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The second love 〜桃子 & I 〜

1 :セル :2017/03/13(月) 23:52
出演:
桃子



気が向いたら読んでやってください
今週末から順次アップ予定です

※この作品はフィクションです
2 :名無し飼育さん :2017/03/17(金) 01:31
楽しみにしてます
3 :名無し飼育さん :2017/03/17(金) 08:56
週末ってことは明日からだよね
よろしく!
4 :セル :2017/03/18(土) 22:31
とある神社の拝殿。
厳かに奏でられる雅楽に合わせて、2人の巫女が神楽を奉じている。
神妙な表情で、それを見つめる俺の隣に座った3人の子供たちは、
嬉しそうに「面白いね」と、俺と妻に語りかけた。
その姿は、あまりに無邪気だった。
5 :セル :2017/03/18(土) 22:32
===

都内にある、とある大学。
俺はここに20年近く勤務する、しがない一職員だ。
普段は、忙しくも暇でもないが、
今日は多くの人たちが出入りし、慌ただしくなっている。
2017年10月2日、秋入学した学生たちが、
さまざまな手続きをしに、窓口を訪ねてきていた。
大学院新入生の担当となった俺も、
窓口で学生たちの対応に追われていた。
6 :セル :2017/03/18(土) 22:33
とにかく、数をこなさなければならない。
そのため、新入生の顔などほとんど見ないし、仮に見たとしても、すぐに忘れてしまう。
そんな中、履修登録について問い合わせに来た、
小柄な女性の聞き覚えのある声に、俺は気づいた。
落ち着いた感じの、真面目そうな学生。
早速、ゼミがあるのか、ピシッとした黒いスーツに身を包んでいる。
視線を合わせると、見覚えのある顔。そう、桃子だった。

わずか3か月前に芸能界を引退したばかりだというのに、
既に雰囲気は一変していた。
たとえファンであっても、すれ違っても気づかないだろう。
かくいう俺は、ももち結びと言われる、
独特な髪型でバラエティ番組に出ているところしか見たことはなかったのだが。
なにが変わったか説明しろと言われると、非常に困るのだが、
とにかく、いっぱしの研究者のようなたたずまいだった。
7 :セル :2017/03/18(土) 22:34
===

時は過ぎ、早くもイチョウの木々が黄色い葉をいっぱいにし、
日に日に増す寒さが、冬の訪れを告げていた。
そんなある日、ブラウンの落ち着いたコートをまとった桃子が窓口にやってきた。
俺が彼女に会ったのは、履修登録の質問を受けて以来だ。
わずか2か月のうちに、一段と美しさと気品が増していて、俺は思わず見とれてしまった。
8 :セル :2017/03/18(土) 22:35
「・・・けれど、どうしたらいいですか?」
「・・・」
「あの、聞いてます?」
「あ、あぁっ、はい。そうですね。」俺は慌てて返事をした。
簡潔に書類の説明をした上で、
「わざわざ書かなくても、学生証をお持ちだったら、発行機を使えばすぐですよ。」
そう桃子に教えてあげると、
「え、あ、そうなんですか?!」と、桃子は眼をパチクリさせながら俺を見た。

「お使いになられたこと、ないですか?」
「はい。」
「じゃ、こちらへどうぞ。」
仕事も落ち着いていたので、俺は事務室を出て、窓口のはずれにある機械へ案内し、
詳しく操作の説明をしてあげた。
「あと、こういうこともできますからね。」他の機能についても説明してあげると、
「えぇ〜、そんなことまで出来ちゃうんですか?今までいちいち書類書いてました。
へぇ〜、便利。本当にありがとうございます。」
そう言ってにっこりとほほ笑んだ桃子の、自然なかわいらしい顔に、
俺は思わず息をのんだ。
9 :セル :2017/03/18(土) 22:36
不思議なもので、それからは、頻繁に窓口で桃子の対応をするようになり、
言葉を交わした。
もちろん、職員と学生との会話だ。
その様子を見ていた俺の上司が、ある日、俺に言った。
「あの子、君に気があるんじゃないの?」
「は?なにをおっしゃいますやら。」
「だって、他にも人がいるのに、君しかいないときに限って、いつも来るよ。」
「たまたまでしょう。」
そんな会話をしていると、俺の部下の1人が戻ってきた。
10 :セル :2017/03/18(土) 22:37
「いやぁ、私もそう思うなぁ。」
「え?なに言ってるんだよ。」
「あの人、ももちさんですよね。
私も昔はアイドル目指してたんで、お話したいな〜って思っているのに、
いっつも係長が相手してるんですもん。ずるいですよ。」
「え?君、アイドルになろうとしてたの。そっちの話のほうがびっくりだよ。」
「ちょっと。それ、どういうことですかぁ?私の顔じゃなれないって?!」
「いやいや、そうじゃなくて。人前に出るの、あまり得意じゃなさそうだし。」
「普段は、猫かぶってるんです。」
「あぁ、そうなんだ。じゃ、今度会議の進行、お願いしちゃおうかな。」
「ちょっと、話そらさないでください。」
「なんの話し、してたっけ?」
「係長ばっかり、ももちさんと話してずるいって話です。」
「あぁ、だから気のせいだよ。」
「おかしいよなぁ。」
その様子を見ながら、上司はヤレヤレといったふうに笑っていた。

<つづく>
11 :名無し飼育さん :2017/03/19(日) 22:26
きてた!!!!卒業後の話なんだ
いつもと雰囲気違って楽しみ
12 :セル :2017/03/19(日) 22:42
>>11
読んでいいただいてありがとうございます
自分がもしこういう立場だったらと仮定しながら
ももちのそのときどきの状況を踏まえて想像しながら書いています
ももちは同じで 「俺」の環境が違うパラレルワールドのようなイメージです
最後までおつきあいいただけるとうれしいです
13 :セル :2017/03/19(日) 22:43
<つづき>

===

春の気配がただよいはじめ、梅の花が香る頃、
ピンクのスプリングコートに身を包んだ桃子が、今日もやってきた。
「はい、こんにちは。今日も懲りもせず、なんのご相談ですか!」
窓口を挟んですっかり顔見知りとなった俺たちは、
軽い冗談を言い合うくらいの関係になっていた。
案の定、俺の部下は今日も席を外していた。

頼まれた資料を桃子に渡し、
「はい、じゃあまた明日も、こちらでお待ちしております。」
と俺が軽口をたたくと、
「それじゃあ、明日の6時は空いてる?」と、桃子もお返しをしてきた。
「朝か夜かはわかりませんが、その時間は閉室です。」そっけなく俺がこたえ、
2人で小さく笑って会釈すると、また俺はいつも通りの大学職員に、
桃子は大学院生へと戻った。
14 :セル :2017/03/19(日) 22:44
そんなやり取りが終わると、ちょうどお昼休みの時間。
俺は昼食をとるため、事務室を出た。
するとそこには、まだ資料をかばんにしまっている桃子の姿があった。
窓口以外では、一職員と一学生。俺はそうメリハリをつけていたので、
彼女に軽く会釈して通り過ぎようとすると、
「あの・・・。」
背後から桃子に声をかけられた。
15 :セル :2017/03/19(日) 22:45
「えっ?あ、はい、どうしました。」
「あの、すみません。この辺でどこか、
おいしくてリーズナブルなお店、ご存じじゃないですか?」
ランチのことかと思った俺は、
「お弁当屋さんもいくつかあるし、
学生向けの、安くておいしいお店もたくさんありますよ。」と説明すると、
「あ、いえ、夜に研究室で行けるところがいいんです。
実は送別会の幹事をやることになって。」と、
桃子はうつむき加減に小さな声で言った。
「あ、そうなんですか。ええ、まあ、けっこうありますけれど。
あ、そうだ。これからお昼ごはんを食べに行くんですけれど、
今日は夜も営業しているお店に食べに行くことにしますよ。
場所、案内するんで、今、時間ありますか?」
「あ、はい。ありがとうございます。」
桃子は嬉しそうに返事をして、俺についてきた。
16 :セル :2017/03/19(日) 22:46
俺は、大学からやや離れたビルの2階にある、飲食店の前に立っていた。
「ここなんかは、和食屋さんなんですけれど、
洋風のメニューもあって、あと、おいしいお酒も置いてありますよ。
種類はそんなに多くないですけれどね。」
「そうなんですか。ここは全然知りませんでした。」
「少し離れていますし、2階ですしね。
でも、個人経営のお店で、大将も女将さんも気さくな方でね、
けっこうおすすめなんですよ。」
「そうなんですね。ありがとうございます。」

