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私はれいなを抱きしめていたい

1 :名無飼育さん :2005/10/01(土) 20:01
みんなれいなのことを何だと思ってるんだ!
れいなに愛を込めて書きます。
2 :名無飼育さん :2005/10/01(土) 20:02
半年ほど前のことだ。
れいなが高校生になったということで、真新しい制服を着て家にやって来た。
「この制服かわいいっちゃろ、この制服のためにこの高校受けたんだっちゃ」
れいなはそう言って私の前でモデルのように何度もくるくると回って見せた。
私は少しスカートが短過ぎやしないかと思ったが、そのことは指摘せずに
「かわいいね、よく似合ってるよ」とだけ言った。
れいなは「そうっちゃろー」と言ってニヒヒと笑った。

「でも下着の色は黒よりも白の方がいいよ、れいなちゃんには白の下着が良く似合うから」
「いやらしか、どこ見てるの?」
「そういう言い方は良くないな、いつものようにどこ見てるっちゃ?と言ってくれなきゃ」
「れいなは高校生になったけん、方言は慎むことにしたっちゃ」
「へえーそうなんだ、れいなちゃんはその訛りが良いのに」
「せからしか」
3 :名無飼育さん :2005/10/01(土) 20:02
私はソファーに腰掛けると「ところでれいなちゃん何飲む?オレンジジュース?」と尋ねた。
れいなは座卓の前の座布団にペタンと腰を下ろすと「コーヒーが良いっちゃ」と言うので、
砂糖とミルクをたっぷり入れたコーヒーを渡してやった。

「違うっちゃ、れいなはブラックが飲みたいっちゃ」
「どうして?れいなちゃんにはブラックは無理だよ、だって猫舌でしょう?」
「猫舌は関係無いっちゃ」

私は「そうかなあ」と呟いて、今度はゲル状になるぐらい濃いコーヒーを入れてやった。
割合的に言うと、お湯100mlにつきネスカフェゴールドブレンド50mgの濃いコーヒーだ。
れいなはそれを見て「なんかドロドロしてるっちゃ」と言ったが、
私が「それが本当のブラックコーヒーだよ、大人はこういうのを飲むのさ」と言うと、
「これはこれでなかなか美味ですわね」と言って顔をしかめしかめ全部飲んだ。
4 :名無飼育さん :2005/10/01(土) 20:03
「れいなちゃん、水欲しくない?」
「欲しいっちゃ」
「あげないけどね」
「田中さんはいじわるだっちゃ」
「え?今何て言った?」
「田中さんはいじわるだっちゃ」
「もう下の名前で呼んでくれないんだね」
「実はお父さんに、もうあんな男の家に行くのは止せって言われたんです」
「へえ、それは残念だな、でもこうして来てくれるからには、これからも来てくれるんでしょう?」
「もう親戚同士という付き合いでしか来れないっちゃ」
「そりゃあ実に残念だなあ、でも元々それ以上の付き合いなんかしたことないけどね」
「お父さんは何か勘違いしてるっちゃ」
「兄さんも勘違いしてるけど、れいなちゃんも何か勘違いしてると思うよ」
5 :名無飼育さん :2005/10/01(土) 20:03
私は席を立ってズボンのベルトを緩めた。
れいなは「な、何するつもりだっちゃ」と言って後退りをした。
私は「何もしないよ、ただちょっとズボンがきつくてね」と言ってジッパーを下ろした。
れいなは顔を背けた。私はズボンとシャツを脱いでパンツ一枚になると、ソファーに座り直した。
6 :名無飼育さん :2005/10/01(土) 20:04
「いや最近お腹が出てきてね、ズボンとかシャツとか前のサイズが合わなくなってしまったんだよ」
「だからって今脱がなくてもいいばい」
「そう言うなよ、なあれいなちゃん、こっち見ろよ」
「何だっちゃ」
「欲しいものがあったら叔父さんが買ってあげるよ」
「とりあえずその股間のふくらみをどうにかして欲しいっちゃ」
「それは無理だよ、切るわけにもいかんしね」
「切っても別にれいなは困らないっちゃ」
「ほら、何か欲しいものはないの?言ってごらん?これが欲しくないの?」
「そんなもん揺らさないで欲しいっちゃ、援助交際みたいだっちゃ」
「違うよ。これは叔父から姪への入学祝いプレゼントだ。何も遠慮することはないんだ。
 叔父さんがれいなちゃんを大人の女にしてあげよう、兄さんは何も分かっちゃいないんだから」
「そんなこと言われても困るばい、お父さんに怒られるっちゃ」

私は「兄さんは全く分からずやだなあ」と言うと、しばし考えた。
7 :名無飼育さん :2005/10/01(土) 20:04
「れいなちゃん、そういえば高校生になったらピアス開けるとか言ってたね」
「言ってたかも知れないっちゃ」
「ピアス買ってあげるよ、れいなちゃんによく似合う奴を」
「いらないっちゃ」
「どうして?」
「お父さんに怒られるばい」
「それはピアスを開けることに対して?それとも叔父さんがピアスを買ってあげることに対して?」
「両方だっちゃ」
「れいなちゃんも分からずやだなあ。ねえ、キスしようか」
「絶対嫌ばい、れいなはただ制服を見せに来ただけだっちゃ」
「それはれいなちゃんが叔父さんのことを好きだからだろう?」
「違うばい、お父さんに一応あいつにも見せに行ってやれって言われたからだっちゃ」
「なんてことだ、薄情だな兄さんもれいなちゃんも、叔父さんが何をしたっていうんだ」
「現に今セクハラしてるっちゃ」
「何言ってやがるこの淫乱メス豚め、こうしてやる」
8 :名無飼育さん :2005/10/01(土) 20:05
私はれいなを押し倒すと股を大きく開かせた。
れいなは「や、止めるっちゃ!」と叫んだが私はそんな言葉には耳を貸さない。
そしてれいなの膝を何度も指先でさすった。何度も何度もその膝を指先でさすった。

「やめるばい、気持ち悪か」
「なあれいなちゃん、嘘言うなよ、本当は気持ち良いんだろ、なあ」
「全然気持ち良くないっちゃ、こそばゆいだけっちゃ」
「それは素質があるよれいなちゃん、ねえ、今叔父さんはれいなちゃんのどこを触ってるのかな?」
「膝」
「はぁはぁはぁはぁ、も、もう一度言ってごらん?私はれいなちゃんのどこを触ってるのかな?」
「膝ばい」
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
「気持ち悪か」
9 :名無飼育さん :2005/10/01(土) 20:05
れいなは私の手を払ってすくっと立ち上がると門限5時だから帰るっちゃと言って帰った。
私はうんそれじゃあまたねはぁはぁはぁと言って手を振った。れいなが帰ったら途端に寂しくなって、
さっきまでれいなが座っていた座布団を拾い上げると、鼻にあてて思いきり息を吸ってみた。
意外にも大人の女のニオイがした。その座布団を抱きしめた。私はれいなを抱きしめていたい。


おわり
10 :名無飼育さん :2005/10/01(土) 20:06
タイトル入れるの忘れてた。
>>2-9 「大人の女」
11 :名無飼育さん :2005/10/01(土) 20:57
最高です。作者さんのれいなへの愛を感じました。
僕もこんな目に合うあんな目をしたれいなが大好きです
これからも楽しみにしてますです
12 :名無飼育さん :2005/10/02(日) 14:04
れいな好きな人に悪い人はいないって、れいなが言ってた
13 :名無飼育さん :2005/10/02(日) 14:05
「オシャレな女」
14 :名無飼育さん :2005/10/02(日) 14:05
れいなが「もっとオシャレになりたいっちゃ、みんなにヤンキーって馬鹿にされるっちゃ」
と言って私の袖にすがりついてさめざめと泣くので、れいなのために服を買いに行った。

「れいな、どうだこれなんか、最高にかわいいぞ」
「こんなん嫌だっちゃ」
「なんでだ、これのどこが嫌なんだ。フリフリだぞ、イケイケのノリノリだぞ、アンミラみたいだ。
 これをお前に着せて窓拭きをさせるのが私の夢だったんだ」
「絶対嫌だっちゃ」
「生意気を言うな、とりあえず着てみなさい」

れいなは渋々その服を受け取ると試着室へ入ろうとするので、私は「ちょっと待て」と引き止めると、
「わざわざ試着室へ入る必要はないよ、折角皆さんが見てくださってるんだから、ここで着替えなさい」
私は森高の私がオバさんになってもを歌いながら、れいなの服を脱がして着せ替えた。
ちょっとサイズが大き過ぎたのかれいなの胸が小さ過ぎるのか、胸の部分がやや貧相になってしまったが、
その分だけ背徳的な感じがして興奮した。
15 :名無飼育さん :2005/10/02(日) 14:05
「ほらどうだい、素敵じゃないか」
「著しく人権を侵害された気分だっちゃ」
「生意気を言うな、お前がオシャレになりたいって言い出したんじゃないか。
 自分の言葉に責任を持つのが人権だ。自由や権利ばかりを主張するのは甘ちゃんだぞ、れいな。
 私はれいなにはそんな人間にはなって欲しくないんだ、れいなには節度のある正しい人間になって欲しい」
「難しくてよくわからないっちゃ」
「分からないでいい、これは購入だ。サイズは胸以外丁度いいな?」
「スカートが短過ぎるっちゃ」
「そんなこと知ったことじゃない、スカートとスピーチは短ければ短いほどいいんだ」

私はれいなから服を剥ぎ取ると、それを店員に「これをキープ」と手渡し、次の試着へ移った。
16 :名無飼育さん :2005/10/02(日) 14:06
「じゃあ次はこれなんかどうだ」
「ただのブルマだっちゃ」
「そう、ただのブルマだ。正しくはブルマーと言う。しかしブルマーと一口に言ってもこれは上質のブルマーだ。
 このハイレグ具合と生地の薄さ、もうクロッチの染みまでスケスケだぞこの薄さは。履いて無いのと同じだ。
 しかしこの薄布一枚が大事なんだ。そして何よりこの色だ。紺色のブルマーはやはり男の夢だ」
「ブルマなんて外で着れないっちゃ」
「うるさい。スウェットの上下で外出するような女が何を言う」
「ブルマよりスウェットの方がましばい」
「れいな、私に歯向かうんだね?」
「そういうわけじゃなかと」
「じゃあ大人しく着なさい」

私はまたれいなにブルマーを着せようとしたのだが、気付くとれいなが下着姿だったので驚いた。
「れいな、なんで君は下着姿なんだい?みっともない。はやくこれを着なさい、極薄のブルマーだ」
私はれいなの左足を上げさせて、ブルマーを左足に通し、続いて右足も上げさせて右足にも通した。
そしてぐいぐいと股間に食い込むようにブルマーを上げ切ると、私は後ろから回ってれいなのお尻を見た。
私はれいなのような細過ぎる身体にはブルマーは似合わないかもしれないという一抹の不安を抱いていたのだが、
この足なんかは少し細過ぎる感じなのに、お尻の肉は意外と豊かでぷりんとしているのが、妙にエロチックだった。
17 :名無飼育さん :2005/10/02(日) 14:06
「素敵だ。最高だぞれいな。ちょいといいかな、一度ブルマーを下げさせてもらうよ」
「何でだっちゃ」
「こうするのが礼儀なんだ、ブルマーというのはこうするのが礼儀なんだ」
「そんな礼儀聞いたこと無いっちゃ」

私はれいなの言葉を無視して、ブルマーをずりずりと膝まで下げてそこで止めた。
そしてぐるぐるとれいなの周りを周りながら叫んだ。「最高だぞれいな!最高だ!」

「この極薄のブルマーが膝に丸まっている感じが最高だ!ちょっと左足だけブルマーから抜いてごらん」
「こうだっちゃ?」
「違うよ、それは僕のおちんちんだ」
「間違えたばい、こうだっちゃ?」
「違うよ、それは右足だよ、まあどっちでもいいんだけどね。いいじゃないか、れいな、最高じゃないか」
「ちっとも最高じゃないっちゃ、こんな格好じゃ外歩けんばい、さゆとえりにも自慢できんっちゃ」

れいなの口から聞き慣れない単語が飛び出したので私は少し動揺して、れいなの目の前で足を止めると、
その口元に耳を寄せた「何?なんだって?もう一度言ってごらん」
18 :名無飼育さん :2005/10/02(日) 14:06
「こうだっちゃ?」
「違うよ、それは僕のおちんちんだ」
「間違えたばい、こんな格好じゃさゆとえりに自慢できんっちゃ」
「なんだいそのさゆとえりっていうのは。サトエリの一種かい?それともサリエリかい?
 モーツアルトかい?ウルフギャングなのかい?ねえれいな、私に何か隠し事でもしてるのかい?」
「別に隠し事してるわけじゃないっちゃ、さゆとえりはれいなの友達ばい」
「嘘だろうれいな、仮に事実だとしてもそれは勘違いだよ。れいなを愛せるのは私しかいないんだから」
「そんなこと無いっちゃ、れいなはクラスの人気者なんだっちゃ」
「嘘だろうれいな、それは嘘だ」
「本当だっちゃ」
「嘘だよ、それは自己欺瞞だ」
「ジコギマン?何だっちゃ?」
「いや、そんなことはどうでもいい、もう一度尋ねるけど、本当に君には友達がいるのか」
「いるっちゃ、さゆとえりは友達だっちゃ」
「よし分かった、今からそのさゆとえりというのを呼んできなさい、説教してやる」
「何で説教する必要があるっちゃ?」
「れいなを愛せるのは私だけなんだ、私以外の人間がれいなを愛してるとしたら……私は……」
「私は?」
「れいな、結婚しよう」
「嫌ばい」
19 :名無飼育さん :2005/10/02(日) 14:07
私はれいなの左足に絡まっているブルマーを取ると、店員に「これもキープ」と手渡した。
そしてつくづくと下着姿のれいなを眺めてみた。れいなは私の大嫌いな真っ黒な下着を着けている。
あれほどれいなには白か水色の下着が似合うと言っているのに、れいなが一度として黒以外の下着を
着けているのを見たことがない。私はなんだか腹が立ってきた。

「れいな、君は一体どうしたいんだい?」
「どうもしたくないっちゃ」
「それは当たっているのだろうね。結婚はしたくないと言うし、
 その割には私の変態的な行為に付き合ってくれるし、でも友達はいるというし、
 君は実はあまり何も考えずに人生をただ刹那的に生きているのではないか?」
「その通りばい」
「なあれいな、結婚してくれよ」
「嫌ばい」
「どうしたら結婚してくれる?」
「どうしても嫌ばい」
「ねえ、そういうつれないこと言わずにさあ」
「嫌なものは嫌ばい」
20 :名無飼育さん :2005/10/02(日) 14:07
私はイライラして思わずれいなの頬を強く張った。
れいなは「ぶふっ」と言う変な音を立てた。メス豚っぽかった。

「もういい!このメス豚め!お前なんぞさゆとえりとかいう友達と地獄に落ちればいいんだ!」

私は怒って店を出た。店を出てしばらく歩いていると肩を叩かれたので、ふっれいな、かわいい奴め、
どうあっても私のことが好きなのだなと思って振り向くと、眉を釣り上げた店員に先ほどのメイド服と
ブルマーを購入させられた。一万五千円だった。

家に帰ると私はそのメイド服とブルマーをベッドの上に広げて、れいながこれを着ていた姿を思い出した。
胸の奥から何か熱いものが込み上げてきて、私はメイド服とブルマーに顔を埋めてワンワンと泣いた。
かすかなれいなの残り香が一層悲しかった。私は泣きながらメイド服を着て、ブルマーを頭に被った。
はぁはぁはぁ。そしてまた一層大きな声を張り上げて泣いた。泣き過ぎて頭の中が空っぽになったような感じがした。
私はれいなを抱きしめていたい。


おわり
21 :名無飼育さん :2005/10/02(日) 14:08
「禁じられた遊び」
22 :名無飼育さん :2005/10/02(日) 14:09
今日は祝日で朝から暇だったので、れいなとイケナイ遊びをすることにした。

「よしれいな。今から禁じられた遊びをするぞ」
「何だっちゃ?」
「禁じられた遊びだ。私はこの遊びを祖父から禁じられていたんだが、
 こんなに暇ならしょうがない。れいな、一緒に遊ぼう」
「あんまり気乗りがしないっちゃ」
「生意気を言うな、じゃあ何か他に良い暇つぶしの案でもあるのか?」
「別に無いばい」
「よしそれじゃあ遊ぶぞ、まずルールを説明するから良く聞きなさい」
「はいはい」
「気に入らないな、返事は一回でいいんだ」
「はい」
「ルールというのは簡単でな、私の指示に従って質問に答えればいいんだ。
 例えばこういう感じだ。れいな、ピザって10回言ってごらん」
23 :名無飼育さん :2005/10/02(日) 14:09
「……それって」
「文句を言わずにピザって10回言えばいいんだ。ほら、ピザって10回言ってごらん」
「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザ」
「おいれいな、一回足りないぞ、やり直しだ」
「そんなんどうでもよかばい」
「どうでも良くない、この回数が大事なんだ、さあもう一度。ピザって10回言ってごらん」
「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ」
「今度は一回多いぞ、君は数も数えられないのか?」
「ジョークだっちゃ」
「気の利かないジョークなんかやらずにさっさとちゃんと10回ピザって言えばいいんだ」
「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ」
「よし、今度はちゃんと言えたな。さて、ここは何だい?」
24 :名無飼育さん :2005/10/02(日) 14:10
「クリトリス」
「OH!そうだよ、良く言えたなれいな、君は見た目によらず偉い子だ。
 ルールは分かったな?じゃあ次はれいなが出題する番だ。私を楽しませてくれ」
「じゃあ、くるぶしって10回言って欲しいっちゃ」
「くるぶしくるぶしくるぶしくるぶしくるぶしくるぶしくるぶしくるぶしくるぶしくるぶし」
「ここは何だっちゃ?」
「それは私のおちんちんだ」
「正解ばい」

私はれいなを抱きしめていたい。


おわり
25 :名無飼育さん :2005/10/02(日) 14:11
リスペクトトゥーれいなの万華鏡&舌足らず
26 :名無飼育さん :2005/10/05(水) 00:01
「ラブ・ストーリーは突然に」
27 :名無飼育さん :2005/10/05(水) 00:02
その女子高生は変なイントネーションでおじさん私と遊ばない?と言って肩をすくめた。
私は足を止めてその子の顔をじっくりと見た。手放しでかわいいとは言えないが、
猫のようにくりっとした愛嬌のある目に妙に惹き込まれて、思わずいいよと応えた。
その子はやった!と言ってぴょこんと私の腕に飛びつくと、上目遣いに僕の目を見て、
じゃあコーヒーでも飲みに行こうよと、また変なイントネーションで囁いた。
私はその子の目を見つめ返して、あぁそうだねそうしようそうしようと応えた。
どんなに目を合わせても目が合わないのが不思議だったが、
それが魅力的なのかも知れないと思った。
私とその子は道すがら色んな話をした。
28 :名無飼育さん :2005/10/05(水) 00:02
「君の名前はなんていうの?」
「田中れいな」
「れいなか、いい名前だね。女の子の三文字の名前ってのはいいものだよ、なつみ、ひとみ、のぞみ、ゆうこ……」
「おじさんの名前は?」
「私?私はの名前は、そうだな、近藤さん」
「近藤さん?下の名前は?」
「ジョニー」
「嘘、つまらないんだからそんなジョーク」
「嘘じゃないよ、私はこう見えてもロシア人とスペイン人のクオーターでね、祖父は日本海軍の大将だったんだ」
「ウソウソ」
「失敬だな、いきなり人を呼びとめておいてウソツキ扱いかい、私の祖父はかの海軍大将加藤友三郎だぞ」
「だってウソツキなんだもん」
「そういえばさっきからちょっとイントネーション変だよね、どこ出身なの?」
「福岡」
「ああやっぱり、道産子っぽいと思ったよ」
「道産子?道産子は北海道じゃないっちゃ?」
「ジョークさ、面白くなかったかな?」
29 :名無飼育さん :2005/10/05(水) 00:02
「つまらんばい」
「それはあれかな、薩摩隼人とかいう奴かな」
「よくわかんない」
「そうだろうね、私の分からないことが君みたいなバカな女子高生に分かってたまるもんか!」
「君じゃなくてれいなって呼んで欲しいっちゃ」
「そうかれいな、れいなは高校生だろう?学校はどうしたの?」
「おじさんこそ仕事はどうしたっちゃ?」
「おじさんじゃなくてジョニーさんと呼んで欲しいね、これでも私は25なんだ」
「ジョニーさんの仕事は?」
「こうしてることが仕事さ、私は警官なんだ、不良高校生を補導する……」
「もうウソはいいっちゃ、これ以上ウソつくならここでお別ればい」
「ジョークだよ、ウソとジョークは違うんだよ。ジョークってのはユーモアでね、イギリスでは……」
「スタバでいいっちゃろ?」
「ん?ああ。スタバでいいよ」
30 :名無飼育さん :2005/10/05(水) 00:03
スタバに入ると、私はとりあえずコーヒーを下さいと言ったのだが、
店員さんが困った顔をしたので、私も困った顔をした。
れいなはカフェラテを下さいと言った。

「実は私はスタバに初めて入ったんだが、コーヒーってのは実にたくさんの種類があるんだな」
「信じられないっちゃ、ジョニーさんそれでも25?」
「ああ、実はまだこっちに来て日が浅いから日本のことはよく分からないんだ」

れいなは「ふーん」と言ってカフェラテを啜った。
私もれいなの真似をして注文したカフェラテを啜ってみた。
想像よりも苦くて私は思わず顔をしかめたが、れいなは案外平気そうだった。
31 :名無飼育さん :2005/10/05(水) 00:03
「苦くないの?」
「れいなは大人だからこれが丁度いいっちゃ」
「へえ。ちょっと飲ませてよ」
「ダメばい」
「いいじゃん、ちょっと」
「あっ、ダメっ」
「なんだよ砂糖入れてるじゃないか、コレ」
「自分の身の丈を知るのが大人というもんだっちゃ」
「知ったようなことを言うな!バカのくせに!」
「れいなはバカじゃないっちゃ、ジョニーさんの方がバカだっちゃ」
「なんだと!よしれいな、ちょっと表に出ろ、その身体で分からせてやる」
「嫌だっちゃ、れいなはコーヒー一杯で身体を売るほど安い女じゃないっちゃ」
「何をバカなことを!ここの代金はれいなが払うんだ。ほら!さっさと払え!」
「信じられんばい」
32 :名無飼育さん :2005/10/05(水) 00:04
れいなに代金を払わせて、私は先に店を出た。
タバコを吸って待っていたのだが、れいなはなかなか出てこない。
何をしているんだかと思って一寸店内を覗いてみると、れいなが赤い顔をして必死に何かを拾っている。
大方サイフをひっくり返して小銭でも落したのだろうなと思って、それをニヤニヤしながら見ていると、
タバコを一本吸い終わった。二本目に火を付けようとしたところでれいなが出てきた。
れいなが笑顔でコーヒー美味しかったねと言うので、私もああそうだったねと言った。
33 :名無飼育さん :2005/10/05(水) 00:05
それから公園に行った。平日の公園というのは実に牧歌的だった。
じっとベンチに座ってハトを見つめたまま、猫が秋の心地良い日差しに身を任せていたり、
リストラされたのを家族に隠しているようなスーツ姿の中年男がハトにエサをやっていたりした。
れいなはそれを指差すとああいう生き方がしたいと言うので、私はそりゃ止めた方がいいよと言った。

「どうしてだっちゃ?猫って一日中ああして日に当たって、楽そうじゃん」
「ああ猫のことか」
「何のことだと思ったっちゃ?」
「いや別に、知らなくてもいいことだよ」
「気になるばい」
「気にしなくてもいいさ、そんなことよりお腹が空かないか?」
「さっきコーヒー飲んだばっかりだっちゃ」
「コーヒーじゃ腹の足しにはならないよ、どこかファミレスにでも行こう」
「そのお金はれいなが払うん?」

私はHAHAHAと笑ってもちろんだろうと言った。
れいなは仕方がないっちゃねと言ってAHAHAと笑った。
れいなのその笑顔を見てると唐突に思った。私はれいなを抱きしめていたい。


おわり
34 :名無飼育さん :2005/10/16(日) 22:18
「家猫娘」
35 :名無飼育さん :2005/10/16(日) 22:23
れいなは少し頭のおかしい女の子だった。
屋根裏をトトトトと走り回る小動物の足音に反応して舌なめずりをしたり、
「おいれいな」と呼びかけると「にゃん?」と応えたりすることが多々あった。
私は別にそのことを気にしてはいなかったけれど、れいな自身は少し気にしていた。

「れいなは時々自分が猫じゃないかって思うと」

そう言ってれいなは鼻をくしゅくしゅさせて笑うのが常だったのだが、
私はそのれいなの表情が子猫のそれに似ているのを良く知っていたから、
「そうだね、確かにそんな感じがすることもあるよね、でもれいなはれいなさ」
と言って、鼻で笑ってみせていた。そうしないとれいなは不安がって、
朝まで私の部屋の網戸をガリガリやって外へ出せにゃーにゃーと鳴くのだから。
36 :名無飼育さん :2005/10/16(日) 22:24
私は決してれいなを放し飼いにしようとは思わなかった。
れいなは家猫娘の箱入り娘なので、決して外に出してはいけない、
私はそう考えていた。外は何かと誘惑が多いものだ。
膝上35cmのミニスカートだったり、漆黒のブラジャーとパンティだったり、
得体の知れない若い男のそそり立った男根であったり、チラツク4,5枚の夏目漱石と、
脂ぎった親父のスケベ顔であったり、もっともそれは私の過去の姿なのだが、
今思い出すとぞっとしないものだ。

こんなイタイケナ少女を4000円で買うなんてどうかしている。
私はそう思って過去の自分を否定しつつ、れいなの様子を窺うのだが、
れいなは何も知らないような顔をしてぽかんと窓の外の暖かそうな日差しを眺めている。
37 :名無飼育さん :2005/10/16(日) 22:26
「れいな、君は外へ出たいのかい?」

私は自分の思いとは裏腹にそう尋ねてしまう。もちろんれいなは「にゃん」と答えるだろう。
れいなはそういう女の子だ。元々は茶髪で、真っ黒な生地にドクロ模様という悪趣味な下着を
好んで身につけるような気狂い女子高生なのだから、いくら私がここまでれいなを家猫娘に
仕立て上げたと言っても、人間の本来の性質はなかなかに変わるものではない。
もっとも、れいなは猫だが。

私がそう思って黙ってれいなの目を見つめていると、れいなの目は一瞬ギラリと太陽光を反射した。
私は思わず目を瞑る。そして次に目を開けた瞬間には、れいなは私の視界から消えているのだろう、
そしてもちろんそれは私とれいなとの永遠の別れを意味するのだろうなどと漠然と考え、
それを残念にも思ったし、それが本来的にはれいなのためではないのかとも思った。
れいなが幸せであれば、それでいいではないか。
38 :名無飼育さん :2005/10/16(日) 22:27
「そんなことないっちゃ、れいなは家が好きだっちゃ」

しかしれいなはそれだけ言うと、ヒラリと身のこなしも軽やかに真っ白なソファーに寝転がって、
くるりんと円くなった。目を見開いてそれを見た私は、れいなはまるで本物の猫のようだと思った。
いや、猫のような犬だと思った。

真っ白なソファーに、れいなの白くて細すぎる足が映える。
私がれいなを買う以前には、この足で何人の男の性欲を引き受けて来たのだろう。
私がその足をすっと撫でた。れいなは本物の猫のように「にゃんにゃん」と鳴いた。
続いてその白くてニシキヘビのようにフレキシブルな腕をさらりと撫でた。
れいなは「うっふんとろとろ」と吐く息も荒く鳴いた。私は感極まって、
「にゃんにゃん!れいなちゃんにゃんにゃん!」と鳴いた。
れいなも「にゃんにゃん」と鳴いた。OK、準備は全て整った。
39 :名無飼育さん :2005/10/16(日) 22:28
私はれいなの肩に手を掛けると、キャミソールの肩紐をそっとズラし、
もう一方の手でれいなのホットパンツに手を掛けた。
一緒にパンティを下ろしてしまわないように、細心の注意を指先にこめた。
私は唇をれいなの耳元へ近づけ、そして、私はれいなを抱きしめていたい。


おわり
40 :名無飼育さん :2005/10/23(日) 20:49
「ショッピング♪」
41 :名無飼育さん :2005/10/23(日) 20:50
れいなとコンビニに行った。
私はコンビニに入るとすぐにワンカップとつまみをカゴに入れた。
れいなはぶらぶらと雑誌コーナーに行ってヤンジャンを手に取って戻したり、
お菓子コーナーに行って竹の子の里を手に取って戻したりして、
一向に何を買うのだかはっきりしない。

「れいなは何も買わないのか?」
「そんなことないと」
「じゃあさっさと何買うか決めなさい」
「れいなのことは放っておいて欲しいっちゃ」
「そんな口のきき方は無いだろう、買ってやらないぞ」
「自分で買うからいいっちゃ」
「そんなこと言っても金を持ってないだろう、君は」
「じゃあ1000円貸して欲しか」
「いいよそんなことしなくたって、私のカゴに一緒に入れればいいんだ」
「れいなにはれいななりのプライドがあると」
「分かった分かった、じゃあ1000円でいいんだな?」
「それで十分だっちゃ、いずれ返すばい」
「まあアテにはしてないよ」
42 :名無飼育さん :2005/10/23(日) 20:50
私はれいなに1000円を渡して、先に自分の会計を済ませるとコンビニの外でれいなを待った。
それにしてもここ2,3日で一気に冷え込んだ。
もうそろそろれいなに秋冬物の服を買ってやらなくてはいけない。
まさか一年中極薄のブルマーというわけにもいかないし、
メイド服ならあとしばらく、秋の間は持つかも知れないが、
ミニスカやブルマーばかりを着させてれいなが風邪を引いたりしてしまうと、
れいなの親御さんに合わせる顔が無い。
もっともれいなは風邪なんか引かない丈夫な子だから大丈夫だろうが、念には念を、
2度あることは3度ある、仏の顔も3度まで、里田の耳に念仏、なっちに真珠、れいなに小判。
そういうことを考えていると、しばらく経ってれいなが満足そうにコンビニから出てきた。
43 :名無飼育さん :2005/10/23(日) 20:51
「この1000円はいずれ必ず返すばい」
「いいよそんなことは、ところで何を買ったんだい?」
「秘密だっちゃ」
「私とれいなとの間に隠し事なんて不必要だろう?」
「お菓子を買ったばい」
「ああそう。それはよかったね、よかったよかった」
「嬉しか」

家に戻るとすぐ、れいなはコンビニのビニール袋からガサガサとトッポを1箱取り出して、
それを大事そうに食べた。私はれいなが嬉しそうにトッポを食べている顔を見ながら、
ワンカップを片手にチーズちくわを食べた。れいなの笑顔を見ながら飲む酒は美味かった。
44 :名無飼育さん :2005/10/23(日) 20:52
れいなはトッポを1箱食べ終えると、もう眠かと言ってそのままソファーでうとうと寝てしまった。
私はちょっと気になって、れいなの抱えているビニール袋の中身をチラリと覗いてみた。
トッポがもう1箱と、携帯用のBanが入っていた。

私はそのビニール袋の中にコンドームを1箱そっと入れると、
寒そうに強張っているれいなの肩に毛布を掛けてやった。


おわり
45 :名無飼育さん :2005/12/12(月) 05:37
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
46 :名無飼育さん :2005/12/25(日) 02:49
クリスマスにつき、たまにはさゆみを抱きしめてみたい。
47 :名無飼育さん :2005/12/25(日) 02:49
「やんぬるかな」
48 :名無飼育さん :2005/12/25(日) 02:50
圧迫感を感じて目を覚ますと、さゆみが腹の上に乗っかって、私の顔をじっと見つめていた。
「何してんの?」と訊くと、「見てたの」と答えていつもの調子でにっこりと笑った。私は追及する。

「何を?」
「顔を」
「楽しい?」
「別にー」
「ならやめればいい」

さゆみを腹の上から払いのけようとしたのだが、彼女は断固として動かない。
49 :名無飼育さん :2005/12/25(日) 02:52
「何がしたいんだ?」
「別に」
「ああそう、でも邪魔だからどいてよ」
「イヤ」
「わからずやだな」
「そう?」
「わからずやだ、この白痴」
「違うもん、さゆは白痴なんかじゃない」

私は答えの分かっている問いを投げかける。「じゃあなんだよ」
さゆみはまたにっこりと笑って言う。「さゆは天使なの」
50 :名無飼育さん :2005/12/25(日) 02:53
ああそうですかと私は思い、嘆息。
それから力任せにさゆみをどけて、小便を垂れ、顔を洗い、歯を磨いていると、
さゆみが台所の方で何やら不穏な動きを見せるので「おーい」と声を掛けると、
「なーに?」と剥き立てのゆで卵のような声が返ってくる。

「何やってんだ?」
「ご飯をね、作ってるの」
「そんなんできんだろ、お前に」
「できるもん、一人でできるもん」
「やめてくれ、片付けるのは私だぞ」
「さゆがちゃんと片付けるもん」
「ああそうかい、じゃあ勝手にしてくれ」
「卵はスクランブルエッグがいい?それとも目玉焼きがいい?それともターンオーバー?」
「何だ、ターンオーバーって」
「ターンオーバーっていうのはね、こう」

さゆみは手振りで伝えようとしているのだろうが、鏡を見ながら歯を磨いている私には
その手振りが見えない。よってさゆみが台所で何をしているのか全然分からない。
51 :名無飼育さん :2005/12/25(日) 02:54
「見えないよ、さゆ」
「見えるでしょ、見てよちゃんと」
「無理だよ、今歯磨いてるんだから」
「歯磨きなんていつでもできるから、こっちに来てちゃんと見てみなさい」

さゆみの命令に従って私は歯磨きを中断し、台所へ向った。
さゆみは台所で空っぽのフライパンを持って「ターンオーバーっていうのはね、こう」
と言って、手首でこねくりかえすようにしてフライパンを上下左右させた。
私はやっぱりよくわからんと思いながら「じゃあターンオーバーでよろしく」
さゆみは「うん分かった、楽しみにしててね」と笑顔になると、
フライパンにサラダ油をたっぷりと入れては戻し、入れては戻し。50分間。
私はそんなさゆみを見てやんぬるかなと思い、このまま時が過ぎて行くのを、
ただただ怠惰に見守ることしかできない。また嘆息。
52 :名無飼育さん :2005/12/25(日) 02:55
ぼんやりとテレビを見ていると今日はクリスマスなのだと言う。
すると昨日はイブだったらしい。私はそんなことちっとも知らなかった。
「さゆ、今日はクリスマスらしいよ。そんでもって昨日はイブだったらしい」
私は未だフライパンにサラダ油を入れたり戻したりしているさゆみにそう声を掛ける。
さゆみは不服そうに「そんなこと知ってるもん」きっと唇を尖らせ、頬を膨らませているのだろう。
油のパシャッとこぼれる音が聞こえた。
53 :名無飼育さん :2005/12/25(日) 02:56
「へえ、もの知りだなさゆは、白痴のくせに」
「ねえ、気持ちいいことしよっか」
「何?」
「キモチイイコト、しない?」
「何言ってんだお前」

振り向くと、さゆはいつもの笑顔で裸体。私は動揺。

「何してんだよお前、そういうのじゃないだろ、私とお前は」
「そういうのじゃないって、じゃあどういうのなの?」
「それはまあ、保護者と被保護者というか」
「知らないの、そんなの知らない」
54 :名無飼育さん :2005/12/25(日) 02:57
さゆみは嫌々するように首を振ると私に抱きつく。
私は腹の下がカッと熱くなって、動悸がした。
さゆみは「気持ちいい?」と上目遣い、いつもの笑顔で、私は小憎らしくなった。
「馬鹿!」と言ってさゆみを引き離すと、その頬を張った。
力が入らず、ペチッと弱々しい音が響いた。笑顔でさゆは言う。

「ねぇ、気持ちいい?」

私は力が入らなくなって腰を落した。そしてさゆみを見上げる。
下から見上げるさゆみは、その均整のとれた美しさ故に、恐ろしさを感じた。

「さゆみに包丁で刺されて気持ちいい?」

私はさゆみから目を背け、窓の外は暁。
今日が昨日なのか明日なのかわからなくなった。


おわり
55 :名無飼育さん :2005/12/25(日) 03:01
狼の「从*・ 。.・)<ねぇ、気持ちいい?」スレよりアイデアを拝借、どうもありがとう
56 :天使 :2006/08/07(月) 04:30
よければ更新しませんか?
57 :名無飼育さん :2007/07/01(日) 23:38
妄想に逃げねーで、現実の女抱けよ!
58 :名無飼育さん :2007/07/02(月) 20:12
>>57
なんだお前、世間知らずな奴だな。
59 :名無飼育さん :2007/08/10(金) 07:31
まだこのスレがあったことにびっくりした
60 :名無飼育さん :2007/08/10(金) 07:32
「海」
61 :名無飼育さん :2007/08/10(金) 07:32
私はれいなと海にいた。れいなには新しい水着を買ってやった。
れいなは別段に嬉しそうな顔もせずに「ありがとう」と言ったので、
私は努めて落胆した表情を見せずに「どういたしまして」と言った。
そこで笑った。面白くもなければ嬉しくもなかったが笑ってみた。

れいなは私の買ったサイズの合わないスクール水着を健気に着ては、
「ちょっときつい」と文句を言ったが、私はとりあわずに「本当に似合うよ」
と言って頭を撫でた。れいなは気持ちよさそうに目を閉じて、浜辺へ駆けた。
62 :名無飼育さん :2007/08/10(金) 07:32
寄せては返す波にれいなはじゃれるようにして遊んだ。
その姿は子猫が何かにじゃれている様によく似ていた。
違う点といえば、猫は本当に獲物を捕まえようとじゃれているのに対して、
れいなは波を決して捕まえようとはしていないところにあった。
いや、もしかしたられいなは本当に波を捕まえようとしているのかもしれないが、
それは私には分からない。私が「れいな、楽しいかい」と声を掛けると、
聞いているのかいないのかれいなの楽しそうな声が返ってきた。
63 :名無飼育さん :2007/08/10(金) 07:33
一際大きな波が来た。れいなはそのまま、波に包まれた。
私は思わず立ってれいなの傍に走り寄ったがそこには何もなかった。
残っているものといえば、れいなが波に包まれたその光景と、
その一瞬にれいなの顔に浮かんだ引きつった笑顔だった。
足元から砂を奪っていく波を、私は見つめ、砂を掬った。
れいなは波を捕まえられたのだろうか、ということを考えた。
私はれいなを、れいなの掴んだ波と、それを産み出した海と共に、抱きしめていたい。


おわり
64 :名無飼育さん :2007/08/10(金) 07:57
「コミュニケーション」
65 :名無飼育さん :2007/08/10(金) 07:57
れいなはうつぶせになって、カールを食べながらキャンキャンを読んでいた。
私はそれを見ながら酒を酌んだ。別に何が楽しいというわけではないが、
ぼんやりれいなの白い足や身体の割にしっかりとした尻を見ているのが好きだった。
れいなはカールを食べる手を止めると、鼻糞をほじった。それはそれはぐいぐいと、
たくましく鼻糞をほじった。私は酒を飲む手を止めて、その姿に見入った。
そしてその鼻糞を食べたいと思った。猛烈に食べたいと思った。
私は「れいな、ちょっとそれ」と声をかけ口をあんぐりと開けた。
れいなはそれを見てコクリと頷くと、鼻糞をポイッと捨てて、
カールを私の口に投げた。久しぶりに食べるカールは美味しく、
これはこれとして嬉しかったが、もどかしいやり切れなさを感じた。
私はれいなを抱きしめていたい。


おわり
66 :名無飼育さん :2009/04/16(木) 01:00
「ショートホープ」
67 :名無飼育さん :2009/04/16(木) 01:01
れいなが股間をグリグリしながら切ない吐息をついているので、
私は一瞬ギョッとしたのだったが、それはそれとして貴重なものを見た、
という気持ちになってしばらく観察を続けていると「あ、凄い反撃っちゃ」
とかちょっとよく意味の通らないことをぼそぼそ呟くので不安になった。

「どうかしたかれいな?」
「あ、それ以上激しくしたられいなおかしくなるけんあぅあああ」
「れいな、大丈夫か?」
「負けてしまったと」
「何に?」
「己自身に」

そうかっこよくキメるとれいなはぎこちない仕草でタバコを取り出し、
火をつけようとして「あれ?着かんと?」と呟くので、
「れいな、タバコってのは口に加えて息を吸わなきゃ火つかないんだよ」
「それは知らんかったばい」と照れて赤くなった。
れいなの吹き出すタバコの煙の香りはほろ苦く、オヤジ臭い。
「ショートホープ?」「ショートホープ」という会話に、
ぎこちなさと、照れと、憧れと、達成感が滲んでいた。
一人前に目を細めてタバコを吸うれいなの姿を見て、
あの頃からよほど時間が経ってしまったんだなと思ったけれども、
「さゆがね、えりがね」
と遠い目をして絶望と希望とがない交ぜになったあの視線上、
ショートホープが更に短くなるので、私はれいなを抱きしめていたい。

おわり
68 :名無飼育さん :2009/04/16(木) 01:02
れいなの万華鏡更新記念リスペクト。
69 :にーじー :2009/04/30(木) 00:12
めちゃめちゃ面白い。
展開が唐突すぎて癖になります。
70 :名無飼育さん :2009/05/31(日) 08:15
ありがとうありがとう、読んでくれてる人がいるんだね。よかったねれいな。
71 :名無飼育さん :2009/05/31(日) 08:18
「存在と体臭」
72 :名無飼育さん :2009/05/31(日) 08:19
れいなが脱ぎ散らかした服を手に取ってじっと眺めていると、
どんな匂いがするのだろうと思うに至り、ついつい鼻先に押し付け、
思い切り息を吸い込んだら酷い香水の臭いで眩暈がした。
さすがに靴下まで香水の臭いってことはないだろうと思い、
靴下の先端、最も臭いの凝縮しているであろう部分に鼻を押し当て、
さあいよいよ臭いを嗅いでやるぞ思い切り嗅いでやるぞと意気込んだ所を
れいなに見られた。

「何をしてるばい、この変態」
「いや違うんだよ」
「何が違うっていうんだっちゃ」
「確認だよ確認、ほら健康管理。言うよねー」
「猿真似はつまらんばい、さようなら」
73 :名無飼育さん :2009/05/31(日) 08:19
れいなはそう言って部屋を飛び出した。
れいなの後を追うべきだ、直感でそう感じはしたのだけれども、
とりあえず靴下の臭いが気になって仕方がなかったので、
それはそれとして、靴下の臭いを改めて嗅ぐことに集中した。
納豆、とまでは言わないが若干茹でた空豆の臭いがしたので私は安心し、
「れいな!」と力の限り叫んでかられいなを追って部屋を飛び出した。

部屋を飛び出したのはいいもののれいながどこへ行ったのやら皆目見当がつかない。
もしかするとさゆとかえりとかいう「友達」の所へ行ってしまったのかと、
一瞬思ったけれども、れいなに限ってそんなことはあるまいあの性格ブスと思い直し、
とりあえず部屋に戻って、もう一度靴下の臭いを嗅いだ。癖になる臭いだった。
れいなは居なくても、しばらくの間はこの靴下の臭いだけで、
私は三度三度の食事を満足に取り、何不自由なく生きていくことができる。
74 :名無飼育さん :2009/05/31(日) 08:19
しばらくれいなの靴下をいじくり回していると、この靴下はどうやら最近流行の
ニーソックス、いわゆるニーソと呼ばれるものであるということが分かり始め、
丁度膝裏にあたる部分の臭いも足先の臭いとはまた別種の趣のある臭いである、
ということが知れ、靴下というのは深いものだなと思ったのであったが、
この靴下には決定的に何かが足りない。足りないのだ。れいなが足りない。
私の頭の中にあるれいなはこんな靴下のようなれいなのヌケガラによって補完されうるような、
そんなちっぽけな存在ではないのである。そうなのである。れいなが足りない。
れいなれいなれいなれいな。ああれいな。牛丼食べたい。

私は慌てて洗濯籠へ走り、れいなの洗濯物を片っ端から取り出し、
それが3日分しか無いことに絶望し、ベランダに揺れるれいなの服を見て後悔し、
とりあえず頭かられいなの洗濯物に突っ込んでみたのだがれいなが足りない。
そこにはれいなの残した臭いはあっても実存がない!れいなが足りないのだ!決定的に!
そもそも3日前の洗濯物は変にすっぱい臭いがする!
75 :名無飼育さん :2009/05/31(日) 08:20
「ああれいな!一体どこへ行ったんだ!帰って来いれいな!」
「なんね?」
「ああれいな!どこへ行っていたんだいれいな!
 もう帰ってこないかと思ったじゃないか!この性格ブス!斜視!歯覚過敏!」
「忘れもん取りに来ただけとよ」
「うるさいうるさい!バカ!クンニリングス!」

私は発作的にれいなに抱きついた。れいなは激しく抵抗したが、私の胸の中で暴れる
その身体感覚たるや!れいなの髪から香るハーバルエッセンスの匂いたるや!
れいなは上目遣いで物凄い目付きをしながら「離すっちゃ!くさいっちゃ!」と
怒鳴ったけれども、その音声が私の胸板と鼓膜に響く官能的な微振動たるや!
76 :名無飼育さん :2009/05/31(日) 08:20
「くさいとはどういうことだいれいな」
「風呂に入れ、ということだっちゃ」
「違うなれいな、君は分かっていないよ、風呂には入らない、いや入る必要がない。
 くさいのこそ美だ。官能だ。生き物のあるがままの姿だ。そして、私の!実存だ!」
「そんなことはないっちゃ」
「そんなことはなくないんだよれいな」
「そんなことはなくなくないんだっちゃ」
「頭の空っぽな女子高生みたいな言葉遣いをするんじゃない!」
「申し訳ない」
「分かればいいんだよれいな、じゃあ一緒にお風呂に入ろうか」
「それは嫌だっちゃ」
「言うよねー」

私はれいなを抱きしめていたい。

おわり
77 :名無飼育さん :2009/05/31(日) 08:22
タイトルはマルティン・ハイデッガーの『存在と時間』から拝借しました。
インテリジェンスでしょう。
78 :ふざけんなよーすけ :2009/06/11(木) 21:54
れいなの事を何だと思ってるんだ!だと?テメェが何だと思ってんだ?れいなが服を脱ぎ散らかす訳がないだろ?れいなはそんなに甘くネェーZeしかも、くだらない妄想してんじゃねぇ!馬鹿が!二度と書くなよ、このアホんだらぁ!
79 :名無飼育さん :2009/06/14(日) 02:06
最後の「言うよねー」が妙に面白いです
80 :ふざけんなよーすけ :2009/06/17(水) 05:06
言うよねー何か言わねぇだろーが!れいなはなぁ!そんなに馬鹿みたいな喋り方じゃねぇZo!
81 :私は私を抱きしめていたい :2009/07/10(金) 17:15
 唐突ですけれど、スレッドの中におけるレスというのは自分語り・解説などというのはもってのほかで、なるべく簡潔であればあるほどよく、それによって小説自体が際立つ様がクールなのだカッコイイというような風潮が昔はあったように思うし、もしかしたら今もあるのかもしれず無いのかもしれないが、僕も例に漏れずシコシコと話を書いては飼育の中いろんな所に投下して自分の饒舌さを押し込めつつ一喜一憂、「あの人の書く話は面白い」みたいなラベリングに憧れを抱きつつも決してそうはなれない反動からもっぱらそのようなありよう全体を敵視して俺はクールなのだカッコイイのだと無理矢理納得していたのだけれども、歳をとるにつれて単純に自分が面白ければいいんじゃないかなという気持ちになり、そもそも娘。小説なんてものは娘。のキャラクターを借りた自分語りに他ならずそれは自分が面白いから書くのであって、そしてそれをほんのちょっとでもいいから誰かに共感されたいというかつまりは僕を認めてよ!という大変現実的に切迫した心の叫びであって、その痛々しさをにやにやしながら見つめている人はそれはそれで面白いという相互にプラスなものであったように思うのに、小説とかいう奇妙な形態に囚われてしまったせいで表層さえ取り繕えばそれなりになんだか面白くなってしまうというのが問題で、愛がなければもう全くもって書いてはいけないというかもちろん書いてもいいのだけれどそれは楽しいのかい?あらゆる娘。小説の読者はもうその時点で必然的に作者なのであって、例えばれいなの万華鏡を読んでれいなやさゆやえりりんの顔や身振りや空気感を頭の中で想像して感じ取れる時点で、あなたは妄想を読んでいるのではなくてしっかりと自分で妄想を膨らましているのですよ。何が言いたいのか、と言われると僕は何も言えないし全てのことを言い繕いたいというメランコリックな現状に目下立たされているわけなのだけれども、「れいなの事を何だと思ってるんだ!だと?テメェが何だと思ってんだ?」という問いはもう驚くほどにスルドイなあ。みんなしてれいなのことを斜視だなんだといじめるけれども、そのいじめられ方が大変愛おしくて、だって考えてもみたらいいんだが、れいなかわいいねかわいいねという話とれいなの身体的特徴をひたすらつついていじめてちょっといじけるれいなとかもしかしたら超然としてそれがどうしたみたいな態度を取るれいなとか考えるにつけそっちの方が断然かわいいじゃないですか。僕は現状としてれいなにセクハラをし、そのセクハラに毅然とした態度で臨んでくるれいなのことをかわいい愛おしい抱きしめたいと思っているのでこれを書いているわけです。服を脱ぎ散らかすわけないとか言いますけれどもね、僕だって僕のお父さんだって服を脱ぎ散らかすのにれいなが服を脱ぎ散らかさないわけがないと思う。もちろんれいなが服を脱ぎ散らかさない!ちゃんと洗濯籠に畳んでいれる!という想像も「どうせ洗濯してしまうのになんで畳んでしまうんだ」という単純な滑稽さと、神妙な顔をして正座をして自分の脱いだパンティとかスクール水着を畳んでいるれいな、どうしよう大変かわいい!僕はどっちのれいなでもいいと思います!くだらない妄想ということに関してはもう正にその通りで、でもれいなが服を脱ぎ散らかすわけがないというのもくだらない妄想でしかないので、その点で僕とあなたは目下相互にプラスな関係にあると思うのですけれどどうなんでしょうか。馬鹿が!とかいう罵倒は結構好きです。お前の方こそ馬鹿だ!結構ちゃんと読んでるじゃねえか!二度と書くなと言われても僕はこれが楽しいので書き続けますよ、あなたも黒板で書いてくれると僕は大変うれしい。黒板はエロに特化した板だと思われがちだけれども、潜在的に男と女というメランコリーを含んでいる点でどの板よりも面白いと僕は勝手に思っているので、もっぱら読み専とかと言われる方々は黒板で妄想を書き連ねればいいんだよ。ブログで細々とというのも実にクールでいいけれども、折角楽しめる題材と場所がこんなに整えられているのだからもっとみんなで楽しくやったらいいんじゃないかと僕は昨晩寝る前に思いました。「言うよねー」という台詞はあと5年経ったら抱腹絶倒なぐらい面白いんじゃないかなと僕は思います。ありがとうありがとうこのスレを読んでくれている人全てにありがとう。
82 :私は私を抱きしめていたい :2009/07/10(金) 17:31
 あ、だから言いたいことはですね。そもそもスレッド形式で誰にでも投稿可能な形で連載されている小説というか話に、潜在的作者である読者の方々は苦情であれ感想であれただの罵倒であれ今日あった面白いことであれ腹が立ったことであれどんどんとレスを付けるべきであって、これは黒板でなくても掲示板で連載されているものなら全部そうだと思うのですけれど、スレッドはそのタイトルをつけた人のものではないわけですから、正確に言うなら管理人のものなのだけども、そんなことはまあいいとして、僕が一番言いたいのはそこのところですね。だから案内板に小説感想スレなんていらないのです。必要だとすれば過去ログに行ってしまったものについて話したい時だけでしょう。連載真っ盛りのものに関してはもうそのスレッドの中で感想をやりとりしたって別にいいと思うのですね。下手したらスレッドの乗っ取りなんてこともあったら楽しいですよね。もちろんそれを嫌がる人もいるのでしょうけれども、掲示板連載形式ではどうしたってそういう側面は排除できないわけですから、つまり飼育の狼化ですね。そしたらわざわざ飼育でやる必要なんて皆目無くなってしまうのですが、それはその時、現状の変な気だるさや閉塞感が僕は窮屈で仕方が無いのです。何の話だっけ。
83 :ななしいくさん :2009/07/10(金) 18:50
れいなはボーボー〜まで読んだ

つーか、この一連のやりとりを作中へ取り込んで
メタフィクションにしてしまえ<作者

それは流れが速い狼ではムリなことなんだから
84 :私は私を抱きしめていたい :2009/07/18(土) 00:21
メタフィクションって何だろうか。
例えば私は往々にして男たるもの飯と風呂とクソは極めて簡便にすませるべきである
という哲学を持っているから、年に数回親戚が顔を寄せ合って飯を食う風景などというものが
あるのだけれども、そういう時恐らくは入念に準備されたであろう飯を10分程で食べ終え、
どこそこの誰ちゃんが今度結婚するんだとかいう叔母さんの話を聞き流しながら
ぼんやりと目の前に座っている親戚の顔を眺めてタバコが吸いたいなあと思ったりする
のであるけれども、この禁煙ブームのご時勢なかなかそういうことも叶わず、
従兄弟の娘が小学校に入学するんだという話を聞いたりして、
あなたには今「いい人」はいないの?などとおばさん特有の持って回った
言い回しを不快に感じながらもやっぱり目の前の親戚の顔を
僕はタバコが吸いたいなあと思ってじっと眺めているのであり、
そこでふと、突如として、あまりにも唐突に霊感を得て、
「私は童貞の上真性包茎ですから、自身の下半身に全く自信がないのです。
 言い換えるのならばコンプレックス。女性に対するあまりにも生々しい偏見もあります。
 女性というのは淫乱か淫乱でないの二項対立しか存在していないような気がします。
 最も僕の内部には性欲という二文字しかございません。いい人なんていません。
 いい人というのは例えばこのような奇形じみた偏見と身体を持つ僕を何ら気にせず、
 淫乱でもないけれども全く淫乱でないわけでもない、時によって、刻々と、
 清純と淫乱を使い分ける狡猾な女性、そうですね、例えば田中れいなちゃん。
 そういう人が僕はいいなあ」
と喋ったところ、目前の親戚がマブタと瞳孔を一時にカッと見開いて、
私はそれを見て「アッ」と驚き、「あっ、まるで圭ちゃんのようだ!」と思った。
85 :名無飼育さん :2009/07/18(土) 19:16
なんつースレだ。
ちょいちょい覗くわ。
86 :私は私を抱きしめていたい :2009/07/24(金) 16:54
僕も酔っ払っていない冷静な頭で見返すとなんだこれはと思うけれども、
それはさておきメタフィクションとは何だ?

