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Dear my ・・・ 〜 Dark × Dark 〜 U

1 :片霧 カイト :2008/10/12(日) 17:40
水版で書いていた片霧カイトです。
今回からこちらに引っ越しして続きを書きたいと思います。
引き続きアンリアルなファンタジー。
主役は 从 ´ヮ`)<れいなたい!
それでは、またよろしくお願いいたします。

前作「Dear my Princess」
ttp://mseek.xrea.jp/flower/1073627455.html
「Dear my Princess U」
ttp://mseek.xrea.jp/sky/1094798822.html

前スレ「Dear my ・・・ 〜 Dark × Dark 〜」
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/water/1131681541/
84 :第15話 :2009/09/01(火) 02:21
  ヒュンッ!!

目の前を黒い物体が通り過ぎていった。
あわてて飛んできた方向を見定める。
あたしの張った障壁によって切り取られた青い空が目に映った。
しまった……これは横から来る攻撃は防げるけど、上は守れない。
対策を考えていると、不意にダークブレイカーを握っていた腕を衝撃が襲った。

「うわっ!!」

障壁を解除しそうになり、あわてて持ち直す。
今度は……下から!?
そうか……空中戦は上からだけじゃない、全方位から攻撃される危険があるんだ……。

「ふふっ」

障壁越しに飯田さんの手が動くのが見えた。
その飯田さんの合図に合わせ、今まで完全にランダムに飛び交っていた黒球たちが
ぴったりと動きを調え、上下から攻撃してくる。

「くっ……!」

ダークブレイカーのおかげで、闇にはある程度の耐性がある。
だから一つ一つのダメージはそんなに大したことはないんだけど、それもこれだけの
数となると無視できない威力になってくる。

かといってどうすることもできない。
魔剣で使うことのできる魔法は、基本的には攻撃魔法、もしくは一部の補助魔法だけだ。
防御にも使うことのできる攻撃魔法は使えても、純粋な防御魔法は使うことはできない。
さらに、もともと闇魔法は破壊に特化した魔法。防御に使える攻撃魔法なんて、
このカラミティウォールと、その上級魔法のデモンズストームくらい。そのどちらも
自分の上と下はがら空きだ。
85 :第15話 :2009/09/01(火) 02:22
「うわっ!!」

連続した攻撃により集中力が途切れた。
かろうじてあたしを守っていた闇の障壁が消失する。

「ダメよ、そのくらいで集中力を途切れさせちゃ。油断は死しか招かないわよ」

今まで上下からだけだった魔玉が全方位に展開される。
そしてあたし目がけていっせいに放たれた。
まずい、この量は耐えきれない! 障壁……ダメだ、間に合わ……!

「れいなっ!!」

でもその集中砲火の中に人影が割って入ってきた。
炸裂の寸前に、あたしの身体がその人影に抱きしめられる。

「あぐっ!!」
「ポンちゃん!?」

あたしをかばったポンちゃんの背中で闇の魔玉が爆ぜた。
でもポンちゃんはそれにも動じず、高速で呪文の詠唱を続ける。
背中に回されたポンちゃんの手から、温かい魔力を感じる。

「エンジェリック・スフィア!!」

あふれ出した魔力の障壁が、あたしたちを包み込むように広がっていく。
闇の塊はその障壁に遮られ、次々と崩壊していった。
86 :第15話 :2009/09/01(火) 02:23
「ふぅん、対魔高等結界魔法か……。それを一瞬で作り上げるなんて、なかなかやるねぇ」

嵐のように飛び交っていた闇の光球がピタッと止む。

「このくらいやらなければ、飯田さんの魔法は防ぎきれません」
「まぁ、確かに。でもね、残念だけど、それでも防ぎきれないわよ」

すっと飯田さんが手を水平に持ち上げる。
するとさっきと同じように、辺りに無数の闇の魔玉ができあがった。
たださっきと違ったのは、その魔玉がかなり大きく、さらにその形を変えていくこと。
薄く鋭く研ぎ澄まされた刃に。
あれは……闇魔法でも随一の切断力をもつ無差別広域斬滅魔法……!

「ブラインド・ブレイド!!」

巨大な黒い刃が解き放たれる。

「くっ!!」

刃がポンちゃんの張ったシールドにぶつかるたびに、甲高い音を立てて弾かれていく。
でもそのたびに内部に衝撃が伝わる。
このままじゃ、そのうちにこのシールドも破壊されてしまう!

でも……先ほどの魔法に比べて、この魔法は大振りだ。
一つ一つの威力は比べものにならないほど高いが、その分数は少なくなっている。
これだったら……行けるかも。
ダークブレイカーをしっかりと握り直し、あたしは背中の翼を羽ばたかせた。
87 :第15話 :2009/09/01(火) 02:23
「れいなっ!?」

ポンちゃんの張ったシールドを飛び出し、まっすぐ飯田さんに向かっていく。
風の翼の操作にもかなり慣れた。
向かってくる闇の刃を紙一重でかわす。
さらに、ダークブレイカーを通して伝わってくる闇の気配に神経を集中させる。
背後や下から襲いかかってくる刃もかわし、飯田さんの元へと詰め寄る。

「へぇ、田中もなかなかやるわね」
「はぁっ!!」

ダークブレイカーを振り下ろす。
止められると思っていた斬撃は、しかし以外にもすんなりと飯田さんに食い込んだ。

「えっ!?」

そのままダークブレイカーを振り抜く。
しかし手応えは全くない。
両断したはずの飯田さんは、そのまま溶けるように消えていく。
これは、まさか……!