職員と学生の関係ということもあり、
俺は店だけ紹介して、1人で食事をするつもりだった。
だが、桃子はお酒を出すお店については、あまり知識がないようで、
「ここで平気かなぁ?」と、少し心配そうな表情を見せていた。
そんな姿を見て、俺は考えを変えた。
17 :セル :2017/03/19(日) 22:48
「百聞一見。食べていきますか?お昼、まだなんでしょう。」
「そうですね。そうしようかな・・・、あ、でも。」
「理由が理由だし、私と一緒に食事したからって、問題にはならないと思いますよ。」
「あ、いや、そうじゃなくて。」
「ん?どうしたんですか。」
「あの、すみません。実はお金、全然持ってなくて。
さっき、Suicaにチャージして使っちゃったんです。
さすがに使えないですよね、Suicaは。」
「あははは。そういうことですか。いいですよ。今日は私がおごりますから。」
「いや、でもそれは悪いですよ、やっぱり。」
だがその時、桃子のおなかが鳴った。
「「あっ」」2人の声が揃い、
「「あはは」」さらに2人の笑い声がハモった。
「おなかは正直ですね。じゃあ、せっかくなんで、お言葉に甘えます。」
「どうぞ、どうぞ。遠慮なさらずに。」
そして、2人で店内に入った。
18 :セル :2017/03/19(日) 22:49
俺は鳥の照り焼き定食を、桃子はカンパチの刺身定食を頼んだ。
「おまちどおさま」そう言って料理を運んできてくれた女将さんが、
「なんだい、こんな若い子連れてきて。いい人なのかい?」と冷やかして戻っていった。
「違うよ。」俺がヤレヤレといった感じで否定するのを見て、
桃子はクスクス笑っていた。

「さ、食べましょう。あの人、いっつもテキトーなこと言うんですよ。
気にしないでください。」
俺が口をとんがらせ、首をかしげながら頭をポリポリかきながらそう言うと、
なにがツボにはまったのかは分からないが、桃子は「ぷっ」とふきだした。
「あ〜、面白い。普段窓口で見る姿と全然違ったんで。すみません、つい。」
「いやいや、いいですよ。気にしてないですから。それより、ささ、食べましょう。」
「「いただきます。」」2人の声がそろった。
19 :セル :2017/03/19(日) 22:50
「あ、おいしぃ〜!」桃子が幸せそうな声を発した。
「ね、おいしいでしょう。穴場なんですよ、ここ。」
桃子が口を大きく開けて、豪快に食べる姿を、俺はついつい愛らしく思ってしまった。
「本当においしい。ここなら、みんなもきっと満足してくれると思います。」
「そう。でも、和食がおいしいと、ついつい日本酒を飲みたくなっちゃうんで、
ここに来るときは勇気がいるんです。」
「あはは。お仕事中はまずいですもんね。」
「でも、一杯くらいなら平気かな。」
「いやいや、やめておいたほうがいいんじゃないですか。」
「う〜ん・・・、みたいな葛藤が生じるんです、いつも。」
「分かります。私もケーキを食べるときは紅茶にしようと思うんですけれど、
ついついジュースを飲みたくなっちゃう。」

「でも、入学して半年経つのに、まだ近くのお店のこと、
あまり知らないんですか?」
「う〜ん、癖というか。
夜はおつきあいしないし、ランチもささっと済ませちゃうことが多くて。」
「そうなんですね。研究一直線的な。」
「いや、そういうわけではないんですけれど。
ちょっと、警戒心が強い上に節約家なもので。」
「若い女性なら、それくらいのほうがいいですよ。」
20 :セル :2017/03/19(日) 22:52
おいしいお店を紹介するだけのはずが、
いつの間にか2人で、和気藹々とした楽しいランチ会になっていた。
以前、上司や部下に冷やかされた話を俺がすると、
「えぇ、そんなこと言われてるんですか。ごめんなさい。
本当にたまたまなんですけれど。
でも、考えてみたら、他の職員さんに相談した記憶がない。これってすごい偶然ですね。」
はにかみながら話す桃子を見て、俺は年甲斐もなく、ときめいていた。

「「御馳走様でした」」
食事はだいぶ前に終えていたのだが、2人で話し込むうちに、
時間が経ちすぎてしまっていた。
「あ、いけない。ゼミに遅刻しちゃう。」
「いいですよ。先に帰ってください。道、分かりますよね。」
「はい。あ、でも。」
「授業は大事ですから。私はお会計をしてから行きますので。」
「すみません。今日、リポートの発表があるんで。お言葉に甘えて、これで失礼します。」
「気を付けて戻ってくださいね。」
「はい、ありがとうございます。御馳走様でした。」
そう言うと、桃子は1人、小走りに大学へと戻っていった。
桃子との最初で最後の短いデートはこれで終わり・・・、のはずだった。


<つづく>
21 :名無し飼育さん :2017/03/20(月) 04:11
お腹ならしちゃうももちかわいい
こんな院生いたモテちゃうよなあ
22 :名無し飼育さん :2017/03/20(月) 12:29
SUICAにチャージしてお金がないって
実話で笑った
あ 実話ではぎりぎり足りたんだっけ
23 :セル :2017/03/20(月) 22:26
>>21
私もこんな院生がいるなら勉強して進学したいです
>>22
ラーメン屋でのできごとでしたっけね?なんかももちっぽくて好きな話です
24 :セル :2017/03/20(月) 22:27
<つづき>

===

ある日、また桃子が窓口を訪ねてきた。だが、その日の用事は事務手続きではなかった。
送別会が盛会のうちに終わり、
幹事を務めた桃子は、指導教員からもとても褒められたとのことで、
そのお礼を言いに来たのだった。
そして、「大したものじゃないんですけれど。」
そう言って俺に、小さな袋を手渡した。
「ん?これはなんですか。」
「ほんの気持ちです。いいお店を教えていただいたお礼の。」
「いや、いいですよ。お気持ちだけで。」
「だから、気持ちです。ね、そんなこと、おっしゃらずに。」

俺は、他の職員に聞かれないよう、小声で話したのだが、
桃子は普通に話していたので、上司にも部下にも丸聞こえになっており、
背後から変な視線を感じた。
その視線に耐えきれなくなり、
「そうですか。じゃ、お言葉に甘えて遠慮なく。」
そう言って袋を受け取ると、桃子はにっこりとほほ笑んで帰って行った。
25 :セル :2017/03/20(月) 22:28
「ちょっと、いいかい。」上司が俺を呼んだ。
俺は会議室に連れて行かれ、
「職員と学生という関係性を、ちゃんと理解して行動してもらわないと困るよ。」
と、小言を言われた。
むろん、やましいことはないので、事情をしっかりと説明し、なんとか納得してもらった。

退社時間になった後、俺はロッカー室で、桃子からもらった袋を開けた。
中には、ギフト缶入りの「チェリーボンボンティー」という紅茶と、
手紙が入っていた。
「先日は、本当にありがとうございました。先生からもすっごくほめてもらいました。
他にも、この辺にはおいしいお店がけっこうあるっておっしゃってましたけれど、
研究室や友達たちと、いろいろ行ってみたいので、また今度、教えてくださいね。」
手紙には、そう書かれていた。
26 :セル :2017/03/20(月) 22:28
それからというもの、月に1〜2度くらいのペースだろうか、
俺が休憩時間に食事に出かけようとすると、事務室前のスペースの端に、
桃子がちょこんと立っているようになった。
なにやら、書類を書いているようなそぶりではあったが、実際には書いていない。
俺の姿を見つけると、「あ、ひょっとしてお昼休みですか?
ご飯に行くんだったら、もしよければ、私も一緒にいいですか?」
そう言って、ついてくるようになった。
俺は、どうしても断ることができなかった。
27 :セル :2017/03/20(月) 22:29
季節は移ろい、蝉が合唱を始めていた。
今日も、俺の対面で、
薄いピンクの半袖ブラウス姿の桃子が、おいしそうにご飯を食べていた。
桃子は、今日が夏休み前、最後のゼミだという。
「あさっての講義が終われば、2か月間の夏休みなんですよ。
でも、キャンパスには来ないんですけれど、
学会に参加したり、フィールドワークに行ったりで、
まとまって取れるお休みは1週間だけなんですけれどね〜。」
桃子はこの暑さの中、ほとんど汗もかかずに言った。
「そうなんだ。いろいろやることが多くて大変だと思うけれど、
夏バテしないように気を付けてね。」
何度も食事をしているうちに、お互いの距離感は縮まっており、
以前のように、お互いに堅苦しく話すことはなくなっていた。
28 :セル :2017/03/20(月) 22:31
他愛もない話をしていたが、突然、桃子が改まって、俺に尋ねた。
「あの、修士号を持ってるんですよね。」
「え?あぁ、まぁ、いちおう。でも、なんで知ってるの。」
「先生に聞いたんです。」
「そうだったんだ。そう、働きながら大学院に通っていたんで、
休んだり早退したりで、先生たちにもけっこう迷惑かけちゃったんだ。」

