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作者フリー 曲を題材にしたスレ

1 : :2006/10/15(日) 22:30
このスレッドは作者フリーのスレッドです。
作者さんはもちろん気が向いた読者さん、どなたが書かれてもかまいません

曲を題材に曲にあった作品を投稿して下さい
投稿の際必ず完結させた上で、一気にお願いします
レス数はいくらでもかまいません
名前欄には『タイトル(曲名)』か『ハンドルネーム』で
話が終わった時には『終わり』もしくは『END』と記載してください
後書きなどは1レスで
感想、感想への返レスはこのスレに直接どうぞ
2 :HANABI :2006/10/15(日) 22:31

東京の薄汚れた夜空

アタシみたいだな、なんてため息混じりに吐くセリフ
もう何回目だろーか?

さっきから見上げっぱなしで首が痛い
見上げなければいいじゃん、そう思うけど・・・・
下を向けばたぶん涙が零れるから
それならまだ首が痛い方がマシ

3 :HANABI :2006/10/15(日) 22:31

「なんでこーなっちゃったんだろ・・・」
自分が信じた道を生きていこうと思ってたのにな



泣けないよ
泣かないよ
こんな心いらない、捨ててしまいたい


4 :HANABI :2006/10/15(日) 22:32


見上げるついでに流れ星でも見つけてがらにもなく願掛けなんかしてみようかと思ったけど
もう空は白んできてる
1日はとてつもなく早くて
アタシはいつもおいてけぼり
もう「明日」がアタシを追い越そうとしてる



5 :HANABI :2006/10/15(日) 22:32




『大好きだよっ』



無邪気な笑顔を思い出す
・・・・思い出すんじゃないな
いつもあの笑顔があるから

君の事思い出す日なんてないよ
いつも想ってるから


6 :HANABI :2006/10/15(日) 22:33




『あんたはそーやって「大丈夫」って言うけどさぁー・・・』

つい数時間前に言われた言葉が頭をよぎる



あの日からアタシの中の何かが動くことを止めてしまったらしい
こんなアタシじゃいくら祈っても届かない
願いをかける星すら見えない


7 :HANABI :2006/10/15(日) 22:33


「会いたいよ・・・・ねぇ・・・・会いたい・・・・よ」




記憶に残る君の笑顔が優しすぎて眩しすぎて
・・・・・どうしようもないんだ
いつも君が心の中にいる
思い出すんじゃなくていつもいるんだよ

8 :HANABI :2006/10/15(日) 22:34








「・・・・・・会いたいよ」



もう、どうしようもない

9 :HANABI :2006/10/15(日) 22:34


end
10 : :2006/10/15(日) 22:37
参加募ります
息抜きに短編かいてみたり
ちょっと書いてみようかな、くらいのノリでかまいません
ダメだと思ったら削除してください

最初っから失恋もので申し訳
超有名女性アーティストHさんの曲です
11 :かつおぶし :2006/10/17(火) 00:05



『幼なじみ』
 
 
 
12 :かつおぶし :2006/10/17(火) 00:06
 
 
『何度も聞くから、首を縦に振らない』
 
 
素直になれたら、神様は褒めてくれんの?
うんって言えたら、言えるもんなら、とっくに言ってる。
だから今は言わない。
 
 
『あなたにイジワル。気持ちを知ってて』
 
 
だって美貴たち友達じゃん、親友じゃん。
この壁、越えたがらないで。だって越えていいものじゃないから。
そんなに縋らないで。らしくないって。
いつもみたいにおどけててよ。そしたら美貴も、冗談にできるから。
 
 
 
 
 
 
おしまい。
 
 
13 :かつおぶし :2006/10/17(火) 00:10
 
 
超短くてスイマセンっ!
しかもどっかでカブってそうなネタで。
長く書いたらなんか胡散臭い感じになっちゃったんで、すっきりさっぱりに終わらせちゃいました。
こんなの書いてホント申し訳ないです。
そいでは、失礼しました。
 
14 :ムム :2006/10/24(火) 03:58

『僕の手紙』
15 :ムム :2006/10/24(火) 03:59

            
「あなたが好きです」

なんて、素直に言えるわけない…。


16 :ムム :2006/10/24(火) 04:02




夜空の星を眺めて

たぶん渡すことはできないけど

今あなたに手紙書きます…。



17 :ムム :2006/10/24(火) 04:05


《元気ですか?私は元気です…。》

っと、…ありふれた言葉すぎたかな?



ちょっと休憩と思い顔を上げ、

カーテンの閉まった窓を見れば微かに光が射し込んでいて、

太陽が静かに昇ってきたことがわかりました。

18 :ムム :2006/10/24(火) 04:07

「もうこんな時間か…。」
どのくらいの時間机に向かっていたのかわかりません。


【大学進学】


この言葉を目標にして私は毎日遅くまで勉強をしています。

19 :ムム :2006/10/24(火) 04:09


でも、今日はいつもより集中できなくて

気晴らしにあの人に手紙を書くことにしました。



なかなか言葉が思いつかなくて、

悩んでいたらいつのまにか朝に。



「今日はもう寝よう」



そう思って私はベットに横になりながら、

あの日のことを思い出していました。


20 :ムム :2006/10/24(火) 04:12

「こ〜んの!」
「え?あ!後藤サン!」
「今帰り?それなら途中まで一緒に帰らない?」
「は、はい!ぜ、是非ご一緒させていただきます!」「あは、そんなにかしこまらないでよ〜!」
「ご、ごめんなさい!」
「いや、謝られても…またどもってるし」
「ごめんなさい!…あ!」「あはははは!でも、それが紺野らしくていいね〜!」



仕事が終わって帰ろうと楽屋を出たら、

ちょうど同じタイミングで仕事が終わったという後藤サンと会って、

一緒に帰ることになったあの日。

21 :ムム :2006/10/24(火) 04:14
帰り道、二人っきり…何から話せばいいか分からず…

『不思議だね。月がほら、今日は少し大きく見えるよ』

ふいにごサンが口にしたその言葉、
私はその時、見上げてた横顔に本当は伝えたいことがありました。


でも、後藤サンと目が合った瞬間に
自分に自身が持てない私がいて、
すぐに目をそらしてしまいました。


22 :ムム :2006/10/24(火) 04:17

見つめていたいのに
見つめ合うことができなくて
自分の弱さを感じました。

《だけどこれだけ言えることがあります。
世界の誰よりもあなたが好きなことを…》

いつかあなたに言える日がくるように強く思いながら
23 :ムム :2006/10/24(火) 04:19
あなたとは不釣り合いかもしれません。

それでも私はあなたの側にいたくて…


今の私たちを例えるなら、

きっとあなたは夜でも世界を暖かく照らしてくれる月で、

私は微かに見える星。


だけど必ず輝いてみせる。
その時にはあなたに言えるでしょう


あなたに近付けるように…私の本当の気持ちを伝えるために。


24 :ムム :2006/10/24(火) 04:22

もう少し私に勇気があれば変われるのに…
あと少し私がカッコよくなれればいいのに…


あなたに似合う私になれたらいいのに…
あなたの隣にいてもおかしくない私になりたい…



でもあなたはそんな私に、いつも優しく微笑んで、
私の夢を信じてくれましたね。



『紺野なら大丈夫だよ』

って、いつも暖かく見守ってくれて、
真剣に私の話を聞いてくれたことが
とてもうれしかったです。

25 :ムム :2006/10/24(火) 04:24

《不器用で臆病な私だけど》


《あなたとは不釣り合いかもしれない私は微かに見える星》


《だけど必ず輝いて見せます》

その時に

「あなたが好きです。」

と言えるように。


26 :ムム :2006/10/24(火) 04:25


END


27 :ムム :2006/10/24(火) 04:26


設定は後藤サンと紺野サンのお話しです。

それと紺野サン視点だったので、
『僕』は『私』に、『君』は『あなた』に変えてみました。

それでは失礼しました。
28 :近距離恋愛 :2006/11/17(金) 21:35
あたし、石川梨華。最近不満に思ってる事がある。

朝8時に毎日真面目に出勤するあたしはごく普通のOL。
メイクをして必要な物も鞄に入れてそれからいつものようにそぉっと一枚の扉を開ける。
真っ白のダブルベットの中に膨らみが一つ。
近づいて覗き込むとすぅすぅと寝息を立てている愛しい恋人。
…今日は一体何時に帰ってきたの?

あたしは普通に朝出勤して夜に帰りそして眠る。
彼女は普通に夜出勤をして朝に帰りそして眠る。

夜は苦手じゃないからとか言って夜中のアルバイトをしてるフリーター。
でも理由は知ってる。夜の方が給料の割がいいから。
家賃や生活費なんかはきっちり折半してるつもりなのに、
なんだかんだ言って食費とか彼女の方が多く払っているから。
変なとこでプライドが高いのかわからないけどそういうとこ気にしてる。
ちょっとキツい仕事なのかたまに起きている時に会ってもいつも疲れた表情で。

最近全然笑った顔も声も見ても聞いてもいないよ?

手を伸ばして軽く髪を触った後、あたしは時計を見て慌てて出かける。
その後、彼女が目を覚ました事を知らずに。
29 :近距離恋愛 :2006/11/17(金) 21:36
同棲を始めたのはちょうど1年位前。元々遠距離恋愛から始まったあたし達。
友達の伝で知り合って、仲良くなって付き合うことになって。
仕事もあったし中々会えなくて、そしたら遠くからわざわざ上京してきちゃって。
毎日梨華ちゃんと居たいから、ってほんのちょっとの荷物を持ってあたしの前に立っていた。
あたしが帰れ、って言わないようにとびっきりの作り笑いをして。
…そもそも追い返したりとか、絶対しないけど。

そして二人で借りたアパート。半分こだからわりといい部屋を決めて生活が始まった。
さぞかしラブラブな生活が始まるんだろうと思ってたのに彼女は思ったより生活にきちっとしてて。
「梨華ちゃんに負担掛けられないし、美貴も頑張るね」なんて言ってキツいバイトばっかりいれちゃって。
そんなんだから一緒に暮らしてても全然美貴ちゃんに会えない。毎日会ってるけど、会えない。

会社に行く途中に旅行会社の前を通り過ぎて立ち止まり引き返す。
遠距離だったからお互いの地元に行けば旅行に行ってるみたいなものだったけど、
二人で旅行とか行った事ない。パンフレットを手に取りそしてため息をつく。
一緒に住んでるくせに全然会わなくて、旅行とか行ける筈ないよね。
美貴ちゃん騒がしい所好きじゃないからのんびり温泉にでも行きたいんだけど。
でもあたしが休日や連休の時もガンガンバイト入れちゃうからきっと無理だろうな。

手に取ったパンフレットを静かに元の場所に戻した。
30 :近距離恋愛 :2006/11/17(金) 21:36
このすれ違い生活の最初の頃はあたしが昼休みの時を見計らって美貴ちゃんから電話がきていた。
凄く眠そうな声で「おはよぅ」って言うからあたしもいつも笑っておはようと返していた。
でも、慣れちゃったらそんなのもなくなっちゃって、いつしかメールの返事だって返ってこない時も。
変に期待しちゃうから、それなら鳴らない携帯電話なんて要らない。

仕事が終わって家に帰る。

「…ただいまぁ」

返事はない。部屋も真っ暗だし、もうすでにいないのだろう。
いってらっしゃいと入れたメールに「いってきます」とだけ入っていた。
あたしは簡単に一人分の食事を作り、一人でそれを食べる。

もうどのくらい一緒にご飯食べてないだろう?
なんかこれじゃ一緒に暮らしてる意味がなくない?

今日何度目かのため息をついた後、お風呂に入ってベットに入る。
美貴ちゃんの匂いがする。気分だけでも抱きしめられているような感覚であたしは目を閉じた。
31 :近距離恋愛 :2006/11/17(金) 21:37
ふと夜中に風の音で目が覚める。そのせいで何度も目が覚める。
そのたびに横の空間を見つめるけどまだ帰って来ていない。
大丈夫かな、外寒そうだけど。風邪引きやすいから風邪引かなきゃいいけど。
そんな事を思ってふと思い出す。「梨華ちゃんはいつも美貴の事心配しすぎだけど、
美貴だってちゃんと梨華ちゃんの事同じくらいいつも思ってる事忘れないでね」と言われた事。
思い出したら何だかあったかくなった。
寂しくたって美貴ちゃんもあたしの事思っててくれてるから大丈夫なんだ。

そしてまたあたしは目を閉じて眠る。
すぐその後帰ってきた美貴ちゃんに気がつかずに。
32 :近距離恋愛 :2006/11/17(金) 21:37
次の日はあたしはお休みだった。
隣にはまだ寝てる美貴ちゃん。でもあたしが休みの日は昼間だってバイト入れてる。
こういう時は「起こして」と言われてるからそっと美貴ちゃんの肩を叩く。

「朝だよ?美貴ちゃん、バイトでしょ?」

本当は行って欲しくないから起こしたくないけど。
一回本当に起こさなかったら大遅刻しちゃって怒られて、
あたしも意地になって大喧嘩した時もあった。
美貴ちゃんは「ぅうん…」と小さな声をもらす。
そして目をこすって隣に居るあたしの目を見る。小さな子供みたいでかわいい。
ゆっくり手を伸ばしてあたしの背中に手を回す。
こんな甘えてこられると思ってなかったので驚きながらも顔は綻んだ。

「美貴ちゃ…」
「今日バイト入れてないの…。今日は一緒にいれるんだよぉ…」

一瞬自分の耳を疑ったけれど寝ぼけたかすれ声であたしが今一番喜ぶ言葉を言ってくれた。

その後、すぐに寝てる美貴ちゃんを思いっきり抱きしめる。
「ぐぇ」と小さく聞こえた。

それから最近あった事を美貴ちゃんに話す。もちろん美貴ちゃんにぴったりと抱きついて。
美貴ちゃんは隣で「そうなんだぁ」とかあたしに相槌と笑みを返してくれる。
昨日も遅かっただろうから眠いはずなのに。
33 :近距離恋愛 :2006/11/17(金) 21:37
「あ、そーだ」

美貴ちゃんがもぞもぞとベットから飛び起きた。
自分の鞄の中を覗いてにこりとあたしを見て笑う。
久しぶりの笑った顔。やっぱり美貴ちゃんは笑顔が一番だね。
つられてあたしも「なによぉ?」なんて言って笑う。

「じゃーん」

手に掲げられたのは封筒。

「…なぁに?それ」

にこにこしたまままたベットに入る。そしてあたしにその封筒を手渡す。
あれ…これは。会社に行く時に通る旅行会社の名前が書いてある。

「梨華ちゃん、温泉いこ?二人でのんびりさ。美貴バイト休むから」
「えぇー」

どうしよ嬉しい。…嬉しいけど。
34 :近距離恋愛 :2006/11/17(金) 21:38
「これ日にちが今日明日なんだけど…」
「なーんか、人気のある所だったみたいで取れなかったんだよね。
 てことで明日会社休んでね?」

にっこり笑顔。そういう事は出来たら早く言ってほしかったけど、
仕方ないか、会えなかったし、びっくりさせたかったんだろうし。

「それじゃぁ出かける準備する?」
「まーだ。もうちょっとこうしてようよ。美貴もずっと梨華ちゃんに会いたかったんだから」

ぎゅっとまた抱きついてきた美貴ちゃんに体を預ける。
あたしも静かに目を閉じる。
寝ないようにしなきゃ…。

あたし達の近距離恋愛はまだ続くけど、孤独な時なんてない。

あたしは美貴ちゃんが好きで、
美貴ちゃんはあたしの事が好きだから。

END

35 :名無し飼育さん :2006/12/02(土) 11:32
よかったです。
GO!GO!は名曲ぞろいだからまたゼヒお願いします!!
36 :Replay :2006/12/04(月) 00:21


はぐれた時の隙間なら、きっとすぐ埋められる。

あの頃の、ためらいのない想いが、蘇る。

37 :Replay :2006/12/04(月) 00:28

収録先で機器がトラブって、3時過ぎからポッカリとオフができた。
みんなは買い物にいこうよと誘ってくれたけど、
2年前が思い出されて一緒に騒ぐ気にはなれなかった。

2年前のこんな風な急なオフには、よく海に行ったな。

仕事をしていると忘れられる彼女の笑顔が、
一人になるとチラチラ浮かび上がっては消える。

はぁ、とため息をひとつ。

いい加減、忘れなければ。
2年間、失恋の傷を癒すには十分な年月だったはず。
なのに、自分の傷は乾いてもいない。
いや、乾かさなかった、のだ。

この想いを、手放したくなかったから。
痛みだとしても、抱えていたかったから。
38 :Replay :2006/12/04(月) 00:37
けれど一方で、なんの成長もない自分にほとほと嫌気がさしていたのも事実だった。

だから今日、あの海に行って、海風に傷をさらそう。
思い出がつまりすぎたあの海では、痛みは大きいのかもしれない。
けれどあやふやに、適当に消すことなんてしたくない。
してはいけない。そう思った。


電車を乗りついで海についた頃には、もう夕方になっていた。

潮の匂いをかぐと、あの頃が鮮明に蘇る。
一日オフはなかなかなかったけど、半日オフの日にはよくこのタイミングで散歩に来た。

ここに来るといつも黙ってしまったのは、夕焼けよりも何よりも、キミがまぶしかったから。
なんて言えた事なかったけれど。
もっと素直に気持ちを伝えていたら、違う今があったのかな。
39 :Replay :2006/12/04(月) 00:42
一緒にいられるうちはそれでよかった。
言葉にして言わなくても目を見れば、手をつなげばお互いの気持ちが痛いくらいに伝わったから。

でも彼女が卒業すると、途端に会えなくなった。


「大丈夫だよ。あたしたちは変わらないよ」

「うん。いっぱい電話するね」


―――――――電話じゃ、ダメだった。


彼女はいつも、「好きだよ」と言ってくれた。
あたしはいつも、「うん」としか言えなかった。
「好き」なんて言葉では、伝えられない想いだった。
でも言葉が足りなくて、いつも何も言えなかった。

思いついた端から、言葉を並べていけばよかったのかな。
40 :Replay :2006/12/04(月) 00:56
何もいわない事がどんなに彼女を不安にさせているか知りもしないで、ぼんやりと毎日を過ごしていた。


「今日はずっと一緒にいれるって言ったじゃん!!どうして?!」

「だから撮影が押してて、急遽夕方からもする事になったんだって」

「でも今日は!!」

「わかってる。わかってるよ。でもしょうがないじゃん。
 新しい子の撮影が上手くいかないのは当たり前の事だよ」

「また6期の子たちが足引っ張ってるの?ちゃんとやってないんじゃ…」

「真希!!何言ってんの?あの子たち頑張ってるよ。
 慣れない雰囲気とプレッシャーの中で必死になってやってるよ。
 そんなこと真希も分かってるでしょ??」

「…ゴメ……」

「……ごめん。言いすぎた。…うちもう行かなきゃいけないから。
 …コレ、プレゼント。置いとくね。……誕生日、おめでとう」


いっつも同じ事でけんかしてた。
けんかした後にはこんなはずじゃなかったのに、って後悔するのに、
会えない事でお互いに不安定になってて、でもささえ会う事はできなかった。

そんな余裕なかった。

傷つけあって、でも好きで、身動きの取れない矛盾の中でもがいていた。


でもとうとうそんな日々にも疲れ果てて、ある日別れは決定的になった。
何があったっていう訳じゃない。
でも、別れの時まで目を見たら分かってしまったんだ。
相手の目にも、終わりの文字が映っていたから。
41 :Replay :2006/12/04(月) 00:58


別れの場所も、ココだった。
本来あの時置いてくるべきだったこの想いを、今日、置いて帰ろう。



そう決めた。決めたのに――――――――どうしてキミがここにいるの?




42 :Replay :2006/12/04(月) 01:05
「よしこ……」

「ま、真希…何で、ここに?仕事は?」

「今日はオフ。ココに来たのはねぇ、よしこに会えるかなって思ったから」

「………」

うちが来るってなんで分かったんだろ?

「なんとなくね。っていうのはウソで、やぐっつぁんが電話くれてね。
 『よっすぃ〜が1人でどっか行っちゃったよ〜』って言ってたから。
 もしかしたらここかなぁ、って」

何も言ってないのに答えが帰ってきてビックリしていると、

「あはっ。あってたぁ??」
なんて変わらない笑顔が答える。


一瞬、あの頃に戻ったみたいで眩暈がした。


どうしてキミはそんなに普通にしていられるの?
もう、うちの事はなんともないの?
43 :Replay :2006/12/04(月) 01:10

「よしこ、髪…切ったんだね」

「ん?あ、あぁ、うん」


キミへの想いを断ち切るために。あんまり意味はなかったかな。


「似合ってる。やっぱショートのが好きかな」

「そ?ありがと」

「……よしこ、あのね」

「うん?」

珍しく、真希が緊張していた。
爪をいじるくせは、変わらない。



「あのね、会いたかった」


44 :Replay :2006/12/04(月) 01:18

「……」

どういう意味で言ったのか、どう答えればいいのか分からなくて、
自分でも目が泳いでいるのが分かった。


「あはっ。困ると目を泳がせるくせ、変わらないねぇ。
 ………でも、会いたかった。
 2年間、ずーっとずーっと我慢してきた。でもダメなんだぁ。
 よしこがいないと、笑えもしないの。何も楽しくないよ。
 まぁおかげで営業スマイルは身につけられたけどね」

「ハ、ハロモニとかで時々会うじゃん」

「あんなの会うって言わないよ。目も見てくれないし……今も」


ハッとして顔をあげると、目が合った。

何か、何か言わなくちゃ。


「よしこ、あたし……




「好きだ」




45 :Replay :2006/12/04(月) 01:26
出てきた言葉があまりに陳腐で、心の中で自分を笑った。


でも、それがなんだ。


「好きなんて言葉じゃ伝えられないくらい好きだよ。ずっとずっと。
 ………あの頃、中々伝えられなくてごめん。
 ……あたし、真希に甘えてた。
 言葉が見つからなくて、何も言えなかった。
 言葉にしなきゃ不安な時もある事とかわかってなくて、しなかった。ホントにごめん」



だから、今伝えよう。
この変わらない想いを、あなたに伝えたい。



46 :Replay :2006/12/04(月) 01:37




「……もう一度、あなたを愛してもいいですか?
 ……もう一度、一緒に歩いてくれますか?」




想いが、溢れ出す。
 
返事も聞かず、抱きしめた。

否、返事はもらった。


「…まだ、返事してないよ?」

「いいよ、目を見ればわかった」

「よしこ…」

「真希…」



ありったけの想いをのせて、くちづけた。

緊張と、喜びと、いろんな感情が入り混じってどうしようもなく震えた。

あたしの服の裾をつかむ真希の手も、震えていた。



真希の口からもれる吐息を、波の音がかき消す。

けれどその吐息が聴きたくて、もっと抱き寄せた。





はぐれた時の隙間なら、きっとすぐに埋められる。


誰よりも、何よりも愛しいキミよ。

いつの日も、変わらぬ想いをこの胸に。




あなたを、愛し続けよう




【 END and RESTART 】
47 :エルピエロ :2006/12/04(月) 01:40
初めて書きました。
途中、吉澤さんの一人称が変わってるとこがありますが
脳内変換でお願いします。っていうかすみませんorz

………これageない方がよかったのかな??
48 :幸わせの小道 :2007/03/04(日) 18:42



49 :幸わせの小道 :2007/03/04(日) 18:43
昔話を聞いた。この島で本当にあったという、とても悲しい話。
今は近代化の波にリゾート地という形で呑まれた我が故郷の、時間が止まっていた頃が舞台だった。
「ちょ、その噂、悲しすぎん?」
れいなは、怖い話嫌いっちゃよね、と頭を掻いた。
「怖いかな」
「怖いよ。だって、人が死んどーもん。それに」
わたしは眠れなかった昨日の夜のことを考えていた。
妙な胸騒ぎがして、一緒に暮らしているおばあちゃんの部屋へと逃げ込んだ。
老人の習性にのっとり、普段早寝のおばあちゃんが起きていて、布団の中で聞いたのが、今れいなに話した物語だった。

れいなは詰まった言葉を、不満そうに吐き出した。
「……それに、悲しすぎる」
50 :幸わせの小道 :2007/03/04(日) 18:54
11月。ここでは濃い霧が発生する。わたしが生まれるずっと前からそうだったのだろう。
背の高いホテルが一部に集中して建ち並んでも、それは変わらない。
この時期をれいなと二人で過ごすのは三度目のことだ。
わたしより身長が低くて華奢なくせに、その負けん気の強い性格で二人乗りしてる自転車を漕ぎたがるれいなも、
この期間だけはかなりのところまでスピードを落とす。
降りて二人して歩いたほうが効率的なんじゃないの、ってくらいに。
「でも偶然っていうか、今日じゃなくてもええのに」
51 :幸わせの小道 :2007/03/04(日) 18:55
れいなは何も見えない前方を、それでも見つめていた。
霧のせいで気温も一気に下がって、くっつきたくなったのも、たぶんそのせいだ。
「今日だからいいんじゃん」
「そうかなぁ……。相変わらず絵里はわけわからんことばっかり言うけんね」
「だって今日、れいなの誕生日だよ」
「知っとる。っていうか、だから今日じゃなくてもええって」
「だからぁ、今日だからいいんじゃーん」
だから。だから。身体バランス飲料会社のCMでもしてるように言い合って、わたしたちは白しかない視界の中を行く。
その恋人たちも何十年か前、こうしてこの島の何処かの道を通り、命を落としたのだろうか。
都会から旅行で来た青年と島の少女は恋に落ち、手をとり合って街へ出た。
だけど人の多いところでは大事なものがわかりにくい。情報ばかりあって、実感がない。
少女は耐えられなくなり、それを知った青年は決断する。
捨てるのは大切な人ではなくて、地位や名誉のほうだ。
二人はこの島へ戻ってきて、だけど何処にも戻れないまま死んだ。馬車が横転したのだ。
52 :幸わせの小道 :2007/03/04(日) 18:56
「何もそんな事故、れいなの誕生日に起きんでもええのに」
「順番が逆だよ。れいなが命日に生まれたの」
「そんなん関係ない。れいな悪いことしてないんだから、向こうのせいやん」
「……縁起が悪い?」
「そりゃもー、これ以上ないくらい」
とても悲しい話だと、おばあちゃんも言った。そう前置きして話し始めた。
そして、れいなはそれ以上につらそうな反応をした。初めて聞いた話にも関わらず、生理的に受けつけないというように。
ということは、変わってるのはやっぱりわたしなのかもしれない。
不思議なことはあるもんだ。わたしにはこれが、どうして悲しいのかわからない。
53 :幸わせの小道 :2007/03/04(日) 18:56
「ねえねえ、れいなぁ」
「なん?」
「どうして悲しいー? 怖いのー?」
はあ、とれいなはため息をついた。それはそれは大きな、綿菓子みたいなため息。
ほとんど何も見えない中を二人乗りで走行するのは、想像以上に神経を遣う作業らしい。
れいなは一度もわたしのほうを振り返らないまま、もちろん今回も前方を見据えたまま、不機嫌そうな声を出した。
「本当にわからん?」
「うん、わからんわからんー」
「バカにしちょる?」
「しちょらんしちょらーん」
 いつものように目くじらを立てると思ったのに、れいなはそうしなかった。
怒ってるようでもなかった。愉快そうでもなかった。
「……わかるから」
「ん?」
「その青年の気持ち、痛いくらいよくわかるから。れいなも同じ立場だったら……絶対同じことする」
54 :幸わせの小道 :2007/03/04(日) 18:57
わたしたちを乗せた自転車が、この島一番の下り坂にさしかかった。
れいなはブレーキをいっぱいに握って、それでも平らなところよりも速度は上がった。
「おっ」とか「よっ」とか間抜けな声を洩らして格闘するれいなを見ながら、
どうしてれいなが青年のほうに感情移入してんだよぅ、と思った。
観光客のために整備されるまでただのドロ道だったらしいこのあたりを、わたしたちは生きている。
それが幸福なことかどうなのかは、当たり前すぎて自分たちではわからない。
でも、悲しいかどうかだって、そうなんじゃない?
この坂を下り終えたら、れいなにそう言おうと思った。
少なくとも少女のほうは、そんなふうに愛されて、亡くなるその瞬間まで幸せな気持ちだったんじゃないかな。