例えば、圭ちゃんが猫の目をして、
「聞いたよ、今田中ちゃんと一緒に住んでるんだって?」と言う時、
私は圭ちゃんの目を直視できずに「うん、そうなんだよ」とぼそりと呟き、
頭を掻き、脇汗のことを気にしながらふてくされる。
「あんたのことだからどうせ田中ちゃんのパンツの臭いとか嗅いだりしてるんでしょ?」
とまた圭ちゃんは猫の目をして言うので、私は思わず僕になってしまって、
87 :私は私を抱きしめていたい :2009/07/24(金) 16:55
「僕はそんなことしないよ!するわけないじゃいか!ないじゃないか!」
「何噛んでんのよ、図星かよ」
「図星とかそういうわけじゃなくて、そうそう、話があるんだよ、話が」
「何?」
「いやところで久しぶりだね圭ちゃん」
「そーね」
「もう二年ぶりとかそういう感じじゃないですか」
「半月ぶりぐらいだと思うけどね」
「そうでしたっけ?それでまあ、保田さんは元気にやっているんですかここ最近」
「なんで徐々に硬くなってんのよ、で、話って何?」
「徐々に硬くなるというか、僕は初っ端からマジ勃起ですけど」
「あっそう、別にいいけど、何?話しにくいこと?場所変える?」
「いやもう別にここでいいよ、あのね、僕が聞きたいのは」
88 :私は私を抱きしめていたい :2009/07/24(金) 16:55
と私はそこまで言ってハッと気がついて、圭ちゃんの猫の目を見てタバコを吸いたいと思い、
「タバコ吸っていい?」「どうぞ」というやりとりの後、ショートホープを取り出して一服。

「まだショートホープ吸ってるんだ」
「ネーミングがいいじゃない、短い希望だよ、吸えば吸うほど短くなっていくんだ」
「あんたいつから詩人になったの?」
「つい先日から」
「あっそう」

さくっとタバコを吸い終え、グリグリと灰皿にねじ込むようにしてこすりつけた。
今度は圭ちゃんが「私も吸っていい?」と訊くので「公衆の面前でフェラチオは勘弁な」と返すと、
「童貞が何言ってやがんだ、クソして寝ろ」と虎の目で凄まれたので「はい」と言った。
圭ちゃんは私のショートホープを勝手に吸った。
89 :私は私を抱きしめていたい :2009/07/24(金) 16:56
「で?早く本題に入って欲しいんだけど、いい加減」
「うん、私が訊きたいのはだね、れいなは陰毛が生えているのか、ということなんだけどね」
「はあ?」
「いやだからね、れいなに陰毛、いわゆるマン毛ね、それは生えているのかということだよ」
90 :私は私を抱きしめていたい :2009/07/24(金) 16:56
圭ちゃんは虎の目から更にレベルアップした獅子の目になって「はあ?」と言い、
私はまた思わず僕になってしまうのだけれども、
「生えてるに決まってるじゃない、何バカなこと言ってんの」
「やっぱりそうなのかな、そうだったらやっぱり僕はショックというか、
 うーん、なんて言うんだろう、世界が終わってしまったような気持ちになるのだけど」
「いや、そんなこと言ってもね、生えてるわよ、当たり前に、だって私見たことあるし」
「え?何々?今なんて言った?」
「いやだから田中ちゃんの裸見たことあるしね」
「何でだよ!私ですら見たことがないのに!不謹慎だろうそれは!」
「ああそう、でもしっかり生えてたから」
「じゃあ、じゃあだよ。仮にその時生えてたとしても、今生えているという確証はないわけだよね。
 だって人間というのは日々刻々と変化しているのだし、俺のオヤジだって昔は頭髪フサフサ
 だったもんだけど、今ではもう枯木も山の賑わい的な感じだものな。れいなだって多分そうだ。
 うぶ毛も丘の賑わい的な感じのはずだ」
91 :私は私を抱きしめていたい :2009/07/24(金) 16:56
圭ちゃんはフィルターまで燃えてるんじゃないかというぐらいにショートホープを吸ってから、
非常に蔑んだ流し目で僕の鼻頭のあたりをじっと見つめるので、不覚にも興奮してきて、
鼻頭のあたりがカッと熱くなり、汗がふきだした。言うまでもなく脇汗もかいているし、
亀頭のあたりもカッと熱くなり、汁がふきだしている。

「あのねえ、そんなくだらないこと訊くために私呼んだの?」
「そうだよ」
「だからいつまで経っても童貞なのよ」
「それとこれとは関係がないし、そもそも童貞というのを私は逆にプラスに考えているから、
 つまりだね、私は非童貞を逆に下に見ている。もちろん非処女もな!このビッチめ!」
「勝手にすればいいじゃない」
92 :私は私を抱きしめていたい :2009/07/24(金) 16:57
圭ちゃんは伝票をひょいと取って「じゃあ私忙しいから行くわ」とまだ流し目をしていて、
僕は途端に申し訳ない気持ちになり「忙しい中ごめんね」と言った。
圭ちゃんはハハッと笑うと「田中ちゃんの事好きなの?」とまるで小学生か中学生のような
率直さの子猫の目でもって訊くので「好きというか私はれいなの保護者のようなものだから」
「だから?」
「好きというか、私はただれいなを抱きしめていたいだけだよ」
「その腕に他の誰かは抱かないの?」

私はれいなを抱きしめていたい。
93 :名無飼育さん :2009/07/24(金) 23:45
そうきたか
おもしれえ
94 :名無飼育さん :2009/07/26(日) 09:45
ショートホープって頑固なイメージ
個人的にれいなは直毛イメージ
95 :私は誰かを抱きしめていたい :2010/04/17(土) 07:49
あれから、あれからというのがいつからなのかよく分からないけれども、
徒然にかつ実にありきたりになけなしの一年が経とうとしていて、
何にも抱きしめられないままこうしてまたれいなを抱きしめたいなと思うわけなのだけれども、
というかれいなでなくたってよっすぃーでも圭ちゃんでも
そこらへんにいる吉田さんとか加藤さんとか田中さんとか佐藤さんとか、
女であれば誰だっていいような気もし、でもそれではやっぱりダメなような気もし、
実際問題現実の肉感を伴った女を抱きしめたいのか、と言われると照れるから嫌だ、
でも俺の性欲は確実にそこにある柔らかくて暖かい肉を求めているので、
つい、豚肉を2kg買ってしまい、その冷たさと油っぽさに嫌気が指すのです。
96 :名無飼育さん :2010/04/17(土) 07:51
「水色の下着」
97 :名無飼育さん :2010/04/17(土) 07:59
二日前、耐え切れず抑え難い性欲に負けて2kgの豚肉を手にした私は、
それを冷蔵庫にしまいこんだまま、どうにも手がつけられないでいた。
豚肉は普通に考えて食べ物で、動物の命を食べるだなんておこがましい!おぞましい!
とかは別に思わないし、食えば美味いから食べるし、料理せよといわれれば料理をする。
料理は嫌いじゃない。自分一人で食べる、とかなればちょっと寂しいけども、
大体いつもれいなが学校帰りに遊びに来て「おじさんお腹すいた」と妙なイントネーションで、
ガタガタの視線で子猫のように訴えるので、「よしよし」と頭を撫でたりしながら、
「れいなちゃん、冷蔵庫に缶ビールがよーく冷えてるから、取ってきてくれ」
れいなは威勢よく「りょうかいしたと!」と言い放ち、冷蔵庫から缶ビールを取り出し、
「持ってきたとよ」と合ってるのか合ってないのかよく分からない福岡弁でそれを
手渡してくれるので私は満足し、豚肉や鶏肉、ちょっと贅沢な日なんかには牛肉!
それを切り刻み、油で強火、にんにくをたくさんいれて、ちょっと斜めに刻んだネギなんかを
最初に入れて、ネギの香り、それが実に食欲をそそるわけで、れいなは「おいしそう」とジュルりと
舌なめずりをしたついでにそれで顔を洗うので、私はそれを眺めて明日は雨が降るぞ!と思う。
98 :名無飼育さん :2010/04/17(土) 08:07
れいなはテレビをつけて、畳にペタンと座って、机に肘ついて頬杖、
後ろから見るとスカートが畳にごく自然にふわりと被さっていて、華奢な腰周り、
白いブラウスがだぶついて、うっすら透けて見える水色の下着、襟元には赤茶けた髪が
実にやさしくかかっていて、窓からは夕日が差し込み、テレビに映るのは忍たま乱太郎。
私はビールを開けるとそれをジョッキに移してから一口飲んで、襟元を正してから
料理に取り掛かるわけで「れいなちゃん、今日は何が食べたいの?」

「なんでもいいと、早く食べられれば」
「そうかそうか、じゃあ炒め物だね、にんにくとネギをしっかり利かしてさ」
「炒め物はもうあきたっちゃ」
「わがままだね、じゃあ何がいいの?」
「なんでもいいと」
「何でもいいんなら炒め物でもいいんじゃないの?」

「炒め物以外で!」とれいなは実に暴力的なことを言うので私はつい腹が立ってしまい、
「おいこられいな!作ってもらうのにそれは無いんじゃないのか!そんな言い方はないんじゃないのか!」
声を荒げると、れいなは冷たい流し目「じゃあ帰ります。もう二度と来ません」
99 :名無飼育さん :2010/04/17(土) 08:13
ハッと冷静になって「ごめんごめん、れいなちゃんごめんね、大人気なかったよおじさん」
となだめすかして「もう帰りますもう帰ります」を繰り返すれいなを必死で足止め。
「ほら、おじさんが、今から、すごく美味しい料理をつくってあげるから」
「炒め物は嫌です」
「ほらほら、敬語はやめてさ、いつものあの調子だよれいなちゃん、なんとかと!とかなんとかだっちゃ!とか」
「嫌ですたい」
「そう!それ!それだよ!れいなちゃんそれだよ!いやー!感動的だなあ!」
「そうだっちゃ?」
「いやあもう、泣けてくるね、れいなちゃん、おじさん泣けてくるよ、今日もかわいいね」
「ありがと」
どうしたって私はれいなに料理を食ってもらわないと困るし、でもちゃんとそれに対して、
感謝の言葉でも、態度でもなんでもいいから、そういうの、それを示して欲しい、
というか率直に言えばれいなのパンツ、水色のブラに対応するであろうところの、
水色の、薄い水色の、限りなく透明なようでいて、しかしすっきりと目の覚める、
二日酔いの午前5時の薄ぼらけの中で飲む、冷たい一杯の水のような水色のパンツ。
それが見たい。

100 :名無飼育さん :2010/04/17(土) 08:19
炒め物は止めて、煮物、どうも私は煮物というのが苦手なのだけれども、
これだけは上手く作れる!という自信作の一つに肉じゃががあり、じゃあ肉じゃが!
「れいなちゃん、肉じゃがはどうだろう?」
「肉じゃがはおかーさんの作った奴しか食べんと」
「私の肉じゃがはうまいぞ、ほっぺたが落ちるどころじゃないぞ」
「じゃあどうなると?」
「うーん、そうだな、例えば、食べたらもう死んでもいい!みたいな」
「れいな、まだ死にたくないとよ」
「いや、それはさ、ものの例えってもんだから、れいなちゃんが死んだら、おじさんどうしたらいいの?」
「お葬式に来てくれればいいっちゃ」
「そんな!いやだよ!おかしいだろ!だってそれはおかしいじゃないか!」
「どうしてだっちゃ?」
「だって、れいなちゃんは私よりも随分若いんだよ、具体的にいうと20歳も若いんだよ、
 そんな若者が、おじさんより早く死んでしまう、それはだって、おじさん不孝というもんだよ、
 第一親に申し訳ないじゃないか。親より遅く死ぬのが子のつとめってもんじゃないか」
「ムツカシイことはよくわからんとよ」
「そうだね、じゃあとにかく、うーん、カレーを作ろうか」
「カレー好きだっちゃ」
「よしよし、そうだね、カレーにしよう」
101 :名無飼育さん :2010/04/17(土) 08:29
カレーなられいなも手伝えると言って、れいなは私の横に立った。
私はビールをもう一本冷蔵庫から取り出してきて、ジョッキに注いで、
れいなに的確に指示を出した。
「じゃあじゃがいもの皮剥いて、にんじんの皮も剥いて、
 ついでにおじさんの皮も剥いてもらおうかな、んふふふふふ」
「こうだっちゃ?」とれいなはピーラーを私の腕に押し付けて、思い切り引いた。
「痛い!ちょっと!やめて!ごめん!冗談だから!というか違う!痛い!ああ!バカ!れいなのバカ!」
れいなは一人前の顔をして「情けなかとね」と鼻で笑った。
私はれいなの手にしている血まみれのピーラーを奪い取ると
「ちくしょう!れいな!お前の皮もひんむいてやる!」
「やめるばい」
「うん、やめよう」
仲良くカレーを作って、二人で仲良くカレーを食べた。
102 :名無飼育さん :2010/04/17(土) 08:35
テレビを見ていると妙にエロい外人が卑猥なダンスをしつつ歌っているので、
「これは誰だい?」とれいなに訊くと「レディーガガだっちゃ」と応えるので、
「そうかそうか、ガガガSPみたいな感じかい?」「全然違うばい」
「れいなちゃんは好きなのかい、その、なんたらガガってのは」
「レディーガガばい。好きだっちゃ、憧れだっちゃ」「エロいよ」
「エロくなかと、かっこかわいいっちゃ」
れいなは目を細めて、スプーンをぶんぶんと振った。ごはん粒が飛び散った。

「へえ、よく分かんないな、カレーおかわりする?」
「あんまり美味しくないからいらないっちゃ」
「そうかい、じゃあいいよ、れいなちゃんはそうしてればいいよ、もうずっとそうしてればいいじゃないか」
「何怒ってると?」
「別に、怒ってなんかいないさ、ただね、まあいいよ、私はおかわりするからね」
「すればよかと」
103 :名無飼育さん :2010/04/17(土) 08:45
カレーをおかわりしてテーブルに戻ってくると、れいなはノリノリでまだ
スプーンをぶんぶんと振っていた。れいなのカレーは半分以上残っていた。
「食べないのかい?」「まずいからいらないっちゃ、あげる」
「そうかそうか、まあいいよ、じゃあスプーンを貸しなさい」
れいなはピタッと動きを止めるとこちらを見て、
「おじさんスプーン持ってるからいらないっちゃろ」
「いいから寄越しなさい、スプーン振るとか行儀が悪いにも程がある、
 全く親の躾がなってないんじゃないのか、これだから最近の若者は」
無理矢理れいなの手からスプーンを奪い取って、
そのスプーンでれいなの食べくさしのカレーを食べた。
今まで作った料理の中で、どれよりも、何よりも美味いと思った。
れいなの唾液の味が絶妙なスパイスのようになっているような気がした。
104 :名無飼育さん :2010/04/17(土) 08:46
私は2kgの豚肉の塊を抱きしめてキスしながらそんなことを考えていて、
気付いたら口の周りと服がひんやりと脂ぎって最高に不愉快な気持ちだった。
れいなが座っていた畳を撫でる。きっと水色のパンツがここに、触れていたのだな。
水色のパンツのクロッチの部分が、クロッチの部分はれいなの子猫ちゃんを包みこんでいて、
そこをさすったこの手で、この豚肉で、明日はポークカレーを作って、
れいなに食べさせてあげようと思い、私はれいなを抱きしめていたい。

おわり
105 :名無飼育さん :2010/04/17(土) 12:30
久しぶりの更新でガガガSPとか濃過ぎ
106 :名無飼育さん :2010/04/18(日) 19:12
なぜここのれいなはこんなにも可愛いのか
107 :名無飼育さん :2010/07/06(火) 03:52
ガガガSPのボーカルの人の出す精子は濃そうですよね。
多分ゼリー状でぷるぷるしていて、れいなは初めてそれを目にした時に
「なんとね!?」とひたすら驚いて、でもなんとなく汚いものとは分かるから、
ティッシュでふき取り、そのティッシュを指でぶにぶにして「うわー」などと言い、
私の目を見つめて「これなんなん? ねえ? おじさんこれなんなん?」と薄ら笑いをし、
それに激昂! 男の性をバカにするな! といった気持ちになり! れいなを!
殴りつけようとして! その口角の上がった! 口元を! 私の唇で! 殴りつける!
108 :名無飼育さん :2010/07/06(火) 03:52
「白い奇跡」
109 :名無飼育さん :2010/07/06(火) 03:52
風呂上りに一発抜いたティッシュを片付け忘れてしまう、ということは
思春期のマスカキ盛りの男ならば、誰しも一度はある経験であり、
よく出来たお母さんならば「あらあらまあまあ」などと言いながら、
殊更事を荒立てず、密かに片付けてくれるのが美しい家庭愛、
家族愛、親子愛という奴で、その母親の無償の愛というものに
我々日本男児は心底感謝しなければならないのであるが、
しかし世の中にはちょっと気の利かないお母さんという奴もいて
「トオルちゃん、オナニーしたら後片付けまでちゃんとやりなさい」と
息子を傷つけないように諭したつもりが、息子の名誉、自尊心、
果てはこれから長く続いていく人生に一滴の墨汁を垂らすような真似をし、
そのほんの一滴したたり落ちた墨汁は水に濡れると
じわじわとにじんでいくものであって、人生全てがほんのりと薄汚れてしまう。
110 :名無飼育さん :2010/07/06(火) 03:53
といった冗長な前置きからひとまず離れてしまって、
私は先ほどれいなにオナニーティッシュを発見された。
ああ片付けなければいけないな、そう思った時にはもう遅く、
れいなはそのティッシュを汚いモノを扱う手つきで摘まんで、
ブラブラしていた。奇妙な果実!
111 :名無飼育さん :2010/07/06(火) 03:53
「おじさん、これなんとね」

とれいなは明らかに蔑んだ目でもって私を見た。
私は一瞬悩んだ。目が泳ぐのを感じた。
「それは私の息子達だ」とユーモアかつウェッティに事実を述べるか
「ああ、鼻をかんだんだよ、ごめんねれいなちゃん、捨てるのを忘れていてさ」と
当たり障りの無い感じでウソをつくか。
だがその逡巡を見透かしたかのように「おじさんの変態」と来た。
112 :名無飼育さん :2010/07/06(火) 03:53
「変態なんてヒドイ言い方は無いんじゃないかれいなちゃん。
 第一れいなちゃんはそれが何か分かってるのかれいなちゃん。
 私のことを変態と言うからには分かっているんだろうなれいなちゃん。
 しかし私も男だれいなちゃん。
 そういうことの一回や二回、一日に多くて、うーん、まあ四回が限度だねれいなちゃん。
 いくらおじさんが絶倫であるとはいえ、一日に五回というのは無理だれいなちゃん。
 何にでも限りがあるんだれいなちゃん。
 人生というのは何にでも限りがあって、いつまでも終わらない、
 延々と続くということは、我々の命だって無理なんだから、
 何にでも限度があってねれいなちゃん。
 だから、生きるということは大切なんだよれいなちゃん」
113 :名無飼育さん :2010/07/06(火) 03:54
「よく分かったばい」

れいなはオナニーティッシュをぽいとゴミ箱にインすると、
私もゴミ箱にインした。この長い長い大切な人生をかけて、
私はれいなを抱きしめていたい。
114 :名無飼育さん :2010/07/06(火) 03:55
おしまい
115 :名無飼育さん :2010/07/06(火) 04:11
「くれない」
116 :名無飼育さん :2010/07/06(火) 04:12
YouTubeでXの「紅」を見ながら「くれないだー!」とやっていたら
れいながトコトコと寄ってきて「何しとると」

「ああれいなちゃん、これはエックスジャパンっていうね、バンドでね」
「へー」
「このイエローにピンクハートのギターのhideって人は死んでしまったんだ」
「ふーん」
「悲しいよねえ、寂しいよねえ」

れいなは複雑な顔をして「よくわからんとよ」と言った。
続けて「でも、かっこいい曲っちゃねえ」

「れいなちゃんはエックスジャパン好きかい?」
「よくわからんばい、でもこの曲はかっこいいっちゃ」
「そうかあ、いいよねえ、この曲は『紅』って言うんだよ」
「へー、くれない? 何を?」

紅に染まったこの俺を慰める奴はもういないので、
「お前をだよ!」言って、私はれいなを抱きしめていたい。

おわり
117 :名無飼育さん :2010/10/20(水) 00:32
「ポジティブハート」

街中をうろうろしていると、きゃあごめんなさいと言って誰かがぶつかってきた。
「いえいえ大丈夫ですよ、全く問題ありません、モーマンタイですし、ノープロブレムです」
紳士にふるまいつつ、その子の顔を見た。「田中れいな」と顔に書いてあった。
「ああれいなちゃんじゃないの! どうしたの!」
「助けてほしいっちゃ」とれいなは言った。「助けるよ!」
「お金が欲しいっちゃ」とれいなは言った。「いいよ! いくら欲しいのか言ってごらん!」
「20万円必要なんだっちゃ」とれいなは言った。「何に使うの!」
「ちょっと山に芝刈りに」とれいなは言った。「わかった! いいよ! ちょっと待っててね!」
118 :名無飼育さん :2010/10/20(水) 00:37
私はすばやくれいなの手を掴んだ。れいなはきゃあとまた言った。
その「きゃあ」はなんとなく「にゃあ」に近い「きゃあ」で、私にはそれが
「はいよろこんで」の意だと感ぜられた。
「れいなちゃんれいなちゃん! まず郵便局をさがそうね!」
「手を離してほしいっちゃ」
「うんうん、そうだね、そうだよね!」
「はやく離してほしいっちゃ」
「まずは郵便局をさがそうね! れいなちゃん! まずは郵便局を探さないとね!
 おじさん今お金持ってないんだよ! 郵便局に行ったらお金あるから、
 まずは郵便局を探さないとね!」

れいなは何故か妙にジタバタして
「もういいです、やめてください、いいです、お金いいです」と言った。
それは非常に献身的な言葉であるように思われた。私のことはいいから、
あなたのことが大事だから、私のことはもういいから、お金なんて、いいから、
あなたの愛が欲しいから、この握ったこの手をね、この手を決して離さないでね、
と、れいなの目元が言っていた。口元は「やめてください」と言っていた。
119 :名無飼育さん :2010/10/20(水) 00:45
「ほられいなちゃん! あったよ! 郵便局あった!」
「わかりましたから手を離してください」
れいなの敬語は現代の日本女子が忘れてしまったおくゆかしさを感じさせた。
れいなの手の平は現代の日本女子が失ってしまったぬくもりを感じさせた。
れいなの目元の潤いは現代の日本女子が失ってしまったはじらいを感じさせた。
れいなのふとももは現代の日本女子の最大の美点であるつややかでひきしまったふとももだった。

私はれいなの手を振りほどくと、郵便局へ駆けこんで「20万円ください」と言った。
郵便局員は「は?」という顔をして「こちらの番号札をおとりになって、お待ちください」と
実にケガラワシイ現代の合理性を私に突きつけた。私は憤った。
「れいなが待ってるんだよ! れいなが! 外で20万円を待ってるの!
 おれの愛を待ってるんだよ! れいなが! 20万で表象される! おれの愛を!
 待ち望んでいるんだよ! くそったれが! 郵便局員は直ちに20万円を!
 ぼくに用意してください! さもないと死にます」

れいなは郵便局に駆けこんで「もういいですもういいです」と私を抱きしめた。
もういいですから、私のことだけを見ていてください、20万円なんてもういいんです。
れいなはそう言ったように思えたので、ああもういいんだな、と思った。
れいなの目元は相変わらず濡れていた。私はれいなを抱きしめていたい。

おしまい
120 :名無飼育さん :2010/10/21(木) 00:50
今夜もありがとう
121 :名無飼育さん :2010/11/23(火) 05:10
相変わらず狂ってんなぁw

イイ意味で
122 :名無飼育さん :2011/01/11(火) 01:30
れいなのことしか考えられない
123 :名無飼育さん :2011/01/11(火) 01:30
ただいま、と言ってれいなが帰ってきた。私はおかえり、と言った。
れいなはキンキラキンの趣味の悪いバッグをぽいと投げ捨てると、
ソファーに顔から突っ込んで、うぐぐぐぐと唸りつつ、足をバタバタとやった。
れいなの美しく白いふとももがそれはもうとてもとても美しく揺れ、
狂気のように短いスカートからは黒い下着が見え隠れした。
これは私に対する性的な誘惑であることは明白であった。

しかし、その性的な誘惑に安易に屈服しないことによって、
「私は硬派なのである」という姿勢をれいなに対して、ひいては
全人類に対して示しているのであり、このような誘惑にコロリと騙されて
さっさとセックスに励むようなあまりに動物的な、性欲に忠実な、
凡百の男という生物を私は心底憎んでいるのであって、
性欲に屈しないことに関して、私は並々ならぬプライドを持っている。
124 :名無飼育さん :2011/01/11(火) 01:30
れいなのふとももの美しさやパンチラなど、私の持つ硬派な理性の前には
屁も同然であり、それは純粋にただただ「美しい」のであって、
その魅惑的な美しさに精神が癒されることはあれど、勃起するとかそういうの、
なんて言うんですかね、そういうのはあさましいですよ。良くないですよ。
と、私は強く主張したいのであり、ここで私が取りうるべき行動と言えば、
そのふとももとパンチラの性的誘惑などモノともせず、
れいながこのような人目を気にせず幼児的な行動を取るに至った動機、
れいなの身を案じる、れいなの心の心配をし、それをケアする、
というのが、私の硬派な理性から導きだされる、最良の行動である。
125 :名無飼育さん :2011/01/11(火) 01:31
「どうしたのれいなちゃん、なんかあったの」
「なんも」
「そんなことないでしょう、絶対なんかあったに決まってる、何があったの」
「べつになんも」
「カタクナだなあれいなちゃん、おじさんはれいなちゃんのそういうカタクナさは
 すごく好きなんだけど、ほら、れいなちゃんはおじさんの娘みたいなものだからさ、
 娘を心配する親心、ね、分かるでしょ」
126 :名無飼育さん :2011/01/11(火) 01:31
れいなは足をジタバタさせるのを止め、すくっと立ち上がるとどこかへ消えた。
無視、シカト、人間が人間であるということに対するこの圧倒的な暴力。
おいお前と言えば、はいなんでしょうと答える、阿吽の呼吸、ツーカーの関係、
コミュニケーションを取る、ということ、互いに互いのことをおもばかる、ということ、
そういうものが人間の人間らしさというものであって、それを踏みにじる無視という
行為はあまりにも非人間的非道徳的な行いであるとともに、それは人間にしか
成し得ない行為であるからまた同時にあまりにも人間的な行為であるのだ。
れいながここで見せた無視という態度は、私をないがしろにするものであり、
無視される、ということは悲しいことです。泣いちゃう。それはそうです。
その通りですけれど、しかし、れいなに無視されることは喜ばしいことですよ!
127 :名無飼育さん :2011/01/11(火) 01:31
なぜならばれいなは常日頃いつもいつも誰からも無視される存在であり、
「わたしなんてムシケラ以下の存在だっちゃ」と自己嫌悪自己否定を繰り返し、
毎夜毎夜枕を濡らしていることは想像に難くなく、
そのような心の打ちひしがれたれいなが、かろうじて私を無視する。
私を無視するという行為を通して、れいなは自分が人間であることを
拙く弱々しいながらも確認しているのであり、それに対し「無視はよくないぞれいな!」
と叱ってみたところで、またそれはれいなの自己否定につながるのであるから、
そのような説教というのは一番いけない。
れいなのことを本当に思うならば、そのような正論のふりをした説教をぶつのではなく、
優しく、慈愛の心でもって、れいなの無視をしっかりと、我が身に受け止めて、
れいなの悲しみを、れいなの心の叫びを、私の身体でもって、
しっかりと噛み締めなければいけないのである。
128 :名無飼育さん :2011/01/11(火) 01:32
「なにをぶつぶつ言っとるね」

とれいなが言った。手にはリラックマのクッションがあった。
れいなはリラックマのクッションを胸に抱えると、どすんとソファーに座った。
れいなのふとももとミニスカートの織り成す白と黒のコントラスト、誘惑の三角地帯。

「いやあ、なんか様子がおかしいから、何かあったのかなって思ってね」
「なんもないとよ」
「そんなことないでしょう! ほら、言ってごらん! おじさんに何でも相談してごらん!」
「うざいっちゃね、なんもないし」
「あ、なに、その、なんもないし、って言い方はすごく嫌だな、頭の悪いしゃべり方だ。
 れいなちゃんはそんなに頭の悪い子だったのかな? もっと聡明なしゃべり方をしなさい」
「なんもないです」
「いや、丁寧語にしろとかそういうわけじゃなくてね、丁寧語使えば聡明である、とかいうのは
 最も愚劣、愚鈍ですよ。そういうのは良くないですよ」
「おじさんも変な丁寧語やめてください」
「そうだね、ちょっと変な丁寧語を使ったね、そこに気づくとはやはり聡明な子だ、えらいぞれいな」
「呼び捨てとか」
「あっ、またそうやって、とか、で語尾を終わらせるでしょう、それはバカに見えるからやめなさい」
「はいはい」
「返事は一度でいいんだ! ばかやろう! おまえはやっぱりバカだな! れいな! 貴様はバカだ!」
129 :名無飼育さん :2011/01/11(火) 01:32
れいなは「うるせえっちゃ!」と叫んだ。リラックマを私に投げつけると、
キンキンキラキラの、あの趣味の悪いバッグを手に取って出て行った。

こんなつもりじゃあなかったのになあ、ほんとうにすまないことをした、
れいなに対して、ほんとうに申し訳ないことをした、れいなの痛みを分かってやろうとして、
どうしてもなかなかわかってやれないのだ、結局私には、れいなを抱きしめてやることが、
どうしても叶わないのだ、それはもうとてもとても絶望的なことだ。泣いちゃう。

れいなの投げつけたリラックマのクッションが狂おしいほどふてぶてしい無表情で、
床の上にごろんとなっていた。それを拾って抱いてみた。れいなの残り香、香水のニオイの奥には、
よくよく嗅ぐとれいなの体臭が混じっていて、何度挫けようと、私はれいなを抱きしめていたい。

おしまい
130 :名無飼育さん :2011/01/11(火) 01:33
れいなのことを思って、詩を書こうとおもいます。
131 :名無飼育さん :2011/01/11(火) 01:36
ふつうの詩だとこっぱずかしいので、散文詩を書こうとおもいます。
132 :名無飼育さん :2011/01/11(火) 01:45
ここ最近の尋常ならざる寒さに、
れいなが凍えてしまわないかと、寝静まった部屋へ忍び入り、
すやすやと心地良さ気に眠っている顔を見て、少し安心するのだけれど、
布団からはみ出た指先の、寒くて真っ白になった指先があまりの白さにやはり心が落ち着かず、
そっと布団をかけ直してやるのだ。

またある日の夕暮れに、やることもなくぼんやりしているれいなを見て、
れいなの履いた黒いニーソックスの、左右の丈が揃っていないのに、心かき乱されて、
私は料理をするのもおぼつかず、右脚のニーッソクスを引き上げてやりたい、
ただただそう思うのだけれど、ソックスの足裏がほこりで真っ白になっているのに気づいたので、
料理をやめて、部屋の掃除をした。
133 :名無飼育さん :2011/01/16(日) 13:37
町田康を彷佛とさせるな
134 :名無飼育さん :2011/01/24(月) 07:14
町田康のできそこない、と言われて悲しくなったことを思い出しました。
135 :名無飼育さん :2011/01/24(月) 07:14
「年頃の娘」
136 :名無飼育さん :2011/01/24(月) 07:16
テレ東にこんこんが出て「来年アナウンサーとして入社します」とか言っていた。
れいなは「紺野さんだ!」と叫び、興奮したようにぴょんぴょん跳ねた。
いや、跳ねた、というのは言い過ぎで、ただその場で、身体を縦に揺らした、
という程度のものだったのだけども、女の子というのは稀にそういう素振りをする。
微妙な挙動が「ああこの子は今跳ねているなあ」と感じさせることがある。
女の子がたまらなくかわいく見える瞬間である。

「れいなちゃんとこんこんは知り合いなんだっけ?」
「先輩です」
「え? 何の?」
「あれです。事務所的な」
「あ、そうなの。そうするとつまりれいなちゃんはこんこんの後輩ってことだよね」
「そうですね」
「あーそうなんだー、へえ、それは知らなかったなあ、こんこんかわいいよね」
「そうですね」

れいなは食い入るようにこんこんを見つめながら「私も大学行きたいですね」と言った。
137 :名無飼育さん :2011/01/24(月) 07:17
「無理だよ、れいなちゃん頭悪いもん、だいたい大学行ってなにすんの」
「ほら、あれですよ、キャンパスライフ」
「それ意味分かってる?」
「なんかこう楽しそうな、生活?」
「うん、無理だと思うよ、大学受からないと思うよ」
「なんでですか?」
「なんでって言うか、まあとりあえずこんこんと同じ慶応は無理だと思うよ」

テレビはCMになった。パチンコのCMだった。れいなは目をしぱしぱさせた。
私はアニマックスにチャンネルを変えた。ドラゴンボールの再放送をやっていた。
ちょうどピッコロさんがナッパの攻撃から悟飯をかばう感動的なシーンだった。
悟飯がアワアワ言ってばっかでちっともそこから逃げようとしないのが腹が立った。
138 :名無飼育さん :2011/01/24(月) 07:17
「どうしてですか? やりもしないのになんで分かるんですか?」

れいながいきなり非難がましい口調で言った。
ピッコロさんが涙を流しながら悟飯に「おまえら親子の甘さがうつっちまったぜ」
という風な名台詞を吐くところだったので、いささかうっとうしく思った。

「だってれいなちゃんさ、キャンパスってどういう意味か知ってる?」
「なんかこう楽しげな、華やかな感じ」
「違うよ、キャンパスは大学って意味だよ」
「じゃあライフは何ですか?」
「生活だよ。キャンパスライフってどういう意味だと思う?」
「大学、生活?」
「ご名答だね」
139 :名無飼育さん :2011/01/24(月) 07:18
ピッコロさんが事切れて、神様が「ポポ、後はよろしく頼む」とか言って、
ポポが「かみさまー!」と叫んだ。

「それと大学受かんないのと何の関係があるんですか」

れいなは勝手にチャンネルを変えた。KARAのなんか一番有名な曲のPVが流れた。
多分MTVかスペシャだと思う。KARA自体に何の恨みもないのだけれど、
最近やたらもてはやされてるのが気に食わなかったから「チャンネル変えてよ」と言った。
れいなは何も言わずに音量を上げた。

こうこの人たちの足というのは実にキレイなんだけども、PVで見ると
あんまりにもつやつやしてるので気味が悪い。れいなの足の方が断然いい。
140 :名無飼育さん :2011/01/24(月) 07:18
「私バカですか」
「なんで? べつにふつうなんじゃない?」
「英語できなかったらいけないんですか」
「なんで?」

れいなの手からリモコンを奪ってアニマックスに戻した。
次はコナンの再放送をやるらしい。しかも3時間立て続けに。
もう殺人事件とかどうでもいいから、黒の組織との確執をさっさと解決して欲しいし、
新一君は蘭ちゃんとくっつくのか、それとも意表をついて灰原さんとくっつくのか、
もしかしたら昨今流行りの幼女に目覚めてしまって、あゆみちゃんとくっついたりするのか、
そういうところがむしろ気になる。あゆみちゃんと新一君のセックスが気になる。
だからテレビ放送のコナンとかどうでもいいんだけども、KARAのPVをこのまま
延々見つづけるよりか、いくらかだけマシなように思った。
141 :名無飼育さん :2011/01/24(月) 07:19
「アニメ好きですよね」
「いいよね、アニメはいいよね、なんていうか自由だよね、どこまでも自由だよね」
「私バカだから分かんないです」

れいなは拗ねた声を出してごろんと床に横になった。
いやあ、アニメなんかよりも、れいなが一番すてきなんだけどもね。

「れいなちゃんはバカじゃないよ」
「そうですか」

私はれいなを抱きしめていたい。


おしまい
142 :名無飼育さん :2011/06/25(土) 09:09
「違和感」
143 :名無飼育さん :2011/06/25(土) 09:15
ふと視線を感じて振り向くとれいながこちらを見ていた。
私はその時、今まさにエロ動画吟味の真っ最中であり、
昨今の私の趣味といえば主に「素人オナニー盗撮モノ」もしくは
「ライブチャットモノ」ないしは「自撮りオナニーモノ」でございまして、
それぞれ女が一人でオナニーに耽るという点では同質ですが、
置かれている状況と申しますか、設定が異なりますので、
当然それぞれの持ち味というのも異なりまして、
まず「素人オナニー盗撮モノ」は盗撮ですから、よくないですよね、
道徳的によくない。それは犯罪です。やりたいけれどもできない。
それをこの撮影者はやってのけている。すばらしい。感動した。
144 :名無飼育さん :2011/06/25(土) 09:18
まあ別にそんなことはどうでもよかった。れいなが冷たい目で私を見た。
ディスプレイでは「友達の妹のオナニーを隠し撮り」というムービーが
私という視聴者を失って虚しく再生されていた。
友達の妹は結構えげつないオナニーをしていた。
れいなはずっと冷たい眼をしておりました。
145 :名無飼育さん :2011/06/25(土) 09:20
友達の妹がアナルビーズを引き出しから取り出して、
手慣れた感じでローションを尻穴に馴染ませている辺りで、
れいなは口を開いてこう言いました。

「なにしとんねん」

ああ、私はれいなを抱きしめていた。


おわり
146 :名無飼育さん :2011/09/09(金) 03:24
「雨上がり」
147 :名無飼育さん :2011/09/09(金) 03:25
れいな、と言ってみた。あんまりしっくりこなくて不思議な気がした。
一音一音区切るようにして「れ」と「い」と「な」をしっかりと発音してみる。
「れ」は舌を丸めてから下顎にやさしく打ち付けるように、
「い」は口を横に広げて、歯を食いしばるように、
「な」は先ほどまで引き締めていた頬の筋肉を弛緩させ、
鼻から息を抜くようにして言う。

「れいな」

「なんとね」れいなは怪訝そうな顔でこちらを見たので、私も見た。
ブサイクもここまで極まれば愛おしいというもので、
しかしとてつもなくブサイクだったので嫌にもなった。
世の中にはもっともっとかわいらしい生き物がそこら中にいるらしい。
148 :名無飼育さん :2011/09/09(金) 03:25
「ねえ飽きちゃった。れいなちゃんもうぼく飽きちゃったよう」
「なんとね」

れいなはますます怪訝そうな顔をした。
顔がガタガタだった。目と目の位置がおかしかった。

「れいなちゃんは飽きないの?」
「だからなんにね」
「何もくそもないよ。なんかもう飽きちゃったんだよう」

あ、と言ってれいなは窓の外に飛ぶ鳥を見た。
夕暮れをバックにちょんまげに結った髪の毛がぴょこんと揺れた。
髪型がバカみたいだった。髪の色がクソみたいだった。
クソにケチャップソースを混ぜたみたいだった。
気分が悪くなって冷蔵庫からビールを出して飲んだ。
ずるい、とれいなが言った。
149 :名無飼育さん :2011/09/09(金) 03:25
「何が?」
「うちも飲むっちゃろ」
「飲めば?」
「は? 飲むし」

雨がぽつぽつ降る音がした。どうせ通り雨だろう思ったら本降りになった。ざんざん降る。

「れいなちゃん、ちょっと窓閉めてみようか」
「は? 自分で閉めろし」
「なにその言い方」
「めんどくさし」
「その言葉遣いはいとわろし」
「自分で閉めろし」

立っていって閉めた。閉めると一気に部屋がシンとした。
150 :名無飼育さん :2011/09/09(金) 03:26
「れいなちゃん、ちょっと音楽でもかけてみようか」
「は? 自分でかけろし」
「お願いっすよー」
「いやっすわー」
「そこをどうにかしてくださいよー」
「自分でかけろし」

BOAをかけた。れいなは嫌そうな顔をして「別のにしろし」と言った。

「なにがいいの」
「ボアじゃなかったらなんでもよかと」

じゃあ、といってXをかけた。れいなが猛烈に体を揺らし始めたので、
おっ、いいですね、ノッてますね、と思ったら、
それはどうやらストレスからくる貧乏ゆすりであったらしい。
突如として読んでいた鋼の錬金術師を床に叩きつけると「もうお嫁にいけない」と言って泣き始めた。
れいなが嫁にいけるかいけないかなどという問題は、とりあえず私にはどうでもよかった。
151 :名無飼育さん :2011/09/09(金) 03:27
「そうなの、悲しいねえ」
「悲しいことではありませんわ」

れいなはいそいそと晴れ着に着替え初め、私も言われるがまま、着付けを手伝った。
振袖は乙女にしか着れないのだ、生娘にしか着れないのだ、という趣旨のことをべらべら喋った。
頬が紅潮していた。目が濡れていた。相変わらずクソみたいな髪の色だったし、
顔面は正視に耐えがたいほどガタガタだった。
なんでこれで生きていられるのだろう? 不思議だ。

着付けたところから、着物はどんどん着崩れ、はだけるようだった。

「もうちょっと落ち着いてくんないと、うまく着付けができないよれいなちゃん」
「これでよかとよ」
152 :名無飼育さん :2011/09/09(金) 03:27
真っ赤なルージュを唇に引いて、クソみたいな色の髪の毛を、クソみたいに天に向かって盛った。
そのうえからパラパラと金色か銀色か、とにかくキラキラする粉末をふりかけて、れいなは鏡の前でうっとりした。

「こんな恰好してどこにいくの?」
「お嫁に参ります」
「誰のとこへ」

答えなかった。れいなは私の手を引いて外へ出た。なんとなく拒めなかった。

雨は相変わらずざんざんと降っており、
れいなの晴れ着も、メイクも、全部ガタガタに崩れてしまった。
もとから崩れていたから、この崩れ方はより一層激しかった。
ほとんど全裸だった。
153 :名無飼育さん :2011/09/09(金) 03:28
いや、下着はつけていたから、辛うじて全裸ではなかった。
珍しいことに桃色の下着だった。爽やかさが鼻を抜けた。
ほのかにさくらの匂いが香るようだった。
下着から伸びる手足は、細いようだけどもどこかぽてっとして短く、白かった。
今、れいなはとんでもない売女だった。
体中のありとあらゆるところが濡れそぼっていた。
手の平の体温がじんじんして勃起した。

「どこでもいいから」と思わず言った。そのあとに継ぐ言葉が見つからなかった。
れいなは恐るべき流し目でこちらを見遣り、ニヤリと笑って手を離したので、
とてつもなく不安になった。このままではれいなが嫁に行ってしまうと思った。
この雨が止んだら、れいなは嫁に行ってしまうと思った。
154 :名無飼育さん :2011/09/09(金) 03:28
「誰のとこへ行くの」と訊いた。れいなは笑って答えず、にやにやして首を振った。
首を振るごとに体が壊れていくようだったので、そんなに激しく動いちゃいけないと思った。
れいなの手足はもはやほとんど人形のようなか細さで、その白さの余り透けているように見えた。
雨粒一つ一つがれいなの体を穿って、とろけていた。もうダメかもしれないと思った。

雨がピタリと止んだ。れいなもピタリと崩壊を止めた。
慌ててれいなの体を抱きしめると、両手が空を切った。
犬がわんわん鳴いていた。鈴虫も鳴き始めるようだった。
暗くて見えないけれど、虹は出ているか?
出ているなら良いと思った。

私はれいなを抱きしめていたい。


おしまい
155 :れいなはれいなを抱きしめていたい :2011/09/09(金) 04:01
 おっさんの顔がキモい。変な福岡弁使うのもやねこい。めんどくせい。おっさんの顔がキモい。「れいなちゃん」とか超馴れ馴れしい。馴れ馴れしいにもほどがあると思う。たまに「れいな」とか呼び捨てにする。あれはダメだと思う。いい大人が。互いの関係性もわきまえず。なめてんのか。めっちゃめんどい。でも年上だし、顔がキモい。料理は意外と上手い。これが困った。キモいんだけど上手い。どういうことだろう。なんで生きてるんだろうあの人。キモい。
 悪いけれども私は結構自分のことをかわいいと思ってる。残念ながら。どんだけブサイクだガタガタだと言われようとも自分のことを結構かわいいと思う。もしかするとすばらしくかわいいのかも知れないとか思ってる。ははは。うれしい。自分がかわいいと元気が出る。さゆみたいだ。止めようと思った。こういうのは止めよう。自分のことをかわいいとか言うのはやめとこうと思う。さゆみたいにはなれない。っていうかなりたくない。売れるけどね。いや、あれは売れてんのかな? よくわかんないけどとにかくみっともないと思った。
 私は割と道徳的だ。常識的と言ってもいい。芸能人にしてはかなりのもんだ。おっさんとは違う。おっさんは変というか、変人ぶってるだけのクソ野郎だと思う。きっと何者にもなれないだろうお前。つーか、何者にもなれなかったかわいそうな人。だから私はおっさんを救済してあげるのだ。やさしい。天使。れいなちゃんマジ天使。NHKへようこそ的な。でも私は岬チャンほど自分を見失ってない。超クール。私クール。
 おっさんのうざいところ:セクハラをする、バレるようにオナニーをする、人の洗濯物の臭いを嗅ぐ、多分それでオナニーとかしてる。超キモい、最低、もっとやれ、私で抜け、ざまあみろ、それだけ私は魅力的なのだ。おっさんは多分童貞、キモい。童貞とか。マジで。無いし。内親王。あっぱらぱー。でも料理は上手い。顔はキモい。ハゲてはいないけど枕からお父さんの臭いがする。あれ結構いい臭い。落ち着く。たまにおっさんの肌着とか臭い嗅いだりする。落ち着く。すごい。なんていうか。濡れる。いや嘘、ごめんなさい。濡れないです。ありえないだろ。濡れない濡れない。ただ少しオナニーらしきことをしてみたりする。うひゃあ。キモい。しないしない。ありえないだろ。おっさんの顔がキモい。たまらん。キモいのたまらん。愛しい。好き。抱いて欲しい。私は処女。
156 :私はよしごまを抱きしめていたい :2011/09/10(土) 03:09
「なにが?」
 なにがってなにが? 私は首を捻った。
「今なんか言ったっしょ」
「いや、なんにも」
 ふーん、と言ってよしこはハッピーターンを食べたので、私も食べた。
「いや、だめっしょ」
「なにが?」
 今度は私が訊いた。
「それ」
 よしこは私の顔、ハッピーターンの付近を指して、その指先をリズミカルに振るった。
「だ、め、でしょ」
 ハッピーターンはうまい。良い。何もダメではない。よしこの言うことがよく分からない。ぼんやりした。
「だからさあ、それ、あたしのだから」
 そういうことでしたか。私は「ごめん」と言ってみた。別にすまないとか申し訳ないとかは思ってなかったが、とりあえず言っておいた。謝ることで済むのならいくらでも謝ってやるぞ、という風に思っていた。謝罪というのは一つの戦略、つまりストラテジーであり、私の哲学なのだ。
 よしこは「心がこもっていない」「誠意が感じられない」「本当に済まないと思っているならば、今食べかけているそれを最後まで食べきらないものだ」「今すぐコンビにへ走って、新しいカントリーマァムを買い求め、謝罪の言葉と共に土下座して、それを献上すべきだ」というようなことをべらべら喋った。
 私はなんだかとても憂鬱な気分になったのでもう一枚食べた。よしこは「もうっ」と苛立った口調で言い。ハッピーターンを買ってくると言い残して、家を出たっきり、二度と戻らなかった。事故に遭って死んだという話を風の噂で聞いた。驚きはしたけれども、あんまり悲しくはなかったので、そのことにまたびっくりした。なんて薄情な人間なのでしょう。ハッピーターンうまい。よしこの命日には墓前にカントリーマァムをおそなえすることにしている。手を合わせて、ごめんね、と言ってみる。誠意がこもっているだろうか。どうだろうか。わからんが、よしこがあのぼんやりした顔で「なにが?」と言う様を、時々思い出したりしてみる。


おしまい
157 :私はよしごまを抱きしめていたい :2011/09/11(日) 11:58
やっぱりまだ終わらない!よっすぃーが死んじゃうなんて悲しすぎる!
いやだ!死なないで!お前が死ぬのならおれが死ぬ!いやだ!死にたくない!
というか書いてから男が出てこないことに気付いて慌てたよね。
やべえ!このままではもやはほとんど死んでいる黒板が本当に死んでしまう!
ぼくはそのような危機感を覚えました。
158 :私はよしごまを抱きしめていたい :2011/09/11(日) 11:58
 よしこが死んだ、という噂はうそで、デマだった。私が毎年参っていたよしこの墓はどこの誰か知らんがともかく吉澤さんの墓だった。うっかりしていた。すっかりうっかりしていた。おっちょこちょいだった。近所の墓地に「吉澤」と書かれた墓があったもんだから、てっきりこれに違いない!と思ったのだった。やはりよしこの死に少なからず動揺していたとみえる。私は薄情ものではなかった。よかった。救われた。
 よしこは何の前触れもなく、ふらりと帰ってきた。というか、最寄りの駅前でぶらぶらしているのを見つけたのでとっ捕まえた。
「あは、見つかっちゃった」
「なにしてんの」
「あ、そうそう、お土産があるんだよ」
 よしこはアーモンドチョコをくれた。そこのセブンイレブンで買ったんだ。四粒ぐらい食べちゃったけど、ごっちんも私のハッピーターンを二枚も食べたんだから、おあいこだよね。だってハッピーターン一袋における二枚の価値っていうのは、アーモンドチョコ一箱における四粒の価値に匹敵するものだもの。とか、相変わらず奇天烈なことを言いやがるから、私はとてもうれしくなってしまい、よしこを抱きしめておいおいと泣いた。「そんなに泣かなくたって」とよしこは狼狽し、
「分かったよ! ちゃんと新しいの買ってくるから待ってなさい!」
 言って、セブンイレブンへ向かって駆け出したところを車に轢かれた。あ、これは即死だなあと思った。脳みそが酷く飛び出しており、通行人が激しく絶叫し、ドライバーの男は遠目から見ても一目瞭然なほどに青ざめてぶるぶる震えていた。
 ぶるぶる震えながら、よろよろと車から降り立ったドライバーたる男(見た目が割とキモい)は、よしこの死体のそばにひざまずき、大丈夫ですか、ケガはありませんか、とか言っていたが、よしこは誰がどう見ても死んでいた。脳みそが道路にぶちまけられていた。来年のよしこの命日には、一体何をおそなえしたらいいのだろうなあと私は考えていた。


おしまい
159 :私はよしごまを抱きしめていたい :2011/09/11(日) 19:24
なんでだろう!どうしてこうなるのだろう!
よっすぃー死なないで!死んだら嫌だ!
お前が死ぬぐらいならおれが死ぬつってんだろ!
そしておれはまだ死にたくない!絶対死にたくない!
童貞のまま死ぬなんてまっぴらだ!だから死なないで!お願い!
160 :私はよしごまを抱きしめていたい :2011/09/11(日) 19:25
 どっこいよしこは生きていた。むくりと起き上がった。男(見た目が割とキモい)は驚いて尻餅ついて漏らした。糞尿。通行人がますます激しく叫んだのち「え? 撮影?」周りを見回して急に冷静になった。ねーよ。撮影でも役者の脳みそは飛び出したりしないし、挙句起き上がったりしない。普通に痛ましい事故だと思う。しかしよしこは生きていた。なんという生命力だろう。ありえないと思う。だけど「よしこだからまあ仕方ないよなあ」という気がした。
「いてーじゃん、なにすんの」
 よしこは男(見た目が割とキモい)の胸ぐらを掴んでゆさゆさした。
「ひいっ、すいませんでした」
「すいませんで済むわけないっしょ? なめてんの?」
「ごめんなさい!」
「ごめんなさいならしょうがない。許した」
「ありがとうございます!」
「バカヤロー!」
 よしこは男(見た目が割とキモい)を殴った。その一撃で気を失ったように見えた。パタリと倒れた。自らの作り出した糞尿の湖に顔を埋めた。ますますキモい。
161 :私はよしごまを抱きしめていたい :2011/09/11(日) 19:26
「あー、めんどくさい」
 よしこは地面にぶちまけられた脳みその欠片をひょいひょいと拾い集め、一つ一つ頭に放り込んでいった。
「ねえ」
「なに?」
「大丈夫なの?」
「へーきへーき、このぐらい」
 割れた頭をバシバシ叩きながら誇らしげに言った。
「そうなの?」
「そうだよ、文句ある?」
「ないけど、普通死ぬんじゃない?」
 よしこはキョトンとした。血まみれの顔でキョトンとした。
「え? 死なないよ?」
 それで私の顔をじっと見た。なんだよ。照れるからやめろよ。
162 :私はよしごまを抱きしめていたい :2011/09/11(日) 19:26
「なに? 死んでほしかった?」
「まさか」
「食い物の恨みは怖いなあ」
「そんなんじゃないって」
「これで死ぬとかどんだけ虚弱だよ」
 よしこは車の下の方に入り込んだ欠片をごそごそ探しながら言う。そうなのか。虚弱とかそういう問題だったのか。知らなかった。
「脳みそなんてまあ、あってないようなものですし」
「そうなんだ」
「そうそう、私は子宮で生きてるから」
「へえ」
「うわっ! これうんこついてる! クソ野郎!」
 よしこは男(糞尿まみれ)の腹を思い切り蹴った。ゴフッという音がした。それはいくらなんでもちょっとかわいそうな気がした。いくらキモいとはいえ、気を失ってる人間に暴行を働くのは人道にもとると思った。
「やめなよ」
163 :私はよしごまを抱きしめていたい :2011/09/11(日) 19:27
 よしこは脳みその欠片(糞尿まみれ)を私の鼻先に突き出して言った。臭った。
「あげる」
「いらないよ、ばか」
「ですよねー」
 パクリとそれを食べた。「あ、なかなか、イケる、香ばしい、アーモンドチョコみたいだよ」と言って、よしこはまた一つ、私に差し出した。
「いらねえよ」
「えー、よっちゃん悲しい」
「頭おかしいなおまえ」
「だって脳みそ壊れちゃったもん」
 じゃあ仕方ないなあと思った。それじゃあ仕方ないよ。ふと視線を感じて振り向くと、れいなちゃんが驚愕の顔つきで私たちを見ていた。ははは。れいなちゃんかわいい。ぞっこんLOVE。


おしまい 
164 :名無飼育さん :2011/09/12(月) 08:14
頭がぐらんぐらんする衝撃がある。強い言霊を感じる。作者は天才だと思う。
165 :私はよしごまを抱きしめていたい :2011/09/15(木) 04:22
れいなは激怒した。それは褒めすぎだと思った。
166 :私はよしごまを抱きしめていたい :2011/09/15(木) 04:23
 れいなは猛然と吉澤の懐へ駆け込み、あらんかぎりの力で体当たりをした。吉澤はあっと言う間もなく背中から糞尿の池に着水した。クソが跳ねた。後藤は心底嫌そうな顔をして、吉澤の顔を蹴り上げた。吉澤は死んだ。
「くせえ」
 後藤が言った。れいなはまったくだという顔をしてうんうんと頷いた。そして男(見た目が割とキモい)のそばへ歩み寄るとそっと口付けをした。さようなら、の意味だった。男(見た目が割とキモい)は満足そうに頷いて死んだ。
「後藤さん」
「なに?」
「抱いてほしいっちゃ」
 れいなには愛がわからぬ。けれども、性欲に対しては人一倍に従順であった。後藤はぽかんとした。実際に「ぽかんっ」と言ってもいるようだった。れいなはますますその後藤の愛らしさに心を寄せ、つい先日は満月だったことを思い出した。「月がきれいでしたね」れいなが言った。
「知らないよ、興味ないもん」
 れいなは体の芯から火照るようだった。あまりの性欲の昂ぶりに勃起すらしていた。陰核が自己主張を繰り返した。傍目から見てもそれと分かるぐらい乳首が屹立し、もはや衣服を切り裂いて、露出しているようだった。死んだ吉澤は節操もなく蘇り「遥かなる大地に咲いた一輪の薔薇」と評した。後藤は吉澤の図々しさにむっとした。れいなが顔を蹴り上げるとまたすぐに死んだ。恍惚の表情であった。
167 :私はよしごまを抱きしめていたい :2011/09/15(木) 04:25