「で、お願いがあるんです。私も入学してもうすぐ10か月。
論文提出まで、あと1年もなくって。」
「そう。まだまだ時間があると思っていても、すぐに締切が来ちゃうんだよ。」
「テーマは決まっているんだけど、いろいろ難しくて悩んでいるところがあって。」
「うん、分かるわかる。」
「なので、一度ゆっくりと相談に乗ってほしいなって。」
「え?でも、嗣永さんとは研究分野が全然違うけれど。」
29 :セル :2017/03/20(月) 22:32
「具体的な内容というわけじゃなくて、
どういった視点でアプローチするかとか、
どうすれば読み手にうまく伝えることができるかとか。
そういうことを聞きたくて。」
「今の時間じゃだめなの?」
「聞きたいことがたくさんあるので、お昼の時間だけじゃとても。
それに、夏休み明けには本格的に執筆したいので、できれば夏休み前のほうが。
明日かあさっての夜、お時間をとってもらえないですか?」

俺は悩んだ。今の状況だって褒められたものではないのに、
2人で夜に会うのはさらに問題になると思った。
だが、桃子の研究に対する真摯な姿勢がひしひしと伝わってきたので、
「あさってなら平気だよ。」と、ついこたえてしまった。
「ありがとう。じゃあ、あさって。お食事しながらがいいですよね。
初めて連れて行っていただいたお店にしましょうか。」
桃子の勢いに押されて、「うん、そこにしよう。」と、俺は返事をしていた。

<つづく>
30 :名無し飼育さん :2017/03/21(火) 00:18
さくらんぼのお茶ってヒルナンデスでももち買ってたのか
小ネタが利いてる
31 :名無し飼育さん :2017/03/21(火) 08:49
セルさんの小説は純愛ものだし
こそっとネタも入ってるんで読んでて楽しいよ
32 :セル :2017/03/21(火) 22:24
>>30
まさか気づいていただけるとは
ありがとうございます
33 :セル :2017/03/21(火) 22:25
<つづき>
===

2日後の終業後、俺は店で桃子と合流した。
「久しぶりだね。また連れてきちゃって、まったく。隅に置けないね。」
注文を取った女将さんが、また、冷やかして戻っていった。
「またかよ。」俺がヤレヤレといった感じで言うのを見て、
桃子は今回も、クスクス笑っていた。

夏休み明けには本格的に執筆したいと言っていたが、
桃子は既に、草稿をだいぶ書き進めていた。
「もう、こんなに書いてるんだ。」俺は驚いて言った。
「はい。しっかりしたものにしたいんで、少しずつだけれど進めてたんです。」
「なにもアドバイスできることないんじゃないかな、俺。」
「読んでみてください。それで、気が付いたところがあったら、ぜひ指摘してください。」
食事をし、お酒をたしなみながら読み進める。
34 :セル :2017/03/21(火) 22:26
気づいた点を桃子に伝えると、桃子はうんうんとうなずきながら、メモを取っていた。
そして、いろいろと質問してきた。
そんなことをしているうちに、あっという間に時間は過ぎていく。
2人とも、もうおなかはいっぱいだ。それもそのはず、料理はすべてなくなっていた。
暑気払いの団体客がいたこともあり、お店は珍しく、かなり混雑していた。
「待っている人もいるし、そろそろ出ようか。」
俺がそう促して、店を出た。

「最後まで、終わらなかったですね。」桃子が残念そうに言う。
「でも、いろいろ話したし、あとは俺の言ったことを参考にして、
自分なりに進めていけば、きっと平気だよ。」
「でも、最後まで読んでほしいし、それに、口頭試問についても相談したいんです。」
「うぅ〜ん。」俺がどうしたものかと悩み、
「いや、やはりもう帰ろう。」と言いかけたところで、
「お酒をゆっくり飲めるところに行きませんか?」と桃子が誘ってきた。
35 :セル :2017/03/21(火) 22:27
「え?」俺はびっくりした声を出した。
「あ、いや、いろいろお願いしちゃって、ほとんど飲めていなかったでしょ。
おなかはいっぱいになってると思うので、それならそういうお店のほうがいいかなって。」
桃子は、もう次の店に行く気になっていた。
「でも君、お酒はほとんど飲めないでしょ。」
きっぱり断ればいいものを、俺はつい曖昧にに尋ねてしまった。
「これでも、それなりに練習して、ある程度は飲めるようになったんです。」
胸を張ってそういう桃子の姿がなんとも愛らしく、
「じゃあ、バーにでも行くかい。」と、俺は思わず同意してしまった。

やや早い時間ということもあり、バーは貸切状態だった。
最初の10分〜15分は、論文の話をした。
だが、ミモザを飲み進める桃子は、だんだんと顔を紅潮させ、
もう、研究の話をできる状況ではなくなっていた。
マンハッタンを口に含んだ俺も、なにかもう堅苦しい話をするのが嫌になり始めており、
けっきょく、その後は、取り留めのない話を2人でしていた。
36 :セル :2017/03/21(火) 22:28
「さあ、もう帰ろう。」俺がそう促すと、
桃子は「はい。」と素直に返事をした。
路地裏を通って駅へと向かう道すがら、
桃子は、体をふらつかせながら歩いていた。
「大丈夫かい?」俺は心配になって尋ねた。
「はい、平気ですよ〜!」赤い顔をした桃子は、満面の笑みを見せたが、
そのまま俺にしなだれかかってきた。

俺が優しく支える腕の中、ぐるぐるとまわる視界を必死に抑えながら、
桃子は、ふと考えていた。
「私が窓口に行くのは、いつもあの人がいるときばかり。」
俺が、上司や後輩に冷やかされているという話を聞いたとき、
桃子もそれは偶然だと思っていた。
でも、よくよく考えると、姿が見えないときは、
なぜか窓口での用事を後回しにする、
無意識にそんな行動をとる自分の姿に気づき、
桃子は、俺に対して抱いている想いに確信を持った。
37 :セル :2017/03/21(火) 22:30
「大好きです。」桃子は、俺の手をつかみ、不意に告白した。
「そうか。それはどうもありがとう。」
俺は、酔った勢いで、感謝の気持ちでも述べたのだろうと思い、軽く受け流した。
短い沈黙の時間が流れた。
その静寂を、やや甲高い声が打ち破った。
「本気なんです。愛してるんです。」
桃子は真剣なまなざしを俺に向け、抱きついてきた。

やや長い沈黙の時間が流れる。
俺は必死に、この状況を整理しようとした。
そして、桃子の気持ちが本気であることを悟ると、
彼女の両肩をつかみ、そっと引き離した。
「ありがとう。でも、気持ちだけいただいておくよ。」
「どうして?私、本気だよ。」桃子は潤んだ瞳を俺に向けて訴えた。
38 :セル :2017/03/21(火) 22:31
「妻子がいるんだ。」
「え?!」桃子は明らかに動揺した。
「でも、指輪してない。」
そう言う桃子に対して、俺は静かに首を左右に振った。
「ウソなんでしょ。本当はいないんでしょ。」
「アクセサリーは邪魔だから。だから指輪をしていないんだよ。」
俺はゆっくりとした口調で、桃子に説明した。
「私とおんなじだ。」自身もまったくアクセサリーを身に着けていない桃子は、
ハッとそう考え、そして、ショックを受けてうなだれた。
39 :セル :2017/03/21(火) 22:32
涙を流しながら、桃子はしばらく沈黙した。
やっとのことで口を開くと、
「どうしても好きなんです。
プラトニックな関係でいいから、お願いだから私と付き合ってください。」
そう言葉を絞り出した。
「ダメだよ。」
「でも・・・」
桃子がそう言いかけたところで、
「やっぱり、あまり親しくなりすぎるのは間違いだったのかもしれないね。」
俺はそう言って桃子を諭した。

「今までどおり、今までどおりの関係でいいから。だからそんなこと言わないで。」
桃子は声を上ずらせてそう言うと、肩を震わせて泣いた。
その姿を見た俺は、どうしてもそれ以上のことを言えなくなってしまった。
「これまでどおり仲良くしていくという意味なら、かまわないよ。」
よせばいいのに、俺はそう言ってしまった。
40 :セル :2017/03/21(火) 22:33
===

