみやのことを自慢しているよ
 みやの作ってくれるごはんはおいしい
 部屋もみやが来る前よりずっと綺麗だって


 P.S.
 佐紀からもちょこっと聞いてるよ
 もも限定でツンデレだって

 P.S.2
 もものことは色々協力するからね
 ももってば結構鈍感な感じだから大変だろうけど頑張ってねv

――――――――――――――――――――――――――――――
338 :CROSS OVER :2012/01/26(木) 21:28
メモを見るなり雅は紙をクシャっと丸め桃子に見られないようにした。

「あいつ・・・舞美のやつ。勝手に勘違いするなー!!」
「ねえ、何が書いてあったの?」
「何でもない!!」
「えー。ももだけ仲間はずれ?」
「何でもないったら!!」

仲間外れにされたみたいで一人いじける桃子の姿を見てると雅は自然と笑いが込み上げてきた。
そんな雅の様子に桃子は徐々に頬が膨らんできた。

その後は桃子の機嫌を取るのに全力を費やす羽目になった。
桃子の好きそうなスイーツを2つ奢らされたところでようやく桃子に笑みが戻ってきた。

「んー、幸せ。ほっぺた落ちちゃいそう♪」
「はー。舞美には勘違いされるは、ももにはケーキ奢らされるは、何か散々な1日だよ」

桃子のご満悦そうな顔とは打って変わり、雅は肩を落としてため息をついていた。
339 :CROSS OVER :2012/01/26(木) 21:28
「ねえ、さっきから気になったんだけどいつの間に舞美と仲良くなったの?」
「別に仲良くなってなんかないっつーの!」
「だってみや、さっき舞美って呼んでたし」
「それはあいつが舞美って呼べって言ったから…」
「舞美ったら彼女いるのにみやまでメロメロにさせちゃう気だな。ももからみや取ろうなんて、もーももちヤキモチ妬いちゃうぞっ」
「な、何言ってんの」

桃子の何気ない一言に雅の心臓は鼓動を速くした。
雅は赤くなっていく顔をそらしながらも桃子の顔を盗み見てみた。
桃子の意識はすでに目の前のケーキに移っているようだった。

お店を出てから2人でウィンドーショッピングを再開したが雅はどこか上の空だった。
340 :ちゃぽ :2012/01/26(木) 21:34
>>331
ありがとうございます。
間髪入れず反応があって嬉しい限りです。
またサボり癖が出ないうちにサクサク更新しようと思います。
341 :とりあえず名無し :2012/01/30(月) 21:55
舞美ちゃんの彼女が誰なのか気になります(笑)。
自分のキモチに気づいたっぽいみやが、この先どう進んでいくのか楽しみです。
ていうかこの小説のももはいいなあ!!
342 :CROSS OVER :2012/01/30(月) 22:44
雅が朝起きると珍しく桃子が慌てて支度をしていた。
何でも1限目から講義が入っていたのを忘れててのんびり起きてしまったとか。
朝ご飯もそこそこに急いで出て行った。

雅も桃子が出かけた30分後、いつも通り学校へ向かおうと玄関を出て鍵を閉めようとした。
ところが雅の手にはいつもあるはずの鍵がなかった。

「あれ?うち鍵どこやったっけ?」

慌てて家に入り、リビング、部屋の中、鞄の中、すべて引っ掻き回して探す。
が、見つからない。
雅は一瞬で真っ青になった。
そして昨日の行動を思い出そうとする。
343 :CROSS OVER :2012/01/30(月) 22:45
――えっと昨日は確か自分で鍵を閉めて出て行って…。
帰りは丁度ももと一緒になったから鍵は…使ってないはず。
もしかして、どっか落とした?
でも朝使って確かに鞄に入れたし…。
あっ、そう言えば千奈美とふざけてて帰りに鞄ぶちま…け…た?

雅は玄関に鍵をするのも忘れて急いでその場所に向かった。

344 :CROSS OVER :2012/01/30(月) 22:45
懸命に辺りを探すが見つからない。
学校が始まる時間になったが、それでも雅はそこを動こうとせず一心不乱に探す。

時間になっても現れない雅を心配して、千奈美から電話がかかってきた。

『もしもし、みや?』
「……」
『どうしたの?風邪でも引いた?」
「…ううん」
『じゃあどうして学校来ないの?』
「……が…い」
『えっ何?』
「…ぎがないの」
『何がないって?』
「かぎ…」
『鍵?』
「ちぃ、どうしよう。あれがなくなったら」
『ちょっ、みや落ち着いて。とりあえず今どこにいるの?』
「△△」
『△△ね。待っててすぐ行くから』
345 :CROSS OVER :2012/01/30(月) 22:46
電話が切られて5分もしないうちに千奈美は現れた。
状況が分からない千奈美に雅は片言ながらも説明する。

「多分…昨日…。鞄ぶちまけた時に…無くしちゃったんだと…思う」
「じゃあうちのせいでもあるじゃん。…ごめん」
「違う。うちがちゃんと管理してないのが悪いんだ」
「そんな事ない!…って言い合っててもしょうがない。探すよ」

2人は格好も気にせず辺りを探し始めた。

そして辺りは暗くなり段々見えにくくなってきたが、一向に見つからない。
雅は千奈美に帰るように促す。

「やだ、みやだってまだ帰らないんでしょ?だったら一緒に探す」
346 :CROSS OVER :2012/01/30(月) 22:46
千奈美が一度言い出したらてこでも動かないのを今までの付き合いでよく知っている。
自分のせいで千奈美にまで迷惑をかけられない。

「鍵は諦める。正直にももに言ってまた合鍵作ってもらう」

雅は泣きそうな顔で、無理矢理千奈美を安心させようと笑顔を作る。
しかし、千奈美は尚も食い下がる。

「何言ってんの!みや、その鍵大切にしてたじゃん。うちの新しい家なんだって。鍵と、鍵に付いてるキーケース、いつも大事そうに持ってるの知ってるよ!」
「でも見つからないんだもん、しょうがないじゃん。これ以上ちぃに迷惑掛けらんないし、うちが諦めればそれで済む事じゃん」
「ばか!簡単に諦めるなんてみやらしくないよ。今日はもう遅いし暗いから明日探そう?」

千奈美の言葉に雅は無言で頷いた。
唯でさえ遅い時間だったが千奈美は心配だからと雅を家まで送ってくれた。
347 :CROSS OVER :2012/01/30(月) 22:47
家に帰ると今の2人の心情には似つかわない明るい声で桃子に一言言われた。

「みやおかえり。ごめんね、今朝急いでて間違えてみやの鍵持って行っちゃった」
「「……」」
「はあ〜?」
「あれ?そういえば2人とも服汚れてるけどどうしたの?」

千奈美は無言で桃子の頬を思いっ切り引っ張った。
桃子はジタバタ動いてようやく解放された。

「いったーい。何すんのいきなり。ちょー痛かったんだけど」
「うるさい。ももが悪いんだから」
「何で?意味分かんないんだけど?ねえ、みやもそう思うでしょ?」

桃子は不意に雅の方に振り向くと、
大事そうにキーケースを抱いて肩を震わせる雅がいた。
348 :CROSS OVER :2012/01/30(月) 22:47
「え?みやどうしたの?」

桃子は慌てて雅の元へ駆け寄ち、千奈美がぽつりと話す。

「みやったら鍵無くしたと思って今までずっと探してたんだから」
「そうなの?」

雅に声を掛けるがもう涙で声が出ないのか、千奈美が代わりに答えてくれた。

「そうだよ。みやったら本当にその鍵、ってかキーケースもだけど大事にしてるんだから」

「ごめん。ももが間違って持って行っちゃったばっかりに」
「……」
「…ほんとごめん」
「もういい。……ちゃんと帰ってきたから」
「でも…」
「うるさい」

そう言って雅は桃子の胸に頭を預け再び肩を震わせる。
その間ずっと桃子は雅の背中を撫でてくれた。

泣き疲れて顔を上げるとずっと背中を撫でてくれていたはずの桃子は眠っていた。

349 :CROSS OVER :2012/01/30(月) 22:48
寝ている桃子をそのままに、雅は今日1日の事を思い出していた。

――ほんとに無くしたと思った。
この鍵にはいっぱいの思い出が詰まってるんだから。
ももがくれた鍵のおかげでうちはここに、この町に残れた。
そしてももとの2人の生活が始まった。
最初はぶりっこで、へらへら笑ってて、いつも何考えてるか分かんなかった。
でも何気にいつもうちの一歩先を考えてて、意外に頼りになる事も分かった。
生活力なんてゼロに近いし、今までどうやって1人で暮らしてきたんだろうって感じで。
今日なんて間違ってうちの鍵を持って行っちゃうくらいのおっちょこちょいなんだけど…。

でも…。
でも、うちは……。
そんなおっちょこちょいで、ずぼらで、ちょっぴり頼りになる…。
そんなももが…。

好きなんだ。

350 :CROSS OVER :2012/01/30(月) 22:49
今日はっきり自覚した。
鍵なんてまた作ればいいじゃん。
キーケースなんてまた同じの買えばいいじゃん。
そう何度自分に言い聞かせたか。
でも納得できなかった。

心が、

ももに貰った鍵と
あのキーケースじゃなきゃだめなんだって。
そう思うといてもたってもいられなかった。

雅は桃子の寝ている顔に自分の顔を重ねた。

時間にして一瞬だったが雅の顔は晴々としていた。
そして桃子の頬に手を伸ばし、

思いっ切り頬を引っ張ってやった。

「いたーい」

桃子は即座に目を覚まし、雅に引っ張られた跡を撫でていた。
351 :CROSS OVER :2012/01/30(月) 22:49
「みやひどい。ってもも寝てた?」
「もうぐっすり」
「あっそうだ。みや今日はほんとにごめんね」
「もういいって言ったじゃん」
「でも…」
「なら今度おいしい物何かおごってよ」
「そんなんでいいの?」
「うん。ただし、ちぃも一緒にね」
「徳さんも?」
「そう、ちぃにもいっぱい迷惑かけちゃったからね」
「分かった」
「そういえばちぃは?」
「徳さんならもうとっくに帰ったよ」
「そっか。お礼言いそびれちゃったな」

ずっと無理な体制のまま座っていた雅はうーんっと伸びをして立ち上がった。
桃子も釣られて立ち上がろうとしていた所に、雅はにやっとした顔で話し出した。
352 :CROSS OVER :2012/01/30(月) 22:50
「そうそう、知ってると思うけど。ちぃってめっちゃ食べるからね」
「……」
「あー楽しみ。どこがいいかな」
「……」
「やっぱ焼肉かな。でもお寿司も捨てがたいし」

雅は顔面蒼白になって行く桃子をしり目に楽しそうに食べ物の名前を連ねていった。
桃子と言えば何やら財布と睨めっこをしてブツブツ言っていたのであった。

353 :ちゃぽ :2012/01/30(月) 22:50
>>341
中々2人の仲が進展しないので書いてる本人もやきもきしながら執筆してます(笑)
とりあえず長い目で見守ってやって下さい。


それにしても確か更新始めた頃はまだ17だったはずのみやびちゃんがもう20になろうとは…。
サボりすぎにもほどがある(笑)
354 :とりあえず名無し :2012/02/05(日) 21:57
二人の日常が、丁寧に綴られてるお話が好きで読ませていただいてます!
ペースゆっくりで全然構いませんよ!
むしろ長く続いてほしいお話です。
355 :名無飼育さん :2012/02/07(火) 00:36
続き楽しみにしてます!
356 :名無飼育さん :2012/03/12(月) 21:46
まだかな
357 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:02
最近桃子の帰りが遅い。
何でも家庭教師のバイトを始めたらしい。

話を聞いてみると桃子の母親の知り合いの子らしく、どうしてもと押し切られたらしい。
今まで赤点までは至らなかったけどあまり勉強が得意でなくこの前の中間テストで散々な結果だったとか。
で、流石に母親も堪忍袋の緒が切れたとかで桃子に家庭教師の話が来たとのことだ。
今コンビニのアルバイトをしているからと断ったけど結局母親の顔を立てるために引き受けていた。
責任感の強い桃子は中途半端な時期にコンビニの方のバイトを辞めるのは申し訳ないと、次の子が見つかるまでバイトの掛け持ちをしていた。

家庭教師の子は雅と同じ学校に通う1年の岡井千聖だと聞いた。
雅が所属していたフットサル部の後輩にもあたる。
運動神経抜群、レギュラーも目前で頑張っているらしい。
しかし勉強の方はからっきしで、雅同様いつも試験前にはヒーヒー言っていたのを覚えている。

