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Love Song 3 〜 StrayHeart 〜

1 :匿名 :2006/12/04(月) 23:30

“3”とはありますが、続いてるような、そうでもないような。

初めて完結させずにスレッドをたてさせていただきます。
手持ちの分で、現行スレに収まらないのは明らかなので新しく。
ローカルで書き進めてはいるものの、一向にペースが上がらない自分を叱咤する意味でも。

読んでくださる方がいたら、気長におつきあいくだされば幸いです。

393 :間奏7 川崎慎哉 :2007/06/16(土) 19:33

 …………

394 :間奏7 川崎慎哉 :2007/06/16(土) 19:34

「――田中ちゃんが好きなんだから」

初めて口にしたそのセリフは、自分で考えていたよりもあっさりとこの小さな世界に生を受けた。
こうも自然に言葉にできたのは、背中を意識しつつも壁を見つめたままだったからかもしれない。
はっきり口にすることはないだろうと、そんな機会は訪れない方がいいんだと、そう思っていた気持ち。
けれど……それを形にできたことがどうしようもないほどに嬉しい自分を自覚してもいた。

「れなは……、ここにいても、いいと? シンちゃんの……、そばに、いてもいいと?」

背中越しに聞こえる田中ちゃんの声が震えていた。
それはきっと、さっきの独白にも似た話のせいじゃなく、許しを請うかのような懺悔にも似た告白のせい。
その声の震えは僕の背中を突き抜けて、即効性のある媚薬みたいに身体の全てを侵蝕していった。
振り向いたボクの目に映る田中ちゃんはあまりに小さくて、消え入りそうに俯いたままでいる。
だからボクはそっと手を差し伸べる。
それはけして慰めなんかのためじゃなく、狂おしいほどの愛おしさ。
それでもボクは自分に、そして田中ちゃんに、最後の分岐点を残すだけの理性をかき集めた。

「ボクは田中ちゃんが好きだよ。田中ちゃんはそれで後悔しないの?」

差し伸べれた手を見た田中ちゃんが躊躇も逡巡もなく、「せん」と、ただ一言だけを。
それは“バカにするな”と、どこかふて腐れているようにも見えて。
「しないんだ?」と返しながら、笑いを噛み殺すことができずにいた。
本気なんだね、って、そう解らせてくれる、子供の率直さと大人の挑発をまとった田中ちゃんらしさ。

395 :間奏7 川崎慎哉 :2007/06/16(土) 19:35

「後悔なんてせん。本気で好きになった人よりも、もっと……シンちゃんのこと、好いとぉ」

重ねられた言葉は、より純粋で、どこまでも真っ直ぐで、信じられないくらいの速さで二人の中の岐路を選択してしまった。
口にした言葉に背中を押されるようにして、言葉とは対称的な勢いで、おずおずと小さな手が差し上げられる。

「やっぱ田中ちゃんは可愛いねえ」

なにげなく口にしたのは半ば口癖にも近い言葉。
けれど、その言葉が田中ちゃんのなにかを刺激したようで、細い指先がピクリと震えた。
ボクは手を伸ばし田中ちゃんの手を包むように握り、大切に、壊してしまわないようにそっと引き寄せた。

「田中ちゃんの眼にはさ、ボクはどう映ってるのかな?」
「どう……?」
「田中ちゃんから見て、ボクってどんなヤツ?」

繋いだ手を二人の間で遊ばせながら、より解りやすいようにと言いまわしを変えた。
田中ちゃんは自分の意志によらずふらふら踊る手に気を取られながら、「あぁ」と一声洩らして少し考えている。
考えている、というよりも迷っているのかな、とも思える。

「やっぱ可愛いや。正直に言ってみて?」

苦笑混じりにそう言うと、少しだけ眉間にシワを寄せた田中ちゃんが口を開いた。

「れいなにとってシンちゃんは……ヘラヘラしてて、いっつもれいなんことからかってばっかりで、
 なんかテキトーなことばっか言うし、ちょっといい加減に見えるし……」
「うっわ、ヒドイ言われようだね」
「でも……」

さらに言い募ろうとした田中ちゃんを、眼と、握った手で制して。
そして田中ちゃんを押しとどめた手を、導くように手繰り寄せて自分の左胸に押し当てた。

396 :間奏7 川崎慎哉 :2007/06/16(土) 19:36

「解る?」
「え? あ……」
「田中ちゃんが『好いとぉ』なんて言ってくれちゃうから……、
 そんな田中ちゃんと一緒にいるから、こんななちゃうんだな、これが」

らしく聞こえるような口調、顔に貼り付けた表情とは裏腹に、バクバクと心臓が早鐘をつく。
押し当てた掌から伝わってるだろう、田中ちゃんはすごく驚いたって顔をしている。

「笑うのもなかなか大変だよね」

きっとボクの顔には苦笑といえる表情が浮かんでいると、田中ちゃんにはみえていることだろう。
口元に同じ種類の笑みを浮かべた田中ちゃんが「アホぉ」、と掠れそうにささやいた。
正座して向かい合い二人して苦笑い、その笑顔に込められた実感に、苦笑を強めたボクの手、空いた右手を自分の左手で掴んで。
おや? っと思う時間もなく、自分の左胸に押し当てた。