その瞬間、霧の中に人の影を見たような気がした。一瞬のことでよくわからなかった。
確かに二人いて、楽しそうに踊っているように見えたけど、それはよくわからない。
無事に坂を下り終えたわたしたちにはもう、わかることはないんじゃないかという気がした。
55 :幸わせの小道 :2007/03/04(日) 18:58
「どうだっ!」
激しい運動をしたわけでもないのに、れいなは息を切らせて言った。
その口調がいつも通りのれいなだったので、きっと無意識に。
だけど普段よりも断然、神経を尖らせて運転していたのだとわかる。
まるで、遥か遠くに残してしまった後悔を拭い去るみたいに。
「……れいな、わたしたち、もしかして」
声が小さすぎて、聞こえてないみたいだった。
わたしは思いっ切り息を吸い込んで、れいなが驚いて振り向くに違いない声でもう一度、彼女の名前を叫ぶことにした。
それから話そうと思った。
さっき、霧の坂道で言おうと決めたことを。
もし頭がおかしくなったと思われないで済みそうだったら、ありがとうを。
56 :幸わせの小道 :2007/03/04(日) 18:58

END
57 :Making Love :2007/03/05(月) 23:45

駅での別れ、その凡庸さに感謝しながら、美貴は汗ばんだ額にはり付く前髪を整える。
両眼は腫れて見られたものじゃない。隠そうにも、隣を歩く彼女は夜も朝も隣にいた
のだから、知らぬはずも無い。

最後の日の思い出として残すに相応しくないからせめて笑顔を作ろう、と心掛けるほ
どに唇は歪む。ついさっきの夜明けには慰めるように口づけてくれた唇も、今はもう
別人のもののように鮮やかに彩られている。
美貴の嫌いな色だ。



「二度と会えなくなるわけじゃないよ」
とりあえずの荷物を抱えたて彼女は微笑む。
58 :Making Love :2007/03/05(月) 23:46

「帰ってくるかもしれないし」
嘘。美貴は言いかけて口を噤んだ。今は嘘のほうが優しいと判断した彼女を咎めるの
は、寂しい気がした。
「いいよ、帰って来なくても」
変わりの言葉はいつもの憎まれ口だ。
「もう…最後くらい笑顔見せて」
「…最後なの?」
「あ、最後じゃないよ」
「軽々しく言わないで。…ていうか楽しくもないのに笑えるわけないじゃん」
「…そっか」



景色は風情の欠片もない近代建築。
夏の早朝は清々しいといえなくもない。線路には陽炎、長く延びた先はゆらりと揺れ
る。それ以上の変化は無い。線路が切れたり、電線が歪んだりは、しない。
幼い妄想に美貴は溜息をつく。隠すのも億劫でむしろ堂々としたもの映る。
59 :Making Love :2007/03/05(月) 23:47

日常会話も人々の吐息も出会いと別れも使い捨ての、駅のホーム。
売り切ればかりの自動販売機、仄暗い階段、鈍い機械音、すぐ先の公園から届く花の
香り、鉄柱が作る日影の直線…まるでここにあるもの全てが、決まった手順で彼女を
奪っていくようで憎たらしい。

憎たらしい?憎もうとしても、道理の掴めぬ子どもでもないので上手く出来ない。
行かないで欲しい?たとえ感情を剥き出しにしても、彼女が行くのを止められない。
行かないで欲しいというのが正しい答えでもないように思う。
長く居過ぎたと呟いた彼女を否定し切れなかった自分も、認められるのだから。

ただ、行き先に居るという第三者の存在をどうしたら思考から打ち捨てられるのかが、
美貴には判らない。
60 :Making Love :2007/03/05(月) 23:48

「美貴ちゃん?どうしたの」
「うん…あ、あの…正反対だからさぁ」
「うん?」
「考えてることとかあんまりわかんないんだけど」
「うん」
「多分、これから幸せになるんだよね?」
「あたしが?美貴ちゃんが?」
「ふたりとも」
「…うん、きっと」
「きっとじゃなくて」
「…」
「だってそのために行くんでしょ」
「うん…」
彼女は歯切れの悪い返事を繰り返す。
手を塞ぐ鞄を持ち替えながら、紅茶のペットボトルの蓋を緩めた。
「飲む?」
「要らない」

今更気遣われても、と美貴は思う。
61 :Making Love :2007/03/05(月) 23:48

感情は一過性である。泣いても怒っても明日までは続かない。
だから悲しみに沈んだ美貴の気持ちも明日には薄れるだろうし、彼女の優しさも掻き
消えるだろう。
それどころか、彼女そのものが美貴の視界から消えるのだから本当に「今更」だ。

電光掲示板が次々と新しい数字を打つ。
緑、橙、その次の赤が示した電車、それが美貴をひとりにする。



ひとりになるのを知った日から、自分よりも彼女のほうが幸せに違いないと美貴は考
える。そうに違いない。置いていく方が悲しいなんておかしい。
それに、それこそ、願ったり叶ったりだ。
だって彼女ほど悲しみの似合わない女もそういない。
62 :Making Love :2007/03/05(月) 23:49



「美貴ちゃん、お休みの日、おうちに引きこもっちゃ駄目だよ」
「…わかんない」
「あたしが引っ張り出さなくちゃ出ない?」
「わかんない」
「ね、言うこと聞いて」
「聞いてるよ」
「本当?…もう、安心できないなぁ」
「…なにそれ」
「そのまま」

嘘。置いていくくせに。
美貴のことなんか忘れるよ。

少しずつ少しずつ、薄れていく。



「…遠い町でも…がんばってね…」
「…ありがと」
「美貴はここでがんばる」
「うん」
「…」
「あたし、美貴ちゃんに会えて良かった」
63 :Making Love :2007/03/05(月) 23:50





夏の香りがする。
風に乗って運ばれてくる花の香り。
その色はおそらく濃い色で、白や黄などの穏やかな色ではない。
とてもとても鮮やかで眩しいに違いない。
日陰を好んで眠っていた猫を、太陽の下に誘(おび)き出すほどに強烈に。



ゆらりと揺れる線路の向こうに、最後の車両が消えていく。
花咲く公園を過ぎてその先はもう見えない。
駅の景色から少しずつ、薄れていく。



少しずつ、少しずつ…。



そして、赤い点灯が静かに消えた。
64 :Making Love :2007/03/05(月) 23:51





ピアノの音が聞こえる。

部屋には楽器などひとつも無いのに、何処からか届く旋律が眠りを邪魔する。
繰り返すメロディ。

本来それは隣で眠る誰かの囁きであったはずだ。
すっかり醒めてからの甲高い声とは違う、甘やかな囁き。



半覚醒の中でそれを失ったのを思い出し、美貴は眼を開ける。
素肌に触れるのは何処までもシーツだけで、ぬくもりは全て自分の残骸に過ぎない。
癖でベッドの片側に寄っているのに気付く。
空いた広さは冷たいままだ。

誰もいない。
ひとりの部屋。
ふたりだった部屋。

彼女はもう、新しい部屋で美貴の知らない誰かと暮らしている。



「もう起きなきゃ…」
65 :Making Love :2007/03/05(月) 23:52

ふたりで買ったカーテンが差し込む夏の朝日をピンク色に染めている。
鬱陶しい感情を具現したような重苦しいそれを、美貴の眼は昨日まで良しとしていた。
好悪の問題ではない。
安堵の色だった。
持ち主を、赤い点灯に連れ去られた「彼女」を示す「色」だった。



「…幸せなんてなんにもなんないじゃん」



腫れたままの眼を見開いて、言い訳、負け惜しみ、恨み言、強がり、どれにも属せな
い何かを美貴は呟いた。
前向きな彼女と、素直じゃない彼女のあいだに生まれた、小さな想い。

「幸せってなんになる?」

そう言って体を起こす。
膝を抱えて丸くなる。これ以上小さくなれないほどに抱え込む。

汗ばんだ白い肌からは孤独の匂いがする。

「ねぇ?梨華ちゃん」
66 :Making Love :2007/03/05(月) 23:53

どうせなら幸せになってしまえばいい。
声にならない本音を強く抱き締める。
誰よりも幸せになってくれないと嫌だ。
永遠に生まれない声が、細い両腕の中で息絶える。



「もう起きなきゃ」



決意のように、同じ言葉を繰り返して、立ち上がる。
慈しみにさえ感じられたピアノの音は、もう聞こえない。



67 :Making Love :2007/03/05(月) 23:57

e n d

H.Utada / Making Love  ( 2006 )
68 :名無飼育さん :2007/03/06(火) 22:13
綺麗な曲ですよね
よかったです
69 :Making Loveの作者 :2007/03/14(水) 22:06
>>68 名無飼育さん
ありがとうございますー
好きな一曲です
また書けたら来ますね
70 :名無飼育さん :2007/04/28(土) 14:15
安全地帯(碧い瞳のエリス)を、いしよしで誰か書いてくれないでしょうか?
 
 「 あなたに逢うためだけに生まれてきたと 」
  
   大好きな曲なので・・。
71 :名無飼育さん :2007/04/29(日) 02:39
誰の曲か分かっちゃうようなことは書き込まない方がいいと思うなぁ…
そのアーティストの熱狂的なファンの方はあんまり快く思わないだろうし
72 :(inspired by Cherry) :2007/10/16(火) 14:47

私はこの人を知っている。
なぜ?どこで会った?分からないけど・・・

私はこの人を知っているんだ。

「よっちゃん、どした?」
「うん・・・。」

73 :(inspired by Cherry) :2007/10/16(火) 14:48

吉澤は考えていた。
ある週末、大学の先輩である藤本に誘われて飲み屋に来ている。
酒に強い吉澤の頭ははっきりしていた。藤本の愚痴を聞きながらあたりを見渡していると、近くの席に5、6人のスーツを着た男女が座っていた。合コンという風でもなく、同じ会社の同僚であるようだった。
その中の一人、酒に弱いのか軽いカクテル一杯とジュースしか飲んでいない女性に目が留まり、その女性もまた、偶に吉澤のほうに目を向けていた。
しかし、女性は目が合うとすぐに逸らすのだが、吉澤も諦めて視線を外すとまた目を向けてくる。

「美貴、あの人知ってる?」
「え?」

藤本が女性に目を向けたとき、藤本の顔色が変わったように見えた。
やっぱり。私はこの人を知っている。

74 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:49

吉澤は珍しく昂ぶっていた。理由は分からないが、
その女性について思い出したくて仕方ない。
しかし、返ってきた答えは予想に反するものだった。

「あ〜、どうだろ。分かんないわ。」
「は?」
「分かんないってば。つーか、話聞いてた?美貴もさぁ〜。」

藤本は話を続けた。しかし、吉澤の耳には届いていなかった。
吉澤と藤本の付き合いは長い。
歳は違うが、昔から大体の知り合いはお互いカバーしあってる。
その藤本が知らないということは、勘違いか、そうとう繋がりが浅いか。
後者はないように思えた。もし後者であったなら、この高揚感が説明できない。
否、前者であっても同じこと。たまたま藤本に話したことがなかったのだろうか。
否・・・。堂々巡りだ。藤本が嘘をついているのか。何のために?

75 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:50

その時、吉澤の思考を中断させるには十分な音量で携帯が鳴り響いた。
藤本に電話だった。どうやら恋人かららしい。電話を切った藤本が吉澤のほうを向いた。

「超むかつく。」

愚痴が増えたようだ。これでは、口を挟めそうにない。

散々に愚痴ってから、藤本は奢ってやると言って席を立った。会計を済ませ、
出掛けに振り返ってみるとあの女性はまた吉澤に視線を向けていたようだった。
目が合い、また逸らされ、後ろ髪を引かれる思いだったが、藤本に促されて店を出た。
店からの帰りでも、藤本の愚痴は続いていた。
結局、あの女性について藤本に聞くことは出来なかった。

76 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:50

翌朝、吉澤が目覚めると、すぐ横では藤本がまだ寝ていた。
こんなことしてるから恋人と上手く行かないんじゃないかと思った。
そうは思っても、応じている自分にも責任はある。
結局、何も言わずにいつものように振舞い、また応じるのだろう。
吉澤は若者にありがちな空虚感や、無気力によく悩まされていた。
何であれ、こうして求められることは吉澤の中の何かを埋めてくれていた。

ベッドの藤本を起こさないようにキッチンへ向かった。冷蔵庫からジュースを出そうとして、ほとんど何も入っていないのに気づいた。

藤本の方をちらりと見るが、まだまだ起きる気配はない。時計を見るとまだ6時だった。
吉澤は、他人の傍では熟睡できない性質だった。
それは酒が入っていても、長い付き合いの藤本でも変わらなかった。
下着姿のままゆっくりと伸びをした。
コンビニに行くことにし、シャワーを浴び、服を着始めた。

77 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:51

外に出ると、ひんやりとした空気が顔に当たった。不愉快なものではなかった。
しかし、吉澤は早朝を嫌っていた。なんとなく落ち着かない気分になるからだ。
これも理由は分からない。
ふと、昨夜のスーツを着た女性のことを思い出す。
藤本が起きたら聞いてみようかと思いながら歩きだした。

コンビニに着いたが、藤本が起きだすにはまだ時間がかかるだろうと思い、
立ち読みで時間をつぶすことにして雑誌コーナーへ向かった。
たまに買う雑誌が出ているのを見つけ、立ち読みより買って帰って読もうか、
という思いが芽生え、手に取ったままパラパラとめくりながら考え始めた。

78 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:51

しばらく後、買うことに決めた。
藤本の分も含め、朝食と飲み物など適当に選んでレジへ向かった。
レジは若い女性で、なにやら手際が悪く、吉澤はぼんやり外を見ながら待っていた。
コンビニの前を、犬を連れた女性が通過しているのが目に入った。
その瞬間、ぼやけていた吉澤の視界に輪郭が戻ってきた。

私はこの人を知っている。

見紛うことなく、昨夜の女性だった。
ジャージを着てたし、髪型も変わっていたけれど。
吉澤は走り出していた。
レジの店員に呼び止められるが、吉澤はコンビニを飛び出した。

しかし、外に出てもあの女性はいなかった。
マンションが多く、小さな公園がこのあたりにはいくつかあって。
往路にしろ、復路にしろ、あの女性の行き先を推測するのは難しかった。
追いついてきた店員がさらに吉澤を呼んだ。
すいませんと小さく謝りながら雑然としたレジに戻った。

79 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:52

藤本の部屋に戻ってきた吉澤は、買ってきた雑誌を見ずに音楽を聴いていた。
どうしても、思い出せない。昨夜の、そして今朝の女性が誰で、どうして知っているのか。
いつも聞いている曲が吉澤の心の靄を晴らしてくれる。
曲の切れ目に水音が聞こえた。どうやら藤本が起きてシャワーを浴びているらしかった。

ヘッドホンを外し、雑誌を読み始めた。
バスルームからの水音が止み、藤本が出てくる気配がした。
藤本は何か隠している。直感だったが、自信はあった。
ベッドで訊くわけにもいかず、ずっと我慢していた吉澤は、
意を決して、一言、発した。

「美貴、何で昨日嘘ついたの?」

一瞬だったが、確かに藤本は動揺の色を浮かべた。

80 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:53

「なんのこと?」

とぼけている。吉澤は確信していた。
藤本の表情と、今朝も見たあの女性の姿が吉澤に自信を与えていた。
そして、藤本の反応から、もうひとつ分かったことがあった。
藤本は吉澤に、隠したがっている。
あまり好きではないが、かまをかけるしかない。

「昨日の居酒屋の人だよ。やっぱ知ってたんじゃん?
さっきコンビニで会ったんだ。なんで教えてくんなかったの?」

さりげなく、もう誰か分かったんだという調子で。
上手く、言えたと思った。
しかし、藤本はかすかに笑みを浮かべ、あくまでとぼけ続けた。

「何を?よっちゃん知り合いだったの?」

藤本の顔から動揺は消えていた。否、かすかに、残っていた。
いつもならこれ以上聞いても無駄だとすぐに諦めるところだが、
今日の吉澤は譲らなかった。腹の探りあいなら負ける気はない。

一方の藤本にも自信はあった。もし本当に確認しているだけなら、
こんなに穏やかであるはずは無い、と。
吉澤にとってあの女性の情報はそれだけ重要であるはずだった。

81 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:53

吉澤は何も言わず、微笑を浮かべて藤本の目を真っ直ぐ見つめる。
この目で射抜いて、なお吉澤の思い通りにならなかった人間はいない。

「・・・何話したの?」

藤本が探りを入れてきた。
藤本は駆け引きに向いていないようだ。否、吉澤には敵わなかったようだ。
その顔にはまた、動揺が色濃く現れていた。

「いろいろと、ね。美貴はなんで隠してたのかな。」
「なんでって・・・」

ひっかかった。

「はい。認めたね。さ、教えて。あの人、誰?」

藤本の顔色がまた変わった。赤くなったり、青くなったり。
内心、吉澤は混乱していた。これほど藤本が動揺する理由に見当がつかない。
しかし、だからこそ、吉澤は表情を崩さなかった。
これが、藤本に真実を吐かせるには一番効果的だと判断した。
たとえ、困らせることになっても、吉澤は知りたかった。

82 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:54

「騙したんだ?おかしいと思った。」

表情を緩め、そう言って藤本は観念したのか怒りを覚えたのか、
吉澤に背を向け、近くの棚を開けた。
棚から出てきた『開けたらコロス』とかかれた箱。吉澤も見たことがあるものだった。
中に入っていたのは、一通の手紙だった。封は切られていない。
藤本は、はいと言いながら吉澤にそれを渡した。

『吉澤ひとみ様』

吉澤に宛てられた手紙で、差出人は『石川梨華』。
しかし、住所は今いる部屋、つまりは藤本の部屋になっている。
吉澤に宛てられた手紙が藤本の部屋に届いている。吉澤は混乱していた。
この差出人の名前にも見覚えがあるのに、誰で、どんな知り合いだったのか。
全く思い出せない。消印は、4年前だった。

83 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:54

吉澤は心臓がバクバクと強く脈打つのを聞きながら、手紙の封に手を掛けた。
急に、その手を藤本に掴まれ、動きを止めた。
吉澤が驚きと共に顔を上げると、藤本の顔には複雑な表情が浮かんでいた。

「よっちゃん、梨華ちゃんのこと思い出したの?」
「りかちゃん・・・?この手紙の娘?梨華ちゃん?」

藤本は悲しそうな目をして、言った。

「よっちゃん、高校のとき、入院したよね。あの時、
記憶がなくなってるって言われたでしょ。この手紙はその鍵になると思う。
何が書いてあるかは、美貴も知らない。でも一つ確かなのは、
覚悟がなければ開けちゃダメな手紙だってこと。」

たしかに、高校の頃、そんなことがあった。
3日ほど意識が戻らなかったらしい。何があったかは分からなかったが、
しつこく聞かれることもなかったし、事故か何かだろうと思っていた。
病院や学校で何人かに誰かのことを忘れたのかと聞かれたことがあった。
忘れるぐらいだからたいしたことはないと、気にしないまま時が過ぎた。
親に勧められるまま、転校し、それっきり考えたことも無かった。

今、ここにその記憶の鍵があると言う藤本。
本当ならば、なぜあの時に渡してくれなかったのか。
しかしその目を見れば、冗談でないことは明らかだった。

84 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:55

何を言われようとも、何も覚えがない吉澤にとっては、
とにかくこの手紙を見てみないことには何も言えないし、何より、
手紙を読んだだけで4年間失くしっぱなしの記憶が急に戻るとも思えなかった。

「おおげさだなぁ、美貴。手、離して。」

優しい口調で吉澤が言った。藤本の手が離れ、吉澤は封を切り、手紙を読み始めた。
部屋に沈黙が流れる。藤本は顔を歪め、目を閉じていた。

手紙を読む吉澤の顔からは表情が消えていった。

「あたしは、大袈裟だった?」

目を閉じたまま、藤本が尋ねる。吉澤は手紙から顔を上げなかった。

85 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:56

『ひとみちゃん
 
 あなたを信じられなくて ごめんなさい
 勘違いさせて ごめんなさい

 睡眠薬を飲んだって聞きました
 あなたが記憶喪失だって聞きました
 私のことを忘れてるのも聞きました
 
 忘れるのと忘れられるの、どっちがつらいのかな
 忘れられてもあなたはいることになるのかな
 
 美貴ちゃんにお見舞いに来て欲しいと言われました
 でも、会いにいけません
 申し訳ないし あなたに知らん顔されたらと思うと
 耐えられそうもないから
 強くなくて ごめんなさい
 あなたを試そうとして ごめんなさい
 あなたを傷つけて ごめんなさい

 二度と戻れないのは、分かっています

 今のあなたには何のことか分からないと思うけど
 あなたはわたしの魔法使いなのに
 たった一言でどんなときでも私を強くしてくれるのに
 聞きたかったよ ひとみちゃん
 言い訳じゃない言葉が聞きたかった

 謝ってばかりで ごめんなさい
 読んでくれて ありがとう
 読み終えたら 捨ててください

 P.S. 私もあなたがいれば他に何もいらない
    ずっと、あなたを待っていてもいいですか
                      石川梨華』

86 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:57

不意に、吉澤が顔を上げた。藤本も目を開けたが、何も言わない。

「梨華ちゃんは死んだんだよ。」

吉澤が、虚ろな目をして言った。藤本の胸に痛みが走った。
話すべきではなかったかもしれない。しかし、吉澤は知りたがっていたし、
いつまでもこのままにはしておけない。

「でも昨日会ったでしょ?」

あぁ――――――――。
目を閉じた吉澤の脳裏に、遠くへ行ってしまっていた記憶が戻ってきていた。

87 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:57



******************



88 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:58

吉澤は高校生の頃、この部屋に住んでいた。
このマンションの持ち主は吉澤の親戚で、この近くの私立高に通う吉澤に貸してくれていた。
その頃の吉澤には恋人がいた。恋人の名は石川梨華。
お互いがお互いを必要としていた。浮気の多い吉澤だったが、
いつも石川の元に戻ってきていた。浮気がバレれば毎度喧嘩が始まり、
散々言い合ってから、吉澤の一言で収まっていた。

『愛してる』

吉澤は浮気の後にしかその言葉を使わなかった。
普段の石川にいくら求められても、浮気相手に詰られても決して言わなかった。

89 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:58

一つ年上の石川は、高校三年の2月、進路に悩んでいた。
卒業後は附属の大学に進学が決まっていたが、留学の話が出てきたのである。
そうなると吉澤とは離れ離れになってしまう。受けるかどうか。
ただでさえ浮気性の恋人。いっそ別れてしまえば。
そう思いながらもやはり吉澤の事とは離れたくないのが第一にあった。

決戦は土曜日。休日の吉澤は寝ているか浮気しているか。
吉澤が石川のために休日を空けることは、ほとんどなくなっていた。
石川は、相談があるというメールを送信した。吉澤の返信は早かった。
吉澤は起きていた。まだ午前中。今なら浮気相手よりは優先してくれるかもしれない。
しかし、吉澤は用事があるから夜電話すると言った。

90 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:59

その夜、電話してきた吉澤は留学に反対しなかった。
引き止めて欲しかった石川は激昂した。
のらりくらりと吉澤が受け流し、ひとしきり怒りが収まった頃、
諦めた石川は、吉澤に言葉を求めた。強くなれるから。頑張れるから、と。

吉澤はそれをも拒み、石川はついに泣き出した。

石川は、私がいなくなったらもう言えないんだよ、後悔しても遅いんだよと言い、
こう続けた。不安なの、お願いだから言ってよ。それでも吉澤は沈黙した。

『もういい、ひとみちゃんの気持ちは分かった、私がいなくなって、
もう言えなくなってから後悔すればいい。さよなら。』

改めてそう言い、泣きながら石川は電話を切った。
電話はもう繋がらなかった。

91 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:59

夜の道を、吉澤は走った。
石川は寮に入っていた。藤本の部屋に向かい、鍵を開けてもらった。
寮に侵入し、石川の部屋に向かった。
部屋に着き、石川に呼びかけたが、返事はなかった。

持久戦だと思い、朝までその部屋の前に座っているつもりだった。
午前2時、中庭で大きな音がして、寮内がざわめきだした。
この騒ぎで石川も見に出てくるだろうと思い、吉澤は立ち上がった。
しばらくして、寮母の悲鳴が響いた。中庭を覗くと、
人だかりの中心で、一瞬照らされた影には赤い染みが広がっていた。
救急車のサイレンが鳴り響いた。
それでも吉澤は待っていた。石川は出てこない。
吉澤の頭の中で最悪のシナリオが出来上がった。

侵入者である吉澤は騒ぎに乗じて寮をあとにし、
夜明けまで一人、部屋に佇んでいた。早朝のニュース。
高校の寮から飛び降り自殺。飛び降りたのはこの寮に入っていた三年生・・・
そこまで聞いて、吉澤はテレビを消した。

92 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 14:59

朝、藤本は通いなれた吉澤の部屋に向かっていた。
合鍵の場所を知っていた藤本は、深夜の飛び降り騒ぎの話をしようと
部屋に足を踏み入れた。電話が繋がらないので寝ているものと思い、
寝室の扉を開けた。