「でも残念だったわね。それはカオリが作り出した幻影よ」

やっぱり!!
背後から聞こえる飯田さんの声で確信したときには、すでにあたしの身体の下に
闇色の魔法陣が輝いていた。

「デビル・インフェルノ!」
「うわぁぁああっ!!」

魔法陣から溢れた闇が暴発し、あたしの身体を吹き飛ばした。
やっぱり飯田さんは、想像していたよりもずっと強い。
でも絶対に……れいなたちは……。



88 :第15話 :2009/09/01(火) 02:24

◇     ◇     ◇


時は流れる。

「ハァ…ハァ……」

日はすでに落ちかけていて、島の周囲にかかっている透明のヴェールを通し、
辺りを橙に染め上げている。

「うぅ……」

手は焼け爛れ、ダークブレイカーを握るのも辛い。

「強い……」

ポンちゃんも絵里もかなり消耗している。
なのに……

「どうしたの? もう終わりかしら?」

あたしたちの前に立ちはだかる飯田さんは息一つ切らしていない。
もっとも、飯田さんは魂だけの存在だから、肉体的疲労はないんだろうけど、もし身体が
あったとしても、この結果は変わらないかもしれない。

「もしかして相手がカオリだからって遠慮しているのかしら? それとも……三人揃って
この程度なの?」

圧縮された闇が放たれる。
すぐさまあたしも闇を放って応戦したが、あたしが放った闇は飯田さんの闇に
飲み込まれてしまった。

「うわっ!!」
「れーなっ!!」

闇に当たって弾き飛ばされる。
それでも威力はそこまで高くなく、あたしはすぐさま体勢を立て直した。
その眼前に飯田さんが舞い降りる。
89 :第15話 :2009/09/01(火) 02:25
「こんなものじゃないでしょう? カオリはあなたたちにカオリの全てを渡してきたはずよ」

飯田さんの目がゆっくりとあたしに向く。

「田中、あなたにはカオリを倒すことのできる剣と、それを誰かのために振るうことのできる、
まっすぐで優しい心を」

飯田さんの目がゆっくり動き、今度はポンちゃんを見据える。

「紺野、あなたにはカオリが得てきた全ての魔法知識を」

そして最後に絵里を見る。

「そして亀井、あなたにはカオリが身につけ、また創り上げた全ての魔法技術を」

飯田さんが目をゆっくりと閉じる。
開いたときにはあたしたち三人をしっかりと見つめていた。

「カオリがあなたたちにあげられたのはその種だけだったかもしれない。でもあなたたちは
その種をしっかりと育て、花を咲かせてきたはずよ。今、カオリが持っていてあなたたちが
持っていないものは何もないはずだわ」

辺りの空気が膨れあがる。
ビリビリと伝わってくる破壊の力。
90 :第15話 :2009/09/01(火) 02:26
「さぁ、今こそその力で、カオリを超えてみなさい!!」

溢れ出た闇の力は、やがて一つの形を作り出す。
漆黒の、巨大な、十字架を……。

「れいな!」

ポンちゃんの声で振り返ると、ポンちゃんと絵里が手を合わせ、魔力を高め合っていた。
紡がれる五色の星。
その星を取り込んだ十字架をさらに魔法陣が取り込み、十字架はひときわ強く輝く。

あたしも当たり前のように、それに加わる。
ポンちゃんたちの後ろに回り込み、魔法陣にダークブレイカーを掲げる。
ダークブレイカーからあふれ出した闇が、魔法陣の陣円を黒く染めていく。

見てください、飯田さん……。
これが今できる、あたしたちの、最高の技だ!!

二つの、究極にまで高めあった十字架が炸裂した。


「「「「カイゼル・クロイツ!!」」」」
91 :片霧 カイト :2009/09/01(火) 02:30
今回はここまでです。
本当はバトルを終わらせる予定だったのですが、思ったより長くなりそうだったので分けました。
次では確実に終わるはずです。
かなり更新が不定期になってしまっていますが、なんとかかんとか頑張ります。

>>77 名無飼育さん 様
この展開、実はかなり最初のほうから考えていました。
やっぱり完全な師弟対決は一度はやっておきたかったのです。
そのために犠牲が増えたりしてしまったのですが……(滝汗

>>78 名無飼育さん 様
すいません、大変お待たせしました。
せめてもうちょっと早く更新できるようにしたいです。
92 :名無飼育さん :2009/09/06(日) 23:39

おお!
93 :名無飼育さん :2009/09/18(金) 15:11
更新待ってますね。
94 :名無飼育さん :2009/09/26(土) 13:26

とうとう最終話きちゃいますねえ・・

れーなやえりりんの恋もどうなるんでしょう。
95 :名無飼育さん :2009/10/30(金) 18:06

待ってます。
96 :第15話 :2009/10/31(土) 23:55
想いと想い。
力と力。
そして、闇と闇が交差しあう。

ぶつかり合う二つのカイゼルクロイツ。
全てを排除した闇の十字架と。
全てを取り込んだ闇の十字架。
二つの魔法の力は拮抗し、ぶつかった場所に膨大なエネルギーをため続けている。

「く…ぅ……」

あたしはさっきからずっと全力で魔力を放出し続けている。
けど、いくらほぼ無限に魔力を作り出せる魔剣とはいえ、一度に放出できる魔力量には
限度がある。
だからその限界までの魔力を常に魔法へと注ぎ続けている。

ポンちゃんや絵里も同様に、自分の限界以上の魔力を魔法へと伝えている。
そのかいあってか、少しずつ、本当に少しずつだけど、あたしたちの魔法が飯田さんの
魔法を押し始めてきた。

「うっ……」

飯田さんの表情が苦痛にゆがむ。
あたしたちだって、厳しいところだけど……。
今この時を逃すと、きっと、もう飯田さんを超えることはできない……!