「れなも、ドキドキしよるけん……おあいこ」
「――ぁあ、えっと、うん」

掌にひどく凶悪な熱とやわらかさを感じる緩やかなふくらみ。
伝わってくる田中ちゃんの鼓動が、よりいっそうボクの鼓動を激しくさせる。
いっそこのまま、そんな熱病じみた思いに駆り立てられて、突き動かされる一歩手前で気がついた。
ボクの手を押さえる田中ちゃんの小さな手が震えていることに。
怯え……ではないのは解る。そんな顔つきじゃあなかった。
だとすると、その理由はなんなんだろう。
その答えがボクの中で形になるよりも早く、田中ちゃんが俯いていた顔を上げた。
頬を染めて……どころか、顔中を、と言ってもいいほど真っ赤な顔をしていたけれど、ボクを見上げる瞳にはまだ消えない自責と。
全身から感じさせる羞じらいと、そしてなによりも自分の進む方向を決めた強さがあった。

397 :間奏7 川崎慎哉 :2007/06/16(土) 19:37

「田中ちゃん」
「……うん?」

なんということでもなく、どうということでもなく、ただ、ボクの口から出たのは田中ちゃんの名前。
お互いの胸に手を当てたままで、ボクがなにかを話すのを促すような返事。

「田中ちゃん?」
「なん?」
「田中ちゃん」
「…………」

ただそう呼び続けるボクを少しだけ不思議そうに見る田中ちゃん。
あえて意図を探るでも問いただすでもなく、真っ直ぐに見つめてくる田中ちゃんが静かに眼を閉じた。
僅かに顔を上げた祈りにも似た表情が、どうしようもなく愛おしくて、そしてどうしようもなく心を急きたてる。
ついと膝立ちになって身体を寄せて、なにに彩られることもない田中ちゃんの色をしたくちびるに惹かれて。
互いのくちびるが触れあうそのギリギリで踏みとどまった心が田中ちゃんを抱き寄せた。
先へ先へと進ませようとするその気持ちに流されてしまいたくなくて、ボクはバカみたいに一つのことだけを繰り返した。

「田中ちゃん」
「……シンちゃん?」

少し反った背中へ手を廻して、支えるように抱いた姿勢のままで。
その耳元で吐息のような声でささやかれて、心ごと、身体まで麻痺したような感覚に囚われる。
身体を重ねれば済むのかもしれない。
けれど勢いだけで踏み込んでしまって、どこかに歪みを作ってしまいたくなかった。
もしも田中ちゃんが望むとしても、正しい意味で一緒にいるのだとしたら、そうであるべきじゃないと思ったから。

398 :間奏7 川崎慎哉 :2007/06/16(土) 19:50

「田中ちゃん」
「……うん」
「田中ちゃん」
「うん」

だからボクはそう繰り返し、田中ちゃんはささやくような返事を繰り返してくれる。
何度も、何度でも、互いにそれしか言葉を知らないとでもいうかのように。
そんな中で背中に感じる温もり。
遠慮がちに廻された田中ちゃんの手は控えめなそれとは相反するくらいに熱を帯びているようだった。
その手と、顔を埋めた首筋から匂う甘さにボクは言葉すら失う。

どれほど抱き合っていたろう。
香水やシャンプーなんかじゃない、田中ちゃんの香りに包まれて、あれほど急いていた想いもいつの間にか不思議な充足感に変わっていた。

「田中ちゃん?」
「……ぅん?」

同じ言葉のやりとり。
でも互いにその中にある違いに気がついていた。
ボクは言葉の中に意志を込めて、田中ちゃんもそれをくみ取り促してくれている。

「明日、ちゃんと話してくるから」

それだけでなんのことだか解ったんだろう、田中ちゃんが身じろぎをして、細い髪がボクの鼻先をくすぐった。

「田中ちゃんが話してきたように、ボクもちゃんとしたいから」
「……れいなも行ってよかと?」
「ううん……わかるけど、二人で話したいかな」
「そか。……うん」

小さな声、そして肩にのせられたあごが揺れて、理解を示してくれたことが伝わってきた。
惜しむようにそっと身体を離すと目があった田中ちゃんがくしゃりとはにかんでくれる。
その表情や仕草の一つ一つが大切で、壊してしまいそうな衝動に流されなかったことに顔を綻ばせた。

399 :間奏7 川崎慎哉 :2007/06/16(土) 19:52

「なんかおかしい?」
「ううん。やっぱ田中ちゃんは可愛いよ、うん」
「……バカぁ」

今までに何度も言ったセリフ、そして何度も返された言葉だけれど、そのどれよりも。
身震いしそうなほどに甘く響いて、薬毒のように身体に染みてくる罵倒だった。
クスクス笑うボクを軽くにらんだ田中ちゃんが「なん?」と、少しだけ強い口調で問いつめる。
それすらも可愛いと思ってしまうボクは、自分がどれほど田中ちゃんに惹かれているのかを思い知らされた。
緩みっぱなしな頬を引き締める無駄な努力をしながら、軽く咳払いをして話題を変えた。

「さ、田中ちゃんは家に電話しないとね。連絡無しだなんて許されないよ?」
「わ、わかっとぉ」
「じゃ、ボクは布団の用意だけしてきちゃうから、電話しとくよーに」

急に現実に引き戻されて少し渋い表情の田中ちゃんにそう言って隣の部屋へと足を運んだ。
一人になって思う、そばに誰かがいるということの重み、そして明日のことを。
今までの二人の関係の中で、気が重くなるようなシリアスな話になることは間違いない。
けれど、それでもボクは信じていた。
自分とコータの関係を、コータ自身の性根のようなものを。
そして全てを話した田中ちゃんの気持ちが伝わっていることを。

ため息一つでそんな気持ちを吐き出して、そっと隣の様子を窺うと、ちょうど電話を切った田中ちゃんが「ほう」と息をついたところだった。
きっとそれなりに理由をつけて“嘘”をついたんだろうその後ろ姿が一仕事終えた風な装いに見えた。