机の上には紙と空き瓶があった。

『梨華ちゃんがいれば他には何もいらない
 梨華ちゃんがいないなら何も意味がない
 この命にも意味はない』


3日後意識を取り戻した吉澤に、自殺を図った部屋と石川に関する記憶はなかった。

93 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 15:00



******************



94 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 15:00
「石川梨華は、あたしの一番。」
「うん。」
「ここ、あたしの部屋だった。」
「・・・うん。」

吉澤の顔には表情が戻ってきていた。空虚感が消えた。
吉澤に足りなかったのは、石川の存在だった。

「なんで教えてくんなかったんだよ。」
「忘れたいほど辛いならって・・・。」

藤本が吉澤の両親に事情を説明し、
いつか自然に記憶が戻ったときのためにこの部屋を保存し、
戻らなかったときは全て処分しようという結論が出た。
辛いなら、思い出させたくない。思い出したなら、全て戻してあげたい。
藤本は高校のときにしたその約束を守り、この部屋を守っていた。
リミットは藤本が大学を卒業するまで。吉澤は間に合った。

「生きてるなら辛いわけないじゃんか。」

輝くような瞳でそう言う吉澤。
藤本は何も言えなかった。本当はもう一つ理由があった。
それは藤本の秘密。告げない、大事な、片思い。
ずるい自分を押し殺し、藤本は、そだね、と笑い、気持ちに別れを告げた。

95 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 15:01

記憶が戻った吉澤は、あの日のことを初めて藤本に話した。
その話を聞いて、藤本は初めて吉澤の遺書の意味を正しく理解した。
石川に振られたのだと思っていた。それはある意味で合っていたが、
それだけではなかった。それを知った藤本は、こみ上げる涙を抑えられなくなっていった。

「ごめ、よっちゃん。あたし、梨華ちゃん、責め、た。
 梨華ちゃんは、悪くなかっ、のに。」
「梨華ちゃんに、どうしたの?」

吉澤は穏やかに、優しく藤本に尋ねた。それがまた、藤本の心を責め立てる。

「梨華ちゃん、留学した、から、よっちゃんに、ひどいこと言って、
 逃げたんだと、思っ、って・・・あたし、ひどいこと、いっぱい、言った。」
「へぇ、オーストラリアだっけ?美貴、文句言うために国際電話掛けたの?」
「梨華ちゃんが、掛けてきて、よっちゃんの、様子、聞かれて。
 あたし、初めは、ちゃんと答えて、たんだけど。」
「話してるうちに頭に血上っちゃったんだ?」
「・・・うん、でも、梨華ちゃんは、否定、しなかったから、てっきり・・・。」
「そっか。私のために怒ってくれたんだ。まぁ、泣き止みなよ。」

吉澤は、藤本の肩を抱き、ソファへ誘った。
コンビニの袋を開け、飲み物を渡し、藤本が落ち着くのを待った。

96 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 15:01

藤本が泣き止むまでの間、吉澤は肩に手を回し、藤本の頭を撫でていた。
落ち着きを取り戻した藤本は、吉澤に訊いた。

「梨華ちゃんのこと、好きなの?」
「心の底から愛してる。他には何もいらない。」

即答した吉澤に迷いは無かった。
「・・・美貴もいらないの?」そう聞きかけて、藤本はぐっと言葉を飲み込んだ。
この片思いは、ついさっき終わったはず。
吉澤は、藤本の体温は受け入れても、心音は受け入れてくれないから。
それでも・・・

「でも、梨華ちゃんは会いにきてくれなかったよ?」

言わずにいられなかった。石川を責めすぎた自分を反省してはいたが、
これもまた、本音だった。

「あぁ、手紙に書いてあったよ。美貴、頼んでくれたんだってね。
 しょうがないよ。私が悪かったんだし。」
「よっちゃんは悪くないっ!」
「美貴。私が悪かったんだよ。あいつのこと、忘れたりなんてするから。」

思わず叫んだ藤本に向けられたのは、輝きと、慈しみに満ちた吉澤の目だった。
この4年間、決して見せることのなかった目。胸が震えた。
藤本の愛したクールな吉澤は、そんな目をしない人だった。
冷徹で、鋭い目こそが、藤本にとっての吉澤の象徴だった。
吉澤にとって石川以外はその他大勢に過ぎないのだ。
藤本もその内の一人に過ぎないのだと、改めて実感した。

97 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 15:02

「美貴、あの部屋にあった包み、見た?」
「・・・知らない。あの部屋は、触ってないから。」

吉澤が指したのは、かつて吉澤が物置にしていた小部屋だった。
それぞれに思い入れのあるものだったのだろうが、
藤本はそこで石川の幻影を見たくなくて、整理したことがなかった。
吉澤が小部屋に入っていく。開けられた扉の奥からは、埃の臭いがした。

「あった?」

出てきた吉澤に、藤本が問う。
吉澤は、小さな包みを大事そうに抱えていた。
何かに包まれていたのか、吉澤の変わらぬ気持ちを反映しているのか。
その包みは全く汚れていなかった。

「あったよ。うん。美貴、ありがと。ちょっと出掛けるね。」

マンションを出た吉澤は、愛おしそうな目で包みを確かめ、歩き出した。

98 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 15:02

吉澤が出て行った部屋で、藤本美貴は4年間を振り返っていた。
石川を失って、吉澤が変わったのには気づいていた。
それでも、はっきりとした傷を見つめていない吉澤は表面上、明るかった。
その顔を見るたびに、鼓動が高鳴り、同時に切なくもなった。
時々、寂しい目をするのも知っていた。その理由も知っていた。
石川の代わりになりたかった。なれると思っていた。

それが間違いだと分かったのは、今の恋人と付き合いだしてすぐだった。
吉澤への想いが実らず、吉澤からも付き合えばと言われ、半ばやけになって。
やっぱり上手く行かなくて。吉澤を呼んで、泣きながら寂しいと言った夜。
何度せがんでも藤本と手をつなぐことすらなかった吉澤が、藤本を抱いた。

高校時代の吉澤の浮気相手はみんな、他に恋人がいた。

吉澤は、心を受け止めてはくれない。否、心を与えてはくれない。
心を与える先はもう決まっているから。唯一のその存在は、吉澤の一番奥にいつも居て。
無意識の中に閉じ込められたその存在は、藤本の予想以上に大きかった。
見つけてしまった吉澤の想い。
その日から、藤本は記憶を取り戻す日が来ることを確信していた。
抱かれることに喜びはない。吉澤への想いが溢れそうなとき、藤本は吉澤に抱かれる。
吉澤を感じるためでなく、その奥に居る石川を感じ、諦めるために。

99 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 15:02

石川梨華は、留学から帰ってから、就職した今でも習慣となっている散歩をしていた。
就職先は母校とは遠く離れた場所にある会社だったが、今石川が勤めているのは、
母校のすぐ近くにある支社だった。

研修の間、半年ほど本社に勤めていた期間を除いて、
石川は休日にその習慣を欠かしたことが無かった。近所で一番大きな公園に行き、
母校の前を通って、その先にある小さな公園でベンチに座り、
帰りは母校の裏手の道でかつて所属していた寮を眺めて帰る、というコースを
短大生のころから歩き続けていた。

いつしかそのコースを歩いて心が痛むこともなくなっていたが、
今日の石川は胸の中で傷が疼くのを感じていた。
普段の生活は、煩わしい事が多すぎてゆっくり考える暇も無く過ぎていく。
大きな傷を負うものにとってそれは時にありがたい。

それでも流せないから、大きな傷である。
きっかけさえあれば、今もそこからは痛みが溢れてくる。

100 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 15:03

今日は土曜日。4年前、話をしようと決めたのも土曜日だった。
その日の行動が、最愛の人に死をもたらした。石川の中の吉澤は死んだに等しい。
今日、そのことを実感させられていた。

支社に勤めるようになってから、幾度と無く街で吉澤の姿を目にしていた。
吉澤は気が付かず、石川もちくりとした胸の痛みをかみ締め、目を逸らす。
いつもそれだけだった。それすらも慣れてきたのか、
吉澤の姿を見れるだけでも幸せだと感じ始めていたのに。

藤本に見舞いに来いと言われたとき、初めに浮かんだ最悪の想像。
吉澤が頭の中から石川を消去してしまったのだという実感。

『あなたに知らん顔されたらと思うと』

見てしまった。会社の飲み会。偶然近くにいたあの人。
思い出の中の吉澤が崩れていくのを感じた。藤本との約束がある。

「会いに来れないなら、今後勝手な都合で近づくな」

せめて自分だけでも思い出を守りたかった。そのために約束したのに。
一番見たくなかった顔を見てしまった。結果、思ったとおり、
石川の中の吉澤は音を立てて崩れ始めた。
藤本と飲む吉澤は、石川の前で決して見せることはなかった目をしていた。
輝きがなく、虚ろで、冷徹で、鋭い目。そして何より、
石川を見て不思議そうな、表情を浮かべた。

輝きに満ち、慈しみをたたえ、愛おしそうに石川を見つめる吉澤ひとみは、
やはり死んだに等しかった。

101 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 15:03

公園のベンチに座って俯いていた石川は、声を掛けられた。

「どうかしましたか?」

石川の中に、さらに重い空気が広がった。昨日少しだけ聞こえた声。
一番会いたくて、一番見たくなかった人の声だった。

「いえ、大丈夫です。」

そう言って少し目線を上げると、シンプルな黒いジャケットを羽織った姿が見えた。
当然ながら、記憶の中の吉澤よりも大人な印象だった。

「そう?まぁ、それはそうとして。」

なんという偶然。石川はもう、この散歩を止めにすることを決めた。
近所の犬の散歩を頼まれたおかげで、エクササイズとしての習慣は事足りていた。
何を言うつもりなのか、皆目見当がつかない。まさかナンパする気か。顔色も伺えない。
昨日の様子を思い出すと、顔を見る勇気がもてなかった。
もう一度傷つきたくなくて、顔を伏せたまま、なんですかと聞くと、答えは、

「ひさしぶりだね。」

思わず、顔を上げた。そして、石川の目に映った吉澤は、

「ひとみ、ちゃん?」

ずっと守ってきた、崩れ去る前の思い出に居る吉澤と、同じ目をしていた。

102 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 15:04

「おっと、そう呼ばれるのも久しぶりだぁ。」

優しい目だった。石川が一番恐れていた、不思議そうな色は消えていた。

「なんで・・・?思い出したの?」
「・・・うん。お待たせ。18歳の誕生日から数えて・・・わかんねぇけど、
 おめでとう。これ、プレゼント。開けてみ。」

石川の前に包みが差し出された。
そのラッピングには見覚えがあった。2年前までこの近くにあったお店。
以前は、石川もよく訪れていた。少女趣味な小物や雑貨に溢れた店で、
いつも、恥ずかしいから待ってると言って、吉澤が中に入ることはなかった。

胸が高鳴り、思い出の中に引き込まれるのを感じながら包みを開ける。
そこにあったのは、あの頃、外から見えるところにディスプレイされていた時計。
可愛いけど、値段はちっとも可愛くなくて。
諦めのため息と共に、吉澤に漏らしたことがあった。

「ひとみちゃん・・・これ・・・。」
「う〜ん、美貴が付き合ってくんなくてさ。朝の開店から、
 ずっと店の周りうろうろしてて、焦ったよ。梨華からメール着てさ。」

ずっと忘れてたせいか、つい先日のことのように感じる、と吉澤は笑った。

「あの日に買わないと、梨華の誕生日に間に合わないと思って。」

また浮気をしていると、なのに聴きたい言葉は言ってくれなかったと。
そう思っていたのに。石川は疑っていた自分を心から恥じた。
4年越しに贈られた時計が、石川の視界の中でその輪郭を失っていった。

103 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 15:04

「なんだよ〜、泣くなよ〜。泣くならこの胸で泣けよ〜。」

吉澤がおどけた風に言い、両手を広げた。石川が飛び込み、吉澤の温度が包みこむ。

「きゃっ!」

吉澤が、石川の脇をくすぐった。何すんのよと言いながら、驚いて離れかけた。
満面の笑みを浮かべた吉澤が、その腕を掴み、
自らの腕の中へ引き戻した。強く、強く抱きしめる。

「二度と戻れないなんて言うなよ、二度と離さねーから。」

吉澤は手紙を思い出し、石川の深い諦念に胸を締め付けられていた。
石川は、少なくとも見た感じでは、か弱い。
こんなにすぐ泣いてしまう、こんなにすぐ悩んでしまう、こんなに細い体に、
どれだけの罪悪感を押し付けてしまっていただろう。
あの手紙を書くのに、どれだけの気力を振り絞り、どれ程の覚悟が要っただろう。

「すんげぇ、待たせた。ごめん。」

104 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 15:05

香水や、シャンプーや、石鹸では再現できない、吉澤ひとみの匂い。
人間の記憶の中で一番印象に残ると言われる嗅覚が、石川を酔わせる。
抱きしめてくれたと思ったら、くすぐられて、本気で怒っているのに、笑われた日々。

昔書いた手紙。
送ったきり返事はなく、期待もしてなかったし、捨てて欲しいと言った手紙。
石川には、はっきりした理由は分からなかった。それでも、
自分に関する記憶を失ったのだから、やはり、原因はそこにあるのだとも思っていた。

初めて、聞ける機会が訪れた。
記憶が戻った吉澤は、石川のところへやってきた。
嫌われたわけでは、なかったのだろうか。

恐る恐る尋ねると、吉澤は抱きしめる手に力を込め、その理由を語ってくれた。

お前を失ったと思った。何か、追い詰めてしまってたんだと。
何度も浮気してたから、その所為だと思った。たまらなくなって、後を追った。

忘れた方も、忘れられたほうも、自分を責めていた。

105 :(inspired by cherry) :2007/10/16(火) 15:07

お互いの勘違い解け、4年間のすれ違いが収束したこの場所は、
二人にとって馴染み深い公園だった。いつも、“魔法”をかけていた場所。

巡り会えたこの場所。
石川の耳元で、吉澤が囁く。低く、優しく、響かせる。

「愛してる」

今度の魔法は決して解けることがないように。

ぎゅうっと、この幸せを、つぶれるほどに抱きしめて。

106 :名無飼育さん :2007/10/16(火) 15:07




Endです 
107 :名無飼育さん :2007/10/16(火) 21:48
ありがとう
とても良かったです
108 :名無し飼育さん :2007/10/16(火) 22:17
久しぶりに心に響く作品に会えました
作者さんありがとう
109 :名無飼育さん :2007/10/17(水) 00:16
うわー、すごく面白かったです。
こういうのを「曲を題材にした作品」と言うのですね。
110 :名無飼育さん :2007/10/17(水) 00:55
うわっあげてしまった申し訳ない
111 :名無飼育さん :2007/10/17(水) 09:17
是非また読みたいです
112 :書いた奴 :2007/10/17(水) 16:34
ありがとうとまで言っていただけると、
恐縮です。

お目汚し失礼いたしました。
113 :名無飼育さん :2007/10/17(水) 23:08
曲名が英語だから何だかサッパリわからなかった馬鹿な自分orz
でも気づいたらまたその奥の深さにビックリしました。
すごくいいお話をありがとうございました。
114 :名無飼育さん :2007/10/19(金) 20:56
良いいしよしでした。ありがとう。
115 :サクラ色の季節 :2008/04/14(月) 17:05
「パ、ス、テル〜カラーの〜瞳に恋した〜」

ホロ酔い気分で気持ちよさそうに歌っているよっさん。
歌詞間違っとるがな。


「えー!マジっすか?よしざー、ずっと“瞳”だと思ってましたよ!?」
「コレん時、あんたナンボやったん?」
「えーと…、欽ちゃんがマラソン走ってた時だから…」
「ちょ、ちょぉ待ちや!歌番組とかとちゃうんか?」

ハァ…とか、間抜けな顔して頷いとるよっさんを見て、逆にため息が出てくる。
久々に年を感じるなー。


「でも、よしざーはパステルな――――…」

少し前を歩いていたよっさんが、ふいに振り向いて何か言っとる。

「あ?何やて?」
「またー!ちゃんと言ったんだから、聞いといて下さいよー!」
「そんなん言うたって、聞こえへんかったんはしゃーないやろ?」

せっかくキメタのに、だのゴチャゴチャ言って頭を掻きむしりながらよっさんが近付いて来る。
せっかくキメタ髪がグシャグシャになってんで。

116 :サクラ色の季節 :2008/04/14(月) 17:06


「よしざー関西のレギュラー入ったんです」
「よかったなぁ。アタシもそっち行く事多いから、また飲みにでも付き合いやー」

と、言っていたのはつい先月の話。

早速、収録終わりにビール飲みませんか?ってメールが来たから飲み屋にでも行くんかと思ってたら、
缶ビール片手に夜桜の花見。
残念やったなぁ。こないだの雨で葉桜満開やな。

花冷え?寒の戻り、言うんやったかな?
また寒くなった夜風に肩をすくめる。

新しい缶を開けて、よっさんが買って来てくれたつまみの肉まんを頬張る。
どれがいいか分からなかったからって全種類買って来てからに。何個食べんねん。
ま、ええけど。気持ちが大切やし。

今年も一緒に来れただけで十分やしな。



117 :サクラ色の季節 :2008/04/14(月) 17:08

「よしざーは、その…なかざーさんの、パステルな瞳にマジで恋しました、って言ったんですよ」
「ハ?…あ、えっ?」
「ちょっとー、また聞いてなかったとかはナシですよ!」
「いや、ちゃう。ちゃうよ」

聞こえてなかったんやなくて。聞こえてたから、ホラ…。
アホか。ナニ、言うてんねん?自分。



少し強めの風が吹いて、残っていた桜がザッと散っていった。
最後の桜吹雪。

アタシを見つめる吉澤の瞳に映った、殆んど白に近い淡い淡い桜色。

あぁ。今更ながらパステルカラーの季節って、この桜の季節やったんか、って思った。


「最近はカラコンもいい話聞かへんし、辞めようかって思ってんねんけど。付けた方がええか?」
「いやっ!いいッス!!」


付き合いだしてもう何年にもなんのに未だに敬語が抜けへんなぁ。
ゴールなんてどこにあるか分からんけど、行けるとこまで行ってみるんもええかもな?
アンタと二人やったら、きっと楽しい道のりになりそうやん。なぁ。

桜より紅く染まったよっさんの頬を見て、ついニヤケてしまいながらそんな風に思った。

「…よしざーはっ、あのなかざーさんに胸が締め付けられるような恋をしてぇ、
カラコンを脱いだマッパのなかざーさんを愛しちゃったのでっすー!」


前言撤回。
このアホの酔っぱらいがっ!
とりあえず思いっ切りぶん殴ってホテルに連れ帰った。
明日になって「覚えてない」とかほざいたら、もう一回殴ってやろうと固く心に誓った。




おわり
‐『負けないで』より‐
118 :ハピネス〜幸福歓迎!〜 :2008/05/01(木) 15:12
Berryzと℃uteの合同公演の練習している日に、梅さんから極秘の話を聞いた。

夏にあるワンダで、スペシャルユニットの話があるみたい。

そんでつん久産がその企画を秘かに募集するみたいなんだけど、
それに応募しようと思うんだけど、手を貸して欲しい・・・て言うことなわけ。

不審な目なのを感じたのか、
今回と同じような事は、いくつかあったと説明を始める。

なっちさんと舞美のも、なっちさんの案が採用されたんだとか・・・
ハイキングにしても、ミュージカルに出演しない人で、応援かやるのはどう?
みたいなことを三好さんが提案したみたいだとか・・・

それで
「考えとく」
とだけ言っといたけど・・・
119 :ハピネス〜幸福歓迎!〜 :2008/05/01(木) 15:13
嘘かもしれないけど、おもしろそうだから、ちょっと考えてみる。

何も思い浮かばないけど、ウキウキする。

横になって、目を閉じてみる。

・・・・・ワンダって、ほとんど十代だよね。

teenage・・・teenって、19teen〜13teenだっけ。

するとその齢の子たち七人で・・・『てぃーんくらぶ』ってどうだろう?

7月にあるから、そこを基準にしよう・・・
19から順に13まで書いてみる。
120 :ハピネス〜幸福歓迎!〜 :2008/05/01(木) 15:27
19teenはえーと・・・生年月日は・・・
今年が2008年だから・・・1989年だよね。

すると7月3日生まれの重さんか、その前年の12月23日生まれの亀さん、10月20日生まれの垣さんってとか、
・・・重さんがいいな。
19の横に道重さゆみと書く。
121 :ハピネス〜幸福歓迎!〜 :2008/05/01(木) 15:28
18teenは・・・1990年って、えんなしかいない、エッグの子は・・・
そうだ、前年の11月11日生まれのれいにゃにしよう。
18の横に田中れいなと書く。

17teenは・・・あっ、この話を持ってきた梅さんにしよう。
17の横に梅田えりかと書く。

16teenは、もちろん自分、徳永千奈美と一段と丁寧に書く。
122 :ハピネス〜幸福歓迎!〜 :2008/05/01(木) 15:28
15teenは1993年だから、6月15日生まれのかんなか、8月3日生まれの熊井ちゃんか、
・・・8月って微妙だけど・・・ごめん熊井ちゃん、
15の横に有原栞菜と書く。

14teenは、なっきーに、りしゃに、あいりに、ちさーか・・・
ベリーズということで、菅谷梨沙子と。

13teenは、マイマイで決まり・・・あっ!1996年2月7日生まれだ!
1995年生まれというと・・・エッグの子しかいない?
すると3月12日生まれのかにょにしよう。
13の横に福田花音と書く。
123 :ハピネス〜幸福歓迎!〜 :2008/05/01(木) 15:29
これでできたとにやにやしていると突然、

「何やってんの?」

桃が覗き込んでる。

「梅さんから・・・」

「またうそに乗せられてるんでしょ?」

「別に・・・」

どうだっていい、こうやってるだけで幸福だから。


 E N D
124 :愛の戦士 :2009/10/11(日) 22:46


もう少し、もう少し。
そう自分に言い訳をして、伝えたい気持ちはまだ、言葉にならないまま。



先生の長いHRが終わり、生徒たちは次々に教室を出ていく。
あたしも、カバンを肩にかけ、教室を出た。

「あ、」

窓の外は雨。朝は降ってなかったのに。窓を開け、手を出すと、そこそこ強く手のひらに雨粒が当たった。
どうしようか。誰かに入れてもらおうか、と思い教室を覗いてみる。

「わ!」
「うわあ!!!」

背中を叩かれる。
急いで振り返ると、とっても爽やかに笑う愛ちゃんがいた。

「びっくりするじゃんかーもう・・」
「あっはっは〜!里沙ちゃん見つけたからさ」
「普通に声かけてよ」

やだ。ニコニコと拒否された。なんかあたしまでつられて笑ってしまう。可愛いからもう何でもいいや。

「里沙ちゃん、傘持ってきたあ?」
「それが持ってきてないんだよ」
「あーし持ってきたんよ」

背中に隠してたピンクの傘を得意気に出して、先で足元をこつこつと叩いた。
にやり。意地悪く笑って、愛ちゃんは顔を覗きこんできた。
あたしの言葉を待ってるみたいに

「・・入れてください」
「いいですよ〜」


125 :愛の戦士 :2009/10/11(日) 22:47


学校から駅までの距離ってこんなに短かったっけ。愛ちゃんと二人だとなんだかあっという間。
さっきまで恨んでた雨に今では感謝してる。傘の中、愛ちゃんとの距離がとても近くて、鼓動が伝わってしまわないか、なんて心配になる。触れてる肩から気持ちがバレちゃわないかな、とか。
そんなのあり得ないんだけど。

「愛ちゃん肩濡れてる」

ブレザーの右肩が雨に濡れている。傘からはみ出てたんだ。急いでハンカチを取りだし、拭う。

「いいよ、そんなの。里沙ちゃんも濡れてるし」

肩をパンパンと払われる。ハンカチ持っとらんわあ、とあたしの手からそれを取ると、優しく拭いてくれた。
目が合う。視線をそらすことが出来ない。ドキドキする。顔、赤くなってないかな。

「あのさ・・・」

今しかない。そう思ったときには、もう声になってた。ぐっと拳を作った。自然に、自然に。

「ん?・・・あ!そういえば昨日のMステ観た?」
「え?」

愛ちゃんは思い出したように言った。昨晩は好きなミュージシャンが出てたみたいで、興奮しながら感想を口にする。

126 :愛の戦士 :2009/10/11(日) 22:48
「あーしは、やっぱりああいうロック!っていう激しい曲調が好きだな」
「・・・うん、あたしもそれがいいと思う」

また、言えなかった。せめて、告白とまでいかなくても、気持ちのはしっこくらいを言葉にしたかったのに。
伝えようとしたら、愛ちゃんが話を始めるから──っていうのはただの言い訳。
こうやって、気持ちを伝えられないまま、一年が過ぎようとしている。
季節が巡って行っても、気持ちはずっと冷めることを知らない。むしろ熱くなってってるくらいだ。
愛ちゃんが、どうしようもないほど、好き。


電車に乗る。5分ほど揺られると、愛ちゃんが降りる駅に着く。あたしはもう少し先の駅だから、帰るときは、いつも愛ちゃんが先に降りるんだ。

「気をつけてね」
「里沙ちゃんもね」
「傘、ありがとう」
「うん。いつでも入れたげる」

笑って手を振った。ばいばい。扉が閉まる。見えなくなるまで、ずっと目で追った。
127 :愛の戦士 :2009/10/11(日) 22:49
部屋に入り、ため息とともにベッドに沈んだ。枕に顔を沈め、さっきまでの余韻に浸る。
ふと、引き出しに閉まったままの手紙を思い出した。体を起こし、取り出す。出せずじまいの手紙。差出人はもちろん、愛ちゃん。

「うわー…」

きっと真夜中に書いたんだと思う。ストレートすぎて恥ずかしい内容だった。出さなくて、いや、出せなくて良かったなって本当に思う。手紙をビンクの便箋に入れて、引き出しにしまった。

携帯を開く。アドレス帳にある“愛ちゃん”の文字を押す。電話番号の表示し、通話ボタンを押した。

『もしもし』
「あ、愛ちゃん?いま大丈夫?」
『うん、どした?』

耳に感じる愛ちゃんの声。気持ちがかき乱される。

「明日、放課後ひま?」
『うん!むしろ毎日』
「じゃあ、遊ぼ?」
『おー遊ぼっかあ』

笑顔が浮かぶ。きっと今も笑ってるんだろうな。

『今何しとお?』
「何もしてない」
『なんやそれ』
「愛ちゃんは?」
『何もしてないけど・・』
「一緒じゃんかあ」

会いたい。明日じゃなく、今。
気持ちは止まることを知らず、一分一秒、熱くなっていく。
128 :愛の戦士 :2009/10/11(日) 22:50
『まあね』
「暇なの?」
『うん、かなり』
「じゃあ今遊ぼ」
『まじで?…あ、雨やんでる』
「じゃあ、駅で」

私服に着替え、自転車に跨がった。少し湿った風が顔に当たる。赤くなった頬をどうか、冷ましてください。


もう、迷うことはない。


自転車をとめて、駅の東口の前にあるコンビニに立つ。休みの日とかはここでよく待ち合わせるのだ。
空を見上げると、さっきまでの雨が嘘のように、青く晴れていた。日差しが雲の隙間からのぞいて、眩しい。天気も気まぐれだなあ。

「おーい」

出口から愛ちゃんが小さく手を振る。小走りで近づいてきた。

「待たせたあ?」
「ううん、全然」
「ほんと?」
「ほんとほんと」

どちらからともなく、歩き出す。向かうのは公園。よく、二人で行く公園。
どこに行くか迷ったりしたら、必ずここへ来て、ぶらんこに揺られながら考えるんだ。

夕方だから当然か、ぶらんこは子どもたちが使っていた。行列になり、順番待ちをしている。
公園に入ってすぐにあるベンチに腰かけた。
129 :愛の戦士 :2009/10/11(日) 22:52
「どしたんやあ、いきなり誘って」
「あのさ…伝えたいことがあって」

こんな風に遊んだりできなくても、いい。っていうのは強がりだけど、伝えたいんだ。
ダメだったら一晩中泣けばいい。一晩で足りなければ次の日も。
ただ、気がかりなのは、困らせてしまわないか、ってこと。

「なんや改まって」
「・・一回しか言わないからね」
「うん」
「愛ちゃんが・・・好き」

まっすぐ目を見て言うことは出来なかった。スニーカーの先を見つめる。ぶらぶらと揺らし、土を蹴った。

「・・・あーしも好きやよ」
「いつも言ってるのとは、意味が違うの」
「わかってる。それでも・・一緒やよ」

驚いて、顔を上げた。愛ちゃんも、自分の靴の爪先を見てた。耳が赤いように見えるのは気のせいなのかな。
130 :愛の戦士 :2009/10/11(日) 22:53
「愛ちゃん、」

抱き締めた。愛ちゃんの匂いが鼻をかすめる。好きだ。大好きだ。切ないほど、愛しい。
ちからいっぱい抱き締める。背中に愛ちゃんの手が回った。心臓の音がうるさいほどに響く。これ、あたしのかな?それとも、愛ちゃんのだったりして。

「ずっと好きだから」
「うん」
「付き合って・・・ください」
「あ、あの、はい、あーしからも…お願い…します」




よく言えた、あたし。同じ気持ちで君と想い合えるのは、とっても幸せなことだよね。
今晩は、泣くことになりそうだ。もちろん、嬉し涙。




──keep on lovin' you I love you from my heart.