 私は地獄の覗き窓からそれを見ていた。れいなが後藤に欲情しているのはすぐに分かった。大事なものは失ってからそれと分かるとはよく言ったもので、すぐ目の前に、あの愛おしいガタガタなお目々が、未だかつてなく、つぶらにくりくりしていようと、罵ることもできず、またあのおもちゃみたいな白くて短いぷにぷにした手足に、触れることができない、というのは、なんと悲しいことなのだろう。
 おれはもう二度とれいなのパンツのクロッチのあの黄ばみを拝むことも舐めることも嗅ぐことも叶わないのか。ああ神様仏様、世界はなんと残酷なのでしょう。人生とはなんと儚いのだろう。私は今すぐKiss me WowWow Go Away I Miss You 大好きだからこの腕でれいなちゃんを抱きしめたいです。
「いいよ」
 どこからか声がした。私の祈りが、心の叫びが、神に通じたのだ。
168 :私はよしごまを抱きしめていたい :2011/09/15(木) 04:25
「いいえ、吉澤です」
「そうですか」
 落胆した。
「あなたのことはどうでもいいです」
「えー、ひどくない?」
「どうでもいいです。というか、あなたのせいで私は死んだのです。むしろ憎いです」
「わたしだってあんたのせいで死んだんだけど」
「それは嘘です。あなたは私が車で轢いてもぴんぴんしていました」
「脳みそなんて飾りだもの」
「そうですか」
「そうだよ、なに? 舐めてんの?」
「いいえ舐めてません。舐めたいです」
169 :私はよしごまを抱きしめていたい :2011/09/15(木) 04:26
 吉澤はいやらしい顔をして「いいよ」と言った。私は勃起した。れいなすまない、私はこれからひとみちゃんを抱く。童貞を散らす。夢にまでみたセックス。しかもあのひとみちゃんと! 夢のようだ! 生きる元気が沸いてきました! おれ、この童貞を捨てたらセックスするんだ! 今日も道路を歩き去る人と車の数を元気にカウントしていこうね!
 ひとみちゃんはするすると服を脱ぎ、私はどきどきしながらそれを見守った。破れそうに繊細で天才的なお肌だった。ワイシャツ一枚の襟元のあたりでそれがチラチラした。すぐ下には乳房と思しき肉が張り詰めているのが見えた。ひとみちゃんの目元はいよいよ麗しく、唇は濡れたように震え、顔面に点々とするホクロの存在感がいやましに増した。下着の色は黒。肌の白さが映える。つい吐息が漏れる。「ああ……」うっとりした。ひとみちゃんもうっとりしていた。
「もっと見て……」
 しかしいざとなってみると罪悪感がこみ上げるもので、ああほんとうにすまない。申し訳ないと思う。私のためにいじらしく処女を守っていたお前を置いて、地獄なんぞに落ちてしまってすまなかった。ここは淫猥地獄だ。ひとみちゃんがこんなに淫乱だとはしらなかった。困った。ごめんなさい。れいなちゃんごめん。まじで。許してね。許してちょんまげ。愛してる。愛してるから。たとえ童貞を別の女で捨てたって……れいなちゃんに対するこの愛は変わらないと思うよ……なんかそんな気がするんだよね……そう、ポジティブに考えてみるといいと思うんだ。愛した女以外で童貞を捨てることを、ポジティブにね。
「舐めて……」
170 :私はよしごまを抱きしめていたい :2011/09/15(木) 04:27
 色気たっぷりにご開帳したひとみちゃんのひとみちゃんは、なんかもう筆舌に尽くしがたいほどただの内臓だったので萎えた。急激に萎えた。それはもう驚くほどだった。なんだろうこの頭おかしいババアは。穴の周辺から糸引いとるやないか。汚らしい。なんやねんこれ。真夏に腐らした玉ねぎみたいな腐臭がする。ものすごい糸引いてる。汚い。臭い。私の明晰なる頭脳は「これは汚物である」との判断を下した。これは女性器ではない。まんこではない。こんなところにちんこを入れてはいけないし、ましてや舐めるなどということは言語道断である。病気になるぜ。おいおい。病気になっちまうよ! れいなはもっと、髪の毛から服から下着から、いい匂いがしていたし、どこをどう見ても、かわいかった。愛らしかった。れいなはな! こんな内臓を外に晒け出して感極まったような顔してるお前とは違うんだよ! おい吉澤よ! てめえなんかと誰がやるものか! 頼まれたってやらないね! この淫乱! ビッチ! 汚物! セックス。ああ! れいなちゃん! セックス。
 私はれいなを抱きしめていたい。


おしまい
171 :れいなはれいなを抱きしめていたい :2011/09/22(木) 03:45
 自慰の時の焦燥感。焦がれている。憧れている。利き腕が前後する筋肉疲労が、股の間から得られる摩擦感と一緒になって感覚されている限り、絶対に辿り着きようのない性的遊戯に。その途方もない自己完結感の、視線の先にある、あまりにも動物的かつ愛おしい循環運動が、アスファルトを抉るドリルのように、何度も何度も女の虚空を突く。メランコリーの籠だ。それは絡まって、まるでゴミのようだったが、驚くほど美麗にくるくると回転した。木のまわりをぐるぐると回っているといずれ溶けて、香ばしいバターに変わってしまう。それで焼いたパンケーキの甘さを思った。絶頂に至る寸前から最中の、すべてが一瞬で繋がって、すべてが一瞬で解けていく感覚。永遠に解決をみることはあり得ないだろう。肛門が何度かグッグッと緊張し弛緩した。太股はうち奮え、背筋は凍ったように伸び、その衝撃は頭の先からつま先までを貫いた。唇を固く噛み締めて、魂がどこかへ迷子になってしまわないように、目を閉じ、残った腕できつく体を抱きしめた。
 焦燥感は消え失せて、肉体の疲労と痺れ、ぼんやりする意識だけが残った。濡れた指先を何度か鼻先ですり合わせ、立ち昇る生々しい臭いを嗅いだ。れいなはその臭いが好きだった。
172 :私はれいなを抱きしめていたい :2011/09/22(木) 04:03


 地獄もそう悪いところでは無かった。たまに鬼のような目をした圭ちゃんが暴力をふるうといったことはあったが、基本的にそれ以外はつつがなく、平穏そのものであった。何より死人は腹が減らないし、いくら射精しても肉体の限界というものが皆無であったから、むしろ天国のようだった。
「地獄でこれならば、天国ってのはどれだけすばらしいところなんだろう」
 圭ちゃんは金棒をうち振るう手を止めて言った。
「すべての煩悩から開放された、それはそれはもうすばらしい世界らしいよ」
 圭ちゃんの金棒は股間を何度も打ち付け、私はその度におそろしい痛みを伴って射精した。

 地獄の覗き窓かられいなの痴態を覗き見るのが習慣化した。れいなは一日に最低三回はオナニーに興じるものらしかった。寝起きに一発、昼飯を食べて一発、夜のまどろみのなか、一時間から二時間をかけて、その日一日の総決算のような一発。終わる度、れいなは濡れたままの指先を、鼻先で何度も擦り合わせて、ものすごく遠い目をした。その目はあまりにも焦点が合っていなかったから、もしかするとこちらの姿が見えているのかもしれなかった。
173 :私はれなごまを抱きしめていたい :2011/09/22(木) 04:15
 時折、れいなのもとにごっちんが訪ねてくるようだった。ごっちんは「げんきー?」とか言ってへらへらしており、れいなは戸惑うような、はにかむような顔をして、ごっちんのためにコーヒーを淹れたりした。不思議な光景だった。れいなが家事をするとか、考えられないことだったので。私が買いだめしておいた、セブンイレブンのいつものコーヒーはまだ切れていないようだった。
 ごっちんは大体いつもどうでもいい話、セブンイレブンのこのお菓子が美味いとか、昨日道に捨てられている猫を見たので見捨てたとか、自分がモーニング娘。だった頃の輝かしい思い出を語ったりした。れいなはごっちんの語る一語一語、全てを聞き漏らすまいと、つぶらでがたがたな瞳でもって、その顔を、唇を見た。頬が赤く染まっていた。れいなが欲情しているのは明らかだった。ごっちんはおそらくそれに気付いているのに、気付かないふりをして、喋ることがなくなると帰った。帰り際、いつも数万円の現金を置いていった。ごっちんが何をしたいのかはよく分からなかった。たぶん寂しいのだろうと思った。
174 :私はれいなを抱きしめていたい :2011/09/22(木) 08:14
 れいなはごっちんの置いていった万札を一枚手に取り、ピラピラと裏表を確認し、照明に透かして見た。別に何の変哲もない福沢諭吉だった。それからおもむろに匂いを嗅いだ。それを全ての万札でやった。どうやら6万円あるらしかった。れいなはしばらく机の上に散在した6万円を眺めていた。何を考えているのかよく分からない。昔からそうだったので、別に深い意味も無いんだろうと思った。
 今度はごっちんが使ったコーヒーカップを手に取った。ぐるぐると回転、眺め回し、ふちのところにうっすらと唇の跡が残っているのを見つけるとにやけた。私はそのれいなの表情に一種の予感を得て、素早くズボンとパンツを脱ぎ去って準備した。既に臨戦態勢であった。握り締めた。
 れいなはそのごっちんの唇の跡を、色んな角度、色んな距離からつぶさに眺めた。獲物を狙う猫の目である。くりくりと黒目勝ちで、これほど愛らしい表情はなかなか拝めるものではない。ごっちんの飲み残したコーヒーの匂いを嗅いで、少しだけ舌先で舐めた。唇の跡を眺める。コーヒーを舌先で舐めるようにすする。何度かそれを繰り替えした。それはあまりにも余韻たっぷりに、時間をかけて行われるので、私は少しずつイライラしてきた。あまりといえばあまりにもじれったかった。
175 :私はれいなを抱きしめていたい :2011/09/22(木) 08:15
 れいなはハアとため息をつくと、おもむろに下半身へ手をやった。ついに来た! 私は大いに歓喜し、握る手に力を込め、激しく前後させた。すでに生々しく青臭い香りが立ちこめていた。
「なにやってんのあんた」
 背後から声がし、振り向く間もなく頭にひどい衝撃を受けた。圭ちゃんが私に暴力をふるう。やめて。堪忍して。今だけは、お願いだから。今しばらくは堪忍してください。圭ちゃんは私の願いを聞き入れることなく、何度も力を込めて鬼の金棒を脳天に叩きつけた。顔面が崩れていくのを感じた。「どうせもとから崩れてるじゃない」と圭ちゃんは笑ったが、そういう問題ではない。目と、耳だけは、勘弁してくれ。今ここで目と耳を失ってしまったら、どうやってれいなの痴態を拝み、れいなの淫乱な喘ぎ声を聞いたらいいのだ。赤く染まる視界の端で、れいなはデニムのショートパンツを脱ぎ初めているようだった。ああ! 真実の赤いフリージア! れいなの下着の色はよく分からんかった。赤かった。
 まず目がつぶれた。まっくらになってしまう。れいながか細く荒い息を吐くようだった。いまれいなはどんなあられもない恰好をしているのだろう! 見たい見たい見たい。なんで見えないんだ。悔しい。あまりにも、あまりにも悔しかった。勃起が止まらなかった。れいなの息遣いはすぐ耳元で聞こえるようだった。見たい見たい見たい! 死んでもいいから、れいなの痴態が見たかった。
176 :私はれいなを抱きしめていたい :2011/09/22(木) 08:16
「なに勃起してんだ」
 股間に金棒が降った。二度、三度と金棒が叩きつけられる衝撃だけはよく分かった。とてつもなく勃起していたが、もうその正体が無かった。耳元で聞こえる、れいなの押し殺した淫乱な吐息! 全力でちんこをしごきたかったんだが、もう原型を止めてないんだからしょうがない。圭ちゃんはなんで私にこんなひどいことをするのだろう。あんまりだ。ひどい。これでは地獄ではないか。ああそうか、ここは地獄だった。そうだったそうだった。忘れていた。今までが何かの間違いだった。
 金棒の衝撃は止み、圭ちゃんは「まあこんなとこでしょう」と言った。れいなの切ない吐息と、ぴちゃぴちゃと卑猥な音が耳元で響いた。私にはもうその光景を眺める目が無く、握り締めこすりあげるべきちんこも無かった。こんなに辛いことは今までなかった。ただ、両腕は健在だった。いまなら、実に感動的な、ストイックな、イノセントな、プラトニックな愛情で、れいなのことを抱きしめてやることができるぞ。そう思った。
 両腕をれいなの吐息の聞こえて来る方へ伸ばした。暖かい感触があって、それはビクッと震えたようだった。
「なんとね、レディーの嗜み中! 邪魔するんじゃなかと」
 れいなの声が鼓膜を打った、ような気がした。
177 :れいなはれいなを抱きしめていたい :2011/09/22(木) 08:37


 後藤さんは何でうちに来る度にお金を置いていくのだろう。よくわからん。あの人は何を考えているのか昔からよく分からん。でもなんか、とてもいけないことのような気がした。今日は6万円あった。6万円といったら、結構な金額だと思う。援助交際二回分。なんかやっぱりあんまり良くないことのような気がした。後藤さんはすごく切ない目で私を見る。なんだろうか。よくわからん。思い出を語る言葉の端々に、なんとも言えないいやらしさがあった。いやらしさというか、蔑みというか、嫉妬のような気もした。そんなに昔の思い出や、過去の栄光が大事なら、つんく♂さんに頭を下げてドリームモーニング娘。にでも入ればいいのだ。誰も咎めやしないと思う。ファンだって喜ぶと思う。なんなんだろうこの6万円。私にどうしろってんだ。バカにされてる気分だ。
 後藤さんはコーヒーがあまり好きではないらしい。知ってた。でも別に合わせてあげる必要はないと思った。唇のあと。リップクリーム。もやもやした。おっさんが使っていたコーヒーカップ。おっさんはキモかった。死んでセイセイした。これでいつでもオナニーができるというものだ。おっさんの使ってたコーヒーカップ。コーヒーの匂い。ついつい思い出す。なんだろうか。何を思い出すんだろうか。何にも思い出すことなどないし、私は後藤さんとは違って、過去に囚われたりはしない。そういうのは女々しいと思う。後藤さんは女々しいのだ。なんだろうこの6万円。受け取れない。あんまり考えたくない。
 むらむらした。最近はついつい一日三回やってしまう。なんだろう。虚しい。時間をかければかけるほど、どうしようもなく虚しい。やらなければやらないで、なんとなく負けた気がする。なんに負けるってんだ。意味が分からん、おっさんの居なくなった今、精一杯オナニーしないと、おっさんに負けた気がするのかもしれなかった。おっさんはキモかった。おっさんのコーヒーカップ。唇のあと。コーヒーの匂い。もう冷めてる。少し酸っぱい、変な味がする。どうしよもない。とりあえず私は負けないのだ。後藤さんにも負けないし、おっさんにも負けない。いっちょオナニーやで。うぇいうぇーい。
178 :名無飼育さん :2011/09/22(木) 19:54
破壊力半端ねえ
179 :名無飼育さん :2011/09/23(金) 01:36
うぎゃー、という叫び声で目が覚めた。時計を見ると真夜中だった。
一体何時だと思ってやがるんだあのクソガキは。
私はいきりたってれいなの部屋へ走り込んだ。

れいなはベッドの上で、半身起こして呆然としていた。
ちなみにれいなは寝るときにはユニクロのスウェットを着ている。
私はそれがダサいから嫌いだった。かわいいパジャマを買ってやっても、
なぜかれいなはユニクロのスウェットにこだわるのだ。胸糞が悪い。
「こら! 何時だと思ってる!」
「ああ」
れいなはぼんやりした顔で私を見た。眠い顔をしていた。
輪郭がはっきりせず、各パーツもてんでばらばらに散らばっていて、
非常にぼやけた福笑いのようなことになっていた。
私は思わず笑ってしまった。癒されたのである。
180 :名無飼育さん :2011/09/23(金) 01:36
「れいなちゃん、今はもう真夜中なんだよ、大きな声を出したらダメだ」
「ああ……」
れいなはまるで痴呆老人のようだった。
焦点の定まらない目で、ああ……とつぶやくばかり。
前々から頭のおかしい子だと思ってはいたが、
ついに、本当に、おかしくなってしまったのか。
なんてことだろう。うれしい。今ならヤレるかもしれない。
181 :名無飼育さん :2011/09/23(金) 01:37
れいなのスウェットの裾に優しく手をかけた。
「おぞましい夢を見たっちゃ……」
「え?」
「それはそれはおそろしい……夢だったっちゃ」
「そうかそうか」
上を脱がし、次は下である。
ラメラメしいピンクに、黒のレースの下着だった。
うん、これはちょっとビッチみたいで嫌だなあ。
これではまるでプロとセックスしてるみたいで、なんだか嫌になっちゃうなあ。
あとでちゃんと水色の下着に取り替えてあげるからね。
182 :名無飼育さん :2011/09/23(金) 01:37
れいなは無気力に、後藤さん……とつぶやいた。
いけない子だ。れいなは悪い子だな。
ごっちんのことなんて、今はどうでもいいじゃないか。
私はごっちんの張り裂けそうなおっぱいやふともものことをふと思った。
それに比べて、なんだろうかこの貧相な胸は、ビニールのおもちゃみたいなこの手足は。
183 :名無飼育さん :2011/09/23(金) 01:38
「ひどい夢だったっちゃ」
「どんな夢だったの?」思わず訊いた。
「それはここでは言えないっちゃ」
「じゃあ夢の中で聞いてあげるよ。いまは、そう、セックスだ。
 この水色の下着に着替えなさい」
「絶対に嫌だっちゃ」
「あれれ?」
「断固拒否するっちゃ」
「そんなこと言わないでよれいなちゃん」
「いやなものはいやなのだ」
「かっこいい」
「へへへーん」

私はれいなを抱きしめていたい。また夢の中で。
184 :私はえりりんを抱きしめていたい :2011/10/22(土) 00:59
ちょっと聴いてもらえますか? 私あれなんですよ、不感症っていうんですか、いや、感じるのは感じるんですけど、なんか物足りないっていうか、奥歯にものが挟まった感じっていうか、まあ太くて固い肉棒が欲しいっていうか。名前? 私の名前ですか? えりといいます。pictureの「絵」に、scienceの「理」で、絵理です。ちょっと難しかったかな? バカには英語なんてわかんねえよな? このゴミクズが。ごめんなさい、何でもないです。普通の、あの、筆とかを使って描く「絵」に、万物の理であるところの「理」で、絵理です。あ、筆っていっても別に男性器のことを暗に指してるとか、そういうんじゃないんで、ほんと、そういうのやめてもらえますか。そうやってすぐ卑猥な方向に想像するのやめてもらえますか。きたならしいんで。まじきもい。
 あ、ごめんなさい。気分を害されたりしましたか? 私ときどき人の気持ちが想像できない今時の若者になっちゃうんで、わざとじゃないんですよ。悪気があったわけじゃなくて。ただなんとなくあなたの顔がむかつくっていうか、なんて言ったらいいか……予想以上に気持ちが悪いですね。ハゲじゃん。デブだし。くっせえの。噂以上っていうか、そうそう、私が男性器を呼ぶときはちゃんと「ちんこ」とか言うんで、ほんと、お願いしますね。まじキモい。ウケるんですけど。まあウケねえけど。「おちんちん」とかは言いたくないです。なんか、バカみたいだから。キモいし。頭弱い女とか思われたくないんで。吐きそう。いつでも力強く「ちんこ」と言いきれる強い女、鉄のように猛々しい男根のようでありたい……! ああー! 楽しくなってきちゃった! 抱いてほしいなあ、なんて。ウソだよバーカ! なんていうか、私、不感症なんですよね。おちんちん欲しいっていうか。
 えっと、なんでしたっけ。あ、もしかしてあれかな? 「バンブツノコトワリ」とかちょっと難しかったかな? 大丈夫かな? わかる? 「コトワリ」って分かるかな? わかんねえだろうな、おめえバカだから。クズだもんな。あ、すいませんほんと。あの、全然喧嘩売ってるとかそういうのじゃなくって、ただ、えーっと、なんて言ったらいいのかなー? 何言ったっててめえみたいなバカにはわかんねえんだろうからどうでもいいんだけど。とりあえず私の名前は絵理といいます。「え」は普通に「絵」で、「り」は理不尽の理です。里田まいの「里」で書いた奴は殺します。名字は亀頭の「亀」に井伊直弼の「井」で亀井です。性別は女です。年齢は忘れました。だいたい20前後くらいの中肉中背の見目麗しい女の子です。不感症です。一応、れいなの知り合いをやってます。まじでめんどくさいです。今日はれいなに関してお願いがあって参りました。不感症の話は忘れてください。おまえマジでキモいな。楽しくなってきちゃった!
185 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 01:09
「友達を連れてきたっちゃ」と言って自慢げな笑みを浮かべるれいなちゃんがあげぽよ。
紹介された「絵理」と名乗る女の子の容姿もまた実にあげぽよであったが、
その口上からにじみ出る性格の悪さは実にさげぽよであった。
こんな女と友達をやっているれいなの性格の程度もタカが知れる。
今日というこの日はいかにもさげぽよである。
私はごっちんの無垢な笑顔とふとももを思って耐えた。あげぽよ。
186 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 01:22
「れいなちゃんとえりりんは友達なの?」
「友達だっちゃ」
「知り合いです。そのえりりんっていうの止めてください」
「そうかそうか、でお願いって言うのは何なのかな、えりりん?」
「まずそのえりりんというのを止めてください」
「そうかそうか」

れいなは実にいいことを思いついた!という顔で「絵理のことは絵理と呼べばよかとよ」と言った。

「呼び捨ても止めてください。私の名前をその汚い口で呼ばないでください」
「そうかそうか」
187 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 01:24
私は少し考える時間を必要とした。この絵理という女は実にいけ好かない。
どうしたらいいだろうか。これは非常に漠然とした抽象的な問いであった。
帰りたいと思った。今すぐに帰りたい。こんなさげぽよな空間からおさらばしたい。
母の胸に抱かれて眠るように息を引き取りたい。

「じゃあなんて呼んだらいいのかな?」
「まるでりんごやみかんと同じような調子で、
 まるで一般名詞であるかのように、亀井絵理、と呼んでください」
「なるほど」

実に哲学的である。実にインテリジェンスである。
私は頭のいい女とブサイクな女とれいなが嫌いだ。

「では亀井絵理よ、お願いとはなんなのだ」
188 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 01:30

「れいなが私のことを絵理と呼び捨てにするのを止めさせてください」
「ほう」
「それと私のことを友達呼ばわりするのも止めさせてください」
「ほほう、それは何故だね」
「私は私であり、れいなとは知り合いであるからです」
「なるほど、よくわからない」

れいなは愉快そうに「絵理はいつもおもしろいことを言うっちゃ」と言った。
まったくである。実におもしろい。実にさげぽよである。
私は頭のおかしい女とブサイクな女とれいなが嫌いだ。
189 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 01:30
れいな、よく聴け」
「なんだっちゃ」
「亀井絵理のことを絵理とか馴れ馴れしく呼び捨てにしてはいけないぞ」
「わかったっちゃ」
「あと、友達よばわりもいけない」
「わかったちゃ」
「互いの関係性をよくわきまえるように、貴様と亀井絵理は知り合いではあるが、
 決して友達ではないのだぞ」
「承知したっちゃ」
「わかればよろしい」
190 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 01:42

「ということで亀井絵理よ、満足しただろうか」

えりりんは真面目な瞳でれいなを見、れいなもその視線に応えた。
二人の間には何かしらの深い絆が、確かに産まれ始めているように見えた。
その絆は一般的には「友情」と名のつくものであるように私には思え、
つまり私は今まさに一つの友情が誕生する瞬間、その物語に立ち会ったのであり、
あげぽよである。

えりりんとれいなの交わすその視線は次第にとろけあい、まじりあった。
というのもれいなのお目々がガタガタにてんで他所を向いているからであり、
通常直線的に相交わされるべき視線が、それによって一種のカオッチクな、
神秘的な円環運動を為すのであって、それによりこの二人の関係性は
いよいよ深く互いの心中、深いところ、陰核の奥、膣の中、ヒダヒダへと
掘り進んでいくドリルとなり、その極めて概念的、観念的視線のドリル、
言ってみれば視線によって構成される仮想的ペニスが、
互いの膣を深く摩擦しあうことによっていよいよ激しく友情が高まり、
友情の高まりとともに官能的な色彩を帯びることとも結果なり、
つまり気付いたころには、二人の前で私は陰茎を露出することにもなった。
191 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 01:49
露出した私の陰茎はえりりんとれいなの視線を否応なく惹きつけ、
二人の視線を通した友情は、私の陰茎の上に花咲くことになるだろう。
そしてそれはとても美しい、一片の詩を、私の心へ残すであろう。

 五月雨を 集めて速し 最上川

私は唸った。名句がここに生まれた。えりりんとれいなの友情の結実。
それがこの一句である。
192 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 01:56
「納得がいきません」とえりりんが言った。
「誓約書を書いてください。
 二度と私のことを絵理と呼ばないこと、
 二度と私のことを友達などと言わないこと、
 二度と私の半径100m以内に近づかないこと、
 それらを誓う誓約書を書いてください。
 そしてそこに血印を押してください。
 月経開始2日目の経血で、血印を押してください」

れいなはにわかに不安そうな顔をした。
なんとなればれいなにはまだ初潮が来ていなかったからである。

「それは無理だよ、だってれいなちゃんには初潮が……」
「分かったっちゃ」

そう言い切ったれいなの顔の凛々しさ、それは実に美しいものであった。
思わずハッと息を飲む美しさであり、それはとても最上川が速かった。
193 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 02:10
私はえりりんの不感症のことをふと思った。

「亀井絵理は、不感症なのか」
「その話は忘れてくださいと言ったじゃないですか!」
「不感症ってなんとね」

れいながカマトトぶったので私とえりりんは「またか……」と思った。
私とえりりんはれいなのことが嫌いであるという点で一致していた。

「れいなはさっきああ言ったけども、実はまだ初潮が来てないんだよ」
「知ってます」
「来てるっちゃ、むっちゃ出るよ」
「何が出るのかな?」
「血」
「れいなちゃんの経血は何色なのかな?」

れいなはハッとした顔をして、おそるおそるといった感じで「……赤?」と言った。
えりりんが「おまえの血は何色だー!」と叫んだ。
私は「赤です!」と言った。
194 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 02:22
五月雨を集めて速い最上川の流れのように、れいなの股間から経血が流れる様を思った。
私はその流れに顔をつけて、カラカラに乾いた喉を潤したいと思った。
その時にはえりりんが横にいて、ただ笑っていて欲しいと考えた。
えりりんの不感症は、れいなの経血に洗われればきっと治るだろうと思った。
195 :私はれいなを抱きしめていたい :2011/10/22(土) 02:55
 むかしむかしあるところに、れいなとえりりんがいました。れいなはえりりんのことを友達だと考えていて、えりりんは不感症でした。れいなは粗野で鈍感でしたから、えりりんが不感症であるということに気づきもしませんでしたし、えりりんがれいなのこと些かうっとうしく思っていることも知りませんでした。えりりんははじめこそヤンワリと、れいなに対する拒絶を表明していたのでしたが、れいなは粗野で鈍感だったので、「絵理はちょっと変な子なのだ」と考えていました。実際のところ、れいなが粗野で乱暴で変な子なのであり、えりりんはふんわりとしたサブカル少女でした。えりりんはれいなといる限り、常にさげぽよなのでした。れいなは粗野で乱暴で内斜視で、世の中のことが上手く見えないので、大体いつもあげぽよでした。
 それはれいなが初潮を迎えた日のことでした。朝、目が覚めると、れいなにしては初めてのことですが、「なんだか今日はさげぽよ〜」という気分でした。股間が不快に濡れていて、それでさげぽよなのでした。あまりにもさげぽよなので、れいなは山ガールルックで新宿西口にあるルノワールへ出かけました。れいなはおしぼりで顔を拭くことに喜びを感じるタイプの人間でした。そのルノワールに勤めるさゆみんという女の子も、やはりれいなのことが嫌いでした。れいなが粗野で乱暴で内斜視のくせに、生意気にもアイスコーヒーをブラックで飲むからでした。
 えりりんとさゆみんは仲良しでした。互いの尻の穴のシワの本数すら知っていました。だからもちろんえりりんが不感症であるということも、さゆは知っていました。絵理の不感症をなんとかしてあげたい。さゆはそういうことを考えられるやさしい子でした。れいなとはそもそも遺伝子からして違っているような感じでした。れいなはあまりにも粗野で鈍感で内斜視でした。れいながルノワールにやってくると、さゆはとてもさげぽよでした。
 しかしさゆは「れいなの経血で身を清めると、えりりんの不感症は治る」ということを知っていました。そして幸いにして、今日、れいなは初潮を迎えたのでした。なんたる僥倖、しかしれいなと一切関わりを持ちたくはない、あんな粗野で乱暴で内斜視な女とは同じ空気も吸いたくない、そういう風にさゆは考えていましたし、えりりんがさゆと同じ気持ちであることも分かりきっていました。だからこそ、友達であるえりりんのために、ここは一つ私が犠牲になって、れいなの経血を手に入れてやらなければいけない、なんとなればえりりんのために、そう全てはえりりんの不感症の克服のためにです。
 そこで私は考えました。おれが、犠牲になれば良いのだ。おれが、れいなの経血を、飲めばよいのだ。そういう風に考えました。ほんとうにいやでした。私は本当にいやだったのです。れいなが嫌い、という一点において、私とえりりんとさゆみんは、ほとんど同じ存在であると言ってもよかった。だから、私が、れいなの経血を浴びよう。そう考えました。ほんとうに嫌だったのです。わかって欲しい。私がれいなのナプキンを今握りしめているのは、そういう事情であるからして、そこに一切のやましい気持ちなどない。わかって欲しいんだ。ね、れいなちゃん。ごめんよ。おまえの経血を浴びるように飲みたかったんだ。ただそれだけで。だから、ほんとうにごめんなさい。嫌いにならないで。えりりんなんて、どうでも、いいんだよ。
196 :れいなはれいなをれいなれいな :2011/10/22(土) 23:05
 さゆやえりが私のことを避けているのは知ってた。ずっと冗談だと思ってた。いじられるのおいしいですと思ってた。まさか本気で嫌われてるとは思いもしなかった。今でもまだ冗談だと思ってる。おっさんが「わきまえろ」と言った。互いの関係性を。お前がわきまえろと思った。お前に言われたくない。お前に。年齢と容姿と性格をわきまえてさっさと自殺しろと思った。
 そんなことはともかくさゆとえりの話だった。さゆが「誕生日にボジョレーヌーボーを一緒に飲もうね」と言っていたので、嬉しかった。えりが「れいなにボジョレーなんて勿体無い」と言った。いつものことだ。いつものこと。ボジョレーヌーボーって何? きっと私の誕生日には猫の生首とかをくれるのだ。「私たちだと思って大切にしてね」とか何とか書いてあるファンシーなメッセージカードと一緒に。おいしいです。私はその猫の生首を首から下げて仕事へ行くのだ。色んな人にいじられて、かわいがられるのでとてもおいしいです。
 夜の仕事をしている。ソープは怖かったのでキャバクラにした。色んな人が来る。みんなちやほやしてくれるので楽しい。誰も私のことを悪く言ったりしない。たまに「ちゃんと目を見て話せよクソガキ」とか酷いことを言う人がいる。てめえこそ。キャバ嬢ぐらいにしか威張れないくせに。死んじゃえばいいのに。他の人はみんな優しい。ちやほやしてくれる。楽しい。つまんない。さげぽよ。
 今日ふとももを触られた。「かわいいね」と言ったそのおっさんの年の頃は40半ばぐらいで、ハゲてた。お金持ってそうだなあと思った。ふとさゆとえりの顔が浮かんだ。おっさんにふともも触られてニコニコしてる私のことを見て二人は何と言うだろうと考えた。えりはニヤニヤして「れいなはすけべだね」と言うだろう、さゆは蔑んだ目をして「フケツ!」とかなんとか言うんじゃないだろうか。どうしよう。またいじられるのか。いじられるのおいしいです。想像しただけでゾクゾクした。おっさんが耳元で「今日この後空いてるの? 仕事終わるの何時?」と言った。息が臭かった。酒とタバコと加齢臭が合わさって、とてつもなく臭かった。私はニコニコして「ええ空いてますよ、今すぐにでも」言って、おっさんを殴って、店を出て、吉野家で牛鍋丼と豚汁を食べて、今に至る。
197 :れいなはれいなをれいなれいな :2011/10/22(土) 23:05
 どうしようもなく汚れた気持ちになった。どうしたらいいんだろう。助けてほしいなあと思った。さゆとえりに会いたい。さゆとえりにさっき起こった出来事を話して、それから、優しく罵られたい。猫の生首でも何でも持って来いや。かわいらしく身につけてやる。なめんなよ。れいなちゃんをなめんな。
 家に帰りたい。家に帰りたいなあ。家に帰ってもいいのだろうか。こんな汚れた気持ちで家に帰っていいのだろうか。家でおっさんが待ってる。心配してるだろうか。キャバクラで働いていることを知ったらなんと言うだろうか。きっと下卑た顔をするのだろうなあ。「れいなちゃん、ぼくのおちんちんもキャバクラです」とかよく分かんないこと言うに違いない。安心だ。いつも通りだ。おっさんに会いたいなあ。いや会いたくねえなあ。さゆとえりに罵られる方が先だろう。あ、店に携帯忘れてきた。しまったなあ。さゆとえりの番号分かんないや。おっさんの番号も分かんない。いやいや、おっさんは携帯とか持ってなかった。そうだった。時代から取り残された人種なのだ。あれは。そういう。化石みたいな生き物だ。生きてんのかほんとに。ふしぎ。あれで生きてられるのが不思議。お腹空いたなあ。さゆとえりに「お腹すいた」とか言ったら「これでもどうぞ」と言って猫の生首を差し出したりするんだろうなあ。いじられるのおいしいです。
198 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 23:23
れいなは深夜25時を回って帰ってきた。
私は「この不良娘! あばずれ!」と叱責した。
れいなはいつになくしょぼんとしていたので、
ちょっと言い過ぎちゃったかなあと思い、
「かわいいかわいい」と激励した。
それでもれいなは元気がなく、今にも倒れそうであった。
私は慌てた。非常に焦った。
牛乳をレンチンして人肌程度の温度にし、与えた。
れいなは「あったかいっちゃ」などと言いながら、
舌先でペロペロとその白い液体を舐めた。
199 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 23:23
「その調子でおじさんの白い液体も舐めてもらおうかな」
「こうだっちゃ?」
「そうそう、まず上着を脱がせて」
「こう?」
「そうそう、乳首を露出させてね、そこをこう舌先でペロペロと、ってコラ!」
「なんだっちゃ」
「おじさんの乳首からミルクが出るわけがないだろう!」
「なるほど」
200 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 23:23
れいなはやはりどことなく変な調子であった。
何かあったのだろうか。あまりに心配なので眠い。
れいなの調子がどうだろうがどうでもいい。もう寝たい。

「れいなちゃん、ちょっと今日変じゃない?」
「そうだっぺ?」
「変だよ、やっぱり変だ。どこの方言だそれは」
「栃木とかじゃないのかと思われる」
「変だ変だ」
「変じゃねえ変じゃねえ」
「変だよ、変すぎる! 変態!」
「何を言っているのだ」
「お前がだよ! やめてその口調! 変すぎて死ぬ!」
「死ねばよかとよ」
「あ、そうですね。死にます」
201 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 23:29
どっこい私が死ぬわけがないのだった。
死ぬような度胸があれば働く。

「れいなちゃん、何かあったのかい」

れいなはかぶりを振った。かぶりって何だろう。
よく分からない。皮被りのことだろうか。
れいなが私の皮の余った陰茎をふりふり振るのだろうか。
振られたい、そう思った。

れいなは遠い目をしながらキャバクラで働いていることを告白し、
今日ふとももをキモイおっさんに触られて、非常に汚れた気持ちになった、
そして携帯を店に忘れた、私のおっぱいはなぜこんなに小さいのだろう、
という話をした。
れいながまさかそのような深刻な悩みをその小さく薄っぺらい胸に
秘めているとはつゆ知らず、皮被りちんこをいじられたいとか思っていて
本当にすまなく思った。反省した。せめてフェラチオぐらいされたい。

「そうか……れいなちゃんにも色々あるんだね……」
202 :名無飼育さん :2011/10/22(土) 23:32
れいなは不服そうな顔をしていた。
どうもこのしんみりした雰囲気がいけないような気がしたので、
「れいなちゃん、ぼくのおちんちんもキャバクラです」と言ってみた。
れいなは途端にキャッキャッと喜び、私もキャッキャッと喜んだ。
しばらくお互いにキャッキャッとやっていたのだが、
唐突に飽きたので「寝るね」と言った。
れいなは「おやすみだっちゃ」と言った。

そうそう、いつもの感じ、いいですね、そうでなくっちゃあ、いけないよ。
私はそういうれいなを、抱きしめていたい。
203 :名無飼育さん :2011/10/25(火) 20:25
どうにかして土曜日
204 :名無飼育さん :2011/10/25(火) 20:26
始まりは雨の日の土曜日のことである。
れいなはさゆえりと一緒に新宿のユニクロへブラトップを買いに行く約束をしていた。
れいなはもう御年22歳になろうかというのに、一人で服を買いに行くということができなかった。
自分にファッションセンスがないということを自覚していたからだ。
これはれいなにしては珍しい客観的な態度である。

約束の時間になっても二人は現れない。10分待ち、30分待ち、1時間待った。
しびれをきらして電話を掛けてみても繋がらない。
あ、そうそう、そういえば着拒されてたんだっちゃ、とれいなは思い出した。
そもそも約束なんてしてなかったような気もしてきた。
事実、そのときさゆとえりは渋谷でカラオケに興じていたのであり、
れいなのことなんてからきし眼中になかったし話題にも上らなかった。
205 :名無飼育さん :2011/10/25(火) 20:26
れいなは約束を反故にされようが、
数少ない友人から着信拒否されていようが、
特になんとも思わなかった。むしろ嬉しいような気がした。
れいなにとっては約束は常に反故にされるものであり、
携帯は着信拒否されるものであったからだ。
「友達とはそういうものなのだっちゃ」と思っていた。

れいなは「いじめ」を「仲の良さから来るいじり」だと勘違いするタイプの、
憎らしいほどポジティブな人間だった。
もちろんれいな当人に自分はポジティブな人間であるという自覚はなく、
むしろ自分は落ち込みやすく繊細な人間であるという誤った自己評価を下していた。
それがさゆとえりのカンに触っていたのである。
206 :名無飼育さん :2011/10/25(火) 20:27
さて、新宿ユニクロ前にて「暇になってしまったっちゃなう」とれいなはつぶやいた。
暇ばい、そうだ、オナニーをするっちゃ、するっきゃないうぇいうぇい、とれいなは考えた。
「暇=オナニー」というこの発想の貧困さがれいなのれいなたる所以である。
猿にオナニーを教えると餌を探すのも忘れてオナニーに励んでしまい死に至るらしいが、
そこまでではないにせよ、れいなは人間より猿の方に近いだろう。顔は豚に似ているが。

れいなの初野外オナニーは、はじめおずおずと開始された。
猿(豚)であっても恥という感覚はあるものらしい。
そのオナニーは服の上から乳首を、また股間をこっそりとこする、
という慎ましやかなものであった。
しかし「オナニーをしている」ということは傍目からは歴然としており、
通り過ぎる人は一瞬ハッとした目つきでれいなのことを見やり、
すぐに目を逸らすのだが、大抵は名残惜しそうにチラチラと視線を投げた。
その「見てみぬフリ」が、れいなの劣情を刺激し、増長させ、次第に大胆になった。
207 :名無飼育さん :2011/10/25(火) 20:27
服の上から、などというのはもはやまどろっこしい気がした。
直接触っても別に構わんっちゃろ。周りから見えてなきゃよかと、見えてなきゃ。
れいなは服の中に直接左手を突っ込み、乳首をちょこちょこといじった。
(ちなみに、ブラトップ試着のためにノーブラであった)
パンツの中にも右手を入れて、ぐりぐりとれいなのれいなちゃんを刺激した。
(ちなみに、この日のれいなの服装は白のショーパンに黒のニーソックスであった。
 白のショーパンからはピンクのパンツが透けていた。そしてれいなはクリ派である)
208 :名無飼育さん :2011/10/25(火) 20:27
快感が身体中を支配していくに伴って、
「なぜ人間は服を着ていなければいけないのだろう」という問いが、
れいなの中で次第次第に大きくなっていた。
所詮人間はひとり裸で生まれ、ひとり裸で死んでいくのだ。
こんなものは脱いでしまえばいいのだっちゃ。脱いでしまえば。
れいなは思った。直観的に、そう思った。
「脱ぐと思ったとき、おれはすでに脱いでいる」とは誰の名言であったか。
気づいた時には、既にれいなはシャツをたくしあげ、パンツを膝までおろし、
小さくかわいらしいおっぱいを放り出し、
桜色のラビアを見せつけるようにして股を開いて立っていた。
そしていよいよ激しく左手は左のおっぱいを揉みしだき、右手は小粒な陰核をこすりあげた。

れいなは周囲の視線をそのちんちくりんな身体に痛いほど浴びながら、ゆっくりと果てた。
すぐ近くでサイレンが鳴っているのが聞こえた。

おしまい
209 :名無飼育さん :2011/10/26(水) 02:45
 警察から電話があった。れいなを引き取りに来いという。「うちのれいなが何かしましたか」詳しいことは署で話すからとりあえず来てくれとのことだった。めんどうである。私はできるだけ家から出たくなかったので、できることなられいなを引き取りに行きたくなかった。
 ので、そちらの都合でれいなを拘束監禁陵辱してもらっても結構ですと伝えた。警官は「そうしたいのは山々ですが、仕事なので」と言った。彼は耳触りのいい声をしていた。思わず名前を訊くと、「小林です」とはにかんだ声で彼は答えた。下の名前はユウキというらしかった。「どういう漢字を書くのですか」「勇気の勇に勇気の気で勇気と書きます」「いい名前ですね」私の声はとても落ち着いていた。小林勇気はやはりややはにかんだ声で「ありがとう」と言った。そこで電話は切れた。
 私は何か重大なことを忘れているような気がした。のだったが、それがなんなのかよく思い出せなかった。夏が終わってしまったからだろう。今年の夏は、私にとって、最後の夏だった。何の最後かというとそれもよく思い出せない。とにかく私の最後の夏が終わり、夜風も冷たく、鈴虫がりんりんと涼やかな、秋が来ていたのだ。冬ももうそこまでやってきており、そろそろコタツを出してもいいような気がした。
 思い立ったが吉日というもので、私は速やかに床に散乱する陰毛や綿ぼこりを拾い集め、それらをぐるぐると手で揉んだ後、食べた。埃っぽい味がした。当然である。喉がいがらっぽく、また眠気も感じたので、コーヒーを入れて飲んだ。きれいになった床を見て、やはり自分は何か重大なことを忘れている気がした。のだったが、よく思い出せなかった。それはやはり今年の夏が最後の夏であるからで、その最後の夏あるところの一季節が終わってしまったからだろうと思った。
210 :名無飼育さん :2011/10/26(水) 02:45
 そうだ、コタツを出すのだった。思い出した。私は速やかにコタツを出し、速やかにそこへ足を突っ込んで、本などを読みながらまどろんだ。いい季節になったものだ。しかし何かが足りないな、それはなんなのだろう。うまく思い出せない。コタツ、コタツといえば鍋、鍋といえば、そうだ、小林勇気を呼んで、鍋でも囲みたいものだ。そして彼と一緒に猥談などをやろう。それを思うとわくわくした。小林勇気と、仲良くなろう。なんと言っても、夏が終わったのだからね。
 コーヒーカップと本だけが載せられたコタツを見た。そこには明らかにみかんが欠けていた。そうだそうだ、鍋の前に、みかんだ。コタツにはみかんと昔から決まっているのだ。明日買いに行こう。ついでに鍋の具材も買ってきて、小林勇気とつつき合うのだ。わくわくする。秋も悪くない。しかしなんだろうか、圧倒的に重要なことを何か忘れている気がするのだ。不思議なことに。コタツとみかんと鍋と小林勇気、これだけあれば、もう何の不自由もない秋を迎えられるはずなのだが、それでも決定的に重要な何かを忘れているような気がしたのだ。
 私はコタツから這いずり出ると、コーヒーカップを持って部屋中をうろうろした。私は何を忘れているのか。壁を見た。カレンダーがかかっている。先日は私の誕生日だった。特にそれ以上何かあったわけではない。その日はごく普通に自室を専守防衛していた。誰かからブラックサンダーを貰った。あれは誰だっただろう。小林勇気のような気もしたが、違う気もした。そもそも私の誕生日はその日だったのかどうかすら疑わしい。ブラックサンダーは、ただ単に、たまたま家にあっただけなのではないか。
 床を見た。チリ一つ落ちていない。完璧な仕事である。自室自衛官の主要な仕事の一つは自室の掃除である。私はキレイ好きなのだ。いや、よくよく目を凝らして見ると、部屋の端々にまだ幾本かの陰毛が落ちているようだった。これには憤慨した。私は自室自衛官の誇りにかけてガムテープでそれらを退治した。妙に長い、赤茶けた髪が数本絡まっていた。おやと思った。誰の髪の毛だろう。きっと幽霊だな。おばけの類は嫌いだったので、見て見ぬフリをして捨てた。
211 :名無飼育さん :2011/10/26(水) 02:47
 PCデスクの前に戻った。そこには何故か黒のニーソックスと、ピンク色のパンツが置いてあった。おやおやっと思った。とりあえず匂いを嗅いだ。懐かしい芳香がした。この臭いはれいなの臭いだな、と思った。私はしばらくニーソックスのつま先の部分と、膝裏にあたる部分の臭いを交互に嗅いだ。何度匂ってみても、それは明らかにれいなの体臭であった。つま先部分はレモンのようにとても酸っぱく、膝裏部分は桃のように爽やかな香りである。
 くしゃくしゃになったピンク色のパンツを広げて、クロッチの部分をまじまじと見た。うっすらと黄ばんだ縦線が着いていた。そこに触れると、少しパリパリしていた。鼻を近づけると、銀杏のような、鼻の奥にツンと来るような、しかしずっと嗅いでいたいような匂いがした。これもどう考えてもれいなの匂いだった。舐めてみるとやや塩辛かった。その味よりも、舐めることによって喉の奥から鼻に抜けていく刺激臭が、より強くれいなのことを思わせた。
 パンツを変態仮面のように被り、ニーソを顔に巻きつけた。丁度鼻のところにつま先の部分が来るように。PCでgoogle chromeを立ち上げて、検索バーに「田中れいな 水着」と打ち込んだ。Naverのまとめをじっくりと見た。足先と、股間のあたりを凝視した。ちんこをこすっているうちに射精した。
 私はれいなのことを思い出した。今すぐ迎えにいこうと思った。私はれいなを抱きしめていたい。
212 :名無飼育さん :2011/10/26(水) 17:51
家畜人ヤプーみたいに圧倒されるわ
213 :名無飼育さん :2011/11/04(金) 06:17
赤と青
214 :名無飼育さん :2011/11/04(金) 06:17
盆も過ぎた砂浜で、女が一人呆然と立ち尽くしていた。遠い目で暮れゆく夕日を見つめている。
それはまるで映画のワンシーンのようで、とてつもなく美しい光景であった。
彼女はスクール水着を着ていた。それはわざとらしいまでの真っ青な青色で、
一見して安物だと分かる愚劣な品であった。私はこれに堪えきれなかった。

「何をしているんだい。そんな安物のスク水(的な何か)を着て」

彼女はハッとした顔で一瞬後ずさり「何者だっちゃ!」と鋭く叫んだ。
と同時に両手を前に突き出し、腰を引いた。それはどう見ても私を警戒している体勢であり、
その素早い挙動はちょっとしたエスパー伊東である。
ことによると彼女はその道の人(つまりエスパー)であるのかもしれなかった。

「何をしているのかと訊いている」
「見ての通り、遠い目で暮れゆく夕日を見つめていたっちゃ」
「その目で?」
「この目で、だっちゃ」

女は妙な目をしていた。典型的内斜視である。目を合わせようとすると、するりと視線を交わされてしまう。
215 :名無飼育さん :2011/11/04(金) 06:18
「私の目を見ろ」
「見てるっちゃ」
「見てないだろう。ちゃんと、その二つの目で、私の目をしっかりと見るんだ」
「こうだっちゃ?」

女は寄り目をした。妙な顔である。愛らしいと言えば愛らしいような気もした。

「まあいいや、こんな時季外れのビーチで何してるの?」
「だから遠い目で暮れゆく夕日を……」
「いや、それは分かってるんだよ」
「じゃあ何が訊きたいっちゃん?」
「まず名前を教えなさい」
「田中れいなと言います。れいなって呼んでくれてよかとよ」
「スリーサイズは?」

れいなは意地悪そうにニヤリと笑うと「乙女の秘密!」と叫んだ。
少し腹が立ったが、まあそれは別にどうでもよかった。

「で、その遠い目をして、暮れゆく夕日を眺めていた理由が知りたいんだけどね」
「ちょうどそんな気分だったんだっちゃ」
「センチメンタル?」
「センチメンタルばい」
「まあそれはどうでもいいんだけど、その安物のスク水(的な何か)はどうにかならなかったのかな?」

れいなは途端に泣きそうな顔になって、俯きがちに以下のようなことを物語った。
216 :名無飼育さん :2011/11/04(金) 06:19
れいなはさゆとえりという友達と一緒に、シーズンオフの海に遊びに来た。
海を見ればちゃぷちゃぷと水遊びなどしてみたくなるのが年頃の娘のサガである。
れいなが海へ足を踏み入れると、さゆとえりはまるで示し合わせたかのように、
れいなへあらんかぎりの水を一斉に浴びせた。れいなはびしょぬれになってしまった。
さゆは言った「れいな、そんな格好じゃ風邪ひいちゃうよ」
れいなはこれを聞いて「さゆはなんて友達思いのいい子なのだろう」と思った。
えりも言った「れいな、こんなこともあろうかと、さあこれに着替えて」
一着のスクール水着をれいなに差し出した。
れいなは「すばらしい友達を持った、私はなんと幸福なのだろう」と思った。

トイレで着替えて戻ってくると、さゆとえりはいなかった。
れいなは待った。5分待ち、10分待ち、1時間待った。
さゆとえりは戻ってくる気配が無い。

まあすぐ帰ってくるだろう、ちょっと近くのコンビニにでも行っているのだ。
れいなはそう考え、とりあえずトイレに置きっぱなしにしてきた服を取りに行った。
あるはずの服が無かった。そこにあるはずのものがそこに無いという驚き。
ああ、さゆとえりはきっともう戻ってこないだろう、れいなはそう直観した。

まあこんなこともあるだろう。長い人生、こんなこともあるだろう。
こんな青春もあるだろう。こんな青春があったっていい。
ふと外を見ると、夕日がとてつもなく美しく赤かった。
217 :名無飼育さん :2011/11/04(金) 06:20
「だから、遠い目で暮れゆく夕日を見つめていたのだっちゃ」

れいなの口から紡がれた物語は、あまりにも暗く悲しいものであり、
私はこみ上げてくる嗚咽を堪えることができそうにない。
と思ったのだが、別にそんなことはなかった。
他人の不幸は蜜よりも甘いものである。

「それはあれだね、れいなちゃんはいじめられているんだね」
「そんなことはないっちゃ! これも青春の! 輝かしい1ページなのだっちゃ!」
「と言いますと?」
218 :名無飼育さん :2011/11/04(金) 06:20
れいなは夕日をビシリと指差して言った。

「あの赤く燃える夕日を見るのだっちゃ! 夕日はなぜかくも赤く、美しいのか!
 それはわたしの悲しみを糧に燃えるからだっちゃ! その赤は! 空が流す血の涙ばい!
 その涙が! わたしの青春に! わたしの人生に! そっと彩りを加えんぞかし! だっちゃ!」

私もそれに応えようと思った。

「君の着る、そのスク水(的な何か)を見よ! その悪寒が走るような、わざとらしい青!
 なぜその青はそうまで薄ら寒く真っ青に青いのか! 君の青春があまりにも暗く、悲しいからだ!
 それは空の流す血の涙で洗い流されるようなものでは決してない! 断言する!
 君は汚れている! そしてさゆとえりに嫌われている! その事実を見よ! 刮目せよ!
 心に刻め! 君は海だ! 深く暗く真っ青で、底知れぬ悲しみを湛えた海だ!
 その海を抱きしめられるのは私しかいない! 見ろ! 私を見るんだ!
 そのすれ違いがちな目で、私の目をしっかりと見るんだ! 分かったか!」

れいなは俯き、夕日はいよいよ赤く燃え、海はひたすら青く暗かった。
れいなに上等のスク水を買ってやる。そして、私はれいなを抱きしめていたい。
219 :名無飼育さん :2011/11/07(月) 02:13
れいなが大きなスイカを抱えて帰ってきた。

「そんなものどうしたの」
「もらったっちゃ」

机の上に置いた。立派なスイカである。
叩くと中身がギッチリつまっているような手応えがした。

「誰に?」
「おじさんには関係なかと」
「時季外れもいいとこだよ、もう冬も近いっていうのにさ」

れいなは鋭い目で私を睨むと、素早くスイカに手刀を打ち下ろした。
ぱっくりと割れると中から玉のような男の子が、とは当然ならず、
スイカは厳然としてつやつやとスイカであり、
れいなは手をさすりさすり「固か」と言って涙目になった。
220 :名無飼育さん :2011/11/07(月) 02:13
「あたりまえでしょう。チョップで割れるわけないでしょう」
「なんだかイケそうな気がしたんだっちゃ」
「気持ちは分かるけどね」

私は包丁を出して、今度こそすっぱりと一刀両断、スイカは真っ二つに割れ、
れいなは「おおー」と感嘆の声を上げ拍手、汁もしたたる真っ赤な果肉を蛍光灯の下に晒した。

「濡れてるね」
「濡れてるっちゃ」
「れいなちゃんのスイカから甘い汁が滴ってるよ」
「そんなにまじまじと見ないで欲しいっちゃ」
「どうしてかな?」
「恥ずかしい……」
221 :名無飼育さん :2011/11/07(月) 02:13
私はその果肉に包丁を刺し入れた。ぷしゅっという音がして、
汁が机の上にほとばしった。れいなは「ああっ」と声を上げた。

「れいなちゃんはどうして欲しいのかな? 言ってごらん」
「……もっと」
「もっと……、なにかな? ちゃんと言わないと分からないよ?」
「もっと細かく切り分けて欲しいっちゃ……」
「お安い御用さ」