「田中ちゃん」
「……電話、したけんね」
「うん。よくできました」
「子供じゃなか」

笑って茶化したボクにプイと拗ねてみせる田中ちゃん。
なにがどうと言い切れるワケじゃないけれど、いい傾向だなって、そう思えた。

400 :間奏7 川崎慎哉 :2007/06/16(土) 19:53

「お腹、すいてたりしない?」
「……あんまり。なんか色々ありすぎてよくわからんちゃ」
「そっか。じゃあ……寝る?」
「あっ……うん」

発した言葉に言外のニュアンスを含ませたつもりはなかったけれど、田中ちゃんには意識させてしまう言葉だったらしい。
かといって他に言い様も思い浮かばないんだから仕方がない。
そんな風に意識をされるとこっちとしても辛いところだったりするんだけどね。

「なにもしないから」
「そ、そんな心配しとらんもん」
「そう? ホントはものすごく“なにか”しちゃいたいんだけどね」
「なっ――、っ……し」
「ん?」
「その……シンちゃん」
「うん?」

幾度もしたからかいにわたわたと言葉を詰まらせ動揺する田中ちゃんはいつもの田中ちゃんだった。
けれど……その一瞬後に言葉を選ぶように頬を染める田中ちゃんは、ボクの知らない田中ちゃんだった。

「シンちゃんが、その、……んなら、れなはよかとよ」
「田中ちゃん……?」

その、肝心な部分は聞き取れないほどの声量だったけれど、ボクに伝えたい内容は伝わってきた。
それはとても嬉しいし、差し出されたその手を取ってしまいたいのも間違いない。

「その、……したいっちゃろ?」

言い切ったその表情はとても、なんというか、とても切なくさせられた。

401 :間奏7 川崎慎哉 :2007/06/16(土) 19:55

「田中ちゃん?」
「……?」
「そんなに急がないで」
「え?」

そりゃあまだ子供だから、なんて言うつもりはないし、実際には子供じゃあない面だってある。
そんなことは理解してるし知ってもいる。
でも今……

「意味のない考えかもしれないし、つまんない意地なのかもしれないけど……
 でもボクは、今から…これから、田中ちゃんとゆっくり歩いていきたいな」
「……シンちゃん」
「田中ちゃんと、二人で、ゆっくり歩いていきたいよ」

自覚してしまったやるせなさ、それごと押し包むように田中ちゃんを抱きしめた。
なにも言わず腕の中に収まった小さな田中ちゃん、その細く綺麗な髪に問いかける。

「こんな考え、イヤかな?」

腕の中の明るい色をした髪がふるふると揺れた。
ボクの胸に額を押しつけて、意地になったように上げない顔はどんな表情をしてるんだろう。

「泣かないでよ」
「……ぃとらん」
「そっか」

田中ちゃんが顔を見せてくれるまで。
そう決めて、あやすでもなくただ田中ちゃんの身体を包む腕を解かずにいた。
しばらくして静かに顔を上げた田中ちゃんは少しだけ赤い目で「バカ」と呟いて、恥ずかしそうに目を逸らせた。

402 :間奏7 川崎慎哉 :2007/06/16(土) 19:56

「寝よっか。いっぱい泣いて疲れたっしょ?」

腰を上げて田中ちゃんへ手を差し出しからかいを滲ませてそう言った。

「そんな泣いとらん」

少しくちびるをとがらせて言った田中ちゃんがボクの手を握った。
引き寄せるようにして立ち上がらせた田中ちゃんを連れて、寝床をととのえた扉を開く。

「粗末な寝床ですがどーぞ」
「…………」

どうにも微妙な表情をされたようだった。
やっぱりベッドがお好みだったろうか? そんなことを考えていると、ぺたんと田中ちゃんが布団の上へ座り込んだ。

「田中ちゃん……?」

かけた声にチラリと振り返った田中ちゃんは、やはりどこか微妙な顔を見せるとすぐにまた背を向けてしまう。
自分の座った布団と、そして間を空けて並んでいる布団とに目をやって、無言のままでもそもそと動き出した。
僕の見ている前で……見られていることを意識しているようなそそくさとした動作で、すっと布団を引っ張り寄せた。
一度大きく引き寄せて、距離を測るように一拍分の間をおいて、もう一度、少しだけ引き寄せて納得したらしい。
ジッと見ていたボクの方へ顔だけ向けて、ニッと強ばった笑みを見せて、そしてポンポンと布団を叩いた。

「電気消して、寝よ」

そう言って布団に入って毛布を頭までかぶった田中ちゃんを、気の抜けた表情で見ていたボクは一つ息をついてそれに倣った。
電気を消して障子越しの月明かりの中で、布団へもぐり込もうとしたそのときに気がついた。
毛布の脇からチラリと飛び出している細い腕に。
そして微妙な“間”のせいで心配げに鼻まで下ろされた毛布から覗うような目が見つめていることに。
ボクはそれには気がつかない振りで毛布をかぶって、なにも言わず天井を見つめたままで同じように手を出して田中ちゃんの手を握った。
田中ちゃんはなにも言わなかったけれど、少しだけ強く握りかえされた手の温かさで気持ちは伝わってきた。

「……あったかいっちゃね」

ぼそりと呟くような声が聞こえた。
あったかい、とか、そうだね、とか、返す言葉に迷ったけれど、同じことを感じていたって、それだけで充分だったから。
代わりに田中ちゃんと重ねた手に少しだけ想いを込めて、ボクの口から出たのはただ「おやすみ」とだけだった。