131 :そうだ!We're ALIVE :2010/02/22(月) 16:40
努力! 未来! ビュティフルスター!

努力! 前進! ビュティフルスター!

努力! 平和! ビュティフルスター!

夏の光に照らされて、白のハーフパンツに白いシャツ、
首には色とりどりの鮮やかなネッカチーフ、
ベレー帽というのかな?
ふちのない真っ赤なキャップ、
そこには金に輝く星と三日月。

シュプレヒコールを繰り返して集団が行進していく。
132 :そうだ!We're ALIVE :2010/02/22(月) 16:40
幸せになりたい、あなたを守ってあげたい、
本当の気持ちはきっと伝わるはず。

歌声を響かせながら通り過ぎる。
手に手に茶色いゴムの棍棒を振りかざして。
133 :そうだ!We're ALIVE :2010/02/22(月) 16:41
秋になり、冬になってもやって来た、
黒いぶ厚い上下を着込むようになったけど。
襟を立てた上着からは、夏と同じ色とりどりのネッカチーフ。

努力! 未来! ビュティフルスター!

努力! 前進! ビュティフルスター!

努力! 平和! ビュティフルスター!

同じようにシュプレヒコールを繰り返しているけれど、
それだけでは幸せになれないから、

幸せになりたい、あなたを守ってあげたい、
平凡なわたしにだってできるはず。

と歌いながら、銀行に突入していく。
134 :そうだ!We're ALIVE :2010/02/22(月) 16:42
GO!GO!GO!GO!

掛け声にあわせて、俗悪な金持ちの代理人どもに棍棒で制裁を加える。
茶色が真っ赤に染まる。

幸せになりたい、愛情で包んであげたい、
いくつになっても青春だよ
GO!GO!GO!GO!

貧しい人のために金を運んでいく。
135 :そうだ!We're ALIVE :2010/02/22(月) 16:42
絵里は現実世界では、いい加減で適当で、流されてばっかだけど、
夢の中では、公平と公正を貫き、正義を実現するんだ。
現実とは違って、個々では貧しく悲惨な希望のない生活だけど、
ここから逃げ出さない!
この世界で従っていくべき人を見つけた。

そうだ! we're alive.
人間なんだ! 生きてるんだ!

あの方の声に感動した。
人間はこの世に生まれた時はみんな丸裸で、何も持っていない。
なのに親の貧富によって将来が決まっていく。
これは公平でもなければ公正でもない、正義ではないのだ。
だから銀行を襲うのだ。

その金をただ貧民街の人々に配っても意味がない。
トラックに積み込むと田舎へ向かう。
荷台いっぱいのお金と同じ量の野菜や果物や魚介類や・・・
様々な食料を積み込んで、貧民街に向かい配給するのだ。
136 :そうだ!We're ALIVE :2010/02/22(月) 16:43

・・・・・

137 :そうだ!We're ALIVE :2010/02/22(月) 16:43
最近次第に警官隊と衝突することが多くなった。
何人が銃弾に倒れたのだろう。
死傷者は日に日に増加している。
我々の活躍で義勇軍の志願者は増えているけれど、
それでも活動できる隊員の数はほとんど変らない。
銀行などから手に入るお金も減少気味だ。
田舎で手に入れる食料も・・・

相手の要求する額を出しているのに・・・
農民には居留守を使われ、漁民はどこかへ移動してしまう。
手に職を持たないわれわれには、テクノクラートの有している技術が必要なのだが・・・
138 :そうだ!We're ALIVE :2010/02/22(月) 16:44
この事態にあのちびは今まで通りの指示しか出せない。
ふと現実世界の記憶が甦る。
私達は歌と踊りに素晴しいテクニックがあるのに、
なぜ写真集なんか出して・・・
そんなことまであいつのせいのような・・・

このままでは未来がない。
だから無能な指導者には制裁を。
床が血に染まる。

絵里は夢の中で叫んでいた、

そうだ!人間なんだ!
そうだ!生きてるんだ!
139 :そうだ!We're ALIVE :2010/02/22(月) 16:44

E N D
140 :雑草のうた :2011/04/11(月) 15:26
我々は名もなき雑草・・・
でも本当は名前がある。
でも明らかにはしたくない、
「イヌノフグリ」だなんて・・・
その意味を聞かれたら、乙女の口からは決して出来ない。

だから「ほしのひとみ」という芸名もあるんだけど、
きれい事過ぎて名前に負けてるって言われる。
素朴な感じなんだから、それっぽい名前が良いな。
でも結局知られることもなく、踏まれてばかりの人生になっちゃうのかな。

天ノ声ハ人ヲシテ語ラセル

タマゴはタマゴのままで終わるのか、それとも・・・
そんなことを思っている少女のひとりごと

おしまい
141 :マカロニ :2011/10/24(月) 21:31


マカロニ

142 :マカロニ :2011/10/24(月) 21:33


「うおっ、さみー」
「さむぅ〜い!急に寒くなりすぎだよー、なんでこうなっちゃうわけ?だいたいアタシまだ冬服全然出してないし買ってないし…」

外に出て3秒。
梨華ちゃんのグチが始まった。ふんふんと聞いてるけど、アタシの意識は空に向かっている。

そびえ立つビルの隙間の空。高い高いビルよりももっと高い空。
この風景が好きなんだ。

「うお、梨華ちゃん!」
「え?!何?よっすぃ〜、アタシの話聞いてた?」
「いや、そんなことよりさー、」
「えー!そんなことって何よぉ〜!」
「アハハ、ごめんごめん、いや、今日めっちゃ星出てるよ!」

見てみ、っつってそっと梨華ちゃんに近づいて、空を指さす。
「わ、ほんとだ!」
ぱっ、とアタシと目を合わす。驚いた顔。
その顔が見たかったんだ。うんうん、満足。
梨華ちゃんに見せなきゃ!って、考える前に口が動いてた。
アタシは、そういう風にできてる。

「今日いい天気だったからかなあ。きれーい。」
上を見上げてすごい、きれーとうっとりしてる。ぷぷ、カワイーな、梨華ちゃん。

「梨華ちゃん、あごでてるよ。」
「ちょっと、せっかくひたってたのに、じゃましないでくれますぅ〜!」
あわてて顔を下げてあごをおさえながらかえされた。
あはは、おもしろ、このくだり、何回やってもあきねー。

「事実を言ったまでですけど。」
「もぉ〜、何よ〜!」
ケラケラと、2人で笑う、肩を寄せ合って歩く、仕事帰り。


143 :マカロニ :2011/10/24(月) 21:33


そのままマネージャーさんやスタッフさんとご飯にいく。

アタシの隣には梨華ちゃん。誰が言い出すでもなく決まってる。
これ、ちょっと嬉しい。

アタシはいつも思ってる。梨華ちゃん、どうしたい?どうしてほしい?
どうしたら、あんたのキゲンはよくなんの?どうしたら、その疲れた顔を癒せるの?

そんで、梨華ちゃんは、アタシの発するその空気を敏感に感じとってくれる。
「よっすぃ〜気つかってくれてんだ」ってわかってくれる。


そこに言葉はいらないんだ。ただ隣にいるだけで。


144 :マカロニ :2011/10/24(月) 21:34


ご飯食べ終わって解散。さっさとタクシー乗り場に向かう梨華ちゃん。

せっかちなお姫様。

たぶん、今、コイツの頭の中にあるのは、かえって布団にくるまる自分の姿なんだろう。
オシャレに、アロマたいたりとか、紅茶わかして飲んだりとか、ぜってーしねー。
そーゆーことは、とりあえず、寝てから。そーゆー女なんだよ、コイツは。そーゆーとこが、好きなんだけど。

アタシのが、どっちかってと、ロマンチストなんだよ。
だってホラ、こうして仕事終わって、家帰って寝るまで、けっこー時間あんのに、もったいない。
梨華ちゃんと家でゆっくりしたいんだけど。できれば、アロマでもたきながら。
さすがにアロマは言い過ぎた。じゃ、晩酌…ちょっと、おっさんすぎた。

いや、とりあえず、こんな星がきれいなんだから、もちょっと、一緒にいよーよ。
アタシが、2人でいたい理由は、それだけで十分。ロマンチストでしょ。


145 :マカロニ :2011/10/24(月) 21:35

そんなことを、さくさく歩く梨華ちゃんの背中を見ながら思う。

2人で歩くとき、仕事のときは、移動とか、登場とか、たいていアタシが先に行って、そのあと梨華ちゃん。
仕事のときは、バーンと、かっこよくいたいじゃん。
昔はそーでもなかったんだけど、ガッタスとか、モーニングのリーダーとかやってから、なんかそーゆーのついちゃったんだろうね。
で、みんな、よっすぃ〜かっこいいーとか言うじゃん。
やっぱ、ねえ、へへって、なるじゃん。
梨華ちゃんに言われるのが一番嬉しいですよ。もちろん。一応言っときますよ。

けど仕事が終わると、アタシは仕事モードがオフになって、
次、どこ行くの?何すんの?なんでもいーよ、ついてく。て状態。

で、必然的に、梨華ちゃんの背中を見つめることになる。
なんか、アタシ、梨華ちゃんの背中見ると、ダメなんだよね。
どーしても、行かないで、って気持ちになっちゃう。

昔の梨華ちゃんて、そりゃーもうすごかった。なんか、バリバリ、てかんじ。
一所懸命、がむしゃらに、つっぱしる梨華ちゃん。
マイペースに、好きなよーにやってて、はっと気づいたときからずっと、
アタシの前には、ただひたすら梨華ちゃんの背中があった。

おいてかないでよ。

なんか、そんときの気持ちが、どーしてもでてきちゃう。なんでだろーね。
今は、そんな風に全然思わないのに、不思議だ。

で、ちょっとせつなくなったりしちゃってたんだけど、最近はそのあとに、なんかまた違う気持ちもでてくんだよね。

梨華ちゃんもアタシも、モーニングを卒業して、またこうして一緒にやってけるなんて、夢にも思わなかった。
また一緒にがんばれる。素直に嬉しいんだ。


梨華ちゃんの背中見てると、アタシのいろんな気持ちを、このヒトがつくってんだなー、て思う。

だからさ、もうちょい一緒にいよーよ、梨華ちゃん。


そっと深呼吸をして、名前を呼ぶ。

「梨華ちゃん。」

ずっと見つめてた背中が振り返る。
ちょっと眠そうな、けどちょっとアタシの誘いも待ってたよーな、そんな目をして、アタシのことじっと見る。

「ちょっと飲もーよ。」なるべく軽く、言う。「んー、」なるべく軽く、待つ。

「じゃ、よっすぃ〜んち。」


146 :マカロニ :2011/10/24(月) 21:35

マネージャーさんスタッフさんたちにあいさつして、2人でタクシーに乗り込む。

「帰って寝る気まんまんだったでしょ。」
「まーね。」
2人きりになると、梨華ちゃんの声のトーンが少し落ちる。あんま、声も張らない。

「よっすぃ〜以外で誘われても、絶対行かないよ、アタシ。」

じっとアタシの目を見つめて、いたずらっこみたいな顔して言う梨華ちゃん。なんで、こーゆーことさらっと言うの。

「あー、まぁまぁそうか。」照れ隠しに自分でもよく分からない返しをしてしまった。
梨華ちゃんは、またニヤリと笑う。


タクシーがマンションの近くに止まる。アタシ側のドアが開いたから、梨華ちゃんの荷物を一緒に肩に担いで、先に降りる。
そうだ、コイツ今日ヒール履いてんだ。
奥のほうからよいしょよいしょと出てくる梨華ちゃんに手を差し伸べる。
「ヒールひっかけんなよ」と言うと、ありがと、とぼそりとつぶやいてアタシの手を握る梨華ちゃん。

なんとなく手を離しがたくて、そのままマンションまで歩く。
やっぱちょっと照れる。けど、こんな空気も、いいよね。

「星キレーだねー。」
「いやー今日はまじやべーよ。」

もう一度、見上げた夜空。
繋いだ手を少しだけきゅっと握りなおした。

147 :マカロニ :2011/10/24(月) 21:36


部屋に着いたら、パッパと服を脱ぐ梨華ちゃん。
「…オマエさー、」「何よ。」
文句ある?という顔でアタシを見るので、だまって梨華ちゃんのパジャマを取りに行く。

いつのまにかメイクを落とした梨華ちゃんが下着姿で待ってた。
「ぶっ!バカ、風邪ひくだろぉ。」あわててピンク色のパジャマを渡す。まだ夏用だ。あったかいやつ、出さなきゃね。
「ありがと!」
いそいそと着替える梨華ちゃん。
「ぷはあー楽になった!」
ここにきて満面の笑みだ。こっちまで笑っちゃうよ。
カワイイなあ、梨華ちゃん。

洗面所で着替えてメイク落として帰ってきたら、梨華ちゃんはすでに2人分のグラスと氷とお酒のボトルを用意してた。
「てかオマエ、シャワーは?」「んー、明日…」いいから早く飲も、と、目で訴えられる。なんつーか、その目、反則。
くるくると変わる表情に、アタシは振り回されっぱなし。


ソファーに隣同士で寄りかかる。おそろいのグラスをカラカラ言わせながら、何を話すでもないやわらかいこの空気。

ボトルが底をつきる頃、コテン、と梨華ちゃんがアタシに頭を預ける。
アタシも黙ってそれを受けとめる。

しばらくしたら、梨華ちゃんが、うとうとしはじめた。
「梨華ちゃん、寝るんだったら、ベッド行くよ。」と言ったら、
「寝ないよ、もうちょっと、このまま…。」
眠いだけなのか、それともまた別の気持ちがあるのか。憂いを帯びた目でそう言われた。


そうだね、もうちょっと、このまま、いよっか。

148 :マカロニ :2011/10/24(月) 21:36


今日、スタッフさんたちと話してたことを思い出す。
「いやー、藤本よかったね。」
「次は里田かな。」「いや、その前に…」
アタシたちはその話をニコニコ聞いてた。

アヤカや、舞。美貴だって。
それぞれの道を、アタシの知らない人たちと歩いてく。
今までも、これからも、アタシの大切な仲間たち。
けどやっぱ、少しさみしいかな。

そう思って肩のぬくもりに目を落とす。
見慣れたこの光景に、まぁいっか、って、ほっと息をつく。



わからないことはたくさんある。

うちら、このままでいいのかな。
アタシ、どうしたらいいのかな。


これから、あとどれくらいの時間を、こうして寄り添って過ごせるの?



思うんだよね。

梨華ちゃんは、やっぱり、梨華ちゃんのパパやママみたいに、
庭付きの一軒家で、大きい犬とか、かわいい子どもたちと一緒に、旦那さんといつまでも仲良く暮らすのが、
ぜってー合ってると思うんだ。
んでアタシもやっぱり、ばーちゃんや父さんや母さんに、花嫁姿ってやつを、見せなきゃなーと思うんだ。

きっと、うちらにも、いつか、こうして、過ごせなくなるときが来るんだろう。
こんな、心地いい関係も、卒業しなきゃいけないときが来るんだろう。



だけど、約束する。
もしも、そうして、最後のときが、いつか来るなら、

それまではずっと、隣にいたい。
ずっと、君を守りたいんだ、梨華ちゃん。


アタシと梨華ちゃん。梨華ちゃんとアタシ。


今は、これでいいよね。
このまま過ごそう。
いろんなことを思うけど、
梨華ちゃんの顔見たら、隣に梨華ちゃんがいれば、
安心できるんだ。


149 :マカロニ :2011/10/24(月) 21:37


「梨華ちゃん」
「ん?よっすぃ〜、どした?」

「…なんでもね」
「そっか。」



これくらいの感じでたぶんちょうどいいよね。
わからないことだらけ、でも安心できるんだ。

150 :マカロニ :2011/10/24(月) 21:37


終わり

151 :名無飼育さん :2011/10/24(月) 23:20
歌詞が来たときなんか鳥肌立ちました
曲の世界観とも合っていてとてもよいと思います
ご馳走様でございました
152 :名無飼育さん :2011/11/05(土) 02:39
いい
すごくいい
曲聴きながら読み直してます
153 :君が手を伸ばす先に :2012/01/17(火) 22:39
君が手を伸ばす先に
154 :君が手を伸ばす先に :2012/01/17(火) 22:41
君に必要とされたい
君が手を伸ばす先に私がいられたら
どんなに幸せだろう


今日は久し振りにみーよと事務所で会った。
せっかくだから食事でも、ってそのまま一緒にディナーをしたんだけど、
帰路につく前に雨に降られてしまって。
私は今まさに、傘を持っていたみーよに家まで送り届けてもらっている最中だった。

最初はこのハプニングに喜んでしまっていた。
けど、楽しい時間って本当にあっという間なんだよね。
もうそろそろ、私のマンションに着いてしまう。

「みーよ、私んち寄って行かない?
お礼と言っちゃなんだけど、おいしいコーヒーごちそうするよ。
注文してたコーヒーメーカーが届いたんだよね」
「すみません、とても魅力的なお誘いですけど…約束があるんです。
また今度ごちそうして下さい」
みーよは本当に申し訳なさそうに私に謝って来る。
「あ、いいよ、気にしないで」
言葉とは裏腹に落胆してしまう。
みーよの言うまた今度は一体いつの話になるんだろう。
155 :君が手を伸ばす先に :2012/01/17(火) 22:42
名残惜しげに指を一本だけ、傘を持つみーよの指に絡めてみる。
それに気付いたみーよは、ごく自然に優しく握ってくれる。
「保田さんの手冷たいですね」
こうして私を受け入れてくれるのに、距離を感じてしまうのはどうしてなんだろう。
「今日はあったかくしてゆっくり休んで下さい。風邪なんて引いたら大変ですから」

優しくされるとまた苦しくなる。
また期待してる。

「…またしばらくみーよと会えなくなるね」
ドリムスをやるまでは、舞台の関係でよくみーよと一緒になったのに。
今は全くと言っていいほど接点がない。
「私がいなくても、梨華ちゃん達がいるじゃないですか」

そうだけど。
でも、そこにみーよはいない。
梨華ちゃん達だって大事だけど、私が一番会いたいのはみーよなんだよ。

そんな事を思っていた時、突然みーよの携帯が鳴った。
156 :君が手を伸ばす先に :2012/01/17(火) 22:44
「ちょっとすみません」
みーよが断りを入れて携帯を取り出すと、私の指先とみーよの指先が離れる。

「はい…ああ、唯ちゃん」
その名前に胸がズキンと痛む。
「もー、あとちょっとしたらちゃんと唯ちゃんち行くから。
そう言わず待っててよ」
みーよが彼女の名前を呼ぶ時の声、表情はひどく優しい。
今この時だけ私の名前が唯って名前だったら良かったのに…なんてバカな事を考える。

「岡田唯ちゃんから?」
「はい、最近かまって攻撃がすごいんですよ」
そっか、唯ちゃんと約束してたんだ。
「いいじゃない。環境が変わってもずっと変わらず繋がっていられるってすごいよ。
絆を大切にするみーよは素敵だと思う」
「そう、ですかね。でもまあ、私の場合同じ事務所で仲のいい子なんてホントに限られてますし…
仲良くしてくれる子がいるなら、大事にしないと。唯ちゃんは引退しちゃったけど」
157 :君が手を伸ばす先に :2012/01/17(火) 22:46
少しだけ寂しそうにこぼすみーよに、私はたまらずこう言っていた。

「まだ、私がいるじゃない」
「え?」

みーよのそんな言葉を聞いたら、こっちまで寂しくなる。
私じゃいけないのかなって。

さっき唯ちゃんと電話で話している時のような笑顔、私には見せてくれないよね。
いつも一定の線引きをして、そこから私を立ち入らせようとしない。
そして待っていても、歩み寄ってくれない。
嫌われてるわけじゃない。分かってるけど。
でも、こんな関係じゃ本当は満足できない。
私はみーよに必要とされたい。

「みーよは唯ちゃんがいなくなって、自分が一人ぼっちのように言うけど、私だってみーよの事考えてるよ。
みーよが後輩だからとか、そんなんじゃなくて。
プライベートでももっとみーよと仲良くなれたらいいなって思ってる」
158 :君が手を伸ばす先に :2012/01/17(火) 22:47
「保田さん…」

勢いで口にしてしまってから、急に頭が冷える。
これってよく考えると相当きわどい発言だよね。
どうしよう。
もっとマシな言い方ができたはずなのに。
みーよに変に思われてないだろうか。

「あ、ここでいいよ。みーよ、今日は本当にありがとう」

ちょうど私の住むマンションの外観が現れると、私は勢いをつけて傘の中から飛び出した。

「あっ保田さん!?」
「…じゃあね」
159 :君が手を伸ばす先に :2012/01/17(火) 22:48
私は逃げたのだ。
みーよの反応が怖くて。
もしもみーよにここで拒絶されたら、もう絶対に立ち直れないから。

きちんとみーよへ感謝を伝え切れないまま、私は振り返らずにマンションの中へ駆けて行く。
みーよがどんな顔をしているのかも分からない。
どんな言葉を返して来たとしても何も聞こえない。
私の耳に聞こえて来るのは、寒々とした雨音だけ。

「…ごめんなさい、保田さん。私はまだ堂々と保田さんの隣にいる勇気が出ないんです。
…ただ自分が弱虫なだけだって、分かってるんですけど」

だから、きっと、背中に投げかけられたこの言葉は、私の空耳だ。
160 :君が手を伸ばす先に :2012/01/17(火) 22:49
届いたばかりのコーヒーメーカーでカプチーノを作り、一口だけすすってみる。
「びみょーな味だなあ」
淹れ立てのカプチーノはまろやかで、香りも良いのに。
やっぱり、食事と一緒で、一人きりだとどんなに極上な物でも味気ない気がしてしまう。

何気なく窓の外を見ると、さっきまでの雨がいつしか雪に変わっていた。
「寒…」
でもそれは身体的な寒さとは違うもの。
みーよの腕の中で温めてもらえたら、どんなに満たされるかな。
そんな無意味な事を考えてしまう。

何だか私って追う恋ばっかりだよね。
「すっぱりあきらめられたら、楽なのにね」
そう、今までみたいに。
報われないのなら、すぐにでも忘れてしまえばいい。
そして次の恋の対象を作って、新たに追いかければいい。
でも、今回ばかりはそうもいかないみたい。
望んでも虚しくなるだけなのに。
私はみーよに囚われてしまったから。
届かなくても、みーよじゃないとダメなんだ。

「みーよ…ねえ、好きだよ」
抑えられない気持ちを言葉にのせて。
私はみーよの温もりが残る自分の指先にキスする。
161 :君が手を伸ばす先に :2012/01/17(火) 22:50
この温もりだけで

今はこの気持ちだけでがんばれる
でも本当は 君に抱きしめられたい
愛される幸せをこの手で感じたい
どんなに幸せだろう

君に必要とされたい
君が手を伸ばす先に私がいられたら
決してその手を離さない

私がいられたら
決して離さないのに
162 :君が手を伸ばす先に :2012/01/17(火) 22:51
おわり
163 :Orion :2012/01/23(月) 18:56
いつだって、三ツ星だけは見つけてた
まっすぐに、追いかけるあの瞳で


...
「ほんと、あの頃の景色と全然変わらないね」
私は部屋のベランダから、一人で夜空を見上げていた。
たまには、ぼんやりと星を眺めてみたくなったのだ。
無数の星の中で、一段と目を引く三ツ星。
こんな都会の中でも、相変わらずこれだけは
街の明かりにかき消される事のない、強い光を放っていた。
この冬の星座を見る度、あの時の事を思い出す。
164 :Orion :2012/01/23(月) 18:59
一年前…
みーよと舞台稽古の帰り、二人で星空観察をした事があった。
その時、みーよはこのオリオン座を見てこう言ったんだよね。
「オリオン座って不思議な形してますよね。砂時計みたいです」