二度、三度、と私はその果肉に包丁を突き立てた。
ぷしゅっぱしっ、とスイカは音を立てた。
まだ熟れきっていないのだろう。突き立てる度、固い手応えがする。
222 :名無飼育さん :2011/11/07(月) 02:14
「れいなちゃん、この黒いのは何かな?」
「……たね」
「聞こえないな? もっと大きな声で言わないと分かんないよ? やめていいの?」
「種だっちゃ」
「そうだねえ、種だねえ。このスイカには種があるんだねえ」
「おじさんとは違うっちゃ」

私はその言葉に腹が立ってテーブルをひっくり返した。
床にスイカの果肉が派手に飛び散り、それはとても汚かった。
れいなは目を丸くして「なんてことをするばい……」と言った。
「れいなちゃんがいけないんだよ」努めて優しい声で私は言った。
223 :名無飼育さん :2011/11/07(月) 02:14
「許して欲しいんだっちゃ」
「許さないよ。おじさんのことを冗談でも種無し扱いするなんて、酷いことだよ」
「ほんとうにすまなく思うばい」
「ダメです。許しません」
「なんでもするっちゃ」
「じゃあれいなちゃんの、ほんとうの、れいなちゃんを見せてもらおうかな。
 甘い汁のしたたる、れいなちゃんの果肉を見せてもらおうかな」
「よかとよ」

れいなはするすると服を脱いだ。私はそれを凝視した。
今日のれいなは紫と黒のストライプの下着を身につけていた。
それはてらてらとした光沢があり、気味の悪いスイカであった。
私は急激に萎えてしまった。

「やっぱりいいよ。そんな下着を見せられたら、やる気がなくなってしまった」
224 :名無飼育さん :2011/11/07(月) 02:15
れいなはクスッと笑うと「おじさんは種よりも意気地が無いっちゃ」と言った。
意地悪な、小憎たらしい顔である。私はそのれいなの顔が、生意気で、とても嫌いだった。
しかし、言っていることは間違いない、それは本当のことだと思った。

「まったくだね。おじさんは意気地なしだよ」

れいなは意地汚いことに、床に落ちたスイカを食べていた。
その細く頼りない、白すぎる背中を見て、この背中に包丁を突き立てたら、
一体どうなるだろうと考えた。れいなは泣くだろうか。泣く間もなく、死ぬだろうか。

「れいなちゃんれいなちゃん」
「なんとね」
「ちょっと背中に包丁刺してもいい?」
「はあ? ダメにきまっとろーね」
「もし刺したらどうなると思う?」

れいなは上目遣いで、小首を傾げた。
そして一言「やってみないと、何事も分からないものだっちゃ」
私はパンツを脱いで「来い!」と言った。
れいなは「いかねーよ」と若者らしい言葉遣いをした。
私はれいなを抱きしめていたい。
225 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 19:18
こんな夢を見た。
れいなは病の床に伏しており、私は枕元に座していた。静かな寝息を立てている。
「大丈夫だろうね、死ぬんじゃなかろうね」と私は言った。
れいなはカッと目を見開くと「ただの風邪だっちゃ」と言ったので、安心した。
「おかゆでも作ろうか」
「メロンが食べたいっちゃ」
「贅沢だね。無理だよ。だってお金ないもん」
「そこを何とかするのが男の優しさというものばい」
「無理なものは無理だよ」
れいなはしくしくと泣き始めて「もう死にます」と言った。
「ただの風邪だろう」
「肺炎です」
「そうかい」
私は財布を取り出して、見た。300円ほど入っていた。
これでメロンが買えるだろうか、買えないだろう、と考えた。
「300円しか、ないんだよ」
れいなは何も言わなかった。ことによると死んだのかも知れなかった。
れいなの顔からはあらゆる色彩が抜け、灰色に沈んでいたので、
いよいよ不安になった。
「大丈夫かい、まさか、死んだんじゃ、ないだろうね」
「死にました」
「そうかい」
「メロンが食べたいっちゃ……」
れいなの目は潤み、頬は桜色に色づいていた。大丈夫だと思った。
来年の春になったら、すぐに花見に行こう、と考えた。
私はれいなを抱きしめていたい。
226 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 20:46
素敵な夢です
227 :名無飼育さん :2011/11/10(木) 23:17
 私はプールに来ていた。もちろん室内の、温水プールである。その温水プールであるところの水たまりに足を突っ込んで腰掛けていると、まるで小便のように生温く、とても不快だった。「もしもし、お一人ですか」背後から声を掛けられた。「いいえ、連れがいます。ほら、あそこで溺れている女の子がいるでしょう」「ああ、本当ですね」「あれは赤の他人です」「そうですか」そう言った彼女は私のすぐ横に腰掛け、プールに足を突っ込んだ。そして「まるでおしっこの中に足を突っ込んでるみたいですね」と言って笑いかけた。私は彼女の顔に見覚えがあった。モーニング娘。も華やかかりし、十五の頃のごっちんだった。「もしかして、後藤真希さんですか」と私は言った。「やだ、分かりますか?」とごっちんは言い、手で口を覆った。するとゲロを吐いた。すっぱい臭いがして、そのゲロはプールに流れ込んで行った。
 プールの監視員が飛んできて、我々にガミガミと説教を垂れた。彼の履く、その短いショートパンツからは男の一大事がぶらぶらとしており、私とごっちんはそのぶらぶらが気になってしょうがなかった。「だから、こういうところでゲロを吐かれては困ります」と、とてもキビシイ顔をしてその男は言ったが、こんなところで男の一大事をぶらぶらさしていることの方が問題ではないのか、女の子が唐突にゲロを吐いてしまうのは仕方がないことだ、と思ったが、喋るのが面倒だったので、私は何も言わなかった。にも関わらずごっちんはいつものへらへらした調子で「お兄さん、アレが出てるよ」と言った。男は途端に真っ赤になり、「お母さん!」と叫びながらプールに飛び込んだ。ゲロ飛沫が跳ねて、それは私の口の中にインした。ゲロ特有のすっぱい、吐き気を誘発する香りが鼻に抜けた。これがごっちんのゲロの香りなのか、と思うと俄に興奮して、ごっちんの肩を掴むと押し倒した。「優しくしてね」とごっちんは言ったので、「優しくしてやる」と言った。
 プールの水面が盛り上がり、ザバーンと音を立てながら、れいなが顔を出した。「れいなもまぜるっちゃん」と言った。私はもうごっちんの柔肌に夢中だったので、それを無視した。ごっちんも私の愛撫に夢中だったので、同じく無視した。「無視するとかよくないっちゃよ」れいなは震える声で言って、さめざめと泣いた。かわいそうになったので、れいなの頭を優しく撫でてやった。れいなは気持ちよさそうに目を閉じて、喉をゴロゴロと鳴らすようだったので、「もう家に帰らなきゃ」と思った。
228 :名無飼育さん :2011/11/10(木) 23:30
 更衣室に向かおうとプールを出ると、れいなとごっちんがとことこと付いてきた。「おいおい、こっちは男子更衣室だよ」「ここの更衣室は男女共用なんだよ」「そうなのか、初めて聞いたよそんな話」「温泉だって混浴があるものだし、トイレだってそういうところはあるよ。だから更衣室が共用なんて、そんな珍しい話でもないでしょ」ごっちんがそう言った。れいなは「まったくばい」とそれに同調した。私はちっとも納得できなかったが、まあ二人の着替えが見られるのならば、別にどうだって構わないと思った。
 私は更衣室に着くなり脱いだ。ごっちんがヒューッとはやし立てて、れいながうきゃーと叫ぶので、なんだか気分が高揚してしまい、つい脱糞した。するとプールの監視員が走ってきて、また我々にガミガミと説教を垂れた。「だから、更衣室で脱糞されると困ります。よく考えてください。常識でものを考えてください」とその男は言ったのだが、やはり相変わらず股間から男の一大事をぶらぶらさせているので、我々三人はそれが気になってしょうがなかった。更衣室で力加減を誤って脱糞してしまうのはよくあることであり、こんなところで赤の他人に男の一大事をぶらぶらさせているお前の方が、余程常識はずれで、困ります。と私は思ったのだが、やはりめんどうだったので、何も言わなかった。れいなが「あ、バナナっちゃ。お腹すいたばい」と言って、彼の男の一大事を咥えた。私は俄に激昂し、男の口に一本糞を押し込んだ。ごっちんがキャッキャッと喜んだ。
229 :名無飼育さん :2011/11/10(木) 23:37
 男は泣きそうな声で「もうこの仕事辞めます」と言った。「じゃあ何の仕事をするの?」とごっちんが鋭く訊いた。「え、考えてないですけど、とにかくこんな仕事はもう嫌です」「そういう風に先のことを考えずに、行き当たりばったりで、いいと思っているの?」「え……いや、まあ……」「一時の感情に流されず、よく考えて行動するのが大人なんじゃないの?」「……」「ねえ? なんとか言いなさいよ。それでも大人なの? それでも社会人なの?」男はクツクツと喉の奥で嗚咽を噛み殺しながら、ハラハラと涙を流した。私はそれがとても美しいと思った。れいなが男のバナナを咥えたままだったので、イラッとして頭を叩いた。ブホッという変な音がした。
 男は「とりあえず実家に戻って、先のことをよく考えます」と言った。その顔は実に凛々しく、一皮剥けたようであった。ごっちんは満足気に腕組みをして、頷いた。「そうだね、そうするのがいいよ」と言った。
230 :名無飼育さん :2011/11/10(木) 23:41
 私は居た堪れない気持ちであった。私は無職で、かつ童貞だったからだ。プールの監視員の男は、ごっちんの手によって見事に更生した。しかしおれはどうだ? 何も変わらないじゃないか。ずっと無職で、童貞ではないか。「ごっちん」と私は言った。それはそれは凛々しい目付きをしていたことだろう。私は変わらなくてはいけないと思った。「おれ、明日から働くよ。立派な大人になるよ。ごっちんの美しいその瞳に誓う」「あっそう」ごっちんがつれなくて、私は一気にやる気が無くなった。とにかく早く家に帰らなくちゃいけないんだ、と思った。そして、いつまでもバナナを口から離さないれいな、それを抱きしめる仕事に戻らなくちゃいけないんだ。
231 :名無飼育さん :2011/11/11(金) 00:05
いい話ですね
232 :名無飼育さん :2011/11/11(金) 00:50
書きたいと思っていて、いつも書けないでいる話を書こうと思います。
233 :名無飼育さん :2011/11/11(金) 00:50
 私は圭ちゃんと結婚したいと幼少の頃よりずっと願っていて、その願望が叶わないまでも、圭ちゃんが私の姉であったらいいのに、といつも思っていた。理想的には圭ちゃんが長女であり、ごっちんが次女、私は三番目の長男としてこの世に生を受け、初の男の子だ世継ぎだとちやほやされている内に、ひっそりと、誰の目にもつかないような形で、三女れいなが産まれる。両親からしたら四人目の、しかも女の子など、もはやどうでもいい存在であり、父も母もれいなの育児を放棄した。一人だけ名前が平仮名なのもそういった理由からだった。当初は「麗奈」という漢字を考えたらしいが、「一々そんな画数の多い漢字を書いてられない、めんどくさい」という理由で、れいなの名は「れいな」になった。母はまるで笑い話のように、何度もそれを子ども達に言い聞かせた。「名前をつけてあげたことに感謝してほしいぐらいだ」とさえ言った。そういった感じだったので、おしめの世話から、ごはんの世話まで、れいなに関することは全て我々姉弟がやった。
 れいなはそういった家庭環境ゆえ、いつも親からの愛に飢えていた。圭ちゃんやごっちんやまた私がいくら精一杯に面倒を見ようとも、それは姉また兄からの尋常なるキョウダイ愛であって、親からの愛情ではない。圭ちゃんやごっちんにかわいいかわいいされた後、れいなはいつも私の部屋へやってきて「頭を撫でて欲しいっちゃ」と言う。私はそれがたまらなく不憫で、また愛おしく、何度も何度も頭を撫で、ついでにきつくこの胸に抱きしめた。その度にれいなは声を押し殺して泣いた。胸の中に感じられるその振動に、いつも私は欲情していた。
 私が欲情するのはれいなだけではない。ごっちんにも欲情していた。圭ちゃんに欲情することはなかった。圭ちゃんはいつ見ても頼りになる、一家の長たる姉であり、絶大なる信頼こそあれ、そのように下卑た、野性味溢れる感情は微塵も生じることがなかった。またごく単純には、圭ちゃんの顔が私の好みではなかった。私はいつも圭ちゃんと顔を合わせる度「相変わらずブサイクだな」と言ってやった。圭ちゃんは笑って「分かってるよ」と言うのだ。それが好きだった。
234 :名無飼育さん :2011/11/11(金) 00:51
 ほとんど毎日のようにごっちんの洗濯物を漁った。ごっちんは確実にそれに気付いており、時折気分が優れない時(おそらく生理なのだろう)など、「あんた少しはバレないようにやんなさいよ」と私を叱った。私は基本的に甘やかされて育ったが故に、ガマンというものができず、ごっちんが風呂に入るやいなや脱衣所に侵入し、洗濯籠から下着やTシャツや靴下など一式持ってきてしまうのだ。よく考えてみればバレないはずがないのだが、だからといってガマンもできなかった。だが「これ以上酷いようならお父さんとお母さんに言う」と言われてからは、ごっちんが風呂から出て、しばらくしてから漁るようになった。それなら文句は無いようだった。
 だがどうしてもそれまでガマンできないような時というものがある。今ごっちんは風呂に入っており、脱衣所にはごっちんの下着などの一式があるのだ、そう考えるだけで居ても立ってもいられなくなり、そういう時に、れいなに頼った。
 れいなの部屋をノックすると、れいなは顔を輝かせてドアから顔を出す。そして「なんとね」と言う。私は「今日もなんだ」と言う。れいなはその言葉を聞くとニヤリと笑って、するするとパンツと靴下を脱ぎ、私に手渡してくれた。私は「勉強に集中するために、れいなのパンツと靴下の匂いを嗅ぎたい」と言ってあった。れいなはそれを快く了承してくれた。それが本当は何に使われるかを、れいなは未だによく分かっていないようだった。そのれいなの無垢さ純粋さを思うと、私の手淫にもより一層の力が篭り、すぐに発射した。この早漏こそが、れいなに対する私の愛情の証だと思った。
235 :名無飼育さん :2011/11/11(金) 01:07
 れいなが成人した時、両親が離婚することになった。父も母も浮気性であり、とうの昔からその話題は出ていたようだったが、子どもがみな成人するまでは待とう、ということになっていたらしかった。我が両親にしてはなかなかの常識的な判断である。母はすぐさまどこかへ雲隠れし、父は私に「一緒に来い」と言ったが、他の三人はどうするのか、みな父について行くことになるのか尋ねると「知らん」とだけ言った。圭ちゃんがこれに怒った。「私が妹と弟の面倒を見るからてめえはさっさとどこへでも好きなところへ行け」と凄まじい剣幕であった。ごっちも「そうだそうだ」と言った。れいなだけが両親の離婚にひどく悲しんでいて、私はそのれいなを見てとても不憫に思い、「もう離婚を取り消すことはないのか」尋ねたのだけど、父は「無い」とキッパリ言って、いくらかの金を置いてどこかへ行った。れいなの悲しい顔が妙に胸に痛んだけれども、実際のところ、私は少し嬉しかった。これで何気にすることなく、ごっちんの洗濯物を漁れるし、圭ちゃんは生活の面倒を見てくれると言うし、れいなは二十歳になっても、未だに自分のパンツと靴下が本当は何に使われているのか理解していなかったからだ。
236 :名無飼育さん :2011/11/11(金) 01:26
 私は次第に大胆になった。ごっちんが風呂を浴びている間に、脱衣所で手淫した挙句洗濯物に精子をかけたり、れいなのパンツと靴下に精子をかけて、それを手渡して返したりした。ごっちんは明らかに気付いていたが、何も言わなかったし、れいなはその白い粘性の液体が何なのかよく分かっていなかった。変わった修正液だ、ぐらいに思っているようだった。
 圭ちゃんがある日私を呼びつけると深刻な顔をして「あんた、いい加減にしなさいよ」と言った。私は突然のことにびっくりしたもんだったが、よく考えてみると、ごっちんやれいなが圭ちゃんに私のしたことを話すだろうことは、あまり簡単に想像がついた。それでもとぼけて「何のこと?」と言った。圭ちゃんは「大学のこと」と言い、続けた「あんた、大学行ってないでしょ」「行ってるよ」「じゃあ今何年生?」「四年だけど」「何年目の?」「何年目もクソもなくて四年生だよ。ボケたの? 相変わらずブサイクだし、ついにはボケまで始まったか」圭ちゃんはため息を吐いた。改めてよく見てみると顔のあちこちに老いを感じさせる皺が走っていた。実際、私は大学に行っておらず、誰にも相談せずに、密かに退学していた。どういう経緯か分からないが、それがバレたらしかった。圭ちゃんは「情けない」と言ったっきり、無言で俯いた。どうやら泣いているらしかった。私も無言で部屋に戻った。その日ばかりは手淫に励む気も起こらず、ぼんやりと天井を眺めて、本当に悪いことをしたなあと思った。
237 :名無飼育さん :2011/11/11(金) 01:35
 そんな折、れいなが「一人暮らしがしたいっちゃ」と言い始めた。ついにれいながあの白い粘性の液体の正体に気付いてしまったのではないか、と私は不安に思ったのだが、何のことはなく、友達に一人暮らしの素晴らしさを吹きこまれて、なんとなく一人暮らしがしたくなったらしかった。友達というのは誰のことだろう、と私は不思議に思った。れいなには友達が一人もいないはずだった。れいなは行く先々でいじめられ、それはやはり親の愛情が欠けているから、人に愛される術を知らないからだろう、と私は考えていた。だから私たち姉弟は、れいなに対して尋常の姉弟では考えられぬほどの愛情と精液を注いでいるのであり、つまり私はれいなに友達など不要だと考えていたし、一人暮らしなど無用だと思った。
 「いいかもしれないね」と圭ちゃんは言った。ごっちんも「いーんじゃない?」と言った。れいなはとても嬉しそうな顔をした。私はそれに焦って「ダメだよ」と言ったのだが、「なんでだっちゃ?」とあのつぶらな目で訊かれると、何にも言い返せないような気がした。「ダメだからダメなんだ!」と叫んで、部屋に引きこもった。物音一つしない部屋の中で布団にくるまっていると恐ろしい寂しさがこみ上げ、昔、胸の中で震えて泣いたれいなのことを思い出した。近頃はそういうこともなくなった。ああ、私はれいなを抱きしめていたいのだなあ、と思った。
238 :名無飼育さん :2011/11/11(金) 02:16
 結局、れいなの一人暮らしの話はまとまってしまった。私は「かわいい妹が一人暮らしするなんて心配」といった主旨のことを何度も主張し、「だからどうしてもれいなが家を出るというのならば、おれも一緒に暮らす」と熱烈に主張したのだったが、圭ちゃんとごっちんは苦い顔をして「それはありえない」と首を横に振った。何故あり得ないのかは自分が一番よく分かっていたから、それに突っ込むようなことはしなかった。ただひたすら情熱的に「れいなのことが心配」「おれも一緒に住む」ということを主張した。というか、私はれいなと二人暮しをしたかったのだ。ごっちんの脱ぎたての洗濯物との別れは辛いが、れいなとの二人暮らし、その魅惑的な状況を思い描くだけで勃起するようだった。ごっちんの洗濯物が恋しくなったら、いつでもこの家に帰ってくればいいのだ。私はごっちんよりも、れいなの匂いの方が好きだった。ごっちんの洗濯物からは、むせ返るような大人の女の匂いがした。れいなのパンツや靴下からは、いくら飲んでも悪酔いしない酒のような匂いがした。それはまだ女になり切らない、瑞々しい匂いだった。銀杏を踏みつぶした時の芳香だった。きっとれいなの尻の穴に指を突っ込んで、その指を嗅いだなら、一瞬でこの世の中のあらゆることがどうでも良くなるだろうという気がした。れいなの匂いは私の生活において水よりも欠かせないものだった。れいなの匂いを嗅がないということは、死ぬことと同じだった。
239 :名無飼育さん :2011/11/11(金) 02:28
 れいなは毅然とした目で言った。その目はあまりにも毅然としていたので、その視線を追っていると酔った。「心配してくれるのは嬉しいっちゃけど、れいなももう大人ばい。それに兄さんと暮らしたら、それは一人暮らしでも何でもないっちゃ」それは論理的にとても正しい主張だった。れいなだけは私の主張とその主張を裏打ちする愛情を理解してくれるものと思っていたから、この主張にはショックを隠しきれなかった。「そうか……、そうか……」と応えると、ふらふらする頭で部屋へ戻り、そのまま二晩ほど寝込んだ。その二晩の内に、れいなはそそくさと引越しを済ましてしまった。私は空っぽになったれいなの部屋を見て、やはり猛烈なショックを感じ、今度は三晩寝込んだ。
 寝込んでいる時に、引越しを終えたれいなが見舞いに来た。「すまないっちゃ」とれいなは言い、とても悲しそうな顔をした。私はれいなにそんな顔をさせてしまった自分の過ちに気付いて、つい泣いてしまった。おれは何をやっているんだ、と思った。れいなにそんな顔をさせるぐらいならば、死んでしまった方がマシだった。性欲に支配されすぎて、自分のことばかり考え、れいなのことを何も考えてやれなかったことを悔やんだ。
 「おれが悪いんだ、おれが」そう言った私の目の前で、れいなはするするとパンツと靴下を脱いだ。そしてそれを私の手に握らせた。それはいつもとは違って、妙にずっしりとした重さがあった。れいなは潤んだ瞳で「これはこの五日間着続けたものだっちゃ」と言った。れいなのこの五日間の汗と愛液の結晶が、今、私の手の中にあるのだ。これ以上ない愛情を感じ、私はそれを鼻に押し当てた。濃厚だが、あくまでも爽やかな、れいなの匂いだった。「いつでも帰って来ていいんだからね」そう言って、私とれいなは手を取り合ってわんわんと泣いた。ごっちんと圭ちゃんはそれをドアから垣間見て、美しい兄妹愛に目頭と股間を熱くした。
240 :名無飼育さん :2011/11/11(金) 23:12
何度も噛み締めたくなるような味わい深いお話でした
いいと思います
241 :名無飼育さん :2011/11/14(月) 18:29
それは良かった、ほんとうに、良かった。私はこの感動的な妄想を誰かに伝えたくてたまらず、一度れいなに滔々と説き聞かせたのであったが、れいなはぽかんとした顔をして「れいなはおじさんの妹ではないっちゃ」とまるでわかっていないことを言った。れいなには人の話をちゃんと聞く能力というのが著しく欠けているらしかった。まあ、それは知ってたから別にどうでもいい。
「れいなちゃんはおじさんがお兄ちゃんだったら、どう思う?」訊くと、「絶対にいやだっちゃ」と言った。即答であった。私はパソコンに向かって、れいなに見えないように少しだけ泣いた。
242 :名無飼育さん :2011/11/14(月) 19:22
 気付くとそのまま寝入ってしまい、部屋がうっすらと暗かった。ここ最近は日が落ちるとグンと寒くなるので、いよいよ冬なのだな、という気がした。もう11月も半ばであり、一年の早さにはほんとうにうんざりさせられた。私は年々身体の衰えを感じ、もうこのキビシイ冬の寒さを乗り越えることなどできないのではないか。この時期になるといつも考えるのだが、まあ案外平気なのだった。
 振り向くと、れいなはソファーの上でぐったりしていた。もしかして死んだのではないだろうか、この寒さで死んでしまったのではないだろうか、ふと不安に駆られたのだけれども、その肩がすやすやと上下し、またかわいらしい寝息も聞こえるので、大丈夫だ、と思った。キュッキュッと妙な音がした。何の音だろう? 不思議に思ってれいなに近づいてみると、れいなの顎がギチギチと動き、その動きに合わせてキュッキュッという音が鳴っていた。どうやら歯ぎしりのようである。今の今までれいなが寝ている時に歯ぎしりをするなど気付いたことがなかった。そのせいで顔の骨格が歪み、あのように変な目になってしまったのではないだろうか、と思った。
 れいなはまた時期外れにもショートパンツを履いていた。ひどく鈍感なので、ショートパンツでも寒さを感じないと見える。だらしなく開かれたそのふとももを見た。いつ見ても幼さの抜けない肉付きで、このふとももが大人の女のふとももとして然るべき肉感を身につけるには、あとどれぐらいの年月がかかるのだろう? 不思議な気持ちがした。私が年々老け、腹が出て、ハゲ上がり、醜くなって行くというのに、れいなはといえば出会った頃から何も変わらず、いつまで経っても幼いままだった。れいなの年齢は17で止まっているような気がした。ショートパンツの隙間から、ギラギラするショッキングピンクのパンツが覗いていた。
 私はれいなのショートパンツのボタンを外し、ファスナーを下ろして、ゆっくりと脱がせた。「ううん」と身をよじるので、一瞬ハッとして手を放した。「なんとね」と寝ぼけた声で言いながら、れいなは顔を不快そうにシカメ、自分でショートパンツをガッと脱いだ。股間のところに乾ききった小便のシミがついていた。私はショートパンツを手に取って、裏返し、その股間の縫い目の合わさるところに鼻をつけた。えも言われぬ小便臭い芳香がし、私はちんこを取り出して、それを擦り上げた。そしてれいなのパンツに向けて発射した。ギラギラするショッキングピンクの上に、乳白色の精子が垂れた。これでいいんだ、と強く思った。もう一度ショートパンツの匂いを嗅ぎ、私はれいなを抱きしめていたい、と思った。
243 :私は圭ちゃんを抱きしめていたい :2011/11/19(土) 01:47
昼下がりの喫茶店。駅前のはいやに混んでいるので、奥まったとこにあるのに入った。
それは地下にあった。店内は薄暗く、雑然としており、店員の接客も雑然としていた。
「何飲むんや」と店主らしき女が言った。
「ブレンド」
「うちのブレンドはドトールのブレンドやけど、ええの?」
「いいですよ、別に」
彼女はめんどくさげに「あっそう」と言い、サロンを外した。
奥にいたバイトらしき店員に「ドトール行ってくるわ」と言った。
バイト店員は「はい」と言った。

「いつもこうなの?」
「ええ、そうなんですよ」
バイトは割と愛想が良かった。かわいらしい女の子だった。
「やってけてんの」
「よく分からないですけど、やっていけてるんじゃないですかね」
「長いのこの店?」
「わかんないです」
「じゃあどんぐらい働いてるの、ここで」
「私は三年ぐらいです」
「長いねえ」
「長いですか?」
「長いんじゃない?」
「そうですか」
水が来た。メニューも来た。
244 :私は圭ちゃんを抱きしめていたい :2011/11/19(土) 01:48
「ずぼらなんですよ」とバイトが歌うように言った。
「え? 何の話?」
「あ、店長の話です」
「ずぼらねえ」
「ええ、ずぼらなんですよ」
私にはそういう問題のようには思えなかった。
メニューをめくって見ると「飲み物、応相談。食べ物、応相談」とだけ書いてあった。
確かにずぼらなのかもしれない、と思った。

「食べ物もドトールなの?」
「いや、食べ物は、ふつうにセブンイレブンです。ほら、上の」
彼女は右手の人差し指を上に向けて、くるくると回した。
「そうなんだ」
「ずぼらなんですよね」また歌うようにそう言って、楽しげにくすくすと笑った。

「名前は?」
「え? なんですか?」
「あなたのお名前は?」
「ああ、名前ですか、名前なんて別にどうだってよくないですか」
「まあどうだっていいけど」
「じゃあ言いません」
「どうだってよくない、って言ったら、教えてくれる?」
245 :私は圭ちゃんを抱きしめていたい :2011/11/19(土) 01:48
彼女は少し考えるふうに、視線を天井のあたりに泳がせ「あっ」と言った。
「なに?」
「もう三時ですね」
「そうだね」
「それでも、やっぱり、名前は言いません」
ガラガラと扉が鳴り、女店主が戻ってきた。

出されたドトールのブレンドは正しくドトールのブレンドだった。
紙カップに入っている。
「せめてちゃんとしたカップに移すとかしないんですか」
「せんよ、冷めるやろ」
「カップ温めれば冷めませんよ」
「めんどくさい」
「ええー」
「文句あるん?」
「ないけど、いくら?」
「500円」
「たかっ」
「生活かかってんねん、慈善事業やあらへん」
「ドトールで飲んだら200円で飲めるよ」
「文句言うんならドトール行きーや」
まったくだ、と思った。この場所代に300円、と考えるなら、まあそれも悪くない気がした。
246 :私は圭ちゃんを抱きしめていたい :2011/11/19(土) 01:49
中澤さんは険しい顔をして「こいつバイトちゃうよ、うちの娘」と言った。
そうは見えなかったので「え、そうなんですか」と訊いた。
「違いますよ」とバイトの女の子が笑いもせず言った。
「そうやな」と中澤さんがそれを受け取った。
私は「そうなんですね」と思ったし、言った。
二人とも頷きながら「そうそう」と応えた。

私はコーヒーを飲み、500円を払って店を出た。
また機会があったら来よう、と思ったのだけれど、
今となってはどこの駅の、どこらへんにあったのだか、さっぱり忘れてしまった。
バイトの女の子の名前を、たまに考える。たぶん絵里だろう。
そして私の名前は保田圭。職業はアイドルである。
247 :名無飼育さん :2011/11/19(土) 01:58
私は、圭ちゃんからそういう話を聞いた、というれいなの話を聞いた。
れいなは「れいなもその店に行ってみたいものだっちゃ」と言った。
私は「やめておきなさい」と言った。
「なぜ?」と問うので、「どうしてもだ」と答えた。
れいなはそれで納得したようだった。扱いやすい人間である。

「そもそもれいなちゃんはコーヒーが飲めないでしょう」
「飲めるっちゃ」
「うそを言ってはいけないよ、じゃあこれを飲んでみなさい」

私はザーメンを注いだカップをれいなに手渡した。
れいなは不思議そうな顔をしてそれを見た。

「コーヒーというのは黒いものだと思っていたっちゃ」
「それはメディアに毒されているね。コーヒーというのは本来真っ白で、
 多少の粘性があり、生臭みと苦味と塩辛さの絶妙なコンビネーション、
 それがコーヒーだ」

れいなはこの説明に納得したようだった。
つくづく扱いやすい動物である。
そしてそのザーメンをグッと飲み干すと思いきや、
カップを私に投げつけた。顔にかかった。生臭かった。

「うそを吐くのはいけないことだっちゃ」

れいなは勝ち誇った顔をした。
私はれいなを抱きしめていたい。
248 :私は圭ちゃんを抱きしめていたい :2011/11/19(土) 02:08
たいへん! >>245>>246の間にこれが抜けていた。

「中澤さんはずぼらなんですよね」とバイトの女の子が嬉しそうに言った。
「おまえもたいがいやで」と女店主、中澤さんと呼ばれたからには、彼女の名前は中澤さんなのだろう。
「名前教えてください」「え?なんやて?」
「だから、お名前を」
「中澤です」
「いや、ごめんなさい。違くて。バイトの子の名前は?教えてくれないんですよ」
249 :名無飼育さん :2011/11/19(土) 17:10
面白いです。エロ関係なしに読んでみたくなります
250 :名無飼育さん :2011/11/21(月) 02:01
嬉しいです。愛を感じます。
251 :名無飼育さん :2011/11/21(月) 02:01
「私もう結婚してるんだけど」と圭ちゃんが言ったので、「知ってる」と答えた。「だからなに? 何か変わるの?」「いい加減にして欲しい、って言いたいのよ」「圭ちゃんが勝手に結婚したんでしょ。おれというものがありながら」「いやな言い方しないでよ」「ごめん」謝るのは得意だった。
「これが最後だから」「何回目の最後よ」「ほんとうのほんとうに、今回こそ最後」「信用できないな」「なんで? でもこうして来てくれた、ってことは、あれでしょ、いいんだよね?」圭ちゃんは苦笑した。
「ダメな奴だ。ほんとうにだめな奴だ、あんたって人は」「知ってるよ。でも圭ちゃんだって同罪だよ」「なんでよ」「なんでも」私は圭ちゃんの手を取って、その目を見つめて言った。「ありがとう」圭ちゃんは顔をしかめた。「そういうとこがダメなんだよ、あんたは」言って、手を払った。「でも圭ちゃんは優しいから」「そういうとこがね」「なに?」ため息を吐いた。
「この性格直したいわ」圭ちゃんはバックから封筒を取り出すと、投げた。ぽすっと頼もしい音がして、私は心の底から「ありがとう」と言った。「クソ野郎」
圭ちゃんは笑って、その笑顔が、私は好きだったのだけど、ただ、私にとっては、れいなの方が幾分か大事だっただけのことだ。
252 :名無飼育さん :2011/11/30(水) 22:07
コタツでうつらうつらしていると猛烈な硫黄臭で目が覚めた。
れいなが鼻くそをほじりながらみかんを食べていた。
どっちかにすればいいのに、と思った。
鼻くそをほじるか、みかんを食べるか、どっちかにすればいいのに、と思った。

「れいなちゃん、オナラしたでしょう」
「してないっちゃ」
「コタツの中ちょー臭いんだけど」
「してないっちゃ」

れいなは頑なに鼻くそをほじりながらみかんを食べ続けていた。
どっちかにすればいいのに、と再び強く思った。

「じゃあこの硫黄臭はなんなの?」
「してないっちゃ」
「この目に沁みるような硫黄臭はれいなちゃんのオナラしか考えられないんだけど」
253 :名無飼育さん :2011/11/30(水) 22:07
れいなは鼻くそとみかんを放り投げ、ワッという感じで泣き始めた。
私は驚いて思わず「ごめん、そういうつもりじゃ」と言ったのだが、
れいなは「ひどいっちゃん」と言って、わっ、わっ、という感じで、
どんどん泣いた。あまりに泣くので、外は雨のようだった。

「れいなちゃんごめんね、雨が降ってきたよ」
「しらんばい」
「雨が止んだらコンドームを買いに行こうね」
「なんでだっちゃ」
「どうしてもだよ、どうしても」

ヤレる、と思った。今日こそはヤレる、と思ったのである。
それはほとんど霊的な直観であった。

れいなは今、自分が屁をこいたという罪悪感を受け入れきれないでいるのだ。
れいなの涙は、この雨は、素直になれない乙女心の可憐なミソギの聖水であり、
全ての罪悪が流されて、雨が止んだ時、きれいな身体で我々は一つになるのだ。

そういうことを考えた。こんなこと、れいなはバカだから分からないだろう。
私は猛烈に極まっていた。猛烈に性欲が極まって勃起していた。
254 :名無飼育さん :2011/11/30(水) 22:08
「実は……」

れいなはぐすんぐすんと嗚咽しながら、顔を上げた。

「うんこを漏らしてしまったばい」

ああ、それは無理だ。いくら私でもそれは無理だと思った。

「出て行け!」

れいなの首根っこを引っ捕まえるとベランダに叩き出した。
なるほど、れいなの座っていた場所には、黒々と不健康そうな下痢便が、
猛烈な悪臭を放ちつつ、そこにあった。私はうんざりした。
あまりにもうんざりしたので、もうどうでもいい気がした。

「れいなちゃん、もういいよ、許してあげるよ」

そうベランダに向かって語りかけたのだが、うんともすんとも返事がない。
私は俄に不安になって窓を開けた。れいなは縮こまって震えていた。
上目遣いで「また漏らしてしまったっちゃん」と言った。
それは泣き声であった。可憐であった。
255 :名無飼育さん :2011/11/30(水) 22:09
なぜ私はれいなにこんな酷い仕打ちを!
とてつもない罪の意識に囚われ、れいなの肩をそっと抱きしめた。

「いいんだ、いいんだよ」

そう言って、お尻のあたりをそっとさすった。
ぬっちょりとした不快な手触りがあり、やはりこれには猛烈にげんなりした。
無理だと思った。いくらなんでもうんこは無理だと思った。
それでも、私はれいなのことを離したくないと思った。
なんとならば、私はれいなを抱きしめていたいからだ。
256 :名無飼育さん :2011/12/01(木) 01:53
 あぐらをかいてノートパソコンに向かっていると窓がガラリと開いて女が顔を出した。猫のような目をしていて、それがなんというか互い違いにというかイビツに歪んでいた。君がれいなだね、と問うと、はい私がれいなです、と返事した。女は窓を一度閉め、もう一度ガラリと開けると静かな声で、もう死にますと言った。寒いから窓を閉めてくれと頼んだのだが、女は首を二編ほど横に振り、でも死ぬんですもの、仕方がないわ、それをまた静かな声で言った。私はゆっくりと立ち上がり窓を閉めた。女は窓越しに「百年待っていて下さい」と言ったので、私はじりじりと焦らす様にカーテンを閉めた。女は構わず「きっと逢いに来ますから」と続けざまに言った。私はまた机の前に座りノートパソコンを睨み付ける。ああなんだか少し肌寒い、戸締りを確認しようとカーテンを少しだけ開けると、まだ女は外にいて、ぼろぼろのアパートの二階のベランダに佇んで、もう死んでいた。私は窓を開けて、その女を丁寧に布団に寝かせると、「百年はもう来ていたんだな」と呟いて、この茶番に若干の疲れを感じたものの、布団の中でさむかーと言いながらぶるぶる震えるれいなの背中を右足で蹴った。
257 :名無飼育さん :2011/12/01(木) 02:23
 れいなのことを世話し始めてもう六年になる。もう私も一端のれいなブリーダーであり、どのようなれいなでもいっちょ前のれいなとして出荷できる程度には手馴れてきており、れいなのことならば何でも分かるつもりである。れいなの下着の色を見るだけでれいなの今日のゴキゲンというものが察知されるし、あの表情の読み取りにくい妙な視線の泳ぎ具合で、月経の周期が分かったりする。これぐらいのことはれいなブリーダーとして初歩の初歩であり、例えば今日のれいなは珍しくパステルカラー、つやつやした肌触りの良さそうな水色の下着を着用しており、つまり今日というこの日はれいなにとって、記念すべき、12月の、最初の、日、なのであり、月初めを記念したオナニーが盛んに行われる日である。
 れいなはまずテレビの前にティッシュの箱を配置し、ゲイもののDVDをチョイスする。れいなは胸焼けがするような、暑苦しいゲイものは見ない。ノンケの男がイケメンのゲイに最初は無理矢理、しかし後半になるとむしろノリノリでセックスに励むタイプのDVDを好む。れいなは自分がゲイになって、ノンケの男を犯したい、と思いながらそれを見る。れいなは斜視なものだから、どうしても性的な趣向も倒錯気味であり、女である自分が女としてセックスに挑戦する、というシチュエーションのことを考えられないのである。かわいそうだ、不憫な子だ、と思う。だから私のセックスの誘いをいつも断る。生意気だと思う。しかし私はそういう倒錯した、残念な、かわいそうな、れいなが好きなのだ。私を性的に誘惑してくるような、蠱惑的なれいななど想像するだけで吐き気がするし、ヤリたいと思う。
 私はれいなと一緒にゲイもののDVDを見ながら、「この演出はダメ」「このアングルはいい」などツバを飛ばしながら盛んに議論した。れいなは「ノンケの男がノリノリになって、ゲイの男を攻め始める瞬間」に最も興奮するらしい。分かる気がした。ネコとタチの役割が入れ替わる瞬間である。その瞬間に何かしら芸術的な、一種の完成された美学を感じるのだという。分かる話である。私はゲイもののDVDはさして好きではないし、見ているとあまり愉快な気持ちにはならないのだが、ゲイもののDVDで抜け、と言われたら、なんとか頑張って、そこで抜くだろう、そこで抜きます、という気概で、れいなと一緒にゲイもののDVDを鑑賞した。いや、より正確に言えば、れいながゲイもののDVDを鑑賞しているその姿を鑑賞した。
 れいなはいつも真面目な顔で視聴を開始する。何かムツカシイ、賢しらなドキュメンタリーを見るかのような顔つきで、れいなはゲイもののDVDを見始める。あまつさえコーヒーすら飲んで、インテリな雰囲気を醸し出す。そして演出や脚本について文句を垂れる。れいなは「男優と男優の結合部の接写、のずっと奥の方に垣間見える、快楽か苦悶か不明な感じに歪んだノンケの顔」に欲情するようである。そのアングルで撮影されたシーンが画面に展開される度に、れいなの顔は上気し、賢しらな批評は一時中断され、その華奢な手足がもぞもぞと動く。ひっそりと手の甲で乳首や陰核などをさすり始める。私はそんなれいなを見ながら股間を揉む。そういう風にして、いつしか互いに大胆になり、服などいらぬのだ、全裸になり、れいなは画面を見る傍ら私の陰茎を見、私はれいなのあられもない姿を見る傍ら画面を見る。そうして夜もふけ、セックスがしたい、という漠然たる願望と、しかしただのセックスでは物足りないという意地汚い性欲を、二人共持て余したまま、朝になって、ふと悲しみに襲われ、互いの身体を抱きしめてさめざめと泣くのである。
258 :名無飼育さん :2011/12/15(木) 13:45
夜半過ぎ、
「トイレまで付いて来て欲しいっちゃ」と言うれいなに起こされた。
私は寝入りばなを挫かれたものだから酷く腹が立ち、
「トイレぐらい一人で行きなさい、ガキじゃあるめえし」
言ってやったのだが、れいなは頑なに首を横に振り、
「トイレには悪魔が住んでいるのだっちゃ」と言った。

通常トイレには花子さんが住んでいるものだが、
あれは小学校の女子便所に限られた話であり、
またトイレには神様が居るのだという歌を少し前に聞いたことが
あったような気もするのだが、ついぞその神様を見たことがなかったので、
れいなの言うトイレの悪魔という奴も全然信じられなかった。
おばけは居ると思う。トイレに神様や悪魔はいないが、おばけは居ると思った。
259 :名無飼育さん :2011/12/15(木) 13:46
「それは悪魔じゃないよ、気のいいおばけだ。何の心配もいらない。
安心してぶりぶりうんこしたらいいよ」
「いや、確かにそこには悪魔がいるのだっちゃ」
れいなはやはり頑なであり、私の手を掴んで引き起こし、
無理矢理にトイレまで導いた。

「もういいでしょう。まさかここで待ってろとか言わないよね」
「そのまさかだっちゃ」
「おばけが出たらどうするんだよ。おじさんはおばけが嫌いだ」
「大丈夫だっちゃ、それは気のいいおばけばい」
「気がよくたっておばけはおばけだからね。怖いよ」
「せからしか」
260 :名無飼育さん :2011/12/15(木) 13:46
れいなはトイレの中に入るとホットパンツとパンツを下ろした。
今日は黒だった。陰毛がれいなの白い肌に黒々と沈殿していた。
「れいなちゃん、ドアは閉めようか」
「ドアを閉めるとれいなは悪魔に食い殺されてしまうばい」
「恥ずかしくないの?」
「悪魔に食い殺されるよりはマシというものばい」
「そうかそうか」
261 :名無飼育さん :2011/12/15(木) 13:47
れいなは気張った。んっ、というかわいらしい声がしたかと思うと、
確かに悪魔がそこには居た。その悪魔は恐ろしげな絶叫を上げ、
続いて猛烈に邪悪な臭気をそこいらに漂わせた。
「れいなちゃん! 悪魔だよ! 悪魔がそこにいるよ!」
れいなはんっんっと更に気張った。
悪魔が私に掴みかかり、私の喉と鼻を犯した。
れいなは平気だろうか、徐々に暗転していく視界の端で、
れいなは尻を拭いたトイレットペーパーをじっと見つめていた。
262 :さゆえりれいなを抱きしめていたい :2011/12/21(水) 04:25
うなだれた首元にぽこんと飛び出た名前の分からない骨に人差し指を当て、
それを一直線に下に引き下ろして行くと、れいなが「うひっ」と言う。

「変な声出さないでよ気色悪い」
「やめれやめれ」
「は? なんなのその言い方? れいなのクセに生意気なんだけど」

れいなはしゅんとして「ごめん」と言った。
そう素直に謝られるとなんだか私が悪いことをしているみたいじゃないか。
か弱い小動物をいたぶっている悪者みたいになるじゃないか。
腹が立って横っ腹をツネった。れいなはまた「いひっ」と変な声を出した。

「れいなってさー」とさゆが言う。さゆはポッキーを食べている。
れいながきょろりとそっちの方を見た。

「やだ! こっち見ないで!」
「見とらんもん見とらんもん」
「二回も言わなくっていいよ! うるさい! れいなのクセに!」

れいなはしょげかえって、何も言わなくなった。
むかつく。いじめられっこみたい。まるで私たちがいじめっこみたいじゃないか。
うっとうしい。まったくふざけてると思う。れいなのクセに、生意気なんだよ。
もう一度、れいなの首元にぽこんと飛び出た、名前の分からない骨に人差し指を当てた。
263 :さゆえりれいなを抱きしめていたい :2011/12/21(水) 04:26
「えりはれいなのことが好きだよね」とさゆが言った。
さゆはまださっき食べていたポッキーをせせこましく食べている。
そういうところがさゆのかわいらしさだ、と思う。
まるでリスのように、一つの食べ物を時間をかけて少しずつ食べる。
そういうお姫様のような華奢な振る舞いに、いつもなんとなく憧れていた。

「ねえ」
「え? なに?」
「えりはれいなのことが好きだよね、って言ったの、聞こえてた?」
「うん、もちろん」
「そのもちろんはどっちの意味?」
「え? なにが?」

さゆは少しむくれた顔をして「もういいよ!」と言った。
やっぱりそういうところがさゆのかわいらしさだ、と思った。

れいなの首元の名前の分からない骨に当てた人差し指をゆっくりと下ろした。
れいなが小刻みに震えているのが分かって、気持ち悪いと思った。
感覚をより研ぎ澄ませれば、指先にれいなの生々しい体温と、
肌の滑らかな質感さえ伝わってくるようで、とても気持ちが悪いと思った。

「れいなはさ」と私が言った。れいながぴくっと反応したのが分かる。
けれど、私は別にその先に続く言葉を考えていた訳ではなかった。
れいながどういう反応をするかに興味があった。
264 :名無飼育さん :2011/12/21(水) 04:26
れいなは微動だにせず、また何も言わなかった。つまり無反応だった。
つまらない、と思った。ほんとうにつまらない子だ。
腰骨あたりまで下ろしてきた指先を、更に下に、
お尻の割れ目の方までついっと下ろした。
「うひはっ」と意味の分からない声を出した。

「れいなはほんとうにおもしろい子だよね」

さゆが二本目のポッキーの先っぽをコリコリとかじりながら言った。
それに合わせてほくろが微細に上下する。そういうところがさゆのかわいらしさだ。

「私もそう思う」

指先をぐりぐりとお尻の肉の間に差し込む。れいなが「うはっ」だの「ひひっ」だの言った。
生温かくて、しっとりとした湿り気があって、とても気持ちが悪いと思った。
もう一踏ん張り、指先に力を込めた。何かしら深遠なる領域に到達したのを感じた。
265 :さゆえりれいなを抱きしめていたい :2011/12/21(水) 04:27
「ちょっ、やめ!」

れいなは鬼の形相で素早く私の腕を掴んだ。

「触んないでよ、気持ち悪いから」

その手を振り払って、掴まれたところをさゆになすりつけた。

「やだ! ヘンタイ!」

さゆはれいなの腰のあたりに気合の入った蹴りをかました。打撃音が軽やかに響き渡った。
「いたーい」と足をさすりながらぶりっこをして見せる。「もう! れいなのせいだからね!」
そういうところがさゆのかわいらしさだ。

「れいながなにかしたと……?」

れいなは遂にめそめそと泣き始めてしまった。
まるで私たちがれいなをいじめているみたいになって、とても気分が悪かった。
悪いのはれいなだけなのに、なんで私がこんな後味の悪い思いをしなくてはならないのか。

「やだ! ひどい顔!」

さゆは両手を口にあて、目を見開いて、その表情はいかにもまるでお姫様のようだった。
「ぶたさんみたい!」そういうところがさゆのかわいらしさだ。
266 :さゆえりれいなを抱きしめていたい :2011/12/21(水) 04:28
れいなの泣き顔と言ったらひどいものだった。
目かと思えばそれは鼻であり、鼻かと思えばそれは耳だった。ぐずぐずに崩れきっていた。
お正月にはまだもう少し早いな、と思った。お正月だったら、福笑いってんで、少しは縁起がいいものだけど、
年末の年の瀬の師走のメリークリスマス間際に、こんなもの、見たくなかった、と思った。

私はふと、れいなの深遠なる領域に達した自分の指先のことを思い出し、それを嗅いでみた。
蠱惑的な香りがし、私は思わずれいなのことを抱きしめていた。それを見たさゆが言った。

「やっぱりえりはれいなのことが好きなんだね」

私はヤッパリソウナンダナアと思った。
私はれいなを抱きしめていたいンダナアと思った。
267 :決戦は金曜日 :2011/12/30(金) 03:18
決戦は金曜日
268 :決戦は金曜日 :2011/12/30(金) 03:20
 あれはいつのことだったか。確か夏の盛りの暑い日に、まだまだ私もごっちんも子どもであり、たぶんきっと中学生かそこらぐらいだった気がするのだけれど、あんまりよく覚えていない。ごっちんの髪の毛はもう真っ黒で、肩ぐらいまであったのを、その時は短く切っていた。オレンジ色のノースリーブ。デニムのショートパンツ。ごっちんは濃いめに作ったカルピスが好きで、そのくせ「タンが絡む」と文句を言った。あの子は本当に、人の家に来てはよく文句を言った。「暑い」とか「寒い」とか「のどが乾いた」とか「お腹空いた」とか「宿題やってないから見せて」とか、わがままだった。そういえば私はファンタオレンジが、その時は一番好きだった気がする。ファンタオレンジとベーグル。これだね。これがブームだった。「気が知れないね」とごっちんは鼻で笑った。その時のちょっと蔑んだ流し目が、結構好きだった。私たち二人はいやらしいことをした。
 二人でプレステをやっていた。とりとめもない会話、学校の話、先生の悪口、友達の悪口、好きな人の話、色々して、ごっちんが「よしこは援交したことあるの?」と突然言った。その時ちょうど鉄拳2をやっていたから、最初それは技名か何かなのかと思った。
269 :決戦は金曜日 :2011/12/30(金) 03:21
「え? 何が?」
「援交だよ、エンコウ、援助交際」
「ああ、無いよ、もちろん」
「だよねだよね。お金欲しくない?」
「欲しいけどさあ、援交とかヤダね、フケツ」
「フケツかなあ」
 ごっちんはさらりと「私はしたことあるよ」と言った。なんか、そうなんだろうなあという気はしていたから、別に驚かなかった。「あ、そうなんだ」と答えた。
「フケツかな?」
「わかんない。ごっちんがいいと思ってんならいいんじゃない?」
「でもさっきフケツって言ったじゃんよしこ」
「私はやりたくないってだけの話」
270 :決戦は金曜日 :2011/12/30(金) 03:21
 私はね。想像しただけで身震いした。好きな人はいたけれど、その人とセックスするのさえ怖い気がした。キスも怖いと思っていた。初めては痛いという話を聞いていた。鼻の穴にスイカを入れる感じとか。そんなのはとてもとても無理だと思ったし、何よりそういう状況になったところを想像すると、やっぱりどうしても無理だと思った。そういう雰囲気が怖い。私の体がそういう視線に晒されるのが怖い、フケツだ、と思う。好きな人が、私をそういう目で見るだなんて考えたくない。フケツだ。もし彼の視線に汚らしい欲望を感じたとしたら、私の目が狂っていた。そんな人を好きになるだなんてどうかしていた。死んだ方がいい。私も、彼も。
 ごっちんが「よしこってさ、処女?」と訊いた。私は少しギクッとして「なんで?」と尋ね返した。
「あ、処女だね、なんか、分かるよ」
「そうだけど、別にふつうでしょ、ごっちんが早いんだよ」
「早くない、むしろ私がふつー」
「いや早い。私の方がふつう」
「いや」
「いやいや」
271 :決戦は金曜日 :2011/12/30(金) 03:22
 何遍かの茶番を繰り返して、飽きた。鉄拳にもそろそろ飽きていた。気だるい雰囲気の中、私はふと思って訊いた。
「ごっちんの初体験っていつ? だれ?」
「中2のときで、センパイ」
「センパイって? だれ?」
「え? そこ訊くの? 恥ずかしいじゃん、いいじゃんそれは」
「あ、私も知ってる人なんだ」
「ま、そうだね」
「援交は?」
「なにが?」
「援交はいつ? だれと?」
「ついこないだ。先生と」
「え! マジで!」
「マジで」
「誰?」
「そりゃ言えないよ、さすがに、担任じゃないから、それはまあ安心して」
「安心って、ねえ、なにそれ、安心ってなに」
「担任がクラスの女子に手出すとかあれでしょ、危険じゃん」
「ああ、まあ」
「だしょ?」
「で、いくらで?」
「三万!」
272 :決戦は金曜日 :2011/12/30(金) 03:22
 ごっちんは拳を高々と天井に向かって突き上げた。誇らしげな顔をしていた。かわいいと思った。「でね」とごっちんが続けた。
「よしこもやんないかなって。私と、よしこと、二人で」
「え、なんでそうなんの?」
「二人で行ったら、一人につき四万くれるって」
「へえ、すごいね」
「どう?」
 四万という金額には心が揺れた。でもなんか、なんとなく、いやだったけど、でもごっちんと一緒なら、なんか、別にいいか、という気がした。
「分かった。いいよ」
273 :決戦は金曜日 :2011/12/30(金) 03:23