「もう少しだよ、れいな、亀ちゃん!」

ポンちゃんもわかっているようで、集中の度合いがさらに増す。
絵里にしても、見たことのないような真剣な顔で、魔力を送り出している。
二人とも限界を超えようとしているんだ。だったら、あたしだって超えてやる。
あたしもしっかりと握ったダークブレイカーに意志を伝えていく。
97 :第15話 :2009/10/31(土) 23:56
「行くよっ!!」
「「はいっ!!」」

あたしたちの十字紋から放たれている光が、よりいっそう輝く。
その瞬間、拮抗は破れた。
あたしたちの魔法が飯田さんの魔法を押し返し。
そのままの勢いで黒い十字架の魔法陣を砕いた。

「くぁあああぁっ!!」

魔法が飯田さんを飲み込む。
さすがにかなりの威力が殺がれたけど、それでもノーダメージってことはないだろう。
少なくとも、これですぐに反応できるということはないはず。

「れいな!」
「れーな!!」

二人に呼びかけられる前に、あたしはすでに空中を滑っていた。
この役目はあたしにしかできない。
もとより、誰にも譲る気はない。

上空に昇り、ダークブレイカーを大上段に構える。
そしてそのまま、今度は飯田さんの前方の空間を目指して滑空していく。

ちょうど魔法が途切れた。飯田さんはその場に立ちつくしている。
あたしはその前方に滑る込むと同時に、高く掲げた剣を振り下ろす。

飯田さん、今、解放してあげます。

「闇斬り!!!」
98 :第15話 :2009/10/31(土) 23:57
手に残る感触は、まるで空気を斬ったかのようで。
でも確かにそこにある、闇を斬った感覚。

ゆっくりと、闇から解放されたはずの飯田さんを見上げる。
飯田さんは、ずっと昔に見たような、満面の笑みを浮かべていて。


「強くなったね、三人とも……カオリは嬉しいよ」
「あっ……」

ずっとこらえていた涙がこぼれ落ちた。
無意識のうちに飯田さんに手を伸ばすけど、手が届く前に、飯田さんの背中にあった
黒翼が辺りに飛散し。
飯田さんはそのまま真っ逆さまに墜落していった。

「飯田さん!!」

あたしはすぐさま飯田さんを追いかける。
ポンちゃんと絵里も同じように滑空して降りていく。

飯田さんの魂をつなぎ止めていた闇は絶った。
ということは、このまま飯田さんは消えてしまうのではないか……?
言いようのない不安に駆られる。
でも、そんなことはなく、飯田さんはすぐ下の地面に倒れていた。
99 :第15話 :2009/10/31(土) 23:58
「飯田さんっ!」

その傍らに座り込み、飯田さんの名前を呼ぶ。
すると伏せられていた瞳がゆっくりと開き、あたしを捉えた。
飯田さんに触れようとしたが、その手は飯田さんをすり抜けた。
さっきまではダークブレイカーを受け止めるくらい、闇が渦巻いていたのに……。

「飯田さん、大丈夫ですか!?」
「あぁ……大丈夫よ、れいな……。カオリの中の闇は、完全に消滅したわ……」
「そうじゃなくて……!」
「もともとカオリはあのとき、ロマンス王国で消えていた……。それが闇によって、魂だけ無理矢理
とどめられただけ。光によって散らされた闇が復元するのにはそれなりに時間がかかったけど、
復元してからはずっとカオリは闇の操り人形だった。だから……これでいいのよ。よく解放してくれたわ……」
「でも……!」
「それに良いこともあったしね。こうやってもう一度あなたたちに会えて、成長を見ることもできた。
本当に、強くなったわね。あなたたちはみんなカオリの誇りの弟子よ」

こぼれ落ちる涙は、飯田さんをすり抜けて地面に吸い込まれる。
飯田さんはゆっくりと起きあがると、背後にそびえ立つ巨大な門に視線を向けた。

「この門は二つの次元の隔たりを封じた扉。この先にある次元に闇は幽閉されているわ。
開けるには六本の魔剣が必要。だけど、開けるということは次元を繋げる、つまり向こうの
次元からこちらの次元へも移動が可能になるということ。一度開ければ、もう後戻りはできないわ」
「はい……」
「もう今日は日が暮れる。夜は闇の力が増すから、明日にしなさい。今夜はゆっくりと休んで、
魔力と体力を回復すること」

そして飯田さんはあたしに視線を向ける。
地面に下ろした手に、飯田さんの手が重なる。
感触はないけど、確かに飯田さんを感じた。
100 :第15話 :2009/10/31(土) 23:59
「田中……闇の力は強大よ。カオリもその力に飲み込まれた。でも、田中ならきっと超えられるはずだわ。
あなたはとても強い子だもの。決して闇に取り込まれることなく、自分の力と想い、そして今まで積み重ねて
きたものを信じなさい」
「はい……」

今度はポンちゃんのほうに視線を向ける。

「紺野……自分の内にある闇を恐れないで。恐れはさらに闇を増幅させるわ。
闇の次元の中では闇の力はさらに強くなる。その闇に飲み込まれないよう、心を強く持ちなさい」
「はい」

そして最後は絵里のほうへ。

「亀井……あなたは二人を支えて、助けてあげて。それができるのは闇の影響を直接受けていない
あなただけよ。もし誰かが闇に取り込まれそうになったら、あなたが正しい道に導いてあげるの」
「はい……」
「よろしい」

そう言って、飯田さんは立ち上がる。

「さて、これでもう本当に教えることは何もないわ」

そして、ゆっくりと歩き出した。

「飯田さん、どこに!?」
「このままあなたたちの目の前で消えるわけにはいかないわ。あなたたちにこれ以上
重荷を背負わせたくはない」
「そんなこと……!」
「それに、カオリにはまだやらなくちゃいけないことがある……」

飯田さんは立ち止まることなく、振り返ることなく歩いていく。
暗がりを増してきた、深い深い森の中へ。

「あとは、あなたたちに任せたわ」

引き留めることなんてできなかった。
だからあたしたちは一瞬たりとも目を離すことなく、その姿を心に刻んだ。

もう決して見ることのない、飯田さんの背中を……。



101 :第15話 :2009/11/01(日) 00:00

◇     ◇     ◇


〜飯田圭織〜

「ふぅ……」

私は深い森の中を進んでいく。
消えてしまいそうになる自身をなんとか抑えながら。
身体は既に亡くした。
魂だけを繋ぎ止めていた闇も消えた。
この状態の私をこの世界に留めておけるものは、あとは強い「想い」くらいしかない。