大学は、夏休みに入っていた。
学部生の多くは姿を消していたが、それと入れ違いに、
進学を希望する高校生やら、秋入学を目指す大学院進学希望者たちやらで、
それでもキャンパス内は、多くの人たちが行き交っていた。
桃子は、予告どおりキャンパスに姿を見せることはなかった。
俺の心には、ぽっかりと穴が開いてしまい、
かいた汗がワイシャツを濡らす前に蒸発してしまうほどの猛暑の中で食事に行くのが、
なんともおっくうだった。
そして、それから間もなく、俺を打ちひしぐ事件が起こった。

<つづく>
41 :名無し飼育さん :2017/03/21(火) 22:48
妻子がいんの?wそれはアカン
42 :名無し飼育さん :2017/03/22(水) 08:50
事件がなんなのか気になる
まさかももちになにか起こっちゃうんじゃ
43 :名無し飼育さん :2017/03/22(水) 10:25
妻子は諦めさせるための嘘だろ流石に
44 :セル :2017/03/22(水) 22:36
今後の展開をいろいろ予想していただいてありがとうございます
違った内容に進展してしまったらごめんなさい
45 :セル :2017/03/22(水) 22:37
<つづき>

===

携帯電話の着信音が、激しく鳴り響いた。
表示されている番号に、見覚えはない。
通話ボタンを押すと、「○○警察署です。」という声が聞こえてきた。
俺はすぐに事務室を飛び出し、病院へと向かった。
上司も部下も同僚も、みな心配そうに俺を見送っていた。

病院のベッドに、女性が横たわっていた。
俺は、女性の顔にかけられた打覆いを取ると、一気に涙があふれ出した。
変わり果てた妻の姿だった。そのおなかには、もうひとつの命もあった。
俺は一瞬にして、二つの大切な命を失った。
飲酒運転で暴走した自動車にはねられた、無念の最期だった。
俺は、憔悴した。
だが、残った3人の子供を悲しませまいと、必死に自分を奮い立たせた。
46 :セル :2017/03/22(水) 22:38
1週間ぶりに出社した俺は、
葬儀を手伝ってくれたり、参列したりしてくれた上司や同僚、部下たちに礼を言い、
いつもどおりに仕事をこなした。
何人かの同僚や部下は、
「奥さんとおなかの中のお子さんが亡くなったのに、
なんであんなに普通にしていられるんだ?」と、陰口をたたいていた。
温厚で知られる俺の上司がその場にでくわし、
叱り飛ばしていたという話を、人づてに聞いた。
上司も、奥さんを早くに病気で亡くしていた。
47 :セル :2017/03/22(水) 22:42
===

そうこうしているうちに、夏休みも終わり、学生たちがキャンパスに戻ってきた。
久しぶりに会う、白い半袖ブラウス姿の桃子は、少しだけ日焼けしていたが、
前回会った際に号泣したのがウソのように晴れ晴れとした表情を見せていた。
やや伸びた髪を後ろで結びんだ姿が、とてもかわいらしかった。
再会初日から、俺たちはランチへと出かけた。
悲しみにつぶされないよう、必死に以前と変わらない生活を送ろうとしていた。
俺が「夏休みはどうだった?」と尋ねると、桃子は嬉々として語り始めた。
その内容は、多くが研究に関することで、
やはり桃子も、研究者の卵なのだなと、改めて実感した。
48 :セル :2017/03/22(水) 22:44
もうすぐ大学に着こうかというときに、桃子は「これ、お土産です。」
そう言って、俺に小さな包みを差し出した。
「ありがとう。あ、ごめん。
でも俺はどこにも行っていないので、お土産もなにもないや。」
本当はどこかに行けるような状況ではなかったのだが、
俺は努めて普通にふるまって言った。
「大丈夫ですよ。また一緒に、ランチしてくださいね。」
ちょうど門を入った桃子がそう言うと、
小走りに研究室のある建物のほうへと駆けていった。
そして、建物に入る間際、俺のほうを振り返って笑顔で手を振り、中に入っていった。

ロッカー室で、俺は包みを開けた。
中にはお菓子と、愛嬌のある表情をした小さな木製の人形が入っていた。
その人形の顔を見て「ふっ」と笑った俺は、
うっかりその人形を落としてしまった。
その拍子に、お菓子の箱に張りついていた手紙が、ひらりと床に落ちた。
「登校した時に窓口にいるのを見かけたけれど なにか元気がないみたい
私が元気を上げるから これからも一緒にご飯に行こうね 桃子より」
そう書いてある手紙を読み、俺は涙をこらえるのに必死だった。
49 :セル :2017/03/22(水) 22:46
===

大学で仕事、家で家事と育児に追われる日々が続いた。
俺は心身ともに疲弊していたが、決して表情には出さないようにしていた。
だが、生身の人間である以上、限界はあった。
記録的な早さの初雪を観測したある日、俺は無意識にふらりと事務室を出た。
そして、既に日が暮れて暗くなった、
ふだんあまり人が通らない、集積場へと通じる裏道で、
1人なにもせずに、木にもたれかかっていた。
頭や肩に、うっすらと雪が積もり始めた時、
「こんなところで、どうしたんですか?」
ゴミ袋を抱えた桃子が、びっくりした声で、俺に話しかけた。

「いや、なんでもないんだ。ちょっと気分転換にね。」俺は平静を装った。
「雪、積もってる。」そう言うと桃子は、
俺の頭や服に積もり始めた雪を、やさしく払い落とした。
「気分転換もいいですけれど、そんなかっこうで雪が積もるまで外にいたら、
風邪ひいちゃいますよ。」
桃子は心配そうにそう言うと、優しい眼差しを俺に向けた。
50 :セル :2017/03/22(水) 22:47
“ガバッ”
俺は不意に、桃子をきつく抱きしめた。
桃子は、突然のことに驚き、持っていた袋を落としたが、
雪が優しく静かにそれを受け止めた。
「どうしたの?」桃子は嗚咽する俺の背中をポンポンとたたきながら、
優しくそう問いかけた。
「なんでもない。なんでもないんだ。
でも、お願いだから、しばらくこうさせておいてくれないかな。」
「はい。」桃子は小さくうなずいた。
51 :セル :2017/03/22(水) 22:48
“ブルッ”
なにも言わずに俺に抱きしめられていた桃子の体が大きく震え、
体に積もり始めた雪が落ちた。
雪が降っていることすら忘れていた俺は、ふと我に返り、
「ごめん。こんな寒い中、引きとめてた。」そう言って桃子に詫びた。
「大丈夫。でも、ちょっと寒いね。」桃子は明るく答えた。
「ゴミを捨てに行くところだったんだよね。俺が捨ててくるから、早く戻って。」
「ありがとうございます。でも、すぐそこだし、自分で行ってきます。」
「じゃあ、おれも一緒に。」
わずかな距離だったが、肩を寄せ合って歩いた。
「どうしたんですか。本当に心配です。」俺の手を握り、桃子がまた優しく問いかけた。
話すつもりはなかった。だが、話さずにはいられなかった。
俺は事故のことを桃子に伝え、再び涙を流した。
そんな俺を、桃子はそっと抱きしめた。
雪はいつしか、やんでいた。

<つづく>
52 :名無し飼育さん :2017/03/23(木) 11:01
一度も登場しないで死んじゃったよ奥さん
セルさんだからそんなことなだろうけど
障害がなくなってこれでももちと結ばれてもうおしまいってことないよね?
53 :セル :2017/03/23(木) 21:53
<つづき>

===

あれ以来、桃子と2人でランチに行くのは、週1ペースに増えた。
俺の上司は、そのことを知っていたようだが、
もう、会議室で小言を言われることはなかった。
以前は、桃子の研究や学生生活に関する話を聞くのが主だったが、
今はそれに加えて、プライベートも含めた別の話をする機会も増えていた。

「どうですか?調子は。」
「桃子のおかげで、すごくにいいよ。」
「本当!よかった。」
「自分でもはっきりわかるくらい憔悴していたし、やつれていたけれど。」
“うんうん”と桃子は相槌を打つ。
「そんな状況で、残された3人の子供のために頑張らなきゃいけないって、
いろいろな面でオーバーワークになってしまって。もう、限界だった。
あの日、もし桃子と会っていなかったら、ひょっとしたら俺・・・。」
「それ以上、言わないで。」桃子は俺の左手に、そっと右手を乗せた。
54 :セル :2017/03/23(木) 21:54
「お子さんはどうなの、元気?」
「うん、普段はね。でも、突然ふさぎ込んだり、夜中に泣き出したりすることがあって。」「何歳なんだっけ?」
「9歳と5歳と2歳。」
「いちばん下の子が、女の子だったよね。」
「そう。まだ小さいし、あとは男ばかりだから、やっぱり、そうとうつらいと思う。」
「そうか・・・。」そう言うと桃子は、なにかを考え始めた。
「よし、決めた!」桃子は突然叫んだ。
「え?なにを決めたの。」俺は驚いて尋ねた。
「これから時間を作って、できるだけお子さんたちに会いに行きます。」
「え?・・・いや、それは申し訳ないよ。」
「いいんです。私が行くって言ってるんだから。」
「でも・・・」
「私がなんの研究しているか、知ってるよね?」
「幼児教育の勉強をしているのは知っているけど。」
「そう。だから、実習もかねて実践します!」
「・・・、はい。」
俺はもう、そう答えるしかなかった。
内心、桃子と今以上に会えることが、嬉しくて仕方がなかった。
55 :セル :2017/03/23(木) 21:54
===