これは桃子は苦労するだろうなと思っていたけど桃子からそういった話は上がってこない。
雅から見れはとてつもない問題児に見えるが、桃子からしたら雅に教えるのも千聖に教えるのも似たようなものというのは雅に知る由もなかった。
358 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:02
ある日のことだった。
雅が家に帰ると玄関には桃子の他に違う靴があった。
不審に思いながらも部屋に上がると、リビングから何やら話し声がする。
扉を開けるとそこには岡井千聖がいた。
扉を閉めて中に入るも2人は話に夢中らしく雅が帰ったことに気が付いていない。

雅は仲良さげに話し込んでいる2人にいい気がしない。
むしろ見ていると腹が立ってくる。
いつもなら千聖がいる所は雅の場所なのだから。

雅は思わず待っていた鞄をドスンと下に落とした。
その音にようやく2人は雅の存在に気が付いたようだった。
359 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:02
「あ、おかえりみや」
「・・・ただいま」

桃子はいたって普通だった。
モヤモヤしているのは雅1人だけのようだ。

「こんにちは、お邪魔してます・・・って夏焼先輩?」
「・・・何?」
「何で先輩がももちゃんの部屋に?」
「別に千聖にはどうでもいいじゃん」

千聖に当たるつもりはなかったけど雅自身口調が荒くなってしまった。
ももちゃんなどといかにも親しそうな呼び方が気に入らなかっただけだ。

そんな雅をフォローするがごとく桃子がすぐさま口を挟んできた。
360 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:03
「ちょっみや、そんな言い方ないじゃん。千聖ごめんね、みや今日機嫌悪いみたい」
「んな事ないし」
「そう?」
「大丈夫。先輩の気まぐれには部活で慣れてるからへーき」
「部活?」
「うん、フットサル部」
「ああそうか2人とも同じ部活だったっけ」

雅1人取り残されて桃子と千聖の会話は続く。
雅は居心地が悪かったが2人の様子が気になったため、たいして欲しくもない牛乳を飲もうとキッチンに向かった。
雅がずっと無言のままでいるのを不審に思ったのか、桃子が話しかけてきた。
361 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:03
「みやも一緒に勉強する?そろそろ期末テストでしょ?」
「そうだけど…」
「先輩も一緒にやろ?いつも赤点ギリギリだって言ってたじゃん」
「るっさい!千聖には関係ない。どうせうちはバカだから勉強してもしなくても一緒だし!」

折角桃子に話しかけられて浮上しつつあった雅のテンションも、千聖の何気ない一言にカチンときた。
いつもなら流せていたことが今日は一々神経を逆なでる。
帰ってきたばかりだったが雅はそのまま玄関に逆戻り。
後ろで桃子の声がしたが扉を思いっ切り閉めて出て行った。

362 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:03
――何さ千聖、千聖って。
あそこはももとうちの家なのに。
勝手に他人なんか上げちゃって。
今朝だって「今日はバイトもないから早く帰るからね」って言ってたから急いで帰ったのに。
久々にももとゆっくり話が出来るって、朝からずっと楽しみにしてたのに。
363 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:04
雅は行くあてもなくブラブラしていると千奈美と佐紀が2人で歩いてるのを見つける。
丁度今から佐紀のアパートに行くところだったらしく、雅も御厄介になる事にした。

佐紀のアパートに着いたがいいが雅は体育座りをして顔を伏せたままだった。

ずっと黙ったままの雅に痺れを切らして千奈美が口を開いた。

「何、どうしたのさ。今日は朝からずっとウキウキしてて、飛んで帰ってったと思ったら」
「……」

口を割ろうとしない雅に佐紀がぼそりと呟いた。

「…千聖」

佐紀の一言に雅は思わず顔を上げた。
でもすぐさま元の体制に戻った。
364 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:04
「キャプテン何?ちさとって」
「今ももがバイトしてる子」
「バイト?」
「そう、家庭教師してるんだって。確か千奈美と同じ学校の子とか言ってたかな」
「そのちさとって子が何?」

佐紀は雅の方を盗み見ながら千奈美に説明する。

「「今日はバイトもなく久しぶりに家でゆっくり出来るんだ。最近みやの事構ってあげられなかったから拗ねてるみたいでさ」って朝、もも嬉しそうに話してたんだけど」
「ふーん、だから今日みや即効帰ったんだ。でもだったら何で家帰んないの?もも待ってるんじゃないの?」
「……」
365 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:05
千奈美は素朴な疑問をぶつけるも当然答えは返ってこない。
佐紀も雅を気にしながら再び話し出す。

「まだ話には続きがあってね、昼休みにももの携帯に電話があったんだ。千聖って子から」

雅は顔を上げて佐紀に視線を向けているが、佐紀は気が付かないふりをして話を続けた。

「今度のテストが悪かったらみやびちゃんのグッズ捨てるって親に言われたとか」
「みやびちゃん?」
「何でもBuono!っていうグループのメンバーなんだって」
「ああ、聞いたことある。今人気急上昇中とか何とかってテレビでやってた」
「そうそう、そのみやびちゃん。で、千聖ちゃんは危機感を覚えたらしくももに助けを求めたって訳」
「へー」
「何かももも小学生の頃、お母さんに大事にしてた漫画を捨てられた事があるらしく千聖ちゃんに同情したみたいで、今日家に呼んで勉強見てあげることにしたって」
「何それ。みやとの約束破ってまですること?」
「違う!約束なんかしてない。約束してたらももはちゃんと守ってくれる」
366 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:05
千奈美の言葉に今までだんまりを決め込んでいた雅が声を荒げる。
雅の声にびっくりした千奈美は目を真ん丸にしていた。
雅自身も自分の行動にびっくりしているようだった。

「あっ…ごめん」
「びっくりした。みやったら急に声張るんだもん」
「……」
「ねぇ、やっぱりみやってももの事好きなんじゃないの?」
「千奈美!」

千奈美の突然の行動を制すように佐紀が名前を呼んだ。

「キャプテン。でもどう考えたってヤキモチじゃん。うちにだって分かるよ」
「そうかもしれないけど…」
「もう、キャプテンは黙ってて」

千奈美は雅の方に向き直って真剣にもう一度聞いた。
367 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:05
「みや、ももの事好きなんじゃないの?」
「……」
「違うの?」
「……」
「やっぱりみやは大事な事はうちに言ってくれないんだね…」

千奈美の言葉にはっとなり、千奈美の顔を見ると悲しそうな目をしていた。
雅は決心したのか千奈美の目をまっすぐ見つめた。

「……好き。うちはももの事が好きだよ」
「やっぱり」

千奈美は嬉しそうに雅を見つめていたが、そんな2人に冷静な佐紀はぽつりと呟いた。
368 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:05
「で、千奈美はみやの気持ちを知ってどうしたかった訳?」
「どうって、知りたかっただけ」
「「は〜?」」
「だって、どうせならみやにも幸せになって欲しいじゃん。うち今すごく幸せだもん」

千奈美の一言に脱力しつつも何か引っかかる。

「どういう事?幸せって?」
「もしかして千奈美まだ言ってないの?」
「何?何のこと?」

千奈美と佐紀は何やらこそこそと話し込んでいた。
そして佐紀は千奈美の背中をばしっと叩いた。

何事かと事の成り行きを見守っていた雅に千奈美は申し訳なさそうに話し出した。
369 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:05
「あのね、実はちょっと前からうちら付き合ってるんだ」
「……えーーー!!」
「ごめん、言うの忘れてた」
「何それ。ちぃこそ大事な事言ってくれないんじゃん」
「違うもん。うちはみやと違ってちゃんと言うつもりだったもん」
「じゃあなんで?」
「あの日…」
「あの日?」
「みやが鍵無くした日。その日に言うつもりだったんだ。でもバタバタしてて忘れちゃったんだもん」
「あっ」

千奈美の言葉に雅は恐縮してしまう。
でも忘れていた事には罪悪感があるのか申し訳なさそうにいる千奈美がいた。
沈黙を破るように佐紀が話し出した。
370 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:06
「わたしからも謝るね。ごめんね、みや。ももには話しておいたんだけど、ももからは聞かなかった?」
「聞いてない。だってもも最近バイトの掛け持ちで忙しそうにしてたし」

気まずい空気が流れる。
この空気を一掃させるように千奈美が大声をあげた。

「あーもうこの話はおしまい!違う話にしよ」
「って千奈美が話振ったんでしょ?そうそう、千聖って子の話には続きがあって…。えっと、どこまで話したっけ?」
「千聖を家に呼ぶって」

折角忘れていたのに雅は千聖という名を聞いたとたん一気に不機嫌になった。
そんな雅を見て佐紀は苦笑しながらも続きを話し出す。
371 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:06
「家に呼ぶには呼んだらしいけど、用があるから1時間だけって条件付きみたい」
「え?」
「ももも案外楽しみにしてたんじゃないの?」
「そんな訳ないじゃん…」

雅は口では否定しているが表情は随分柔らかくなった。
ほっとした所でピンポーンと来客を示すインターフォンが鳴った。
佐紀が対応に出るとそこには今まで話していた張本人がいた。

「みや、噂をすればお迎えが来たよ」
「え?え?何で?」

突然の訪問に雅は慌てて逃げようとするも、佐紀にしっかり捕まえられて逃げられない。
そうしているうちに「やっほー」っと能天気な声で桃子が現れた。
372 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:06
「毎度、嗣永商店でーす。お荷物受け取りに来ましたー」
「もも遅いって、いつメールしたと思ってんの?」
「いや〜向かい風が強くって」
「ってそんな茶番劇は要らないから。さっさと連れて帰ってくれる?」
「も〜佐紀ちゃんったらせっかちなんだから」
「はいはい」

佐紀は軽く桃子をあしらって桃子と雅を押し出した。
桃子は扉を閉められる前に佐紀の方に向き直る。

「ごめんね、うちの猫が迷惑かけて」
「いいって事よ。ももの相手をするのを思えば全然たいしたことないし」
「ひっどーい」
「あはは。冗談だって」
「もう佐紀ちゃんたら知らない。じゃあね」
「ほーい、また明日」

雅は口を挟む間もなく締め出された。
373 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:07
帰路の途中雅は気まずくて、ずっと黙って桃子の半歩後ろを付いて行った。
ふいに桃子は雅の方に振り返る。

「ごめんね、約束破っちゃって」
「…別に約束なんてしてないし」
「そうかもしれないけど、今もみや何か怒ってるじゃん」
「怒ってない」

実際桃子が迎えに来てくれて嬉しいのだが、生憎素直じゃない雅はつんつんした態度を取ってしまうのだった。
桃子の方と言えば別段気にした様子もなく淡々と話し出した。
374 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:07
「でも、ももも反省したんだ」
「なんで」
「だってあそこはみやの家でもあるのに、みやの許しもなく勝手に千聖を家に上げちゃった訳だし」
「……」
「だから怒ってんじゃないの?」
「……」
「今回は千聖がどうしてもって言ってたし、ももも何か昔の自分を思い出しちゃって断れなかったんだ」
「…別にそんなん気にしてないし」
「そう?なら佐紀ちゃんの勘違いかな」
「佐紀ちゃん?」
「うん。ほら」
375 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:07
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 fromさきちゃん

 みや家に来てるんだけど
 何かいつもと様子が変だから話を色々聞いてみたら
 帰ったら千聖ちゃんがいて家飛び出しちゃったみたい
 朝、もも言ってたじゃん
 みや嬉しそうだったって
 それなのに折角楽しみに家帰ったら
 自分の場所に他人がいたら誰だって嫌じゃん?
 だから怒ってるっているか拗ねてるみたい
 みやも自分から飛び出しちゃったから
 帰りにくいみたいで迎えにきてあげて?
 っていうか来い!!
 