「この辺に……いるはず……」

まだわずかに残っている闇の力を辺りに放つ。
蜘蛛の巣のように闇を張り巡らせ、その網が獲物を捕らえるのを待つ。

日はすでに暮れ、森の中は闇が覆っている。
その闇の中を暗躍する、さらに深い闇を私は追う。
おそらくこの闇の中に隠れているのだろうけど無駄だ。私なら必ず見つけ出せる。
だって、私は同じ存在なのだから。

広げていた闇の網が何か異物を捕らえた。
見逃しそうなくらい微弱な反応だけど、私は確信する。
見つけた!
私はその位置まで全速力で駆ける。
102 :第15話 :2009/11/01(日) 00:00
そいつはやはり闇の中に姿を隠していた。
そうした上で、先ほどまでの私と同じように、闇を周囲に展開して辺りの様子をうかがっている。
ただ、その対象は私ではなかったようなので、まだ私の接近には気づいてないようだ。
私は熱心に監視を続けるそいつの背後へと近づく。

「やっぱりいたね、探したよ」

声をかけると、一瞬で展開されていた闇が溶け消えた。
そしてゆっくりと顔が私の方を向く。
驚きは一瞬。すぐに冷酷な笑みに変わる。

「なんや、まだ生きとったんかい」
「そう簡単には消えないのよ。そんなふうにしたのはあんたたちでしょ……平家みちよ」

平家みちよ。
最後の闇の使徒にして、闇の使徒のまとめ役。
そして、もっとも闇に近い存在。

「まぁ、そうやったな。で、ゲートキーパーが門も守らんと、何してるんや?」
「カオリはもう闇の呪縛から解き放たれた。もうあんたたちの操り人形にはならないよ」
「ふぅん、じゃあその死に損ないが何の用や?」
「決まってる。あんたを道連れに来たのよ」

平家みちよは何も応えない。
ただ、冷たい目が私を見つめているだけ。

「あんたのことだからね。田中たちを奇襲して魔剣を奪うくらいのことはやると思っていたよ。
そして案の定、あんたはここから田中たちを監視していた」
「なかなか鋭いな」
「でもそんなことはカオリがさせない」
「フンッ、そんな状態で何ができるんや?」
「あんまり舐めないでくれる?」

残っているありったけの闇を解放する。
辺りに漂う闇が一気に濃厚になっていく。
平家みちよの表情にわずかな変化が生じた。
103 :第15話 :2009/11/01(日) 00:01
「もう消えるのを待つだけの身だけど、それでもあんたを倒すくらいの力は残っているわよ」
「ククッ、おもしろい!」

平家みちよも闇を解放する。
放たれた闇が私と平家みちよの周囲を包み込み、空間を切り取る。

「闇の結界魔法?」
「あぁ、そうや。そのまま暴れてターゲットに気取られると面倒や。でもこの結界内なら、
結界内で起こったことは決して結界外には漏れん。つまり好きなだけ暴れられるっちゅうことや」

それと同時に、逃げ場を消したと言うことか。
でもこれは私にとっても都合が良い。
これで私がいるうちは田中たちに危害が及ぶことはないし、気づかれることもない。
それに、もとより私は逃げるつもりなんて毛頭ない。

「もう二度と甦れないよう、弟子よりも一足先に闇の世界へ送ったるわ」
「伝説にもなった、史上最強の魔法の力、見せてあげるわ」

とは言ったところで、おそらく今の私では平家みちよには勝てない。
差し違えるのも無理だろう。
強がってみたところで、もうほとんど力は残っていないんだから。

でもせめて今夜だけ、田中たちが門を開けて突入するまでは、平家みちよは抑えてみせる。
だから、後は頼んだよ……。

そして
もし、できることなら……
104 :第15話 :2009/11/01(日) 00:01
    
105 :片霧 カイト :2009/11/01(日) 00:07
ちょっと短めですが、今回はここまでです。
またしてもいろいろ遅くなってすいませんorz
今回は短いながらも、いろいろとやりたいことを詰め込んだ感じです。
そしてようやくというかなんというか、そろそろクライマックスです。

>>92 名無飼育さん 様
実はVSカオリンはバトル描写のほとんどをカットしようと最初は思っていたのですが。
我慢しきれず、つい書いてしまいました……。

>>93 名無飼育さん 様
すいません、お待たせしました。
なんとかもっとテンポよく更新したい今日この頃……。

>>94 名無飼育さん 様
前回のコメントが紛らわしかったですが、ストーリー自体はまだちょっと続きます。
カオリン編が今回で終了という衣ことでした。混乱させたようで申し訳ないです。

>>95 名無飼育さん 様
長々と待たせてしまい、申し訳ありませんでした。
もうちょっと早く更新できるように頑張ります。
106 :名無飼育さん :2009/11/06(金) 23:48

待ってましたっ!!!