「みんな、おはよ〜。遊びに来たよ〜。」
3人の子供たちは、きょとんとして桃子を見た。
「『ももち』って呼んでね!」
初対面の女性に子供たちが警戒する中、
その緊張感を最初に打ち破ったのは、2歳の長女だった。
「おねえた〜ん。」そう言って桃子に突進する。
娘の顔の高さにある膝が当たらないよう、桃子がさっと足を広げたところに、
長女が飛び込んでいった。
その姿を見て俺は、「さすがに勉強しているだけのことはある。」と感心した。
「誰だ?」と警戒していた2人の息子たちも、
長女が桃子と楽しげに遊ぶ姿を見て、すぐに警戒心を解き、打ち解けた。
56 :セル :2017/03/23(木) 21:55
それから桃子は、週に1回のペースで俺の家を訪ねるようになった。
ある日、桃子が「オムパンプキン」と名付けた、
手作りのパンプキンケーキを持ってきてくれた時などは、
兄弟3人で大ゲンカとなり、
まるで本当の母親のように叱り、そして、なだめていた。
長女が桃子のことを「おかあた〜ん。」と初めて呼んだのは、その日のことだった。
子供たちが、ふさぎ込んだり、夜中に泣き出したりすることもなくなっていた。
なによりも、桃子の存在が、俺の心の支えとなっていた。
57 :セル :2017/03/23(木) 21:56
===

ある日を境に、桃子が我が家に来るのがピタリと止まった。
いよいよ論文の締め切りが近づき、執筆に専念しなくてはならなくなっていたからだ。
もちろん、俺はそのことを知っていた。
それでも、桃子はうちに来たいと言った。俺と子供たちに会いたいと言った。
だが、桃子には論文に集中してほしかったので、俺はその申し出を断った。
いつもの曜日に桃子が来ない。
落ち着き始めていた子供たちの心が、また揺れ始めた。
些細なことで大ゲンカし、また、夜に泣き出すようにもなっていた。
58 :セル :2017/03/23(木) 21:57
それから1か月、桃子と俺たち家族は、動物園に来ていた。
「動物園なんって子供っぽいよ。」そう言って長男は、やや退屈そうなそぶりを見せたが、
内心はウキウキして仕方がないように見えた。
久しぶりに桃子に会えて、3人とも本当に嬉しそうにしていた。
二男と長女は動物に興味が行ったり、桃子に甘えたりと、本当に忙しそうだった。
芝生の広場で、お弁当を広げる。今日は桃子がお弁当を作ってきてくれていた。
決して上手とは言えない。でも、一生懸命作ってくれたことは、すぐに分かった。
久しぶりの女性の手料理に、さっそく子供たちのおかず争奪戦が始まり、
食べ始めて1分も経たないうちに、敗北を重ねた長女が、ギャーギャー泣き出した。
「こ〜ら、仲良く食べなさい。」
一瞬おとなしくなった子供たちだが、すぐに休戦は終わりを告げた。
今度は二男と長女が泣き喚いた。
59 :セル :2017/03/23(木) 21:58
「も〜。」そう言って桃子は、大きな弁当箱を取り上げる。
「はい、それじゃあ1人ずつ食べさせてあげるから。
食べたいもの言って。はい、あ〜ん。」
子供たちは、巣にいる鳥の雛のように大きな口を開けては、
桃子に順番に食べさせてもらっていた。
俺はただただその光景を、温かい気持ちになって眺めていた。
自分のお弁当がないことなど、気にもせず。

「はい、これで最後だよ。」桃子が子供たち全員の口に、
イチゴを1つずつ放り込んだとき、
「あ、ごめんなさい。お弁当・・・。」と俺のほうを見ていった。
「大丈夫、だいじょうぶ。平気だから。」
「子供たちの幸せそうな、そして、桃子の楽しそうな顔を見られただけで、
俺はもう、おなかがいっぱいだよ。」
そういう俺に、「渡し忘れてました。」そう言って、
カバンから包みを取り出し、差し出す桃子。
「え?」驚いた俺が包みを開けると、それは俺と桃子用のお弁当だった。
60 :セル :2017/03/23(木) 21:58
「ずる〜い。」子供たちが一斉に騒ぐ。
「「もうおなかいっぱいでしょ。」」俺と桃子が声をそろえて言うと、
子供たちは、「ぶすぅー」としながらも、おとなしくなった。
が、またすぐに騒ぎ出しそうになったところ、
「じゃ、食べさせてあげるね。」
桃子が箸をとって、ウィンナーを俺の口に強引に突っ込んだ。
恥ずかしくなった俺が、顔を赤くしながら”ぱっぱっ”っと払うように手を振ると、
子供たちはキャーキャー言って喜び、長女は桃子に抱きついた。
「お母さんになってくれたらいいのにな〜。」二男がそう言うと、
今度は桃子が頬を赤らめた。

<つづく>
61 :名無し飼育さん :2017/03/23(木) 22:51
ハードな展開でどうしようかと思ったが何かいい感じに収まりそうでよかった
ももちに甘えたくなるよな
62 :名無し飼育さん :2017/03/24(金) 08:48
このお話もそろそろおしまいなのかな
でもいちゃラブがきてない
63 :セル :2017/03/24(金) 22:15
まだしばらく話は続きますので
よろしくお付き合いください
皆さんが予想されている展開じゃなかったらすみません
64 :セル :2017/03/24(金) 22:17
===

翌月のある日、俺は午後から休暇を取った。
そして床屋へ行き、身だしなみを整えた後、
少し距離はあるが、大学から徒歩圏内の、とあるレストランへと向かった。
ランチの時間からはだいぶ経っていたので、店にはアフタヌーンティーを兼ねて
カフェとして利用する客が数組いる程度だった。
俺が席に着いて待っていると、そこへ、桃子がやってきた。

「こんにちは。」桃子が俺にあいさつする。
俺が返事をしようとすると、「あれ、髪切ってきたの?」
床屋に行ったことに気付いた桃子が言った。
「うん、ちょっと身だしなみを整えてきた。それより、呼び出してごめん。」
俺は立ち上がって、桃子を迎えた。
「ううん。2人きりでゆっくり食事したいって誘ってもらって、嬉しかった。」
「論文審査会が終わった慰労も兼ねてね。」
「『兼ねて。』なんだね。」桃子はにっこり微笑んで、席に着いた。
65 :セル :2017/03/24(金) 22:17
俺たちは、ずいぶんと早いディナーを楽しみ始めた。
ふだん、このレストランでは、この時間にディナーの提供はしていない。
だが、今日は俺が頼んで、特別に用意してもらっていた。
オーナーシェフとは、それなりに知った間柄だった。
この店は、死んだ妻とよく来た店だった。

食事を終えると、オーナーシェフがやってきて、俺たちに言った。
「お料理はいかがでしたか?」
「おいしかったです!」
スパークリングワインを飲んで、顔をピンクに染めた桃子が、
目を大きく見開いて即答した。
俺はにっこりと笑った。
会計を済ませ、立ち上がる。
店を出て、扉を閉めようとしたところで、俺はオーナーシェフと視線が合った。
オーナーシェフは、優しい表情で微笑んでいた。
66 :セル :2017/03/24(金) 22:20
レストランの近くにある神社に、俺たちはいた。
まだ日差しは強く、俺は汗ばんでいたが、
桃子は、汗ひとつかくことなく、日傘を差していた。
日傘の影が、その白い素肌を薄暗く隠していた。
神社内の庭園を散策しながら、俺たちは言葉を交わす。
参道や庭園の入口付近には人が多かったが、庭園の中は人影もまばらだった。
さらに奥まった小道に入ると、もう人は誰もいない。

俺は、不意に桃子を抱きしめ、そしてキスをして言った。
「結婚を前提に、付き合ってほしい。」
「はい。」桃子は快諾した。
2人は、さらに熱い口づけを交わす。
そして、どれくらいの時間、唇を吸いあっただろうか。
ようやく俺が唇を離したが、唾液が1本の筋になって、まだ2人をつないでいた。
桃子はうつむくと、俺のぬくもりが残る唇を指で触れ、女の表情を見せた。