 早く帰ってくれないとイチャイチャできないんですけど?(笑)

―――――――――――――――――――――――――――――――――
376 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:07
携帯の画面を見せられて雅の顔は一気に赤くなった。

「何か佐紀ちゃんには悪い事しちゃったな。今日は徳さんが家に来るって言ってたのに、お邪魔虫のお世話させちゃって」
「お邪魔虫ってうちの事?」
「もちろん。佐紀ちゃんも言葉は少ないけど今日の事嬉しそうにしてたからね」
「……」

今度2人に何かおいしい物作ってあげようと心に決めた雅であった。

「さて、みやの機嫌も直ったみたいだし帰ろっか。はい」
「何?その手」

桃子はおもむろに雅の前に手を差し出した。
意味が分からず雅はその手をつついてみせた。
377 :CROSS OVER :2012/06/12(火) 23:08
「何すんの?くすぐったいじゃん」
「だって意味分かんないし」
「もー、女の子が手を出したら手を繋ぎたいって意味でしょ」
「は?」
「ほら」
「やだ」
「何で」
「恥ずかしいじゃん」

それから嫌がる雅を説き伏せ、桃子は無理矢理手を繋いで帰った。
口では恥ずかしいなどと言い張る雅だったが嬉しそうに桃子の手を握ったのであった。

378 :ちゃぽ :2012/06/12(火) 23:08
更新です。
毎度の久々すぎて申し訳。。。
ラストは決まっているのにそこに至るまで色々と肉付けし過ぎしちゃって逆に終わらない^^
思い切ってラストを書いちゃおうかと思いつつも地道に進めている次第です(笑)
379 :名無飼育さん :2012/06/18(月) 22:14
おぉ!更新きてたっ!
やっぱり面白いです!!正直もっと読みたい(笑)
380 :CROSS OVER :2012/07/16(月) 23:00
雅は桃子への好意を2人に告げて自覚してからというもの、桃子の行動に一喜一憂してしまう。
ちょっと前までの雅だったら軽くあしらっていた事にも一々反応してしまって心身共に疲れ果ててしまった。
このままでは雅の精神上よろしくないと佐紀に相談することにした。

佐紀のアパートに行くと千奈美も何故かいて、中々話を切り出すことが出来ずにいた。
挙動不審に目もキョロキョロして落ち着きがない雅だったが、覚悟を決めたのかポツリポツリと話し出した。

「今まではももの事何とも思ってなかったから、全然気にならなかったんだけど…」

381 :CROSS OVER :2012/07/16(月) 23:00
――リビングでテレビ見てたら後ろから抱き付いてくるし、
お風呂入ってたら「ももも入る〜」とか言って入ってくるし、
最近は「お布団冷たいから」とか意味分かんないこと言って布団に入ってくるし、
自分は帰りとか結構遅くなるくせにうちが遅くなった時は危ないからって迎えに来てくれたり、
ごはんだって今日のはしょっぱかっただの、甘かっただのぶちぶちうるさいくせにちゃんと残さず食べてくれたり、
いっつもうちのことからっかって遊んでるくせにいざとなったら頼りになるし、
それから…

「ちょっ、みや。ストップストップ」
「なんで?」

雅は折角覚悟を決めて話し出したのに、佐紀に止められて少し不服そうにしている。
傍観を決めていた千奈美と、みやの正面で話を聞いていた佐紀は若干顔が赤くなっていた。
382 :CROSS OVER :2012/07/16(月) 23:01
「あのね、わたしには相談っていうか単なるノロケにしか聞こえない」
「うん、うちなんか背中がかゆくなっちゃったよ」

雅は自分が言った言葉の数々に気付いてないのかきょとんとしている。

「ほんとに2人は付き合ってないの?」
「…付き合ってない。だからこんなに苦労してんじゃん」

佐紀と千奈美は思わず顔を見合わせた。

「何かみやにこれほど悶々とさせるなんてももも罪な女だね」
「うんうん」
「どういう事?」

未だ分かってない顔をしてる雅に佐紀は1つため息を落として話し出した。
383 :CROSS OVER :2012/07/16(月) 23:01
「ふつーはね。後ろから抱きついてきたり、一緒にお風呂入ったり、一緒のお布団で寝たりするのは、付き合ってる恋人同士がするものなの!!」
「そうなの?」
「そーなの!」
「じゃあ2人はいつもこんな事してるの?」

雅の取り留めない質問に2人の顔はぼっと赤く染まった。
雅も聞いた後にしまったと思ったが後の祭りだった。

気まずい空気が3人の間を流れたがさすがの年長者、佐紀が一足早く復活した。

「こほん。まあ、わたしたちの事はさて置き、今はみやの事でしょ?」
「う、うん」
「もうさー、告白しちゃえば?絶対ももだってみやのこと好きだよ」
「うんうん、うちもそう思う」
「で、でも2人はそう言うけど、もし違ったらあの家出てかないといけなくなる。うち今の生活壊したくない」
「そんなん言ってたら何にも始まらないよ」
「……」
384 :CROSS OVER :2012/07/16(月) 23:02
「あのね、みや。ちゃんと好きなら好きって言わないとももに伝わんないよ?ももって周りの変化には聡いけど自分に対する好意には疎いところあるし。
中学の時から何気にモテてたんだよ、本人は全然気付いてなかったけど。先輩には可愛がれ、後輩には頼りになるし、面倒見がいいとかで慕われてたみたい」
「そうそう、一時期ももにそういう相手が表立っていなかったから、ずっと一緒にいるキャプテンが実は彼女なんじゃないかって噂されてたよね」

「ほんと勘弁してって感じだったよ。ももとは小6の時にももが転校してきてからずっと同じクラスで、言わば腐れ縁なのに。
今だって学部こそ違えど大学だって同じで、かれこれ7年の付き合いだし、ってわたしともものことはどうでもいいとして。
確か前にも言ったけど、ももはみやのこと気に入ってると思うよ。
ほら、あの通りずぼらで面倒臭がりでしょ?あのももがこれだけ一緒にいて飽きずに面倒見るのなんて今までわたしか知ってる限りみやしかいないよ!」
「…うん」
「だから自信持って大丈夫だよ」

佐紀の話に千奈美はうんうんと頷いて聞いていたが、ふと疑問を口にした。
385 :CROSS OVER :2012/07/16(月) 23:02

「じゃあなんでキャプテンはそんなももとずっと付き合ってられるの?」
「普段のももは面倒臭いことこの上ないけどやる時はちゃんとやってくれるし、一緒にいてわたしも気を使わないでいいからラクなんだわ」
「ふーん」

段々不機嫌になっていく千奈美に気付き、即座にフォローを入れる佐紀だった。

「もちろん恋愛感情なんてお互い一切ないからね。そうだな…一番しっくりするとしたらももとは戦友ってとこかな?」
「せんゆー?」
「そうそう。深過ぎず浅過ぎず、かといって遠くもなく近くもなく、お互い背中を預けられるっていうか…」
「何か難しくてよく分かんない」
「簡単に言えば千奈美が心配するおような仲じゃあないから安心してって事。分かった?」
「うん」

佐紀と千奈美が話している間雅はずっと黙っていた。
2人の言う通り桃子に告白すべきなのか、雅は悶々と考えを巡らせていた。
そんな雅を見て佐紀は声を掛けた。
386 :CROSS OVER :2012/07/16(月) 23:03
「あのもも相手に悩んでもしょうがないって。大丈夫告白してだめだったらうちに来ればいいよ。まあももんちみたいに広くはないけど」
「だめだめ!キャプテンはうちんだから。いくらみやの頼みと言ってもそれだけは絶対だめだからね!」

すごい剣幕で千奈美はまくし立てた。
佐紀は満更でもないような顔をしつつも、すぐに顔を引き締めた。

「千奈美、わがまま言わないの。みやには他に行くとこないでしょ」
「そーだけど…」
「千奈美?」
「もー分かったよ。もしもだよ?もしもだめだった時だけだからね!絶対だよ!」
「はいはい、でも多分いらぬ心配だと思うよ?」

異常なほどの佐紀の自信に雅のモチベーションは少し浮上した。
自信満々な佐紀の顔と、佐紀の前に立ちふさがって息巻く千奈美を見てると背中を押されたような気がした雅だった。

「ありがと、2人とも。ちょっとだけ勇気が出たよ」
「そう?よかった」
「うち頑張ってみるよ」

そして佐紀のアパートを後にした雅は家まで全力疾走で駆け抜けた。


387 :CROSS OVER :2012/07/16(月) 23:04
その晩、意気込んで帰ってきたはいいが、雅がこれといって行動に移した様子はなかった。
案の定肝心な時にヘタレな雅だった。

床に就く前、雅はこのままではだめだと今後の自分のあり方を考えることにした。

――佐紀ちゃんは大丈夫って言ってくれたけどやっぱり自信がもてないよ…。
こら、雅。こんなんだから駄目なんだ。2人に頑張るって言ったんだし、しっかりしなきゃ!
うん、そうだ。こんなうじうじしてるなんてうちらしくない。当たって砕けろだ。
佐紀ちゃんだって駄目だったらアパートに置いてくれるって言ってたし。
…いや、それはちぃから反感買うから駄目なんだった。ってまた悪い事考えてる。

雅が悶々と考えていると部屋をノックする音がした。
そして「入るよー」と桃子が部屋に入ってきた。

雅は内心ドキドキしていたが、なるべく平静を装って話し出した。
388 :CROSS OVER :2012/07/16(月) 23:04
「どうしたの?ノックするなんて珍しい」
「何それ、いつもノックせずに入ったら怒るくせにおかしくない?」
「確かに。で、どうしたの?」

何やら桃子にしては言いにくそうにもじもじしている。
雅は不思議に思いながらも続きを促した。

「いやなんか最近みやに避けられているような気がして」
「……」
「もも何かしたかなって。怒らせるような事したんだったら謝ろうと思って…」

雅は最近桃子のことを意識しすぎて、知らず知らずのうちにそっけない態度をしていたようだ。

――告白するにしろ、しないにしろももに余計な心配させるようじゃいけないよね…、うん。
ももにうちのこと好きになって貰うんだもん。
しっかりしろ、雅。

ちょっとの沈黙の後、雅は桃子の目を見て答えた。
389 :CROSS OVER :2012/07/16(月) 23:05
「中澤せんせーに怒られてちょっと落ち込んでたんだ。だから別にももの事避けてた訳じゃなくて…、ごめん」
「そっか、それならいいんだ。もも、またみやの事怒らせたのかなって焦っちゃった」
「ごめんね」
「ううん。あー良かった、みやに嫌われてなくて」
「そんな訳ないよ」
「ほんとに?」
「うん」
「ほんとにほんと?」
「うん。むしろももの事…好きなくらい」

雅はチャンスと言わんばかりに思い切って告白してみた。
ドキドキの雅とはうらはらに桃子はさらりと答えた。

「ありがと」
「…それだけ?」
「それだけって?あっ、もももみやの事好きだよ」
「……」

無言で項垂れる雅を見て桃子はきょとんとした顔をしていた。
桃子は自分の悩みが解決してほっとしたのか欠伸をした。

「ほっとしたら眠くなっちゃった。もも寝るね、おやすみ」
「…おやすみ」

桃子は喜々として雅の部屋を後にした。
雅はと言うと項垂れたまま、中々復活出来ずにいた。



390 :ちゃぽ :2012/07/16(月) 23:08
前回よりは更新期間が短くできたw
やっぱり読んでくれている人がいると嬉しいもんで頑張ろうって気になってきます。
とにかく次回の更新がまた半年後とかにならないようにします!!
391 :名無飼育さん :2012/07/17(火) 13:18
やっぱりみやももの話は萌えますね(笑)
これからもずっと読んでいくので更新頑張ってください!
392 :名無飼育さん :2012/07/25(水) 23:14
さっきセンブ読み返してました(笑)
それにしてもよくこんなに書けましたね( ;´Д`)

すごいです!( ´ ▽ ` )ノ
393 :ちゃぽ :2012/08/28(火) 21:55
毎度のお久しぶりです。
ほんとはみやびちゃんの生誕用にと書いていたのですが見事に間に合わずorz
本日に至る訳で…。
とはいっても内容は誕生日とか全然関係なかったりw
とにかく急いで仕上げたので誤字脱字等あっても目をつぶって頂けると嬉しいです
394 :ちゃぽ :2012/08/28(火) 21:56



『策士家茉麻』



395 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 21:57
「みやほど分かりやすい人っていないよね」


これは集合時間には少し早く楽屋でたまたま2人っきりになった時、茉麻から発された一言だった。

最初は何のことを言っているか分からずきょとんとしていた雅だった。
茉麻もそれが分かったのかすぐさま言い直した。

「みやって隠し事出来ないタイプだよね」
「どういう事?」

改めて言い直してくれたにもかかわらず雅は未だ意味が分からず聞き返してしまった。

「うーんとね。つまり、いつの間にももと仲良くなったって事!」
「///」

茉麻はにやにやしながら雅に話した。
当然雅は一瞬にして顔を真っ赤にしてみせた。
396 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 21:57
「な、な、なんで!?」
「最初に言ったでしょ?みやって分かりやすいねって」
「ま、茉麻何言ってんの?そんな訳ないじゃん!!」