みーよの言葉を聞いた瞬間、私の中でもその砂時計がはっきりと見えたような気がした。
みーよと私の時間を一瞬一瞬、正確に刻む砂時計の姿が。

みーよと過ごす日々は楽しかった。
二人一緒にいるのが当たり前の日常だと、錯覚してしまいそうになるくらい。
できるなら、あのまま時間を止めてしまいたかった。

でも、どんどん砂は下へと落ちていってしまって。

つないでた、指先が離れてゆく
昼と夜、すれちがう世界のように
165 :Orion :2012/01/23(月) 19:00
零れ落ちた砂はもう元には戻らない。
砂時計は一度ひっくり返せばまた時を刻むけど。
それは今までと全く同じ時ではないから。
二度とあの幸せな時間を繰り返す事はできない。

あれからまだたった一年しか経っていないのに。
あの時はまさか、こんなにも早く別れが来るなんて思ってもいなかった。
166 :Orion :2012/01/23(月) 19:02
「みーよ…」
今すぐに会いたい、抱きしめて欲しい。
そんな事言えない。
みーよはきっともっと寂しくて辛い思いをしているだろうから。
でも…
「私はこれから一人で、どうすればいいんだろうね」

泣かないって決めたのに、後から後から涙が溢れて来る。
この孤独から救って欲しいと、すぐそばにいる誰かの温もりを求めてしまいたくなる。
そんな自分を必死で抑え続ける日々。
本当はもう限界だった。
それでも。
たとえどんなに辛くたって、私は一人で前に進まないといけないんだ。
そう…みーよがいなくたって。
167 :Orion :2012/01/23(月) 19:03
真冬に輝くオリオンみたいに
愛されてると思い続けたまま
時を止めていたら
迷う事もなかったのかな?
168 :Orion :2012/01/23(月) 19:03
おわり
169 :チョトマテクダサイ! :2012/02/04(土) 20:06
「チョトマテクダサイ!
ピョコピョコ ウルトラ ミニスカ ポストウーマン ってなんですか?」

宇宙平和維持機構総長のつんくからのビデオメッセージを見て、
我々は思わず抗議の声を上げた。

宇宙平和維持機構分館1059号室に集められてから丸二年になる。
扉には手書きで『宇宙の平和を丸める少女隊(仮)』という紙が貼ってある。
それも今では破けてほとんど判読できない。
部屋番号も『105』という活字の後に『9』とマジックで手書きしてある。
部屋は7人で活動するにはあまりにも狭い、
そんなとこで2年間、宇宙の平和も守るための準備作業を続けてきた。

その前には約7年、訓練研修を日夜続けてきた。
最初は三十人以上いた者が、上層部に気に入られて昇格したり、
あるいは希望を失って脱退したりで、途中で補充もされたが、
2年前には二十人を切るくらいになっていた。
そして古株は全員契約を打ち切ることを一度言い渡されたのだが、
将来の保障はできないけれどとりあえずということで、
7人だけここに呼び寄せられた。
170 :チョトマテクダサイ! :2012/02/04(土) 20:08
『宇宙の平和を丸める少女隊(仮)』
この名前には正直拒絶反応を示していた。
だいたい(仮)って何なんだよ!
しかも仮の制服が7人別々の色のTシャツというのは・・・
それも胸に『(仮)』って入れるなんて、どんなセンスをしてるんだろう。
実際の活動が始まる前には、ちゃんとした正式名称が決まる予定だけど・・・

上司はこの名前が不人気なのを知ると、
(仮)をとることはできないけれど、
いくつかの代替名称を示してきた。

『仲良しバトル戦隊 Berryz仮面 & キューティーレンジャー』
『おまかせ♪ガーディアンズ7』
    ・
    ・
    ・

どれもこれもひどいものだったから、改名するのはやめにした。
171 :チョトマテクダサイ! :2012/02/04(土) 20:09
『ピョコピョコ ウルトラ ミニスカ ポストウーマン』

なぜこの名前になったか、説明が始まる。
宇宙の平和を守るということから『ミニスカ ポリスウーマン』ということで、
警官の衣裳と装備を注文したはずなのだが、
イメージカラーを赤にしたことからなのか、
手違いで郵便配達人のが届いてしまったんだと。
それで『ミニスカ ポストウーマン』でいいんじゃないかということになった。
それから我々は地球で活動を始めることに決まったのだが、
地球に寄る宇宙母艦が当分ないということで、
たまご型カプセルで地球に投入されることになった。
そして戦闘用衣裳はひよこ型モビルスーツに決まった。
それで『ウルトラ ピョコピョコ隊』もあるなということになった。
どちらにしようか迷ったので、『ウルトラ ピョコピョコ ミニスカ ポストウーマン』にしようということになった。
それで本部に申請したのだが、なぜか『ピョコピョコ ウルトラ ミニスカ ポストウーマン』と登録されたんだと。
172 :チョトマテクダサイ! :2012/02/04(土) 20:09
それにしても郵便配達なんて今の時代ほとんど廃れてしまっているから、
その衣裳と装備なんかはどこかに残ってたのを取り寄せたんだろうと思う。
それに治安の不安なところでも配達業務をするため、装備の中に短銃があるから、
問題ないと思っているのだろう。

たまご型カプセルなんて、時代遅れの一人用カプセルじゃないか!
どこに着陸するか、わからない代物だよ!
それにひよこ型モビルスーツは高さも幅も奥行きも2mというずんぐりしててかっこ悪いやつだし、
どれもこれも安上がりな物ばかりだ。

「チョトマテクダサイ!」
って言いたくなってしまうよ、まったく。
173 :チョトマテクダサイ! :2012/02/04(土) 20:10
もしかしたら続くかもしれないけど、
とりあえずおしまい。
174 :名無飼育さん :2012/02/04(土) 20:25
チョトマテクダサイ!
>投稿の際必ず完結させた上で、一気にお願いします
>>1に書いてあるんだが……とりあえず続くかもってのは完結じゃないと思うんだ
175 :レバニラ炒め :2012/02/13(月) 14:12
レバニラ炒め

圭ちゃんが朝っぱらからレバニラ炒めを食べていたので笑った。
「なんで笑うの」と少し機嫌が悪い。とりあえずごめんと謝った。
「後藤はそういうとこがある。そうやってとりあえず謝れば済むでしょみたいなとこ。よくないと思う」
圭ちゃんは大真面目に説教を垂れた。
朝っぱらからレバニラ炒めを食うような女に
なんでそんなこと言われなきゃいかんのか、少し頭に来た。
「圭ちゃんこそそうやってすぐ正論ばっか言ってさ。年の証拠だよね」
圭ちゃんは箸を止めて私を睨んだ。
「なによ。悪いとこ悪いって言ってるだけでしょ。年とか関係ない」
「そうやって人の欠点ばっかツツイて自分が偉いとでも思ってんのか」
圭ちゃんはレバニラ炒めをグワッと頬張って「偉いわよ」と言い放った。
鼻の穴がぷくっと開いた。その顔にまた腹が立った。
「偉くねーよ」
「ちょっと後藤。ここに座りなさいよ」
「やなこった」
「いいから、座りなさい」
圭ちゃんは私の手を掴んで、無理矢理座らせた。そして手に箸を持たせた。
「食べなさい」と言う。私はとにかく逆上していたので、思い切り、グワッと食べてやった。どうだ見たか。お前のレバニラ炒めを食べてやったぞ。えっやだ、なにこれ。超うまい。箸が止まらない。
「私に説教されてもう頭に来ちゃってたけどあまりの美味しさについ口走ってしまった」
「レバニラ炒め!」
圭ちゃんは勝ち誇った笑みをこぼした。

おわり
176 :名無飼育さん :2012/02/14(火) 18:28
可愛い後藤は懐かしい
177 :しょうがない夢追い人 :2012/03/16(金) 01:33
あやちゃんが悩んでいるというのでごとーはとても驚きました。
将来が不安なのだとさ。はは。みんなそうなんじゃないかな。
そうだろうね、と苦笑して、でもみんな不安だから何なの?
我慢しろってか? 贅沢な悩みだって? バカじゃないの。
そういうのが、たまらなく嫌なんだよ。

あやちゃんは意外と青臭いなあと思った。そういう悩みはどうしようもない。
そういう悩みを抱いてしまうこと自体に根本的な問題があるので、
いくら何をどう言っても解決しないものなのだ。ごとーは知っているのです。
何がどう不安なのさ。言ってみろよ。

あやちゃんは言葉をたぐりたぐり一生懸命話してくれたのだけど、全然覚えていません。
どうしようもないから。
「ちょっとごっちん、ちゃんと聞いてる?」
「聞いてるよ」
もちろん聞いてません。ごめんなさい。どうしようもないので。

もういいや、とあやちゃんは言いました。ほっとした。
何か楽しい話でもしよう。最近なんか楽しいことあった? とくにない。
じゃあ最近食べたもので一番美味しかったものは?
ああ、なんだろう。ホワイトデーにもらったクッキーが美味しかったかも。
何味だった? バニラ。いいねー、ごとーもバニラ好きだよ。誰から貰ったの?
それはその、ほら、誰だったかな。色んな人から貰うからさ、分かんなくなるよね。

ふーん、と思いました。
さすがにこんなことで頬を染めるほどあやちゃんは若くはないし、
ごとーもそれをからかったりするほど若くはないので、それで終わりです。
ま、楽しくやってるようで何よりだわ、と思いました。
あやちゃんはさっさと結婚しちまえばいいんだよ。ちょっと寂しいけど。
ごとーはまだしばらく、過去にしがみついていたいです。

おわり
178 :雪に願いを :2012/03/24(土) 19:36

雪に願いを
179 :雪に願いを :2012/03/24(土) 19:36
歩道橋を渡って、待ち合わせの公園へ向かう。
いつもの歩道橋、いつもの公園、いつもの2人。
それがいつしか、こうして1人で歩くようになった。
少し深く息を吸って、細く、長く、吐き出した息は白く染まった。

さくさくと、雪を踏みながら、なんでもないように公園に入ると、
いつものベンチに梨華ちゃんがいた。
体を固くして待ってる梨華ちゃんは、少し震えているように見えた。
伏し目がちな瞳がつくる表情には、麗しい雰囲気が漂っていた。
思わず息を飲む。

ぼっと突っ立っているあたしの気配を感じたのか、
ぱっとこちらを見て、目が合った。
一瞬、ほんの一瞬、瞳が揺れたのは、あたしか、梨華ちゃんか。
180 :雪に願いを :2012/03/24(土) 19:37
「よっすぃ〜!」
華が咲いたような笑顔は、やっぱり、あたしの一番好きなものだった。
走ってきて、抱きしめられた。
「久しぶりだぁ」
「ん」
あたしも腕をまわした。
「おじょーさん、顔が埋もれてるよ」
ほほに伸ばした手を受け入れてくれて、上目づかいの梨華ちゃんが見えた。
顔を合わせて笑う。
変わんない、この感じ。
雪の絨毯に、2人の影が伸びた。
181 :雪に願いを :2012/03/24(土) 19:38
どちらからともなくベンチに向かった。
いつも通り、梨華ちゃんはホットレモンティーを買ってて、
あたしは別にいらないって言うのに、あたしの分も買ってる。
だってあたしだけ飲むのイヤなんだもん、よっすぃ〜も、一緒がいいの。
いつもそう言ってた、その意味を、あたしは全然理解してなかった。
よくワカンネーけど、ジュース飲めてラッキーくらいにしか思ってなかった。
梨華ちゃんはいつも、暑いとか寒いとかおなかすいたとか眠いとか、グチグチ言ってたけど、
それもこれも、あたしと気持ちを共有したいかららしいってことに、なんとなく気付いた。

「さむいよ〜」
「わかったって」
隣同士に座って、差し出されたレモンティーを一緒に飲みながら、
このベンチからの、いつもの景色、だけど、久しぶりの景色を見る。
まっすぐに立っている木々を背景に、
冬になると水が止まる噴水には、枯れ葉がつもってる。
少し背の低い街灯に、手が届くかってジャンプしてはしゃいでた。

「なーんか、やっぱ、居心地いいね、ここ」
「ん」
「前来たとき、石川、なんて呼んじゃってさ、よっすぃ〜」
クスクス笑いながら言う、その瞳はいたずらっ子のようにあたしを見る。
「ウルセーよ」
恥ずかしいけど、もう目をそらさない。
苦笑いだけど、あたしも一緒に笑う。
182 :雪に願いを :2012/03/24(土) 19:38
また、あのときみたいに、2人でいたいよ。
何も知らなかったあのときみたいに。
自分の彼女に抱く感情も、彼女が自分に抱く感情も、知らなかったあのときみたいに。
そう思えば思うほど、ぎこちなくなった。
友情とか恋愛感情とか、名前なんてつけられなかった。

そうして迷い込んだ闇ですれ違って、あたしたちは離れてしまった。

やっと見えた光の向こうには、あたしより先に大人になった梨華ちゃんが待ってた。
あのときとは違う、あたしたちがいる。
そうして、手を差し伸べてくれた。
また、2人で並んで歩こう。

温かい紅茶に上気して、少しほほの赤く染まった梨華ちゃんを見ながら、思う。
また少し深く息を吸って、ふぅ、と吐く。

ふわり…
183 :雪に願いを :2012/03/24(土) 19:39
「わあ、雪、降ってきた!」
ぱっと立ち上がって空に手を伸ばす梨華ちゃん。
テンションがあがったみたいで噴水の前まで行って1人でくるくるまわっている。

ぽっかり空いた隣に寂しさを感じて、離れていた時間が一瞬で埋まったことを知った。
あたしの隣に、いてほしい。
この気持ちを受け止めて、歩いてく。

「梨華ちゃーん!あたしもそっち行く!」
大声で叫んだらすっきりした。
びっくりした顔でこっちを振り返る梨華ちゃん。
「おりゃあ!」
積もってた雪で雪玉をつくって、ぶつけてやった。
「きゃー!なにすんのよ!」
応戦する梨華ちゃんと暗くなるまではしゃいだ。

「帰ろっか」
街灯に明かりがともったのを合図に、梨華ちゃんが言った。
184 :雪に願いを :2012/03/24(土) 19:40
1人で渡ってきた歩道橋を、2人で歩いて帰る。
久しぶりのはずだけど、懐かしさは感じない。
「…さむ」
またちらついてきた雪を見上げて、梨華ちゃんは少し震えた。
寒い夜を暖めるから、かじかむ手を差し出してほしい。
そう思って梨華ちゃんの手を見たら、手袋して完全防寒してた。

なんだよそれ、つまんねーのと口をとがらせたら、
「あれ、よっすぃ〜どしたの、もしかして手袋貸してほしい?」
「え、いや、ちがくて…」
何を弁明するつもりなんだと自分にツッコむのもつかの間、
梨華ちゃんはぱっぱと手袋をとって、
ぎゅっとあたしの手を握ってくれた。
思いがけなく希望通りになって、うぉ、とか間抜けな声を出してしまった。
「よっすぃ〜手冷た!」
かじかむあたしの手を一生懸命暖めてくれる。
立場が、完全に逆だ。
「手袋、片方ずつ。あたし左手、よっすぃ〜右手。」
「はい!」
そう言って差し出された手袋と右手。
そうだ、いつもやってた、手袋いつも忘れるあたしに、
もう!とか言いながら…
185 :雪に願いを :2012/03/24(土) 19:40
小さな手から伝わる温もりに、涙が出そうだった。
次はゼッテーあたしが梨華ちゃんの手を暖める。
かっこよく決められたら、梨華ちゃんきっと惚れ直してくれる。
そうしてずっと、2人でいられますように。
どれだけ2人そばにいても、つのっていく寂しさがあることも、分かってる。
それでもずっと、2人でいられますように。

冬の夜空と、雪に願いを。

つないだ手を少しだけ強く握り直したら、梨華ちゃんは満足そうに微笑んだ。
186 :雪に願いを :2012/03/24(土) 19:41

終わり
187 :名無飼育さん :2012/03/24(土) 21:34
素晴らしい!
188 :名無飼育さん :2012/03/25(日) 05:33
素晴らしい、ありがとう
あのライブが蘇る
189 :君に逢いたくなったら・・・ :2012/04/05(木) 01:33

『君に逢いたくなったら・・・』

いしよしです。
190 :君に逢いたくなったら・・・ :2012/04/05(木) 01:34
夢のようなステージだった、あの日が明けて。
それからほとんど毎日、ドラマの撮影や舞台の稽古の日々が続いている。

『ふぅ、疲れたなぁ……。』

思えばきちんとしたお化粧も、何日もしていない。
日々の稽古でクタクタの体は正直で、目の下にはくっきりとクマが出来てしまった。
日付が変わらないうちに帰って来られればいいほうで、
まれに早く帰ってきても、お風呂に入ってすぐに寝付いてしまう。

つまりは電話を、メールですら、あまりしていなくって。

きっと彼女の声を聞いたら、また愚痴ばかりが出てしまう。
優しい彼女はそれでもきっと、黙って聞いてくれるんだろう。
191 :君に逢いたくなったら・・・ :2012/04/05(木) 01:35
でも、頑張って頑張って、ここまで来た道。

この世界に入って何年かの間は、向いていないと思っていた演技の仕事。
ここ数年で漸く、少しは自信が持てるようになった。
それでもまだまだ自分で自分に納得がいかないことも多くて、ひたすら頑張るしかない長い道。
今はまだ、甘やかしてほしくない。

自分のことをもっともっと、見ていてほしいから。

『よく頑張ったね、すごいね』と、
目尻を下げて褒めてくれるあなたの顔を思い出す。
いっつもクールに振る舞うクセに、子供みたいに笑う顔。
本当はとても優しい人。

初めて会ったあの日から、もう12年も経つ。
早かったような気もするけれど、本当に……いろんな事があった。

悲しかったことも、嬉しかったことも、2人離れていたこともあった。
それがとても悲しくて、独り涙を流したことも、本当は少しだけある。
192 :君に逢いたくなったら・・・ :2012/04/05(木) 01:36
でも、今は違う。
離れていても、繋がっているという確信がある。

逢いたくても、逢えない。
それなら逢える日まで、全速力で駆け抜ける。
それが、自分の誇りだから。


街並みが桜色から新緑の青に染まる頃には、舞台が終わる。
新しいユニットでの活動が始まる。
こっちが照れちゃうくらい、素直に『嬉しい』とコメントしたあなた。
テンション上がらないワケないじゃない。
いっちょカッコイイコト、やっていきましょ。

それまではちょっとだけ、ガマンの日々だけど……

また思いきり騒ごうね。
193 :君に逢いたくなったら・・・ :2012/04/05(木) 01:38

END

おそまつさまでした。
194 :名無飼育さん :2012/04/05(木) 10:39
梨華ちゃんの独白が(・∀・)イイ!!
195 :名無飼育さん :2012/04/06(金) 01:20
ええのうこうゆうの大好きです!
196 :『Yes』 :2012/04/11(水) 23:24


『Yes』
197 :『Yes』 :2012/04/11(水) 23:27
「梨華ちゃん…!」


どこにいるの?
あたしは人目も気にせず、彼女を探して空港の中を全力で走った。

もう届きはしないとわかっているけど、叫ばずにはいられなかったんだ。
「愛してる 愛してるよ…」
あたしは雨にうたれながら、空を見つめていた。声は雨音にかき消されて。

たった一言なのに。どうして、あたしは言ってあげなかったんだろう。
ごめんね、梨華ちゃん。

雨が頬をつたう涙を隠してくれていた。
夜空に光る飛行機の灯りが、どんどん小さくなっていく。
「梨華ちゃん…」
冷たい雨に濡れたまま、あたしは、その場から動けずにいた。
198 :『Yes』 :2012/04/11(水) 23:28
あの日。

「えっ?吉澤さんどうしてここにいるんですか?」
「なんだよ。あたしが事務所に来ちゃ悪りぃーのかよ?」
いつもみたいに笑いながら麻琴の肩をつついた。


「だ、だって!今日は石川さんが海外に行く日ですよね?空港にお見送りとか行かなくていいんですか?」
「え?そうだったの?なに、海外なんて普段から仕事でいっぱい行ってんじゃん。わざわざ見送りなんて
行かなくても…。あ、そういえば今回はお土産何がいい?って聞かれなかったなぁ」


今にも泣きだしそうな顔をしてる麻琴を見て、嫌な予感がした。
「さっきから何言ってんの?全然意味わかんねーよ…」
「石川さん、もしかしたら数年帰って来ないかもしれないって」


えっ?今、何て言った?
帰って来ないかもって。
嘘でしょ…。梨華ちゃん!


どうして突然いなくなったりするんだよ!
あたしは頭の中が真っ白になって、何も言わずにエレベーターに向かって駆け出した。

「吉澤さん!成田発18時30分のダラス行きの便です!急いで下さい!」
199 :『Yes』 :2012/04/11(水) 23:29
彼女がいなくなってから数ヶ月が経った。あれからメールも電話も来ないまま。
あんなに毎日のように更新されていたブログでさえ、そのままだ。
あたしは平静を装おって、いつも通り笑顔で仕事をこなしていた。


でも、もうギリギリだ。心に穴が空いちゃったみたいだよ…。

自転車だってさ、いくら空気入れたってタイヤに穴が空いてたら走れないんだよ?
心にポッカリ空いてる穴は、どんなに楽しいことがあっても埋まらない。
埋められるのは梨華ちゃんだけなのに…。



打ち合わせがやっと終わって、家の近くでタクシーを降りる。
また雨か。傘をさして歩く。彼女がいなくなったのと同じ夜の雨。

「雨女のあたしにはお似合いかもね」
1人でいると、心に浮かんでくるのは梨華ちゃんの笑顔ばかりだ。


『私とよっすぃ〜のイベントの時って雨の日が多いよねー?』
2人とも雨女だから、いつも雨ばかりだったよね…。



『今日はファンの皆さんに、とっておきの情報があるんですよ!
よっすぃ〜は人魚姫のタオルケットが無いと眠れないんだよねー!可愛いですよね』
「そんな情報、今言わなくていいから!」

恥ずかしくて、ぶっきらぼうに言っちゃったけど。
イタズラっぽく笑って、あたしの目を覗き込む梨華ちゃんが可愛くて好きだったんだ。



『私の好きな所は?』
「わかりやすい所」
『もっと他にあるでしょ?もう!私の好きな所はどこかって聞いてるのー』

本当は、拗ねてるのが可愛くてワザと言ったんだよ…。



誰かが言ってたけど。
さみしさを時間が忘れさせてくれるなんて、どうやらウソらしい。
200 :『Yes』 :2012/04/11(水) 23:30
実は梨華ちゃんが海外に行く1週間位前、初めてケンカした。
今まで一度もケンカなんてしたことなかったのに。本当に些細な事だったんだけどね。


梨華ちゃんがバレンタインにくれたダッフィーちゃんのストラップ。
あたしが最近ダッフィーちゃんが好きなのを知って、わざわざ変装までして買ってきてくれたらしい。


うたた寝してるあたしの腕の上を、梨華ちゃんがダッフィーちゃんを小さな手で操ってトコトコ歩かせた。
『ねぇねぇ、よっすぃ〜?』
まるでダッフィーちゃんが話しかけてるみたいに動かしながら、あたしに聞いてきた。
「なに子供みたいに遊んでんの?」

いつもはお姉ちゃんみたいなのに、時々子供っぽくじゃれてくる梨華ちゃん。

『あ、起きた?』
「起きた?って、自分が起こしたんじゃん」
『そうだよね、ごめん…。ねぇ、よっすぃ〜は、私のこと本当に好き?』

好きとか愛してるって言葉、気持ちでは思っていても、今さら言葉にして言うなんて恥ずかしくて。

「ねむい…」
だから、また寝たフリしたら。
『よっすぃ〜は、どうしてウソでも好きって言ってくれないの?』
そう言って突然部屋を飛び出した。


そんな事、言わなくてもわかってんじゃん?どうしちゃったんだよ…

「ちょっと、待ってよ!梨華ちゃん!」
追いかけて腕をつかんだら、振り返った梨華ちゃんが泣きながら『もういい、もういいよ』って。
あたしの腕を振り切って行ってしまった。


「バイバイ…」
あたしは泣きそうだったけど、唇を噛みしめながらそう言った。
だっていつもみたいに、また会えると思ってたから。
大好きだった梨華ちゃんの声や笑顔ばかり浮かんで。悲しくて…。

強がりなあたしの代わりに、また空が泣き出した。
201 :『Yes』 :2012/04/11(水) 23:32
今日は久しぶりにいい天気だ。

梨華ちゃんを好きだって初めて思ったのは、いつだったかな。
好きって言葉、マジメに言った事がなかったよね。



「ねぇ、今ならまだ間に合うのかな…?」




あたしは飛行機を降り立った。
マネージャーがメモしてくれた彼女の住所を、手のひらの中にギュっと握りしめて。

「地球の果てにだって会いに行くよ。待ってて、梨華ちゃん…」


お気に入りのサングラスをかけて。
陽射しが眩しい、ブエノスアイレスの街を歩く。
さっきまで青空が広がっていたのに、
ウソみたいにポツポツと雨が降り始めた。
「雨か…。まさか海外でも雨女のパワーを発揮するなんてね」
苦笑いしながらつぶやいた。


梨華ちゃんはアルゼンチンタンゴのレッスンスタジオを経営している女性の家に
ホームステイしているらしい。
あたしがマネージャーにアルゼンチンに行きたいと話をしたら、今度梨華ちゃんが
観客を前にしてステージでタンゴを披露するから観に来てはどうか?と先生が
内緒で招待してくれたそうで。
彼女の今までの頑張りを、ぜひ見てあげて欲しいと。


もうすぐ、梨華ちゃんに会えるんだ…。
あたしのこと、まだ怒ってるかな。


すごく会いたい気持ちと、会うのが恐いような複雑な気持ち。
でも、恐れていては大切なモノを一生失ってしまう気がして。
だから、あたしはアルゼンチンに来たんだ。
こんな緊張するの、久しぶりかも…。
202 :『Yes』 :2012/04/11(水) 23:32
実はブエノスアイレスの街に来る前に、ある場所に立ち寄ってきた。

あたしには、どうしても行っておきたい場所があったから。


梨華ちゃんも撮影で訪れたエル?カラファテの街。そこから氷河で有名なペリト?モレノへ…。
そこからさらに車に揺られて数時間。ある目的地を目指した。


日本で買ったアルゼンチンのガイドブック。絵を描くことが好きなあたしは、その中に載っていた
ある写真を見て、絶対に行ってみたいと思っていた場所があったんだよね。
古代の人が作ったと言われる、手のひらがいっぱい描かれた洞窟。


「やっと着いたぁー!腰痛てぇ…」
思いっきり腕を伸ばして、澄んだ空気をいっぱいに吸い込んだ。
「うわぁーめっちゃ凍りそうだよ」
寒がりなあたしは、ダウンのポケットに両手を突っ込んだ。