前日、俺は妻の1周忌を迎えていた。
67 :セル :2017/03/24(金) 22:21
===

手をつなぎ、駅へと向かう俺たち。
知り合いに見られないようにするため、裏道を通った。
別に計算をしていたわけではない。だが、そこは、ホテル街だった。
2人は同時に顔を見合わせた。
俺が目くばせすると、桃子は小さくうなずいた。言葉はいらなかった。
俺たちは、ホテルに入った。

「暑かったね。」エアコンの効いた部屋に入り、
俺は「ふぅ〜」っと息を吐きながら言った。
「すごい汗かいてる。」桃子はそう言って、ハンカチで俺の顔の汗を拭いた。
「お風呂、入って来ていいかな。」
ベタベタの体のまま、桃子を抱きたくはなかった俺は、桃子に尋ねた。
「うん、どうぞ。」そうこたえる桃子は、汗をまったくかいていなかった。
68 :セル :2017/03/24(金) 22:23
浴槽につかり、俺はまず入念に歯を磨いた。
そして、洗い場に出て体を洗おうと石鹸に手を伸ばしかけたその時、
“ガチャ”
バスタオルを巻いた桃子が、バスルームに入ってきた。
「えっ?!」俺は驚いて、変な声をあげてしまった。
「髪、洗ってあげようか?私、うまいんだよ。」桃子はニコニコしながら、俺に尋ねた。
が、「あ、そういえば床屋さんに行ってきたんだっけ。じゃあ、洗ってもしようがないか。」
がっかりしながらそう言う桃子の表情が、なんとも愛おしかった。

「いや、せっかくだから洗ってもらおうかな。」俺は桃子の厚意を無駄にしたくなかった。
「でも、せっかくきちんと整えてもらっているのに・・・。
あ、じゃあ、お背中お流しします。」
「うん、それじゃあ。」俺がそう答えると、
桃子はボディソープを手に取り、優しく泡立てて、それを俺の背中に乗せた。
69 :セル :2017/03/24(金) 22:26
「それじゃあ、始めますね。」
「はい、よろしくお願いします。」
桃子の繊細な指が、俺の背中を撫でた。
生まれて初めての感触に、俺は夢見心地になった。
背中をするっとすべった桃子の指は、俺の顔にのびてきた。
俺の額や頬を桃子の指がすぅーっと流れ、
さらに、眉間から眉毛を通り、こめかみから顎の先端への顔のラインを
細い指が強めに刺激した。
「くぅ〜っ」俺はあまりの気持ちよさに、自然と声が出た。
「気持ちいいでしょ。リンパマッサージだよ。」

「ありがとう。」そう言いながら俺は、桃子が次にどこを洗ってくれるのか、
楽しみでしょうがなかった。
が、「はい、じゃあおしまい。」
そう言って桃子は俺の背中と顔をシャワーで流し始めた。
そして、ひととおり洗い流すと、拍子抜けした俺を尻目に、
背中を向けてバスタオルを外し、さっと浴槽に浸かってしまった。
70 :セル :2017/03/24(金) 22:28
そのとき、桃子の体に複数の傷のようなものがあることに気付いた。
「あれ?なんか、あざみたいなのが・・・。」俺が声をかけると、
一瞬、間をおいて、
「あぁ、これね。幼児教育の実習で、けっこう乱暴な子もいてね。
でも、大丈夫だから。」
「そうなんだ。たいへんだね。」
「私も汗を流してから行くから。ね、先にベッドで待ってて。」
俺は桃子に従うしかないことを理解した。
それと同時に、男の大事なところはまったく洗っていないことに気付いた。
俺はさっとボディソープを手に取り、大急ぎで股間を洗い浴室を出た。

<つづく>
71 :名無し飼育さん :2017/03/24(金) 23:38
結婚きた!
毎晩の楽しみになってます
72 :名無し飼育さん :2017/03/25(土) 12:45
このパターンは来るかイチャラブ
しかしアザだらけとはももちかわいそす
73 :セル :2017/03/25(土) 22:05
毎晩の楽しみななんて言っていただけると本当にうれしい
もうしばらく続きますので 今後ともよろしくお願いします
74 :セル :2017/03/25(土) 22:09
今回はちょっと暴力的な表現があります
なにとぞお許しください
そういうのが嫌いな方 苦手な方は読み飛ばしてください
75 :セル :2017/03/25(土) 22:12
ベッドに横たわって、どれくらいの時間が経ったろう。
ふと目をやると、バスタオルを巻いた桃子が、
ちょうど浴室から出てくるところだった。
俺は立ち上がって、桃子を迎え入れた。
目の前に立ち、しばらくは、ただただ見つめ合った。
そして、なにかの拍子に、同時に抱きついて狂おしく抱擁し、
激しく唇を重ね合わせた。

その勢いでベッドに倒れこみ、2人のタオルが自然と外れる。
愛撫しあい、俺の手が桃子の秘部に伸びた。
「ああぁっ」桃子が声を上げる。
秘部を優しく刺激してやりながら、俺の口は桃子のピンク色の乳首を吸い始めた。
「あぁっ、ふぅ〜っ。」今度は悲鳴に近い喘ぎ声を発する桃子。
俺が、桃子の乳首が膨らむのを舌で感じたとき、
桃子の手が俺の息子に伸び、それを激しく上下させた。
俺はその刺激にがまんのタガが外れ、
桃子を正面から抱きしめると、そのまま息子を挿入しようとした。
76 :セル :2017/03/25(土) 22:14
だが、そのとき、一瞬桃子が心配そうな表情を見せた。
俺の中に残っていたほんのわずかな理性が、それに気づき、
「どうしたんだい。」そう桃子に、声をかけさせた。
「え?あ、いや、その・・・。」
桃子は慌て、目が泳いでいた。
俺が桃子の顔を撫でてやると、「なんでもないよ。」とこたえた。
その言葉とは裏腹に、桃子の表情は、今度は動揺して見えた。
俺はそっと桃子に額にキスをし、そして、優しく見つめた。
77 :セル :2017/03/25(土) 22:15
「あの、実は・・・。」桃子伏し目がちに、恐る恐る声を発した。
だが再び、沈黙の時間が続いた。
「大丈夫だよ。どうしたの?」俺が尋ねる。
「私、初めてじゃないんです。」
「え?」
「だから、その・・・、処女じゃないんです。」
「どうして?なんで、そんなことを・・・?」
「いや、私、元アイドルだから。もしかしたら、そういうの期待してるのかなって。」
「そんなことないよ。桃子は桃子だもの。」
「でも。」
「もう、いいから。」
「お願い。少しだけ説明させて。アイドル時代はバージンだったんだよ。
でも、ずっと私に言い寄ってきた男性がいて。
もちろん、アイドルだったし、そこまで好きってわけでもなかったから断り続けた。
でもね、引退してからも告白され続けて。
悪い人だとは思わなかったので、それで友達からってことで・・・。」
「ありがとう。それだけ話してくれれば十分だよ。
桃子は立派なアイドルだったってわかった。ますます好きになったよ。」
「うん。」桃子は安堵の表情を浮かべ、俺の胸に顔をうずめた。
78 :セル :2017/03/25(土) 22:16
冷静になれる時間が作れてよかった。
あのままでは理性を失った獣のように桃子に襲いかかって、
ただ、本能の赴くままにしてしまっただろう。
俺は興奮しつつも、冷静さも維持しながら、再び桃子を抱きしめ、
そして、キスをしながら、乳首と秘部に手を伸ばした。
冷静さを取り戻していたのは、桃子も同じだった。
だが、冷静さを取り戻してしまったが故に、桃子に異変が起こっていた。
俺に刺激された桃子は、
「ヴァーっ」という、恐怖を伴った悲鳴のような声を発した。
79 :セル :2017/03/25(土) 22:17
俺はその声に、すぐに違和感を覚えた。
桃子を優しく愛撫するが、まだ桃子は悲鳴をあげている。
俺が顔を覗き込むと、桃子はなにかに怯えたような、ひきつった表情を見せていた。
「大丈夫?」俺が尋ねると、
「うん、大丈夫。」そうこたえる桃子の表情には、恐怖がみてとれた。
「おかしい。」俺は心の中でそう思い、行為をやめようとした。
だが桃子は、「大丈夫、だいじょうぶだから。お願いします。」
泣きそうな声で、そう懇願してきた。
心配ではあったが、必死に訴える桃子を信じ、俺はゴムを装着した。
そして、いざ挿入しようとすると、
桃子は、きつく目を閉じ、口を真一文字に結んで震えた。
80 :セル :2017/03/25(土) 22:18
尋常ではないその様子に、桃子の言葉を真に受けてはいけないと確信した。
上になっていた俺は、ベッドに倒れて桃子の隣に寄り添うと、そっと肩を抱いた。
「いったい、どうしたんだい?」
「・・・」桃子は無言だった。
「いやだったら言わなくていいよ。」
「前のカレが・・・。」桃子は声を絞り出した。
「うん。」
「元カレと、つきあってはいたけど、でも、男女の関係にはなりたくなかった。
そこまで信用できていなかったから。
それに、あなたと出会ってしまったから。
だから、そうならないように、少し距離を置きながらおつきあいしてたんだけれど・・・。」
そこまで言って、桃子は大粒の涙を流した。
「もう、なにも言わなくていいよ。」俺は桃子の背中をそっとさすった。
桃子は、あの日のことを思い出していた。
81 :セル :2017/03/25(土) 22:20
===