雅は狼狽えながらもしっかり否定した。

「そう?ももがテレビに出てたり、1ショット撮ってる時とかよく見てるみたいだけど?」
「そんなんふつーだって!!キャプテンとかちぃとかまぁとか皆の時だって見てんじゃん」
「まあ、そこまでだったらまぁも何も思わないって」

茉麻は含み笑いをしながらも勿体付けるように一度言葉を止めた。

「…何?」
「ただ見てるだけなら皆と変わらないんだけど。ももを見てる時のみやの乙女チックな表情、すんごく可愛

いんだよね。で、ももを見た後は決まってはっとしたような顔して周りをきょろきょろしたりして、あぁ恋

してるな〜って」

雅は一段と顔を赤くして口をぱくぱくとしていた。
口では否定していてもそんな態度では茉麻でなくても一発で分かってしまう。
そんな雅の様子に茉麻は慌てて口を開いた。
397 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 21:57
「ごめん、ごめん。別にみやがももの事好きなのをどうこう言うつもりはなくて、ちょっとからかってみよ

うかなって」
「からかうとか!!」
「だってさぁ、そりゃあまぁ達プライベートではそんなに付き合いとかある方じゃないけど、10年一緒に

やってきた仲間、って言うかもうほとんど家族も同然じゃん?それなのに2人とも全然話してくれる気配と

かないし、何て言うかうちらとしてはさみしい訳よ」
「それは…その…」

「みやが恥ずかしがり屋なのは分かるよ。でもまぁとしてはちゃんとおめでとーって言いたいのよ。多分み

んなだって同じこと言うと思うよ?」
「…うん」
「ってかまぁが勝手に決めつけちゃってるけど、実際の所みや達って付き合ってるんでしょ?」

雅は言おうか言わまいか悩んだが思い切って口を開いた。
398 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 21:58
「うん。その…ももと付き合ってる」

茉麻は雅の言葉に嬉しそうに顔を綻ばせた。

「そっか、おめでとう!!」
「…ありがと」

雅は照れながらもしっかりと茉麻の方に顔を向けた。

「長年の片想いがようやく実ったんだね」
「……!!」

雅は茉麻のその一言に再びびっくりした顔を見せた。

「何で知ってるの?って顔してるね。だからみやって分かりやすいよねって」

茉麻はまた同じ言葉を口に出しつつも呆れたような物言いで話し出した。

「昔からみやってももにだけ態度が違ってたのって覚えてる?って言うか自覚あった?」
「…ない」
「だよね。まあ昔はどっちかって言うと恋心ってより対抗意識の方が強かったみたいだけど。それがいつ頃

からか、そうだな…。Buono!が始まった頃からじゃない?みやのももに対する態度が変わったのは」

茉麻の言葉に雅は心を覗かれたようでドキッとした。
399 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 21:58

◇◇◇

そう、まぁの言う通りももの事が好きだと自覚したのはBuono!が始まってからだ。
昔から同じ年上のキャプテンには甘えられたけど、何故かももにはライバル心が強く負けてたまるか!!と

、1人勝手に息巻いてた。
ところがBuono!が結成されると聞いていざ蓋を開けてみれば何と自分がセンター。
ホントのじぶんではBメロの一番いい所を貰えたり、目に見えないプレッシャーで押しつぶされそうになっ

た。

誰かに話を聞いてほしい。
緊張で冷たくなった手を温めてほしい。
でもライバルであるももには頼れない。
勿論年下の愛理にだって頼る訳にはいかない。

1人孤独に緊張に耐えていると
「ほんとみやって緊張しいなんだから」
と冗談交じりに話しながらも、ももは雅の冷たくなった手を温めてくれた。
400 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 21:58
そしてももは「1人で頑張らなくていいんだよ?ももだって、愛理だって、みやのそばにいるよ」
と気を張っていた雅に安心させるように微笑みかけてくれた。

もものおかげで緊張はほぐれてきたけどまだ心配の種が残っていた。
勿論苦手なMCだ。
自分はアドリブが利かないし、どちらかと言えば口べたな方だ。
コメントに困って助けてもらうことも一度や二度ではない。
そんな時もももは嫌な顔1つ見せずフォローしてくれた。
自分ばかりももに対抗意識を持ってて恥ずかしい。
今まで見向きもしなかったけど、これからはももの事、ちゃんと見て知っていこうと思った。

ももの事見てたらもものいい所いっぱい見つかった。
なんで今まで気付かなかったのだろうと不思議に思うくらい。
でもその行動は雅に思ってもいない心境の変化を生んでしまった。
401 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 21:58
もものこといいなと一度思ってしまったら、その気持ちはどんどん加速をつけて。
雅自身、制御出来ない所まで行ってしまった。
図々しくも雅の心の隙間にすーっと入り込んで、あり得ない感情を気付かせた。

そう。
ももが好きだと。

だけどその感情と自分の心との折り合いを付けるのに時間を費やす羽目になった。
今まで勝手にライバルだと思って対抗意識を燃やしていた相手にいきなり態度を変えるなんて無理だし、何

より恥ずかしい。

雅のそんな憶病な所が5年近くの片想いを成立させてしまった。
とは言ってもいわゆる思春期と呼べる時期には、ももの事が好きなんて気の迷いだと自分の気持ちを否定し

てつんつんした態度を取ってしまう事もあった。

でもようやく自分の心と折り合いが付いて、そしてももが自分と同じ気持ちだと知った時には天にも登るよ

うな気持ちだった。
どうやって付き合うことになったかは恥ずかしくて話したくないけど、とにかく幸せだった。
402 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 21:59

403 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 21:59
雅が物思いにふけっていると意識の遠くから茉麻が自分を呼ぶ声がした。

「おーい、みや聞いてる?みやってば!」

茉麻の呼びかけに雅の意識は現実に戻ってきた。

「えっ何?」
「だからみんなにも2人が付き合ってるって報告してあげてってば!!」
「へっ?何でそんな話になってんの?」
「は〜?みやってば今までのまぁの話聞いてなかったの?」
「うん、ごめん」

雅は悪びれもせず堂々と謝った。
茉麻はため息を吐きながらももう1度話した。

「ようはさっきも言ったけど同じグループの一員として、仲間として、出来れば本人達の口から言ってほし

いなって。多分察してるメンバーもいると思うけどやっぱり言ってもらえないのってさみしいからさ〜、っ

てな訳でどう?」
「うー。でもやっぱり恥ずかしい。ももにだって恥ずかしいから黙っててって念押ししてるくらいだし」
「う〜ん、そっか」
404 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:00
茉麻はその一言を最後に黙り込んでしまった。
雅は悪かったかなって少し後悔したけどやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。

ちぃに知られたら何て言われるか…、絶対みや趣味悪い、考え直しなよって言われるに決まってる。
まぁには悪いけどうちの決心は変わらないから。

「ねえ、みや」
「何?絶対言わないったら言わないからね!!」
「――もういいよ、その話は。そうじゃなくて」
「だったら何?」

「あのね、実はまぁも皆に言ってない事があるんだ」
「まぁも?何それ?」

雅は自分が責められる立場じゃなくなるといつもの強気な態度に変わっていた。
405 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:00
「実は…熊井ちゃんと…」
「熊井ちゃんが何?」
「まぁ、熊井ちゃんと付き合ってるんだ」
「えー!!まじで?全然気付かなかったんだけど。ってかまぁこそ人の事言えないじゃん」
「実はそうだったんだよね」
「ありえないし!!今まで黙ってるなんて水臭いって」

雅は自分で口に出してはっとした。
そして茉麻は再びにやっと顔を崩して雅を見ていた。

「えっと、そのまぁ?」
「これ以上言わなくてもいいよね。つまりはそういう事なんだよ」
「……」
「みやもまあの気持ちわかったでしょ?」
「……」
「今自分で言ったもんね、水臭いって。みや、勿論言うよね?」

雅は自分の失言に気付いたがすでに後の祭りだった。
上手に茉麻の手の上で転がされてしまったようだ。
そう、まるでいつも雅を陥れる桃子のように。
406 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:00
「どーしても言わなきゃだめ?」
「だーめ!」
「あー、まぁに騙されるなんて…」
「まぁだってこれぐらいちょちょいのちょいだって」

「ちなみに一応聞くけど…熊井ちゃんと付き合ってるって」
「ああその話?当然嘘に決まってるじゃん」
「は――――」

雅は口数が少なくなってまたうじうじ悩みだした。

「もーみや女に二言はない!ここは諦めてスパッと言っちゃいな!」
「分かった、分かった!言えばいいんでしょ?言ってやら―」
「そうこなくっちゃ。じゃあみんな呼んでくるね」

茉麻はその一言を残し、そそくさと楽屋を後にした。
407 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:00
茉麻は5分もすればメンバーを引き連れて戻って来た。
もう1人の当事者である桃子は前の仕事が押しているとかでこの場にはいなかった。
はたしてそれは幸か不幸か雅は分からなかったが覚悟を決めて話すことにした。

「あのね。今までみんなに黙ってたんだけど、その…付き合ってる人がいて…」

「えーまじで誰?誰?相手は?」
「そーだったの?気付かなかったよ」
「「……」」

皆の反応は各々で半分は興味深々、半分はショックを受けてるようだった。
そんな様子も雅にはいっぱいいっぱいでまともに視界にすら入っていなかった。
しかし一度話し出したら勢いのまま行ってやれと言わんばかりに雅は話を進めた。
408 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:01
「実は…ももと付き合ってるんだ」

「「「「……え――!!」」」」

一瞬、場が静まり返ったがそれも束の間、楽屋中に大音声が響き渡った。

千奈美は案の定「ありえなーい!!みやどっか頭でも打ったんじゃないの?」と失礼な事を言ってきた。
熊井ちゃんはやはり人の斜め上を行く人で「ああやっぱり?前から2人仲良かったもんね」と、皆と違う反

応をみせた。
佐紀は雅が思っていた以上ににショックを受けているようで「なっちゃんがももと…」と一言発した後は喋

らなくなってフリーズしてしまった。
梨沙子は佐紀同様にショックを受けていたようだったが「そっかみやの想いがようやく届いたんだね。おめ

でとう」とひと粒の涙を拭って笑顔で祝福してくれた。
茉麻は少し複雑そうな顔をしていたが概ね満足そうにしていた。
409 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:01
皆に報告し終わった頃タイミングよく桃子が現れた。
「おはよー」と場違いなほど明るい声で楽屋に入ってきた。
桃子が入ってくると同時に千奈美は早速声を掛けた。

「ももー、みやと付き合ってるんだって?」

桃子は千奈美の一言にとっさに雅の方を見てきたがすでに皆に報告した後なので、顔を赤く俯きながらも頷

いてみせた。
俯いていた雅の隣にはいつの間にか移動していた桃子は手を取り力任せに引っ張ってきた。
突然の行動に雅はそのまま桃子の腕の中へすっぽりと収まった。
雅はじたばたと桃子の腕から逃れようともがくが、案外力の強い桃子に敵うはずがなく不本意ながらもその

まま抱かれていた。

「そーだよ。みやはもものだから」

桃子は言い終わると同時に雅の口唇を塞いだ。
楽屋は先ほど以上に大きな歓声に包まれていた。
410 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:02
「みやはもものなんだからみんなそこんとこよろしく!!」

桃子は牽制のためか再度念を押した。
雅は今度こそ桃子から逃れようともがくがそれ以上の力で桃子に抱きしめられた。
そして再び口唇を重ね今度は濃厚なキスをしてきた。

桃子の容赦ない舌技に雅は立ってるのもままならないほど力が抜け、桃子にしがみ付く事しか出来なかった


雅がもう駄目だと桃子に身を委ねようと抵抗をやめようとした時。

「ももやりすぎ!!」

と、桃子の頭をどこから持ってきたのかハリセンで思いっ切り叩く茉麻の姿があった。
411 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:02
「ここにはまだ未成年だっているんだから、そんなのは2人っきりの時にしなさい」

流石ベリーズの母と言うべきか皆が呆気に取られている中、いち早く復活して桃子を正してくれた。

「ちぇっ。いいじゃん、減るもんでもないし。でもこれで大見得きってみやといちゃいちゃ出来るもんね」

桃子の言葉に雅は一抹の不安を残しつつもこれでベリーズ公認だと思うと恥ずかしさよりも嬉しさが勝って

いた。
皆に黙っている事で少し後ろめたい気持ちもあったけど、それも解消されて心も軽くなった。
ようやくフリーズから溶けた佐紀はというとショックは隠しきれてないが、やけくそと言わんばかりにキャ