洞窟の中は上り坂になっていて、ガイドの男性の後をついて歩いて行くと
目の前に写真で見ていた壁画が現れた。

「あっ!これだ…」
あたしは、吸い込まれる様にその場に立ち尽くして、壁画に見入ってしまった。
203 :『Yes』 :2012/04/11(水) 23:34
あたしは、エル?カラファテの空港から飛び立ち、またブエノスアイレスの街へ戻ってきた。
回り道しちゃったけど、梨華ちゃんがレッスンを受けているスタジオのあるボカ地区に、
やっとたどり着いた。

ストリートでは、ダンサーたちが競い合うようにタンゴを踊っていて圧倒される。
さすが、アルゼンチンタンゴ発祥の地だ。

「ここだ…。やっと着いた」

少し離れた場所からガラス越しに建物の中を覗くと、そこには髪を結び、真剣な眼差しで
鏡を見ながら踊り続ける1人の女性の姿が。


「梨華ちゃんだ…!」
誰も寄せ付けないくらいに、真剣な表情で集中して踊っている姿は、すごく綺麗で。
なぜか梨華ちゃんが遠い存在になってしまった様に思えて、あたしは声をかけることが
出来なかった。

そのまま、今夜梨華ちゃんが観客の前でタンゴを披露する会場へ向かう。
204 :『Yes』 :2012/04/11(水) 23:34
ワインを注文し、帽子を深くかぶって気づかれないように、会場の隅のカウンターから
ステージを見つめていた。


何組もの男女がタンゴを披露して、時間が流れていった。

―――カタン。また空になったグラスをカウンターに置く。

緊張してワインを飲み過ぎた。もう5杯目だ。
観客の歓声と拍手でよく聞こえなかったけど。MCの「RIKA!」という言葉にハッとした。
あたしは、緊張して思わずこぶしを強く握りしめる。


ステージには背の高い外国人男性と、黒いドレスを着て髪と足首に薔薇を飾った女性が
登場してきた。

「梨華ちゃんだ…」

曲が始まる。赤を基調とした照明の中で、情熱的に男性と顔を近づけたり手足を絡ませて
タンゴを踊っている姿は本当に華やかで綺麗だった。
一緒に踊っている男性に、タンゴの演出だと知りながらも思わず嫉妬してしまうくらいに…。


曲が終わると同時に、会場はものすごい歓声と拍手の嵐になった。
あたしも思わず立ち上がって、観客に紛れていつまでも拍手をしていた。


ふと、ステージ上の梨華ちゃんと目が合った気がした。

「よっすぃ〜、どうしてここに…!」
205 :『Yes』 :2012/04/11(水) 23:35
あたしが店の外に出ると、ドレスを着たまま梨華ちゃんが駆け出してきた。


「タンゴ、めちゃくちゃ綺麗だったよ」
「そんなことより、どうしてここにいるの!? 仕事は?」

「それより、あたしの質問に先に答えてよ。どうして突然何も言わずに
いなくなったりしたんだよ」
「それは…。よっすぃ〜に好きだって言ってもらえる様なカッコいい女性に
なりたかったから」

「えっ?」

「あたしが子供っぽくて魅力が無いから、好きって言ってくれないんじゃないか
って思ったの…。だから大人っぽい女性になりたくて。1人で海外に来てタンゴ
を勉強してみようって。私、追い込まれた方が実力を発揮出来るタイプだし」


思わず言葉に詰まった。あたしのために、そこまで思ってくれてたなんて。


言葉も通じない国で、たった1人で頑張ってたんだよね…。
淋しい思いさせて、ごめんね。
あたしは思わず小さい肩を抱きしめた。

ずっと会いたくて仕方がなかったよ、梨華ちゃん。


「梨華ちゃん、一緒に帰ろう?ってゆうか、帰ってきて欲しい。
梨華ちゃんがいないとダメなんだよ」
「私も、ほんとはすごく淋しかった…。
でも自分に負けて帰るのだけはイヤだったから。必死に頑張ってた」
「うん…」
「だけど、よっすぃ〜が必ず迎えに来てくれるって、心のどこかで信じてたの」


「昼間にね、梨華ちゃんが練習してるのを見たんだ。めちゃくちゃ真剣な目をしてた…。
あたし、いつも全力で頑張ってる梨華ちゃんが好きなんだって、改めて思ったよ」


気づくと、また雨が降りだした。
「雨に濡れたら風邪ひくよ?中に入ろう」

梨華ちゃんは柔らかな笑顔のまま、うなづいた。
206 :『Yes』 :2012/04/11(水) 23:36
ブエノスアイレスで過ごす最後の1日。 
2人で買い物したりワインを飲んだり。

そして午後。梨華ちゃんの部屋に戻ってきた。


「実は見せたいものがあってね。写真なんだけど。梨華ちゃんと会う前に
1人で行ってきた場所があるんだ」
「えっ、どこに行ってきたの?」
「クエバ デ ラス マノス。手の洞窟って言われてる場所だよ。見て?」
「あっ、すっごーい!手がいっぱいだぁ」

「洞窟の壁面に、たくさんの手の跡が描かれている世界遺産なんだ。
手以外にも動物の絵も描かれてるんだけどね」



―――ここに描かれている手のほとんどは左手なんだって。
あたしなら、迷わず好きな人の右手を描くよ。
だって、お互いが左手じゃあ並んで手を繋げないでしょ?



「古代にタイムスリップ出来たらいいのになぁ」

「ネアンデルタール人のいる時代に?」

「その時代も行きたいけどね。もし叶うなら…。あたしは、梨華ちゃんと2人で
古代の手の洞窟に行きたい。梨華ちゃんの右手と、あたしの左手を繋いでる
絵を描きたいんだ。大好きな人の手は、絶対に離しちゃいけないよ?っていう、
未来の人たちへのメッセージでね」


「いつか、よっすぃ〜と一緒に見に行きたいなぁ」
「また2人でアルゼンチンに来ようね」
「うん! あっ、ごめん。なんか眠くなってきちゃった…。寝る子は育つって言うし。
ちょっとだけ寝てもいい?」

「相変わらずだね、変わってなくて安心したよ」
あたしは思わず吹き出した。

「起こしてあげるから、お昼寝しなよ?あたしも隣に座って寝てるから」
207 :『Yes』 :2012/04/11(水) 23:38
通り雨があがって、窓から差し込む陽射しが眩しい。


少し早く目が覚めたあたしは、ベッドのそばに膝まづいて、そっと寝顔を眺めていた。
毛布の上を、ダッフィーちゃんを動かしてトコトコ歩かせる。
そして眠ってる梨華ちゃんの横顔に、ダッフィーちゃんの鼻先でキスをした。

「ねぇねぇ、梨華ちゃん起きて?」
毛布で出来た緩やかな丘から、ダッフィーちゃんがひょっこり顔を出した。
「あっ、ダッフィーちゃんだぁ」
梨華ちゃんは眠そうに片目を開けながら微笑んだ。

「あのね、梨華ちゃん」
「ん?」
「あのさ…」


「あっ!よっすぃ〜の誕生日もうすぐだよね!プレゼントまだ準備してなくて…。
ごめんね?日本に帰ったらあげるから待っててね。何か欲しいものある?」



「いらない」

「えっ?」

何も言わずに、梨華ちゃんを抱きしめた。
「あたしが欲しいのは、梨華ちゃんだけなんだ。他には何もいらない」
「よっすぃ〜…」



「どうかこの指輪を受け取ってもらえませんか?
ずっと一緒にいて、あたしと手を繋いでて欲しいんだ」

緊張で冷たくなった指先で、ダッフィーちゃんに指輪を持たせて差し出した。


「ありがとう」
つないでくれた梨華ちゃんの小さな手は、すごく温かくて。
あたしは、この手をもう二度と離さないって決めた。

たった一言なのに。どうして、もっと早く言ってあげなかったのかな。
「梨華ちゃん、愛してるよ…」


静かに目を閉じて、あたしは誓いのキスをした。
208 :『Yes』 :2012/04/11(水) 23:38


『END』
209 :名無飼育さん :2012/04/12(木) 01:52
素敵です!
210 :『Yes』 :2012/04/12(木) 21:54
−あとがき−

つたない文章を読んで下さって、ありがとうございました。

読み返した所、よっすぃ〜が梨華ちゃんを追いかけて空港に向かったシーンの
直後のお話が抜けていました。
それでもステキだなんて言って頂けた方がいらっしゃって本当に嬉しかったです!
ありがとうございました。

申し訳ありませんが、198の直後に入る予定だったお話を後書きとして書かせて頂きます。
一生懸命な梨華ちゃんが、どんな気持ちで黙ったまま海外へ向かったのか。
少しでも伝わったら嬉しいです。

それから、本文中の地名に文字化けがありました。読み辛くてすみませんでした。
「エル?カラファテ →エル カラファテ」
「ペリト?モレノ → ペリト モレノ」


   
タクシーを拾って必死で追いかけたけど。結局、彼女には会えないまま。
降りしきる雨。あたしは、ずぶ濡れのまま飛び立つ飛行機を見送った。

マネージャーを問い詰めたら、語学とアルゼンチンタンゴを勉強する
という理由で梨華ちゃんは旅立ったらしい。
明日、サイトで正式にコメントを発表をするとか。

アルゼンチンに撮影で行った時、タンゴを習ってみようかなとか言ってたもんね。



『よっすぃ〜には私が海外に経つ日を言わないで下さい。
自分に自信が欲しいから…。1人で頑張りたいんです。
別れる時淋しくなるの嫌だし。お願いします』


マネージャーにはそんな風に言っていたそうだけど。


どうして、あたしの前から突然いなくなっちゃったんだよ、梨華ちゃん…。


199へ続く


−あとがき おわり−

211 :君の後ろ姿 :2012/04/22(日) 15:14

「じゃぁ、またね、よっちゃん。」
「ん。また。」

左右に別れた交差点。
今日もいつもと同じ挨拶をする。

アタシは右で、梨華ちゃんが左に。

アタシに手を振った梨華ちゃんは前を向き
背筋を伸ばし、アタシに背中を向けて歩き出す。

そんなアタシは手を振り、壁にもたれて、腕を組んで小さくなる背中を見つめる。
212 :君の後ろ姿 :2012/04/22(日) 15:14
よくもまぁ、こんなに続くもんだなぁ。

ん?何がって?
アタシがこうしていることだよ。

アタシがこうして、梨華ちゃんを見つめていること。
普通さ、よほどの事がなければこんな風にずっと見送らないっしょ?
ずーっと、背中見つめてんの。

ましてや、友達なら。

そう。友達。少なくとも梨華ちゃんはアタシことをそう思ってるんだろうなぁ。
友達、いや親友?戦友?相棒?そこんとこはよくわかんないけど。
まぁ、きっと多少は特別な存在ではいるんだろう。

そんな人が、見えなくなるまでじっと見つめていることをさ。知ったらびっくりだよね。
213 :君の後ろ姿 :2012/04/22(日) 15:15
もう何年だっけ?てか、いつからだっけ?こんな風に見つめてんの。
忘れちった。気づけば、だから。

『よっちゃん!!』って名前呼んでくれて
笑ってくれる事が嬉しすぎて
馬鹿なことしたり話してることが楽しくて
わがまま言ってくれることが嬉しくて
アタシだけが知っている梨華ちゃんを見ると誇らしくてさ。

分かっちゃいるんだよ、梨華ちゃんだって
今はどうか知らないけどいつか誰かに恋したりしちゃったりするだろう。

幸せな結婚なんてのを望んでいる人だから。
梨華パパや梨華ママみたいな幸せな家族を築くことを願っている人だからさ。

アタシには、それあげること無理だし。
分かっちゃいるんだよ、うん。
だから、恋していることが無駄なのになーなんて思うんだよ。

あぁやって一緒に笑ってる間に
恋してることも忘れちゃえばどんなにいいのに、楽なのにって。
214 :君の後ろ姿 :2012/04/22(日) 15:15
でも、それができなくて
今日もアタシは最後まで梨華ちゃんの背中を見送り続ける。

梨華ちゃんにそんなアタシのことを気づいて欲しいといえば…

んー…できれば、振り返らないで、ほしい、かな。

気づかないで欲しいから。

ほら、あの人、元はかなーり真面目じゃん?
ぜっってー迷うからさ。そんでもってアタシに気つかうと思うんだ。
傷つけたり考えさせたくないんだよね。そんなのアタシは望まない。

それに…ほら、アタシ結構ヘタレだからさ?
ないとは思うけど、怖いんだよね。嫌われたりすんの。
だから好きだよなんて言えないんだよ。

でも、そんなこと思ってたってさ、
梨華ちゃんは気づかないんだろうけどさ。

鈍感だし、なんの迷いもなく前しか向かない人だから。

ほんとさ、疑いようもないくらい片思いだよね。アタシ。笑えてくる。

そうやって、アタシは梨華ちゃんのいる前で
ずーっと嘘ついてる吉澤ひとみでいるんだ。
215 :君の後ろ姿 :2012/04/22(日) 15:16
「あーぁ!」

悔しくてちょっとだけ
でっかく叫びながら空を見上げてみる。

ほんと嫌になっちゃうよ。
でも、そんなアタシも嫌いじゃないんだよね。

なんだっけ、惚れたもん負けだっけ?

どうしようもない位、アタシは梨華ちゃんが好きなんだよ。

それだけなんだよ。

だから今日もほんの少しだけ
ほんの数分だけ。

梨華ちゃんの後ろ姿を見送るときだけ

梨華ちゃんに恋しているアタシでいられる。

だから、今日もアタシは君の後ろ姿を見つめるんだ。
216 :君の後ろ姿 :2012/04/22(日) 15:18
でも、いつか…いつかさ?
言えたらいいな。


「好きだよ」ってさ。

そしたらさ、君は、梨華ちゃんは、さ。

笑ってくれるかな。なんてね。

END
217 :君の後ろ姿 :2012/04/22(日) 15:20
なんの脈絡もない文章ですみません。でも何の後悔もありませんw
ただ、この曲聞いたらなんでだか、こんな情景が浮かんだんです。
書いてて、楽しかったです。読んでくれてありがとうございました。
218 :名無飼育さん :2012/04/23(月) 01:41
胸がキュンとしてしまいました。この二人の距離がそうさせているんですね。
219 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:40


「君は自転車、私は電車で帰宅」
220 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:41
「東京、めちゃくちゃ久しぶりな気がするー!
やっぱり落ち着くねー」

私にとって史上最大級の大きな挑戦、舞台「細雪」。
今日はお昼の公演だけだったんだけどね。
私は、とあるお仕事があって東京へやってきた。
221 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:42
ガッタスの新しいユニフォームの撮影も順調に終わって
私はマネージャーさんに1時間だけ自由な時間をもらった。
たまにはリフレッシュしなきゃね。


「よっすぃ〜、ちょっとだけ時間あるんだけどスタバでも行かない?」
「実はさ、新しい自転車を1番最初に梨華ちゃんに見せたくて。
今日乗ってきたんだ。ちょっと待ってて!」
そう言って走り出したよっすぃ〜が、颯爽と自転車で戻ってきた。
222 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:43
「ジャーーン!こいつが新しい愛車のピナちゃん」
「ピナちゃん?」
「ピナレロっていうの。イタリアの会社が作ってるんだ」
笑顔で無邪気にはしゃいでる、よっすぃ〜が可愛くて。

「今度さぁ、また自転車のレースに出るんだけど応援に来てくれる?」
「そうなの?すごいじゃん!見に行きたいなぁー!」
「待ってるから」

「でさぁ、ここのフォルムがたまんないんだよねぇ…」
「ねぇ、よっすぃ〜乗って見せてよー!」

223 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:44
1時間なんて、あっという間で。
もうすぐお別れの時間…。
私はまた、明日の舞台のために名古屋行きの新幹線で
戻らなければならない。
224 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:45
近くの駅まで、よっすぃ〜と手を繋ぎながら歩く。
花びらが舞う桜のトンネル。

この道はね、私とよっすぃ〜のお気に入りの場所なんだ。
川沿いの一本道に、しだれ桜がたくさん咲いてて。
ここを抜けると、無人の小さな駅があるんだよね。
東京とは思えないくらい静かでステキな場所。

225 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:46
「あちらのお姉様方はどう?優しい?」
「うん、大女優さんたちだし最初は
緊張したけどねー。でも共演者の皆さんと女子会した時
すっごい打ち解けて楽しかったよ」
「そっかー、良かったじゃん」
「うん」


「桜のいい香りがするねー」
「そうだねー!風がめちゃくちゃ気持ちいいし。この場所大好き」
「あたしも」

コートのポケットの中で、よっすぃ〜と手を繋いだまま。
このままずっと手を離したくなくて…。
思わず手にギュッと力を込めたら、
よっすぃ〜は何も言わずに優しく握り返してくれた。
同じ気持ちでいてくれてるのかな?
226 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:47
桜のトンネルを抜けると、白い小さな駅が見えてきた。

「入口に自転車停めてくるから待ってて」
「うん」
よっすぃ〜はパッと手を離して、すぐ自転車で走り出した。
ぬくもりが消えて。
なんだか急に、さみしくなった…。

227 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:48
「ねぇ、梨華ちゃん。あったかいコーヒー飲まない?
買ってくるよ」
「うん!」

ーーーガタン。
「あっ、やべっ!」
「どうしたの?」
「ボーッとしてたら押し間違えて冷たいヤツ出てきたよー。ごめん」
「大丈夫だよ。なんか歩いてたら暖かくなってきたし」
「ほんと?良かったぁー!」

よっすぃ〜と手を繋いで、こうして一緒にいるだけで
暖かい気持ちになれたから。全然寒くなんかないよ?
228 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:50
駅の中のベンチに座る。
もうすぐ電車が来たら、またお別れなんだよね…。
「ねぇ、よっすぃ〜?膝枕してあげよっか?」
私は膝をポンポンって叩いた。
「えっ?」
「ほら、頭乗せて?」
「いいの?」
いつもはカッコいいよっすぃ〜の横顔が、ふにゃっと
笑顔になった。

「久しぶりだねー。よっすぃ〜を膝枕してあげるの」
おでこや首すじにかかる髪をサラサラと指でとかすと、
くすぐったそうに笑った。

あっ、よっすぃ〜の髪に桜の花びらが。綺麗…。
風に舞った花びらを、そっと掴まえた。

「梨華ちゃん眠くなっちゃうよー。気持ちいい…」
目を閉じた寝顔が小さい子みたいで可愛くて。
優しく頬に触れた。

229 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:51
「ねぇ、よっすぃ〜?私がいない時はお酒飲み過ぎちゃダメだよ?
介抱してくれる人いないから心配だもん」
「そうなんだよねー。梨華ちゃんいないと、めちゃくちゃ困る…」
「それってさぁー、お酒いっぱい飲みたいだけじゃないの?」
「ち、ちがうよー!」
「お主、図星じゃな?」
「お許し下さいませ〜!篤姫さまぁー!」
思わず2人で顔を見合わせて。吹き出して笑った。
230 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:53
「ひとみちゃんは私がいなくても、いい子にして
待っていられるかな?」
「うん、梨華ちゃんが帰ってくるまで、
いい子にして待ってる…」

よっすぃ〜は、照れて私のお腹に顔をうずめて
耳まで真っ赤になった顔を隠した。
231 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:55
急に、よっすぃ〜が起き上がって。
私の頬に触れた後、ふわりと抱きしめてキスをした。
「梨華ちゃん、好きだよ」
「ん…私も」

「不安な時や辛い時、あたしには言ってくれていいから。
何にも出来ないかもしれないけど…。1人じゃないから」
「うん、ありがとう」

もうすぐ電車が来る。
私は、離れるのが辛くて泣きそうになった。

232 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:56
一本目の電車は見送った…。

ベンチから立ち上がって。
「ほんとに、もう行かなきゃね」
「そうだね」

次のに乗らなきゃ、マネージャーと待ち合わせした新幹線に
間に合わない。


私だって、本当はさみしいんだよ。
でも、行かなきゃ…。
ファンのみんなと約束したから。
大きな自信を手にして帰ってくるって。
233 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:57
「ねぇ、私の目を見て?」
よっすぃ〜に、思いっきり笑顔をしてみせた。
私の1番の笑顔。その目に焼きつけておいて欲しいから。

「行ってきます!」
泣きそうになりながら微笑んで手を振った。

改札を通り抜けて、ホームまで駆け足。
「行ってらっしゃい!頑張ってね」
よっすぃ〜は小さく手を振った。

234 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 00:58
扉が開いて、反対側の窓のそばに立った。
電車がゆっくりと走りだすと、景色が流れ始める。
ふと窓の外を見ると…。

「よっすぃ〜!」

自転車を漕いで途中まで付いて来てくれてたんだ。
いつまでも手を振ってくれてるのが嬉しくて。
涙がこぼれた…。



ありがとう。
ほんの短い時間しか会えなかったけど、幸せをもらった私。
235 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 01:00



いよいよ細雪の千穐楽。
楽屋で軽くストレッチしているとメールが届いた。
誰だろう…?


「あれっ?さゆからだぁー」
236 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 01:02
『石川さーん!元気ですか?
この間、吉澤さんとラジオの収録で
一緒でしたぁ!吉澤さんとラブラブ
な感じで撮ったので送りまーす!

そういえばラジオでお酒の話に
なったんですけど、ドリムス。の
打ち上げの時って石川さんいなか
ったんですねー。
残念でしたね!

吉澤さん、酔っ払っても面倒みて
くれる人がいなかったから、あん
まりお酒飲まなかったって言って
ましたよー。
いつも石川さんに甘え過ぎです
よねー!
こっちに帰って来たら飲み過ぎ
だってお説教した方がいいです
よぉー。
あっ、言い忘れるとこだった。
舞台、頑張って下さいねー!


世界一可愛い道重さゆみより』

237 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 01:03
「まったくー!楽しそうなんですけどぉ…」

よっすぃ〜がデレデレな笑顔で写ってる写真を見たら、
思わず嫉妬しそうになったけど。

「よっすぃ〜、お酒飲み過ぎないようにっていう約束
ちゃんと守ってくれてたんだね…」

離れていても、気持ちが繋がってる気がして嬉しくて。


「さゆ、ありがとう」

238 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 01:04
ーーー道重さーん!そろそろスタンバイお願いします!

「はーい!」

石川さん、メール見てくれたかな。
いつも毒舌ばっかりだけど、ほんとはめちゃくちゃ
憧れてるんですからね…。舞台、頑張って下さいね。

239 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 01:05
ピンクのハンカチに包んだ、あの日の桜の花びら。
大切に着物の袖にしまって…。


人を好きになって、会いたくても会えなくて。
そんな切ない想いは、よっすぃ〜が教えてくれたんだよ。

だから、舞台での涙は演技じゃないの。
毎回、本気で切なくて涙がこぼれる…。

本気で好きにさせてくれてありがとう、よっすぃ〜。

240 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 01:07
「よっしゃあー、今日もがんばるでぇー!」
帯を、ポンと叩いて気合を入れた。


ーーーこいさんの熱い想いが、会場の皆さんの心に届きますように。

そう願うと、私はうさぎの暖簾をくぐって、たくさんのお客様が
待つ舞台へとゆっくり歩き始めた。


大きな自信を掴んで…。
大切な人の元に、胸を張って帰りたいから。


「行ってきます!」
241 :君は自転車、私は電車で帰宅 :2012/04/27(金) 01:07


  「END」
242 :名無飼育さん :2012/04/27(金) 11:09
やばい
じーんときました
243 :名無飼育さん :2012/04/27(金) 22:07
これはとてもとても良いいしよし
244 :名無飼育さん :2012/04/28(土) 08:48
素晴らしい!
245 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:03

『ユーターン〜you-turn〜』
246 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:03

―H side―
247 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:03
「いいよ、梨華ちゃん先乗って」
キュっと軽くタイヤを軋ませて、地下の駐車場に滑り込んできたタクシー。
あたしはいつもと同じように、後発を選ぶ。

「ありがとごめんね、また明日ね」
そう、また、すぐに、会えるけれど。
「うん、おつかれ。気をつけて」
だけど少しでも、離れるのは寂しい。
248 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:04
ガラス越しに手を振り合う。発進すると、背もたれの上に身を乗り出す勢いで、振り続けてくれる。
だからあたしも、車が見えなくなるまで、手を振り返す。見送る方が、あたしは好きなんだ。

地上へ消えるテールライトとすれ違うように、ヘッドライトがスロープを下りて来た。
開いたドアから、後部座席に乗り込む。行き先を告げて、ぼんやりと、今日いちにちを思い返す。
249 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:04
明るくした髪の色、似合ってたな。いつもより表情豊かだったのは、りりしくなった‘こいさん眉’のせいかも。
艷やかな唇から飛び出す、昭和のギャグは相変わらずで。まだちょっと抜け切れていない大阪弁に、対抗したり。

無防備にあたしに触れてくる、小さな手。目が合うと吸い込まれそうなほど、キラキラした瞳。

250 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:04
充電しづらいって即、アイフォンカバー外されちゃったけど。
ブーツもプレゼントした日のまま、じっと地面に触れる機会を待っているけど。
でもいいんだ。綺麗に飾ってくれてるの知ってるし。
とにかくそんな全部がかわいくて、だからいとしくて仕方ない。

251 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:05
なんとなく日課になっている、オヤスミメールを送ろうかなと、携帯を取り出した。
「ありゃあ。まだ、こんな時間だったんだ」
今日初めて時計を見た。スタジオにこもりっきりで、昼夜の感覚がなくなってて。
早く終わらなくて続いてほしい二人の仕事だったから、一度も時間、気にしなかったし。

252 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:06
車窓に目をやれば、確かに、夜はまだ浅く。通り過ぎる街並みは、そぞろ歩く、笑顔の人で溢れ。
明日の朝も早いけど、行き先を変更して少し一緒にいても、今日中に帰れる。

253 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:06
『やっぱ一緒にご飯食べよっか』
送信して、待つ。さて、アナログ姫からのお返事は、手っ取り早いといつも言う電話だろうか。

『誘えばよかったって、いま思ってたところだったー』
今日の姫は、メールのご気分だったようだ。梨華ちゃんも時間を、初めて知ったんだろう。
タクシーのラジオを聴いて、まだ野球やってる!とでも思ったのかも。

『こっちがUターンしてもらうから、家で待ってて』
送信してすぐあたしは、運転手さんに、高らかに変更を告げた。
この先に、不安がないわけじゃない。いつまで一緒にいられるんだろうって、頭をよぎることもある。

『了解』
すぐ返ってきたそっけない2文字の後には、ちゃんとハートマークがついてたし。

254 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:06
だから、信じてるんだ。
きっとあたしたち、ずっと一緒にいられるって。
ふたりが、一緒にいたいと思い続ける限り。