芸能界を引退してから1年。
日帰り旅行でやって来た、とある高原。
桃子と元カレは、日帰り用施設の個室コテージで、2人で食事をしていた。
コテージに2人で入ることを、桃子は最初躊躇した。
だが、広い窓にはカーテンもなく、多くの観光客が集まる外から
中が見える状態だったので、安心してしまった。

「あっ。」そう言う元カレは、ビールの入ったグラスを派手にひっくり返した。
元カレはドジな面があり、こういうことはしばしばだった。
なので桃子も特段、気にも留めなかった。
「奥の納戸に、雑巾があるかもしれないから取って来て。」
そう言う元カレに、
「自分で行けばいいのに。」と、桃子は少しうんざりした。
元カレは、なにかあるとすぐに桃子に指図をした。
桃子も、何度か抵抗を試みたが、もうあきらめていた。
無言のまま席を立ち、納戸の照明をつける。
食器棚の引き出しを開けて、中を探していると、
開け放しておいた納戸の扉が、突然「バタン」と閉まった。
82 :セル :2017/03/25(土) 22:23
目の前に、元カレが立っていた。
「ハッ、しまった。」そう思ったときには、
既に桃子は、押し倒されてしまっていた。
「まだ、こういうのは早いと思うの。だからお願い、やめて。」
そういって抵抗するも、男性の力にはかなわない。
強引に服を半分脱がされると、正面から羽交い絞めにされ、抱きかかえられた。
納戸の奥の壁には、キャンプマットが立てかけてあり、
元カレは、それを足でひっかけて床に倒すと、
桃子を投げ捨てるように、そこへ寝かせた。

<つづく>
83 :名無し飼育さん :2017/03/25(土) 23:10
可哀想や…
84 :セル :2017/03/26(日) 22:05
今回も暴力的な表現があります
なにとぞお許しください
85 :セル :2017/03/26(日) 22:06
「いたた・・・」背中と腰に走った痛みの衝撃で、桃子は目をきつく閉じて唸った。
その直後、口の中になにか棒状の物が突っ込まれ、桃子は激しくむせた。
むせて吐き出した酸素を再び十分に吸い込む前に、
元カレの両手が桃子の頭をつかみ、前後に激しく揺さぶった。
突然のことに、なにが起こっているのか理解できない状況で、
さらに呼吸をすることもままならず、
桃子はこのまま死んでしまうのではないかとさえ感じていた。
86 :セル :2017/03/26(日) 22:07
そう思ったそのとき、口から棒状の物が引き抜かれ、
桃子は嗚咽して気分が悪くなると同時に、必死に酸素を吸い込み、
自分が生きていることを確認した。
しかし、その時には、すでに元カレが桃子の上に覆いかぶさっていた。
「はぁ はぁっ」酸欠状態の桃子が荒い呼吸をし、
ようやく自分の置かれている状況を理解したとき、
「ハァ ハァッ」っと、ひどく興奮した元カレが、
本能のおもむくままに襲いかかっていた。
「すべて計算されてた。」そう気づいた桃子は、悔し涙を流した。
服を半分脱がされた状態で、下着だけを剥ぎとられ、桃子は貞操を失った。
そんな自分を、高圧的に見下ろしている元カレの姿が目に飛び込んだ。
さらに、下のほうに目をやり、桃子から鮮血を流れていることを確認すると、
いやらしく征服的な表情になった。

「付き合っているのは事実だし、これが本来の自然なかたちなのかも。」
桃子は、必死にそう自分に言い聞かせ、なんとか納得しようとしていた。
だが、赤くはれた目からあふれる涙が、止まることはなかった。
87 :セル :2017/03/26(日) 22:08
===

「男女の関係になってから、元カレの態度が豹変して・・・。」
桃子は落ち着きを取り戻して、俺にすべてを話した。
「いったい、どうなったんだい。」
「暴力をふるうようになったの。」
「え?」
「気に入らないことがあると、すぐに殴るようになって・・・。」
俺は桃子の体を、改めて確認した。
あざだと思っていたのは、多くは治りかけているとはいえ、どれも傷痕だった。
目を凝らしてみると、ほぼ治っていて目立たちはしないが、
それ以外にも、体には無数の痕跡がみてとれた。
「ひょっとして、体に残っている傷の痕って・・・。」
「・・・うん、そうなの。ごめんね、うそついて。」
88 :セル :2017/03/26(日) 22:10
「もう、平気なのかい?」
「うん。やっぱり暴力だけは許せなくて。それで、きっぱりと別れを告げたんだけれど。」
「当然の判断だよ。」
「でも、話し合いたいから、もう一度だけでいいから会ってほしいって。
それで会いに行ったんだけれど。」
「う、うん。」
「そうしたら、知らない男の人が1人いて。」
「ちょっと、なんで?!」
「誰なのって聞いてら、立会人だって。でも、全然信用できないから、帰ろうとしたの。
でも、そうしたら・・・。」
「え?まさか・・・。」俺は我がことのように心配になっていた。
「突然2人でつかみかかってきて。」
「えっ。」
「私、必死に抵抗して。よく覚えてないけど、ひっかいたり、噛んだりしたと思う。
それで、なんとか振り切って逃げたの。」
「そうか、よかった・・・。」
「そんなことがあったから。それ以降、実はちょっと男の人が怖くなっちゃって。」
「平気じゃないじゃないか。」俺は心底心配していった。
そして、ずいぶんと交流していながら、桃子が実はずっと男性に対する恐怖心を
抱いていたことに気付かなかった自分を恥じた。
89 :セル :2017/03/26(日) 22:11
「あなたに会って、楽しい時間を過ごしているうちに平気になっちゃった。」
「そうなんだ。でも、さっきはずいぶん顔をこわばらせて、震えていたよ。」
「ちょっとだけ思い出しちゃったの。嫌な思い出を。でも、もう平気だから。」
「元カレはどうしてるの?まだ、付きまとわれてるんじゃ。」
「ううん、もう大丈夫。」
「でも、突然また来るかもしれない。そのときは、俺が絶対に守るから。」
俺はそう誓い、覚悟を決めた。
その言葉を聞いた桃子の肩から、すぅーっと力が抜けた。
そして、これまでに見たことのない穏やかな表情を見せ、俺に目配せをして促した。

俺は、体の半分を桃子の上に重ね合わせると、
右手で”さぁーっ”と、桃子の前髪をなでた。
きれいな額と、しっかりとした眉毛がのぞいた。
「おでこを出すと、雰囲気がだいぶ違うね。」俺は感じたままに言った。
「他の人には、絶対見せないよ。」
はにかんでいう桃子がいちだんとかわいく見え、俺はまぶたにそっとキスをした。
90 :セル :2017/03/26(日) 22:12
桃子は、俺をギュッと抱きしめ、唇を求めてきた。
俺もそれに応え、優しく桃子の唇を覆った。
互いに唇をむさぼるうちに、それだけで飽き足らず、
いつしか舌を絡め合せていた。
桃子の薄い唇が、うそのようにふっくらと感じられた。
桃子も、俺のかさついたした唇からは、とても信じられないような優しさを覚えていた。