プテン命令を発令した。

「楽屋内だろうが仕事場でのいちゃいちゃは禁止!!」

その言葉に桃子は「そんなー」と肩を落とした。
雅はほっとしたのも束の間桃子に手を引かれ楽屋を飛び出した。
412 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:02
どこへ連れて行かれるかと思えば自動販売機横の空いたスペースにたどり着いた。
ずっと前ばかり見て歩いていた桃子はようやくここで雅の方に向き直った。

「佐紀ちゃんはああ言ってたけどこれで堂々とみやを独占できるよ」
「うちはこんな大事にするつもりはなかったのに」
「そんなん言ったってばらしたのはみやの方じゃん!」
「そ、それはそうだけど…」
「でもももとしては結果オーライだよ。これからはこそこそ隠れないでみんなにみやはもものだって言える

もん」
「大袈裟なんだって」

桃子のストレートな言葉に照れる雅だったが内心は嬉しかったりする。

「だってみやは知らないんだよ。みやがどれだけハローでもてるかなんて」

桃子は不服そうにぶつぶつ言っている姿に雅は笑いが込み上げてきた。
そんな雅の態度に余計に桃子の両頬はこれでもないくらい膨らんでいた。
雅は頑張って笑いを抑えると、ちょっとだけ桃子に本心をみせることにした。
413 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:02
「うちがどれだけもてるかなんて知らない。うちはももに…。ももにだけ、もてたら十分だし」

最後は声が小さくなってしまったけど十分桃子には伝わったようだ。
桃子の表情は一気に明るくなって、気持ち悪いくらい体をくねくねとしてきた。

「そっか。みやびちゃんはそんなにももちの事が好きかー。うんうん、ももちもみやの事大好きだからね」
「うざっ」
「もーみやびちゃんったら照れちゃって」

折角勇気を振り絞って本心をみせたのに桃子がこれでは雅は面白くない。

「あーもー。ももうるさーい!!」

先ほどとは逆に今度は雅が桃子の口唇を塞いだ。
時間にして一瞬だったけど、それでも桃子はようやく静かになった。
しかし雅は気付いてなかった。
今のキスで桃子にスイッチが入ってしまった事を。
414 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:03
桃子は両手を雅の頬に寄せゆっくりと顔を近づけた。
雅は急な行動に抵抗しようとしたが桃子の真剣な眼差しに大人しく瞼を閉じてしまった。
そこから桃子の行動は速かった。

雅が大人しいのを良いことに桃子はすかさず雅の口を器用にこじ開けた。
呼吸をも奪われるような激しさに桃子の本気さを体感し、逃れようともがくもそれすら許されない。

桃子は雅の腔内を自身のそれで堪能し、雅は呼吸をも奪われるような激しい物だった。
呼吸を整えるため桃子の肩を押して離れようとするも、桃子はそれすら許してくれない。

雅の意識が朦朧としてきた頃、不意に桃子からの拘束が解けた。

「こらーもも!!仕事場でいちゃいちゃするの禁止って言ったでしょ!!」

そこには茉麻にでも借りたのか先ほどのハリセンを持つ佐紀の姿があった。
415 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:03
「いったいなぁ。もー佐紀ちゃんたら本気でやったでしょ?」

後頭部を痛そうにさすりながら桃子は佐紀に文句を言っていた。

「中々戻って来ないから迎えに来てみれば案の定人目も気にせずいちゃいちゃしてるし…。みやもちゃんと

抵抗する!!ももの成すがままじゃん」
「無理無理。みやはももにかかれば抵抗なんてないようなもんだし」
「ってか離れる。いつまでもくっ付いてないの!」
「…はーい」

佐紀の言葉に桃子はしぶしぶ離れようとするがそれを止めるように雅は桃子にしがみ付いたままだった。

「もーもー」
「いやーももは離れようとしてるんだけどこの通りみやが離してくれなくて」

桃子は困った口調で話してはいるが顔はにやにやとして視線は雅の顔一点に注がれていた。
雅の不自然な行動に佐紀は心配そうに声を掛けた。
416 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:03
「みや?どうかした?」
「……」

雅は返事どころではない。
実際桃子の助けなしでは立っていることもままならない状態なのだ。
雅の身動きが利かないのをいいことに桃子は再び雅を抱きしめた。

「だからそこ離れる!!」

佐紀は無理矢理2人を引き離すと雅の身体は重力にしたがって床へ沈んでいった。

「ほらー佐紀ちゃんが無理に離すからみや、腰抜かしちゃったじゃん」
「え、みや大丈夫?」
「だ、だい…じょぶ」
「ほんとに?」
「う…ん」

雅は呼吸が整ってきたのかようやく話せるようになった。
心配そうに雅を見つめる佐紀を尻目に雅は桃子の方へ視線を向けた。
桃子はそんな2人の成り行きを面白そうに見ていた。
417 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:04
「ももっ。もうこんなとこでやめてよ」
「あれー?そんな事言って最初にキスしてきたのはみやじゃなかったっけ?」
「それは…」
「だからももあれで火が付いちゃって」
「ちょっ」

桃子と雅の2人は口論を始めたが傍から見れば痴話喧嘩にしか見えないのであった。
雅が絶句したのをいい事に桃子は話を切り上げることにした。

「みやったらいつまで座り込んでるの?ほら」

桃子は雅の手を引き、立たせた。
でもまだ雅の足には力が入らずふらついていた。
そんな様子の雅をみて佐紀は心配そうに顔を歪めた。
418 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:04
「ごめんみや。あたしが無理矢理押した時足どうかしちゃった?」
「ちがっ、キャプテンのせいじゃないから」
「じゃあどうしたの?」

桃子は2人の会話に笑いが止まらなくなってしまった。

「もー、ももも何とか言ってよ」
「いいの?言っても」
「えっ?」
「実はみやったらね、ももの…」
「あ゛ーー」

雅は桃子が何を言おうとしてるのか分かって阻止しようと懸命に声をかぶせる。
桃子は雅の静止をもろともせず続けた。

「もー、みやは黙ってて。でね、みやったらもものキスでとろとろになっちゃって」
「わー、わー」

それでも邪魔をする雅に桃子は奥の手を行使して黙らせることに成功した。
419 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:05
「それでね、足が立たないくらい気持ちよくなっちゃったんだ。だから佐紀ちゃんは全然悪くないんだよ」

佐紀は桃子の言葉に一気に真っ赤になり口をぱくぱくとさせ言葉を失った。
雅は恥ずかしくて顔を覆ってしまった。
桃子はここぞと言わんばかりに佐紀に追い打ちをかけた。

「何?もしかして想像しちゃった?」
「ばっ」
「もー佐紀ちゃんったらエッチー!うふふ」

桃子の言葉に雅と佐紀は気まずそうにお互いを気にしているようだ。
1人笑顔でたたずむ桃子はこの場に不似合と言わんばかりに異質な空気を醸し出していた。
2人とも自分の事でいっぱいいっぱいなため、笑顔すぎる笑顔で事の成り行きを見守っている桃子に誰も不

信感を抱くものはいなかった。


後日、大々的に桃子と雅の仲を皆に公表した桃子は今までの我慢が嘘のように公共の場だろうが後輩の前だ

ろうが堂々といちゃいちゃしてみせた。
それと同時に佐紀はハリセンを持って桃子の後ろを追い掛け回すのが日課となってしまった。


END
420 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:06
おまけ

ル ’ー’リ<すーちゃんありがとね
从o゚ー゚从<あんなんで良かった?
ル ’ー’リ<うんうんもう十分だよ!!
从o゚ー゚从<じゃあ、そのー。約束の…あれは?
ル ’ー’リ<勿論用意してるよ。はい、これ
从o゚ー゚从<うわー、ありがとう。これ欲しかったんだよね

茉麻の手には怪盗キッドのレアグッズが…。
421 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:06
これは雅が皆に桃子との交際を公表することになった1週間前の話だ。

冬のハローのコンサートで短くした髪を披露してからと言うもの雅の人気は鰻上りだった。
特に最近は色気も増して無駄にフェロモンを振りまいている雅のせいで何人もの犠牲者が出てしまった。
本人は無意識なのだから尚更たちが悪く、もっぱら桃子の頭痛の種だった。

その上雅は特定の恋人がいると公言してないため皆が雅の隣を狙っていた。
既に桃子が雅の隣を獲得しているにも関わらずだ。
そんな生活がずっと続くと桃子の堪忍袋も諸が切れる寸前となった。

桃子は付き合っていることを皆に言おうと何度お願いしても雅は「恥ずかしいからやだ」と取り合ってくれ

ない。
雅の煮え切らない態度に桃子はとうとう強行手段に出ることにした。

最初は渋る茉麻に中々手に入らないという幻のグッズをチラつかせ無理矢理こちら側になってもらった。
この後どうなったかは説明する必要はないだろう。
雅はまんまと茉麻にはめられたと思っているが、すべては桃子の計画通りだった。
422 :策士家茉麻 :2012/08/28(火) 22:06


『策士家茉麻?』


ほんとのおしまい
423 :ちゃぽ :2012/08/28(火) 22:10
遅くなったけどみやびちゃんおめでとー!!
自分の年を間違えて書いて発売中止にしちゃうような、ちょっぴりまぬけなみやびちゃんも好きだよ←

次回は通常更新に戻ります。
来月には必ずまた来ますノシ
424 :名無し :2012/08/29(水) 01:20
更新待ってましたー!
いい話だw
恥ずかしがり屋さんみやびちゃん可愛ゆ////
ももちのデレデレっぷりも萌えです//∇//

20代も楽しんでほしいですね。
みやびちゃんおめでとう!!
425 :名無飼育さん :2012/09/30(日) 14:19
本編の続きも楽しみにしてます!
426 :ちゃぽ :2012/09/30(日) 21:34
前回のやつ、急いで更新したせいで改行が変なとこでなってたorz
やっぱり勢いに任せてやるとろくな事がないなぁ。

ってことで本編に戻ります。
427 :CROSS OVER :2012/09/30(日) 21:35
翌朝、雅は桃子にまたいらぬ心配をさせまいと家では務めて普通な態度をしていた。
桃子の目がない学校では誰が見ても明らかに落ち込んでいる雅だった。
不審に思った千奈美に問い詰められるも「なんでもない」の一言で頑なに口を閉ざした。

しかし、その異常な行動も2・3日もすればいつもの雅に戻っていた。
そして話があるからと千奈美と共に佐紀のアパートを訪ねた。

「佐紀ちゃんごめんね、何度も訪ねて」
「それは別にいいんだけど。どうしたの?最近のみや、おかしいって千奈美が言ってたんだけど」
「おかしいって。…まあおかしかったかもしんないかな」
「そうだよ。話しかけてもぼーっとしてたり、ブツブツと独り言言ってたりしてかなり不気味だった」
「ちょっと考えることがあってね…」

雅はそこで一呼吸おいて桃子に告白した旨を話した。

「実はあの日、ももに告白したんだ」
「「やっぱり」」

佐紀と千奈美は顔を見合わせて頷いていた。
428 :CROSS OVER :2012/09/30(日) 21:35
「何、やっぱりって」
「や、だって告白するって言った次の日から目に見えて落ち込んでたし…」
「でもももの方はいつもと全然変わった様子がなかったからあんまり確信持てなくて」
「…そっか、ももは普通だったか…」

「「??」」
「やっぱり伝わってなかったってね。あはは」

雅の不可解な言動に佐紀と千奈美の2人は再び顔を見合わせて不思議そうにしていた。

「みや、伝わってなかったってどういう事?」
「意味分かんないって!」

2人は矢継ぎ早に言葉を発してきた。
雅はどう説明しようかと暫く、目を泳がせていたがすーっと2人を見据え口を開いた。
429 :CROSS OVER :2012/09/30(日) 21:36
「さっきも言ったけどももに告白したんだ」
「え?でもももは普通だったって、おかしくない?」
「おかしくなくなくない?」
「ちょっと千奈美は黙ってて!」

千奈美は佐紀に叱られてしゅんと大人しくなった。
いつもならそれに付き合う雅だったが今は話の続きを始めた。

「ももはうちが告白した時も、その次の日もいたってふつー。ってかいつも通りだった」
「何それ?ももにちゃんと言ったんじゃないの?」
「言うには言ったんだけど伝わってなかった」
「??もうちょっとその時の状況を詳しく」