 待ち合わせ場所につくと、あまりにもキモいおっさんがいた。この人じゃありませんように、と強く願ったが、ごっちんはとことことそのおっさんに歩み寄り、しばらく話し込んだ後、何か荷物をもって戻ってきた。「じゃあ今からよしこの家行こうか」と言った。私は訳が分からなくて「え? なんで?」「いいからいいから」「家とか困るんだけど」「大丈夫だよ、おっさん来ないし、ほら」ごっちんは私に封筒を握らせた。「ね、大丈夫だから、よしこん家行こう」
 家につくなり、ごっちんは服を脱いで、全裸になった。きれいな体だった。陰毛の毛並みが美しかった。「ほらほら、よしこも脱いで」言いながら、手際よくおっさんから預かった荷物をほどき、ビデオカメラを取り出した。
274 :決戦は金曜日 :2011/12/30(金) 03:24
「どういうことになってんの?」
「私とよしこがレズる、それをこれで撮る、返す、とそういう具合です」
 なるほどなあ、と思っている間に、ごっちんはカメラをセットし、また荷物の中からメイド服を取り出し、それを着た。「なにぼさっと突っ立ってんの、ほらほら脱いで」ごっちんは私の服を脱がせて、チャイナドレスを着せてくれた。よしこスタイルいいじゃん、とごっちんは嬉しそうに言った。私もなんだか嬉しくなった。カメラの前で二人、ポーズを決める。ごっちんはふわりとスカートを上げ、私はチラリとスリットをまくって見せた。ごっちんと、キスをした。初めてのキスだった。唇ってこんなに柔らかかったのか、と思った。舌ってのはこんなに生温くて気持ちいいのか、と思った。唾液が甘かった。吐息が甘かった。互いに荒くなる呼吸がこんなに興奮するものだとは知らなかった。他人のアレをこんなに間近で見ることがあるだなんて思いもよらなかった。そしてそれがこんなにかわいらしいものだなんて、想像もしなかった。こんなに気持ちのよいことがあるだなんて、とても考えたことがなかった。キス、シックスナイン、ごっちんは私の股間に顔を埋めながら「おいしい」と何度も言った。私はさすがに美味しいとは思わなかったけれど、甘くて酸っぱい良い香りだと思ったから「いい匂いがする」と答えた。ごっちんは笑って「そりゃ日頃のケアのおかげだね」と言った。どんなケアなのだろうと考えた。ごっちんの陰毛の美しい毛並み。
「やっぱり手入れしてんの? これ」
「あたりまえじゃん、決戦は金曜日だよ」
「なにそれ」言って、笑った。
275 :私とれいなを抱きしめていたい :2011/12/30(金) 03:25
エロスレに書き込もうと思ったのだけど、
なぜかうまくいかなかったので、ここにて。
来年も私とれいなをよろしくお願いいたします。
276 :名無飼育さん :2012/01/04(水) 04:04
 こんにちは、元気ですか、あけましておめでとうございます、寒いですね、新春、大売出し、私は風邪を引きました。寒さにうちふるえつつ、ちんこを握ると、あったかい。そういう人間としてのあたたかさを握り締めて精子を放出しております昨今、元気ですか。私は風邪を引きました。精子はとてもあたたかい。受け止めたティッシュ、あたたかいですよ。テーブルの上に置いておき、ふときづいた時にそれを捨てます。そこが結露しています。そういうことに、日々気づいていこう。そういうことに、小さな幸せを感じていこう。小さなことからコツコツと、ね、わかるでしょう? 人間としてのあたたかみです。
 先日おっぱいパブに出向きました。店に入って嬢がつくのを40分ほど待っていると、俄に照明がパッパッとフラッシュのように点滅し、そちこちで嬢が男の上に跨っておっぱいおっぱいし始めたので、ぼくもいまからおっぱいおっぱい、人間のあたたかみ、それを感じることができるんだなあ、たった5000円ぽっきりで、そういう人間のあたたかみにふれることができるのだなあと思いますといてもたってもいられず、ちんこを取り出し、猛烈にしごき始めました。透明なものがいっぱい出た。私についた嬢は白い布切れのようなものをまとった華奢な女の子で、少しおどおどした変わった子だったのですが、名前を尋ねると「れいな!」と元気一杯に応えましたから、そうかそうか、君はかわいいねえ、いくつなの? 17ぐらいに見えるけども、だいじょうぶなのかな? そう思いまして、一瞬の良心の呵責です。私はいまからこの華奢な17程度の女の子のおっぱいでおっぱいおっぱいするわけですから、つまり具体的に言うとその乳を揉みしだき、顔を埋め、乳首を舐め、鼻くそをなすりつけたりするわけですが、件のサービスタイムまでは苦痛でしょうがありませんでした。致命的におしゃべりがおもしろくなかった。彼女は一生懸命に何か色々話してくれるのですが、私は彼女のことばの一切に興味がなかった。ただ彼女の華奢でちんちくりんな身体と、迷いがちな大きなお目々と、触れると崩れてしまいそうなその肉質にしか興味がありませんでした。20分間で10本のタバコを灰にし、三杯のクスリくさい焼酎を飲んだ。れいなちゃんはなにか一生懸命お話をしてくれたのですが、ひとつも覚えていません。語尾につく「っちゃ」や「ばい」がちょっと妙で、かわいいなあと思い、その度に「おっぱい」と言っていたら、れいなちゃんは俯いて、いつの間にか沈黙しました。私はあまりの退屈さにあきれはて、もう一度ちんこを取り出すと、高速でしごきました。透明なものがいっぱいでた。れいなちゃんは何か不思議なものを見るような目でそれを見つめ、私のちんぽこの先に手を触れると、それは細長く、キラキラと美しい糸を引きました。互いに視線を交わし、うっとりとした目をしました。れいなちゃんは私が跨り、白い布切れを下に引き下ろしましたらば、そこには何もなかった。遥かなる大地。ただ粉雪のように繊細なお肌がきらきらとしており、私はそこに顔を埋め、舌を這わせ、鼻くそをぬりたくりました。れいなちゃんはその度にか細くこそばゆい吐息をはきました。ちんこをなすりつけると、ちょうどナメクジが這ったようにキラキラと、幾筋もの透明な軌跡をその身体に描きますので、そこを私は音を立てて舐めました。茶色いでっぱりに舌先が触れると、れいなちゃんは一際大きな声を出し、まわりの男どもが一斉にうらやましそうな目でこちらを見ました。私は得意になった。天狗になりました。怒張した天狗の鼻先も高々に、私は警察に突き出されました。もうあの店には二度といけません。悔い改めましょう。人間のあたたかみはおっぱいぱぶにはありません。あすこは魔物が住むところだ。天狗が暗躍するところだ。れいなの面影を抱きしめて今年も生きていきます。
277 :名無飼育さん :2012/01/06(金) 01:47
 水虫のかゆみに耐えかねて、靴下を脱いでぼりぼりとかいたその指先を、れいなの鼻先にそっと差し出してみる。すやすやという安らかな寝息は何変ずることなく、こいつはバカなのではないか、と思った。れいなの手に靴下を握らせて、満足した。窓の外で車の走るサアーッという音がして、コンコンとドアが鳴る。誰? 不思議に思い、立った。圭ちゃんが居た。ひどく酔っ払っているようで、いるんでしょ、田中ちゃんいるんでしょ、と何度も何度も叫ぶのだが、私はもう夜遅いから、ね、近所迷惑にもなるし、声のボリュームを少し落とすか、帰ってくれ、私とれいなとの甘い一時を邪魔しないでおくれ、言ったのだったが、圭ちゃんは首をぶんぶんと横に振り、許さない、とものすごい目をした。何を? 水をいっぱい飲ませて、落ち着かせ、話を聞いた。圭ちゃんはぽつりぽつりと、懺悔するように、あああなんだか、ほんとうにごめんなさいね、言って、大人の女の顔をした。ので、思わずキスをした。笑った。圭ちゃんの唇はこってりとした豚骨の味がし、ニンニクの香りが鼻を抜けた。なんだかお腹が空いてきたな。何か作るよ、なにがいい? なんにもないよ、にんじんと、たまねぎと、だいこんと。それじゃあみそ汁を作ってあげる。圭ちゃんは指を切った。痛いと言った。圭ちゃんが痛いのならば俺も痛いと思った。指先から滴る鮮血が、真っ白いまな板に映えていた。大丈夫? 訊くと、ははっ痛いね、痛いったらないよ。震える声がいとおしく、もう一度キスをして、指先を舐めた。圭ちゃんの血の味は、なんだか泥みたいだったからおかしかった。れいなが起きてきて、なにしよると! と叫んだ。靴下を握り締めていた。それはおれの、水虫の、靴下で、それがなんだかまたおかしかった。圭ちゃんもおかしいねと言った。指先を舐めていた。ちゅるちゅる、と音がした。れいなも、れいなも舐めるっちゃん、ばかにせんとって欲しいばい。いいんだ、れいなは、いいんだよ、お前はおれの靴下でも舐めていろ。それから、水虫がかゆいから、かいてくれ。はいわかりました。れいなと圭ちゃんがおれの足を舐める。ちゅっちゅっ、音がして、窓の外ではスーパーカブが走るようだったから、もうすぐ朝、二人のつむじの白く収縮するその一点を、両の親指で強く押すと、圭ちゃんが弾けたので、私とれいなは笑いあって、朝日が昇ったらおやすみしよう。さようなら。
278 :私はつじかごを抱きしめていたい :2012/01/11(水) 22:20
 もうどうにもならへんわ、と思った。もうどうでもええねん、と思った。マネージャーに電話した。もう無理です。ああ? 無理だろうがなんだろうが知らねえよ。めんどくさそうに言った。「いいから早く寝ろよ」もうどうでもええねん、くそったれ。電話を切って、睡眠薬を飲んだところから記憶が無い。
 気付いたら病院だった。マネージャーがいた。
「あ、おはようございます」
 マネージャーはなぜか怒っていて、喋る度ぷくぷくと鼻の穴が膨らんだ。「おい、加護、おまえ聞いてんのかよ」とその鼻が言った。「聞いてます」実際あんまり聞いてなかった。ぷくぷく膨らむ鼻の穴に見とれていた。鼻毛が三本ほど飛び出していて、ちょっとおかしかった。「自殺なんてバカなこと……」なんだって? 自殺? 誰が?
「えっ?」
「えっ、じゃねえよ、おまえ」
 鼻が指さすところを見ると包帯でぐるぐる巻きにされていて、触れると鈍い痛みが走った。痛い。痛いやんけ。なんでやねん。ああそうか、手首切ったのか、そんな古典的な、ははは、ウケる。あたし超ウケる。
 鼻は一方的に色々と喋ったあと「これ、一応渡しとくからな」と言って、携帯をくれた。これは私の携帯だ。ピカピカ点滅していた。開くと、電話とメールの着信がたくさんあって、そのうちの一つが目を引いた。辻希美。何年ぶりだろうか。連絡を取らなくなって久しかった。よく見てみると他にも懐かしい名前がずらずらと出てきた。笑ってしまった。昔に戻った気がした。携帯の履歴がこの名前たちで埋め尽くされていた頃のことを思い出した。左腕の傷が疼いて、痛いやんけ、なんやねんもう。携帯を閉じて、目を瞑ったら寝てしまった。
 携帯が鳴る音で目を覚ました。取ると「もしもし? 大丈夫?」という懐かしい声がした。「大丈夫なわけあるかい、分かるやろ」と絞り出した自分の声がかすれていた。電話口の女は「大丈夫そうじゃん」と言って笑った。
279 :私はつじかごを抱きしめていたい :2012/01/11(水) 22:22
「あいぼん」
「なんやねん」
「なんやねんってなんやねん」
「なんでもあらへんわ」
「かわんないねー」
 そうやってしばらく、取り留めもないやりとりをしている間に目が冴えた。マネージャーが来た。
「誰と電話してんだ」
「辻希美」
「あ、そう、ちょっと代わって」
「え、なんでですか」
「いいから」
 携帯を奪ったマネージャーは部屋から出ていった。私は手持ちぶさたになって、左腕をさすった。痛いやんけ。なんやねんこれ。手首切るとかアホなことすなや。痛いやんけ。ええ加減にしいや。どうかしとるんちゃうんか自分。
 マネージャーは部屋に戻ってくるなり、おまえ退院したら辻んとこに世話になれ、と言った。
「え、なんでですか」
「おまえなあ、こんな危なっかしい奴一人でおらせられるかい」
「でも、あれですよ、いやがるでしょ、いくらなんでも」
「頼み込んだ。っていうか辻もそのつもりだったらしい」
「へえ」
「へえ、じゃねえよ、感謝しろよ、おれにも、辻にも」
「ありがとうございます」
「頼むでほんま」
280 :私はつじかごを抱きしめていたい :2012/01/11(水) 22:22
 退院ということになって、マネージャーは菓子折りをくれた。
「なんですか、退院祝いですか」
「あほか。辻への手土産に決まってんだろ」
「あ、そうですか」
「頼むでほんま。よく礼を言うように」
「はいはい」
「返事は一遍でええねん」
「はーい」
 はーいはいはいはいだよ、まったく。タクシーに乗せられて、マネージャーが住所を告げ、先払いでお金を払う。
「足りますよね? お釣りは結構ですんで」
 運転手は無愛想で、いやなおっさんだった。別に何か言うわけではないのだけれど、バックミラー越しにチラチラと視線を感じた。私は帽子を目深に被り、上着に顔を埋めた。少し暑かった。
「すいません」
「はい?」
「もうちょっと温度下げてもらえますか」
 おっさんは無言で空調を強めた。ゴーっというエアコンの雑音に、いくらか心が救われた気がした。いつの間にか寝ていて「着きましたよ」の声で起きた。顔を上げると、フロントガラス越しに辻が見えた。変わったな、と思った。
281 :私はつじかごを抱きしめていたい :2012/01/11(水) 22:23
「久しぶりじゃん」
「こないだ電話で話したけどな」
「そういう意味じゃなくってー」
「分かってる分かってる、冗談やって」
 私は菓子折りを辻に渡して「しばらくの間お世話になります」と頭を下げた。辻は笑いながらそれを受け取り「こちらこそお世話をさせていただきます」と頭を下げた。
 部屋に通される。旦那さんはいないようで、二人の子どもも今は寝ているのだか、家の中はシンとしていた。好きに使ってくれていいから、と辻は言った。お風呂入る? 病院だとゆっくり入れなかったでしょ。あ、でも傷口が開くからダメなのか。いやでも退院したってことはもう傷口は塞がったってことなのかな。ま、いいや、どうする? お風呂入る? それともご飯たべる? 病院のご飯じゃあれだったでしょ。のんも妊娠してる時の病院のご飯は我慢できなかったもん。とびっきりの料理をですね、作ってありますので、どうする? あ、もしかしてあれかい? お風呂にする? ご飯にする? それとも、あ・た・し? 的な?
 辻はいやに口数が多く、相槌を打つので疲れた。ベッドにごろんと横になると、家庭の匂いがした。よその家の匂い。それがなんだか心地よくて、まぶたが自然に降りた。
「ごめん、寝るわ」
「分かった。じゃ、お風呂もご飯も適当なタイミングで」
「ごめん、ありがとう」
「おやすみ」
282 :私はつじかごを抱きしめていたい :2012/01/11(水) 22:23
 夢は見なかった。外はもう薄暗く、子どもの声がどこからか響いている。布団が柔らかい。よその家の匂い。漏れ聞こえてくるよその家の団欒。なんで私はここにいるのだろう。居ていいのだろうか。左腕の傷をさする。まだ痛い。痛いやんけ。あほらし。布団から起きあがって、部屋のドアを開けると、夕飯のいい香りがした。
「あ、あいぼんおはよう、ご飯食べる?」
「ああ、今はええわ」
 辻の子どもの顔を初めて見る。名前はなんだったっけ。覚えていない。というかそもそも知らなかった気がする。昔のののによく似ていた。のの、と小声で言ってみる。その声は気付かれない。あたりまえだ。気付かれないように小声で言ったのだから。
 ののは下の子をあやすので忙しい。私はなんでここに居るんだろうか。上の子が私の顔を不思議そうに見る。そりゃ不思議だろう。おまえ誰やねん。ってなもんで、私も自分が誰なのだかよく分からない。名前は分かるよ。加護亜依と言うんです。私の名前は加護亜依と言います。あいぼん、と呼ばれたりもしていました。でもそういうことじゃない。よその家の団欒に紛れ込んでいる私は誰? 子どもをあやしているののに似たこの女の人は誰? 私を不思議そうに見つめるあなたは誰? 「のあ、ちゃんとご飯食べて」とののに似た女の人が言った。そうか、あなたはのあちゃんってんだね、いい名前だと思う。いい家庭だと思う。私は加護亜依と言います。以後よろしくお願いします。のあちゃんはご飯を食べた。その横顔がまた食いしん坊のののによく似ていたから、笑った。そして自分のふとももを思い切りつねった。痛い。痛いやんけ。あほちゃうか。なんでそんなことすんねん。
「のの、先にお風呂借りるわ」
「あいよー。バスタオルとかシャンプーとか勝手に使っていいからね」
「分かった。ありがと」
283 :私はつじかごを抱きしめていたい :2012/01/11(水) 22:25
 服を脱いだ自分の姿を鏡に映して見る。ぐるぐるに巻かれた包帯が痛々しい。ふとももに痣ができている。痛いなあ。なんでこんなことすんねん。あほちゃうか。あほだと思う。自分の体を痛めつけてなんになるってんだ。私は服を着直して、ののに気取られないように家を出た。
 しばらくぶらぶらとそこらをほっつき歩いた。左腕にぐるぐる巻きにした包帯が目を引くのか、すれ違う人が怪訝な視線を投げてくるのが身に刺さった。私はどこにも居られないのか、という感覚。たまらなくなって、どこか人目につかないところへ行きたい、帰りたい、思ったのだけど、私には帰るべき家がない。マネージャーに電話した。
「帰りたいです」
「あ? 何言ってんだ。辻んとこでゆっくりしとけ」
「私の居れる場所じゃないです」
「知らねえよ。とにかく辻の家にいろ。それが一番いい」
「ダメなんですよ。あそこにいると。帰りたいです」
「なんで?」
「とにかくダメなんです。死にそう」
「またか。知らんがな。おまえ今どこにいんの」
「外です」
「外ってどこよ」
「わかんないです」
「あーもう、めんどくさい、迎え行くから、どっか分かりやすい店にでも入ってろ」
「お金なくて」
「いいよ、おれが後で払うから、とにかく喫茶店でもなんでも入ってろ」
284 :私はつじかごを抱きしめていたい :2012/01/11(水) 22:27
 目に付いた喫茶店に入った。何も食べる気も飲む気もしなかったけれど、ホットコーヒーを頼んだ。すぐに出てくる。それを両手に包んで持つとあったかい。ホッとする。ホットコーヒーだけに。ははは、超ウケる。帰りたい。電話が鳴った。取ると、ののからだった。「どこにいんの?」と彼女は言った。その声の調子には凄みがあって、ちょっとたじろいだ。
「喫茶店、コーヒー飲んでる」
「なんで?」
「なんでって……」
「どこの喫茶店? 名前は?」
「え、ののんちからすぐ近くの、なんて名前だろうこの店」
 店の名前を告げると、ののはすぐに来た。なぜか怒っていた。なんで怒ってるんだろう。よく分からんなあ。子どもはいいの? と尋ねると、旦那に任せてきた、と言った。あいぼんはさ、のんのこと嫌いになった? いや、とんでもない、懐かしい、あの頃を思い出すと、たまらなくなるぐらい、好きだよ。昔の話はどうでもいいんだよ、今の、のんのことを見てどう思った? 変わったな、とでも思った? どこが? なんにも変わんないよ。あいぼんも、なんにも変わんない。なんにも変わんないんだよ。一人だけ取り残された気になって、勝手に不幸にならないで。ののはそう言って、私の左腕を取って、さすった。未だに止まない鈍痛。痛いからやめてくれへん?
「あいぼんのバカ」
「ののもたいがいやで」
 私は久しぶりに泣いた。笑った。大丈夫だ、と思った。
285 :私は私を抱きしめていたい :2012/01/11(水) 22:40
 痛ましい、と思った。辻が幸せな家庭を築いているその一方で、加護が身を持ち崩していくのを、とても耐えられない気持ちで見ていた。今風に言えば辻は勝ち組であって、加護は負け組。モーニング娘。が華やかかりしころ、誰よりも強靭な組み合わせでもって、辻加護辻加護と呼ばれてきたあの二人が、これほどまでに痛ましく引き裂かれてしまうなどとは夢にも思わなかった。ふと想像してしまう。加護が辻に対して抱く憎悪に似た憧れのことを想像してしまう。辻が加護のことを気にかけている風であればあるほど、加護は卑屈になり、どうせ勝ち組の憐憫だ、差し伸べられるその手は、私に向けられているのではない。「かつての親友、相方の身を案じる辻希美自身」に向けられているのだ。その手は私を救うふりをして、その実、白馬の王子様になった自分を愛撫しているに過ぎないのだ。憧れはひねくれ、良からぬ方向へ向いていくのではないか、という不安に苛まれる。そんな暗い妄想で辻加護のことを思い出したくはない。極めて明るく、希望に満ちた形で、しかし安易になりすぎてはいかぬ。颯爽とやってきた白馬の王子たるののたんのキッス、毒りんごの毒は解け、目覚めたあいぼんは幸せになる。たちまち全てが解決される。そんなことでは、なんにも納得がいかなかった。私はれいなに言った。「どうしたらいいんでしょうか」れいなは腕を組み、訳知り顔で言った。「泣いた後に笑えば全てがハッピーなのだっちゃ」そうか、そうかもしれぬ、そう思った。
286 :名無飼育さん :2012/01/16(月) 23:16
二日家に帰らなかったれいながやつれた顔で、帰ってきて、ダメだったっちゃ、と言った。なにが? 訊くと、実はこっそりと大学入試センター試験、それを受けて来たのだという。そんな素振りなどいままで見せたことがなかったし、れいなはバカだから、仮に受けたところでダメなのは明白であって、そうか、残念だったねと声を掛け、頭を撫でた。目を細くした。バカにするなとでも言っているかのようだった。バカにはしていない、ただ、れいなはバカだという当然の事実のことを考えていた。「とても眠いんだっちゃ」れいなはバタリとソファーに倒れこんだ。白い、子どもの脚だった。薄紫の靴下の裏が薄く汚れていた。私はその脚を手に取って、顔を埋めた。モイスチャー。しっとりとした湿り気と、嗅ぎなれた香水の香りの奥に、堆積する、二日分のれいなの芳香である。そっと靴下を脱がして、足指の間、糸クズや得体の知れない垢のようなもの、それをきれいに舐め取った。ボーノボーノ。れいなはすやすやとバカのような寝息を立てて、眠っていたから、その寝顔に唾を吐いた。私はれいなを抱きしめていたい。
287 :ごとーはれいなを抱きしめていたい :2012/01/17(火) 01:13

 後藤さんに会った。会うなり「タバコ吸っていい?」と訊くので「どうぞ」と言った。どうぞだって、変なの、とか言って後藤さんはからから笑い、あ、ライター忘れてきたや、持ってない? 持ってないよね。そりゃそうだ。田中ちゃんはタバコ吸わないもんね。すいません、火ィ貸してくだしあ、ありがとー。はは。なにびっくりしてんの、ごとーだってタバコぐらい吸います。なんかおかしい? カタカタとテーブルが揺れ、「地震ですかね」天井を見た。何の変哲もない天井だった。店の奥の方にエアコンと換気扇が並んでいるのが見えた。少し寒いな、と思った。
 ごめん貧乏ゆすりしてた、ごめんごめん、気づかなかったや。後藤さんはタバコを揉み消すと、もう一本咥え、あ、ライター無いんだった。すんません、もういっぺん火ィ貸してもらっていいですか? え? くれんの? いいの? ごめんね、悪いね。お金払いますよ。いくら? え? いいって? まあまあそう言わずにさあ。お金ならあるんで。大丈夫っす。こう見えて割とお金もってるんですよごとー。あー、小銭ないんで、千円でいい? いいじゃん。もらっときなってば。失礼だよ。払うっつてんの。なめてんのかよ。後藤さんが席を立って、隣の男に詰め寄ったので、「ちょっと、やめてくださいよ」それを止めた。男は逃げるように席を立った。なんなのあいつ、感じ悪い。ちんこついてないんじゃない? それでも男かよ。罵声の一つや二つ飛ばしてみろよ。怒れよ。殴れ。生意気な女なんざ殴って顔に唾吐いてそれで終わりだよ。つまんないの。あいつちんこついてないんじゃないの? あー感じ悪い。舌打ちした。感じ悪いのはお前だ、お前、なんだそれ。帰りたい。
「帰っていいですか?」
「なんで? 今来たばっかじゃん、つもる話も」
「ありませんよ」
「ごとーはあるんだよ、聞いてよ田中ちゃん」
「なんですか」
 一瞬の間があって、真面目な顔で後藤さんは言った。なーんもないんだよね、楽しいことも辛いこともなーんもないの、どうしよう、つまんないや、全部つまんないんだよね、どうしたらいい? ねえ? 田中ちゃんは最近なんか楽しいことあった? 
「とくになにもないですけど、つまんないことはないですよ」
 えーっ、と大袈裟に驚いて、「ずるくない? 田中ちゃんだけそういうのずるいよ」
「ずるくないです」
「ずるいずるい」
 めんどくさい、と思った。「帰りますね」言って、席を立とうとテーブルに着いたその手を取られた。もうちょっと一緒に居てよ。一人だと死んじゃうよ。ごとー死んじゃいますよ。それでもいいの? いいんなら帰れば? あー悲しいなあ、田中ちゃんがそんなに薄情な子だとは思わなかった。そんな子に育てた覚えはないんだけどねー。ごとーは死にます。田中ちゃんが冷たいので。遺書にも書いてあげるよ。「田中ちゃんの仕打ちに耐えかねて、私はとうとう自殺を決意しました。おとうさんおかあさんファンのみなさんごめんなさい。田中ちゃんが冷たいので。私は自殺することに決めました。なんといっても田中ちゃんが冷たいので。先立つ不幸をお許しくだしあ」あ、でも田中ちゃんはセイセイした、とかいって喜ぶのか。ずるいね。徹頭徹尾ずるいよ田中ちゃん。ごとーがこんなにつまらなくて死にそうなのに。田中ちゃんはつまらなくないというし、あげくの果てにごとーを置いて帰ろうとする。そしてごとーは死にます。この薄情者。性格ブス。
「なんなんですか」
 私が怒ると、後藤さんはアハッと笑った。人が怒る顔を見るのだけが楽しい、と言った。私はこんなやりとりが心底つまらないです。帰ります。言って、千円札を叩きつけて店を出た。タバコを咥えて、火をつけて、鼻からふんふんと煙を吐き出しながら、後藤さんの言うことももっともだ。ほんとに、つまんないなあと思った。
288 :名無飼育さん :2012/01/17(火) 23:31
 電話があって、取ると、れいなは預かった、返して欲しければれいなの使用済下着を用意できるだけ用意せよ、と誰かが言った。はて? と思い、寝室を覗くと、れいなはすやすやとお寝んねしていた。「れいなは今私のベッドで寝ていますが」言うと、それは幻だ、それはれいなではない、れいなのぬけがらに過ぎないのだ、真実のれいなは我々の手の内にある、返してほしくばれいなの使用済下着を用意できるだけ用意しろ、まずラップでくるんだ後、ジップロックに入れ、空気を抜けるだけ抜き、然る後にそれを持って新宿はアルタ前広場に来い。私は恐ろしくなって「分かりました」と言った。電話は切れた。
 洗濯籠から発掘したれいなの下着類一式をラップしてジップした。それには相当の時間を要した。というのも汚れたれいなの下着が私を誘惑し、自慰へかきたてるからで、私の痕跡は全ての下着に関して汁された。れいなの抜け殻、と称された肉の塊は未だすやすやとかわらしい寝息をたてており、本当にこれが抜け殻なのかしら、不思議になって、布団をはぎ、ミニスカートをめくり、パンティを脱がし、そこに現れた桃色の臓器に指を差し入れたのだが、れいなは依然すやすやと寝息を立てるばかりで、指を前後にピストン、かき回してみても一向に正体が掴めない感じで、しかしじゅくじゅくに濡れていた。私はそれを舐めた。胸がすっとすくような爽やかな味わいで、ややツンと刺ささる酸味はまだ若い、ボジョレーヌーボーのような初々しさだった。ここに私の陰茎を挿し入れたらどうなるのだろう? いやらしさからではなく、純粋な好奇心から勃起し、インサートしようとしたその時に、また電話が鳴った。
 今どこに居るのか、とその声は言った。「まだ家に居ます」と言うとその声の主は激昂した様子で、れいながどうなってもいいの! と叫んだ。どこかで聞き覚えのある声だった。もしかして、もしかすると、さゆなのではないか、という気がした。「道重さんですか」と尋ねると、返答がない。これはいよいよさゆに違いないと考えた。「私は今かられいなの抜け殻にインサートしようとしているところです。道重さんはこれを、今私の目の前ですやすやと寝息を立てながら、あられもない姿を見せつけているこのれいなに似た肉塊のことを、抜け殻、と言いましたが、私は別にこれが抜け殻であっても構わない気がするのです。ピンク色のおまんこが私を誘っています。どう見ても、どう考えても、これはれいなの体です。れいなの味がしました。れいなの匂いもします。真実のれいなだろうが、抜け殻のれいなだろうが、私には全然関係がないことです。現にここにれいなの形をした体があるのです。なんの問題があるのですか? これから私はれいなのピンク色のおまんこにインサートの後、ザーメンをインストールして、そして生まれるであろう私とれいなとのかわいらしい娘にもまた、十数年後にインサートしたいです」
 玄関のドアーが勢いよく開く音がし、ドドドドという騒々しい足音の後、さゆとえりりんが寝室のドアーを蹴破った。さゆは「れいな!」と叫ぶなり私を足蹴にし、えりりんは半透明の女の子ーー彼女はれいなによく似ていたーーを連れていた。さゆはぷりぷりと怒っていた。信じられない、不潔、と私を罵った。すいません、と謝ると、えりりんが私の陰茎をそっと手に取り、小さい、と耳元で囁いた。半透明のれいながれいなの抜け殻に近づき、重なると、すやすやという寝息は収まり、突然ガバッと身を起こした。「下がスースーするっちゃ」と素っ頓狂な声で叫ぶので、私も、さゆも、えりりんも、ワハハハと笑って、水色の下着を買ってあげなきゃいけないな、と思った。
289 :大学生 :2012/01/18(水) 00:00
 私は大学生だった。モテたい、と思っていたので、軽音楽サークルに入ったものの、なんら楽器経験が無い。その旨正直に告げ、どうせならボーカルがやりたい、一番目立つのはボーカルであり、私は美声である、そして私には楽器経験がない、ボーカルしか考えられない、ということを主張したのだが、藤本というヤンキーのような先輩が「なんていうか、ドラムかベースって感じだよね」と言ったので、ドラムをやるハメになった。なぜ「ドラムかベースって感じ」なのかしばらく不思議だったのだけど、サークルメンバーを見ているうち、なるほど、ドラムやベースなどのリズム隊というのは、バンドの要であって、リーダーであることが多い、頼り甲斐のある感じ、つまりそういうことなのだな、と内心憎からず思っていたのだが、藤本先輩と松浦先輩(彼女もまた、少しやさぐれた感じの人だった)が「あのデブ」などと私のことを悪し様に言っているのを風に聞いて、なるほど、おれはデブだから「ドラムかベースって感じ」なのか、と理解して、サークルを辞めた。
 それから幾年、久しぶりに学内で出会った藤本先輩が「サークル戻んないの」と言うので、絶対に嫌だ、と思ったのだったが、彼女の傍らに、金魚のふんのように引っ付いている女の子が気になって、その子は誰ですか? と尋ねると、田中ちゃんってんだよ、かわいいでしょ、ミキの舎弟みたいな感じ、超便利、などと言った。田中ちゃんは、ははは、と掠れた笑い声を発した。口を開けるとか、まばたきをするだとかの一々の仕草がどうもぎこちなく、つくりものめいていて、なんと可憐な生き物なのだろうと思い、「戻ります」と返事した。田中ちゃんとバンドをやりたい、と思ったのである。
 田中ちゃんは華奢な体に似合わずベースを弾いているらしかった。下の名前を訊くと「れいなです……」と今にも消え入りそうな声で応え、その可憐さにますます胸がしめつけられるような気がした。藤本先輩が「おまえなに田中ちゃんのことジロジロ見てんだよ、怖がってんだろうが」と怒った。「だってかわいいじゃないですか、その怖がってる感じがまた」「もどんな、もどんなくていい、ミキが悪かった、おまえ戻ってきたらダメだわ、田中ちゃんにとってよくない」「なんでですか、いいでしょう別に、とって食うわけじゃないし」「ダメ、もういいよ、どっかいけよお前」ということでサークルには戻れなかった。田中ちゃんはその横で、ずっとハハハと乾いた笑い声を発していた。その姿と声を目と耳に焼き付けた。去っていく後ろ姿の、ぷりっとしたお尻の上下運動を、何度も反芻した。
 私は六畳一間の下宿でしばし田中ちゃん、いや、れいなちゃんとのバンド活動について考えていた。私がスティックを四つ叩き、テンポを出すと、れいなちゃんのうねるベースラインが私のビートに絡みついてくる。目配せをする。ここだ! というところでキメを入れる。グルーヴィー。私はれいなちゃんの後ろ姿、体に比して大きすぎるベースを抱えて、ぷりぷりとお尻を振りながらリズムを取る、その光景を夢想した。股間のスティックが生命のビートを刻み、白い吐息を吐く。ああ、もう冬、そして春なのだ。雪はまだ降らない。
290 :センター試験 :2012/01/18(水) 00:33
 れいなは「緊張しすぎて吐きそうだっちゃ」と言った。吐きそうなら吐けばいいじゃないか、いや、ここで吐いたらダメだな、と思った。センター試験の会場である某大学に向かう電車の中でのことである。「もうちょっと我慢してよ、会場についてから吐こう」れいなはじろりと私を見やり「そういう意味じゃないっちゃ」と言ったので、わけが分からんな、と思った。
「じゃあどういう意味なの?」
「それぐらい緊張してるってこと!」
 なぜか自信満々にれいなは言い、あんまり緊張しているようには見えないな、と思った。きっとれいなは緊張しているかのような自分に酔っているのだ。醜い自己愛だ。そんなものを見せつけられて、こちらこそ吐きそうである。「できるかな」と私はぼやいた。れいなはやはり自信満々に「ここまできたらできると信じるしかないっちゃん! 己れを信じるばい!」とか、どこかで聞いた風なことを言う。いよいよ吐き気が増した。なぜそんなに偉そうなのか。なめとるのか。
 れいなは手鏡を出して、その中に映る愛らしい顔をじっと見た。私はそれを横から見て、よくこんな時に化粧なんぞしてくるものだ、化粧のノリなんかどうでもいいではないか、とか思った。手鏡は年季が入っていて、ぼろぼろで、それは随分前に私がれいなにプレゼントした奴だった。それを今でも使ってくれている、ということは、少し嬉しかったが、背面にはプリクラが夥しく貼ってあり、それがとても汚らしいく見え、嫌だった。
 手鏡をしまうと「こんなんで大学生になれるんやろーか」とぼやいた。きっと無理だろうな、と思った。この一年、れいながまともに勉強しているのを見たことがなかった。未だにどの科目で受験するかすら、ちゃんと決めていなかった。精一杯のやさしさをかき集めて「きっと大丈夫だよ」と言った。れいなはそれを聞いてか聞かずか「もっと化粧うまくならんといかんっちゃ」と言った。その言葉に逆上して吐いた。床一面に今朝のご飯が溢れた。すっぱい臭い。れいなは一瞬驚いた顔をし、すぐに嫌悪感に満ちた目で私を見下すと、さっさと他の車両に移った。クソ女め。心底腹が立ったが、それでも、私はれいなを抱きしめていたい。
291 :名無飼育さん :2012/01/19(木) 00:02
 ごっちんはうちに着くなり風呂を浴び、パジャマに着替え「ね! トランプしよ! トランプ!」とはしゃいだ。私とれいなは顔を見合わせ、どうしたものだろうか、と考えた。まだまだ日は高く、トランプとか、そういう気分ではなかったのである。やらねばならぬ家事、掃除や洗濯などがあったし、親からの仕送りを引き出しに行こうとも考えていたし、まだ今日はオナニーをしていなかったので、いい加減オナニーをしないと死んでしまうところでもあった。れいなは別にやることもないだろうから、ごっちんと一緒にトランプでもなんでもしてたらいいのだが、「私はちょっと用事があるから」と言ってれいなの背中を押すと、肩を揺すっていやいやをした。
「わがままを言うんじゃない! ごっちんのトランプに付き合いなさい!」
 しぶしぶ、といった調子で、れいなはごっちんと向かい合った。ごっちんはにこにこしている。いいことをしたな、と思った。おれはいいことをしたんだ。「じゃあちょっと二人で楽しんでてね、私は洗濯があるから」言って、リビングを後にすると、脱衣所へ向かい、洗濯籠に鎮座する後藤真希さんの下着に手をつけた。まだほんのりとぬくもりがあり、これがごっちんの体温か、これがごっちんの香りか、興奮さめやらず、ちんこを取り出し、クロッチをあてがった。ごっちん! ごっちん! 叫びながら、ちんこをしごきあげていると、背後に視線を感じ、振り向くとれいなとごっちんが冷たい目で私を見ていた。私は一切慌てなかった。むしろこの状況を見込んでのごっちん連呼である。ごっちんとれいなの冷たい目を睨み返しながら、丁度見返り美人のようなスタイルで、私はちんこを摩擦し続けた。今おれはれいなとごっちんに視姦されながら、ごっちんのパンツでオナニーに興じている。最高の気分である。
「なにしてんの」とごっちんが言った。
「見ての通りオナニーをしています」
「それごとーのパンツじゃないよ」
「え? すいません、もう一度言っていただけますか?」
「それごとーのパンツじゃないよ」
「なんですって」
 私は動転した。嘘だ! そんなことない! これはごっちんのパンツだ! 絶対にそうだ! 何を強がりを言っているんだ! このおパンティがごっちんのおパンティでないとすると、つまりれいなのパンツということになりますが、それはそれで一向に構いません。どちらでも構いません。私はあなた方二人のことを性的に愛しておりますゆえ、なんの問題も無いのです。
「れいなのでもないっちゃ」
「え?」
「そうそう、それあれだよ、圭ちゃんのパンツ」
「え? すいません、もう一度言っていただけますか?」
「圭ちゃんのパンツ」
「なんですって」
 それはいくらなんでも嘘だろう。はは、言うに事欠いて圭ちゃんのパンツだとか、そんな分かりやすい嘘を吐いてもらっては困りますな。確かにこれが保田圭のパンツだとしたら、私は完全に萎えきって、己れの思慮の甘さに自己嫌悪に陥るというものですが、保田圭のパンツがここにある訳がないでしょう。バカいったらいかん。キャー! という演技めいた矯正がした。驚いて、見ると、裸の保田圭が丁度ぽたぽたと水を垂らしながら風呂場から出てくるところで、保田圭はその両手でもっておっぱいを隠していたのですが、両の乳首は一つも隠されておらず、むしろ乳首を見せつけるようにピースサイン、ちょうどあれですね、変化球を投げるときにボールを変な風に掴みますやろ、そういう感じにおっぱいを掴み狂っており、股間に黒々と繁る陰毛からはぽたぽたと水が滴っていたのだが、それはなにゆえか白濁しており、あ、これは保田圭のラブジュースですね、と思った。保田圭はM開脚をしてその恐ろしげな地獄の壷を見せ狂い、きゃー! きゃー! と何度も、悪魔の臓物が煮えくり返るかのような、恐ろしげな、それはほんとうに身も凍り、ちんこが萎え、パンツを破り裂き狂い、私はおいおいと泣いた。
 ごっちんはそんな私の肩を抱き「トランプしよ」と耳元で優しく言ったので「はい」と答えた。れいなと圭ちゃんはパチパチと手を叩きながら、我々を祝福した。「おめでとう」「おめでとうだっちゃ」ありがとう。みんな、ありがとう。私はここに居ていいんだ。そうなんだ! ありがとう! あなたたちと友達でよかった。ごっちん、おめでとう。圭ちゃん、おめでとう。れいな、お前はトランプを買ってきなさい。「わかったばい」好きだよ。大好きなんだ。私はごっちんの首に腕を回し、その胸で、いっそう激しく声をあげて泣いた。「ありがとう、ほんとうにありがとう」言って、私はれいなを抱きしめていたい。
292 :tigiri :2012/01/19(木) 22:08
 夜の帳が下りる、などという言い回しがあるように、どうやら夜というのは、どこからかしれぬ上の方から垂れてくるもののようである。日が沈んで行く方を見やるとそこはまだ夕方だが、くるりと後ろを振り返ってみるともう夜が垂れてきている。真上を見た。今ここは夕方と夜のどちらだろうか。「何しとるばい」と田中さんが言った。影がうすぼんやりとしている。「いや、なにもしてないよ、ちょっと夕日を見てただけで」「れいなにも見せるっちゃ」田中さんは私の隣、手摺りによりかかって、きれーとか言った。そうかそうか、と答えた。その顔が夕日に照らされてオレンジだった。「田中さん、髪染め直したの?」「うんにゃ、お金なか」髪の毛を掴むと毛先で鼻先をちろちろと撫でた。枝毛も切らんといかんばい、毛先をシルキーに整えたいのだっちゃ、などということをぽつぽつ話した。私はうんうんと相槌を打った。次はもうちょっと落ち着いた色にしたい、服が欲しい、渋谷とかで売ってそうな奴が欲しい、化粧がもっと上手くなりたい、などなど話してくれるのだけど、私は女のファッションに疎く、相槌しか返せない。うん、うん、そうなんだあ、へえ。
「なんか面白い話して欲しいっちゃ」
 お前は相槌を打ってばかりでつまらんばい、と少しむくれた。困って、さっき考えていたことを話した。向こうは夕方だけれども、あっちにはもう夜が来ている、ここは夕方なのかな、夜なのかな、どっちなんだろう。田中さんはぼんやりした顔で「そんなのどっちでもよくない?」と言った。確かにそうだ、どっちでもいいことだ、と思う。私は黙った。田中さんは指先で髪の毛をくるくるしながら、「佐藤くんは卒業したらどうするっちゃ?」と訊いた。特に何も考えていなかった。働かなければいけなくなったら、働くと思うけど、とりあえず当面は親のすねをかじって、何にもしないで、本でも読んで過ごすかなあ。そういうことを思いつくまま言うと、れいなは東京へ行くっちゃ、東京に行って、オシャレな服を着て、オシャレな化粧をして、オシャレなところで働いて、オシャレな彼氏を見つけて、いずれ結婚するのだっちゃ。
 単純に、偉いなと思った。何にも考えていないようで、考えてるんだなと思った。「そうかあ」「そうなのだっちゃ」得意気な顔をした。風が吹いた。田中さんの髪の毛がさらさらと音を立てた。「おれ田中さんと結婚したいなあ」なんとなく思いついたので言った。また風が吹いた。髪の毛で表情が見えない。気づけばもうだいぶ暗くなっているようでもあった。もう夜だな。この暗さなら夜と言ってもいいだろう、と思った。「じゃあ一緒に東京に行くばい」「え?」「東京に行って、オシャレな服を着て、オシャレな本を読んで、れいなのオシャレな彼氏になって、いずれ結婚すればいいのだっちゃ」「なるほど」
 それでは誓いのキスをするばい、婚約の契りを交わすのだっちゃ。田中さんが急に近づいて来るので驚いて、私は後ずさった。さあ、誓いのキスを、口付けを交わすばい。肩を捕まれ、押し倒された。まっくらだった。田中さんの髪の毛は良い匂いがした。ぬるっとする。田中さんの唇からキラキラする一本の透明な糸がぶらさがっているのだけが見えた。よだれだ。田中さんの、れいなの、よだれだ。私はそれをすすった。甘い。夜が差し込んでくる。
293 :名無飼育さん :2012/01/24(火) 05:25
 雪が降った。初雪だなと思った。カーテンを開け、しんしんと降り積もっていく様に見とれた。「初雪だね」とれいなに声を掛けると「こないだ降ったばい」とこしゃくなことを言う。違う。私が言いたいのはそういうことではない。このように積もるような、いかにも雪が降りました、という感じの雪が初だということで、こないだのようなうっすらと路面が白くなるような雪は「降った」ではなく「チラついた」と言って然るべきであって、そのあたりの風情をれいなはなにも分かっていない。「ほら、外の景色を見てごらんよ、美しいよ、これぞ日本の冬です。これが雪というものです」「寒か」れいなは雪などにとことん興味がないようで、こたつで丸くなっている。ちょうどかたつむりかやどかりのような感じで。いかにも下賎である。分かっていない。私が期待しているのはつまり「ほら見てごらん、雪だよ、キレイだね……」「キレイだっちゃ……」「れいなちゃんの方がキレイだよ……」窓際で見つめ合う二人、そっと合わさる唇、絡み合う舌、狂ったように互いの体を求め合い、まんこに差し込まれるちんこ、猛烈なピストン、「いくよ!いく!」「来るばい!」咲き乱れる白い花、そういう由緒正しき「恋人同士の雪の夜」なのであって、こんな更年期カップルのようなやり取りなどではない。「ほらほら、れいなちゃんも見てごらんなさいよ、雪だよ、珍しいことじゃないか、東京でこんなに雪が降るのを見たのは何年ぶりだろう」「寒か」「寒い? 確かにまあ寒いでしょう。しかしね、寒い寒いって、そんなババアみたいなことばっか言っててもしょうがないでしょう。ほらこっちに来て、私の膝の上は暖かいから、それで、ねえ、キスしようかれいなちゃん」「いやばい」「キスしようか」「絶対にいやだっちゃ」「牛になるよ、そんなわがままを言っていると牛になるよ」「ならないから大丈夫なのだっちゃ」「なるよ」「れいなはれいなだっちゃ」「豚になるよ、豚になる」「ぶーぶー」「ケガラワシイ!」叫んで、振り返ると、れいなの姿が無く、あれ? と思った。「れいなちゃん?」声を掛けると、微かに「にゃー」という声がして、こたつ布団をまくりあげた。れいなが居た。目が合い、もう一度「にゃー」と言った。悪くない。こういうのも悪くはないよ。私はれいなを抱きしめていたい。
294 :私はやすごまに抱かれていたい :2012/01/24(火) 07:13
 店を出ると驚いて「雪だ」と言った。ごっちんも「あ、ほんとだ」と言った。「雪がなんだって?」という圭ちゃんの声が後ろの方で聞こえた。酔っ払っている。「雪が降ってんだよ」振り向いて言うと「あ? 雪がなんだって? うわ! 寒いわ! あほか!」なぜか怒った。店の前の雪はぐずぐずに溶けていて、足を踏み入れる度にぐしゃぐしゃとスイカでも踏んでるみたいな感触がした。「ブーツ履いてくればよかったな」ごっちんはスニーカーを履いていた。つまさき立ちになってそろそろと歩く。圭ちゃんはなかなか出てこない。「あのひとなにしてんの?」「さあ? 寒いんじゃん?」言ってる間に、出てきて、「寒いわ! あほか!」となぜか怒っていた。はしゃいでいるようにも見えた。「どうする? 帰る?」訊くと「帰る。電車遅れそうだし」「寒いからもう一軒行こう、いや、行く」圭ちゃんはごっちんの腕を取って駅とは逆方向に歩き出した。「えー」とぶーたれるごっちんは笑っていた。遠ざかる二人の背中に手を挙げて「じゃ、また今度」駅に向かった。
 駅に着くと電話が鳴って、圭ちゃんからなのは分かりきっていたので出ない。しつこく何度も鳴る。うっとうしい。小走りに改札を抜け、それから取る。「なに?」「あんた今どこいんの?」「駅。もう改札通っちゃった」「はあ? かえんの?」「帰るよ。明日も仕事だから」「みんなそうだみんな、みんな仕事だよ、だからこそ!」「なにがだからこそなのかよく分かりません」「なめてんのか! それでも社会人か!」「社会人だから帰るんだよ」「あっそう。ごとーに代わるわ」ごっちんに代わった。開口一番「ずるい」「圭ちゃんのことは任せた」「ずるい」「すいません」「あ、そうか、分かった」「なにが?」「あんたのうちに行けばいいんだ」「え? なんで? やめてね? ほんとにやめてね? 明日も早いからね? みんな明日早いでしょ?」「問題ない」そこで切れた。電車が来たので乗った。
 家に着く。靴下がずくずくである。明日も雪なのか。天気予報を見ると「晴れ」とあった。じっとしていると寒気がする。コタツのスイッチを入れ、風呂を沸かす。ピンポンと呼び鈴がなり、ドアが開いた。「こらてめえ!」圭ちゃんが怒鳴りながら上がり込んだ。「靴脱いでください」「謝らんと脱がんねえよ」「すいません」「よし。脱がせろ」「え、いやだわ」「脱がせてあげなよ、優しく」ごっちんが横から言うので、しぶしぶ圭ちゃんの靴を脱がせた。保田のくせに何やら凝った、オシャレなブーツで、ジッパーのあたりが複雑な機構になっていたので手間取った。靴下も濡れてしまったから脱がせろと言う。しょうがないので従う。「足先が冷えちゃった……」と圭ちゃんはしなを作って「舐めてあっためてよ」「え、絶対いやです」「舐めてあげなよ、優しく」コタツに入ってくつろいでいるごっちんがそう言った。テレビで通販番組を見ている。ごっちんの足ならいくらでも舐められるというものだが、圭ちゃんの足を舐めるということには猛烈な嫌悪感があった。「ごめんそれは無理だわ」「冗談に決まってんでしょ」圭ちゃんもコタツにインした。三人で日本酒を燗つけて飲む。
295 :名無飼育さん :2012/01/24(火) 07:14
 風呂が沸いた。ピーピーと音が鳴るのですぐ分かる。「先入っていい?」とごっちんが言った。「いいよ」「じゃあその次!」「だめです。ごっちんの次はおれ」「なんで! 姫の身体は芯から冷えきっているのだぞ!」「だめです。ごっちんの残り湯を圭ちゃんので汚したくないのです。姫ってなんだ」言ってる間に、ごっちんは風呂場へ消えた。「あ、バスタオル渡すの忘れた」「ええんちゃうん」「ちょっと渡してくる」「とかなんとか言って、ごとーの裸を覗いたりするわけでしょう」「ご明察」「否定しろ」「否定しません。あわよくばパンツの匂いを嗅ごうと思っています」「ドスケベめ」「なんとでも言ったらいいさ」バスタオルを持って、風呂場へ行く。スリガラス越しにごっちんの肌色が透けて見える。たぶんあれは背中だ。「バスタオルここ置いとくね」「ほい、ありがとー」声がくぐもって聞こえる。「湯加減は?」「上々」「おっぱい見して」「だめ」「いいじゃん、ちょっとだけ」ドアを開けると、やはりすべすべした背中があった。「ちょっと、寒いから閉めて」「おっぱい……」「閉めろつってんの」「はい」閉めた。ごっちんのパンツを持って部屋に戻る。「戦利品です」「さすがごとー、やらしい下着履いてんな」「Tバックですよ。あんま好きじゃないな」「贅沢言うな。匂い嗅いだ?」「これから」広げてみると、それはほとんど紐同然であって、股間に当たる部分がぐねぐねと捻れていた。鼻を押し当てる。女の匂い。濃厚な果実の匂い。少し小便臭い。「最高だわ」「次、姫にも貸して」「なんで、これはおれのもんだ」「ずるいぞ」「ちょっとオナニーするから外出てて」「寒いわ! あほか!」「台所でいいから」「台所も寒いからいやだ。姫は冷え性なのだぞ」「その姫ってのはなんなの」「私のことだね」「なんで、どこらへんが姫なの」「気品とか」「どこが」「失礼だな。姫は身体の芯から冷えきっているのだぞ。抱きしめてあっためてくれ」「いやです」パンツをかぶったが、Tバックなので変態仮面ごっこができない。「勃起してきたわ」「どれ、姫が抜いて差し上げよう」圭ちゃんが股間をまさぐるので、それを払いのけた。「姫なんだから抜くとか言うなよ」「姫にも性欲というものがだね」ごっちんがバスタオル真希になって戻ってきて「パンツ返して」と言った。返した。「なんかぬるくて気持ち悪いんだけど」「いい匂いだったよ」「サイテーだ」けらけらと笑った。
 風呂に入る。圭ちゃんが「姫も一緒に入る」と言ったが、明確に完全に拒絶した。少しシュンとしたようだったので心が痛んだ。先ほどまでごっちんが座っていた、ごっちんのまんこと尻穴が触れていた椅子を撫で、その手で湯船の水をひと掬い飲んだ。お湯の味しかしない。頭を洗って、湯船につかって、すぐ上がった。圭ちゃんとごっちんが濃厚なディープキスをしているところだった。「ちょっと、ひとんちでなにしてんの」二人は答えないので、ごっちんのおっぱいを揉んだ。相変わらず柔らかい。勝手に人のTシャツを着ていた。まくりあげようとすると「だめ」と言う。「なんで揉むのはいいのに見せてくんないの」「乙女の恥じらいかなー、ほら、乳首の色にコンプレックスがあってさ」「ごっちんの乳首なら何色でも喜んで吸います」「やっぱ恥ずかしいじゃん?」「ええやんけええやんけ」圭ちゃんがつまらなさそうに「姫もまぜろよ」と言った。「姫はとりあえず風呂入ってこいよ。足臭いんだよ、お前」
296 :私はやすごまに抱かれていたい :2012/01/24(火) 18:38
 圭ちゃんが風呂をつかっている間、圭ちゃん殺しの算段をした。姫だのなんだのうっとうしいのである。これはもう殺すしかない、と考えた。ごっちんは「圭ちゃんに何の恨みもないが、おもしろそうだから」協力してくれるのだと言う。「酢を頭からぶっかけるというのはどうだろう」「なんで?」「ほら、酢には殺菌効果があるというし」「そんなんじゃ死なないでしょ、最低でもカビキラーとか」「いや、でもそれはちょっといくらなんでもかわいそうな気がするんだよね」「なんで?」ごっちんは不思議そうな顔をする。「殺すんでしょ? かわいそうとか無いじゃん」この女は本気で圭ちゃんを殺すつもりである。あほか。冗談に決まっているではないか。「殺そうと思えばどんなやり方だって殺せるんだよ、来て」ごっちんに手を引かれて風呂場へ、ドアを押し開けると圭ちゃんが驚いた顔で振り向いた。妙な姿勢でオナニーの真っ最中だったと見える。軽蔑した。その姿勢といったら、なんと言えばいいか、浴槽の縁に手と足突っ張って、ちょうど四つん這いのようなスタイルで、尻がこちらへ向いており、かき分けられた尻肉の間にはまっくろくろすけが群生しており、その上にちょこんとくすんだおちょぼ口があった。茶色を通り越して紫色へ、黒ずんでいる。ドドメ色というのはきっとこういう色のことを言う。軽蔑した。「姫のオナニーを覗くとは無礼なり」「変わったオナニーすんだね、外派? 中派?」「外派だけど」「へえ、私は中派だよ」ごっちんはおちょぼ口に人差し指を突き入れた。あふんと変な声を出して湯船に落ちた。ばしゃばしゃと苦しげにもがくので気の毒になって引き上げた。「死ぬかと思った」「大丈夫、圭ちゃんは死なないよ」ごっちんが確信めいた口調でいった。「私が守るもの」
297 :名無飼育さん :2012/01/24(火) 19:00
 ごっちんは華麗な手つきで圭ちゃんを後ろ手に縛り上げた。「姫様はこういうのお好きですか?」「割と好きだね」「そう、よかった」ごっちんはにっこりと笑い、圭ちゃんの頭を浴槽に突っ込んだ。足がジタバタする。上げる。突っ込む。上げる。ぜーぜーと苦しそう。濡れてぐちゃぐちゃになった髪の毛が狛犬のようだった。もう一度、今度はもう少し長めに頭を押しつける。ジタバタする足が力ない。「やばいんじゃないの、冗談じゃすまなくなるよ」忠告すると「え? でも殺すんでしょ?」とあどけない。「冗談だよ、冗談に決まってんじゃんかよ」「でも圭ちゃんもうだめだよ、死んでる」「えっ?」見ると、浴槽に頭を突っ込んだままぴくりともしない。「死んでる!」「大丈夫だよ」「大丈夫じゃねえだろ、死んだらいかんだろ」「大丈夫だって、こんなことぐらいじゃあ圭ちゃんは死なないよ」「なんで、動いてないじゃん」「圭ちゃんエラ呼吸できるからさ、ほら見て」ごっちんの指差すところにはぷくぷくと気泡が沸いていて、「いやいやあれは肺に残ってた空気が出てるだけでしょ。やばい証だわ」「肺なんてもういらないよ。エラ呼吸できるからさ」「いやいや」圭ちゃんを引き上げた。ますます狛犬。乳の間をまさぐる。「死んでるよ、心臓動いてないもん」「圭ちゃん心臓三つあるって言ってた、魔族だから、生きていくのに心臓いらないんだって、こんなもんは飾りだって」「いやいや、冗談でしょ」「お姫様は嘘つかないんだよ、大丈夫」「何が大丈夫なもんかね」
 姫の身体をタオルで拭いて、ベッドの上に安置した。「死化粧したげるよ」とごっちんが無邪気。化粧ポーチを取り出して、姫様の顔にたっぷりのファンデーションを塗る。「下地が大事だからね」ごっちんがぶつぶつ独り言いいながら化粧するのを見つめた。「どうしよう」「なにが?」「殺人だよ殺人、犯罪っすよ」「殺すっつったのあんたじゃん」「だからんなもん冗談に決まってるでしょ」「大丈夫だよ死んでないから、お姫様は毒りんごの毒で眠っているだけです」「王子様の口付けで蘇ったりすんの?」「すんじゃない? だってお姫様だからね、さしずめ私は毒りんごを食べさせた悪い魔女だね」「じゃあ目覚めのキッスをしようかな」「あんたが?」「そうだよ」「無理だよ。あんた王子様じゃないし。どっちかってーと小人の方」「そんなまんやってみんとわからんだろ」半端な死化粧の狛犬の顔にキスをした。何も起こらない。「ダメっしょ」「みたいだわ」「じゃあ次あたしね、ほらごとー王子様だよ圭ちゃん姫」キスをしたけれども、やっぱりダメだった。「やっぱ死んでんだよ」「違うよ、白馬に乗った王子様じゃないとダメなんだよ、このお姫様わがままだからさ」「じゃあ連れてきてよ」「向こうからやってくるのがスジだよね」ピンポンと呼び鈴がなった。ごっちんがインターホンに出て「圭ちゃんの王子様ですか?」と尋ねた。訪問者は「クロネコヤマトです」と言った。
298 :私はやすごまれいなを抱きしめていたい :2012/01/25(水) 18:21
 ドアを開けるとれいながおり、もう一度「クロネコヤマトです」と名乗った、黒いショートパンツ黒いニーソックス黒いタンクトップ黒い首輪と、すべての服飾品が黒ずくめであり、頭にネコミミのカチューシャをはめていた。縁取りが黒、その内側にあたるところだけが薄ピンクで、目を引いた。「姫をお迎えに上がりました」と言う。「田中ちゃんじゃん、なにしてんの、その服かわいいね」とごっちんが言った。「照れるばい」と赤くなった。ネコミミが揺れる。「れいなちゃん寒いでしょう。この雪の中よく来たね、そんな恰好で」「れいなは風の子やけん、寒くなか」「あ、そう、でも今は雪だよ、風は強くない」「雪がれいなの美しさを引き立てるのだっちゃ」そう言って身を震わせた。パラパラと粉雪が弾かれ、廊下の照明に照らされてキラキラと光った。まるでステージ上に立つアイドルのようだった。「いいから入んなよ、寒いでしょ」ごっちんがれいなの手を引いて部屋に導いた。コタツに足を突っ込んで「寒か」と言うなり丸くなった。
 れいなが語るには、圭ちゃんを目覚めさせるためには、やはり王子様の口付けが必要なのだという。「ほら言ったでしょ」とごっちんが得意気な顔をした。「で、その王子様ってのは誰なの」訊くと「それはれいなにも分からんばい」「え? じゃあ何のためにここに来たの?」「姫を迎えにきたのだっちゃ」「いや、だから、どこへ連れていくつもりだったの? 誰んとこへ?」れいなは小首を傾げた。くりくりとした目から発するそのイビツな視線が姫に注がれる。「れいなは姫を火葬場に連れていくために来たばい」「そりゃ大変だ。じゃあれいなちゃんはさながら死神というわけだ」「そういうことになるっちゃね」れいなの顔をじっくりと見つめる。「なるほどなあ」コタツの中でれいなのふとももをまさぐった。すべすべ。ひんやりしていた。うひっと声を上げる。「今日は何色のパンツを履いているのかな?」「黒っだちゃ」「黒か、悪魔の色だ」「田中ちゃん何飲む?」ごっちんが台所から訊く。れいなは甘えた声で「ホットミルクが欲しいっちゃ。寒か」と答える。
 台所で牛乳を温めているごっちんに言う。「どうしよう」「なにが?」「このままじゃ圭ちゃん地獄に連れてかれちゃうよ」「大丈夫だよ、地獄は魔族の故郷だから。まかりまちがって天国に連れてかれちゃうと、やばいね」「どっちにせよ大丈夫じゃないだろ、死んじゃうじゃん」ごっちんは高らかに笑い「死ぬとか生きるとか、圭ちゃんにとってはたいしたことじゃないから」おれは腕組みをして唸った。「圭ちゃんにとって些細な問題でも、おれにとっては重大な問題なんだよ」「あっそう」「どうしよう、圭ちゃんの王子様って誰なの?」「さあ? いないんじゃない?」「おいおい、困るよ。さっき言ってたじゃん。圭ちゃんは死なないって、私が守るものって、エヴァみたいなこと言ってたじゃん。守れよ」「あー」ふつふつ沸く牛乳を見つめながら、ごっちんが言う。「じゃああんたが王子様になればいいじゃん」「どうやって」「知らないよ、自分で考えなよ。王子様でしょ。できた」ホットミルクができた。
299 :名無飼育さん :2012/01/25(水) 18:23
 れいなはホットミルクを舐めながら、うまかーと言った。「おれが圭ちゃんの王子様になるためにはどうしたらいいの?」「知らんばい。れいなは姫を火葬場に連れていければそれでいいのだっちゃ」「冷たいこと言うなよ。友達でしょ。みんな友達でしょ」「姫はれいなの先輩だっちゃ」「そういう職業的なしがらみは知らんよ。人間として、あくまで人間として」「姫は魔族だっちゃ」「いや、だからね、一人格同士、袖触れ合うも多少の縁というやつでね、情愛とか、憐憫とか、あるでしょう」「そういう難しいことはよくわからんばい」「ああもう!」圭ちゃんの顔を見た。半端な死化粧である。いいことを思いついた。「ちょっとごっちん」「なーに」「最後までキチンと化粧してあげてよ。せめて美しい顔で死なせてあげよう」「あきらめんの?」「違うよ。あきらめてるわけじゃないよ。もし仮に圭ちゃんの王子様が見つかったとして、こんな顔じゃ百年の恋も冷めるってもんでしょ」「なるほどねー」「ついでに下の毛もキチンと手入れしてあげてよ」「え、それは嫌だな」「お願い」「えー」「一生のお願いだから」「いやだなあ、人のまんことかあんま見たくないんだよね」「分かるけどさ」「あんたがやってよ」「おれだっていやだよ、気色悪い」「それでも王子様かよ」ごっちんは私にカミソリを持たせた。「あんたがやるべきなんだよ」
 ごっちんは化粧を、私はアンダーヘアの処理をする。れいなは漫画を読んでいた。いちご100%、途中までしかない。「これはこの先どうなるっちゃ」「さあ、おれもよく知らんよ」圭ちゃんのアンダーヘアは恐ろしく強情だった。どうせならパイパンにしてやろうと意気込んでいたのだが、カミソリが負け、刃が欠ける。これで三本目である。「どんだけ剛毛なんだ」「魔族だからね。魔族の急所は性器だから、しょうがないよね」「そうなの? っていうか魔族ってのは結構そこらへんにいるものなの?」「さあ、私は圭ちゃんしか知らないけど」「なんでそんなに詳しいの?」「全部圭ちゃんが教えてくれたよ」「おれは知らなかったな」「恥ずかしかったんじゃん?」ごっちんは手際よく化粧を進めている。段々人間らしい、女らしい形ができてくるのだから面白い。「こっちに見とれてないで、そっちを早くすすめなさいよ」「いや、化粧ってすごいもんだなと思って」「ごとーが本気だせばこんなもんよ」得意そうな顔をした。れいなは退屈そうに尻尾のアクセサリーをいじりまわしている。「れいなちゃんはなんなの? 魔族なの?」「れいなはクロネコばい」「それはどういうことなの? どう見ても人間じゃん」「これは仮の姿ばい、本当の姿は猫なのだっちゃ」「へえ、じゃあその尻尾は飾り? 本当に尻から生えてたりするの?」「尻から生えているのだっちゃ」「どれ」れいなのショートパンツを脱がし、禍々しい黒のパンツをずりおろした。尻尾の付け根を見る。アナルに突き刺さっていた。「アナルディルドじゃないか」「これはれいなの身体の一部だっちゃ」「ほんまかいな」尻尾を握りしめ、引き抜こうとすると、あああ、と卑猥な声を上げた。「そんなことしてる場合じゃないでしょ」とごっちんに頭を叩かれた。そうだった。アンダーヘアの処理に戻った。れいなが恨めしそうな顔をしているので心が痛んだ。
300 :私はやすごまれいなに抱かれていたい :2012/01/25(水) 19:01
 五本目のカミソリがダメになった時に、もうこれは無理だぞ、これは私のような人間の力の及ぶアンダーヘアではない、と理解した。「あかんわ、諦めます」「あきらめんの?」「諦めます」「そう、ならいいけど。こっちはできたよ」見ると、狛犬だったはずの顔が嘘のようにお姫様であり「化粧ってすごいな」「ごとーがすごいんだよ」「これならいけるかもしれん」「なにが?」「ふたりとも、ちょっと出てってくれないか」二人が台所へ出て行ったのを見届けると、服を脱いだ。ちんこがびんびんに立っている。いけるぞ、と思った。姫の唇に接吻し、豊潤なヒゲを蓄えた下のお口にも接吻し、その奥にあるおちょぼ口にも接吻した。姫の身体に少し体温が戻ったようだった。早くも濡れ始めている。さすが魔族である。私はそそり立ったちんこを下のお口に突き入れた。「ああっ」と聞きなれた声がする。見ると、姫様はカッと目を見開き、私の頭を抱きかかえて、その唇に押し付けた。互いの腰がねちねちと粘着音を立てながら接吻する度、姫の腕の力は強まっていくようで、息が苦しい。ようよう唇を離してすと、その唇が「王子様!」と叫んだ。「おれは王子様じゃないよ」「王子様だよ」「おれは性欲の化身なんだよ、王子様じゃないよ」「いいんだよそれで」「いいのか」肛門のあたりにぬるっとした感覚があり、振り向くと、れいなが私の尻に顔を埋めていた。ごっちんがこの三つ巴を腕組みして眺めている。「ごっちんもどうよ」「ごとーはいいや、お邪魔でしょう」「邪魔じゃない、邪魔じゃないから」「そう?」ごっちんも混ざって、私が姫にピストンする、れいなは自分で自分をこすりあげながら、私の尻穴を舐める、ごっちんは圭ちゃんに顔面騎上、私はごっちんとキスをする。あっ、と思った時にはもう果てていて、姫に覆い被さると、姫の両腕がきつく身体を抱きしめた。れいなとごっちんもその上に覆い被さってくるようで、猛烈な圧迫感の中、もう一度絶頂を感じた。私はやすごまれいなに抱かれていたい。
301 :名無飼育さん :2012/01/26(木) 00:30
 憧れていたのは数年前。私は酔っ払って帰宅する。玄関の前で鍵を取り出そうとごそごそしていると、ドアが内側から開き「おかえり」とれいなが言う。「あ、来てたの」「約束しとったばい」声が少し怒っている。ああそういえば、昼間にそういうメールが来ていた。すっかり忘れていた。「ごめん」「許さんばい」「何か食べたい? 買ってくるよ」「雪見大福」言って、れいなは外を指差した。見るまでもなく分かっている。珍しく雪が降った。「お茶でも淹れといて」「了解したっちゃ」そこでれいなは笑う。もう機嫌が治った。そういう分かりやすさがれいなの取り柄であって、愛おしいのである。
 家から徒歩五分のコンビニへ行くと、生憎にして雪見大福がない。困った。店員に尋ねると「売りきれましたね」とそっけない。悩んで、雪苺というんだったか、ショートケーキを牛皮で包んだような生菓子を手にとった。これは美味い、ボリュームもあって、毎日でも食べたいところだが、結構高いので、あまり買わない。しかしまあしょうがない、奮発しようと考えた。しかしこれはアイスではない。悩んで、ハーゲンダッツも手に取って、もうやけだ、買ってしまえとて買った。なんとまあ贅沢な。れいなもきっと喜ぶだろう。帰り道、なんとなくコーラが飲みたい気分だったので自販機で二本買った。
 家に着き、目をきらきらさせているれいなを見ると急に申し訳ない気持ちになった。「ごめん、雪見大福売りきれてたわ」れいなはみるみるうちにしょぼんとし「売りきれてたなら仕方ないっちゃね」と言って、涙すら浮かべた。「いや、その代わりにね、ほら、雪苺と、ハーゲンダッツを買ってきたから、二人で食べよう」二つずつ、テーブルに置いた。「あ、そうそう、コーラも買ってきたんだよ」それも置く。「じゃあ食べよう」コタツに足を突っ込んで、れいなの方を見上げると、まだ泣いていた。少し腹が立つ。こんだけ奮発したってのに何が不満だというのか。いい加減にしろ。子どもじゃあるまいし。「早く座れよ。食べねえのか」「いらんばい」「あっそう。じゃあ全部おれが食べるよ」やけになって全部ペロリと食べてやった。コーラ二本は辛かった。れいながお茶を淹れて持ってきた。不満そうである。うらめしそうである。「美味しかったっちゃ?」そんな顔でそんなことを言うのなら食べればよかったのだ。
 風呂に入って、寝る準備をする。れいなの布団も引いてやった。「なんで二組も引くっちゃ」「寒いから、一組の布団だとスースーすんじゃん」「一組でいいばい」「なんで、寒いじゃん」「大丈夫ばい」頑固なので、勝手にしろ、と言って、布団にもぐりこんだ。れいなも潜り込んでくる。耳元で「雪見大福食べたかったっちゃ」と言う。しつこい。腹が立つ。「じゃあ買ってこいよ、別のコンビニ行けばあるかもしらんよ」「そういうことじゃないっちゃ」「じゃあなんですか」「分からんのならいいばい」れいなはそっぽを向いた。私はれいなの背中を見る。意味が分からんなほんとに、分かりやすさがれいなの取り柄だというのに、なんでこうも意味のわからんことを言うのだろうと訝しんだ。「なんなの? どういう意味?」「……二人で食べたかったっちゃ」「食べればよかったじゃん」れいなはぐるりとこちらを向いて「一つのものを分け合いたかったばい」目が濡れていた。腑に落ちた。急に愛おしくなって、抱きしめる。そういうことに憧れていたのが数年前。別室の布団ですやすや眠っているれいなのことを考える。健康的な寝息が聞こえるようだった。まぶたの裏にれいなの寝顔すら浮かぶ。それだけで満足した。私はれいなを抱きしめていたい。
302 :名無飼育さん :2012/01/26(木) 20:42