飯田さんのえりりんにかける言葉で
泣きそうに・・・
107 :名無飼育さん :2009/12/24(木) 00:11

楽しみにしています。
108 :名無飼育さん :2010/01/01(金) 23:56
もう終わりますねぇ・・・
109 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:01
〜田中れいな〜

「ふぅ……これでよし……」

あたしは立て終わったテントを見上げる。
その先に見える空はもうすっかり黒に染まっていた。
思えば、ハロモニランドを出たときには三つもテントを立てていたのに。
今では一つで十分なため、一人でもできてしまう……。

飯田さんに言われたとおり、あたしたちは明日、陽が昇ったら闇の封印を解こうと決めた。
そのため今日はここで夜を明かす。
敵の本拠地のど真ん中ということになるんだけど、今のところ特に違和感はしない。

「おまたせ、れいな」

ポンちゃんと絵里が戻ってきた。
二人はこの周囲に結界を張りにいっていたのだ。

「特に変わった様子とかはなかったとですか?」
「うん、大丈夫だったよ」
「じゃあテントは立ててありますから、もう休んでください。最初はれいなが見張りしてますから」

ポンちゃんと絵里はまだ魔力が十分に回復していない。
なので必然的に最初の見張りはあたしということになった。

「わかった、お願いね」
「よろしく、れーな〜!」

そういって、二人はテントの中へと入っていく。
あたしは辺りを見渡し、ひときわ大きな木を見つけ、それをよじ登る。
そして横に伸びた太い枝に腰を下ろした。
視界はそんなにいいとは言えないけど、それでもある程度の距離までは見える。
見張り場所としては悪くない場所だろう。
110 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:02


Interlude X  千夜一夜恋物語



111 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:03
「さてと……」

腰を落ち着ける場所を探し終えたあたしは、ダークブレイカーを指輪から剣に戻す。
といってもそれは敵襲があったとき、すぐに臨戦態勢に移るためというわけじゃない。
じゃあ何のためかというと……

「ダークブレイカー」
『はい、なんでしょう?』

話しかけるとちゃんと返してくれる。
重要なことでもない限り話すことはなかったので、こう話したのはかなり久しぶりだ。

「ダークブレイカー……あんたに訊きたいことがあるんやけど」
『奇遇ですね、私もれいなに話しておきたいことがあります』
「えっ、何?」
『まずはれいなの質問を聞きましょう。もしかしたられいなの訊きたいことと、私の話したいことは
同じかもしれませんし』
「そう……それじゃあ……」

とはいえ、なんて訊けばいいんだろう……?
ちょっと悩んだけど、あたしはもともとあまり語彙が多い方じゃない。
だからとりあえず思ったことをストレートに訊くことにした。
112 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:04
「あんたは、何もの?」
『……どうやら私たちの話は同じだったようですね』

ダークブレイカーは応えたけど答えない。
それでもおそらく質問の意味は伝わっている。伝わった上で、ダークブレイカーはさらにあたしの
追加質問を待っている。
だからあたしはさらに続ける。

「前から不思議には思っていたんだけどね。魔剣には意志が宿ってるってのは聞いとったけど、
あんたはもう意志とかいうレベルじゃなくて、人格が宿ってる」
『なるほど……』

今度は肯定でも否定でもない答えが返ってきた。

「今までは不思議に思っとっただけだったんだけど、今日飯田さんの話を聞いて気づいた。
闇は魂に拠る。それはもともと同じものだから。じゃあ、逆のパターンもあるんじゃなかと?」

魂が闇に拠る。
それはもともと同じものだから。

「ダークブレイカーは闇の塊。拠代にはこれほど最適なものもないっちゃろ?」
『さすがですね、れいな。よく気づきました』

今度の答えは肯定と捉えてもよい答えだった。
113 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:04
『そして私の話したいことともつながります。れいな、一度ダークブレイカーを指輪に戻してもらえますか?』
「えっ、なんで?」
『これでは少し話しづらいでしょうから、今から私の姿を見せましょう。少し、ダークブレイカーの魔力を
借りることになりますが』

そういうことなら断る理由はない。ダークブレイカーの魔力はほぼ無尽蔵だし。
あたしはダークブレイカーを指輪に戻す。
と、指輪の宝玉から光があふれ出した。
光はゆっくりとあたしの前方の空間に像を結ぶ。
幻術のようなものだろう。映し出されたのはエキゾチックな衣装を身にまとった、
あたしと同い年くらいの少女。

「この姿では初めましてですね、れいな。これが私の生前の姿です」
「あんたは……一体……」
「私の名前は、ヒカリ。赤嶺光莉。今は亡き王国、『アカビア』の最後の王女です」



114 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:06


◇     ◇     ◇



「・・・・・・」
「あれ、れいな、どうしました?」
「いや、ちょっと……」

あまりにもあまりな真実を突きつけられて、頭の処理が追いつかない。
『アカビア』ってポンちゃんが話してたあの昔話に出てきた国?
その最後の王女ってことは、光魔法の始祖にして、自分の命と引き替えに愛する人を
よみがえらせたっていう、あの……?

「その王女様がどうしてダークブレイカーに?」
「私がダークブレイカーに宿ることになったのはいくつもの偶然が重なった結果です。
ですが今、私には目的があります。私は、夜魅を止めたいのです」
「夜魅って……もしかして……」
「れいなたちが闇と呼ぶ存在の、本当の名前です。破透夜魅。私が生涯をかけて愛した、
ただ一人の人です」

なんかさらに頭がこんがらがってきた……。
そんな状態を悟ったのか、光莉が「順を追って説明しましょう」と話を始めた。

「私の命が失われたとき、すなわち夜魅の中で闇の力が目覚めたとき、肉体から切り離された
私の魂は、闇によって捕らえられました」

魂は闇に拠る。
確かにそういうことになる可能性もあるだろう。
115 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:08
「夜魅は無意識のことだったのでしょう。夜魅は私の魂を捕らえたことにも気づかずに、その目覚めた
闇の力を使い、私の国を滅ぼしました。その後も夜魅は破壊を続けました。私を亡くしたことの
怒りや哀しみをぶつけるように。私たちを否定した世界を否定するように。私は夜魅の近くにいるのに、
何もしてあげることができませんでした」

それはどれほどの無念さだっただろうか。
愛する人が狂っていくのを、ただ見ていることしかできないなんて……。

「それから数十年が経ち、やがて六人の勇者たちが現れました。勇者たちとの戦いで
夜魅の肉体は滅ぼされましたが、夜魅の魂は闇そのものとなり、世界に留まりました。
闇を倒す手段がなかった勇者たちはひとまず闇を次元の狭間に閉じこめ、封印を施しました。
私はその封印に弾かれ、わずかな闇の断片とともに、この次元に残りました。
夜魅は最後まで私の存在に気づきませんでした」