255 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:07
   
256 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:07

―R side―

257 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:08
「いいよ、梨華ちゃん先乗って」
いつもよっすぃはそう言って、先に来たタクシーにあたしを乗せてくれる。
「タクシーすぐ来るんだから」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
なんて会話を最近毎日してる。

「ありがとごめんね、また明日ね」
そう、また、すぐに、会えるけれど。
「うん、おつかれ。気をつけて」
だけど少しでも、離れるのは寂しい。
258 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:08
よっすぃがずっと見送ってくれるの、分かってるから、
ついつい角を曲がるまで、手を振ってしまう。
ちょっと寂しそうな笑顔で、いつも手を振ってくれる。
よっすぃも寂しいって思ってくれてるのかな。

地下の駐車場から出ると、まだほんのり明かりを残した空に、大きく輝く丸い月。
よっすぃロマンチストだから、この月を見て瞳をキラキラさせるんだろうな、なんて思いながら、
ぼんやりと、今日一日を思い返した。

259 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:09
久しぶりに美容院に行けて、ちょっと色を明るくした。
つやつやにもなった。
よっすぃはちらって髪を見て、にやって笑った。
なによぅって思ったけど、
そのおっきな瞳が伝えてくれるよっすぃの想い。
口下手だけど、あの瞳に偽りはない。

まだついついでちゃう「ほんまやなぁ」。
あたしの中の血が騒ぐなんて言いながら、
「せやな」って無邪気にはしゃぐアルトな響き。

最近は自然と腕をまわして、
あたしを包み込んでくれる大きな手。
その手から伝わってくるあったかさは、何よりも安心するの。

260 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:09
せっかくの海なんだからって、おそろいのビーチサンダルを買ってきてくれたり、
ねぇ、明日はあのパーカー着て行って、みんなを驚かそうよとか。
とにかくそんな全部がかわいくて、だからいとしくて仕方ない。
261 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:10
まだオヤスミメール来てないよなぁなんて、取り出してみた携帯。
あたしから送ってもいいんだけどって、いつも思ってるんだけど。
なんとなぁく時計を見たら、コンビニご飯じゃなくても大丈夫な時間だった。
そういえば、さっき見た空もまだ明るかったよなぁ。
スーパーで材料買って、家に帰ってご飯作っても遅くならないのか。
久しぶりによっすぃとおうちでゆっくりできたなぁ。
262 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:10
なんて思ってたら、
『やっぱ一緒にご飯食べよっか』
って、メールが来た。
よっすぃも同じ気持ちでいてくれたのかな。
なんて、電話しちゃったらにやにやしてるのがばれちゃうから、
今日はすぐにメールを返した。

『こっちがUターンしてもらうから、家で待ってて』
よっすぃらしいんだけど、すぐに返事が来た。
すぐにこっちに向かっても、ちょっとかかるよね。
なんて思って、近くのスーパーに寄ってもらうことにした。
263 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:11
一緒にいるときは、言葉は少ないけど、
あたしの思ってること、いつも先回りして想ってくれてる。
想ってること、今は一緒って思ってもいいのかな。
264 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:11
だから、信じてみよう。
きっとあたしたち、ずっと一緒にいられるって。
ふたりが、一緒にいたいと思い続ける限り。
265 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:12

『END』
266 :ユーターン〜you-turn〜 :2012/05/09(水) 21:16
貴重な場所をお借りし、ありがとうございました。
有名な作家さんにアドバイスをいただきながら初めて書きました。
ご意見ご感想などあればよろしくお願いします。
267 :名無飼育さん :2012/05/09(水) 22:12
追記:元の曲は奥華子さんの「最終電車」です
268 :名無飼育さん :2012/05/10(木) 00:31
初めてとは信じられない!とても よかったです。素敵ないしよしをありがとう!
269 :名無飼育さん :2012/05/10(木) 18:05
補足しておくと、Hの方は本人の着想を手直しする形で
有名な()作家()が書いております
270 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:31

『歌うたいのバラッド』
271 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:32

「魔王うめぇ〜。あぁー今日はのんびりすっかなぁっと」

仕事が早く終わった日の夕暮れ。
ちょっと広めな自宅のベランダに置かれた白いテーブルに、
夕陽が眩しいくらい射している。

ーーーカランカラン
あたしはグラスに氷を入れ、焼酎をロックで飲みながら
くつろいでいた。

手には、リビングから持ってきた父ちゃんのギター。
お酒を飲みながらギター弾いて、鼻歌交じりに
いろんな歌を歌うのが好きなんだよね。

272 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:33
1人でステージに立つ時。
いつも何歌うかなぁーって迷うんだけど。
この間のソロライブは、どうしても歌いたい歌があって。

きっかけは、武道館ライブのリハの合間に話した
中澤ねえさんとの会話だったんだけどね。

「歌いたいっていう原点に戻ることって大事だね…」って。
ドリムス。として、あたしたちが集まった意味を考えたり。

それ以来、歌うことで笑顔になってくれる人が1人でも
いてくれるなら…自分が存在してる意味があるんじゃ
ないかとか思えるようになったんだよね。

でね、あたしが今、アイツのために出来るのは歌うこと
だって思ったから…。

273 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:34
この間のソロライブで歌った「雪に願いを」。
めちゃくちゃステキな曲でさ。
聴いた瞬間、歌いたいなぁ!って思ったんだよね。

でも、この曲を選んだ理由はもう1つあって。
274 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:35
舞台の細雪に出るって話が来た時。
ほんとは梨華ちゃん、悩んでたんだ。
「私に出来るのかな…」って。

あたし今まで細雪を知らなかったから。
簡単に大丈夫だよ!とか頑張れとか言えなくて。
それで、細雪の本を読んでみたんだ。

読んでいくうちに、妙子の真っ直ぐで華やかな感じ
って梨華ちゃんみたいだなって思えてきて。

『梨華ちゃんなら、きっと大丈夫だよ。新しい事に
挑戦してさ、でっかい壁を乗り越えたら、きっと
自信に繋がると思うよ』って背中を押したんだ。

『自分に自信を持てるようになりたいから。
私、頑張ってみるね』

その妙子が舞台で舞うのが「雪」っていう舞でね…。
275 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:37
あたしは自分のスケジュールを見て、舞台を観に
行けないのが分かってたから。
めちゃくちゃ残念だったんだけど。

だからライブで、梨華ちゃんが頑張って稽古した
「雪」の舞と舞台が成功しますようにって、願いを
込めて歌おうって決めたんだ。

ーー次の曲は、雪に願いをーー

でも、梨華ちゃんのために歌に込めてみたなんて、
本人を目の前にすると言えなくて。


本当のことは 歌の中にある…か。
276 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:38
「今日はあの曲歌おうかな」
久しぶりにギターを持つ手がたどたどしいけど。
誰も見てないからいいよね?

番組の中で初めて目の前で弾き語りしてもらった時、
ものすごく感動したんだ。

歌詞みたいに、あたしは心に目隠しして生きてきたから。
いつからだったかな…。自分の気持ちを抑えて本音で
話さなくなったのは。

そんな時でもずっと、あたしのそばにいてくれたのは
梨華ちゃんだったんだよね。

277 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:38
そういえば、この間のドリムス。の打ち上げで。
隣に座ってたヘアメイクさんがiPhone見せながら
話しかけてきて。
278 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:39
「ねぇねぇ、よっすぃ〜!これ見た事ある?」
「なんですかー?」
「いしよし小説」
「はっ?!」
「つまり、梨華ちゃんとよっすぃ〜の小説だよ。
ファンの子達が書いてるの」

自分たちの事を書いてあるなんて、めちゃくちゃ
恥ずかしかったけど…。
ほんとは気になって仕方がなくて。

「結構リアルな感じで書いてあって、びっくりしたよー!
でも読んでたら私もハマっちゃって。今度よっすぃ〜も
読んでみてね」
「なんか恥ずかしいけど面白そうかも。帰ったら見て
みますねー!」


279 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:41
家に帰ってパソコンの電源を入れて…。
さっき聞いた「いしよし小説」のサイトを開いてみた。

「うわぁーすっげぇー!こんなにいっぱいあるんだ…」

280 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:42
ーーカチッ

とある小説を開くと…。
あたしと梨華ちゃんが高校生になってる小説で。
楽しそうに話したり、思いっきりケンカしたり、本気で
梨華ちゃんと恋したり。

『好きなんだよ、梨華ちゃんのことが…』かぁ。

281 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:43
こんな風に気持ちを素直に伝えられたらいいのにな。
あたしは、思わず小説の中の自分が羨ましくて切なく
なった。

たしかに仲はいいけど、いしよし小説みたいには、
なかなか上手くいかないものなんだよ?

282 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:44
最近よく、あたしと梨華ちゃんを好きだって言ってくれる
人が多くて。いしよしって言葉にも、だんだん慣れて来て。

最初はなんか照れくさい感じだったんだけど、やっぱり
嬉しいよねって2人で話したりしてたりするんだ。

でもそんな相棒の梨華ちゃんとも、いつかはサヨナラしなきゃ
いけない日が来るのかなって、時々考えることも正直あって。
ほんとはさみしい…。

そう想ってるのは、自分だけなんじゃないかって。
時々恐くなったりする。
そんな風に悩んでる事、誰にも言えなくて、苦しくて…。


ノーテンキに生きてる様に見えるかもしれないけどさ。


283 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:45
「ーーーあなたを思いながら…」

ギターの音色が心地よくて。
ちょっとだけ酔いがまわってきたかな?
気づくと、あたしは泣いていた。

ふと目を閉じると、いつものあの笑顔が浮かんできて。
「グスンっ…最近涙もろくなったかな?」

284 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:45
そういえば今日はスーパームーンか。
早く月が出ないかなぁ。

「そうだ…」

あたしは突然思い出したように、ベランダに置いてある
植物に水をやった。
梨華ちゃんが誕生日プレゼントにくれた枝豆栽培セット。
これさぁ、ミニざるまで付いてんの。

何度も言うけど枝豆栽培セットだよ…?
びっくりするよねー。

285 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:47
「早く大きくなれよぉー」

アンパンマンがちょこんと座った赤いジョーロで、
枝豆の鉢に水をあげながらつぶやいた。

「そうだ、せっかくだから枝豆ちゃんの成長を
見せてあげようかな」

生まれたばかりの小さな芽を撮って梨華ちゃんに
メールしてみた。

286 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:48
ーー数分後ーー

あれっ、梨華ちゃんから電話だ。
iPhoneでお互いの顔を見ながら話す。

「よっすぃ〜今何してるのー?」
「優しいよっすぃ〜は、枝豆ちゃんに水をあげてんの。
えらくない?」

「枝豆セット見た時ね、よっすぃ〜の顔が浮かんだの。
ピッタリだったでしょ?2セット入ってるから私の分も
育ててねー!」
「まったく…」
とか言いつつニヤけるあたし。
そんな梨華ちゃんも可愛いんだけどね。

287 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:48
「梨華ちゃんメール見た?ちょっと芽が出てきたんだよ!」
「枝豆の芽って初めて見たよー!すっごいねぇ」

「なになに?栽培時期は4月初旬から8月末。大きく育てて
ビールと一緒に楽しみましょう、かぁ。なるほどねぇー」
「ふふっ、よっすぃ〜!美味しい枝豆楽しみにしてるから。
収穫する時は呼んでね?」

画面越しに見える梨華ちゃんはキャミソールで。胸元が
めちゃくちゃセクシーだった。

288 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:49
「おまえさぁ、そんな格好してると風邪ひくぞ?大好きな
ガガ様のライブ行けなくなったらどーすんだよ」
「だってー、お風呂上がりで暑いんだもん」

梨華ちゃんは左手を腰にあててレッドブルを一気飲み。
一体誰に似たんだろ…。もしかして、あたし?
そんなのはどうでもいいけど。

「あのさ、他のヤツにそんな格好見せんなよ?」
あたしは小さく言った。

写真集とか見たけどさ。
のけぞってる胸元とか首すじとか、めちゃくちゃセクシー
だったし。


289 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:50
「えっ?もしかしてヤキモチ焼いてるの?」
「ばーか。ちげーよ」
「大丈夫だよ…。普段こんな格好、他の人に見せないもん。
これは、よっすぃ〜にしか見せない石川梨華チャンネル
だから。あっ、梨華ちゃんのチャンネルだから梨華ちゃん
ネルだね!」
「ダジャレかよ。梨華チャンネルってさ、お金とられんの?」
「まさかぁ。お金いらないから、かわりに何か見せてよー?
面白い事とか」
「なんだよそれー。面白いことなんか出来ねぇよ」

そうだ…。
290 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:51
ーーガタンッ

あたしは、そばにあったギターを持った。
梨華ちゃんだけに見せる、吉澤ひとみスペシャルライブの
始まり始まり〜。

リズムを取りながら、ゆっくりと歌い始める。

あれっ?さっきまでワーワーうるさかった梨華ちゃんが、
ピタリと静かになった。
もしかして、飽きてどっか行ったとか言わないよね?
あたしは、構わずそのまま歌い続ける。

「Ah〜愛してる…」

最後にアコギを思いっきり掻き鳴らして。
ーーージャン
「はい、おしまい。ちょっとぉー聴いてくれた?」

291 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:52
ギターを置いてiPhoneを手にした。
ふと画面を見ると。梨華ちゃんは涙をポロポロ流しながら
こっちを見つめていた…。

「うぐっ、グスっ。だって…感動したんだもん」
「そう…?そりゃあ良かった。そういえばさ、梨華ちゃん
どうして電話してきたの?何か用事があったんじゃないの?」
「あっ、忘れてた…」
「なんだよそれ」
「だってー、よっすぃ〜が枝豆の話とかするから忘れちゃったん
だもん」
「はいはい、あたしが悪かったですよー。で、何の用事だったの?」
292 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:54
「あのね、たけのこご飯をいっぱい作ったから食べに来ないかなぁ
って思って電話したの」
「あれっ?この間もたけのこご飯作らなかったっけ?ブログに書い
てたじゃん」
「作ったよぉー。ファンのみんなが美味しそう!ってすっごい褒めて
くれたから、また作ってみたの…」

「味は?」
「めちゃくちゃ美味しく出来たよー!たけのこ、まき割りみたいに
縦に切ったけどね」
「だからさぁ、その切り方危ないからやめなって言ってんじゃん」
「わかったぁー。で、どうなの?来れる?」
「今から?」
「何か用事あるの?」
「いや、ただ今日ってスーパームーンが見れる日じゃん。見たい
なぁって思って」
「じゃあ、うちで一緒に見ようよ?」


「了解。じゃあ一緒にでっかい月を見ようか」
「うん、待ってる。早く来てね」

293 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:54
思いがけず、梨華ちゃんと一緒に綺麗な月を見れることになって。
あたしはなぜか、ドキドキしていた。

梨華ちゃんの家の近くでタクシーを降りる。辺りはすっかり暗くなって
夜風が気持ちいい。

294 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:55

ー ピンポーン ー

マンションのインターホンを鳴らす。
「はーい!」
「石川さーん、吉澤さんからお届け物でーす!」
「頼んでませーん!」

ーーガチャッ
思いっきり切られた。

「こんにゃろぉ…」

295 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:56

ー ピンポーン ー

「コラっ!いいから早く開けろってば」
「ふふっ、冗談だって。今開けるよー」

エレベーターのボタンを押して、梨華ちゃんの部屋の階で降りた。

「まったく、自分から早く来て!なんて言っといたクセに。頼んで
ませ〜ん!だって。コントかよ?」
あたしは思わず吹き出した。


296 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:57
部屋のインターホンを鳴らす。
ドアが開いて、めちゃくちゃ笑顔のあの人が現れた。
「もう、よっすぃ〜遅ーい!ご飯冷めちゃうじゃなーい」
「待った?」
「いいから入ってー!」
思いっきり手を引っ張られて部屋の中に入る。

テーブルの上には、たけのこご飯と、あたしの大好きなゆで卵と
ブロッコリーのサラダ、そしてたけのこの煮物、梨華ちゃんの
好きな唐揚げが乗っていた。

297 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:57
「うわぁー!すっげぇーうまそぉーじゃん」
「ほら、よっすぃ〜手を洗って座って?」

「手を洗ってきたよー」
「はい、よっすぃ〜のお箸」
「サンキュー」

298 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:58
「かんぱぁーい!」
「これって森伊蔵でしょ?すっげぇうまい!」
「よっすぃ〜が好きだって言ってたからママに買ってきて
もらったの」
「ほんとにー?梨華ちゃんのママにもお礼言わなきゃね」

1時間程で、あっという間にテーブルの上の料理は綺麗に
なくなった。

299 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:59
「梨華ちゃん腕上げたねー!すっげぇ美味しかったよ!
ごちそうさまぁ」
「良かったぁ!めちゃくちゃ嬉しい」

キッチンであたしがお皿を洗い終わると、梨華ちゃんが
アロマキャンドルをたいて部屋の照明を落とした。


300 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 22:59
「じゃあそろそろ、月を見ようか…」
「うん!でっかい月なんでしょう?楽しみー」

梨華ちゃんとベランダに出て綺麗な月を眺める。
「あっ、綺麗な月だぁー!」

「梨華ちゃん、今日はスーパームーンなんだよ」
「セーラームーンみたいじゃない?」
「言うと思った…」
「ふふっ」

「月に変わってお仕置きしてやる」
ベランダの手すりにつかまって月を眺めてる梨華ちゃんを、
あたしは後ろからギュッと抱きしめた。

301 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:00
「ちょっとお仕置きって。もぉー苦しいよぉー。よっすぃ〜」
洗いたての髪はシャンプーの甘い香りがして…。
あたしは吸い込まれるように顔をうずめた。
「寒くない?」
「大丈夫。よっすぃ〜が暖めてくれてるから寒くないよ」

「くしゅん…」
「よっすぃ〜の方が寒いんじゃないの?もう入ろっか」
「もうちょっと見たかったなぁ」
「駄々こねないのー。ほら、入ろう?」

あたしの腕の中。梨華ちゃんは、くるりと振り返って
優しく微笑んだ。

302 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:02
小さなキャンドルはあっという間に消えて。
月明かりの中、ソファーでDVDを観ながら
お酒を飲んでいた。

梨華ちゃんは、かなり酔ってきたみたいで。
あたしの肩に頭を乗せて寄りかかってきた。

「さっきは、よっすぃ〜にお仕置きされたから…。
今度は私がお仕置きしてもいい?」
「えっ?」

303 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:03
突然首に手をまわされて。
梨華ちゃんに抱きしめられた。

「ちょ、待って。くるしいー。まったく負けず嫌い
なんだから」
「ふふっ、ジタバタしないで。おとなしくしなさい」

あたしは観念して体を預けた。梨華ちゃんの胸元に
耳をあてていると、柔らかくて、あったかくて…。
眠くなりそうだよ。

304 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:03

「ねぇ、なんでこんなにドキドキしてんの?」

ーードキン、ドキン。

「…だって、初恋の人なんだもん」
梨華ちゃんは小さく消え入りそうな声でつぶやいた。

「………」
「こんなに誰かを好きになったの、よっすぃ〜が初めて
だったんだよ?今でもずっと…。だからドキドキするの」

305 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:04
スースースー

「ねぇ、よっすぃ〜?」
あれっ?眠っちゃったのかな。
もぉー。でも、恥ずかしいからやっぱり寝ててくれて
良かったかもね。

306 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:05
月明かりに照らされて、よっすぃ〜の白くて綺麗な顔の
ラインが浮かび上がる。

私たちはもう10年以上の付き合いだから。好きなんて言葉
今さら言えなくて。
よっすぃ〜は、私の気持ちには気付いてないだろうけど。

スヤスヤと規則正しい寝息を立てている横顔を見つめながら
薄い唇を指でスーッとなぞる。

「綺麗…」

307 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:06

ーードキン。ドキン、ドキン。

速くなる胸の音。振動が伝わってくる。
あれっ?ドキドキしてるのは自分の心臓だと思ってたけど。
これは、よっすぃ〜の胸の音だ。
もしかして…起きてるの?

私は小さな声で呼んでみた。
「ねぇ、よっすぃ〜?起きてるの?」
「ムニャムニャ…」

ふふっ、夢見てるのかな?可愛い。

やっぱり眠ってるんだよね?
起きてると思ったのは気のせいかも。
朝まで、こうして抱いててあげるね。

「おやすみ、よっすぃ〜」
ーーちゅっ
そっと髪をなでて。おでこに、おやすみのキスをした。

308 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:07


もう、梨華ちゃん寝たかな…。
さっきの梨華ちゃんの言葉、夢じゃないよね?
ーーあたしのことを…


離れてみてわかったんだ。
梨華ちゃんは自分にとって大事な存在なんだって。

どうしようもないくらい好きなのに。
不器用なあたしは、今日もまた伝えられなくて。

雨の夜も、冬の朝もそばにいて欲しいんだ。
歌なら言葉にして伝えられるのに。

どうしてかな、涙がこぼれる…。



309 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:08
もうすぐ朝だ。

ソファーに寄りかかって、あたしを胸に抱いたまま
眠ってる梨華ちゃんを見上げながら囁いた。

「おはよう、梨華ちゃん」
「ん…、もう朝なの?あっ、おはよう。よっすぃ〜」

梨華ちゃんは、あたしの目を見つめた後、ちょっと
視線をそらして照れくさそうに笑った。


ーードキン
梨華ちゃんのドキドキが伝わってきた。
あたしも、聞こえちゃいそうなくらい鼓動が速い。

「ねぇ、よっすぃ〜?昨日の夜って
私の話ちゃんと聞いてた?」
「焼酎飲んだから途中から爆睡してた…」
「もぉー」

310 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:09

ーードキン。ドキン、ドキン。
急にドキドキし始めたあたし達は、他愛のない
会話をしていた。

「ねぇ、そういえばこの間ソロライブで何歌ったの?
聞けなくて残念だったなぁ」

「雪に願いを、とか」

「雪? そういえばね、私「細雪」の舞台で「雪」って
いう舞を踊ったんだよ。偶然だねー!」

311 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:10

ーーー本当は偶然なんかじゃないんだ


「だから、歌ったんだよ…」
「えっ?」
「雪に、願いを…。曲に願いを込めたんだ。舞台が成功
しますようにって」
「そうだったんだ…。聴きたかったなぁ」
「舞台観に行って応援してあげられなくて、ごめんね?」


梨華ちゃんの胸から伝わってくる鼓動にあわせて…
囁くように歌い始めた。


312 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:11

あたしの髪を小さな手で撫でてくれている。梨華ちゃんの
顔を見上げたら、優しく微笑みながら泣いていた。


「ーーー想いが……ずっと降り積もればいい」

歌いながら、親指で頬につたう涙をぬぐってあげる。
1人で一生懸命頑張ってきたんだよね。

「おかえり、梨華ちゃん」

あたしは起き上がって、ふわりと抱きしめた。

313 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:12

ーードキン。ドキン、ドキン。

「聞こえる?あたしの胸の音」
「うん…、すごく速くなってる」
「梨華ちゃんと一緒だよ」
「ふふっ、ほんとだね」

照れくさくて、言葉にしては言えないけど。
これが答えだよ、梨華ちゃん。

314 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:12

「キス、してもいい…?」

梨華ちゃんは返事のかわりに、そっと目をとじた。
月の引力みたいに惹かれ合って…。
2人でゆっくりとソファーに沈んでいく。
繰り返す波のように。何度もキスをし続けた。

315 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:14

あたしたちは白と黒、月と太陽みたいに真逆に
見えるかもしれないけど。
不思議な力が働いて。
どうやら、惹かれ合うように出来てるらしい。


情熱の彼方に何がある?
今のあたし達にはわからない。
でも、あたしは知りたい。
このまま2人で突っ走ってった先に、何があるのか。
未来に何が待ってるのか。


世の中の常識なんてぶっ壊してさ。
どんな風に形を変えても、きっと2人でゴールに辿り
着いてみせるよ?
繋いだ手は離さないから。

だから、ずっとそばにいてよ。梨華ちゃん。


ファンの皆さんは、こんなあたし達に着いてきてくれますか…?

316 :歌うたいのバラッド :2012/05/13(日) 23:14

『END』
317 :名無飼育さん :2012/05/14(月) 01:17
憑いて行くに決まっとるじゃろがい!リアルすぎます!
318 :名無飼育さん :2012/05/14(月) 20:56
日本人じゃないんだけどこの話ホント感動した
319 :名無飼育さん :2012/05/14(月) 20:57
まだ終わってないのに書き込まれた・・・
320 :名無飼育さん :2012/05/14(月) 20:58
またやっちゃった・・・ごめんなさい

シンプルだけどリアル過ぎてホントにいい話です

321 :歌うたいのバラッド 作者 :2012/05/15(火) 00:01
読んで下さった皆さん、ありがとうございます。
私も2ヶ月前から小説を書き始めたばかりで。
皆さんからの感想、すごく嬉しいです!

>>317 リアルに感じて頂けて嬉しかったです!
   ありがとうございます。

>>318 海外の方にも感動して頂けたなんて嬉しいです!
   いしよしは全世界共通ですよね!

>>320 いろいろな内容を書きすぎたかなーとか思って
   いたのですがシンプルに気持ちが伝わったみた
   いで嬉しかったです。ありがとうございます!

322 :寒いね :2012/11/03(土) 19:34
>>169-173からの続きであり
>>174にたいするANSER
323 :寒いね :2012/11/03(土) 19:34
話の終わりって何だろう?

宇宙の平和を守る任務を命じられたなら、
任務地に急行し、その任務を達成する。
そこまで書かなければならないだろう。

なのに・・・
324 :寒いね :2012/11/03(土) 19:35
デモね、超短編小説間出にそれを求められるのも、
どうなんだろうと思うんだよね。

逸れにね、続くかどうかはっきりしない、
そしてすぐに続きが書けないのが分かてる。
それでも『草板』へ!
なのだろうか?

>>322のような感じで続編を書いていくのは反則なのだろうか?
325 :寒いね :2012/11/03(土) 19:36
また厳しい反論を食らうのかな?