 怪盗レーニャは猫と人間のハーフであるらしい。レーニャは「獣姦で生まれた子」つまり「呪われた子」なのだ。怖気の走る設定である。レーニャというキャラクターはれいなという実在の人物をモチーフとしたものであり、そこに描かれる姿のそこかしこにれいなの記号的特徴は見出され(田中れいなという人物の視覚イメージにおいて最も重要であるところ内斜視と豚鼻が捨象されてはいるものの、好意的な、ほとんど自暴自棄な視線で彼女の顔を眺めれば、田中れいなという人物はこのアニメーションに見られるようなかわいらしい女の子のイメージとして見えるだろう、そのこと自体がどこか歪んでいるようにも思え、これは深刻な現代社会が抱える病理の写像である)、挙句声はれいな本人があてている。声というものは対象を判断する上で重要である。我々は視覚イメージのみで対象を判断するのではない。その仕草、その表情のあり方、ファッションセンス、体臭、そしてなによりも声によって、対象を、その対象が持続してその対象たる同一性というものを判断する。しかるにこのアニメーションを見た素直な人間が怪盗レーニャ=田中れいなと、アニメーションのキャラクターと実在の人物を同一視してしまうだろうことは想像に難くなく、つまりこのアニメーションの製作者は「田中れいなは獣姦で生まれた子、呪われた子である」というメッセージを大々的に、テレビ電波に乗せて発信していたのであり、一体れいなの人格を何だと考えているのか。私は憤り、九州朝日放送に電話をかけた。
「あ、すいません。そちらで怪盗レーニャというアニメを放送していたと思うのですが」「はい」女の声だった。まだ若い感じがする。30手前ぐらいだろう。「それでですね、その主人公のレーニャという女の子がいますよね」「はい、そうですね。ご用件は何ですか?」「これからです、これからが本題です」「なんですか? そのアニメに対するクレームですか?」「そうです」「それは制作会社の方に言ってください。今から番号を申し上げますので」「いや、まあそれはいいんですよ、これから述べますのはアニメ制作者に対するクレームでもありますし、それを放送したあなた方に対するクレームでもあるのです。あんた方にはこれを放送しない、という選択肢も別にあったわけですから、こんなものを放送した責任をですね」「私ではわかりかねます」「いいですか、いいんですよ、別に分からなくてもいいんです。ただあれですね、レーニャという女の子が主人公でしょう?」「わからないです。見たことがないので」「まあいいんですよ、見たことなくたって私の言うことを聞けば大体分かりますから」「担当に取り次ぎましょうか?」「いえ、いいんです。私はあなたに言っているのです。九州朝日放送における怪盗レーニャ担当者などどうでもいいのです」「しかしあなたはさっき"放送した責任"とおっしゃいましたよね、そういうことを云々するのであればやはり担当に」「違うんです、違います、私はですね、えっと、あなたの声を聞いて、なんだかあなたのことが好きになってしまいました」「切りますね」「待ってください」「切ります」「せめてお名前だけでも!」切れた。私は悲しくなり、受話器を持ったまましばし失恋の痛みに耐えた。窓の外の雪がまだ溶けないでいる。
303 :名無飼育さん :2012/01/27(金) 03:08
 振り向けばいつもあなたが居たいつまでも、聞き覚えのある歌詞を耳にして「ねえそれなんて歌だっけ」訊くと、あややは「私の歌だね」と鼻を鳴らす。あややは鼻の調子が悪いようで、しきりにふごふごと鼻を鳴らした。「豚みてえだな」「うるさいな、天使の喉に向かってなんてこと言うの」「鼻に言ったんだよ」きょとんとして、鏡を覗き込んだ。「なんかへん?」「へんじゃないよ」「じゃあなんなの」「知らんがな」あややはいつまでも鏡を覗き込んでいた。「そんなに自分の顔に見とれるなよ」「シワが」「え?」「目尻にシワがある」「あるだろう、そりゃあ」「なんでえ」また鼻が鳴った。「歳なんだよ、自覚しなさい」「うそだあ、認めないよっ」言って、わざとらしく泣いたふりをした。おれは泣かなかった。鼻が鳴った。「風邪引いちゃったかも」とあややが言った。

 *

 れいなと「ねえ笑って?」ごっこをした。どちらがより真に迫ったかおりんの顔真似ができるかという勝負である。どうも上手くない。何度やっても、あの飯田さんがまだかおりんだった頃(正確に言えばジョンソンだった頃)の気迫というのが出せないのだ。ものは試しとて飯田さんにお願いした。「ねえ笑って? ってやってください」飯田さんはしばし視線を上に泳がせた。引き寄せているんだ。かつての「ジョンソン」を引き寄せているんだ。一種のイタコのような按配で。すると俄に笑った。「うん、分かった」そして人を殺す目つきで「ディアー!」と叫んだ。そばにいた圭ちゃんが「ああ」とため息をついた。れいなはよく分からないようだった。私は「これでこそ飯田さん、いや、かおりんだ」と思った。

 *

「こんにちは、森本レオです」真似をした。ごっちんがアッハと笑って「レバニラ炒め」と言った。「今のは?」「なんだっけ」「ほとんど、レバニラ炒め」「あ、そうそう! それだ!」「じゃあ、風邪をひいて、高熱でうなされながら見た夢の中で怪物に押しつぶれそうになったときの呪文」「レバニラ炒めっ!」「グレート!」ということをやっていたら朝になった。
304 :名無飼育さん :2012/01/27(金) 04:11
 デフディバが再結成します、と私は告げた。あややは「かったりい」と唾を吐き、ごっちんは「やるってんならやるよ、がんばるっす」と力こぶを作り、梨華ちゃんは「代わりに美貴ちゃんとか入れてよね……。あたし歌下手だからさ……肩身狭いんだよね……」と落ち込んだ。かわいい。「大丈夫だよ、それが梨華ちゃんらしさだからさ」ごっちんはハッハッと豪快に笑って梨華ちゃんの肩を叩いた。「……梨華ちゃん歌上手いから大丈夫だよって言ってよ」
 これだから娘。のメンバーと組むの嫌なんだよね、とあややは文句を言った。「めんどくさい、仲の良さ見せつけられる感じ」とかなんとか言いながら、実は少し楽しいのである。あややは二人の間に割って入り「はいはい。それじゃ再結成ってことで、旧縁を暖めるために、スイーツを食べに行きましょう。おいしいやつ。ごっちんどっか知ってる?」「知らなーい」「相変わらずそっけないね」「はーい! イシカワおすすめのお店があります!」あややは梨華ちゃんの顔を睨んだ。「ほんまか」「えっ、なに、あやちゃん怖い」「信用してええんか」「なになに。怖いよ。中澤さんみたい。あっはっは! ウケるー。中澤さんみたい! ババア!」「おまえオモテ出ろよ」梨華ちゃんの顔からサッと血の気が引いた。そのあややの顔は中澤さんどころの騒ぎではなかった。激昂した美輪明宏のようだった。「……ごめん」「許さないよ、私のこと中澤さん呼ばわりとか絶対許さないから」だって、と梨華ちゃんは涙目になった。かわいい。「だってだって、あやちゃんだっていけないんだよ。そんな怖い顔で睨んだりするから」あややはビシーッと人差し指を突き立てて言う。「それは問題のすりかえです」
 ところで、と私は三人に声を掛けた。「誰か忘れてんじゃない?」「え? そうだったっけ?」とごっちんがアクビをしながら言う。「あー、あの豚」とあややが苦い顔をする。「豚? 誰?」ごっちんは指のささくれが気になり始めたようである。梨華ちゃんは「はやくスイーツ食べに行こうよ」と目を輝かせていた。かわいい。カツカツカツと、あわてんぼうの足音がして「ごめん! おくれちゃった!」「あー、なっちか」「豚が」「スイーツ」「またこの四人でやれるんだね! なっちうれしい!」なっちの笑顔は天使のようで、私はデフディバを再結成してよかった、と思った。
305 :名無飼育さん :2012/01/27(金) 22:23
 つんく♂に「話があるんや」とて呼ばれた。「おお、君が田中と一緒に住んどるいう、えーと、名前は?」「田中です」「なんやねん、おもろない冗談やな」「いや、ほんとで、れいなは私の姪です」つんく♂はちょっと驚いた顔をした。「えらい若いやないけ」「兄とは歳が離れてるもんですから、歳食ってからの子なんですよね、逆子で、産むのにえらい難儀したと聞いてます」「へえ」コーヒーが来た。元メロン村田さんだった。どうぞごゆっくり、と優しく微笑んだその目がもの欲しそうに濡れていたのを私は見逃さなかった。ほどよく引き締まった尻が揺れるのを見送る。「村田さんはいい女ですね」「そうか? まあええねんそんなことは」「重大ですよ」「おれにとってはどうでもええねん、それでな本題なんやけど」「ああ、なんですか」
 つんく♂はコホンと咳払いをした。「もうおれもこの仕事長いやん?」「そうですね、かれこれ十、何年でしたっけ?」「忘れたけどな。まあ、十年以上も娘。らを見とるわけよ」「ええ」「こんなちっこい頃から」そう言って、人差し指と親指で角砂糖をつまんだ。チラリと私の目を見る。ツッコミ待ちである。「そうですね」「ノリ悪いな君。今絶対気づいとったやろ」「え? 何がですか?」「ま、ええわ」角砂糖を一つ二つ三つ、コーヒーに入れる。「それでな、おれももう結構な歳なわけや」「ええ」もしかして、と考えた。もしかしてこれは私にプロデューサーをやらないか? という話なのではないか、ということを考えた。お目が高い。日頃のギターの練習、私の音楽的才能、ジョブスにも劣らないカリスマ的企画力、それにこの男は気付いたのだろう。お目が高い。「娘。らの今後が心配なわけや」「はい」「どんな男と付き合っとるんかとか、そいつとは結婚するんかとか、そういうな、親心っちゅうん? それが芽生えてきてな」「はあ」「田中のパンツくれへん?」「え? なんですか? もう一度言ってもらえますか?」「田中のパンツくれへん?」つんく♂のじっとりした視線から目を逸らして、私はコーヒーを飲んだ。
 「あれやで、やましい気持ちとちゃうで、親心からや。娘がどんな下着履いとるんか、気になるやろ。男親だったら気になるやろ」「そういうもんですか」「そういうもんや」「いやですよ、姪の下着をなんで渡さなきゃいけないんですか。気色悪い」つんく♂は伸びをして、席を立った。「藤本おるやろ、藤本美貴」「はい、よく知ってます」「好きか?」「割と好きです」「庄司と結婚したやろ」「そうですね」「庄司にも訊いたんや、藤本のパンツくれへんか、って」「ええ」「そしたら庄司の奴な、パンツでいいんですか、ハメ撮りとかありますけど、って言うんや」机からDVDメディアを取り出して続ける。「んなもん見たいに決まっとるやん。もちろん親心から」「はあ」「見たくない?」「見たいです」「田中のパンツくれへん?」「もちろん差し上げます」「親心から、な」「すばらしい親心です。さすがつんく♂さん。それでこそれいなを任せられるというものです」「せやろ」私は胸ポケットかられいなのパンツを取り出して「これがれいなのパンツです。もちろん、使用済、洗濯前です」「準備ええな」「お守りとしていつも持ち歩いているんです。嫌なことがあったら臭いを嗅ぎます」「親心やな」「親心です」DVDメディアを受け取って、れいなのパンツを渡した。「じゃ、これからもよろしく頼むで」つんく♂さんはにこやかに手を振った。私もにこやかに手を振りかえして、帰った。
 家に戻ってDVDメディアを再生すると、それは「蒼井そらの元気の出るセックス」だった。元気は出なかった。
306 :名無飼育さん :2012/01/29(日) 01:34
 里田まいさんが結婚、というニュースをやっていた。幸せそうな顔が映る。「消してくれ」れいなは振り向いて、どうして? という顔をした。「おじさんはね、他人の幸せが嫌いなんだ。羨ましくて仕方がなくなるんだよ」「小さい人間だっちゃ」「人間なんてそんなものだよ。たとえばれいなちゃんに訊くけどね。もし海際で、子どもたちがカメをいじめていたらどう思う?」「どういうことばい」「だからね、そのカメを助けるか助けないかという話だよ、端的に言うと」「もちろん助けるばい」「助けるよね。そりゃそうだ。助けたら竜宮城に行くわけですね、れいなちゃんは」「まあそうなるっちゃろ」「そしたらお姫様がもてなしてくれて、帰りに手土産をくれるわけだよ。絶対開けてはいけません、と言うわけです。どうする?」「開けるばい」「でしょ? つまりそういうことなんだよ」れいなはしばらく私の顔を見つめ「で?」と言った。「で? も何も、これでおしまいだよ」「つまりどういうことばい」「つまりカメなんか助けない方がよかったんだよ」私はチャンネルを替えた。れいなは「わけわからん」と言ってそっぽを向いた。その横顔が年月によって朽ちるまでの、ほんの少しの間だけ、あと何度れいなを抱きしめることができるだろうか。
307 :名無飼育さん :2012/02/04(土) 05:49
 ある朝目が覚めると私は私が保田になっていることを発見した。ハッ――――この感じ――保田だ――――それは霊的な直観であった。しばし考えた。私が保田になったということはつまり、保田が私になったと考えることもできるだろう。私は保田になった私の中の保田に問いかけた。今日も元気ですか。――――元気よ、とても。そう聞こえたような気がして、ふと鏡を見ると、そこには私の姿をした私がいた。アッ――――気のせいだったんだ。背後かられいなが「おはようだっちゃ」と声を掛けた。私は「おはよう」と答えた。私の中の保田も、おはようと、きっと言った。
308 :名無飼育さん :2012/02/06(月) 03:40
  起きると夕方だった。アイフォーンを見ると何本か着信履歴が残っており、留守電、「連絡ください」とのことだった。録音されたその声を聴いているとひどく気鬱になり、とりあえずコーヒーを淹れ、パンを焼いた。まだまだ日は短く、すぐ夜になった。アイフォーンの着信履歴を見ながら、連絡を返さねばならんけれども、いやだなあ、気乗りがしなかった。玄関の呼び鈴が鳴る。出ると、ニットのキャスケットを目深に被った小柄な女の子が立っていた。ぼそぼそと何か言う。なんですか、と訊き返す。彼女は黙ってしまった。なんなんですか、もう一度訊く。「サトウさんのオタクですか」「ぼくはサトウですが、サトウさんのオタクではありません」「そうですか」黙った。「とりあえず、寒いでょう。上がってください」勧めると、彼女はするりと入ってきて、後ろ手に鍵を閉めた。
「サトウさんですか」
「そうです」
「そうですか」
 彼女はニットキャスケットを脱いだ。私は驚いて「アッ」と言った。
「なんですか?」
「なんでもありません。さあどうぞ」
「お邪魔します」
「汚いところですが」
 彼女はぐるりと部屋を見回すと、
「そうですか? 男の一人暮らしにしてはむしろキレイ過ぎると思います」
「キレイ好きなので」
「いいことですね」
 アイフォーンの黒電話着信音がけたたましく鳴った。「あ、すいません」言って、ポケットを探った。「いや、これは私のです」彼女はそう言って、ポケットからアイフォーンを取り出した。ぶるぶると震え、けたたましく鳴っている。
「出てもいいですか?」
「どうぞ」
「やっぱり、やめておきます」
「なぜですか?」
「恥ずかしいからです」
 アイフォーンがけたたましく鳴り続けている。
「どうぞ取ってください。うるさくて仕方がない」
「そのうち鳴り止みますよ」
「そうですか」
 コーヒーを出し、パンを出した。アイフォーンが鳴り止んだ。妙に静かになってしまい。気まずい感じがした。
「ところで、今日はどうしたんですか」
 彼女はコーヒーを飲み、パンを食べた。
「と、言いますと?」
「なぜ連絡をくれなかったのですか」
「どういうことですか」
「アイフォーンを出してください」
 私のアイフォーンはベッドの枕元にあった。取りに行って、戻ってくると、コーヒーとパンはキレイさっぱり飲みつくされ、食べつくされていた。「これです」と言って手渡すと、彼女は私のアイフォーンの表面を卑猥な手つきで撫でた。
「パスコードを教えてください」
「いやです」
「なぜですか」
「逆に訊きますが、なぜあなたに教えなくてはいけないのですか」
「義務だからです」
「そうですか。ならば仕方がない。私の誕生日です」
「誕生日はいつですか」
 私はおかしくなってしまい「知ってるくせに」と笑った。彼女も「うん、知ってるばい」と言って、うふっと笑った。彼女の手元にある私のアイフォーンがジリリリジリリリとけたたましい黒電話の音を発して震えた。会いたくて会いたくて震えた。
309 :私は愛亜弥を抱きしめていたい :2012/02/07(火) 06:54
 テレビのニュースが明日正午をもって世界が終わりますと告げた。愛ちゃんが「うっそ、マジで」と言ってひょうきんな顔をした。あややが「何その顔」とツッコむ。
「世界終わるんやって」
「はあ?」
「ほら、今ニュースで」
「うそに決まってんじゃん」
 あややは鼻で笑った。愛ちゃんはまだひょうきんな顔をしている。
「だから何その顔」
「世界終わってしまう……」
「いやいや、終わるわけないじゃん。明日の正午に終わるわけないじゃん」
「でもテレビが言ってた。ニュースが」
「どうせテレ東でしょ」
「フジやって、ほらタモさん、笑っていいとも」
「あっそう。どこだって一緒だよ。ちょっとチャンネルかえてみて」
 愛ちゃんはまだひょうきんな顔をしている。
「もう分かったから、その顔止めて」
「なんで」
「なんかムカツク」
「ごめん」
 愛ちゃんはチャンネルをかえた。ヒルナンデス!
「優木まおみかわええ」
「ほら、やっぱうそだよ」
「なんで」
「ほんとに世界が終わるんだったらもう特番特番の嵐だよ」
「二宮くん好き」
「は? なんで? そっち?」
 愛ちゃんはまたひょうきんな顔をした。
「松潤も、いい」
 あややは舌打ちをした。
310 :名無飼育さん :2012/02/08(水) 08:38
 れいなはひゃあと叫んでアイフォーンを放り投げた。私は慌ててそれをキャッチしようとしたのだが、間に合わず、床にぶつかって痛そうな音を立てた。震え、まるでピンクローターのような卑猥なバイブ音。ジリリリと黒電話着信音が鳴っている。どうやら壊れてはいないようである。しかし液晶が心配。拾い上げて、見ると、どうやら液晶も平気なようだった。
「困るよ。アイフォーンの修理は高いんだから。保険入ってないし」
「だれも電話に出んわ」
「ああん? つまんねえギャグ言ってんじゃねえぞ」
「すまんばい」
 電話は鳴り止まない。「誰からだっちゃ?」とれいなが訊く。
「れいなちゃんには関係がないよ」
「冷たい言い方ばい。泣きそう」
「ごっちんからだね」
「なにゆえ」
「知らんよ。でも、出たくないから出ないんだ」
「なにゆえ」
「知らんよ」
 留守電に切り替わる。アイフォーンをテーブルの上に置いた。
「れいなちゃんがパン全部食べちゃうからお腹が空いてしょうがないよ」
 れいなは中指を突き立てて、ファックユー、「なんなら戻すっちゃ?」言って、口の中に突っ込んだ。ごぼごぼっという不吉な音がして、吐いた。テーブルの上がゲロまみれになった。アイフォーンがゲロまみれになった。すっぱい匂い。
 殺すか、と思った。なんなのだ一体。なんの嫌がらせなのか。「弁償してよね」と精一杯冷静な声で言った。「いやばい」とカタクナな口調で言うれいなは涙目だった。黒電話の着信音が鳴った。ゲロまみれのアイフォーンを見た。
「れいなだっちゃ」
 ポケットの中からアイフォーンを引っ張り出すと、得意げな顔をする。
「誰から?」
「おじさんには関係がないことばい」
「あ、ごっちんじゃん」
 タッチパネルに"後藤さん"と出ていた。「出ないの?」
「出ないっちゃ」
「なんで」
「出たくないから出ないのだっちゃ」
「あっそう」
 玄関の呼び鈴が鳴る。出ると、ごっちんが居た。スウェットにパーカーというラフな格好で、フードを被っていた。「なんで電話出ないわけ?」少し怒っているように見える。
「ごめんなさい」
「ごめんとかいいから、なんなの? ふたりともさ」
「いや、れいなちゃんのせいでアイフォーンが壊れちゃって」
「とりあえず家入れてよ。寒い」
「そんな格好してるからでしょ」
「うっさいなあ、急いでんの」

 ごっちんはテーブルの上に広がるゲロを見て「うわっ」と言った。れいなは顔を赤らめてワシワシと頭を掻く。「照れてんじゃねえぞ、さっさと片付けろ」ごっちんの声が今までになくトガッていた。私とれいなは協力して、すばやくそれを片付けた。ゲロまみれのアイフォーンは水洗いした。「弁償してよね」「いやばい」やはりれいなはカタクナだった。