403 :間奏7 川崎慎哉 :2007/06/16(土) 19:57

 …………

404 :間奏7 川崎慎哉 :2007/06/16(土) 19:58

「田中ちゃん……」

その一言でコータの身体がピクリと揺らいだ。
自分だったらどうだろう。
そう考えてしまうのは間違いだろうか。

「れいな、どうしました?」

それは半ば予想通りの反応だった。
昨晩田中ちゃんが話したとおりなら、その後のことはコータには解っていただろうから。

「うちに泊まった」

あえてそうした言葉を選んだ。
コータにどう聞こえるかも承知の上で、それでもこういった言い方を選んだ。

「……、ったく」

くしゃりと髪をもてあそんだコータが吐き捨てるように呟く。
俯いて見えない表情でどんな言葉を続けるのか。

「どうよ」
「どうよって……」
「とりあえず話とかなきゃと思ってね」
「そのまんまですよ」

そう洩らすコータが顔を上げる。
苦い薬でも押し込まれたような表情だった。
そしてその表情があまりに見事にボクの思っていた通りの表情だったせいで、抑えきれなかった感情が口元に零れてしまう。

「なに笑ってんすか。ったく……泣かしたら先輩でもぶっ飛ばしますよ」

やれやれ、か、それとも……いや、やはり“ったく”という表現が適当な、そんな顔で腹を叩かれた。
キツイだろうけれど、だからこそそれを飲み込むんだろうと、そう思っていて。
やっぱりその通りに不器用な笑顔を見せるコータは、ボクの知っている、ボクの信じていたコータだった。

「殴られないようにするよ」

先に泣かせたのはお前だろと、そう言ってやろうとしたけれど、もう意味のないことだと思って言葉を換えた。
今はこれで……、これぐらいしかないんだと、そう思うから。
後のことはコータ自身の問題としか言えないんだから。
ボクはボク以外の四人、それぞれの笑顔を思い浮かべながらそう考えていた。

405 :間奏7 川崎慎哉 :2007/06/16(土) 19:59



406 :匿名 :2007/06/16(土) 20:03

ここまでです。
待っていてくださる方、レスをくださる方、ほんとにありがとうございます。
いつとは言い切れませんが次回はこんなには空かない……と(^^;)

ではまた。
407 :TA(ry :2007/06/16(土) 23:32
名前面倒なんで省略でw
いや〜…まさかなぁ〜って展開ですね…
なんかモヤモヤ感がいっぱいですwww
自分もこんな作品買いてみたいなぁ〜と思いました。
続き、楽しみにしておきます♪♪
408 :名無飼育さん :2007/07/02(月) 20:13
2と合わせてこちらも期待大
409 :名無飼育さん :2007/07/14(土) 20:31

まだ待ってるよ〜

410 :名無飼育さん :2007/08/10(金) 00:04
待ってます
411 :名無飼育さん :2007/09/07(金) 08:35
待ちます
412 :名無飼育さん :2007/11/01(木) 22:46
生きていますよね!死んでいませんよね!
待っています。
413 :名無飼育さん :2007/11/17(土) 23:30
クリスマス待ってる
414 :セシル :2007/11/25(日) 15:23



415 :セシル :2007/11/25(日) 15:24

代われるんなら代わってあげたい
そんなコトを思える立場じゃないくせにそう思っちゃう
だけどどんなに願っても代わってなんてあげられないから
だから、そばにいよう
一人でいるよりは少しでも気が紛れるように

そしてらしくあれるような元気の素になれたらいいな
迷ってくれたのは今になれば解るから
だからきっと苦しんだんだよね

そんな顔しないでって言いたい
でも言ってもきっと思い出させちゃうだけだから
言ってあげたい
でも言えない
ちょっと苦しいなあ

でも……
それでも一緒にいると嬉しい
例えそれが自分の望む距離じゃなくっても
ただそばにいられれば
416 :セシル :2007/11/25(日) 15:24



417 :セシル :2007/11/25(日) 15:25

いつもどおり仕事のある朝。
いつもどおり始まるはずの朝、ちょっとだけ早起きして家を出た。

今日は新しい始まりだって決めたから、お母さんにも頼らないで早起きして、特別じゃないけれど気を配ったおしゃれをして。
向かった先は仕事場とは違う、あまり綺麗とは言えない小さなアパート。
錆びついた階段をリズムを刻むように鳴らして部屋の前に立つ。
三度目の扉は前の二回からは少しだけ間が空いていて、その間に起きた変化に大きく深呼吸をして覚悟を決める。
チャイムを鳴らすために伸ばそうとした腕が、自分で見てもぎこちなくって少しおかしくなった。
指先がボタンに触れる。
押すかどうしようか、迷いを振り切るようにグッと押し込んだ。
しばらく反応を待っていると部屋の中から物音が聞こえてきて、ドア越しに人の気配を感じた。

 ――ドキドキする…

ドアが開けられるまでの短い時間が胸を痛くするような緊張を。

「は――、い……」
「おはよ」

用意していた挨拶は思っていたよりもすっと言葉にできて、少し高いところにある顔がびっくりしてる。
何日かぶりに見る顔。
別にそれまでだって毎日会ってたりしたわけじゃないのに、すごく久しぶりだってそんな気がする。
418 :セシル :2007/11/25(日) 15:26