もし、破壊を続ける中で光莉の存在に気づくことができたら……。
今現在はいろいろなことが違っていたはずだろう……。

「闇を封印した勇者たちは、その場で新たな魔剣を作り出しました。この次元に残った、
闇の断片を宿した、闇の魔剣を。そのとき私は一緒に剣に宿りました。新しく生まれてくる、
夜魅を倒すための魔剣に。こんな形になってしまった私に何ができるのかはわからないけど、
もう一度夜魅と向き合うために。そして、夜魅を止めるために」
「・・・・・・」

なんていうか、言葉が出てこない。
文字通り、死ぬほど愛した人、ってことか……。

「なんか、すごいな……。好きな人のためにそこまでできるなんて……」
「そうでしょうか? そんなにれいなと変わらないと思いますよ」
「えっ!?」
「私もれいなもここまで来たのは好きな人のため、ではないですか」
「あ〜……」

まぁ、いわれてみればそうなるかも……。
ていうか光莉とは、ダークブレイカーとは相当長いつきあいで、しかもほぼずっと一緒に
いたことになるから、もちろんあたしの気持ちなんか丸わかりなわけで……。
なんかちょっと恥ずかしい……。
116 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:10
「……夜魅ってどんな人だったと?」

照れ隠しにそんなことを聞いてみる。

「そうですね、優しくて私のことをすごく思ってくれていました。私の知らないものや
見たことのないものをたくさんくれました。私なんかよりもずっと輝いている人でした」

光莉はどこかうっとりしたような表情で語る。
きっと光莉はすごく純粋なんだろうなぁ、と思った。

「なるほど、ステキなカレシだったんやね?」
「違いますよ。ステキなカノジョだったんです」

……はっ?
光莉はくすくすと笑って続ける。

「どうも語り継がれていくうちにいつの間にか変えられてしまったようですが、
夜魅は私と同じ女性ですよ」
「えええぇぇぇええっ!?」

なんか今日聞いた話で一番衝撃的と……。

「……ま、マジで……?」
「えぇ。当時は同性同士の恋愛なんて認められてなかったし、ましてや私は一国の王女。
決して結ばれることはないとわかっていながらも、私は夜魅を愛さずにはいられなかった」

光莉があたしに微笑みかける。

「だから私は、少しあなたたちのことが羨ましい。当たり前のことのように好きな人を愛することが
できて、さらに結ばれることもできるなんて」

あぁ、そういえば……。
光莉の遠い子孫に当たる現在の光の王女は、法律変えてまで好きな人と結婚したんだっけ。
117 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:11
そのあとあたしは光莉といろいろなことを話した。
まるで昔から知っている友達のように。
そして、話が一区切りついたころ……。

「れいな」
「んっ?」
「今日私がこの話をしたのは、私と、そして夜魅のことについて知っておいて欲しかったからです。
私も夜魅も、本来ならばこの時間に存在していい者ではありません。ですかられいな、
明日、夜魅を倒すときには、迷わず私を振り下ろしてください」
「わかってると。あんたも夜魅も、まとめてれいなが救ってみせる」
「そう言ってくれると思いました」

光莉が微笑む。
そのとき、足下から「れいな〜!」と呼ぶ声が聞こえた。
見てみると、そこにはポンちゃんの姿があって。

「見張りの交代だよ〜!」
「あっ、は〜い!」

返事をすると同時に、光莉の姿が消えた。
たぶん指輪の中に戻ったのだろう。
私は木の枝から滑り降り、ポンちゃんの前に着地する。

「異常はなかった?」
「はい、大丈夫です」

まぁ、あんまりまじめに見張りしてなかったけど……。
結界に変化はなかったから、大丈夫だろう……。

「そっか。それじゃ、あとは私が見張るから、れいなはゆっくり休んで」
「はい、お願いします」

そう言い残してあたしはテントへと引き返した。



118 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:12


◇     ◇     ◇



テントに戻ると、敷かれた布団の片方に絵里が横になっていた。
眠っているのかな。
なのであたしも空いている方の布団に潜り込むと……。

「れーな」
「なんね、起きてたと?」

どうやら眠っていなかったらしい。
隣の布団でもぞもぞと体を動かす音がしている。
絵里が身体をこちらに向けたようだ。
なのであたしも同じようにして身体を絵里のほうに向ける。

「ねぇ、れいな、思い起こせばさ、ずいぶん遠くまで旅をしてきたよね」
「あぁ、確かにそうやね」

ハロモニランドからアップフロントを横断し、さらにはダウンフロントに移って、このエビルエデンまで。
それだけでも十分長い距離だけど、絵里が言いたいのはそれだけではないだろう。
なんといっても絵里とは子供のころからずっと一緒なのだ。

「魔境近くの孤児院から脱走して、飯田さんに連れられて大陸中を飛び回って」
「そのうえ別の大陸まで行っちゃうなんてね」

この長い旅の中で、あたしたちはいろいろなことを経験してきた。
花のように咲く思い出も。
棘のように刺さるトラウマも。
すべてを積み重ねてここまでやってきた。
それも明日でとうとう終わる。
119 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:13
「ねぇ、絵里……」
「んっ?」

あたしは布団の上に起きあがり、絵里を見つめる。
言おうか言うまいか迷ったけど。
やっぱりどうしても言わずにはいられなかった。

「明日はいよいよ闇との決戦になる」
「うん」
「絵里……行かなくてもいいとよ……?」
「えっ……?」

絵里も起きあがり、あたしの目を見つめる。

「れいなはダークブレイカーに選ばれた者の使命として、闇を倒しみんなを助けるため。
ポンちゃんも闇の支配を断ち切るため。それぞれ闇と戦う目的がある。でも、絵里にはないやろ?」
「・・・・・・」
「明日の闇との戦いはほぼ間違いなく、今まで経験したことないような死闘になる。
自分の身を守ることだけで精一杯……いや、もしかしたらそれすらできないかもしれん。
わざわざ死にに行くような……」
「れーな!」