「だから……かくかくしかじか」

雅の話を黙って聞いていると佐紀の口からため息が出てきた。
呆れたように雅に話し出した。

「みや、それじゃあ伝わんないよ。言ったでしょ?ももは自分に対する好意には疎いって」
「そんなん言うけどだったらどうしたら良かったの?今のうちにはこれが精いっぱいの告白だったんだよ」

そして再びため息をつく。
430 :CROSS OVER :2012/09/30(日) 21:36
「だからね「キスの1つでもぶちゅーってかましちゃえばいいんだよ!」

佐紀の言葉尻を奪って千奈美が続けた。
千奈美の言葉に雅は一瞬で顔を赤くした。

「何言ってんの?千奈美。ほら見なよ、キスって言葉一つでこんなに真っ赤になってるみやにそんなこと出来るわけないでしょ?」
「そんなことないって。確かみやって中学の時付き合ってた人いたじゃん」
「そうだけど経験済みって訳でもないでしょ?」
「いーや、絶対キスぐらい済ませてるって。だってそん時の彼女いかにも経験豊富ですって顔してたもん」

2人の会話を聞いて雅は尚更顔がゆでだこのようになった。
雅としては今2人が話している内容は思い出したくないものだった。

431 :CROSS OVER :2012/09/30(日) 21:37
実際雅は中学の頃に一応彼女と呼ぶべき人はいたが、自分からは手も握れず
「みやがこんなにへたれとは思わなかった。何かわたしばっかりみやの事好きみたいでばかみたい」
と、結局付き合って半年もしないうちに別れた。

千奈美には恥ずかしくて振られたなんて言わず、強がって「あの子とは合わなかったから別れた」と
伝えたことを今更後悔した。

手も満足に握れなかったのだ。
キスなんてもってのほかだ。
432 :CROSS OVER :2012/09/30(日) 21:37
雅が黙っているものだから2人の会話はどんどんエスカレートしていった。

「いーやキスぐらいとっくに済ませてるって」
「だからそんなの分からないでしょ?」
「だったら本人に聞いてみればいいじゃん」

一気に2人の視線が雅に向いて思わず後ずさんだ。
そんな雅に2人は1歩2歩とじりじりと歩み寄って行った。

「で、そこんとこどうなの?」
「当然まだだよね!?」
「……」

「「みや!!」」

「…佐紀ちゃんまでちぃと一緒になって大人げないよ!」
「わたしはまだ19ですからね。大人じゃないもん!!」

千奈美に触発されたのか、珍しく佐紀は声を荒げていた。
433 :CROSS OVER :2012/09/30(日) 21:38
「さあさあ、覚悟を決めて言ってみよー!!」
「……」

雅は2人の迫力に押されて渋々口を開いた。

「うー。…確かにあの子とは何にもなかった」
「ほら言った通りでしょ?」
「ちょっと待って。今あの子とはって」
「あっ」

「「みや、どういう事!!」」
「何でもない…」
「何でもなくないって。いま絶対「あの子とは」って言ったじゃん」

「今…うちがキスしたかどうかなんて関係ないじゃん…」
「「みや!!」」

雅の言っている方が明らかに正論なはずなのに当然口論で勝てる雅ではなかった。
いつもは常識人なはずの佐紀も興味には勝てなかったようだ。
蛇に睨まれた蛙の様に雅は大人しくなった。
434 :CROSS OVER :2012/09/30(日) 21:38
「で、どうなの?」
「……」
「キスしたことあるの?」
「……」
「みや?」
「……うん」

「「!!!」」

「だ、誰と?」
「誰だっていーじゃん!!」
「よくないよ。そこが1番肝心なんだから」

「…そこまで言わないといけないの?」
「うちらみやにそーだんされてるんだから、そこんとこしっかり知っておかなきゃ。ね、キャプテン」
「う、うん」

千奈美に話を振られ頷いた佐紀だったが大分頭が冷えたのか口調がいつも通りに戻って来た。
ここまで聞いていいものかと戸惑いを見せているようだった。

千奈美の勢いは止まらずそのままの流れで質問を続けた。
435 :CROSS OVER :2012/09/30(日) 21:38
「こほん。で、誰と?」
「……も…」
「へ?誰だって?」
「だから……ももと……」

「えーーーーー」

千奈美の声が部屋中に木霊した。

雅はとうとう言ってしまったと言わんばかりに再び顔を赤くした。
恥ずかしさのあまり顔を下に向けていた雅だったが2人の反応が気になって上目使いながらも様子を窺った。

「佐紀ちゃん?ちぃ?」

千奈美は案の定口を大きく開いたままフリーズしていた。
ところが佐紀は千奈美とは違って驚くには驚いた様子だったが、比較的平常なままだった。
流石年上と言うべきか、それともこの手の話には慣れているのか動揺が見られなかった。

そのまま佐紀と視線が合ったが、雅は気まずそうに逸らした。
436 :CROSS OVER :2012/09/30(日) 21:39
「やっぱり。みやの態度からするとももしかありえないだろうなって」
「……」
「みや、もう一度聞くけどももとは付き合ってないんだよね?」
「…うん」
「じゃあなんで2人はキスしたの?」
「……」

黙る雅に佐紀の鋭い視線が刺さる。
そしてさっきのおちゃらけた空気とは違って重い空気の中
佐紀に「みや?」と、普段より低い声で名前を呼ばれた。

「何と言うか…つい」
「ももは何て?」
「も…もは知らないはず。その…寝てたから」

「…そこまでするくらいなら、なんではっきりももに分かるように告白しなかったの?」
「したじゃん。ただ、ももが告白と受け取ってくれなかっただけで…」
「相手が分からなかったら分かってくれるまでちゃんと伝えなきゃ」

「だって…」
「だってじゃないでしょ?みや分かってる?卒業までもう半年もないんだよ?」
「分かってるよ。だから最近将来の事とか悩んでたじゃん」
「そうじゃないよ!卒業したらみやは大阪行くんでしょ?お父さんと約束したんじゃないの?」
437 :CROSS OVER :2012/09/30(日) 21:39
佐紀の言葉に雅ははっとした。

あのアパートに、ももと一緒に暮らせるのは卒業するまで。
卒業後はおとーさんと約束した、大阪の家に行くって、
今のももとの生活が幸せ過ぎて忘れていた。

「そう…だった。うちは…、卒業後は大阪に、おとーさん達の所に行かなきゃ」
「ももは鈍感なんだって前にも言ったでしょ?いつまでへたれみやびちゃんでいる気?」
「っ!へたれ?」
「いつも千奈美が言ってるよ。みやは外見に似合わず内心は小心者だって。へたれみやび、略してへたみやって」

思わず雅は千奈美に目を向けた。
スリーズが解けていた千奈美は珍しく空気を読んで大人しくしていた。
いきなり自分の話題が出てびっくりしていたようだった。

そんな千奈美に一言言ってやろうと雅は口を開けかけたが、佐紀に向きなおした。

「そうだよ、うちはいつだってへたれだよ。昔から全然変わってない」
「……」
「欲しいのに欲しいって言えなくて、…我慢して後になって後悔して。いっつもその繰り返し」
「……」
438 :CROSS OVER :2012/09/30(日) 21:40
「もものことだって最初は全然好きじゃなかった。ぶりっこで、へらへら笑ってて、いつも何考えてるか分かんなくて、うちのこといっつもからかってきて、ほんとうざかった。佐紀ちゃんの友達だからって我慢してたけど、ももとは絶対分かり合えないだろうなって」
「違う!ももは!」
「分かってる、ももがそんな人じゃないって。でもこっちに残ったのはちぃやみんなと一緒に卒業したかったからで、ももとは単なる同居人だった。
だけど一緒に暮らしてくうちに案外面倒見が良くて頼りになるって分かって、ももの違う一面が色々見えてきた。
…ううん、ほんとは前からももがただのぶりっ子だけじゃないって分かってたけど、認めたくなかったのかもしれない。
だからあのももに対してこんな気持ちを抱くようになるなんて自分で信じられなかった」
「……」

「笑いたかったら笑ってもいいよ。…自分でも初めてなんだ、こんなに人を好きになったの」
「みや…」
「はっきり言って自分の中でももに対する気持ちを持て余してる。今までぞんざいに扱っていたのにいきなり好きですって言っても説得力ないって、ね?だからももが告白と取ってくれなくて正直ほっとしてる自分もいる。
でも前の彼女の時みたいにまともに気持ちを伝えられないまま終わってしまうのもいや…」
439 :CROSS OVER :2012/09/30(日) 21:40
「だったら尚更後悔しないためにも今頑張らなきゃ。ももを自分の物にするってくらい」
「わかってる。わかってるよ?でもね、告白した後にもう一度考えたんだ。今の生活も壊したくないんだって。
朝起きると寝癖でぼさぼさな頭のくせに前髪だけはしっかり整ってたり、料理関係はてんでだめなくせに卵料理だけはやけに上手かったり、そんなありきたりな日常がすごく幸せなんだ。
だからうちがもう一度告白して今の関係が崩れるのもいやなんだ」
「でも…」
「そう、このままじゃ前に進めないって事も分かってる。でももう少し、もうちょっとだけ今の生活を続けたいんだって」
「……みやがそこまで言うんならもう何にも言わない」
「うん、ありがと佐紀ちゃん」

440 :CROSS OVER :2012/09/30(日) 21:40
雅はその後夕飯をごちそうになったが味なんて全然分からなかった。
隣で食べている千奈美は涙目になりながら飲み込んでいた。
早々に食べ終わると佐紀と千奈美に礼を言い帰ることにした。

雅は帰路の途中もずっと考えを巡らせていた。

佐紀ちゃんにはああ言ったけど結局うちは逃げてるんだ。
またももに告白して、もしだめだったらって思うと怖くて堪らない。
駄目になるよりは今のままの生活を続けて行く方がまだいい。
はぁ、これだからへたれみやびちゃんって呼ばれるんだよね。

これからの生活に不安を抱きつつも雅は桃子の待つアパートへと急いだ。

441 :ちゃぽ :2012/09/30(日) 21:46
推しに似て有言不実行にならなくて済んだw
無事に公言通り9月中に更新できました。

次回はちょっと趣向を変えて佐紀ちゃん視点の話を更新しようかと思います。
ではまた来月ノシ
442 :名無し飼育さん :2012/09/30(日) 23:05
みやびちゃん頑張れ( ´Д`)ってつい思っちゃいました笑
早く続きが読みたいです!
ももちは有言不実行で有名ですからねw
来月も楽しみにしてます!必ず来てください!
443 :名無飼育さん :2012/10/10(水) 09:23
ももが掴めない。
みーやんがんばれー!
444 :名無飼育さん :2012/10/11(木) 21:45
うー!みやびちゃん可愛すぎる!
二人の今後に幸あれ!
445 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:52
朝一番佐紀は桃子を呼び出した。

「こっちきて」

桃子の手を引いて人気のいないところに連れて行く。

「ちょ佐紀ちゃん今から一限入ってるって」
「いいから」

ぎゃーぎゃーうるさい桃子を無理矢理体育館裏に連れて行った。

「何、佐紀ちゃんこんな所に連れてきてもしや告白?いやーんももち佐紀ちゃんの事好きだけど徳さんのこと敵に回したくないから」
「ちがーう!!」
「え?違うの?体育館裏って言ったら告白が定番でしょ?あっ、そっかもう一つあったリンチ?きゃー佐紀ちゃんこわーい」
「……」
446 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:53
佐紀は無言で一睨みした。
流石に冗談を言っていいような状況ではないと分かった桃子は大人しくなった。

「こほん、冗談はさておきどうしたの?佐紀ちゃんが講義サボる様な真似までして」
「分からない?」
「うん」

「昨日みやがうちに来た…」
「らしいね、ごめんねみやがそのままごちそうになっちゃったみたいで」
「そんな話がしたいんじゃない」
「だったらなあに?」
「ほんとに分からない?」
「??」

「みやがある人に告白したらしい」
「へー、そうなんだ気付かなかったな」

佐紀は桃子の様子をうかがうも臆面も出ない桃子の表情にため息がこぼれる。
447 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:53
「でも相手が告白したのに気付いてくれなかったって」
「鈍感なんだねその人」
「……」
「どうしたの?黙り込んじゃって」

「ももっていつからそうなっちゃったの?」
「そうなるって?こんなにかわいくって事?勿論生まれつきだよ」
「…もも」

佐紀は静かな怒りが芽生えてきた。

「ご、ごめんって冗談だよ!」
「こっちは真面目な話をしてるんだからちょっと真剣に聞いてくれる?」

背後から黒いオーラが出始めたのを桃子が察知したのか先ほどのおちゃらけた空気を一掃して真剣に話を聞き出した。
448 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:53
「もう一回言うけどみやが告白したらしい」
「うん」
「何か心当たりない?」
「別にないけど」