「こーた、おはよ」
「あっ、え? おはよ、う」
「まだ時間あるでしょ? ちょっと上がるね」

驚いて固まってるこーたの横からするりと部屋の中へすべり込む。
バッグをおいて振り返ると、まだ玄関で背中を向けてるこーた。

「こーた」
「え?」

初めて気がついたみたいにこーたが振り返った。
それへ笑顔を向けてバッグとは別に持っていた荷物を掲げてみせる。

「まだ時間あるよね? ご飯持ってきたげたよ」
「ご飯……?」
「朝ご飯。前に送ってもらったお礼にお母さんが持っていきなさいって。
 こーたってばどうせ食べてないんだろうなあって思ったから。きちゃいましたぁ」
「って……」

これはついてもいい嘘だって自分に言いきかせる。
買ってきた料理をタッパーに詰め替えたものだけど、こうでも言わなきゃ理由がつかなかったから。
こーたにも、それに自分自身にも。

まだ立ったままのこーたへ手招きをして、「まぁ座って座って」なんて軽い口調で。
こーたはやり場に困ったみたいに半端に上げた手を、くしゃりと寝癖の付いた髪へやって、それからため息なんてついて向かいに座った。

「亀井…さ――」
「ほらあ、まだあったかいんだよ? どーせ朝食べてないんでしょ。ちゃんと食べないとダメだぞっ」
「…それはそうだけど」
「ほら食べて食べて」
「わかったって……」

なにか言いたそうな、言おうとしているこーたを強引に押し切った。
419 :セシル :2007/11/25(日) 15:27

こーたがなにを言いたいのかは知ってるつもりだし、それは今あえて聞く必要なんてなかったから。
言葉を遮るためだけに言葉を口にする。

「どおどお? おいしくない?」
「あ、うまいけど」
「でしょー? おいしいんだよ」
「ああ」

とても美味しそうには見えない顔でお弁当を食べているこーただけど、それでも食べてくれているんだからここへきて良かったと思える。
ちらちらとこっちを気にしながらも、話しかけてくることはなくモソモソと端を口に運んでいるこーたが可笑しくて、ちょっとだけ気持ちが軽くなった。

「なに?」
「っ――、別に。なんで……、いや。あ〜、亀井は」
「ん?」
「食わないのかよ」
「あれえ? 気にしてくれてんの?」
「そうじゃ、ない、いや、けど……」
「こーたが食べてるじゃん?」
「え? ああ」
「で、あたしはそれを見てるのがいいのっ」
「…そう」

困ったように「なんだよそれ」なんて、前にも増して口数が少ないこーただけど。
ゼロから…、ううん。マイナスから始まると思えばこれは悪くないって気がする。
420 :セシル :2007/11/25(日) 15:28

「じゃあ絵里そろそろ行くね」

もそもそとお弁当をつついているこーたを見ていた。
もっともっとって、そう思うけれど仕事に行かないわけにもいかない。
踏ん切りをつけるみたいに軽く勢いをつけてそう言った。

「はっ?」
「仕事。行ってきます!」

なにか言われるよりも先に立ち上がって、カバンを肩にヒョイとおどけた敬礼をしてみせる。
呆けたように見上げるこーたへ、目一杯の笑顔で。

「え? あっ……」
「こーたももうちょっとしたら行くんでしょ?」
「行くけど……」
「じゃ、そういうことで」

なんとも言い難いって顔で見ているこーたへ手を振って、それ以上なにかを聞かれるよりも先に部屋を出た。
一息に階段を駆け下りて通りへ出たところ立ち止まって。
緊張と安堵と、喜びと悲しみと、噛み合わないハズのものが入り混じった気持ちを吐き出した。
大きな吐息にのせて。
421 :セシル :2007/11/25(日) 15:28



422 :セシル :2007/11/25(日) 15:29

「……おー。そっか、いらっしゃい」

ほんの少しだけ驚いたって顔をしたけど、すぐにあのへらっとした笑顔でそう迎えられた。
なにも言わずに来たのに、こうして来ることが当たり前みたい思われていたのかなって、そんな感じ。

「ども。シンちゃん、お久しぶり」
「なにその中途半端に堅苦しい感じは」
「いやだってえ……」
「色々あったから、って?」

崩さない笑顔のままで絵里が口ごもった言葉を形にされた。
なんか見透かされてるのが悔しくて。
でも助けられたって気持ちも本当で。
だから返す言葉は少し投げやりなものになってしまった。

「そーだけど」
「でもこうして来たじゃん」
「え?」

なにを言われたのか、というか、その言葉がなにを指すのかが一瞬理解できなくって。
反射的に問い返すような声が洩れたあたしにシンちゃんがニコリと笑いかけた。

「そういうことなんでしょ?」

今度はハッキリと伝わってきた。
シンちゃんの気持ちが。伝えようとしていた言葉が。

「うん」

だからあたしはキチンと言葉にしてそう返した。
自分のことみたいに嬉しそうに「なら入って入って」って道を空けてくれるシンちゃん。
開けた目の先には何度も通ったちょっと狭い通路があって。
そしてその奥にはあの居心地の良かった空間がある。
423 :セシル :2007/11/25(日) 15:30

視線を逸らすみたいに俯いて、一度だけやや深い呼吸をした。
背中に感じた感覚に目を上げると「大丈夫」って声が聞こえる。
急かすようにしてるんじゃなく支えるように添えられた手もそう言ってるみたいだった。

「コータはカウンターに入ってるから」
「…うん」

足を踏み入れた場所は以前ほど落ち着く場所じゃあなかった。
けれど、またそういう場所にはしたいと思う。
そうじゃなければここにいる意味がなくなってしまうから。

「なんか飲む? っても……」
「あ、ヘーキだよ。色々買ってきたもん。シンちゃんもなんか取ってね」

いつものソファーで脇に置いてあったコンビニの袋を差し出す。
シンちゃんはなにか考えるみたいにその袋をのぞき込んで、大して選んだ様子もなく缶コーヒーを一本手に取った。