「ニュース見た?」
 とごっちんが言う。タバコを吸った。マルボロライトメンソール、いわゆるマルメラである。私も吸う。わかばである。金が無い。れいなはショートホープを吸っていた。
「いや、見てない。テレビとか無いんで。つーかみんないいタバコ吸ってるよね」
「世界が終わるらしいよ。明日の正午に終わるらしいよ」
「なにそれ」
「れいなは知ってたっちゃ」
 私とごっちんはれいなの顔を見た。得意げな顔である。鼻からタバコの煙が伸びる。「あっそう」とごっちんが言った。私は「れいなちゃんはすごいね」と褒めた。れいなは「それほどでもないっちゃ」とますます得意げになった。
311 :私はやすかおを抱きしめていたい :2012/02/09(木) 08:17
「ほんとに終わんのかね」と圭ちゃんが言った。
「何が?」とかおりんが尋ねる。
「ほら、ニュースでやってたじゃん」
「ああ、明日の正午に世界が終わるってやつ? まあうそっしょ」
「だよね」
 かおりんがにやりと笑って、
「なに、圭ちゃんちょっと信じてんの?」
「ちょっとね、ちょっとだけ」
「そういうとこ意外に子どもっぽいよね」
「純粋って言ってよ」
「ああそうね。よく言えばそうだわ」
 かおりんは手元の雑誌に目を落とす。圭ちゃんはテレビのチャンネルを回した。各局通常放送である。なんかさ、と圭ちゃんが言う。逆に、逆に不安になるんだよね、こんだけいつも通りだとさ。かおりんは顔をあげて、少し考えるように圭ちゃんの顔を睨み、口を開いた。
「昔さー、なんか火星人が襲来したっていうラジオドラマが流れてパニックになったことがあったらしいじゃん」
「ああ、なんか聞いたことあるね」
「そういう感じじゃない?」
「いや、だからさ、少しぐらいパニックになったっていいんじゃないの?」
「は? パニックになんないのはいいことじゃん」
 いやいや、だから、なんか変なんだよね、すごい変な感じがする。圭ちゃんはその言葉を飲み込んで、「そうだね」と言った。かおりんは満足気に頷いて「そうだよ」と言い、雑誌をぺらぺらと興味なさそうにめくった。
312 :名無飼育さん :2012/02/09(木) 08:48
 明日本当に世界が終わるとしたらどうするか、これから明日までの十数時間何をして過ごすか、ということをごっちんが訊いた。私は「みんなで3Pをしよう」と言った。れいなは「いやばい」と言い、ごっちんは「すぐそうやって下ネタに逃げるのはよくないよね」と言った。私は謝った。しかし3Pをしたいのは冗談ではなく本心からのことだった。真面目な話、ごっちんはいつになく神妙な顔をして、私はどうしたらいいかよく分かんない、と言った。
「よく分かんないんだったらやっぱ3Pだよ。それしかない! この世最後の思い出を三人の肉欲で飾ってやろうぜ!」
 ごっちんはため息を吐いた。「あんたはそれしか頭にないのか」「すいませんが、そうです」れいなは興味無そうにアイフォーンを撫でていた。
「そういえば、どうなの、田中ちゃんはどうしたいの」
 れいなはきょとんとした顔をした。れいなはー、と言って、少し悩み、いつも通りっちゃね、いつも通りに寝て、起きて、ごはんを食べるばい。やっぱそれが正解かもね、とごっちんが言った。私には理解できない。それでは童貞のまま死ぬことになる。そんなことは許されない。神が許さない。人間はセックスをするために生まれてきたのだ。セックスを一度もしないまま死ぬとか、神の冒涜である。それを二人に主張した。
「あんたは本当にそれしか頭にないのか」
 ごっちんがさすがに怒気を孕んだ声でそう言った。「すいませんが、そうです。せめてパンツください」
 あほくさ、と言ってごっちんは席を立った。
「家帰って寝るよ」
「あ、そう。パンツ置いてって」
「やだよ。私はいつも通り過ごすことに決めました」
「冒涜だよ!」
「あんたの発言が人間性への冒涜だよ」
「そうかな。ごめんなさい」
「じゃ、またね」
 ごっちんは帰った。アパートの前までお見送りをしようと思ったのだけれど、いいから、と言って速やかに帰った。れいなは「またばい」と言いながら席を立ちもせず手を振った。アイフォーンを撫でている。
「さっきからなにアイフォーンのことばっか気にしてんの」
 れいなは顔を上げた。ぼんやりした顔だった。さゆとえりは何をしてるのかなって思って、と言った。きっと二人は今頃仲良く布団の中で抱き合って、怯えながら寝ているよ。言おうとして、気の毒になったから言わなかった。
「お風呂に入って、寝ようか」
「そうっちゃね」
 れいなが風呂を使っている間、私はれいなのパンツを手元でもてあそびながら、本当に明日世界が終わるとしたら、どうするのがいいのだろう、と考えた。よくよく考えてみると、確かに何をすればいいかよく分からなかった。クロッチが薄汚れている。舐めた。苦くて、臭い。
313 :私はさゆえりを抱きしめていたい :2012/02/10(金) 04:40
 さゆが「怖いの」と言ってえりりんの体をギュッと抱きしめた。えりりんは「大丈夫だよ」と言って、さゆの頭を撫でた。さゆはまるで赤ん坊のようだった。"寝起きのさゆちゃんは赤ん坊のようだった。さゆちゃんは毎朝目を覚ますたび、この世に生まれ直すのではないか"誰かがそう言っていたのを思い出した。してみるとさゆはこれから一度死ぬのだ。誰だって死ぬのは怖いものだ。大丈夫、大丈夫だよ、とえりりんは声をかける。さゆはそれでも恐ろしそうに震え、ぎゅっと目を瞑っていた。おでこにかかった前髪をかき分けてみる。白く、透明に透き通っていて、えりりんは困った。そこに指を突き立てると向こう側に抜けていってしまうのではないかと思ったからだ。
 さゆはそのかわいらしさゆえに毎晩こんな死の恐怖に晒されているのだ、と考えると胸がつまるようだった。えりりんは死ぬことについて深い感傷を持っていない。生きることについてもまたそうで、何かをごまかして生きているうちにふとそれが途切れるだけだ。妙に達観したことを、十四の頃から思っていた。さゆにはそれが理解出来ない。さゆにとって、毎晩が恐怖であり、死の絶望なのだ。たとえ明日世界が終わろうと終わるまいと、変わらずに、死はさゆにとって常に身近なものだった。えりりんはそれが理解できない。さゆのむき出しのおでこを撫でた。たしかにさゆのおでこはそこにあって、肌はきめ細やかにしっとりと潤っていた。
 さゆが安らかな寝息を立てるまで、えりりんはさゆのおでこを優しく撫で続けた。さゆのかわいらしい寝顔を見ていると、寝ることが急に恐ろしくなった。このままさゆも私も、二度と目が覚めなかったらどうしよう、と不安に思ったのだった。二人で、震えながら、明日の正午の世界の終わりを待ち構える。さゆが「怖い」と言って抱きつき、私が「大丈夫だよ」とさゆの頭を撫でる。そういう物語のクライマックスを想像していたのだけれど、もし、二人共が寝過ごしてしまったら、今この瞬間が世界の終わりなのだ。えりりんはさゆの顔をじっと見つめた。その輪郭を、その顔の造形を全て、予め自分のものにしておかなければならなかったからだ。
 えりりんは目を瞑ってさゆの顔を思い浮かべた。うまく思い出せなかった。なんとなく、全体の雰囲気が漠然としていて、目を開ける。そこにあるさゆの寝顔と、えりりんが思い浮かべたさゆの顔とは、なんだか違っている気がした。えりりんは初めて死ぬことが怖いと思った。それでなかなか眠れなかったのだけど、気付くとさゆもえりりんもすやすやと安らかに寝息を立てていた。
314 :名無飼育さん :2012/02/11(土) 09:04
 おはよう。起きていくと、今何時だと思ってんの、とあややがスルドイ声で言った。九時だけど、言って、睨みつけた。信じらんない、と唇を尖らせる。その突き出したかわいらしいおちょぼぐちにキスしてやろうかと思った。そんな度胸なんか無いくせに、とごっちんが嘲るように笑うので、ムッとした。やろうと思えばな、おれにだってキスぐらいできるんだよ。いいか、見てろよ。ガタガタする安物の椅子に腰掛けたあややのそのしゃくれた顎を持ち、上に向かせた。あややは「なにかっこつけてんだよ」と手を払いのけた。ごめんなさい。謝って、「なんでここにいるの?」と訊いた。あややは鼻で笑った。どうだっていいでしょ、別に。朝ごはん作ってよ。顎をしゃくってキッチンを示した。はいはい、言って、キッチンへ立つと圭ちゃんがお湯を沸かしていた。おはよう、と彼女は笑った。そういうところが圭ちゃんのすばらしいところである。笑顔の挨拶。いかに醜女でも笑顔というのは大体かわいらしいものだ。笑顔がかわいくない女は嫌いだ。コーヒーでいいか、と訊くので、コーヒーでいいよ、砂糖をたっぷり、と答えた。
 圭ちゃんの淹れてくれたコーヒーを啜りつつ、ありったけの食パンと卵とベーコンを焼いた。出すと、いつの間にかれいなも起きていたようで、無言で食パンに手を伸ばした。「あいさつぐらいしなさい」「おはようだっちゃ」「いただきますは?」「いただきますばい」「よろしい。じゃ、私はお風呂に入ってくるから」
 風呂場へ向かうと先客があった。擦りガラスに透ける桃色のお尻が誰だか分からなかったのだけど、そこに脱ぎ捨てられていたつやつやする紫色のパンティを手にとった。訳のわからん柄の網タイツと複雑に絡み合っていた。そのパズルを解こうとしていると擦りガラスの向こうの桃色のお尻が「だれ?」と頓狂な声を上げた。その声で桃尻娘が愛ちゃんだと知れた。お前こそなんでここにいるんだ。ようやく解けたタイツの足先の臭いと、パンティのクロッチの匂いを交互に確かめる。汗の匂いがキツい。ごっちんともれいなとも違う匂いだった。クロッチを見るとオリモノはついていなかった。ついているのは小便のシミとうんこの掠れたシミばかり。いわゆる女の香りというものがあまりしなかった。桃尻が「え、亜弥ちゃんが」と言った先、ごにょごにょと早口でよく分からなかった。というか、訊いてみたものの別に興味がなかった。私はパンティを頭に被り、タイツを金玉から亀頭にかけてぐるぐると巻いた。それでいくらか擦るとすぐに出た。脱ぎ捨ててあったTシャツで拭う。
 愛ちゃんが風呂から上がって、私のナリをみるなりギョッとしたようだったが、パンティを取り、タイツをぐるぐるとはずして、「はい」と笑顔で手渡すと、彼女も笑顔で「ありがとー」と言って受け取った。どうもなんだかれいな以上に鈍感らしい。愛ちゃんの乳首はかなり上等な薄いピンクだった。陰毛も薄い。おそろしくシマッタ体つきで、出るところは出て、引っ込むところはしっかり引っ込んでいた。愛ちゃんは滑らかに服を身につけると、Tシャツのシミを見て疑問に思ったようで、小首をかしげた。「ごはんがあるよ」「ほんま? やった!」足早に風呂場を立ち去った。「もうないじゃん! なんで!」遠くにその声を聞きながら風呂に入った。一体これはどうしたことなんだろう。考えようとして、湯船の心地よさにめんどくさくなった。
315 :名無飼育さん :2012/02/11(土) 11:27
 さゆが目を覚ますとカーテンが薄っすらと明かりを帯びていた。頭を撫でられている感覚に気付き、絵里いつから起きてたの? 訊こうとして振り向いた。かおりんがいた。さゆが「えっ」と言うと、かおりんは「おはよう」と微笑んだ。夢かしら、と思い一瞬呆然としたのだったけども、かおりんがもう一度おはようと言う。それで自分が挨拶をしていないことに気付いて、なんだか気恥ずかしくなった。「おはようございます」かおりんはまた優しくお母さんの微笑をして、亀井ちゃんは帰った、と言った。さゆはなんだか少し裏切られた気分になった。
 ごはんができてるよ。さゆの手を導いてテーブルに着かせた。白いごはんと納豆と味噌汁が出た。「絵里はなんで帰ったんですか」と訊いた。かおりんは納豆をかき混ぜながら「さあ、なんでだろうね」と興味がなさそうだった。思い立って携帯を見た。れいなからメールがあった。れいなって誰だろう。ああ、田中か。どうでもいい文面だった。ごはんの時に携帯見るとか行儀が悪い。かおりんは少し怒った。「ごめんなさい」言って、携帯を閉じると、「いや、別にいいんだけどね」納豆を味噌汁に入れたので、さゆはギョッとした。
316 :名無飼育さん :2012/02/12(日) 03:09
 風呂から上がると、誰が呼んだかさゆとかおりんが居た。さゆは「はようございます」と丁寧に頭を下げ、かおりんは「あんた誰」と言った。「誰って、ここの家主ですけれども、あれ? 飯田さんだよね? 何度か会ったことあるよね?」「へえ、そうだっけ。おじゃましてます」私はかおりんが苦手だった。美人が嫌いなのだ。容姿の美しさだけで世の中を渡ってきたような女が嫌いなのだ。「相変わらず感じ悪い女だな」小声でこぼすと、圭ちゃんが「まあまあ」なだめるように私の肩へ手を置いた。悪気があってそうしているわけじゃない。そういう性格なんだよかおりは。そういう人なの。そう思えば腹も立たないってものでしょ。ちょっとわがままなんだよ。昔からそう。悪気があるわけじゃない。わがままな性格なんだよ。性格だから、もうどうしようもない。「カオリわがままじゃないもん」かおりんは頬を膨らませた。かわいいとでも思っているのだろうか。そうやれば男は彼女の無礼な振る舞いを許すとでも思っているのだろうか。いや、思っていないだろうな。美人だから。そういう振る舞いが狙ってではなく、ごく自然に、さも当たり前のことのように漏れでてしまう。美人というのはそういう生き物だ。それが私にとっては絶望的にいけ好かないのだった。ただとにかく猛烈に美人なのだ。「二人は何か飲む?」「お構いなく」「いらなーい」私は台所へ向かい、シンクにあったグラスを手に取って、床に叩きつけるようにして割った。
317 :名無飼育さん :2012/02/12(日) 03:34
 あややはチャンネルを回しながら「ほんと?」と言った。愛ちゃんが「んだんだ」と言う。ごっちんはAKIRAを読んでいる。「カオリちゃんかわいい。ケイちゃんかわいくない」かおりんは少しにやっとし、圭ちゃんの方へ視線を投げた。「うっさいわね。知ってるわよ」れいなはといえばさゆに一生懸命何か話しかけているが、相槌は「うんうん」と上の空で、せわしなく携帯を開けたり閉じたりしている。私は割れたガラスを踏んづけてうずくまり、自分の愚行を後悔していた。
 玄関で何か物音がして、「おいお前ら、こんなとこで何しとんねん」と声がする。「裕ちゃんこそなに」とかおりん。「迎えに来たんよ。行くで」俄に部屋がざわついた。椅子を引く音や本を閉じる音、テレビのチャンネルがぐるぐると切り返されて意味を為さずにバラバラに途切れた音声とBGM、「裕ちゃん久しぶりだね」「あ? なんやねん。お前だれや。触んなや」「保田ですよ。冷たいな……」「うそやって。好きやで」「いいよもう」「ねえねえごとーは? ごとーも裕ちゃん久しぶりだよ」「ああ、後藤も好きやで」「ねえ裕ちゃん、カオリは? カオリは?」「はいはい、圭織も好きやで。あ、松浦やん。おまえ何やねん」「何やねんってなに」「何でもあらへんわ」「中澤さん、世界終わってしまう」「高橋は相変わらずやな。ちったあ今の周りの空気読むとかできへんのか」「え、何がですか」「いや、ええわ。うちが悪かった」
318 :名無飼育さん :2012/02/12(日) 06:37
 台所でうずくまっている私を見つけて「お前誰や、何しとんねん」と裕ちゃんが言った。私は裕ちゃんのことを裕ちゃんと呼んでも構わないだろうと思う程度には裕ちゃんのことを知っていたが、そういえば裕ちゃんは私のことをからきし知らないのだった。「ここの家主です。小林と言います。はじめまして」れいなが向こうの方で「えっ」と言うのが聞こえた。裕ちゃんは「なんでうそつくんや。サトウやろ。知っとるわ」と言い、お前も来いとて手を引いた。「なんやそのへっぴり腰」「ガラス踏んじゃって」「見せえよ。抜いたるわ」「えっ、そんなはしたない」裕ちゃんはあきれた顔をした。「そういう冗談はええわ、つまらん、ガキじゃあるまいし」「すいません」
 家を出た。大型の白いバンが停まっていて、みなもう乗り込んだようだった。どこへ行くのか、裕ちゃんに訊いた。とりあえず、そやな、亀井探しに行こか。裕ちゃんは助手席に乗り込む。「なにぼんやりしとんねん。運転しいや」「えっ、免許家に置いてきました」「かまへんかまへん。大阪ならよくあることや」「ここは東京ですよ」「だったらなんなんや」「いえ、なんでもないです」「はよし」運転席に乗り込んだ。運転などあまりにも久しぶりだったものだから、キーを回してエンジンを掛けた後、どうしていいのか一瞬分からなかった。「はよ出してや、あ、シートベルトはせなあかんで。危険や」「どこ行けばいいんですか」「行きたいように行ったらええねん」「え? えりりんを探すんですよね?」「とりあえずコンビニ寄ってくれ」「近くのコンビニだったら改装中ですよ。7月までかかるんです」「別んとこ行けばええやろ。なんやねんキミ、要領悪いな。仕事できへんやろ」「ほっといてください。どうせ無職です」「そら結構なことやわ」裕ちゃんはオーディオに手を伸ばした。Night of Tokyo City。「ええ曲やね」「真昼間ですけどね」「いちいちうるさいなキミは。はよ出してや」
319 :名無飼育さん :2012/02/12(日) 07:46
 ブレーキを踏むと傷口が痛んだ。「痛いんですけど」「男の子やろ、我慢しい」アクセルに足を置き直して軽く踏む。ブオーンとエンジンが唸る。「ニュートラル入れっぱやん」「間違えました」「不安やな」ドライブに入れ、そろそろと発車した。後ろの座席ではトランプをやっているようで、わいわいと楽しそうな声がする。「混ざんなくていいんですか?」「なにが」「後ろに」ああ、と言って後ろを振り向き、目を細めた。「楽しそうやな。修学旅行みたいになっとるやん」「いいですよね。女子高の修学旅行とかこんなんなのかな」「いや、女子高はこんなもんやないで、そもそもまずグループ分けで揉めるしな」「ほう」「しかも陰険にや」「どういうことですか」「なんつーんやろうな。まあとにかく陰険やねん。剣呑でもある」「はあ」「コンビニ通り過ぎたな」「すいません」「かまへんよ。あとガソリンも入れてな」
 後ろから、ワッと一際大きな声が上がった。どうやら大貧民のれいなが大富豪のかおりんを蹴落とし成り上がったようで、れいなの得意げな声「これを待っとったばい」何人かが軽く舌打ちをしたのも聞こえる。「そういうのつまんない。もういいや」かおりんがそう言うのを、いくらなんでもさすがに大人げないと思った。ごっちんとあややもなんだか疲れたからもう辞めると宣言した。愛ちゃんは「やられたー」と一人でやたらはしゃいでいた。さゆはまるでいないかのように気配を消していた。れいなは何も言わなかったが、おろおろと狼狽しているのが手に取るように分かる。圭ちゃんが慌ててフォローする。「せめてあともう一回やろうよ」「残った人でやれば?」「カオリ、いい加減ちょっとは大人になってよ」「カオリは大人だよ。結婚してるし」裕ちゃんが私に向かって言った。「な、陰険やろ」
320 :名無飼育さん :2012/02/12(日) 10:20
 女同士のやりとりが陰険というか、飯田さんの性格がどうかしてるんですよ、頭おかしいんじゃないですか、深い考えも無しにほろりと言ってから後悔した。私の声は結構通るのだ。車中が一瞬シンとする。「お前が圭織の何を知っとるいうんや。胸糞悪い」裕ちゃんはあからさまに不機嫌になった。後ろでは圭ちゃんとさゆと愛ちゃんとれいなとで大富豪を続けているようだった。愛ちゃんだけがいちいち「あちゃー」とかオーバーリアクション。圭ちゃんもれいなもどことなく沈んでるようで、さゆに至ってはずっと気配を消していた。ごっちんとあややは何かこそこそ喋っていて、バックミラー越しに垣間見えるかおりんの眼差しが怖い。「あ、そこのコンビニ寄ってや。そこなら入りやすいやろ」言われるがまま駐車場に突っ込んだ。
 三々五々、それぞれ勝手にお菓子やらアイスやら買い込んだ。ごっちんがタバコをカートンで買っているのを見てちょっと笑った。「似合うね。ヤンキーって感じ」「一個いる?」「ちょうだい」「はいよー」ごっちんの屈託のなさに救われる。早速一本吸った。「車ん中で吸うのやめてーや」と裕ちゃんが嫌そうな顔をする。なんとなく反抗したい気持ちになっていたので、無言で窓を開けた。ため息を吐くのが聞こえる。「このクソガキが」裕ちゃんはガムを音立てて噛んだ。
 運転席から、コンビニの喫煙所に座り込んでなぜかめそめそ泣いているれいなと、それをなだめている圭ちゃんが見えた。「何してんですかあれ」「さあな、知らへんわ。めんどくさいことには関わらんようにしてんねん」「思いやりが深いことで」「自分さっきから感じ悪いな。帰れや」「いやですよ。ここどこだか分かりませんし、帰れません。なんなんですか」「冗談や。折角やから楽しくやろうや。さっきことは謝る。すまんかった」それで少し満足した。タバコを消して、窓から捨てる。「あの二人が戻ってこないと出れませんよ」「まあ待とうや」「えりりんはどこにいるんですか」「さあ、どこにおるんやろうな」裕ちゃんがガムを差し出すので、一枚もらった。バックミラー越しにまだかおりんの視線が刺さる。後ろを振り向いて「飯田さん」と呼ぶ。「なに? なんか用? 私は用なんて無いけど」「ごめん。仲良くしてよ」「はあ? なんで?」裕ちゃんが割り込んだ。「なんでもや。折角やから仲良くしいや」「裕ちゃんがそう言うんなら」「そうそう、仲良くしてねかおりん」「馴れ馴れしい呼び方すんじゃねえよ。ぶっ殺すぞ」私は首をすくめた。大丈夫そうやな、と裕ちゃんが笑った。
321 :名無飼育さん :2012/02/12(日) 11:02
 ガソリンスタンドに着き、エンジンを止めると何故かみな一斉に口を閉じた。ごっちんがふふっと鼻で笑いながら「え? なに?」と言った。裕ちゃんも笑う。「なんでみんな黙るんやろな」「エレベーター効果じゃない?」かおりんが知った風に言う。「なんやねんそれ」「エレベーター乗るとみんな黙っちゃうやつ」「でもここエレベーターちゃうで」「じゃあガソリンスタンド効果ってことで」「適当やな」「いーじゃんなんでも、カオリお腹空いた。どこ向かってんの」「さあ、分からへんなあ」店員にお金をせびられて、財布を持っていないことに気付いた。「お金持ってます?」と裕ちゃんに尋ねる。「いくら?」「5000円あれば足ります」万札を受け取って、店員に渡す。お釣りが返ってくるので、それをポケットに入れた。「ちょ、ネコババすなや」「これから先またガソリン入れることもあるでしょ」裕ちゃんは「ああ」と言って遠い目をした。「そんなら取っといたらええわ」
 ガソリンスタンドを出ると、特にこれといった目的地は無かった。えりりんがどこに居るかはよく分からなかったし、そういえばそもそもなんでえりりんを探す必要があるのかもよく分からなかった。ので、訊いた。裕ちゃんは「別に理由なんてあらへんもん」と言ったっきり、押し黙ってしまった。ただガムを次々と噛んでは捨てた。後ろでは今度はインディアンポーカーを始めたようだった。ビリッケツには罰ゲーム付き。"今だから言える私の秘密"それを話すのだ。最初に負けたのは愛ちゃんだった。愛ちゃんは「実は私はワキガだ」ということを話した。そんなことはみんな知っていたので、たいして盛り上がらなかった。「なんで? なんで?」と一人で混乱していた。
322 :名無飼育さん :2012/02/12(日) 12:51
 ごっちんが負けて、初体験の話をした。小学生の時、自分の膨らんだ胸と生え揃った陰毛が面白くて、なんとなく弟の友達に見せびらかした。弟の友達のちんこはつるりとしたパイパンで、茹でたてのシャウエッセンのようにぷりぷりと硬くなっていた。今となって思えばひどい真性包茎だった。弟のそれとはだいぶ違っているように見えた。「ユウキはその頃にはもういっちょ前にうっすら毛が生えてたし、剥けてた」だからその子のちんこもそうしてやろうと思った。剥こうとすると、痛がって泣いた。舐めてやれば剥けるような気がした。小便の匂いがひどかった。今何時、と愛ちゃんが訊く。裕ちゃんがああと気のない返事をして、「もうすぐ十二時やな」あややが身を硬くした。怖い、とさゆはつぶやいた。えりりんはどこにいるのだろう。絵里に会いたい、と言ってさゆが泣いた。れいなは今日の晩御飯のことを考えていた。「それレイプじゃん」あややんはごっちんの肩をドツイた。ごっちんはアハハと笑う。そうかもね。でも、いいでしょ。私にレイプされるとか、全日本人男子の夢でしょ。「いいな、カオリもそういう初体験が良かった」かおりんは電波を受信した。それはとても久しぶりなことだった。痛い痛い痛い。頭を抱えた。思い出した。変なことを思い出した。慣れない下手くそなピストン運動にうんざりした。ごっちんが口いっぱいに頬張ると、ガチガチになったちんこからは小便が駄々漏れて「興奮した」から、オマセさんだったごっちんはセックスのようなことをしたのだった。「上手く入らなかったけどね」れいなは今日の晩御飯のことを考えていた。焼肉がいいばい。カルビが死ぬほど食べたいのだっちゃ。さゆはえりりんのことを思うと泣けてしょうがなかった。あややは身を硬くしている。私は初めての時、確か中学生だったかな。ごく普通に付き合っていた男の子とキスをして、したいというからした。あまり痛くは無かったし、こんなもんか、という感覚が強かった。それからセックスをする度、こんなもんか、と思った。興奮とかはあまり無かったし、私は淡白なのだと思う。「どの口がそういうことを言うんだろうね」ごっちんが笑ってあややの肩をドツイた。「お前ら喧嘩すんなや」裕ちゃんの初体験は遅かった。圭ちゃんも遅かった。やってみて改めて、合わない、と思った。私は男よりも女の方が好き。男の性欲は汚い。だから裕ちゃんが初めて私にキスをしたとき、こっちで生きていくんだ、と思った。私はこっちで、生きていくんだ。れいなは相変わらず今夜の晩ご飯のことを考えていた。ウィンナーが火にあぶられて、パチパチと爆ぜた。「切れ込みを入れておかないからこんなことになるのだっちゃ」口に入れ、思い切り噛ると口の中に熱い肉汁がほどけた。苦くて、塩辛い。「それはね、ザーメンの味だよ」私は言った。れいなは目を白黒させて吐き出した。亀頭がころころと畳の上を転がって、血の道筋を残した。さゆはえりりんに会いたくてしょうがなかったから、えりのことを思いながらカバンを抱きしめた。えりりんの舌がさゆの口に滑りこむ。思わず噛みきってしまった。吐き出すと、やっぱりそれは亀頭で、取皿の上にぽとりと落ちた。焼肉のタレが絡んだ。それは砂肝のようにも見えた。愛ちゃんがそれを食べた。うおっ、と言って吐き出した。「海綿体やざ」ゲタゲタと笑い転げた。止めてくれ! 叫んで、私はハンドルを切った。
323 :名無飼育さん :2012/02/12(日) 14:52
 右に切ったんだ。右に右に、ずっと切っていけば、いずれ一周してまるで元通りになるはずだった。ハンドルは二回転し切らない。それが焦れったい。いっそ左に切りきってしまってから、ぐるぐると右へ回すと、四回転に満たない程度、それでもまだ元には戻りそうにない。慌ててリバースへギアを切り替えた。だからなんだと言うんだろう。それで元に戻るはずがなかったのだった。あまりにも無作為にアクセルを踏み、無作為に交差点を曲がりすぎたのだ。何一つ覚えていない。自分が辿ってきた道筋を、ほんの一瞬前のことすら、何も覚えていない。裕ちゃんがガムを噛む音が耳の底でしつこく鳴った。ごっちんの初体験の話、いきり立った小学生の男子の陰茎の、張り詰めた苦しげな包皮口から、尿道の割れ目がチラついて、ごっちんの舌がそこを丁寧に周回した。まだまだ子どもだった。ごっちんも子どもだった。その時に聞こえる苦しげな吐息はかおりんのものだった。痛いと口にするのもままならぬ内に、そのピストンの循環行為は一方的に終わった。男の腰は螺旋形の循環運動の果てに一定の高みに上り詰めて白い汚物を吐き出して満足したが、ただ内蔵を引っ掻き回されて、ひどく不愉快な痛みだけがかおりんの体には残った。ごっちんの舌はまだ包皮口にそって丁寧に周回していた。年端もいかぬ男の子の困惑は想像して余りある。私は人差し指で尿道の周辺を円を描くようになぞった。先っぽから円錐形に、徐々に広がっていくRにまとわりついて、透明にキラキラするカウパーが伸びた。れいなの桃色の舌先を思う。えりりんはどこにいるんだろう。れいなが焼肉を食べていた。焼き加減を確かめるためにひっくり返す。まだピンク色の肉壁を押し広げて見ると、ぽっかりと黒い穴がどこまで続いているやら分からぬほどに深くえぐれていた。私はそこに舌を這わせ、丁寧に周回した。遠巻きに大きなRを取り、それを徐々に尖らせた。舌先と鼻先が埋もれ、呼吸を止めた。れいなの切ない吐息とクッチャクッチャいう粘着音が耳の底で鳴った。私はれいなを抱きしめていたい。
324 :名無飼育さん :2012/02/13(月) 14:46
 目を覚ますと何でもない月曜日だった。カーテンを開ける気がしない。お日様を見ると憂鬱で死んでしまう。無職だろうがなんだろうが月曜日というのは憂鬱なものなのである。世間の皆様が快活かどうかは分からんけれども、それなりに真面目に、めんどくせえ死にたいとは思っていようとも、仕方ないから出社していく、そういう堅気な生活に対してうしろめたいものがあり、自分がのうのうと無職で、毎日が日曜日の生活をしていると、まこと申し訳なく、いや本当に申し訳なく思っているのですよ。そのうしろめたさを押してカーテンを開け窓を開け、精一杯気張り、服を着替えて家を出て、お昼ごはんを食べに行った先、すでにくたびれきったサラリーマンがうつろな目で生姜焼き定食などを食べているのを見て、ますますうしろめたさが募った。
 れいなが興味深そうにサラリーマンの顔を眺めて「死相が出ているばい」と断言した。「ちょっと止めてよ、揉め事になりますよ」「ならんばい、大丈夫っちゃ」「お前は社会を舐めすぎだ!」「おじさんに社会の何が分かるばい」「すいません。何もわかりません」私は店員のおねーちゃんを呼び止め、唐揚げ定食を注文した。れいなは焼肉定食だった。「れいなちゃんは本当に焼肉が好きだよね」「肉を食っていれば死ぬことはないのだっちゃ」「そうなの? ちょっとどうかしてるんじゃない?」私は卓上に置いてあるアンケート用紙で折り鶴を折った。れいなはそれをじっと見つめて「鶴の折り方とか忘れたっちゃね」とつぶやいた。「教えたげるよ」アンケート用紙をもう一枚抜き出してれいなに手渡した。れいなはそれをぐちゃぐちゃに丸めた。「なんでそういうことするの」もう一枚手渡すと、それもぐちゃぐちゃに丸めた。「いい加減にしろ!」叫んでれいなの首根っこを掴んだところで、唐揚げ定食が来た。店員は去り際「それはアンケート用紙ですので、アンケートにご記入いただけないのでしたら、みだりに使わないでください。不快です」と言い残した。私は恐縮した。
「おまえのせいで怒られたじゃないか」「れいなのせいではないばい」「じゃあおれが悪いの?」「そうばい。元はといえばおじさんが鶴なんか折らなければよかったっちゃ」「言い訳がお上手ですね」「おじさんこそ責任転嫁がお上手ですばい」腹が立った。私は唐揚げ定食を怒りに任せてばくばく食べた。れいなの焼肉定食が来る頃にはあらかた食べ終わっていた。「じゃ、私は先に帰るからね。れいなちゃんはゆっくり食べて帰ればいいんじゃない?」「そうさせていただくっちゃ」席を立った。れいなが上目遣いで、焼肉を頬張りながら「お金は?」と訊く。そんな子に育てた覚えはなかった。いやしくも人にお金をせびるような子に。「自分でなんとかしなさい」私は言ってやった。金を払い、店を出た。今日は仕送りが入金される日だった。郵便局に寄って二万円下ろし、その金で昼キャバへ出向いた。
325 :名無飼育さん :2012/02/14(火) 05:32
 夜になってれいなは帰ってきた。くたびれ果てていた。結局支払いはどうしたのか訊くと、れいなはぷいぷいと手を払い、あっちへ行け、という仕草をした。そんなものに動じる私ではない。
「ねえ、れいなちゃん。どうやって支払ったの? 体で払ったのかな? そのちんくしゃな体で」
 れいなはムッとした顔をして「男なんて簡単なものばい」と吐き捨てた。
 急に嫉妬に駆られた。れいなの手が飲食店店長の股間に伸び、舌が彼の男根を舐め回す様を想像したからだった。そんなの、私でもやってもらったことがないのに。その時のれいなの顔といったら淫乱そのものといった有様で、私はれいなをそんな子に育てた覚えはなかった。
「このあばずれが」叫んで、頬を張った。れいなは何も言わず、「お風呂に入るばい」と言ったっきり、長々と風呂を使った。苛立ちのあまりデリヘルを呼ぶことにした。
 数コールの後、電話に出たえりりんの声は眠たげだった。「なんですか」とふてぶてしい。
「今すぐ家に来て抜いてくれ」
「はあ? そんなもんれいなに頼んでください」
「あんなあばずれに頼めるものか」
「じゃあ私もあばずれですから無理ですよ」
「何を言ってるんだ。えりりんは清純そのものだよ」
「寝ます」
 電話は切れた。虚しい。とてつもなく虚しかった。とりあえずコンビニに行って、ビールでも買って来ることにした。家に戻るとれいなは風呂から上がって、ゲームに興じていた。私の顔を見るなり、ぷいと顔を背けた。
「なんなの、ちょっと冷たいんじゃないの」
 れいなは何も言わず、カチカチとコントローラーが鳴る音が響いた。懐かしいBGM。見ると、星のカービー〜夢の泉の物語〜をやっているようだった。
「あ、そこには隠し扉があるんだよ」
 れいなはやはりそれも無視した。諦めて、ビールを飲んだ。プシュッという小気味の良い音が響き、れいなの耳がぴくりと反応した。
「飲みたいの?」
 れいなはこちらをチラリと見やり、カービーは穴に落ちた。情けない効果音が鳴る。とことこと歩み寄って、私の手からビールを奪った。プレミアムモルツである。ぐいっとそれを煽るとムセた。苦い、と言った。
 私はちんこを取り出し、「お口に直しにどうですか」「結構です」「まあそう言わずに」「じゃあ一口だけ」れいなが私のちんこを手に取り、口を近づけようとするので「このあばずれが!」と叫んで頬を張った。れいなは泣いた。もちろん、私も泣いたのである。
326 :名無飼育さん :2012/02/16(木) 08:39
 なぜチョコレートをくれなかったのか、となじった。「れいなは不器用っちゃけん」「別に手作りじゃなくたっていいんだよ。既製品でいいの! くれよ」れいなは視線を手元に落として「お金がなか」と言う。腹が立った。そうやってなんでもかんでもお金のせいにする。貧乏のせいにする。自分の努力の至らなさを社会のせいにしてしまう。ガキめ。そういうところが青臭く、意地汚いのだ。金が無ければ稼げばいいだけの話なのだ。ガキめ。れいなは手元をいつまでも見つめ、いじいじする。「くれよ」「じゃあ、目を瞑って欲しいばい」「え?」「チョコはあげれんっちゃけど、これならあげれるばい」れいなは恥ずかしそうに俯いた。もしかして、私は高鳴る胸を抑えながら目を瞑った。きっとうんこだ。れいなはチョコの代わりにうんこをくれるに違いない。あまりにも安易だが、まあ仕方がない。甘んじて受け入れよう。本当はうんこなど食べたくないが、この際だからしょうがない。何しろれいなには金が無いし、手先が不器用なのだ。うんこするぐらいしか能がない。そのうんこを、私はこの口で直接受け止めて差し上げよう。本意ではない。仕方がないのだ。別にうんこが食べたいわけではない。誰のうんこでも食べられるわけでははない。れいなだから、れいなのうんこだから、仕方がないのだ。本意ではない。ほかほかの黄金を、ワタクシメのこの卑しい口で受け止めて差し上げよう。決して本意ではない。仕方がないのだ。そのためには体勢を整えねばならぬ。「寝っころがった方がいいかな?」目を開けて、私は訊いた。れいなの顔がすぐ近くにあって驚く間もなく、私の鼻先にその麗しい唇が触れた。「照れるばい」れいなの頬が赤く色づき、思わずこちらまで照れた。私はれいなを抱きしめていたい。
327 :名無飼育さん :2012/02/16(木) 15:25
 ある日唐突にしてくるぶしくるくる病に見舞われた私は寝込んでしまい、れいながそれを看病してくれた。日に三度、くるぶしに張った温湿布を取り替える。それぐらい自分でできるからどうぞれいなちゃんは楽にしていておくれ。まるで昔話の老婆のように、私はれいなを説き伏せたのだけど、彼女はカタクナに首を振って、「れいなのせいやけん」と言った。くるぶしくるくる病というのはいわゆるところのくるぶしがくるくるしてしまう病気であって、つまり端的に言えばまあ捻挫なのだけど、あわや車に轢かれそうになったれいなを助けたところ、両の足のくるぶしが突如としてくるくるしてしまい、歩くのが覚束なくなった。捻挫した、と宣言するのがどうにもためらわれた。折角車に轢かれそうになったれいなを助けるというカッコイイ振る舞いに及んだのにも関わらず、ヒーローたる私が捻挫など、あまりカッコイイこととは思えず、強がって、なんでも無いと言い張ったものだから、れいながそれをくるぶしくるくる病と命名したのだった。れいなは目に涙を溜めながら、おじさんが治るまで看病を惜しまない、と言った。それもあまりカッコイイことだとは思えなかった。なにせれいなは車に轢かれそうになった悲劇のヒロインなのであり、それを颯爽と助けたヒーローたる私が、あべこべにれいなに看病されるだなんて、情けないにも程があった。
 尿意を感じた。こういう時はさすがにれいなに頼まなくてはならない。くるぶしがくるくるしてしまってトイレまで歩けないからだ。「れいなちゃん、おしっこがしたい」れいなはパアッと顔を輝かせて、私のズボンとパンツを引き下ろすと、半ば勃起したちんこを手に持って、それを口に含んだ。上目遣いで私を見やる。それがOKの合図で、じょんじょんじょろじょろと小便を発した。れいなの喉が勢い良くごくごくと唸り、飲みきれず、唇の端から少し垂れてしまう。「なかなか上手くならないのだっちゃ」れいなは残念そうな顔をした。なぜ尿瓶を使わないのだろうか。毎度のことながら、その疑問が頭に浮かぶのだけど、れいなが私の股間に頭を埋め、上目遣い、喉をごくごくと鳴らして、実にうまそうに小便を飲んでいるのを見ると、これはこれで良い、と思った。きっとれいなはバカすぎて、尿瓶の存在を知らないのだ。知らないのなら、知らないままでいい。私はフェラに似たこの排尿行為をいつまでも楽しんでいたい。
 ティッシュはいつも三枚。それでこぼれた小便と、唾液で濡れるちんこを拭う。男の肛門から金玉へかけて、走る縫い目のその部位を「蟻の戸渡り」と言うのだが、そこをティッシュという薄い紙越しに、れいなの指が走ると、いつも少しだけちんこがピクリと反応した。それがれいなには面白いようで、小便を拭ききっても、わざと何度か往復する。私はそれに気付かないフリをするのに苦労した。「なんでピクピクするのだっちゃ?」れいなは無垢な瞳で訊いた。私は困って「そこが男の性感帯だからだよ」と正直に言った。れいなには「性感帯」という言葉が通じないようで、首をかしげた。「つまりどういうことばい」「気持ちいいんだよ、性的に」「どういうことばい」れいなの物分りの悪さはもはや白痴のようだった。教育者として、私はれいなに「性的な気持ち良さ」という奴を教えてやる必要があるように思った。
 来てご覧と私は手を差し出した。れいなはその手を取った。ぐいと引くと簡単に体が倒れ、私の上に覆いかぶさる。シャンプーの香りが匂った。それと鼻を突く体臭。れいなはここしばらく、私の看病に明け暮れて、風呂に入っていないようだった。「なにをするばい」「性的な快感という奴を教えてあげるよ」れいなの核心に手を伸ばそうとすると、払いのけられた。「結構ばい」存外冷たいのだ。「変なことするつもりっちゃろ」「変なことってどんなこと?」「それは……」と言い淀んだが「れいなのまんこに触るつもりっちゃろ」なんだ、分かってるじゃないか、少し興ざめした。私は手を払ってあっちへ行けと示した。それでもれいなは私のすぐそばに腰掛けて、看病を辞めないようだった。れいなのつぶらで歪んだ瞳を見つめる。さきほどのシャンプーの香りと体臭がまだ鼻の奥の方に残っていた。勃起した。れいなはそれを見てギョッとしたようだった。「れいなちゃん、おしっこ」「また?」少し怖がっているようだった。「またなんだよ」恐る恐る勃起ちんこに手を伸ばすと、それを握った。「さあ口に含んで」「いつもと様子が違うばい」「いつもよりたくさんでるよ、覚悟しろ」れいなの舌先が鈴口に触れるか触れないかところで、俄に、猛烈に、くるぶしがくるくるし始めた。私はれいなの肩を思わず突き飛ばした。れいなはキャッと珍しい嬌声を上げた。女の声だった。くるぶしが猛烈にくるくるしていた。
328 :名無飼育さん :2012/02/16(木) 15:39
 れいなが慌てて駆け寄って、私のくるくるするくるぶしをしかと掴むと、今度はちんこが猛烈な勢いでくるくるし始めた。れいなは口でそれを止めようとした。れいなの口の中の温度と粘度がいつもよりも絶妙に、そしてその中でちんこがくるくるした。れいながウッと唸った。くるくるするちんこが喉を突くらしい。高まって、射精した。初めて味わうニガシオに驚いたのだか、口を離した。だらりとザーメンが垂れ、「苦い」と言った。「それが男の味だ」私は勝ち誇った。うえーと言いながらティッシュを三枚抜き取って、それを口の中に詰めた。まずいまずいと文句を垂れた。「やかましいぞ!」声を荒らげたところでれいながすってんと転んだ。何事かと思い、見ると、れいなのくるぶしがくるくるしていた。れいなは呆然としてそれを見た。「大変だ。うつってしまったね」私のくるぶしはもうくるくるしない。「今度は私がれいなちゃんを看病する番だね」れいなはうえーと言って、嫌がった。
329 :名無飼育さん :2012/02/17(金) 07:39
 かくして私はれいなを看病することになったのです。れいなは生粋の恥ずかしがり屋ですから、くるぶりがくるくるすのにも関わらず果敢にトイレに立ち、転んでしまい、トイレまで到達できずに漏らしてしまうといった有様で、「漏らしてしまう方が恥ずかしいと思うのだけどね」言いながら、濡れた衣服や下着を脱がせ、丁寧に拭いてやり、着替えさせるということをするわけですが、それでも意地になって、「漏らすほうがいくらかマシというものばい」と断言した。そこで私は手をポンと打ちました。
「そうだれいなちゃん。こういうのはどうだろうか。私が君をトイレまで抱えて連れて行ってあげる。そこでいつも通りおしっこをしたらいい。そうしたら何も恥ずかしくないでしょう。本当なられいなちゃんが私にやってくれたように、まんこに直接口づけ、聖水を飲み干すというのがスジというものだが、いやというのだから仕方が無い。お漏らしを片付けるこっちの身にもなってくれ。一度や二度ならまだしも、かわいらしいものだが、こうも毎回毎回漏らされると、嫌気すら差してくるものなのだよ」
 れいなは逡巡して、「それがいいっちゃね」と言った。その声色に、少し残念そうな色が滲んでいたのを、私は聞き逃さなかったが、表面上、れいなと私はそれで合意したのだった。
 私はリビングで本を読みました。夏目漱石の「こころ」です。ちょうど前半が終わって、先生の手紙に差し掛かろうとしていたところ、れいなの寝室からか細く「おじさん」という声が聞こえました。行くと、れいなは布団の中でふるふると震えていました。「おしっこ」と、それはそれは恥ずかしそうに言いました。もう一度、言ってくれないか。よく聞こえなかった。「おしっこがしたいっちゃ」よし分かったとて、私はれいなの手を引き、体を起こさせた。くるぶしがくるくるしている。ふと、れいなのこのくるぶしくるくる病は果たして治るのだろうか、という気がしました。私かられいなへうつったこの病は、多分こうして寝ているだけでは一生回復しないもののように思えたのです。きっとこれは誰かにうつさないといけない。そうしないと治らないものなのだ、という確信がありました。
 物思いに耽っていると、れいなが身をよじって「はやく」と急かしました。私はハッとして、れいなの体を抱きかかえ、そうですね、それはちょうどお姫様抱っこという奴です。れいなは嫌がりました。恥ずかしいらしい。頬を赤らめて、「肩を貸してくれるだけでいいっちゃ」と主張します。
「ダメだよ。両の足のくるぶしがくるくるするんだから。肩を貸したところでくるくるしてまともに歩けやしないんだよ」
 そう言ってきかせてやると、れいなはもはや何も言いませんでした。トイレまではすぐです。私は米袋以上の重い物を持ったことが無かったので、たったそれだけの距離でも腕がふるふるしました。れいなが重いかと訊くので、とても重い、信じがたいくらいであると答えました。
330 :名無飼育さん :2012/02/17(金) 07:40
 トイレに着いて、便座に座らせ、スカートを捲り上げてパンツを下ろそうとすると、れいなはそれをも拒みました。早く出て行けとさえ言う。なんという恩知らずでしょう。ここまで連れてきてやったのは誰なのか。れいなは「ひとりでできるもん」と言いました。できやしません。くるぶしがくるくるするのですから。一人でパンツを下ろすには、両の足を踏ん張らなくてはいけません。両足を床に踏ん張らずにパンツを下ろすのがいかに大変か、やってみると分かります。案の定れいなは何度も失敗しました。そのぎこちない所作が大変かわいらしいもののように思え、私はしばらくそれを見ていました。「あかん」と言って、れいなは漏らしました。ぼちゃぼちゃと不規則な水音がするのを聞いた。結局また着替えさせてやらなくてはなりません。私はハアとため息をつきました。れいなはさすがに申し訳なく思ったのか「すまんばい」と言いました。いいよもう、しょうがない。私はれいなのパンツに手をかけ、それを脱がせました。濡れたパンツがくるくるする足首にひっかかって、脱がせにくいこと限りなかった。
 トイレットペーパーをぐるぐると引きとって、それでれいなのまんこを拭こうとしました。れいなはそれを拒みました。さすがにそれは一人でできると言うのです。私の手から紙を奪い取り、乱暴に吹きました。そんな拭き方だから、おまえは臭いのだ。不潔なのだ。言ってやりました。れいなは目を剥いて「れいな臭いと?」と言いました。どうやら自覚がなかったらしい。私は呆れました。「臭いよ。れいなちゃんはとても臭い」
 しょんぼりしました。目に見えて、れいなはしょんぼりとしました。かわいそうになった。「おじさんがキレイにしてあげるからね」私はれいなのまんこを舐めました。臭い。猛烈に臭かった。小便の臭いと、もう何日か風呂に入っていないスエタまんこの腐臭が、鼻を貫きました。私はそれでも丁寧に、ラビアの微細なシワを舌に感じながら、隅々までキレイに舐めました。れいなは始終恥ずかしそうに俯き、声を押し殺していました。それが一層かわいらしく、舌が痺れるまで、いつまでもいつまでも舐め続けました。気付くと私の舌はくるくるし始め、それはそれは猛烈にくるくるし始め、れいなはイッた。私の舌のくるくるは止まりませんでした。れいなのくるぶしのくるくるは止まりました。れいなちゃん、と言おうとして、言えない。私の舌のくるくるを、れいなの舌が絡めとることを夢想しましたが、れいなはそんなものどこ吹く風といった有様で、さっさとトイレを立つと、風呂へ向かいました。私の舌はいつまでもくるくるしました。そういうわけなので、私はれいなの名前を呼べなくなりました。今でも口の中で舌先がくるくるしております。時折、あの時のれいなのまんこの腐臭と、尿の味を思い出します。いい時代だったのだ。あの時代は、いい時代だったのだ。私はそう考えています。
331 :名無飼育さん :2012/02/17(金) 08:43
れいながさゆえりに誘われた話
332 :名無飼育さん :2012/02/17(金) 08:43
ろくすっぽ友達がいないれいながさゆえりからの誘いに歓喜したのは言うまでもなく明らかなことだった。三人は吉祥寺駅前で落ち合った。吉祥寺には井の頭公園というバカでかい公園がある。それはあまりにもバカでかいので隣の三鷹まで続いている。一組の恋仲の男女がその公園のボートに乗ると別れるというまことしやかな噂があった。さゆえりは趣味が悪いことにそういう男女を見つけては、あのカップルはいつ、どういった状況で別れるのだろう、という話をした。れいなはそういうさゆえりの辛辣な会話に新鮮な喜びを感じていた。年頃の女の子らしい、底意地の悪い会話に、れいなはいつも憧れていたからだった。
 そして今正に、目の前のカップルが破局の危機に瀕していた。二人はボートに乗ったわけではなかった。男の方がボートにでも乗るかと提案したのに、女の方が怒ったらしかったのだった。あなたはこのボートにまつわる噂を知らないのか、知らないのならば世間知らずもいいとこでむかつくし、知っていたのなら私と別れたいということだろうから尚のこと腹が立つ。男は戸惑った。軽い気持ちで、暇だから乗るか、と提案したのであって、別にボートに乗りたくてたまらないという積極的な気持ちがあるわけではなかった。第一その噂は知っていた。むしろその提案をきっかけに、「だめだよー、このボートに乗ると別れるってジンクスがあるんだよ」「じゃあやめとこうな、おれお前のこと好きでたまんないし、別れたくないよ」「やだー。何恥ずかしいこと言ってんの」「マジだから」「もー」という風にいちゃつきたかっただけなのだ。だから女の誇大妄想っぷりに苛立った。女がかわいくなくてしょうがなくなった。「なんなのお前、いつもそういうとこあるよね。そうやって変に妄想してさ」「なによ。あんたが悪いんでしょ。あんたの軽さにどんだけ私が不安になってると思ってんの」「知るかよ」
 れいなはこれを見て喜んだ。痴話喧嘩だ。すごい。こういうのドラマとかで見たことがある。ほんとにこんなことで喧嘩するバカがいるとは、およそ信じがたいが、しかし今まさにそれが起こっている。こいつらはバカだ。私よりも、数倍バカだ。
333 :名無飼育さん :2012/02/17(金) 08:43
 さゆえりはこそこそと何か耳打ちし合い、れいなの肩をドンと叩いた。そして「れいな、あの二人ヤバイよ。別れちゃう。止めてきてよ」とえりが言った。さゆが「そうそう。大変だよ。あの二人が別れたら、れいなが止めなかったせいだよ」と追随した。れいなは狼狽した。人見知りなのだ。痴話喧嘩に割って入る勇気などない。女が男の頬を思い切り叩いて、ぷいっと身を翻してつかつかと歩き去ろうとした。男が「なんなんだよお前さあ!」とその背中に追いすがる。「ほらほら! 止めないと!」さゆえりがれいなの背中をぐいぐい押す。えっ、えっ、と言ってる間に、れいなはその二人の前まで来てしまった。女が「なにあんた」と冷たい視線をくれる。れいなはへへっと笑って、後ろを振り返った。さゆえりは遠くの方で、その様子をチラチラとうかがっている。絶望した。「なんなのよ」と女が苛立った声で言う。
「いや、えーっと、喧嘩はよくないと思います」
「はあ? ほっといてよ。あんたに何の関係があんの」
「いや、えーっと、関係はないですけど」
「じゃあほっといてよ、なんなの? バカにしてんの?」
 れいなは泣きそうになった。初対面の女の人にこんなキツイ言葉を投げかけられるなんて初めてのことだったからだ。男が「やめろよ、みっともねえな」とれいなをかばった。
「は? あんたもなんなの? むかつくんだけど」
「みっともねえから止めろつってんの、他人に絡むなよ」
「コイツが悪いんじゃん」
 女はれいなを指さして「コイツが」と吐き捨てるように言った。もはやれいなは泣き出してしまった。
「泣かすなよ。こんな若い子泣かすなよ。みっともねえから」
「は?」
「みっともねえな」
「あんたさー、前から思ってたんだけど、語彙少なすぎるよね。バカみたい。あたしなんでこんな男と付き合ってたんだろ。バカみたい。もう二度と連絡しないで」
「は? 待てよ!」
 男と女は歩き去った。れいなはそこに取り残され、ますます泣けた。えりがれいなの肩をぽんと叩くと「れいなのせいだね」と言った。さゆが「そうそう。れいなが行かなかったら、あの二人、こじれることもなかったよ」と言った。れいなは何も言えなかった。しゃくりあげる。「れいな泣いてばっかでつまんない、行こうさゆ」「そうだね、えり」さゆえりもまた歩き去った。れいなはそこに取り残されて、泣けて泣けて仕方がなかった。
334 :名無飼育さん :2012/02/17(金) 08:45
「さゆとえりに遊びに誘われたのだっちゃ」
 嬉しそうに言うれいなの顔を見て、私は一瞬にしてそこまで想像し、「辛いことだね」と返事した。「楽しいっちゃよ?」と首をかしげるれいなを見て、私は泣いてしまった。お前には私がいるじゃないか。なぜそれが分からないのか。「行くな」れいなにはそれが分からない。「楽しんでくるっちゃ」バカが。勝手にしろ。勝手に傷ついてしまえばいい。そうしたら、いつでも私はお前を抱きしめる準備はできているのだ。
335 :名無飼育さん :2012/02/17(金) 10:12
キャバクラの話
336 :名無飼育さん :2012/02/17(金) 10:12
 キャバクラ、保田によく似た嬢がついた。「保田圭に似てるってよく言われるでしょ」彼女はムッとした顔をしたがすぐに笑って「猫に似てるってよく言われるよ」と言った。確かにそうかも知れないな、と思った。猫に似ているかもしれない。タバコを切らしたから、売ってくれと言った。彼女はライターを高々と掲げた。ボーイが来る。「タバコ持ってきて、ついでにドリンクも、ジントニックね」と彼女は告げる。チラリとこっちを見やって、その目は"いいでしょ? 私のことを保田圭に似てると言ったお詫びに"と語っていた。それで気が済むのなら別にいいと思った。
 まずい水割りを飲み干した。すぐに作ってくれる。「お仕事は何をされてるんですか」向こうで連れが「お前バカだなあ」と嬢の頭をぽんと叩いた。その嬢はかわいかった。れいなに似ていたかもしれない。「ねえ、無視しないでよ」と保田似が私のふとももに手を置いた。それを見た。年の頃は30ぐらいだろうか。女の年齢は顔よりも体よりもまず手に出るものだ。「いくつ?」「なにが?」「歳」「女の子にそういうこと訊いちゃだめだよ。いくつに見える?」バカバカしいと思った。合コンじゃないんだ。
 タバコが来る。一本吸った。保田似が火をつけようとしたが拒んだ。戸惑っているようだった。おれが彼女のことをふいに無視するからだ。連れについたれいな似の嬢がケラケラと笑って、こちらに身をもたせかかってきた。「あ、ごめんなさーい」香水の臭いがキツい。「クッサ」と言うと、その子は「ひどくなーい?」と笑った。保田似がここぞとばかりに「さっきからこの人私のこと無視すんだよ。ひどいよね」
 連れが言う。
「そういう奴だよ。気に入らない女の子には冷たいの。二人共嫌われてんじゃないの。おれは二人共好きだけどね。大好き。結婚して」
 れいな似はカラカラと笑って「結婚してんでしょ、さっき言ってたじゃん」
「関係ないよ、そんなの関係ない」
「私彼氏いるから無理かな」
「え? そうなの? 彼氏いくつ?」
「18」
「ガキじゃんガキ。大人の魅力を知ったほうがいいよ。金持ってるぜ」
「彼氏とラブラブだもん」
「浮気しよう浮気」
「やだー」
 保田似が静かに舌打ちした。おれがタバコを咥えると、火をつけてくれた。「れいなちゃんの方がいいの」と気軽に訊いた。おれは「そうね、そうだと思うよ」と答えた。「そっか」と言うその声が生々しく年老いていて、圭ちゃんのことが少し好きになっていた。
337 :名無飼育さん :2012/02/19(日) 11:27
 起きた。飲んで、帰ってきて、コタツに入ってそのまま寝てしまったようで、マフラーから帽子から上着から全部身につけたままだった。肩周りがどうも奇妙な感じに痛んだ。寒さのあまり変な寝方をしたものらしい。テーブルの上に飲みかけのコカコーラと菓子パンの袋が散乱していて、そういえば帰り道に小腹が空いて買ったような覚えがある。コーラは八割方残っていた。飲む。少し炭酸が抜けていたが、ひんやりと冷たく、それでこの部屋の寒さが改めて知れた。
 れいながうんうん唸って寝返りをうった。眠たげに目を開けるので「おはよう」と挨拶した。ぼんやりしている。まだ意識は夢の中やも知れぬ。コーヒーを淹れた。戻ってくると頭まですっぽりと、布団に埋まっていた。その意地汚さに少し腹が立った。
「れいなちゃん、起きなさい」
 剥ぐと、れいなの目は爛々と輝いており「起きとるばい」と言った。ますます意地汚いと思った。コーヒーを飲むか訊いた。いらないと言った。そっとおっぱいに触れる。若干の柔らかさがあるが、毛ほどの感動もない。れいなは抵抗しなかった。腹の上に跨って、腰を擦りつける。「重いっちゃ」と顔をしかめた。もう一度おっぱいに触れる。毛ほどの感動もない。私のちんこは相変わらずふにゃふにゃだった。

 カップヌードルにお湯をいれる。カレーの香りが立ち上り、れいなの鼻がぴくぴくした。食べるか、訊くと、首を横に振った。まだ布団から出ようとしない。「じゃあおかゆ食べる?」うあー、と鼻にかかった豚のような呻き声がして「寒いっちゃ」「コタツに入りなさいよ。あったかいよ」「コタツは肩が寒いばい」「肩まで入ればいいんだよ」「うあー」もぞもぞと動き、布団を体に巻きつけたまま、れいなはコタツにインした。「おかゆ食べる?」「いただくばい」「じゃあ今から作るから」えー? 今から? と非難じみた声を上げた。カップヌードルの蓋を開けた。ほかほかと湯気が立つ。「それ欲しいばい」「自分でお湯入れて、作るといいよ」「寒いばい」「わがままだな」「それが食べたいっちゃ」「いいよ」れいながカップヌードルをすする。私はおかゆを食べることにした。
 そのおかゆはおばあちゃん直伝で、まず適当に具材を茹で上げ、そこに味噌を投入、つまり味噌汁を作り、ご飯を入れる。一煮立ちさせて、卵でとじる。これが飲み明けの朝には優しく、ホッとするのだった。食べていると、れいなはまた布団を引きかぶってうとうとし始めた。「牛になるよ」「ならんばい」「なるよ」「ならんばい」「デブになる」「別に構わないのだっちゃ」「そうだろうね」おかゆを食べ終わった。食器を洗う。

 かおりんからメールがあった。それによれば彼女は今まさにひどい二日酔いらしく、昨夜のことを何も覚えていない、何かひどいことをしなかったか、心配しているようだった。いつも通り、酒乱、身の回りのあれやこれに不満たらたら、悪態をつき、果てや私やれいなや店員に絡み始めたので、タクシーに押し込んで帰らせたのだ。だから、お前は私たちにひどいことをした、謝れ、と送った。すぐに返信「すまんこ」とあった。「許さない」と送る。「許せ」と返ってくる。れいなにそのメールを見せた。「許せないよね」「どうでもいいっちゃ。眠いばい」「許されんよ」「眠いっちゃ」「じゃあ寝てろよ」「何か音楽をかけて欲しいっちゃ」「何かって何がいいの?」「なんでもいいばい」ジュディーアンドマリーがいいだろう。もっと遊んで指を鳴らして呼んでいる声がするわ。れいなはふんふんと鼻歌を歌い「懐かしいっちゃね」と言った。「オーバードライブだよ」「へー」「蜃気楼のー真ん中でー、って曲なんだっけ」「あー。忘れたばい」「ブルーティアーズ?」「なんでもいいっちゃろ」「まあね、ああそうだ」
 アイフォーンのアプリで、便利なものがあった。おぼろげでも、歌うと、曲名を教えてくれる奴。蜃気楼のー真ん中でー、歌った。サクセス! 結果を表示すると、"オーバードライブ"と出た。がっかりした。かおりんにメールする。「蜃気楼のー真ん中ーでー、って曲なんだっけ」すぐに「相川七瀬」と返ってきたので、がっかりして、「知念里奈」と返事した。それにもまたすぐに「観月ありさ」と返事があった。トゥーシャイシャイボーイやな。おれが、トゥーシャイシャイボーイだ。れいなの半分溶けているような寝顔にそっとを手を近づけて、その頬に触れた。体温と産毛を感じた。パチリと目を見開いて「冷たい手ばい」と言う。おれがトゥーシャイシャイボーイならば、れいなはトゥーピュアピュアガールなのだ。結婚したい、ふいにそう思ったのだが、それは二日酔いの気の迷いだった。半透明だった。濁っていた。
338 :名無飼育さん :2012/02/20(月) 14:59
 ごっちんがタバコを吸い過ぎるのに、あややが喫煙の害を説いた。金がかかる、肺が真っ黒になる、癌になる。ごっちんはうるさそうな顔をした。「吸いたければ私を倒してからにしなさい」ビシリと言ってやる。ので、押し倒した。あややはいやんいやんと声を上げ、ごっちんは黙々と事を為した。事後の一服、それが身に沁みる。目を細め煙を吐いた。困ったことに、タバコを吸っているごっちんの横顔が、割と好きなのだった。「ちくしょう」ごっちんの脇腹をつついた。ごっちんは「やめろよ」とうるさがる。悔しいことに、それが好きなのだった。



 さゆがぷっくりと頬を膨らませて、ここを押せと身振りで示した。えりりんが押す。ぷしゅーっと空気が抜けて、もう一度頬を膨らませ、押せ、とやる。えりりんはもう一度押す。何度か繰り返した後、さゆは満足そうに「楽しい」と笑った。えりりんは苦笑いしながら「楽しい?」と訊いた。さゆはもう一度頬を膨らませて、ここを押せ。



 圭ちゃんが洗い物をしていると、その肩を三好が抱いた。いい匂いがした。唇がぷるんとしている。「後でね」圭ちゃんは苦笑いをしながら、食器を洗う手を止めなかった。それが不服だった。「今すぐじゃないと嫌です」甘えた声に欲情して、泡の付いた手もそのままに、顎を掴み、尖らせた唇に吸い付いた。満足気な鼻息が頬を抜けた。押し倒して、服を脱がそうとすると「手、洗ってください」と冷めた声がする。興が削がれて、洗い物に戻った。不服だった。油汚れがガンコだった。



 かおりんと裕ちゃんは一つベッドの中で目覚めた。裕ちゃんの顔を見る。一晩越しの化粧がもう老いの醜さを隠せないことに気付いた。「老けたね」と言ったかおりんに「あんたもたいがいなんやで、それを言わんうちの優しさに気付いて欲しいわ」「言ったじゃん」「おあいこやって」気分が悪かった。「お風呂借りるから」洗面台の鏡に映して見た。まだまだイケると思う。ババアの嫉妬は恐ろしい。もう二度と会わない。シャワーを使って、上がったとき、取り揃えられているバスタオルや着替えに、所帯染みたババ臭さを感じ、それがとても心地良いことが悔しく、形の崩れ始めた両乳を揉み、「まだまだ」と強がってみることで、別に何も解決したようには思えなかったから、老いは恐ろしい。
339 :名無飼育さん :2012/02/20(月) 16:18
 夕暮れに近い、日がぼやぼやと傾き始める頃、れいなと二人で将棋を指した。二人とも定石を知らず、ただ駒の動かし方を知っているぐらいものだから、立ち上がりは平凡、歩を突いてみたり、金や銀を上げてみたりするのに「こうすると将棋っぽい」以上の意図は無く、いつまでも互いの手の内で駒を動かしているばかりで、勝負の端緒を掴みかねていた。そこで思い切って角で切り込んだ。れいなは歩が取られてしまったことを悔しがり、お返しと言わんばかりに、飛車で猛烈に切り込んできた。桂馬が取られた。
 互いの手駒をひとしきり食い散らかしたあと、どう勝負をつけたものか分からなかった。王手王手と繰り返すのだが、先を読むということができず、場当たり的に王手しているだけなので、いつまで経っても詰まなかった。あたりはもう薄暗くなっていて、もはや盤上がよく見えない。れいなは持った手駒をぽいと投げ捨てて「飽きたばい」と言った。私も飽きていたが、中途半端な形で終わるのはどうも納得がいかない。「じゃあれいなちゃんの負けってことね」「なぜそうなるばい」「将棋に引き分けなんて無いんだよ」うう、と悔しそうに唸り、駒を拾った。
 そこから一時間ほどして、勝負がついた。勝負の分かれ目は、私の飛車角がれいなに取られたことだった。ほぼ丸裸になった私の玉将に、四枚の飛車角による猛攻は堪えた。例えて言うならば、両手両足を縛られてケツ穴を犯されるようなものだ。れいなの白く短い指が私のケツ穴からウラジオストックを経由して金将へ伸び、金将から玉将へ、竿竹屋はなぜ潰れないのか? という疑問が生じた。極まっていた。私はガチガチに極まっていた。れいなの勝ち誇った笑みを見る。その顔が白濁する様を想像して、にやけた。「何を笑っとるばい」「いいかれいな。将棋には負けたが、お前との勝負には勝ったのだ」午後五時の時報が鳴った。夜は長い。
340 :名無飼育さん :2012/02/20(月) 20:10
>>338
やすみよが!
しかも読みやすくてとてもいいです
341 :名無飼育さん :2012/02/20(月) 21:57
 いづれの御時にか、三好某という人ありけり。遠方への出張命じられければ、詮方なく、命に従ひて、馬のはなむけしけるほどに、保田の大納言来たりて、その様めざましくありけん。某、うち叫びて、かの人の御身かき抱きたり。いかばかり泣けども、覆ること能はず。大納言、やおら接吻し候へば、感極まりて、
 逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし
口走りたる。某、しどろもどろに「よく分かりません」と発して、しかる後、飛行機は出た。
342 :名無飼育さん :2012/02/21(火) 15:49
やすみよいい味出してますねw
343 :名無飼育さん :2012/02/22(水) 03:09
続飼育支部 論考『娘。小説とはなにか』へ寄せて
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/mirage/1322986681/26-28n