「もも」
「何?佐紀ちゃん」
「わたしが気付いてないと思ってる?」
「…何の事?」

桃子の徹底したスタンスに佐紀は心が痛んだがこのままでは先に進めないと話を切り出した。
449 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:54
「もも、みやのこと好きでしょ?」
「何言ってんの。佐紀ちゃんたら冗談が上手いんだから」
「みやからの告白もこうやって上手くかわしたんでしょ?」
「だから佐紀ちゃんの言ってることが分かんないんだけど」

桃子は未だ表情を崩さずいつもの嗣永桃子を演じていたように感じた。

「もも」

佐紀は桃子と無言で視線を合わせた。
そして暫く無言が続いた。
450 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:54


451 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:54
それから数分経った頃だろうか、珍しく桃子の方が折れて先に視線を外した。

「はー」

桃子は1つため息をつくと再び佐紀に視線を合わせ重い口を開いた。

「いつから気付いてた?」
「…ちょっと前くらい」
「そっか。バレない自信あったんだけどな」

「ももがみやと暮らし始めて少ししてくらいからかな、何かももの笑顔が増えた気がして」
「笑顔?」
「そう、決まってみやの話をするとき、みやを見てるとき、愛おしそうに目を細めて、何ていうか幸せそうな顔してるのを見て…ね」

「ももそんな顔してる?」
「うん。千奈美やみやは気付いてないけど、ふとした瞬間そんな顔してるのを見たことがある」

桃子は一瞬で顔を崩してしまったという表情をして見せた。
452 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:55
「あちゃー。そっか、やっぱり」
「やっぱりって?」
「気付かれるとしたら佐紀ちゃんだろうなって」

「だったら「何でみやの気持ちに応えてあげないのって言いたいんでしょ?」
「分かってるんならなんで自分の気持ちを偽るの?ももはあんまり中に入り込んでほしくないのとか分かってたから今まで知らないふりしてたけど、昨日のみやの姿見てたら黙ってられないよ」
「うん、みやには悪いことしたって分かってる。でも気付かなかった事にした方がこれからみやの卒業まで上手くやっていける」

「ねえ、もも。いつまでみやの保護者でいるつもり?」
「みやが卒業して…ここを出てくまで」
「卒業したらみやは大阪行っちゃうんだよ」
「うん」
「うんって。…今はももの事好きでも大阪行っちゃったら、離れちゃったらみやは別の人好きになっちゃうかもしれないんだよ」
「うん」
「それでもいいの?」
「それもしょうがないかなって」
453 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:55
「…もものみやに対する気持ちってそんなもんだったの?レポート期限迫っててやばいって言いながらみやの為にテスト勉強付き合ったり、みやが遅くなった時はいそいそと迎えに行ったり、それも全部みやが好きだからじゃないの?」
「……」
「ねえ違う?」
「……」
「もも?」
「…違わない」
「ならその気持ちみやに言ってあげなよ。この数日無理して平気なふりして…ももだって気付いてるでしょ?」
「…それでも無理なんだもん」
「何で!」
「だって!…これ」
454 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:55
桃子は携帯を取り出して画面を佐紀に見せた。
そこには雅の父親とのメールのやり取りが綴られていた。
世間話からはじまって最後は決まって雅の様子はどうか、元気でやっているかなどと子供を心配する親の姿が垣間見れた。

「ももはみやがここにいる間は誰がなんと言おうと保護者なんだよ。ちゃんと無事にパパさんとママさんの所にみやを届けるのがももの役目。これだけパパさんに信用されているのに裏切れないよ…」

言葉ははっきりしてるが桃子の顔は辛そうにしていた。

「確かにみやはまだ高校生だけどいつまでも子供じゃない。何にも言わないのはみやがかわいそうだよ」
「それでもももは、パパさんを裏切れない。…みやが大阪に引っ越さないと行けないって時正直ももはみやと離れたくなかった。だからみやが残りたいって気持ちを利用してもものアパートに引き取りますって、それでパパさんとみやを引き離した」
「……」
「時々思うんだ。ほんとにこれで良かったのかなって」
455 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:56
桃子は更に顔を歪ませ泣きそうになるのを堪えてるようだった。
そんな桃子の様子に佐紀は胸が痛んだ

「…何で、何でそんなに悩んでるとき相談してくれなかったの!?」
「しようとしたよ、何度も。でもこんな自分を佐紀ちゃんに軽蔑されるのが怖かった」

桃子の告白を聞いて佐紀は頬に涙がこぼれた。
しかしすぐ涙を指で払い桃子に向き直った。

「佐紀ちゃん?」
「はっきり言ってショックだよ。ももにその程度としか思われてなかったって」
「…ごめん」
「例え相談してくれてもわたしじゃあ答えが見つからないかもしれない、けど一緒に悩みを共有することは出来る。悲しみや、喜びも少しは分かってあげられたかもしれない。けど今みたいに何も言ってくれなかくて、後から知る方が何倍も悲しい。ももは違うかもしれないけど、わたしはももの事親友だと思ってる」
「も、ももだって佐紀ちゃんの事大事だし、十分心許してるつもりだよ」
「だったらなんで!?」
「これはももが蒔いた種だし、ももが気持ちを押し殺せばいいだけだから」

桃子は佐紀を安心させるように無理矢理笑顔を作ってみせた。
456 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:56
「……それが駄目だって言ってんの」

佐紀は思いっ切り桃子を抱きしめ胸に顔を埋めさせた。

「ちょ、佐紀ちゃん。佐紀ちゃんには徳さんがいるでしょ?」
「うるさい!!黙って」

初めはじたばたとしていた桃子も次第に大人しくなり、いつしか嗚咽が聞こえるようになった。
佐紀は何も言わずずっと背中をさすり、自分も一緒になって頬を濡らした。
お互いの嗚咽が聞こえなくなってもしばらくずっと抱き合ったままでいた。

457 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:56
「…ありがとう。もう大丈夫」

桃子は離れようと体を動かすが佐紀は未だ抱擁を解こうとしないでいた。

「ももって些細などうでもいいことはこっちが聞かなくてもうるさいくらいしゃべってくるくせに、重要なことは全部自分で抱え込もうとするんだから」
「……」
「こらっ、黙るな。だから今度からちゃんと相談して。分かった?」
「……うん」

桃子の返事を聞いて佐紀は抱擁を解いた。
その後恥ずかしそうに顔を合わしたが2人の間にはいつもの空気が流れていた。
458 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:56
「ももってほんとバカだよね」
「バカってそんなはっきり言わなくても」
「だってほんとバカ…」
「うん、ごめんね」

「もう一回聞くけど、ももはみやに気持ち言うつもりないんだよね?」
「うん」
「はー、ももは変な所で頭が固いんだから」
「ごめん」

「分かった。でもわたしはみやの応援するからね。わたしはみやと…ももにも幸せになって貰いたいから」
「…うん」
「それでももが我慢できなくなっちゃうくらいみやに悩殺させちゃうんだから」
「あはは。それは困っちゃうなぁ」

泣きはらして目も真っ赤な2人はいつの間にか笑顔になっていた。
459 :CROSS OVER :2012/11/13(火) 13:57
「あーもうこんな顔じゃ講義どころじゃないよ。わたし絶対顔ぱんぱんになってる」
「もうさぼっちゃおうか?」
「えー、でもしょうがないかぁ」

「うふふ。初めてじゃない?佐紀ちゃんと授業さぼるの」
「そうかも、ももはよく自主休校とか言って代返頼んだりしてさぼってるみたいだけどね」
「あ、ばれてる」
「ばれてるじゃないよ。もものやりそうな事くらい分かるって」
「…ももって結構佐紀ちゃんに愛されてるんだね」
「そーだよ、今頃知った?」

佐紀はその言葉を最後に後ろを向いて歩きだした。
そして5mほど歩いた先で急に後ろから衝撃がきた。

「うふふ。ももも佐紀ちゃんの事大好きだよ」

その衝撃の正体は言うまでもなく桃子だった。
照れくさい佐紀は後ろの桃子をそのまま引きずりながら再び進み出した。

460 :ちゃぽ :2012/11/13(火) 13:57
>>442-444
レスありがとうございます!!
なのにしっかりと有言不実行な自分←申し訳m(_ _)m

今回の更新でちょこっとだけ桃子の裏側が覗けたかな
やっぱりみやびちゃんには頑張って貰わないとw
461 :名無飼育さん :2012/11/14(水) 14:11
きてたあああああ
ももsideいいですね!
2人の今後はどうなるのかな。
462 :名無し教育さん :2012/11/14(水) 21:52
まさかの両思いだったのかー!
ももも佐紀ちゃんも良い子ですねw
二人は結ばれるのかな…
463 :名無飼育さん :2013/01/02(水) 08:17
続きがー読みたいよー>_<
みやもも最高!
464 :名無飼育さん :2013/01/28(月) 18:59
来ない…(T Д T)
465 :CROSS OVER :2013/01/31(木) 13:42
あれから事あるごとに佐紀ちゃんはももと一緒の時間を作ろうとしているように思う。
当分今のままの生活でいたいって言ったはずなのに。
この前も…。


「みーやー!キャプテンが今日講義早く終わるからテスト勉強見てくれるって」
「マジで!?」
「うん。だから放課後○○のファミレス集合だって」
「でもうちいたら2人の邪魔じゃない?」
「そんな事ないって。みやいたらうちばっか集中砲火しなくて済むもん。…まあ実際の所邪魔だけど」
「ってやっぱ邪魔なんか―い!」

「だってキャプテンが絶対連れて来いってうるさいんだもん」
「ふーん。でも2人に悪いから要点だけ聞いたらすぐ帰るよ」

ちぃの話の感じじゃあ佐紀ちゃん1人だけかと思って行ったらそこには…。
466 :CROSS OVER :2013/01/31(木) 13:44
「みや?」
「も、もも!?」
「何でみやがここにいるの?」
「それはこっちのセリフだよ。ももがいるって聞いてないし」

雅は即座に佐紀の方に振り向いてみせた。
佐紀はと言えば優雅にコーヒーを飲んでいた。
一緒に驚いていた桃子はと言うと何故か佐紀の方を見て苦笑いをしていた。

結局何故そこに桃子がいるのか分からないまま、いつも通り佐紀が千奈美を、桃子が雅の勉強を見た。
当然終わるはずもなくお互い家に帰っての持ち越しとなった。

その日から佐紀の突然の呼び出しの数が増えてきた。
そしてそこには当然の如くと言わんばかりに桃子も存在し、雅も驚くことがなくなった。
でもそんな日が何度も続くとさすがの雅でも佐紀の態度に不信感が募り、桃子がバイトに行っている時を狙って佐紀に会いに行くことにした。
467 :CROSS OVER :2013/01/31(木) 13:45
いくらお互い好きな人がいるとはいえ、気軽に個室に2人っきりになる訳にはいかず丁度空いている大学の食堂で話をすることにした。

「佐紀ちゃんならなんでうちがここに来たか分かると思うんだけど」
「うん」
「うち言ったよね?今のままでいたいって」
「うん、聞いたね」
「だったらなんでももとくっ付けようとするの!?」

「あはは、分かった?」
「分かった?じゃないよ!!佐紀ちゃんち行った後から急に呼び出しとか増えて。で、そこに行けば必ずももがいる。流石にうちでも分かるっつーの!」
「ちょっ、みや。声が大きいって。しー」
「ももみたいに子供扱いしないでよ」
「ごめんごめん。ついもものがうつっちゃって」

「……」
「ごめんって。後でここのケーキセット奢るから機嫌直して?」
「…別にいらない。それより何で?」
「理由は言えない」
「何で!!」
468 :CROSS OVER :2013/01/31(木) 13:45
「ごめん。…でもみやにとっては今がチャンスなんだよ」
「はぁ?意味分かんないし」
「意味分からなくても今頑張ることがみやの為であり、ももの為なんだって!」
「…ももの為?」
「そこは気にしなくていいから取りあえず、みやはももをオトすことだけを考えればいいの」
「だーかーらーうち、何回も言ったじゃん。今の生活に満足してるって」
「それじゃあ駄目なんだって!」

「ってかいきなりこんな事言うなんてももと何かあったの?」
「何もないよ?」
「ううん。佐紀ちゃん何か知ってるでしょ!?ももに何かあったの?」
「みやが心配するようなことは何もないって」
「…もしかしてももに好きな人が、ううん恋人が出来たとか?」
「それはないよ。ももは今の所フリーだよ」