「あんま余計なことは言わない方がいいかもしんないから簡単に」
「ん?」
「普通が一番いいと思うよ。ボクはね」
「んー…、うん、わかってる。と思う」
「そっか。ならいいんだけど」
「ありがとーね。シンちゃん」

シンちゃんが絵里に気を遣ってくれるのは解ってる。
多分、その理由も、今なら解る。
そうやって言ってくれることすら気を配ってるんだろうって、そう思う。
だから素直に感謝できる。
シンちゃんはふざけた風に笑うだけだけど。
424 :セシル :2007/11/25(日) 15:30

「さて。コーヒーのお代はアレでいいの?」

そう指差した先はお店のフロアの方で、“アレ”っていうのはこーたのことなんだろう。
アレ扱いされるこーたの少し不服そうな表情が思い浮かんで少しだけおかしかった。

「それともなにか話したいことでもある?」

それはまた茶化した言い方だったけど、手を差し伸べてくれるってシンちゃんの気遣い。
少し考えて、「ちょっとだけ話したい、かなあ」と素直に口にしてみた。

「ほいほい。なんなりと」

相変わらずの口調で向かいに腰を下ろしたシンちゃんが軽い音を立ててコーヒーを開ける。
一口コーヒーを飲んだシンちゃんが、間を取るみたいにゆらゆらと缶を揺らしてからそっとテーブルに置く。
それが「どうぞ」って意味みたいに思えて話をはじめる。

「あー、ほら、……どうしてた、とか?」
「すっげーわかりにくい話だね」

言われてから思い出した。
ここに来るということ自体が久しぶりなんだから言葉足らずだったってことに。
慌てて言葉を足そうとしてシンちゃんが笑ってることに気がつく。
笑っているというか、ほくそ笑んでるっていうべきなのかな。
425 :セシル :2007/11/25(日) 15:31

「もー、ホントやだあ……」
「うそうそ、ごめんってば。ちゃんと答えるから」

力が抜けて落とした肩へ申し訳なさそうな笑い声がかけられた。
最初から解っていたくせにそうやって返すのはシンちゃんらしいけれど、今の絵里にはそんな余裕がなかったから。

「どっから話すべきかな。っていうかそんなに変わってはいないんだけどね」
「そーなの?」
「その……、あれだよ、田中ちゃんと……」

ああ……
シンちゃんが言いづらそうにするのは無理ないけど、それはもう大丈夫だから。

「れいなにフラれたってこと?」
「まあ、うん。それ自体は最初からうまくいくって思ってなかったみたいだし。本人はね」
「……うん」
「だからそれでへこむとかってことはなかったんだけどね」
「でもショックだよ…、きっと」
「そうかもしれないけど。それよりも、その後のことをどう考えていいか、じゃないかと思うんだ」
「シンちゃんの…こと、だよね?」
「それだけじゃないけどね」

少し渋い顔で短くそう言ったシンちゃんは複雑そうだった。
それはそうだろうって、絵里もそれくらい解る。
絵里だってそうだったんだから……
426 :セシル :2007/11/25(日) 15:32

「表には出さないけどね。そりゃあアイツもあれで複雑なヤツだし」
「それは…どーいうこと?」
「知ってるよね、あいつの初めて好きになった相手」
「あっ、…でも」
「そうだけど。男ってさ、バカだからなあ」

なにを言いたいんだろう。
どうにもよく解らなかった。
慰められてるんだろうか、それともまたからかわれてるのか。
シンちゃんの様子からはなんとも――少なくとも絵里には――判断がつかなかった。

「ん〜、だからね。難しい話だけどさあ」
「うん」
「あんまり追い込まないでやって?」
「え……?」
「でも見限らないでやって」
「……あ、はい」
「ボクから言えるのはそんなもんだなあ」
「あっ、ありがと」

もう一つ真意が掴みきれないままでお礼を言うと、シンちゃんは右手をにぎにぎして立ち上がった。
さっき言ったように、この話はこれで終わりだってことなんだろう、多分こーたと替わる為にフロアの方へ歩いていった。

その後ろ姿を目で追うと、すぐに壁に隠れて見えなくなってしまう。
でもなんとなく解る。
陰になった向こうでシンちゃんとこーたが向かい合って話す。
きっとこーたはいつものブアイソーな顔で――それとも少し落ち込んだ顔かもしれないけど――二言三言交わすだろう。
そして動き出したこーたは……その角から……姿を現した。
427 :セシル :2007/11/25(日) 15:32

「…………」
「おっす」

さすがに何度もアパートに押しかけていたからか、ここに来たからって顔に出すほど驚くほどじゃないらしい。
態度の方は相変わらずだけど、アパートで行った日から何度目かになる今日まで、最初のあのとき以来特別に様子を窺うようなことは訊かれない。
だからなにかが変わるってものでもないけれど。

「……ああ」
「お疲れー。まあ座りなよ」
「言われなくても座るけど」
「憎ったらしいなあ、もー。もっとアイソよくしないと差し入れあげないぞ」
「……いや、別に」

チラリと視線を流して袋を目にとめたこーたは、ふいと横を向いてしまった。

「や、あげるってば、こーた。こーたぁ、ホラ、ね」
「わかったって。もらうからっ」

無理矢理押しつけた缶コーヒーを受け取ったこーたが、テーブルの上に乗りだしていた絵里を追い払うように手を振った。
言葉には出さなかったけど、その仕草はこういうことなんだろう。