強い口調で絵里が遮った。
そして、絵里の手があたしの顔に伸びてきて……。
120 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:14
「いひゃひゃひゃひゃ!」

頬をつまんで引っ張った。
突然の痛みに思わず焦る。

「な、なひするほ!!」

でも、あたしも負けずに絵里の頬を引っ張る。
そしてしばらくそのまま引っ張り合いの睨み合い。
お互いが涙目になってきたところで、同時に頬を離した。

「う〜、痛い〜……」
「まったく……いきなり何すると!」
「れーなが悪いんでしょ! あんなこと言うから!!」

あまりの絵里の迫力に、思わず言葉が出なくなる。
絵里はさらに続ける。

「行くよ。絵里も行く。厳しい戦いになるってことはここに来るときから覚悟してるし、
それに飯田さんにも言われたし。それに……絵里にだって、戦う理由はあるんだよ」
「なんね、その理由って……?」
「それは……」

絵里は迷ったように顔を伏せる。
でもやがてその顔を上げ、そしてあたしとの距離を少しつめた。
121 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:15
「れーなと同じだよ。れーなの一番の目的は紺野さんを助けるため、紺野さんのために
闇を倒そうとしているんでしょう? 絵里も同じだよ。好きな人を助けるため、好きな人のために戦う」
「えっ、それってどういう……?」

絵里の言葉を理解する前に、絵里との距離がさらにつまった。
というより、0になった。
背中と後頭部に回された絵里の手が、あたしと絵里の身体を重ねた。
つまり、あたしは絵里に抱きしめられた。

「れーな、れーなのことが好きだよ。ずっと、好きだったんだ」


えっと、えっと、えっと……!?
絵里の行動と言動が理解できず、あたしは軽いパニック状態に陥る。

「えっと、絵里……じょ」
「冗談なんかじゃないよ。本気だよ、ずっと……」

あたしの反応を見越したように、絵里が体を離した。
そしてまた絵里の手があたしの頬に伸びる。
でも今度はつねりあげるわけじゃなく、優しく優しく添えられて。

「んっ……!」

気づいたときには唇が触れ合っていた。
柔らかくて、少し小さな絵里の唇。
振り払うこともできたはずなのに、あたしはまったく動くことができなかった。
122 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:16
しばらくして、絵里の唇がわずかに離れる。
でも、それだけ。
絵里の顔はいまだに私の至近距離にある。

「絵里の気持ち、わかってくれた?」
「……うん」
「そっか、よかった。さすがにここまですれば鈍感なれーなでもわかってくれるか」

ニコリと笑って、絵里は体を離した。
唇から伝わってきた絵里の心。
でも、あたしは一体どうしたらいいと!?

「ねぇ、れーな」
「な、なんね?」
「れーなは絵里と紺野さんのどっちが大切?」

あっ。
それはハロモニランドにいたとき、絵里に問いかけられた質問。
そのときは絵里の気持ちなんか全然気づいてなかったから、適当に受け流したけど……。

「えっと……」

返答に困っていると、絵里が大袈裟にため息をついた。

「ダメだよれーな、ちゃんと一番に選んであげないと」
「えっ?」
「絵里はね、誰と比べられてもれーなが一番大切。れーなも本当は、ちゃんと自分の心、
わかってるんじゃないの? 一番大切な人、いるんでしょ?」

絵里の言っている人は、もちろん絵里自身じゃない。
それでもそんなことが言える絵里は、やっぱりちょっとだけあたしよりもお姉さんのような気がした。
123 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:16
「うん……」
「そう、それでいいんだよ、れーな」
「絵里、ごめ…んっ!?」

言おうとした言葉は絵里の唇で遮られた。
今度はあたしもゆっくりと目を閉じて。
絵里のことだけを、全身で感じる。

やがてどちらからともなく体を離し、笑いあう。
それでもうあたしたちの関係は、いつもと同じに戻っていた。

「さてと、それじゃ絵里は紺野さんと見張りかわってくるよ」
「えっ、まだ早いんじゃない?」
「いーの。絵里はもう自分の気持ち全部言っちゃったから」

絵里はそう言ってまた笑うと、もそもそと布団を抜け出す。
テントをめくって外に向かう絵里の後ろ姿は、やっぱりちょっと大人っぽい気がした。



124 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:17


◇     ◇     ◇



絵里が出ていったテントの入り口をぼーっと見つめていると、そこから絵里と入れ替わりに
ポンちゃんが入ってきた。
ずいぶんと早く見張りを交換になって、困惑している表情だ。

「れいな、なんか亀ちゃんがやけに早く来て、見張り交換したんだけど、何かあったの?」
「いや……あったと言うか、なかったと言うか……」

さすがに素直に伝えることはできず、あたしは黙り込む。
ポンちゃんは頭の上にいっぱい疑問符を浮かべていたけど、さらにつっこんでくることはなかった。
テントの中に進み、布団の上に腰を下ろす。

「れいな、もしかして私が見張っているあいだずっと起きてたの?」
「あっ、まぁ……」
「ダメじゃない、ちゃんと休んでおかなきゃ」
「ご、ごめんなさい……」

といっても、あたしは魔力を回復する必要がないから、そこまで休息が必要ってわけでは
ないんだけどね。
さすがに睡眠不足の状態で明日を迎えるわけにはいかないから、少しは寝るけど。

「ポンちゃんはれいなが見張っているあいだちゃんと寝れたんですか?」
「うーん、寝ようと思ったんだけど寝れなくって。ずっと亀ちゃんと話してた」
「ポンちゃんもダメじゃないですか……」

二人揃って布団の上に倒れ込む。
でも、すぐにポンちゃんは身体をあたしのほうに向けて。
ちらっとポンちゃんのほうを見てみると、大きな瞳があたしを見つめている。
どうやらまだ眠るつもりはないようなので、あたしも身体ごとポンちゃんの方を向く。
125 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:18
「れいな、明日はいよいよ最後の決戦だね」
「そうですね。ようやくここまで来たと」
「うん」
「待っててくださいね、ポンちゃん。必ずれいながポンちゃんを闇から救ってみせますから!」
「うん……」

ポンちゃんの表情がわずかに曇った。
あれ、れいななんか変なこと言ったと……!?