「じゃあ何?うちに不安を煽ってどうしたいの?」
「ごめん。わたしの言葉が足らなかった。みやを不安にさせるつもりはなかったんだけど」
「……」
「さっきも言ったけど理由は言えないんだけど、このままみやが何もしないで今まで通りの生活をしてるようじゃ駄目」
「だから何で?」
469 :CROSS OVER :2013/01/31(木) 13:45
「みやはももと付き合いたいって思わないの?」
「……」
「今のまま単なる同居人のままで満足なの?」
「…だからうちは今のままの生活がしたいって何度も言ってんじゃん」
「ほんとに?」
「うん」

「わたしはね、千奈美と付き合って幸せだよ?」
「……」
「最初はみやと一緒で、もし告白して駄目だったら今の関係が崩れるのが怖い。友達にも戻れなくなるのが怖いって。ずっと千奈美に対する思いを押し込めてた」
「……」
「そんな中千奈美の方から言ってくれたんだ、好きだって」
「……」
470 :CROSS OVER :2013/01/31(木) 13:46
「すごく嬉しかった。それから付き合いだして、でも付き合いだしたからといって最初は2人して照れちゃって友達だった頃と別段変わったこともなかったけど。でも何故か違うんだよね」
「…違う?」
「そう。どこか遊びに行ったり、ご飯食べに行ったり、してる事は付き合う前と変わってないんだけど、その一つ一つに幸せを感じて。ただ千奈美が笑ってるのを近くで見てるだけで嬉しい。
自分の事見てくれてるだけで胸がドキドキして落ち着かない。かと言って千奈美が側にいなくて、誰かと話してるのを見るのだけでもやもやっとしてきたり、逆に付き合う前よりも心配事は増えたけどそれ以上にやっぱり幸せなんだよね」
「……」
「だから恋に臆病にならないで欲しい。みやには今の生活が幸せかもしれないけど、思いが通じ合うのはそれ以上に幸せなんだって知ってもらいたい」
「…うちだってそりゃあ幸せになりたいよ。でもちぃみたいに自信も勇気もない」

佐紀はぱちんと雅の頬を両手で叩きそのまま視線を合わす。
471 :CROSS OVER :2013/01/31(木) 13:46
「こら!!夏焼雅。そんなんでどうする?後悔したくないって言ったのは嘘なの?ほんとに今のままでいいの?」
「……」
「ももにキスするぐらい好きなんじゃないの!?」
「///」
「へたれみやび返上しよう?」
「…うん」
「よし!それじゃあみやの魅力でももをどうやってオトすか考えないとね」
「って展開早くない!?」
「大丈夫大丈夫。みやの気が変わらないうちにさっさと決めちゃおう?」

佐紀はさっきまでのシリアスな空気がなかったかのように1人話を進めて行った。

「ももはあんなだからみやの方がアプローチしてかないと」
「無理無理!アプローチなんてうちしたことないし」
「したことなくてもするの!ももをものにするんでしょ?」
「…はぃ」

あまりの佐紀の剣幕に雅はYesの一言しか言葉にすることが出来なかった。
472 :CROSS OVER :2013/01/31(木) 13:47
「最近のみやは妙にセクシーっていうか色気が出てきたからそこを攻めようと思うの」
「なっ」
「だからそのお色気でももを悩殺しちゃえ」
「ちょっ。佐紀ちゃん!!」
「…と、まあ冗談はさておき」
「はー。もーうちで遊ばないでよ」

「まあでも半分くらいは本気なんだけど」
「……」
「一緒に暮らしてるんだし、タイミングはいっぱいあるって」
「……」
「お風呂上りに悩殺するとか、告白されたとか言ってももにヤキモチ妬かしたりとか。あとは、そうだな…」
「佐紀ちゃんストップストップ!!」
「何?折角いいアイディアが浮かんでるとこなのに」

佐紀の説得により桃子をものにすると決心したはいいが、未だへたれ気質な雅はあまりに早い展開に付いて行けずにいた。
取りあえず今後の自分のあり方について整理するためにも一度家に帰ることにした。
佐紀は折角乗ってきたところを止められて若干不服そうにしていたが大人しく引いてくれた。

473 :CROSS OVER :2013/01/31(木) 13:47
そして雅はベットに寝転び考えを巡らせる事にした。

ももをものにするって言ったってどうすればいいんだろう。
佐紀ちゃんはうちの魅力で…の、悩殺すればいいなんて言ってたけどそんなの出来るわけないって。
そもそもうちにそんな人を悩殺するだけの魅力なんてないし…。

はー。結局振り出しに戻っちゃうじゃん。
ってかうちもそうだったけど人を好きになるのなんて理屈じゃないって。
だってうちがあのももを好きになったくらいだもん、いつどうなるかなんて分かるはずないじゃん。

幸せか…。
幸せってなんだろうな。

うちは今のももとの生活が幸せだと思う。
でも佐紀ちゃんは思いが届いて、付き合うようになって、幸せだと言う。
うちの言う幸せはほんとの幸せじゃない?

確かに佐紀ちゃんと千奈美の顔を見てると幸せそうな顔をしてるのが分かる。
そしたらうちの感じてる幸せとどう違うんだろう?

…分からない。

474 :CROSS OVER :2013/01/31(木) 13:47
雅は再びもんもんとし始め、ふと視線を机にずらすとそこには佐紀、千奈美、雅、そして桃子の4人が写った写真があった。
写真を手に取り、そこに写る桃子を愛しそうに撫でた。
そして隣に写る佐紀に視線を移した。


そう言えば最近2人の雰囲気が変わった気がする。
2人を包む空気感が穏やかになったと言うか、より大人びてきた感じ?

佐紀ちゃんはそれほど変わってないようだけど、時々ももを気遣うように見てたりする。
ももも特別変わったようには見えないけど、最近2人が話してる姿をよく目にするようになった。
前も話すには話してたんだけど今まで以上に2人がって言うかももの方が佐紀ちゃんに色々話しているみたい。
何か2人の仲がぐっと近づいたのかな。

あと、うちの自意識過剰でなければももが優しくなった。
今までだって十分優しかったけど…。
丁度うちがももに告白した後くらいからより優しくなった。

そんなももの態度に実はうちの告白分かってたんじゃないかって。
だから同情でうちの事優しくしてるんじゃないかって。
疑いたくないけど勘ぐってしまう自分が嫌だ。
475 :CROSS OVER :2013/01/31(木) 13:48
ああ、ほんとに嫌だ自分のこの性格。
気になるんなら思い切って聞いてみればいい。
ちょっと前の自分ならそれが出来たはずだ。

この頃弱気な自分が支配してる。
ももを好きと自覚してからだ、こんなに憶病になったのは。

前までの自分が恨めしい。
気軽にももに肩をくんだり、抱きついたり、一緒に並んで寝たり。

意識するなっていう方が無理だ。
ももが右隣にいるだけでうちの右半身が熱を持つ。

今まで通りの関係でいたいって言ったのは自分なのに。
それなのにうちの身体は否が応でもももの存在に反応してしまう。

ももが笑ってくれたらうちも嬉しい。
ももが泣いていたらうちも悲しい。

ももが笑いかけてくれるだけでうちの心は温かくなる。
ももがそばにいてくれるだけでうちの心は満たされる。

ももがいなきゃ、うちは息が出来ない。
ずっとももと一緒にいたい。
今の関係を壊したい。

今の関係を壊して新しい関係を作り上げたい。

…うん、幸せってきっとそう言うことなんだよね。
うちの感じてる幸せは一方的なもの。
佐紀ちゃんの言う幸せはちぃと2人で作り上げたもの。
共有して分かち合っている分幸せも2倍、ううん何倍にも大きいものだってことなんだよね。

そんな幸せうちも感じたい。
ももと分かち合いたい。
…うちも幸せになる努力をしてみようかな。

雅はようやく吹っ切れたのか先ほどとは変わってすっきりした顔になっていた。


476 :ちゃぽ :2013/01/31(木) 13:56
お久しぶりですw
相変わらずの亀さん更新です

>>461-464
お待たせしました^^

次回は既に過ぎ去ってしまいましたがクリスマスら辺の話を…
まあこの話に限って言えば時期外れなのは周知な感じなので気にせずやっちゃいますw
ではノシ
477 :名無飼育さん :2013/01/31(木) 18:07
きたぁぁぁぁ!!!!待ってました!!
やっと雅ちゃんに決心がついたな
二人が幸せになれますように…

クリスマスとかいいですねぇ
めっちゃ楽しみです!!
ずっと待ってます♪
478 :名無飼育さん :2013/02/28(木) 09:58
キタ━━━━川´・_・リル*’ー’リ从*´∇`)从o゚ー゚从ノノl∂_∂'ル川*^∇^)|州*‘ -‘リ━━━━!!!!
479 :名無飼育さん :2013/03/30(土) 19:32
そろそろくるのかなぁ
続きが気になってしょうがない
480 :赤い糸 :2013/04/04(木) 12:45
運命の赤い糸か…
そんなの信じてなかったのにな

あたしはじっと小指を見つめる
すると幼い頃の記憶が脳裏をかすめた

『みーやんだいすきだよ』

あいつの言葉が頭に鳴り響いた
久しぶりにアルバムでも見よっかな

「くすっ。懐かしいな」

『ももおおきくなったらみーやんのおよめさんになる』
『ちがうよ。みやがおよめさんになるんだよ』
『だめ。もものほうがかわいいからももがおよめさん!!』
『やだー。みやがおよめさんになるー』
『わかったよ。ももがおむこさんになるからなかないで』
『な、ないてなんかないもん』
『じゃあももがおよめさんでもいい?』
『だめー。ぜったいみやがなるの』
『もーしょうがないなぁ。ももこおねえさんがゆずってあげる』
『うん。ももありがとう』

そんな約束をした直後ももはお父さんの仕事の都合で引っ越してしまった
あの当時は悲しくて悲しくてお母さんを困らせるくらい毎日泣いてた
時々ももから手紙が来てたけど勝手に自分は見捨てられたんだと返事は返さなかった

いつも間にか手紙も来なくなって、連絡も途絶えた
返事を出さなかったあたしが悪いんだけど
ももは自分の事なんかどうでもよくなったんだと幼いながらショックを隠しきれなかった
まあ次第にもものいない生活にも慣れていったけどね

あたしは見ていたアルバムを閉じて横になることにした

481 :赤い糸 :2013/04/04(木) 12:45
◆◆

久しぶりにあの時の夢を見た
なんでだろう。昨日寝る前にアルバム見たからかな

もものおよめさんになる、か
やっぱり運命の赤い糸ってあるのかも

小指をいじりながらも視線はあいつの指へ
その小指にはあたしとお揃いのピンキーリングが付けてあったりする

そう言えば幼い頃の約束は守れなかったなぁ
あれだけもものお嫁さんになれるって喜んだのに
不思議と受け入れてる自分がいる

何せ成長したあいつは昔の面影は多少残ってたけど、もうこんなんだし
昔は結構なんでも譲ってくれてたけどお嫁さんってポジションは譲れないらしい
約束したじゃんって言うと、今更手紙を返さなかった事を結構根に持ってるみたいで恨みがましくネチ

ネチ言ってくる
あたしも今更お嫁さんてがらでもないし、別にどっちでもいいのだけど

そう、どっちがお嫁さんだろうが
あたし達が2人でいることには変わりないんだから

「もも、朝だよ。起きてご飯にしよ」

482 :ちゃぽ :2013/04/04(木) 12:50
続きを待ってる方には申し訳ないんですが、リハビリに短編をw
次回こそは本編を進めます!!
ではどろん
483 :sage :2013/04/04(木) 23:46
ほっこり。お話の雰囲気に癒されました!本編も待っております。
484 :名無飼育さん :2013/04/05(金) 12:56
やっぱりみやももは運命の赤い糸で結ばれてるんですね♪
本編キターーーーー!!!

めっちゃ楽しみにしてます!!
485 :名無飼育さん :2013/06/02(日) 19:20
更新こない…
486 :みなみ :2013/06/04(火) 18:34
更新待ってます
487 :名無飼育さん :2014/07/06(日) 22:26
あぁ
488 :sage :2016/10/09(日) 13:12
待ってます

新着レスの表示


掲示板に戻る 全部 次100 最新50

現在のスレッドサイズ:278242 byte

名前:

read.cgi ver5.27 + 0.02 (04/08/03)