 ――そばに寄るなって

428 :セシル :2007/11/25(日) 15:34

それは解っていたつもりだけど、あからさまに拒絶されたって感じは傷口をえぐられたみたいに痛い。
けれど精一杯でそれを押し込めて、なんとか笑ってみせないと。

「ほ、らあ…、飲んで飲んで」
「あ…、ああ」

こーたは気づきもしない様子で――というよりもそもそも絵里の方を見てない――横を向いてコーヒーに口をつけていた。
アパートで会ったとき一度も目を合わせようとしなかったこーたを思い出す。
場所が違えば何かが変わるかもなんて考えは気のせいでしかなかった。

「忙しい?」
「…それなりに。そっちはそうでもなさそうだな」

顔こそこっちへ向いているけれど、頑なに目を合わせないまま。
そんなこーたの目と、見ているのか見ていないのか解らない視線の先を意識したままで言葉を探す。

「なーに言っちゃってんの。絵里は忙しいよ? いつも忙しいですよ」
「その割に――、」
「なーに?」
「なんでもない」

まただ。
新しい始まりに決めたあの日、こーたの部屋でこーたの言葉を遮ったアレ以来、核心に触れそうになると話を止めてしまう。
当たり障りのない話なら付き合う程度に言葉を交わしてはくれるけど、まるで避けているみたいに“そこ”へは近づこうとしない。
それがどういうことなのかが解らないあたしはそれに倣うしかなかった。

「そっか。あっ、お腹すかない? パンとかあるけど」
「いいよ。そんなに……」
「……? そう? うん、わかった」

なにか言いかけたこーたは途中で言葉を止めると、思い出したみたいにコーヒーに口をつけて一緒に飲み込んでしまった。
そして絵里はといえば、やっぱりそれを追及することもできずにへらへら笑いながら“そこ”を避ける。
二人でそんなことをしながらでも、普通でいられる日がくれば、なんて思っていたのかもしれない。
けど違った。
そうじゃなかった。
429 :セシル :2007/11/25(日) 15:35

「亀井、さ……」
「え? なに?」

とくんって一つ鼓動が跳ねた気がした。
こーたの瞳に自分が映っているのが見えたせいだ。
跳ねた鼓動が不安に変わる。
体温が一度くらい下がったみたいに感じる。
一度揺れた瞳がもう一度絵里を映して、こーたが言葉を探しあてた。

「なんで?」
「え?」
「どうして……」
「や、やだな…どうしたの、こーた」
「どうしてそんな普通に笑ってられんだよ」

そこには踏み込まない。
二人とも避けて歩いてるなんてただの勘違いだった。
あたしが避けていたそれを、こーたはずっと見続けていたんだ。

「オレ、亀井のことフッただろ?」
「そうだね。ヒドイよね、こーたってば。こんな可愛い初恋の人がいるのにねー」
「ふざけないでちゃんと聞けよっ」

苛立ちを滲ませたこーたの声が少しだけ大きくなる。
あたしは声の抑揚にすら過剰に反応する心臓が恨めしくなる。
逃げちゃいたい。けどそうしたら全てが消えてしまう。
430 :セシル :2007/11/25(日) 15:37

「……うん」
「オレ…、亀井のことフッただろ?」
「うん」

逃げない。
ちゃんと笑えてるかどうかは解らないけど。
でも向かい合わないといけないなら。

「しかも亀井の友達だぞ」
「…れいなは友達じゃないよ。あ、友達でもあるけど、……仲間だよ」
「そうじゃないっ。そんなことじゃなくて……」

こーたは少し哀しそうな目をしていた。
れいなとのことを思い出したのかもしれない。
そんなこーたの顔……、見たくなんかないよ。

「誰にとか、誰ととか、あたしにはそんなの関係ないもん」
「そりゃそうかもしれないけど…、オレ……」
「うん。……すっごい哀しかった。ウソだって思いたかった。
 こーたってばあたしのことからかってタチが悪いよって、思いたかった」
「…ごめ――」
「謝らなくたっていい。こーたがそうするしかなかったのはわかったし。
 後でちゃんと考えたらこーたらしいって思ったもん」
「な、なんだよそれ」
「だってさ。ちゃんと向き合おうとしたのは一人だってことでしょ。
 フタマタとか…、キープとかってしちゃうヒト、いっぱいいるんでしょ」
「そんなの――」

431 :セシル :2007/11/25(日) 15:37

「こーたはしないよ」

それだけはハッキリと、胸をはって言ってあげられる。
こーたは絶対にそんなことしない。
一緒にいた時間は長くはなかったけど、見ていた姿に嘘はなかったはずだから。

この場所で共有した時間も。
送ってくれたバイクのシートも。
たった一度のデートも。
そして教室で椅子に座って見ていた制服の背中も。

「バカだ……」
「バカでもいいじゃん」

呟くみたいに言ったこーたに笑いかける。
こーたはまた視線を逸らすために横を向いてしまって、それからはなにも喋らなくなってしまった。
バカでもいいんだ。絵里には他にしてあげられることなんてなにもないから。
ヤな記憶を蒸し返しちゃったかもしれないけど、少し自分の気持ちを伝えられたのは良かったのかなって思えた。
そしてこうやって話せたことで、こーたが少しでも前に向いてくれるかもしれないって思えば、それがなによりも嬉しかった。
432 :セシル :2007/11/25(日) 15:37



433 :セシル :2007/11/25(日) 15:38

「どしたの?」

広くはない部屋の中、自分の声が届かないような。
そんなおかしな感覚を感覚にさせられる表情だった。

いつものように数日おいて押し掛けてきた部屋で、あのとき以来のお弁当を広げた後のことだった。
こーたは普段と同じ、少しムスッとしたように見える顔で、なにを考えてるのかはよく解らない。
そんな表情が差し出したお弁当を見て変わった、ように見えた。