「ポンちゃん……?」
「……れいなはさ、怖くない……?」
「えっ……?」

ポンちゃんの瞳に、わずかに不安が揺らぐ。

「相手は闇……。きっと今まで戦ってきたどの相手よりも強いよ……。れいなは、怖くはないの……?」
「そうですねぇ……もちろん恐怖はありますけど、どちらかというとようやくここまで来たっていう
達成感のほうが強いですね」
「そっか……強いね、れいなは」
「そんなことないですよ」
「ううん、強いよ……」

ポンちゃんの手が掛け布団の中を移動する。
そしてその手があたしの手を包んだ。
一瞬ドキッとするも、すぐに気づく。
震えてる……。
126 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:19
「私はね、怖くてたまらないの……。私の中にある闇が……疼くの」
「ポンちゃん……」
「私の中の闇が、姫様たちが張ってくれた結界を突き破るように暴れているのがわかる。きっと、闇の本体と
共鳴しているんだわ。今でこんな状態なのに、闇と対面したらどうなるかわからない。結界が破られ、
また私が私でなくなって、れいなを襲ってしまうかもしれない。そう思うと、震えが止まらないの……」
「・・・・・・」
「明日なんか来なくていい。今がずっと続いてくれればいいって……そう思っちゃうの……」

あたしは震えているポンちゃんの手をぎゅっと握りしめた。

「大丈夫ですよ、ポンちゃん」
「れいな……」
「そのポンちゃんの恐怖も、不安も、全部れいなが解消してあげます。明日、闇を倒して」

ポンちゃんの手から震えがゆっくりと引いていく。
曇っていた顔にも少しずつ笑顔が戻ってきた。

「やっぱりれいなは強いよ。きっと私一人で旅立ってたら、ここに着くこともできなかったと思う。
あの日、れいなが一緒に行くって言ってくれて、そしてみんなが着いてきてくれて……
だから私はここまで来ることができた」
「だからそんなことないですって。第一、ポンちゃんのほうが全然強いじゃないですか」
「そういう強さじゃなくて、なんていうかな、心の強さっていうのかな?」

ポンちゃんもあたしの手を優しく包み込む。
127 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:20
「その強さでれいなはいつも助けてくれたよね……。いっぱい、いっぱい感謝してるよ」
「ポンちゃん……」
「れいな……私、れいなのこと、大好きよ」


……え?
ポンちゃん、今、なんて……?

「えええぇぇぇぇええっ!?」

ポンちゃんの言ったことを理解した瞬間、あたしは布団から飛び起きた。
なんか今日、あたしは驚いてばっかりだ……。

「ポ、ポンちゃん、それって、どういう……!?」

あたしはまだ絶賛混乱中。
そんなあたしの様子を見てポンちゃんは楽しそうに笑ったあと、同じように身体を起こした。

「うん……きっと、れいなと同じ『好き』……」

顔がカーッと熱くなる。
見れば、ポンちゃんの顔もほんのりと色づいていた。
見つめ合う瞳は互いを引き合い、その力に流されるまま、あたしたちは身体を寄せ合う。

「ポンちゃん……れいなもポンちゃんのこと大好きと……」
「ありがと、れいな……」

また手と手が触れ合い、今度は唇と唇が重なった。

明日、あたしが守るものを再確認することができた前夜。
あぁ、でも今だけは、あたしも思ってもいいかな……?

今がずっと続いて欲しい、って……。
128 :Interlude X :2010/03/05(金) 03:20
   
129 :片霧 カイト :2010/03/05(金) 03:26
すいませんでしたorz
放置しすぎですね、本当に。
やらなきゃいけないこと、やりたいこと、いろいろありますが、こちらにもちゃんと手を回せるようにしたいです。
ストーリー的にもようやくクライマックスに入り込むところ。頑張りまふ……。

>>106 名無飼育さん 様
暴走したりしましたが、基本的にはカオリンはいい師匠ですよ。
全作ではとんでもないラスボスだったのですが、少しは良い面も見せられたでしょうか……?

>>107 名無飼育さん 様
すいませんありがとうございますごめんなさい(ぉ

>>108 名無飼育さん 様
時間的にもストーリー的にもかなり長かったですが、それもようやく終わりが見えました。
ストーリーはともかく時間的なことはなんとかしないと……。
130 :名無飼育さん :2010/03/14(日) 20:31
はじめまして。1年ほど前から娘小説にはまりだした者です。
片霧さんの小説は以前から読ませていただいてましたが、
Dear my Princess・Dear my…〜Dark×Dark〜は読んだ事がありませんでした。
長編ということで途中から読むのも時間がかかり大変ですし、なかなか暇がなくて…
ですが昨日の夜から読み始め、やっと今追いつきました!笑

ようやく終わりが見えてきたようですね^^
ドキドキしてきました!次回の更新も楽しみにしてます。
ご自分のペースで頑張ってください!

131 :名無飼育さん :2010/03/14(日) 20:33
あげてしまいましたすいません^^;
132 :名無飼育さん :2010/07/31(土) 01:09
133 :名無飼育さん :2011/01/26(水) 01:31
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