一糸まとわぬ姿で、素肌と素肌とを重ね合わせる。
羞恥心などまったくなく、俺は桃子の柔らかさを、
桃子は俺のゴツゴツとした感じを心地よく感じていた。
そっと愛撫するだけで、全身に衝撃が走り、
くねらせた体が、さらにお互いを刺激し合った。
俺は、目の前でピンク色に輝く桃子の乳首に吸い寄せられ、
そっとそれを口に含んだ。
「あんっ。」そう声を漏らした桃子は、その快感をかみしめ、
また、どこかへ飛んで行ってしまいそうな自分の心を保つため、
俺の頭を必死に両手で抱え、そして髪をくしゃくしゃにした。
もう、床屋に行ったことへの気遣いの気持ちは、どこかへ吹っ飛んでいた。
乳首を吸いながら、俺の右手は桃子の秘部へと伸びた。
その瞬間、腰をくねらせた桃子が「あっ」と叫び、
俺の頭を抱えていた両手は、秘部へと伸びた俺の手をつかんでいた。
91 :セル :2017/03/26(日) 22:14
「嫌かい?」俺がそう尋ねると、
「ううん。急だったからびっくりしちゃって。でも・・・、」
会話をしながらも、俺の中指はずっと桃子の突起物をいじり続けていた。
桃子は体を丸めて眼を閉じ、体を硬直させたが、
しばらくするとぶるぶると震え始めた。
そして、目を見開くと体をのけぞらせ、
「うっ」と一言発し、また声が出なくなった。
潤んだ瞳と対照的に、荒い息遣いが、部屋に響いていた。
92 :セル :2017/03/26(日) 22:15
「嫌じゃないんだよね?」俺は桃子をみつめ、にっこり微笑みながらそう尋ねた。
桃子はうつむいたまま体を小刻みに震わせていたが、ようやく、小さくうなずいた。
俺は体をずらし、今度は舌でしてやった。
桃子は震える体をおさえようと、ぐっと体に力を入れ、目をつぶって唇をかんでいたが、
ついにこらえきれず、「ああぁぁーっ」と大きな声を出すと、
その直後、激しい呼吸音が響いた。
「はぁはぁはぁ」呼吸がままならないくらいに力んでこらえていた桃子が、
酸素を一気にとりこむと、目の前に俺の息子がいることに気付いた。
その瞬間、無意識に桃子はそれをくわえた。

やり方はわからない。
でも、必死になって頭を動かし、口をすぼめ、舌で先端を包んだ。
桃子の一生懸命さが、俺に伝わった。
それだけで、とても幸せな気持ちになれた。
俺が口を離して体を反転させると、桃子の口も俺から離れた。
一本の粘り気のある液体が、桃子と俺を、まだ繋いでいた。
その繋がりが切れるころには、俺は桃子の顔のほうへとすっかり向き直っていた。

<つづく>
93 :名無し飼育さん :2017/03/27(月) 22:23
待機中
94 :名無し飼育さん :2017/03/27(月) 23:48
今日はこないのかな…おやすみ
95 :セル :2017/03/28(火) 21:35
体調を崩して昨日は1日寝込んでました
今日からまた再開しますのでよろしくお願いします
皆様も健康にはご留意ください
96 :セル :2017/03/28(火) 21:40
しばらく、2人で見つめ合った。
そして、俺が目配せをすると、桃子は小さくうなずいて脚を開いた。
俺は息子にゴムをかぶせなおすと同時に、桃子に体をかぶせ、ゆっくりと一つになった。
「ふぅーっ」桃子が深く息を吐いた。
俺は、息子を桃子になじませるため、そのままの体勢を維持したまま、
桃子の首筋に、そして、まぶたにキスをした。
桃子は、「あっ」と小さな声を発し、目を閉じた。
俺はゆっくりと腰を動かし始める。

桃子の表情には、まだ緊張感が見て取れたが、それは恐怖心とは違っていた。
口をきつく閉じていたが、ついに限界に達したのか、
それまでため込んでいたものを一気にはき出した。
「あああーーーっ」叫び声が、部屋中に響き渡った。
桃子の背中に両腕を回し、そのまま抱え上げて座った姿勢をとる。
俺の目の前に、桃子の美しい黒髪が見える。
俺は腰を動かしながら、その髪の毛をたくし上げ、うなじに口づけすると、
「むふぅ」という声が桃子から漏れた。
俺はそのまま倒れこみ、桃子を腰の上に座らせる。
下から見上げると、張りのある白い乳房の隙間に、
まるで少女のようなあどけなさが残る桃子の表情が見えた。
97 :セル :2017/03/28(火) 21:43
その体勢で腰を動かすと、その動きに合わせて、桃子の黒髪が激しく乱れ動き、
そして、ほどよい大きさのきれいな胸が、プルンプルンと揺れた。
「あはぁ」そう言って桃子は、俺の上に覆いかぶさると、
何度も何度も頭を上下させ、目を閉じたまま俺の唇を奪った。

体を180度回転させ、俺が体を起こすと、桃子は四つん這いの体勢になった。
俺はその姿にいっそう興奮し、背後から濡れた秘部を舐めまわすと、
桃子の体がビクンと震えた。
やおら、桃子のきれいで豊かなお尻の隙間に息子を滑り込ませると、
血がさらに流れ込み、桃子の中で小刻みにドクンドクンと上下した。
俺が腰を前後させると、桃子はたまらずベッドに突っ伏し、
さらに、お尻を両手でわしづかみにすると、
「あん」と発した桃子に力が入り、さらにギュッと俺を締めつけた。
背後から突くと同時に、両手で桃子の程よい大きさの胸を包み込み、
そして、指先でその先端をつまんで撫でてやると、
桃子の両腕に力が入って、ベッドに沈んでいた顔が持ち上がった。
98 :セル :2017/03/28(火) 21:46
桃子は体を回転させながら俺に抱きつくと、そのまま馬乗りになった。
そもそもコンパクトサイズなうえに、アイドル時代に鍛え上げた成果か、
桃子が上になると、一段ときつくしまり、
俺はかつて経験したことのない気持ちよさを感じていた。
そして、両手を俺の両ふとももに乗せて体を安定させ、
引き締まった足腰で、桃子が激しく腰を前後させると、
伸ばした背筋の反対側でつんと張り出した桃子の両乳房が、プリンプリンと揺れた。
俺はこらえきれず、「あっあっあー」と声を発してしまう。
そんな俺の姿を見て、汗をかき始めた桃子が、幸せそうな笑みを浮かべた。

俺たちはふたたび正面から抱きしめあって、ベッドに体を預けた。
あふれる液が息子をやさしく包み、快感を覚えた俺は、さらに激しく腰を動かす。
桃子の体が反り返り、突き出されるかたちになった胸の、つんと立ったピンク色の先端が、
残像を残しながらペイントするように、プルプルと上下に揺れていた。
だが、今の俺に、桃子のような若々しさはない。
体力は既に限界に達しようとしていた。
最後の気力を振り絞り、激しく全身を躍動させたその瞬間、
「うっ」「あっ」
男女の2つの声が同時に漏れ、そろって脱力してベッドに体を沈み込ませた。
99 :セル :2017/03/28(火) 21:48
静かな部屋に、荒い呼吸音だけが響く。
ようやく落ち着きを取り戻し始めたとき、
「こんなに気持ちいいんだ。」と、桃子がぽつりともらした。
キスなんて、歯と歯がガチャガチャとぶつかるだけ。
男の人の前で服を脱いでも、なにか悔しい気分になる。
愛撫されても、気持ち悪さが出る。
胸を吸われても、痛いだけ。
あそこをくわえても、苦みしか感じない。
脚を開くと、屈辱的な記憶が呼び起こされる。
そんな記憶しかなかった桃子は、初めて満たされた気分になっていた。
今日という1日、レストランで落ちあってから、今この場に至るまでに、
少しずつ幸せが増し、自分を包み込んでくれる優しをを感じずにはいられなかった。

「責任、とってくれるんだよね?」桃子がいたずらっぽい笑顔を見せて俺に問いかける。
俺が無言のまま笑顔を見せて小さくうなずくと、2人はまた熱い口づけを交わした。
100 :セル :2017/03/28(火) 21:50
===

翌春、桃子と俺たち家族は、神社に来ていた。
八分咲きの桜をめでつつ楽しいひと時を過ごしていたが、
子供たちには花より団子、おなかがすいたとすぐに騒ぎ始めた。
庭園内にある茶屋に腰を下ろし、団子やあんみつ、アイスを食べ始める子供たち。
俺は長男に、「悪いけれど5分くらい、みんなを見ていてくれるかな。」と頼み、
また、すでに顔なじみとなった店主にも一声かけてから、桃子とその場を離れた。

茶屋の裏には小さな丘があり、そこにはモクレンが咲いていた。
花見客は、桜にばかり目を奪われて、
モクレンの咲くこの丘にいるのは、俺と桃子だけだった。
「きれいだ。」俺は桃子を見て、何気なくなった。
「ほんと。桜だけじゃないよね。」
「そうだよね。」そうこたえながら、
「本当は桃子のことを言ったんだよ。」と、俺は心の中でつぶやいた。

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