「悪いけど、…いらない」
「なんで? おなか空いてない?」
「そうじゃなくて……」
「じゃあ置いとくから後で…、あっ、お店に持っていって食べて」

自分の言葉が空回りしているみたい。
イヤな感覚ばかりが膨らんでいく。
いつかのように……

「だからっ、……そうじゃなくて」
「な、なによお」
「この前、オレ、訊いたよな」

それがなにを指しているのかはすぐに解った。
けれど答えたくない。
答えたら先へ進んでしまうから。
絵里の希望とは違う方へ向かって。
でも答えなくても同じことだって、すぐに気づかされる。
お弁当を見つめたままでこーたが話しだしたから。

434 :セシル :2007/11/25(日) 15:39

「なんで来るんだって」
「ちゃんと答えたじゃん」
「途中までな。そういうことじゃないんだ」
「そういうことだよ」

精一杯の抵抗。
なにに逆らえばいいのかもハッキリしないままの。
そんなあたしを諭すような目でこーたが見つめてきた。
どこか、とても苦しそうな目で。

「オレが訊いてるのはそんなことじゃないって、わかってるんだろ……?」
「…わかんないよ」
「もう一度訊くよ。なんで会いに来るんだよ」
「別におかしいことじゃないじゃん」
「オレはそうは思わない」
「おかしくないよ。だって……絵里たちクラスメイトだったんだよ」
「…昔の話だろ」
「っ――、だけど…、今でも友達ではあるでしょ?」
「友達は弁当なんて持ってこないよ」
「そっ……、前は、食べてくれたじゃん」
「理由があったから…、な」

例えば。
夢の中でどこかへ墜ちる、その瞬間のように。
瞬時に鼓動が跳ね上がる。
そんな風に感じている。
435 :セシル :2007/11/25(日) 15:39

「じゃあ次からもう持ってこないよ。ね?」
「そうじゃない。なんで……」
「別にほら、深い意味なんかなかったんだよ? ただ…なにかしたかっただけ」
「だからなんでっ……、オレ亀井のことフッたろ。そう言った」
「わかってるよお。何度も言わないでよ。思い出しちゃうじゃんかあ」
「っ……ごめん」
「あたしも覚えてるよ」

こーたの目が「なにを?」ってそう言ってる。
そう、覚えてる。こーたが口にした言葉は。

「あのときこーたは一緒にいられないって言ったよね」
「ああ、言った」
「れいな、の事が気になって、だから一緒にいられないってことだったんでしょ?」
「……ああ」
「でもれいなは……」
「先輩なら信用できる」
「絵里もそう思う」

こーた少し哀しそうで、だからこそあたしは胸が痛んだ。
そんな顔させたいんじゃないのに……、そんな顔をさせたくないから。
だから……

「だからまたここに来たの」
「なん…」
「ほら、一人はやっぱさみしいじゃん? 絵里でもさあ、なんか気を紛らわせるくらいの相手にはなるかなって」

あたしはうまく笑えてるかなあ?
少しだけひきつっているようにも感じられるけれど、目の前にいるこーたの存在がそう認識する余裕もなくしてしまう。
こーたはなんとも言い難いって顔をして、言うべき言葉を探してるみたいに見える。
436 :セシル :2007/11/25(日) 15:40

「それともこーたは一人でいたい?」
「そうじゃない、けど……」

ゆっくりとそう話したこーたは俯いて。
なんだかとても苦しんでいるようだった。
そこから立ち直る力に、絵里ではなれないのかなって……

「亀井さ」
「なに?」
「もう、…来ないでくれよ」
「……なんでよお。いいじゃん別に」
「ヤなんだよ」

掠れそうな、少ししわがれた声だと思った。
場違いかもしれないけど、大丈夫かなって。
そんなことを思った自分がおかしいくらいに。

「亀井といると……」
「あっ、別にね、一緒にいるっていってもほら、好きだからとか、好きになってほしいとかっ
 そんなんじゃないんだよ? 別にこーたにどうしてほしいとか――」
「亀井っ」

掠れた、でも強い声。
あたしの言葉を遮って、吐き出すみたいに出された声。

「こーた…」
「亀井といると…思い出すから」
「え……?」
「だから、もう来るなよ」

しわがれた声は茨みたいに棘を持っていた。
心が痛いよ、こーた。

「ただ、顔見るのもダメなの? なにも望まない、そばにいるだけ」
「勘弁してくれよ」

とても小さな弱々しい声。
けれどその声はイヤになるくらいハッキリと耳に届いて。
そしていつまでも残って離れない。
それが最後の声だった。
437 :セシル :2007/11/25(日) 15:40



438 :匿名 :2007/11/25(日) 15:50

……すいませんでした。
生きてます。
ちゃんと終わらせますから、はい。

>>407-413
まだ待っててもらえてるでしょうか。
心底申し訳なく、それと同じくらい感謝しております。
439 :名無飼育さん :2007/11/26(月) 23:32
まだ待ってますよ。
って言うかよく戻ってきてくれました。
440 :名無飼育さん :2007/12/31(月) 16:52
本年もお疲れ様でした。
来年もよろしいお願いします。
お待ちしています。
441 :名無飼育さん :2008/05/20(火) 21:05
待ってますよ
442 :名無飼育さん :2008/11/22(土) 04:49
もうすぐ一年が過ぎてしまいますね
まだ待っています

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