問答無用  唇開けば  また寒し
326 :寒いね :2012/11/03(土) 19:36
現実は厳しいもので、
地球の任務はいまだに実行されていない。
たまご型カプセルも戦闘用のひよこ型モビルスーツも7人分調達できず、
いまだに私たちは狭苦しい宇宙平和維持機構分館1059号室にいる。
すぐに宇宙の平和を守る必要もないから、
事は何も進んでいない。

季節は秋・・・寒くなった。
327 :寒いね :2012/11/03(土) 19:37
心の中も
寒いね
328 :寒いね :2012/11/03(土) 19:37
暫定終了
329 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 00:56
 
330 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 00:56
満員の観客で、膨れ上がった大きなテント。
開場はざわつき、その時を今や遅しと待っている。

いつものように、大きく息をつき、幕を握り締め胸の高鳴りを抑えようとするけれど
今日はなかなか止められない。
どれだけたくさんの人が居ようとも、幕の隙間から見つけた君の姿で
胸の高鳴りは最高潮。
そして、開始のベルが鳴り響き、会場は真っ暗に。

派手な衣装に身を包み、白い手をピンと伸ばし、ステージへ。
君たちを楽しませるショーのはじまり。
はじまりだ
331 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 00:57

 *

久しぶりだもんねと、照れる君を見るのは
去年の夏以来。
連休に帰るから、会おう? と誘ってくれたのが
1ヶ月前。
今日をどれほど待ち望んでいたか
浮かれていると言われても、気にすることなくむしろ
笑顔で返すことが出来るほどだった。

住んでいたのだから、なんら不思議はない見慣れているはずの駅に降り立った君は
すっかり様変わりしていた。
行きかう人の目を引く装い。
決して派手になったわけじゃない。最後に会った日と髪の色は同じで
長いストレートが、さらりと流れてる。
服だって、以前に比べ、洗練されてるとは言え
学生時代の友人たちもコレくらい。
君は気づいてないだろうけど
行きかう人は、嬉しそうに手を振って駆けてきてくれたその姿を
目で追っていたもの。
話しかけてくれる終着地点である僕のことは
ただの街路樹くらいにしか見えてないんだろう。

「ごめんね、早く来たつもりだったんだけど」

はにかむ口元の上がり方、キレのある顎のライン
声のトーンや、瞬きの間隔だって変わりない。
けれど、何かが違ってる。
 
332 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 00:57
 * *

僕は足を滑らせ、一面氷のプールに落ちた。
ステージ脇では、眉間に皺を寄せ怒りを露にした、鞭打つ団長
ずぶぬれの姿を見て、観客は手を叩いて大笑い。
君はつられて笑ってくれるから、それでよしとしよう
たとえ隣に座る誰かの腕に、寄り添いながら見ていたとしても。
さぁさ、次はこの踊りを見ておくれと
大きな玉に乗って、クラブの本数を増やし、高く投げ、回したり
いくつもカードを、ポケットから必死に探し投げかける。
最後、高く放り投げたボールが、見事頭にこつりと命中。
観客には大うけだ。
 
333 :The :2013/05/12(日) 00:58
*

再開発が進むこの町は、君にとって懐かしいところになっているようで
通っていたコーヒーショップじゃなく
ここでいいよと、適当に選んで入ったこの店の席に着くまで
細い首を振って、ずっと見渡していたね。

煙に巻きつかれることも平気になって、気に留めることもない。
穏やかに、柔らかく笑って
濁った甘めのコーヒーが入った、君の顔を隠す大きな白いカップを持つ手。
大切な指に引っかり、僕から守るように睨み続ける、ナイト気取りのリング。
ソイツを傷つけないよう指先だけで持ったカップを、そっと置く君は
他愛ない会話で、ごく自然に、穏やかな時間を生み出す。

 どうしてた? 代わらないよね
 うれしいよ。相変わらずだね

くるくる回るような笑顔を見せる君の顔を、まっすぐ見られずに
理由をつけて、まぶたを伏せる瞬間、ちらりこの目に映しだす。
何度も繰り返せば、今日と言う君を大きく出来るから。

どの言葉も、視線だって、僕に向けられている。
この時間だけは、独占できている。
アレを渡した顔も知らないヤツを、お返しとばかり見下しながら
口に合わない飲み物が揺れるグラスを持つ手で、したり顔を隠す。
334 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 00:59
 なかなか会えなくてね
 忙しいから仕方ないんだけど、つまんないよね

その言葉で体を震わせ、気づかれないよう俯き大きく目を見開いた。
君にばれぬように。
恐る恐る顔を上げると、窓の外を見つめ話を続けてるけれど
コーヒーから漂っていた湯気みたいに揺れる視線が
君には似合わないウソだったんだと気づき
唇をかみ締めて、溶けかけの氷を乱暴にストローでかき混ぜる。
そんなこと、みじんにも思っていないんだろう?
ヤツを思い、馳せめぐらせてるように見えるから。
いや、そうに決まってる。
こちらを気にせず、頬杖をついた横顔の君は、曖昧な返事をするだけ。

互いが抱く気持ちは、まったく正反対だけれど
この大切な時間に、僕たちは同じ人を思っているだなんて。
なにをすれば、君は僕を見てくれる?
僕ならば、僕なら君を……
「ねぇ」と呼びかけるために、息を吸い込めば
僕を動けなくするあの指輪に、また強く睨まれた。
335 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 00:59
 * *

失敗続きの僕に業を煮やした団長は
客を呼び込めと、外に放り出した。
風船を配る温度のないクマから目をそらせば
天幕からの、空中ブランコを成功させたマドンナへの歓声が聞こえ
僕をさらに卑屈にさせる。
近づくクマは、そんな日もあるさと、肩に置こうとするけれど
お前なんかの慰めなど必要ない。僕はお前たち端役とは違うんだ。
全て思い通り。それが僕の役目と、分厚い茶色の手を払いのけ
きつくこぶしを作り、またテントの中に戻る。
今日は。今日こそは
336 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:00
 *

「ほら見て、これ可愛くない?」

ガラスに張り付くようにして、見つめる君の目が
無邪気にまばゆく光る。
見れば、君の趣味とは真反対なはずのものたち。
中でもハートのバルーンにぶら下がる、クマのぬいぐるみを指差し、そう言った。
あんなにも、"そういう事はウソっぽい"と嫌がっていたのに
君は窮屈すぎるこの町から出て、いつのまにか器用になってしまったんだね。

横に立つ君の足元から、じっと見上げる。
そんなヒール持ってたっけ。
その服は、大きな街へと移り住んでから買ったもの?
“いつ”の君が本当か分からない。
もしかして、僕が嘘をついているの? と勘違いしてしまいそうなほど
君にお似合いの漆黒が美しい、真っ白な嘘。
337 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:00
「どうしたの? 行こうよ」

姿を表し始めた、君の変化に似合いの言葉をかき消していると
遠くで呼ぶ声に顔を上げ、駆け寄る。
今また、きちんと僕は君の中にいるんだ。だから、大丈夫と
胸のざわめきを隠すフリして、襟を正す。

「気に入ったの?」

首を横に振れば「やっぱりおそろいだね」と言って、君は笑う。
ね? ほら、この通り。
338 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:01
なのに、気づけば3歩、4歩と、遅れを取ってしまう。
少し先を行く君は、隣に居ない僕にようやく気づき立ち止まり
ごめんと謝ることが、すっかり暗くなるまで、何度あっただろうか。

あの日、町を出る君と別れを告げ、居なくなっても
こうして時折舞い戻り、幸せそうに笑んでくれれば
いつまでも居られると、信じていたけれど
それはただの独りよがり。
君は、僕のような端役じゃないし
この夜は、僕に用意されたものではないんだ。
339 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:02
 *

「ねぇ、どうしたの?」
「……え?」
「今日、もしかして都合悪かった?」

人もまばらな駅構内。
終電間際まで付き合ってもらって、と君は僕を気遣う。
うつむいた顔に長い髪がかかり、言葉がどれほどの温度か伺えない。
こんな間近で見たのは、久しぶりな気がした。

あの頃はこうじゃなかった
ただ僕の空回り、一人遊びだと。
ソレでよかった。構わなかった。
五感、六感全てを君だけに集中させていた。
君の視線を集めるためなら、どんなコトだってしたし
煩わせないように、胸の底が外れて落ちてもなお
ずっと奥に押し込んで。
それでも良かったんだ
340 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:02
いつからだろう
タバコと甘いコーヒー、歩幅、憂う横顔と、磨かれたリング
細い肩に顎を乗せて、今の君全部を作り出したヤツが
笑顔の君を、後ろから抱きしめ捕らえて、ようやく姿を現し
鼻で笑いながら、僕に向かってこう言った。
――お前じゃ、役不足だろう?
僕がこの町から送り出した時の君は、もういない
君は、いないんだ

引きとめたくて、その名前を呼ぼうと、うっすら唇を開いても
木々の葉がしていたコソコソ話を、ざっと強い風が抜け大きくしていくから
僕がいつづけるこの町では、きつくかみ締め血を滲ませながらも
黙って笑んでいるしかない。
ましてや手に触れたり、抱きしめたりなんて出来やしない。
これはただ、別れを惜しむお見送り。
僕にとっては、永遠のお見送り。
341 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:02
「また、遊んでね」
「うん……」

何本目かの電車が連れてきた風が、さっさと帰れと、僕の背を押すから
遠慮がちに言った君に背を向け、もつれる足で歩き出す。

共に過ごした時が染み付いてはなれない。
何年、何十年経ったところで
君に合わせることを、決してやめようとしないのだから
だって僕は君を、君の事を
342 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:03
「……す……」

一生、僕の口からは音に出来ない
君のためだけにある言葉を飲み込んで
明るいエレベーターに逃げ込んだ。
震える僕は、こんな醜い姿は見たくないと壁にもたれ
はっきりと映し出す鏡から姿を消すけれど
視線を落とした冷たく白い手が、細かに震えはじめる。
必死に握り締め、止めようとしても、大きくなるばかり
それどころか、カラカラに干からびていく。
怖くなって返し、手のかたち全てを、この目で捉えるよりも早く
管や筋が張り出し、朽ち果て、砂の城のように、グズグズと崩れ落ちた。
粉々になった僕だったものを乗せたこの箱は、どこに連れて行くんだろう

素敵な笑顔と、向けられた優しい気持ち
朗らかに笑い、頼りないこの肩に触れ、言葉を時間を共有しようとしてくれる
そんな君を思い出し、汚し何度も犯してしまうから
僕は、決して天には行けない
だから、目を開けているのか、閉じているのか
前か後ろか、立っているのかどうかさえも分からない、誰の目にも触れないよう
忘れられるほどの、ずっと深い場所へ、この際落としてほしい。
343 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:03
僕の両親や、君たちのように認められたカンケイで
多くの人から祝福されることが、完成された姿だったとしたら僕は
ガラクタの、ごみクズだ。
普通が幸せなら、僕は幸せじゃない
なれもしないだろう?

おかしいかい、さあ笑え。
哀れんで、見下して、拒んで
自分たちは普通で良かったねと、手を叩いて笑えばいい。
こんな僕は君と、同じ天秤に乗ることさえも許されない
だから、嘘と言う鋲だらけの言葉を、何度も吐き出し、笑うんだ。
その度走る痛みが強く、流す血が濃いほど
君への罪滅ぼしになると思うから……
344 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:04
 *

君を乗せただろう鉄の塊は、アイツの元へ返すために
高笑いしながら頭上を通り過ぎた。
ぬるいアスファルトを行く、歩みを止めれば
震える唇、まぶたから溢れ出ようとする存在の名前を知る。
だって、分かってしまったんだ。

許しがほしいわけじゃない
笑顔も、言葉も、伝える術も、要らない
気遣いも、時間も、受け入れられる環境も
そんなもの、何一つ、意味がない。
ほしいものは、たった一つなんだと

「うぅっ……っくぅっ……」

しずくが伝う唇では、上手く君の名前を刻めない。
背後に立つ、白塗りの僕に冷たく見下ろされても
堪えられないと、さっき名を知ったものが一つ二つ
次第に列になり、零れ落ち始める。
泣き崩れた僕に、誰も居ない交差点の、点滅信号が降り注ぐ。
345 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:05
君を悩ませたりしない
僕だったら、君を幸せに出来る
君をいつだって笑顔に出来る
"僕"ならば、君を抱きしめられ、る?

「だい……き……よ……」

分かってた
自分で選んだ道だからと、居直ることも、誇ることも
僕には到底出来そうも無い
伝えたい言葉を乗せたこの涙を川にして、一緒に排水溝へ流し込めば
いずれ海に行き、君の体に取り込まれる。
だから僕は幸せなのだと思うほど、せこくて惨めったらしいんだから。
今だってそうだ。
何処かにいるアイツを、本当は羨んでる。
その横で楽しそうに笑う君さえも、憎んでる
憎んでるよ……
346 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:06
それでも、この気持ちを、消したり出来ない
僕は
僕で居る事を選び、君と居る事を求めてしまって……


どうぞ皆さん、大いに笑ってください。
これが僕の役目です
この小さなテントの中で、いつまでも舞い続ける。
頬にある水色の涙はただのメイク。
どれほどこぼしたところで、この化粧を取るわけにはいかない。
そうだ、僕は天性のうそつきじゃないか
人を笑わせるために、うそをつきつづける
なのに、君を見つけてしまって
いつのまにか抜け殻になり、ぬくもりが消えているだろう席に座っていた
いとしい人の名前を叫んでしまいそうで
このままじゃ笑われることが生業の僕は、お払い箱だと、降ろされてしまう。
347 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:06
ならば最後に取っておきを披露します。
これにて舞台は幕引き。
今まで一度も成功したことはありません。
いつも失敗ばかりのおどけ役が、命綱無しの空中ショーをご覧にいれてみせましょう。
高みから下に見える、大きな輪のなかへ飛び込んだ後
僕はどこにも居ない、消えてなくなる大技です。

晴れの舞台で、初めてのスポットライト。
高みへと連れて行く大きなはしごは、僕と君の色をした横断歩道
確かな足取りで、一歩ずつ上がる笑われ者だった僕を
観客は、固唾を呑んで見守る。
348 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:08
ありがとう、ありがとう。
超満員の観客席に笑顔で手を振り続ける。
さようなら、さようなら。
最後くらいは盛大に、ドラムロールを鳴らしてください

大きなクラクションがそれに答え
滲む視界の遠くで見えていた2つのLEDライトが、猛スピードでやってくる。
見上げる空に、大きな街では見えないだろう、たくさんの星が煌く。
こんなことなら
声にして君を呼べばよかったかな

ちらり見た44列目。
ぽかんと一つだけ空席になった、君がいたはずのところをじっと見つめ
最後の段に足をかけ、その時を待つ。
目を閉じていれば怖くない。
僕は消えてなくなるだけ。
薄汚れたフロア近くにある、大きな輪に向かって
笑みながら、高みから身を投げようと
震える手をそっと離し、足を踏み出した。

さよなら
ありがとう
……よ……す……

全ての音が、止まった




「梨華ちゃん!」
349 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:09
がくんと体が崩れ、景色が歪む。
通り過ぎた白い車は、怒りに任せるよう
静かな町をホーンで切り裂き、さらに加速して過ぎ去っていく。
間違いなく僕の背を押してくれようとしていたけれど
振り返り見れば、あの席から立ち上がったはずの
高いところが苦手だと言っていた君の、大き手がこの腕を力強く引いた。
華々しいさいごを飾るつもりだったのに……。

「よっすぃ〜……」
「なにやってんだよ!」

一歩違えば、君もおちてしまうかもしれないというのに
こんな僕を、いつまでも離そうとしない。
枝のように白く細い指が、腕に跡をつける。
350 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:09
「なん、で……」
「なんか、様子、変だと、思ったから、追っかけて、きたんだよ」
「どうし……」
「危ないだろ!?」

肩で息をしているのは、走ってきたから?
それとも振り下ろされそうになった、僕を連れ去る恐怖から救ってくれたから……?
腕を掴む大きな手にこめられた力と
心配と、怒りと、不安を抱き合わせた、まっすぐ向けられた大きな目に
諦めた顔の"あたし"と、"僕"でいなくてもいい理由が
ほんの一瞬だけで、見えて
通り過ぎていった車のクラクションにも負けないくらい
驚くほど大きな声で泣いたんだ。
351 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:10
「梨華ちゃん!?」

分かってる
分かってた
あたしはあなたの名前を呼ぶこと、隣にいることもできない
芽生えた気持ちは、打ち明けることも、消すことも出来ない
ねぇお願いだから、あたしの傍に居てと、言うことも

「梨華ちゃんって、何があったの?」
「っすぃ、よっすぃー!!」
「ねぇ、ちょっと、マジどうしたの?」

僕ならば、出来る?
アイツみたいに、"僕"だったら、出来た?
頭に乗った三日月形の帽子を、諦めたように脱いで
半分メイクがはがれた冷めた目の僕が、こんなあたしを見て
蔑みながら鼻で笑い、姿を消した。

意気地なし――

 
352 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:10
暗くなったテント小屋は
街灯揺れる君のいない小さな町の、見慣れた交差点。
赤と黄色を繰り返す信号機の真下で、抱きしめられても
僅かに空いたあなたとの隙間が
明日になればまた、厚塗りの化粧をし、道化た僕に戻るしかない
明らかな証拠

しにぞこないのあたしは、あなたからの僅かなもので毎日を繋いでる。
熱を持つアイツからのリングに引導を渡され、いい加減切り離そうと思い
笑顔で見送って、飛び出しても、それを許さない
それどころか、背中を撫でる大きな手は、あいつが教えたんだろう慣れた優しさで
あたしをさらに惨めにする。
止めを刺さない純粋なあなたの胸を、拳で何度も叩きつけた。
353 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:11
「ねぇ、梨華ちゃん……ねぇってば」
「よっすぃー、よっすぃー!」

檻の中で出番を待つ、恐ろしい動物のように
心の口では、大声上げて、ずっと叫んでいる
出会ってから、もうずっと。
こんな苦しいのなら、生まれなきゃ、生み出さなきゃよかった。
気づかなければ、幸せだった。

あなたの前で初めて泣きじゃくるあたしの腕を
涙が滝になって流れていく。
あなたの名を叫びながら、切れ切れの言葉がめぐる。

 あなたのことを、いつまでも
 これからもずっと、大好きなんだ――
 
354 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:11
 
そんなこと、当然だけど、言えるはずがなかった。
 
355 :The Monster Under the Eaves :2013/05/12(日) 01:12
『軒下のモンスター』 END
356 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:06
事務所から徒歩ですぐそばの場所に位置するレストラン。
完全予約制なので、お客はまばらだ。

そこで私はじっと待ち続けていた。
孤独に耐えながら。
ただ一人、あの子の事を。
357 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:08

チリン。

「っ!?」

ドアベルが鳴り響く涼やかな音が届く度、入り口に目を向けてしまう。
まるで条件反射みたいに。
あの子が来てくれたんじゃないかって、今でも微かな期待を抱いてしまう。

いつも、みーよは息を急き切ってこの店の中に駆け込んで来た。
約束の時間まで余裕はたっぷりあるのに。
そう。
みーよは一度たりともデートに遅刻した事なんてなかった。
358 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:09

携帯を取り出し、時刻を確認する。

約束の時間を一時間過ぎていた。

……もう、みーよは来ない。

当たり前だ。
私とみーよの関係はもう終わったんだから。
でも……一縷の望みにさえすがりたくなってしまう。

「約束……したじゃない……二人の記念日は、大切にしようって」

思えば……
お互いの誕生日や大切な記念日は、必ず決まった時間に待ち合わせして、
この場所でお祝いしたんだよね……。
359 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:10
...

一年前……。

「「カンパーイ」」

薄いグラスの縁を重ね合わせてから、シャンパンを口に含む。
私達が付き合って一年の記念日……
みーよは一つの区切りとして、お祝いしたいと言ってくれた。
こんな催しは初めてだったから、否が応にも心が弾む。
360 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:11
「それにしても……カップルって、こういうお祝い事もするんだね」
「え? 普通じゃないですか?」
みーよは心底驚いたように目を見開いた。

「普通なの?」
「……保田さんってこれまで、恋人同士の楽しいイベントごと、
ほとんどスルーしちゃってたんですね」
「わ、悪かったわね。今までそういう段階までいかなかったの!」
「ふふっ……ごめんなさい、冗談ですよ。
これからいっぱい、いっぱい、私と素敵な思い出作りましょうね」
「うん。楽しみ! みーよとならたくさん楽しい思い出作れそう」
361 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:11
...

ねえ。みーよ。
あの言葉は嘘だったの?

「みーよ……覚えてる? あの日から、ちょうど一年だよ。
今日で……二年だったんだよ……」

みーよはもうここには姿を現さない。
頭では理解していても、私の足は縫い止められたように動かない。
362 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:12
大きく変わってしまった未来。
一年前の今日。
一年後も、みーよといられたらいいと強く願ったのに。

どうしてこうなってしまったんだろう。
みーよが私から離れていく事なんて考えられなかったはずなのに。

……ううん、予兆はあった。
私と同じ時間を過ごすにつれて、みーよが時折
苦しそうな表情をするようになった。
みーよが一体何を抱えているのか、何に怯えているのか……
私はあえて訊ねる事をしなかった。

怖かった。
それに触れたら、今までみーよと築いてきたものが
崩れ去ってしまいそうで。
363 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:13
...

「……保田さん、私の事、好きですか?」

いつしか、みーよは体だけじゃなくて、
何度も言葉で愛情を確かめるようになった。
それが少しでも私と繋がれる手段なんだとでも言うように。

「当たり前じゃん。みーよったら、どうしてそんな事聞くの?」

何気ない風を装って笑顔を返した直後、視界が覆われた。

「……」
「っみー……よ?」

「……すみません。私、ちょっと過敏になってるかもしれない」
「みーよ、一体どうし……」
「もう……何も言わないで。
お願い……しばらく、こうさせていて下さい」
364 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:14
...

痣が残るほどに強く抱きしめられたあの時。
自分の心臓が止まっていたら……
今、こんなやるせない気持ちを抱えなくて済んだの?

「……無理だよ」

一瞬だけ脳裏に浮かんだ可能性を、頭を振って打ち消す。
365 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:16
私は弱い。
結局は自分の身が一番かわいい。
他人の目に自分がどう映っているか気になってしょうがない。
みーよの為に全てを捨てる覚悟なんてない。
自分をおとしめる事だってできない。
誰かに支えてもらわないと生きていけないちっぽけな人間。
一人にはなりたくないの。

お互いに別々の道を歩まなくちゃいけなくなっても……
どんなに無様でも、私はみーよとの思い出を抱いて生きていく事を選ぶ。

だから、今日で終わらせるの。
みーよと過ごしたかけがえのない日々を、思い出に変える為に。
大切な場所で、この恋に終止符を打つんだ。
366 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:17
...

みーよが私から離れていったあの日。
あの時も……小さなベッドの中で、私達は
身を寄せ合ってひとつになった。
柔らかいみーよの肌を感じ、私は確かに幸せを噛み締めていた。
彼女の温もりを絶対に手放したくないと切望しながら。

「ねえ、保田さん」
「なに? みーよ」
「私は保田さんの特別に……唯一の存在になりたかった。
保田さんが、私じゃなきゃダメだって思えるくらい。
私さえいれば、他に何も必要ないって言えるくらい」
「みー……よ……?」
367 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:17
「……そんな事、保田さんはとてもじゃないけど思えないでしょう?」
「……っ……」

みーよの瞳に射抜かれて気付いたんだ。
自分がどれほど中途半端な気持ちでみーよと向き合っていたか。
368 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:18
みーよが愛しい。
みーよが可愛い。
全部私の偽りのない気持ち。

なのに、それを言葉にする事ができない。

早く何か言わなきゃ。
ちゃんと答えなきゃ。

言いようのない焦燥感に駆られる。
焦れば焦るほど、唇がわななき、弱々しい吐息が漏れ出る。
言葉を継ごうとしても、声にならない。
いや、もしも何か口にできたとしても、
今はそれさえ嘘になりそうな気がした。
369 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:18
「……ふ……」

一言も発する事ができない私の代わりに、みーよの唇から
諦めたような小さなため息が漏れた。

「……無理、しなくていいですよ保田さん。
分かってます。私は全部分かってますから」
370 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:19
ベッドのスプリングが軽く軋んだ音がした。

視線を移すと、みーよがベッドから立ち上がり、
床に散らばった自分の服を拾っている。

「みー……」
「……それじゃあ」

いや……待って!
371 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:20
「みー、よ……っ」

動け……動いて!!

追いかけなきゃ……
今呼び止めなきゃ、きっともう二度とみーよは私の手に届かない。
なのに……頭がいくら「動け」と指令を下しても、
金縛りに遭ったかのように、指先一本動かせなかった。
372 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:20
みーよはもう服を整え、扉に手をかけていた。

みーよが行ってしまう。
私をたった一人残して。

みーよ……
みーよ!
愛してるのに!
こんなに愛してるのに!!
373 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:21
見開いた瞳からはとめどなく涙が溢れ出る。
だけどもう、みーよはこの涙を優しく拭ってはくれない。

「ーーっ!」

声にならない悲痛な叫びは、みーよにはもう届かなかった。
374 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:22
...

あの時、みーよに愛してると言えていたら……
私は一人でここにはいなかったのだろうか。

今だってこんなにも辛くて、胸は張り裂けそうなのに……
涙すら出ないのは何故?
私にとって、この世の全てだったあの子を失ったのに。

……幸せは長くは続かないって……
一番大好きな人とは結ばれないって、最初から分かってたから?
375 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:22
「……所詮、こんなものなのかな」

不思議。
あんなにも大切で、これ以上ないと思った恋だったのに。
所詮という一言を使うだけで、
一気にそのものの価値が下がる気がする。
376 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:23
どんなにどんなに 想っても
私達は背中合わせの恋
誰にも知られずひっそりとはじまって
終わる運命

祈りのようにあなたを呼ぶ声も
もう届かない
あぁ、確かな事は すべては過去の出来事

目隠しをはずすように光る 夜の街並み
ホントはずっと 一緒にいたかった
377 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:24
...

グラスの氷は完全に溶けていた。
きっともうかなりの時間が経過しているんだろう。
けれども私は未だ動く気にもなれずに、ただそれをじっと見つめている。

その時。突然、テーブルにふっと影が差した。

「……圭ちゃん、大丈夫?」
「ようちゃん……」

緩慢な動きで顔を上げると、この店のオーナーが
心配そうに私を覗き込んでいる。

もう……潮時かな。
378 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:25
「……。ごめんね、付き合わせちゃって。
もう、いいよ。お店閉めても大丈夫だから」
「……いいんだね。本当に」
「うん……私はもう、待つ事はやめたの」

口ではそう言っても、私の心はまだみーよを求めてる。
この恋を忘れる為には、きっと私は果てしない時間を
費やさないといけないのだろう。
どれほどの痛みが胸を突き刺そうとも……そ
れでも、前に進むしかない。
私にはもう、他に残された道はないから。
379 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:25
だけど、本当は……どうしても最後に伝えたい事があった。
この言葉は、きっと二度と彼女には届かないと分かっていても。

みーよ……。
“こんな不器用な生き方しかできない私を愛してくれて……ありがとう”
380 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:26
あなたが好きだと言っていた
よわい私 私はきらい やだ
ふたりでいるのにさみしいなんて
バカな恋 やっと終われる
そして私はただの女になる
いつかのように
「あぁ、これでよかった」
夢をみてしまう前に
381 :ラストオーダー :2013/06/10(月) 23:27
「ラストオーダー」
おわり

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