 娘。小説は書き手が彼女らを抱きしめ、それを衆人に見せつけ、「私はこんなにも娘。を愛しているのだ」と主張する、そしてできればそれを褒めてもらいたい、なんとも実に気色悪い営みの残響です。自己愛です。狼であればエンタメを狙って、ハナから褒められようなど、小汚い、安易な、自己肯定感の充足に走り、いやいや、とはいえ、それもなかなか叶いませんが、m-seekまで来て、そんなことはしとうない。「必要性」や「交換不可能性」などという話がありますが、そういうのはあまり考えなくても良いことだ、という気がします。書き手がある話を書こうと思い立ったとき、ふとその時その子のことを思ったのならば、それが必要性であって交換不可能性です。きっとその子以外ではその話は書けないのだ。その書き手のみが抱いている必要性なり交換不可能性なりが読み手に伝わるか否かという話になりますと、技術がいるんじゃないですか、わかりませんが、小説の書き方、プロットの立て方のような、そういう割とちゃんとしたことをやる必要がある気がします。ややこしい。それはめんどうだ。そうやってめんどくさがっていると「誰が出てもいい話」などというケチがつき、これに憤慨するわけですが、「お前にとってはそうなんだろうがな、おれにとってはそうではないのだよ」と、私は非常に憤慨するわけですが、まあ自分の筆が至らず、書けていないのだからしょうがない、あきらめましょう。ヘタクソなのがあかんのだ。反省して、その自身が抱いている必要性なり交換不可能性なりを明示的に、あますところなく、書く、ということを目指してもいいのです。技術を磨こう。本を読もう。「小説」なるものを書こう。読者を魅了する素敵な話をだね、書こうじゃないか。ですが、そうなりますと、頭の中が「とにかく褒められたい」ということでいっぱいになってしまい、どうもいけません。書くのがつまらなくなる。私にとって娘。小説を書く第一義的な目的は「彼女らをあますところなく抱きしめたい」ということです。これが少なくとも満たされなければ、お話になりません。時として、時としてどころじゃありませんが、「褒めてもらいたい」というところは満たせないでしょう、が、別にそれだけです。何の問題もありません。何の問題もないんです。言い聞かせています。自分に言い聞かせます。抱きしめていたいだけです。そう思い込んで、「褒められたい」のを封じ込めています。別に封じ込める必要もないので、やはり褒められたいのは褒められたいのです。意志が弱い。抱きしめて、見せつけて、褒められる、というのがいいと思います。最高です。オナニーを褒められるだなんて、そんなことなかなかない。スタイリッシュにオナニーを究めて行きましょう。向こう岸までザーメンを飛ばそう。ぴゅっぴゅっ。まあ、そう、上手くはいきませんが、とりあえず娘。小説に条件みたいなものはないと思います。それぞれがそれぞれのやり方で抱きしめるだけです。私は人がどうやって娘。を抱きしめているのかに興味があります。どんなやり方で、気持良く抱きしめることができるのだろうか、新たなる快感に出会えるのだろうか、と思います。人が娘。を情熱的にかき抱いている様は素敵です。好きです。右手が忙しなく動くというものです。ぴゅっぴゅっ。湯を沸かした鍋にザーメンを発射すると卵の白身のように固まるのをご存知でしたか。私は中学生のときに気付きました。れいなちゃんたら気付かず飲んだ。私はそれを見てグッと来ました。いいんだ、と思った。これが、いいんだ。
344 :みおち○こ :2012/02/22(水) 22:17
あざーっす!
娘。小説を抱きしめていたい
345 :名無飼育さん :2012/02/23(木) 17:14
 コンビニへ向かって歩いていると道端で屈み込んでいる女の子を見かけた。帰り道にもまだ居た。体調不良や便意などによる危機に瀕している可能性が頭をよぎり、これを見捨てるということはつまり私が人間では無くなるということだと考えた。また「泥酔した女の子を介抱するフリをして自宅へ持ち帰る」というストーリーのAV、それの冒頭の一シーンが頭をよぎったことは言うまでもない。しかし今は真っ昼間であり、泥酔している様子もない。酔っ払っていればしゃがみこんでいてもふらふらするものだ。何かに身をもたせかけなければしゃがみこむということはできない。そうか、ではいわゆる露出モノ、「言われるがままピンクローターを仕込んで街中を闊歩し、唐突に入れられるスイッチ、身を走り抜ける快感に思わずしゃがみこんで、そこから一歩も動けなくなる。それを影から見て楽しむ男」ということか。次に考えられるのはそれしかない。私は辺りを見回した。人影は無い。
 どういうことだろう。注意して彼女を見た。横顔はまだあどけなく、十代かそこらに見える。じっと地面を見つめているのだが、その視線の先には何もない。便意や生理痛のあまりそこにしゃがみこんでいるわけではなさそうである。良かった、と思った。何が良いものかよくわからないが、とりあえず、この子はそうして、何かの苦しみに耐えているわけではないのだ。それはとても喜ばしいことのように思えた。私の歩みののろさを不審に思ったか、彼女と目が合った。ので、会釈した。パッと立ち上がると、ケイベツ的な視線をくれ、すたすたと歩き去った。彼女の後ろ姿をしばし見送る。いけ好かない女だ。顔はちょっとかわいかったし、尻もぷりっとして美味そうではあったが、いけ好かない女だ。
 私は彼女がそうしていたようにそこに屈み込んで、彼女がそうしていたように地面を見た。いくつかのブロックを組み合わせたその隙間に、ぽちっと暗い穴が空いていて、そこから蟻が次々と出入りするようだった。なるほど、これに見耽っていたのかと納得がいった。昨日見たAVのことを思い出した。無修正の、ぽっかりと空いた膣穴に、黒々とした極太のディルドが出し入れされる。女優が見切れた画面の外でわざとらしく喘ぎ、映像は嫌になるほど鮮明だった。23インチの画面いっぱいに映し出されるどす黒い毛むくじゃらの女性器に、異物が出入りしているのを見ても、興奮のしようがなかった。それはただ単に「女性器にディルドーが出入りしている」映像だった。そんなものはポルノではない。そんなものに官能はない。蟻は無尽蔵に穴から這い出し、無尽蔵にそこに入っていった。
346 :名無飼育さん :2012/02/23(木) 17:14
「何してるんですか」
 頭上から声がかかった。
「蟻を見てるんです」
「蟻?」
 声の主は屈み込んで、その髪がさらりと鳴るのが耳元で聞こえた。シャンプーの香りが爽やかだった。
「ああ、本当ですね。蟻ですね」
「蟻でしょう」
「蟻なんてすごく久しぶりに見た気がします」
「そうですよね。ぼくもすごく久しぶりに見ました」
「楽しいですか」
「楽しいですよ」
 言って、彼女の顔を間近で見た。頬の産毛が逆光で輝いて見えた。
「あなたもさっき、ここで蟻を見ていたんじゃなかったんですか」
 目が合ったが、合わなかった。どこを見ているのかよく分からない目をしていた。鼻の形がちょっと変だった。それでも、全体としてあどけないかわいらしさがあるのだから、不思議なものだった。
「私は何も見ていませんでしたヨ」
 と彼女は言った。私は彼女の手を取って「帰ろうか」と言った。「そうするばい」と返事があった。れいなの目には一体何が見えているのか、確かめる必要を感じた。
347 :名無飼育さん :2012/02/23(木) 18:08
 飯田が「最近ネコ欲しいんだよね」と言ったのに、保田の耳がピクリと反応した。安倍が「分かるー」とはしゃいだ声を上げ、中澤が「いや、なっち多分勘違いしとるからな」とたしなめた。
「カオリもいきなりなんやねん。下品やで」
「裕ちゃんこそ下品だよ。カオリはふつーの意味で、ネコが欲しいの、こねこ」
「なんや、ほうか」
「そうだよ。どんだけ溜まってんだよお前」
「口悪いな。ええ嫁さんになれへんで」
「立派に嫁やってますから」
 でもさー、と安倍が割って入る。
「うちらネコとか、ペット飼えないっしょ。世話できないもん」
「まあなっちは男の飼い慣らし方も知らんおこちゃまやからな、ネコは男より難しいで」
「裕ちゃんさあ、失礼だよ。なっちだって男の一人や二人」
「いいようにもてあそばれてなあ」
「うるさいなあ!」
 三毛猫がいい、と飯田が言った。外国産の、か弱い感じのネコじゃなくて、なんかたくましそうな感じの雄猫がいい。保田がおどおどと「私がなろうか?」と言ったのに、「は? 圭ちゃんなに言ってんの?」と飯田が突き放すので、みんな笑った。保田は少し悲しそうに肩をすくめた。
348 :名無飼育さん :2012/02/23(木) 20:29
 捨て猫を拾った。あまりにも切実な叫び声を上げ、脚元にまとわりついてうざったいことこの上なく、その必死な様が不憫に思えたからである。れいなが「どうしたっちゃ」と怪訝な顔で訊くので「拾った」とだけ応えて、とりあえず風呂にいれてやることにした。毛皮がぼろぼろに汚れていて、どうやらいたる所、怪我をしているようだった。お湯をかけると染みるかもしれんなあと思ったのだけど、こんな不潔な状態で家の中をうろうろされては困る。すまんすまんと言いながら、放水した。「やめて! 染みる!」と叫んだので驚いた。圭ちゃんだった。
「何してんの」
「何って、猫になっちゃって」
「なんでですか、どうかしてますよ」
「敬語やめて」
「どうかしてるよお前」
「カオリがさあ」
 風呂場の扉が開き、れいなが「あ、保田さんだ」と言った。「田中ちゃん久しぶり」と手を振る。
「かおりんが何だって?」
「いや、カオリが猫欲しいっていうからさ、猫になった」
「なれんの?」
「なってたじゃん、さっきまで」
「ああそうね、まあいいや、とりあえず体洗えよ、くっせえんだよお前」
「失礼な!」
 風呂を出た。れいなもついてきた。「猫はどこにいったばい」と訊くので「あの猫圭ちゃんだったんだよ」と答えた。へえ、と少し残念そうな顔をした。「何? 猫飼いたかった?」こくりと頷いた。
「最近は捨て猫とかあんまいないからね、わざわざ貰うのも面倒だし、飼ったら飼ったで色々お金かかるからね、猫とか、いらないよ」
「じゃあなんで拾ってきたばい」
 そういえばなんでだろうか、と思った。少し考えて「だってあんまりにも不憫だったから」と答えた。れいなはあまり納得していないようだった。圭ちゃんのためのバスタオルや着替えや絆創膏などを用意させた。
 風呂あがりの圭ちゃんは「ビールないの?」などと冷蔵庫を開け、まるで当たり前の我が家のように振る舞うのでムッとした。
「ずうずうしい」
「あ、ごめん。遠慮とかした方がいい?」
「まあ別にいいけど」
「めんごめんご。許してちょんまげ」
「やっぱ許さねえわ、お前、ビール買ってこい」
「お金無い」
 千円渡した。こんなんじゃいくらも買えないよと文句を言うので、もう千円渡した。
「じゃ、ちょっくら行ってきます。なんか食べもんとかいる? ていうか田中ちゃん何飲む? ビールでいいの?」
349 :名無飼育さん :2012/02/23(木) 20:29
 戻ってきて、しばらくたわいもない雑談をした。れいなが眠たそうに目を擦り始めたのを見て、「絶対に先に寝かせねえぞ」とすごんだ。れいなは「はい」と言ったが、やはり眠たそうだった。一体いつから猫になって、拾われるまで何をしていたのか訊いた。圭ちゃんが語るには、昨日の昼から猫になった。カオリの家から逃げ出して、丸一日街をうろついていた。いい加減疲れて、腹も減ったところで、丁度良くあんたを見つけたので、なんとか拾ってもらおうと思った。なるほどねえとおれは言った。「カオリの家から逃げ出した」というところが気になったので、訊いた。圭ちゃんは笑いながら「あいつの性癖はオカシイ」と言った。
「どういう性癖なの?」
「小動物をいたぶるのが好きなんだよ。びっくりした」
「ああ、じゃあその怪我はかおりんにやられたのか」
「そうそう」
 圭ちゃんは顔にべたべたと貼った絆創膏を撫でて、顔をしかめた。
「ていうかどうやったら猫になれんの、なりたいんだけど」
「やめときなよ。いいもんじゃないよ。意外といいもんじゃない」
「へえ」
「なり方はね、簡単だよ。猫になりたい、って強く願えばいいんだよ」
「なんじゃそら」
「ほら、念じてごらんなさいよ」
「猫になったって別にいいことないんでしょ」
「そうだけど、まあやってみなって、風呂入ったら治るから」
「何そのらんまみたいな」
「しらんけどそうなってんだからやりゃあいいんだよ」
 目を閉じて、強く念じた。猫になりたい。目を開けて、「なった?」と訊いたら、声が出なかった。にゃあと言った。おれが、にゃあと言ったのだ。かわいらしい声で鳴いたのだ。驚いた。圭ちゃんは「そうそう」と満足気に笑った。ビールを飲もうと思って缶に手を伸ばすと、猫の手が缶に向かって伸びていた。不満だった。不便だこれは。早速風呂に入れてもらおうと思って、にゃあにゃあと鳴いた。「なに言ってんだか分かんないよ」と圭ちゃんは意地悪そうな顔をした。嘘をつけ。絶対分かっているはずだ。風呂場まで走り、扉をガリガリとやって、何度も大きな声で鳴いた。にゃあにゃあ。リビングの方で圭ちゃんがケラケラ笑う声が聞こえた。だまされた、という気がした。よく分からないが、おれはだまされたのだ。おれもきっと圭ちゃんにいたぶられるのだ。そら恐ろしい。背後に気配を感じ、振り向くと、れいなが私を見下ろしていた。「おいで」と言って伸ばしたその腕に飛びついて、私はれいなに抱かれていたい。
350 :名無飼育さん :2012/02/24(金) 16:03
 ごっちんの吸うマルボロメンソールライトの香りが鼻についた。「メンソールの何が美味いの」と非難がましく言うと、「別に」と答えた。煙が出ればなんでもいいんだよ、と言った。わかばをあげた。ひと吸いして「安っぽい味がする」と文句を言う。「じゃあ吸わなきゃいいよ」それもそうだね、と言って消した。「ごっちんにはさあ、セブンスターとか吸ってて欲しいんだよね」「なにそれ」「NANAだよNANA、女がセブンスター吸ってたらかっこいいじゃん」「セブンスター吸ってたのってナナだったっけ」「忘れたけど、誰か吸ってた気がするよ」ごっちんは漫画にはあまり興味がないと言った。そもそも、私が何のタバコを吸おうが勝手じゃん。それはとても最もなことだ。もし結婚して、子どもなんか作ろうと思った日には、やっぱりタバコを止めるのか、止めれるのか、訊いた。さあ、そのときになってみないと分からない、と言った。それもやはりとても最もなことだ。ごっちんの言うことはいつも正しいし、ごっちんのやることもまたいつも正しいのだった。私がごっちんに対してできることと言えば、ごっちんの正しさをいつも目の当たりにし、「絶対的に正しい」と感じることだけだった。「ぼくはこれから一体どうしたらいいんでしょう」と訊いた。ごっちんは笑いながら「知らない」と言って、マルボロメンソールライトを一本くれた。吸った。メンソールが爽やかで、私はこれから爽やかに生きていこうと思った。それが多分正しいのだと思った。
351 :名無飼育さん :2012/02/24(金) 18:03
タクシードライバーの話
352 :名無飼育さん :2012/02/24(金) 18:04
 私は保田圭になった。圭ちゃんは丁度タクシーに乗るところで、「羽田まで」と言った。運転手がバックミラー、チラリと見て、はい、と答えた。まっすぐにフロントガラス越しの景色を見る。まだ昼だった。目を瞑って、すぐに真っ暗になった。目を覚ますともう羽田だった。金を払い、歩く。搭乗口はすぐそこ。途中で軽くサンドイッチなど買い、何番だか分からない時計の下で、食べながら、お腹を抱えて小さくなった。生理が来ていた。圭ちゃんは舌打ちする。ハンドバッグを持って便所へ向かった。
 女の生理にまつわるあれこれは男にとって新鮮な驚きで、ウィスパーボディスリムのつけ心地はボディに対して実にウィスパーでありスリムであるということ、生理というのは実に不快であるということ、そういうことが分かった。圭ちゃんは何度も舌打ちした。頭痛すらした。こんな苦痛を味わっているとはつゆ知らず、生理で機嫌が悪くなる女を見下して、呪っていたことを私は恥じた。血で汚れた下着は三角コーナーに捨てた。もったいないと少し思ったが、圭ちゃんの下着など別にどうでもいいだろう。もったいないって何が?
 飛行機に乗って、安全上のあれこれ、説明されている内にまたすぐ寝た。よく眠れるものだと思う。私は真っ暗な瞼の裏を見ながら、圭ちゃんの感情を探っていた。身体感覚は分かるのだが、心境や感情や思考などといったものは良くわからない。心拍は平常通りで、だからまあごく普通の状態なのだろうと思った。頭が重いのは生理のせいか、体全体の感覚がぼんやりして来たところで意識がない。夢も見ない。疲れている。
353 :名無飼育さん :2012/02/24(金) 18:04
 サッポロ、思い出ポロポロ、いくつかの感情に似た幻影が目の前を通り過ぎた気がしたが、それが何なのだかよく分からない。タクシーを捕まえて、滑らかに住所を口にする。運転手はまたバックミラーを一瞥、はい、と答える。タクシーの運転手というのはどこでもこうなのか。私は不快だったのだけど、圭ちゃんがどう思っているのかは分からなかった。どうでもいいんだろう。今度は寝なかった。さすがに眠りすぎたらしい。フロントガラス越しに見える景色はもう夜で、まだまだ冬だった。都内からそのままの、着たきりスズメのコートでは、北海道は寒すぎる。何かダウンとか、買って欲しいものだなあと思ったのだけど、鳥肌が立つのも構わず、圭ちゃんは何度も舌打ちした。寒さに対してか、生理痛に対してか、それはよく分からないが、疲れていたし、苛立っていた。
 降り立ったマンション、そこそこ良さ気な雰囲気で、集合ポストに目を走らす。三好という名前を見つけて、そこでしばらく立ち尽くした。部屋番号を押して、呼び鈴を鳴らす。出ない。いないらしい。携帯を取り出し、電話を掛けてみる。出ない。仕事か、遊びか、分からんが、どうやらお取り込み中で、いないらしい。ため息を一つついてロビーを出た。とても寒くて、「寒っ」と口走った。何かとても久しぶりに圭ちゃんの声を聞いた気がした。圭ちゃんはクククと笑って、もう一度、小さく「寒いよ」と言った。私は帰りたかった。家のあたたかい布団にくるまって寝たかった。帰ろうよ、と言ってみたのだが、届くはずもない。「早く帰ってこいよ」と圭ちゃんはぼやいた。
 周りから見れば、圭ちゃんはロビーに立ち尽くしている不審な女だった。「何してるんですか」と声をかけられた。「人を待ってるんです」「ここでじゃなくて、他で、なんか、店とかあるんだがら、そこで待っててくださいよ」「やですよ。寒いもん」「知りませんよ。そんな格好してる方がいけないんですよ」「んなこと言ったって」「警備会社の人呼びますんで」「分かりましたよ。出ます」ロビーを出た。寒さが身を切るし、生理の不快感、早足で喫茶店など探したが、見つからない。マンションからあまり遠く離れてしまうのも嫌なようで、近辺をぐるぐるしたのだが、完全に住宅街だった。「店なんてどこにあんだよ、あんにゃろう」私も同じ気持ちだった。
354 :名無飼育さん :2012/02/24(金) 18:04
 結局、マンションの近くのベンチで、待つことにしたらしかった。恐ろしく寒い。圭ちゃんはちょっと頭がおかしい。ここまでして待つ必要はない。タクシーを拾って、ホテルなりなんなり、取ればいいだけの話で、それからゆっくりと三好と連絡を取って、どこか、暖かい場所で食事でもすればいいのだ。とにかく暖かい場所へ行った方がいい。どうかしてる。圭ちゃんは携帯を取り出したが、あまりの寒さに指がかじかんで、満足に力が入らないし、携帯はほとんど氷のような冷たさだった。頭も痛いし、腰のあたりの鈍痛は耐えがたいものがあった。はやく三好よ来てくれ、という私の切実な願いが一部届いたのだか、電話が鳴った。「もしもし? 保田さん?」「そうだよ。寒い。今どこいんの」「どこって、もうすぐ家ですよ」「家の前のさー、ベンチにいるから」「え? なんでですか?」「お前が家にいないからだよ。寒い。早くしないと圭ちゃん死んじゃう」「え? いや、ちょっと、よくわかんないんですけど」「だから今お前んちの前のベンチにいるから」「なんでですか?」「そんなんいいから、殺す気か、はやく来てよ」「いやでも今あれなんで」「なによ」「あれなんですよ」「なんだよ」圭ちゃんがイライラしているのは分かった。声の調子が聞いたことのないほど尖っていた。圭ちゃんはいつも優しく、仏のような慈愛に満ちた声しか出せないものだと思っていたが、それは勘違いだったらしい。「とりあえず、行きますね。死なれたら困るんで」「頼むよ」
 三好が来た。ふかふかのダウンを着ていて、暖かそうで、羨ましかった。「来るなら来るって連絡くださいよ」三好は何故か少し機嫌が悪そうで、それに圭ちゃんはまた少し苛立ったようだった。「なんなの? 嬉しくないわけ?」手を広げて「サプラーイズ!」と言った。ちょっと笑った。「いや、こっちだって色々あるんですよ」「色々って何。とにかく寒いから、家入れて」「無理ですよ」「なんで」「ほら、色々ね、今部屋汚いですし」「なんだなんだ、男でもできたのか」三好の顔が少し引きつった。圭ちゃんはベンチから立ち上がる。「あっそう、帰るわ」「いや、違くて」「知らんがな。何が違うの? また明日、連絡するから。ご飯でも食べよう」「いやいや、違うんですって、ほんと、そういうんじゃなくて」「いいよもう」圭ちゃんは歩いた。三好が追いすがる。「いいですよ。家来てくださいよ」引かれた手をしばらく見た。顔を見る。なにか必死の形相だった。「じゃあさ」「はい」「タクシー呼んで」「いや、だから、家来てくださいよ」「明日行くから」「いや、今」「明日。タクシー呼べよ」「だから、分かってくださいよ」「お前こそ分かれよ」
 ありきたりな痴話喧嘩に私は飽きていた。三好も三好だが、圭ちゃんも圭ちゃんだ、と私は思った。どっちでもいいから、とにかく暖かい場所へ行きたい。三好は諦めて、タクシーを呼んだ。来るまでの間、ぽつぽつと、こっちの生活はどうか、慣れたか、しんどくはないかなど圭ちゃんが尋ね、三好がそれに一問一答方式で答えた。そんな感じなのですぐに話題は尽きた。圭ちゃんは三好の顔をじっと見て「男ねえ」と笑った。「だから違いますよ」「じゃあ女?」「違いますからね」「まあ別にいいんだけどさ」タクシーが来たので、乗った。「じゃあ明日」と手を振った。車内が暖かくて、私は本当に安心した。運転手が相変わらず、バックミラー越しに視線を投げ、その目が少し驚いたように瞠った。両頬に涙の感触があった。「どちらまで」と言う運転手の声が遠くに聞こえ、圭ちゃんは「どちらまででも」と答えた。はい、と返事、そのままゆっくりと発車して、運転手は今日の天気予報が外れた話と、野球の話ばかり、何度も繰り返す。
355 :名無飼育さん :2012/02/25(土) 04:03
狼の話
356 :名無飼育さん :2012/02/25(土) 04:03
 昼、さゆと会った。シャレオツな喫茶店。さゆは嬉しそうにさっき買ったばかりらしい雑貨を机いっぱいに広げ、一つ一つ手に取って、説明を始めた。これのどこが気に入ったのか、店内におけるさゆとその雑貨とのファーストコンタクト、その類まれなる素晴らしいインプレッション、オブセッション、感動的な出会いについて、また今現在、少し時間を置いて対峙したさゆとその雑貨との間に生じたセカンドコンタクト、やはりそれも実にインクレジブルな感じにファンタスティックであったらしく、
「本当に、本当に買って良かった」
 頬を赤く染め、滔々と語ること止まず、それを遮って、
「えりりんは?」
 と訊いた。
「さあ? 知らないよ。えりのことなんか」
 言って、机の上の雑貨を片付け始めたので安心したのも束の間、今度は今日身に付けているアクセサリーについて、これもまた一つ一つ、どこで買ったもので、買った時のさゆの気持ちはどんな感じで、今これを身に付けているさゆの気分はどんだけアゲアゲなのか、あげぽよなのか。
「好きなものだけに囲まれて暮らしたい」
 キラキラ輝くさゆの瞳は私を見ておらず、もっと先の、どこか遠い世界へ向けられていて、私はもう一度「えりりんは?」と訊いた。
「さゆのその視線の先にはえりりんがいるのかな?」
「知らない」
 言ったきり、押し黙った。とうの昔にコーヒーは冷めていた。それをほとんど舐めるようにして飲んだ。ちびりちびりと、全然減らない。私は手を上げて、お会計を頼んだ。さゆのコーヒーは全部私が飲んだ。冷めていてまずかった。
357 :名無飼育さん :2012/02/25(土) 04:04
 夜、えりりんと会った。シャレオツなバー。えりりんは何を訊いても「あはー」と言った。今日は雨が降り続いて、寒くてしょうがなかったねえ、と言っても、あはー、と答えるし、こんな寒い雨が降るような休日に、一体えりりんは何をして過ごすんだい、と訊いても、あはー、と答えた。しょうがないので、私は昨日読んだ本の話をした。
 中世、いや近世ぐらいの話だったろうか。歴史に詳しくないのでよく分からないのだけど、まあとにかく伯爵様とか、そういうのが一般的な時代、ああでも革命とかいう話があったから、もしかすると近代なのかもしれないが、まあそんなことはどうでもいいんだ。とにかくお話の主人公は伯爵様で、これが恋をするわけだ。それはそれは猛烈な恋だ。だが当然、ただラブラブしておしまい、というわけではない。恋人に裏切られる。具体的に言うと、不倫されるわけです。そして伯爵様は気が弱い、ほら、田舎の伯爵様だったからねえ、森の自然と戯れているのがおれだ、都会の喧騒は好かん、みたいな、いや、まあ「好かん」と言えるような気の強さもないような、情けない人だったから、間男に対しても、恋人に対しても、何も言えない。嫉妬する。鬱屈する。そうすると、どうなったと思うね?
 えりりんはやはり「あはー」と言った。
 そうだね、そう、伯爵様は狼になってしまったのです。狼になっても、伯爵様の気の弱さ、情けなさは相変わらずで、それでだから、恋人と間男を食い殺すみたいな話じゃないんだよ。違うんだ。おしまいは、ああ、なんだったっけなあ、忘れちまったけど、とにかく、二人は元の鞘に戻って、ハッピーエンドで終わるんだ。それはそれは感動的なラブストーリーだったよ。
 私は二杯目のビールを頼んだ。
「だからね、えりりん。さゆはどうした?」
「知らない」
「どっちが狼になるんだい」
「あは。さゆかなあ」
「悪い女だなあ」
 えりりんの首元に、見せつけるように映えているその印が、いつかまた元通り、さゆのものになるように願った。
358 :名無飼育さん :2012/02/25(土) 17:49
 ダルビッシュと野球拳をしている夢を見た。ダルはとても楽しそうだった。本当は野球などしたくないのではないか、彼はただ野球拳がしたかっただけなのではないか、と思った。ダルビッシュの不幸に胸が締め付けられる思いがした。かわいそうなダル。嫁にも仕事にも恵まれない、とてもとてもかわいそうなダル。しかも追い打ちをかけるようにダルのちんこは意外と小さかった。しかし私のちんこは、それに比べても、驚くほど小さかった。
「だからどうしたばい」
 れいなが言った。
「なんか負けた気がしたんだよねえ」
「ちんこの大きさを比べるまでもなく、おっさんはダルビッシュに何も勝てていないのだっちゃ」
 正しい。れいなが正しいことを言った。私は悲しくなってしまい、慰めて欲しくなり、そんな正しい言葉など聞きたくなく、ただれいなに、お前はそれでいいのだと、いやむしろ、それがいいのだと、言って欲しかったのである。
「れいなちゃん、慰めてよ。慰めて、ぼくを認めてよ!」
「ガキみたいなこと言ってるんじゃなかとよ」
「いやだいやだ!」
 れいなが鼻で笑うので、私はズボンを下ろした。そして「慰めてよ!」と叫んだ。
「今日は寒いっちゃね」
「そうだね」
 れいなはてるてる坊主を作って、窓際に吊るした。それは妙に頭でっかちな奇形で、その重みで逆さになってしまう。てるてる坊主というよりも、まるで爆弾だった。「このまま雨が止まなければいいのだっちゃ」と言った。「そうだね」と頷いて、私はもう一つてるてる坊主を作った。天に向かって正しく直立する奴を作った。れいなはそれを撫で、こすり上げ、発射したので、私のてるてる坊主もまた俯きがちに垂れ下がってしまい、明日もきっと雨なんだと思った。
359 :名無飼育さん :2012/02/27(月) 01:33
 真野ちゃんがかわいい。ほとんど天使のような愛らしさである。往年のののたん以来の天使っぷりを私は見た。対してれいな、お前という奴は、見返せば見返すほど朽ちたワラブキ小屋に多彩なカラーリングを施し、その本来のチープさを派手な色合いで押し殺しているような調子で、分かるぞ、臭ってくる、土の香り、牛糞の香りがするお前は、無理をしている。そうはいえども、とりあえず一定のかわいらしさを保ってはいるあたりが貴様のこずるさであり意地汚さであり取り留めのない幼い身体つきであり入れ違いにぐるぐるする内斜視なのである。
「お前はこの真野ちゃんの写真を見てどう思うね?」
 れいなは首をかしげて「かわいいっちゃ」と言った。
 馬鹿野郎! そういうことを聞いているんじゃないんだよ! 当たり前じゃないか! 真野ちゃんがかわいいのは当たり前じゃないか! それはキュウリを見て「キュウリですね」と言うようなバカバカしさであり、しかしそのトートロジーはいつも正しいので、れいなは正しいことを言った。そうだ、お前は正しいことを言ったのだ。それは誇っていい。胸を張ってもいいと思うよ。だけどね、私が訊きたかったのはそういうことではない。君は、いや、お前は、この真野ちゃんの天使のような、胸を突き抜けるかわいらしい写真を見て、我が身を省みることがないのか。ふがいなく思わないのか。自分のチープさや意地汚さを、ふがいないとは思わないのか。人間として、人間としてだ、貴様のその薄っぺらい胸のうちにはある種の妬みや劣等感、そういうものがフツフツと沸いてきて、この極楽的にかわいらしい真野ちゃんの写真を見て「かわいくないばい」の捨て台詞ぐらい吐いてしかるべきではないのか。そして泣くべきではないのか。真野ちゃんのかわいらしさに毛ほども届かない自分が、モーニング娘。の看板を掲げて、堂々と、それなりの、いっぱしのアイドルヅラをしていることに、もっと恐れおののくべきだし、責任を感じるべきだし、つまりお前はこの真野ちゃんの写真に対して敬礼し、コウベを垂れ、「とても敵いません」と敗北を認めるべきであって、悔し涙を流しながら嗚咽を噛み殺し、唇を噛み締めて、グッと拳を握り、握ったその手を使えずに、言葉を無くしていないかい? 今から一緒に、これから一緒に、真野ちゃんを殴りに行こうぜ。れいなよりかわいいだなんて許せない!
360 :名無飼育さん :2012/02/27(月) 17:35
 あまりにも寒い日が続くので温泉旅行へ行こうということになった。もちろん電車ではつまらないからレンタカーを借りるのである。二人きりというのも乙なものだが、やはりそれは少し寂しい。手当たり次第に誘うと、圭ちゃんとごっちんが乗った。こうなればついでによっすぃーさんと市井さんあたりにも来ていただいて、是非温泉でオリジナルプッチモニを再現していただきたいところだね。私が笑いながらそう言うと、ごっちんがいきなり泣き始め、圭ちゃんが私を睨んだ。窮して、「じゃあ行こうか」とて発車した。
 どこかしら重苦しい空気の中、カーステレオから"3rdLOVEパラダイス"だけが陽気に鳴り響き、何度目かの信号で止まったあたりで違和感に気付いた。「あれ、れいなは?」圭ちゃんとごっちんは顔を見合わせて「知らない」と言った。ごっちんはもうけろりと泣き止んでいた。「置いて来ちゃったんじゃない?」急いで∪ターン、戻ると、しゃがみこんでサメザメと泣いているれいなが居た。
「ごめんごめん。ごっちんの涙に慌ててしまって」
 謝ったのだが、れいなはツンとして「行かないっちゃ」と言った。
「三人で楽しんでくればいいのだっちゃ」
 れいなのカバンはパンパンに膨らんでいた。昨日の晩、折角だからとあれもこれも詰め込んでいるれいなの楽しげな姿が思い出された。一体何日温泉に泊まるつもりなのかと訝しむほどに、ありとあらゆるカードゲーム、テレビゲームの類が詰め込まれていた。れいなは殊に四人でやるWiiを楽しみにしているようだった。「おじさんと二人でやってもあまり盛り上がらんけん」と口を尖らせて言っていた。
「ごめんってば、あんだけ楽しみにしていたじゃないの、行こうよ。さあ乗って」
「絶対にいかんばい」
 れいなはカバンを投げるようにして寄越した。落としそうになって慌てた。
「ガキじゃあるまいし、そんなにいじけるなよ」
「ガキで結構ばい。れいなは行かないっちゃ」
「なんで」
「どうしてもばい」
 れいなは家に戻ってしまった。とりあえずれいなの荷物を積み込んで、圭ちゃんに「どうしよう」と救いを求めた。「追いかけなさいよ。行きたいに決まってんだから」と圭ちゃんは言った。ごっちんは「なんでもいいから早く出ようよ。温泉入りたい」と言った。
「あいかわらず自己中だな、後藤は」
「だって温泉入りたいんだもん。行かないつってんだから、行かないんだよ」
 ごっちんはめんどくさそうに「早く出ようよ」と繰り返した。私はちょっと悩んで、「ごめん、すぐ連れてくるから」と言い残して部屋に向かった。ごっちんの舌打ちが聞こえた。
 玄関には鍵が掛かっていた。開けて、れいなの姿をさがすと、布団にくるまって、いじけているようだった。私はそれをしばらく眺めて、子どもの頃の自分の姿を思い出していた。れいなが感じているだろう、ないがしろにされた、辱められた、そのどうしようもない気分はよく分かった。
「れいなちゃん、行こうよ。ごっちんも圭ちゃんも、れいなが来ないなら行かないって言ってるんだよ」
「じゃあ行かなければいいばい」
「行きたいんだよ。みんな、れいなちゃんと一緒に温泉に行きたいんだ。いや、れいなちゃんと一緒だからこそ、温泉に行くということに意味があるんだ」
 れいなは布団から少し顔を出し、私の顔色を伺った。笑いそうになるのを必死で堪えた。
「ほら、行くよ」
 手を差し伸ばすと、れいなは起き上がり、とことこと歩み寄って「仕方ないっちゃね、みんなのためやけん、行くことにするばい」と言った。その満足気な顔がとても愛おしく、私はれいなを抱きしめていたい。
361 :名無飼育さん :2012/02/29(水) 20:38
 れいなが車に乗るなり「結局行くんだ」とごっちんが笑うのでヒヤリとしたが「行くっちゃよ、れいながおらんと寂しかろ」と自信満々に鼻の穴を膨らませるので、ああそういえばれいなはバカなのだった。ごっちんは寝た。圭ちゃんも寝ようとしたが、れいながしきりにトランプをせがむので付き合ってやっているようだった。二人だけでトランプをして楽しいものなのだろうか。分からないが、車は高速に乗った。特に行き先を決めておらず、分岐に遭遇する度、直観に任せてルートを選択していく。その時の私の気分といったらまさに映画『スピード』であり、そんな私の心境など知る由もなく圭ちゃんとれいなはスピードをやっているようだった。いわゆる覚せい剤である。
 まずれいなの口が回らなくなった。圭ちゃんはそれを笑っていたが、こちらも次第に口が回らなくなり始め、トランプを取り落としては二人でゲラゲラと笑い転げた。ごっちんが起きた。むっとした顔で「何してんの」と言う。「すぴーろ」と圭ちゃんが答え、れいながそれを笑った。「もうちょっと静かにできないもんかね」「ごとーもやる?」「やんないよ。眠い」ごっちんは音楽をもっと大きくしてくれと言った。丁度ラブマの中盤、楽器の音が引いて、みんなでフウッフウッフウッフウッと叫んでいる辺りだった。圭ちゃんとれいなはこれにまた笑い転げた。口々に「変な曲」と言った。「黙れよ」ごっちんが怒ると、二人共夢から覚めたように大人しくなった。私も怒っていた。ラブマは名曲だからである。そして泣きそうになっていた。高速道路をいつ降りたらいいのか分からなかったからである。
362 :名無飼育さん :2012/03/02(金) 02:19
 さゆがえりりんに抱きつきながら腰をぐりぐり擦りつけている映像のことについて喋った。さゆには性欲が感じられない。あれは性欲というよりも、本能からそうしているのだという気がした。例えば興奮した犬が飼い主の足にすがりついて腰を振るように、動物のごくごく自然な、本能的な行為のような気がした。だから汚くないと思った。性欲は汚いけれども、本能ならば仕方がない、むしろ美しいことのように思えた。
 車内の誰も私の話を聞いていなかった。ごっちんは寝入っていたし、圭ちゃんもれいなも、今は静かに黙々と一人遊びに耽っていた。思えば遠くに来たもので、車は長野の県境をとうに超え、おそらく長野県内なのだけど、どこらへんを走っているのか皆目不明であった。
 もう何度目か分からない"レバニラ炒め"に唐突に飽きを感じ、何か聴きたいものはあるかと尋ねた。圭ちゃんはセカモが聴きたいと言った。ごっちんは当然寝ている。れいなはDSに顔を埋めたまま何も答えない。一人でやるポケモンの何がそんなに面白いのか不思議だった。折角ここまで来て、なにもわざわざポケモンなんてやらなくていいではないか、と思った。せめて圭ちゃんのように本を読むとかだね、もうちょっと大人びた趣味を持って欲しい。
「それ何読んでんの?」
「SF」
「雑だな。誰の何て本よ」
「なんかね、人がいっぱい死ぬんだけど、結構泣けるよ」
「へえ」
 久しぶりに聴くセカモはやっぱり名盤だった。そういえば、と私は後ろに声を掛けた。こないだ披露したドリームモーニング娘。の曲は良かったね。良かったけれど、なんだか物足りなかったね。きっとごっちんがいなかったからだと思う。圭ちゃんが「そう」と言った。
 なっちの声が入ると途端に曲がしまる感じがする。裕ちゃんの歌が上手くなっていた。梨華ちゃんも上手くなっていた。これは少し残念だった。あの調子っぱずれが一つの聞き所であったのに。たとえばデフディバに梨華ちゃんがいなければ、"好きすぎてバカみたい"は何の面白みもない普通の曲になっていたことだろう。あの調子っぱずれがいいんだ。あとはなっちのスタイルの悪さ。デフディバは梨華ちゃんの歌の下手さとなっちのスタイルの悪さによって支えられていた。そしてどう考えても性格の合いそうにない四人が一つのユニットを構成しているというところが面白かった。まあそれはいいんだけど、かおりんのすらっとした長い手足が妙にバタバタしてるダンスが相変わらずで、その懐かしさに思わず涙さえこぼれた。
 圭ちゃんが「よく喋るねえ」とちょっと皮肉めいた口調で言った。私のアイドル論がお気に召さないらしい。それもそうだ。素人にあーだこーだ分かった風なことを言われたくはないだろう。
「ごめん」
「何で謝んの? あとどんぐらいで着く?」
「さあ。っていうかどこに向かってるのか自分でもよく分からん」
「おいおい。とりあえずサービスエリア入ってよ。何か食べたい」
 ごっちんが「レバニラ炒め」と言った。
「ごっちん起きてたの?」
「レバニラ炒め食べたい」
「無いんじゃないかなあ。サービスエリアでレバニラ炒めなんて見たことがないけど」
「じゃあ肉うどんでいいや」
 圭ちゃんが「いい曲」と言った。"抱いて HOLD ON ME"だった。ごっちんが「うーほどんみー」と唸った。れいなは空気のようになっていた。「れいなちゃんは何食べたいの?」と訊くと、「れいなは胸がいっぱいやけん」と言うので、よく分からなかった。
「胸がいっぱいでも、お腹は空くでしょう」
「空くっちゃね」
「何食べるの」
 えー、と言って少し悩んだ。ごっちんが「ねえ笑って」とかおりんの真似をして唸った。圭ちゃんがニコリと笑った。みんなで「オエー」とかやっていると、うっかりサービスエリアを通り過ぎたので、車内はとても険悪になった。
363 :名無飼育さん :2012/03/02(金) 22:23
 サービスエリアに入って食事と一服を済ました後、圭ちゃんが助手席に来てナビをしてくれることになった。「ちゃんと決めときなさいよ」と怒られた。ごっちんはどこでもいいから着いたら起こしてくれという態度だったし、れいなは東京が地図上のどこにあるのか分からないと言うし、私も今いるらしい長野県がどこらへんにあるのかかなりあやふやだった。東京より北にあるような感じは漠然とした。スキースノボと言えば長野、という感じだった。しかし長野が関東なのか東北なのか北陸なのかよく分からなかった。そもそも北陸って何なのだ、という感じがした。新潟はなんなのか。上越って何なのだ。圭ちゃんはそれを聞いて呆れた。「問題がある」と言った。「この温泉旅行には問題がありすぎる」と言った。
「じゃあ宿の予約とかも取ってないわけだ」
「そうですね」
「そんなんで誘うなよ」
「いや、圭ちゃんが何とかしてくれると思って」
「そんならそうと早く言ってよ。もっと近場でいいとこ探したのに」
「遠ければ遠い方が着いた時気持ちいいもんな」
「帰りもあんのよ」
「帰りは圭ちゃん運転してね。帰れる自信が無い」
 圭ちゃんはわざとらしくため息をついて「めんどうだけどしょうがない」と言った。みうらじゅんが"旅は戻ってくるから旅なのであって、戻ってこなければそれは蒸発と言うんです"ということを話していたのを思い出したので、それを言った。圭ちゃんは「まだ蒸発するほど切羽詰まってない」と苦笑いし、ごっちんは「いーねー、蒸発いーねー」と盛んに蒸発したがり、れいなはどちらかと言えば蒸発という言葉の意味を知らなかった。
364 :名無飼育さん :2012/03/04(日) 03:31
 温泉に着いてまずれいなはゲーム機をテレビにセッティングした。早速やろうとみなを急かすのだが、一体我々は長野くんだりまで何をしに来たか。ゆっくりと温泉に入るためである。ゲームは一つの余興であって、着いて早々になぜそんなことをせなあかんのか。説き伏せると、れいなは「帰ると」と言い始めた。ごっちんが「じゃあ帰れば?」と言う。れいなの目からぼろぼろと涙がこぼれた。
「意地悪なお姉ちゃんだねえ。とりあえず、温泉入ろうか」
 圭ちゃんが頭を撫でつつ手を引いた。れいなはしゃくりあげながらもそれに従った。ごっちんはふくれっ面をして「なにさ」とご機嫌斜めだった。私は圭ちゃんとれいなの後を追って温泉に向かった。
 そこは大変残念なことに混浴ではなかった。虚しいものである。折角四人で旅行に来たというのに、一人で体を洗い、一人で湯船に浸かるというのは虚しい。広々とした湯船は確かに気分が良かったし、露天風呂から一人眺める景色というのも素晴らしいものではあったが、それをじっくり楽しめるような教養の深さというか、人間としての渋みのようなものを、私はまだ獲得していなかった。良いのは良いのだけど、これがだからなんだと言うのだ、という感じがした。私はまだまだ若かった。歳だけは無駄に重ねていくものの、高校を卒業した頃から内面は一つも成長していなかった。
 露天風呂には先客があった。定年を迎えたばかりといったような、ギラついた感じがまだまだ抜けないじじいで、「お若いのに珍しいですね。お一人ですか」とかなんとか、やたらめったら話しかけてくる。きっとこのじじいも寂しいのだ、という気がしたので、相手をした。
 妻と来ている。これまでいつも仕事仕事で全然相手をしてやれなかったから等々。聞きもしないのにべらべらと夫婦関係のことをしゃべり倒す。「混浴じゃなくて残念でしたね」と言うと「全くですよ。若いオネエチャンの裸を見に来たってのに」と、じじいの性欲がギラついた。こいつはまだ現役である。そらおそろしい。
「いや、そうじゃなくって、奥さんと入れたらさぞ良かったでしょうにね。一人でこうしてるのもいいんですけれど、やっぱりちょっと、寂しくは無いですか」
「んなことないですよ。若いオネエチャンの裸さえ見れれば僕は満足ですよ」
 高らかに笑い、じゃあ失礼、と言って風呂を出た。じじいのちんこは白髪まみれでしわしわだったが、やたらでかく、歩く度にばちんばちんと左右のふとももに当たるようで、その音が響いた。完全に負けている、と思った。あのじじいに、私は完全に負けていた。ゆらゆらする水面越しに見える自分のちんこを見て、はらはらと涙がこぼれた。ちんこのことだけではない。何か、精神的にも、あのじじいに何一つ勝る所が無いような気がした。あのギラつきを、私は持たなければならないのだ、という気がした。だかられいなとごっちんの裸を思って、オナニーをした。ふいに女湯の方から「ちょっと後藤、あんた体洗ってないでしょ」という圭ちゃんの声が聞こえて、発射した。私は何にも勝てないのだ、という気がした。
365 :名無飼育さん :2012/03/04(日) 04:12
 風呂から上がって暇なので、一人でスマッシュブラザーズをやっているとますます虚しさが募った。やっぱりこういうのはみんなでやるものだ。早く誰か上がって来てくれ、と願ったが、女の長風呂は予測がつかない。奴らは平気で一時間二時間入る。何をどこまで洗えばそんなに時間がかかるのだろうといつも不思議だった。肛門や大陰唇のしわしわを一本ずつ丁寧に、まんこの中の隅々まで洗えばもしかしたらそれぐらいかかるのかもしれない。今れいなとごっちんはそうやって自身の性器を洗っているのかもしれない。圭ちゃんのことは考えたくない。もやもやして、私はちんこを引っ張り出した。そして気付いた。
 それは昔からよく考えていたことだった。「女の旅行鞄の中には着替えが詰まっている」という事実である。私はこの事実に気付いた時、抑えがたい興奮を感じた。お洒落なメイクをして、お洒落な服に身を包んで、そこらへんでキャリーバッグをガラガラ言わせているような女の子のそのキャリーバッグの中には、彼女の着替えが詰まっているのだ。あんなに何気ない顔をしながら、自分のパンツやブラジャーを公然と持ち運んでいるのだ。その事実は社会的な陰謀(あけすけに言えばそれは民主党政治である)によって押し隠されてはいるが、私はある時それに気付いたのだった。
 そして目の前にはバッグが三つあった。私は圭ちゃんのバッグをすばやく窓の外に放り投げた。圭ちゃんの下着と同じ部屋にいて、同じ空気を吸っているなど耐えられないことのように思えたからだ。そしてごっちんのバッグに手を掛けた。お菓子が山のように出てきた。肝心の下着類が見当たらなく、諦めて、れいなのバッグに手をかけると、こちらにもなかった。あいつらは一体何を考えているのか。同じ下着でこの一泊を過ごすつもりなのか。そこまで考えて、一泊、と思った。そうか、一泊なのだ。彼女らの下着は、今脱衣場の籠の中にあるのだ。失望と同時に申し訳なさを感じ、圭ちゃんのバッグを室内に引き入れた。
 半端に立ったちんこのやり場の無さに困って、そうだ、他の宿泊客から盗めば良いのではないか、という考えに至ったのだが、それは犯罪なので止めにした。私はアイフォーンで女子高生逆さ撮りモノを探して抜いた。
366 :名無飼育さん :2012/03/04(日) 18:18
 ごっちんは開口一番「なんかこの部屋イカ臭い」と言った。「そう? 気のせいでしょ。別にオナニーとかしてないよ」私は震える手でWiiの電源を入れた。「ほら、スマブラやろうスマブラ」言って、振り返ると、丁度ごっちんがゴミ箱の中からザーメンティッシュをつまみ上げたところだった。しばらく無言でそれをぶらぶらし、鼻を近づけてくんくんと匂いを嗅いだ。チラリとこちらを見る。
「すいません。オナニーしました」
「なんで謝んの? 別にいいよ」
「あ、そう?」
「うん」
 ごっちんは手の平の上でぽんぽんとザーメンティッシュを手玉に取りながら、「この重量感……!」などとほざいた。確かに、風呂の中で出したすぐ後なのにも関わらず、濃いのがたくさん出た。きっとこの温泉旅行という環境がそうさせたのだ。ごっちんはまた匂いを嗅ぐ。クセになる匂いだ、と言った。
「あれ? れいなちゃんと圭ちゃんは?」
「まだ入ってたよ。ごとーはのぼせちった」
「じゃあスマブラやろうスマブラ」
「やり方分かんない」
「教えてあげるから」
「えー。眠い」
「車でもずっと寝てたのにどんだけ寝るんだよ」
 ごっちんにWiiのコントローラーを握らせる。そう、そうやって持って、いやそんなに力強く握りしめたらだめだよ、やさしく、そっと手を添えるように、そうそう、それで上下にしごいてごらん、そうそう、そしたら必殺技が出ますので、私の必殺技を口で受け止めてください。ごっちんは笑って「ばかやろー」と言った。温泉旅行って楽しい、と私は思った。
367 :名無飼育さん :2012/03/04(日) 19:13
 圭ちゃんが戻ってくる。ごっちんが私のWiiコントローラーを握りしめてるのを見て「何やってんの」と言った。「スマブラです」「そうそう」「邪魔なら散歩でもしてくるけど」さすが大人である。部屋を出ていこうとする圭ちゃんに向かって、一緒にどうだろうか、か細い声で言った。しかしそれはあくまで社交辞令であって、本心からの言葉ではない。大人だから当然分かってくれるだろう、という期待があった。が、その判断は甘かった。圭ちゃんは「そう? じゃあ遠慮なく」などとほざき、ごっちんの浴衣をはだけ、胸元の使い込まれたジョイスティックをいじくった。ごっちんがそれに反応してアハッなどと声を出す。それは本来私の役回りであったはずである。圭ちゃんは意外と図々しい女で、ごっちんは想像に違わず節操がない。やっぱり温泉旅行って楽しくない、と思った。
「そういえばれいなちゃんは?」
 私が訊くのに、圭ちゃんはごっちんとのスマブラに夢中であり、ごっちんも圭ちゃんとのスマブラに夢中だった。私のWiiコントローラーは忘れ去られたようになっていた。悲しみに暮れた私の視界に、ごっちんの着替えが入っていると思しきビニール袋が入ってきた。手に取り、中身を出してみる。パンツとブラと靴下と洋服が出てきた。
「ごっちん、これ借りてもいい?」
「いーよー」
 ブラを胸に装着した。スカスカである。圭ちゃんの手の中にあるごっちんのジョイスティック及びパームレストを見る。立派なものだ、という感想を抱いた。ブラにはそれ以上の感慨がない。こんなものは乳当てに過ぎないのだ。パンツはブラとはセットではなく、ブラは紫だったが、パンツはピンクだった。サテン生地がサラサラし、クロッチを眺めると実に綺麗なものだった。まあ今日は車の移動しかしていないからなあ、こすれるなどして汚れる暇もなかったであろう。少し惜しまれたが、匂いを嗅いでみるとそれなりに染み付いた女の匂いというものがあって、今や圭ちゃんはごっちんのウィークポイントに手を伸ばしていた。風呂あがりのごっちんはノーパンだった。ごっちんと目が合う。
「使ってもいいけど、それ明日も履くから、汚しちゃやだよ」
「了解です。靴下は?」
「靴下は替えがあるから大丈夫」
「了解です」
 靴下を口に詰め、パンツを頭に被り、圭ちゃんとごっちんがスマブラに興じるのを眺めながら、今まさに一人遊びに興じんとするところにれいなが戻ってきた。れいなは嬌声を上げ、ごっちんと圭ちゃんのスマブラに混じった。うおおん、私はまるで蒸気機関だ。れいなのパンツとブラと靴下もゲットし、それを全て口の中に詰め込もうとしたら喉が詰まって、苦しんでいる内に意識が途切れた。
368 :名無飼育さん :2012/03/06(火) 03:00
 爽やかな朝。三人はテレビの前で雑魚寝したようだった。ビシッと行儀正しく仰向けに寝ている圭ちゃんに、ごっちんの張り詰めた艶かしい白い脚と、れいなのビニールでできたようなちんちくりんな脚が絡まっていた。だからつまり圭ちゃんの寄りすがるように、圭ちゃんを取り合うようにれいなとごっちんと圭ちゃんは絡まり合っていて、それがまるで仲の良い三姉妹のように見えたのだった。テレビはつけっぱなしで、キャラクター選択画面のBGMが朝の静かな空気の中で爽やかに鳴っていた。
 部屋を出て、温泉へ向かう。脱衣所で昨日のじじいに会った。丁度上がったところらしい。相変わらず立派なちんこである。「昨日はお楽しみでしたね」と言う。何のことやら分からないが、「ええ」と答えた。上をはだけるとごっちんのブラジャーがはたりと脚元に落ちた。目が合う。じじいの目付きは中学生男子のそれだった。ギラギラしていた。
「それはお連れさんのものかな」
「そうですね。ごっちんのです。立派なものです」
「良かったらでいいんだが」
 じじいは財布から五千円を取り出して、私の手に握らせた。
「あげませんよ」
「いや、そういうんじゃないんだ。この歳になるともう、そういう現物に興味は無くてね」
 少し言い淀んで、昨日のお楽しみの内容をちょっと聞かせてくれないか、とじじいは言った。
「ご期待に沿えるかどうかは分からないですが、構いませんよ」
「じゃあもうひとっ風呂ご一緒しましょう」
 露天風呂で朝の爽やかな景色を眺めながら、私は私の性癖をじじいに語った。昨日のお楽しみの内容と言っても、お楽しみをしていたのはあの三人であって、私はほとんど気絶しており、それについて語りようがなかったので、必然的に昨日したオナニーのことを語らざるを得ず、するとなると結局「私は何に興奮するのか」という個人的な性癖に言及せざるを得なかったからである。じじいは私の性癖に対して「ご立派」「なるほど、興味深いことですねえ」などと一々相槌を欠かさず、つい興が乗ってぺらぺらと喋った。
「するとつまりこういうことかな。あなたは童貞だ」
「ああ、全くその通りですねえ」
「ご立派ですよ」
 じじいは私のふとももに手を掛け、顔を寄せた。
「じゃあ後ろの方も処女なのかね」

 私は慌てて風呂を上がり、体を拭くのもままならず、浴衣を羽織るだけ羽織って部屋へ駆け込んだ。圭ちゃんが「おかえり」と言ったが、二人はまだ起きていないようで、しかし羽交い締めにされ身動きが取れず、首だけを辛そうに持ち上げてこちらを見た。
「ちょっと、パンツぐらい履きなさいよ」
「それどころじゃないよ。ホモのじじいに襲われそうになった」
「良かったじゃないの。折角だから色々教えてもらえばよかったのに」
「いやだよバカ」
「バカっていう方がバカ」
「じゃあブス」
「ブスで悪かったわね」
「ごめんね」
 圭ちゃんに擦り寄って五千円を渡した。何これ、と怪訝そうな顔をする。ホモのじじいに貰った、と言うと、貰ったんなら相手したげなさいよ、それがスジってもんでしょ、と怒られた。
「じゃあ圭ちゃんにこの五千円あげるよ」
「なんで」
「そしたらスジ通してくれるの?」
「どういうこと?」
 つまり、圭ちゃんとじじいがセックスをすれば万事上手く収まるのではないか、と考えたのである。
「でもホモなんでしょ?」
「圭ちゃんなら男も女も関係ないさあ。ほら、あのじじいだいぶ溜まってる感じだったし、それに、ホモのじじいとレズの三十路がセックスするとか、なんか歪んでていいじゃないか」
 圭ちゃんは「これ以上歪みたくないもんだね」と言って、そのお金を懐に入れた。
369 :名無飼育さん :2012/03/06(火) 05:37
 ごっちんがまず目を覚まし、れいなの頭をポカリと殴った。れいなも目を覚まし、圭ちゃんの頭をポカリと殴った。圭ちゃんはごっちんとれいなの頭を続けざまにポカリポカリと殴り、「目ェ覚めた? お風呂行くよ」サラリと立ち上がったところ、懐からハラリと五千円札が落ちた。ごっちんが「まだ朝だよ」と言って圭ちゃんの袖にすがった。「まだ、ってなに? もう、朝なんだよ」圭ちゃんは笑いながらごっちんの手を引いた。ごっちんは「朝というのはゆっくり寝るものだ」と主張したが、圭ちゃんは「あんたの普段の生活ならそうかも知れないが、旅行に来てまでその生活態度はいかがなものか」とそれに反論した。れいなは床に落ちた五千円札をじっと見つめている。私はごっちんのブラを脱衣所に忘れてきたことに気付いて慌てて部屋を出た。
 脱衣所に駆け込むとじじいがいなかったので安心した。ブラを探すも見当たらない。きっとあのじじいが盗ったに違いないと考えた。その光景がまざまざと脳裏に浮かぶ。じじいがごっちんのブラを震える手で拾い上げ、鼻先に押し当てる様が妙にリアルに想像された。よく似合っていた。ごっちんの紫色のブラと、じじいの姿とは、実に似つかわしかった。よくよく考えてみると、あのじじいはホモというか、単に性欲が極まっているだけで、要するに男でも女でも、性の匂いがするものならば見境がないのだろうという気が、ふいにしたのである。
 部屋に戻ると圭ちゃんがごっちんに脱がされて、両手両足を縛られているところだった。ベージュのババ臭い下着を身に付けていた。
「ごめんごっちん、ブラ盗られちゃった」
「はあ? なんで?」
「いやまあ話せば長くなりますが」
「ノーブラで過ごせってか」
「そうね、そうなりますね」
 圭ちゃんが「私が昨日使ってた奴ならあるけど」と言ったが、「サイズが合わねえよサイズがよう」と言って圭ちゃんの胸をぴしぴし叩いた。れいなは床に落ちた五千円札をまだ見つめていた。改めて意地汚い子だと思った。
370 :名無飼育さん :2012/03/06(火) 18:23
 れいなちゃん、と声を掛けるとれいなはハッとした顔をし、五千円札を足で踏みつけた。「なんとね」と言う。声が上ずっていた。
「まだご飯までは間があるから、お風呂に入ってきたらいいよ」
「そうっちゃね、そうするばい」
 れいなは足を引きずって部屋を出ようとした。
「れいなちゃん」
「なんとね」
「足でも痛いの?」
「そ、そうなのだっちゃ。捻挫かもしれん」
「どれ、ちょっと見せてごらん」
「大丈夫ばい」
「いいから」
「お構いなく」
 入り口で押し問答しているとごっちんが緊縛された圭ちゃんを抱えて脇を抜けた。「なーにやってんの、ごとーたちは先に行ってるかんね」れいなの頭をぽんぽんと叩いた。圭ちゃんが「五千円」と言った。れいながびくりとする。「田中ちゃんにあげるよ」その表情がぱあと輝いた。スジは通してくれるんだろうな、と私はすごんだ。れいなはこくりこくりと大仰に頷いて、五千円札をすばやく脚元から拾い上げると、懐へ入れた。
371 :名無飼育さん :2012/03/06(火) 18:38
 また一人になった。一人は悲しい。何のために四人で来たのか。折角だからつんく♂さんでも誘えば良かった、という考えが頭に浮かび、いやいや、それは無いだろう、つんく♂さんがれいなに何をするのか分かったものではない。というか、つんく♂さんは確実にれいなに性的ないたずらを働くだろう。いたずらで済めばよいが、彼は「親心」とかいう名目で、セックスを要求するだろう。「年頃の娘とセックスしたいってのは、正当な親心やろ?」その時、果たしてれいなはちゃんと拒絶することができるだろうか? きっと無理だ。押しに弱い子なのだ。特に金をチラつかせた押しに弱いのだ。一万円でもチラつかせれば、れいなは確実に喜んで股を開くだろう。私はそれを見てオナニーをするだろう。ああ、耐えられない。いやしかしどうだろう。本当に耐えられないのか? よく考えてもみたまえ、私の最愛の人であるれいなが、いけ好かないスケベじじいであるつんく♂に金の力で犯されるのだ。姫が悪漢に絶対的な力(つまり金である)で蹂躙されるという構図。もしかしてそれはとても興奮するシチュエーションなのではないだろうか。やはり、つんく♂さんを誘うべきだったのだ。れいなのちんくしゃな柔肌が、つんく♂さんの汚らしい手や舌によって愛撫され、淫唇が濡れそぼり、そこへ指などが挿入されるのを見て、私は確実に素早く発射するだろう。賢明さと冷静さを取り戻した私は悪漢つんく♂を張り倒し、殴りつけ、「れいなちゃん、怖かったねえ。もう大丈夫だよ。おじさんが助けに来たからね」泣きじゃくる姫、れいなを抱きしめ、感動のフィナーレである。私とれいなはどんな困難にも打ち勝つ固い絆を再確認し、ごっちんと圭ちゃんはこの茶番を呆れつつ見守るだろう。つんく♂さんに会いたい。会って、罵倒してやりたい。お前なんかな、お前なんか、割と尊敬しています。
372 :名無飼育さん :2012/03/09(金) 01:41
 朝食が配膳されるという段になってもまだれいなは戻って来なかった。圭ちゃんとごっちんは「知らない、見ていない」を貫き通した。私は納豆をかき混ぜながら何やら不穏なものを感じていた。れいなの失踪に何らかの事件性を感じたのである。性欲の強いじじい、強引に握らされた五千円札、脱衣所から消えたブラ、れいなの金に対する意地汚さ、そして失踪。これらの状況証拠から浮かび上がるのは「れいながじじいに買われたのではないか」という疑惑であった。今頃は、じじいのしわくちゃな手指がれいなの肉壷に迫り、そこをかき回しているに違いないような気がした。私は納豆を混ぜに混ぜた。それはとても強靭な糸を引いた。そして強烈に食欲をそそる香りを放つその納豆をご飯の上に乗せ、かっこんだ。美味い。なんて美味いのだろう。日本の朝という感じである。目の前には浴衣姿の女が二人、御行儀よく正座などし、味噌汁を飲んでいる。日本の朝だ。
 朝食を終えた我々三人はゆったりと食後の余韻を楽しみ、ゆったりと準備をした。ごっちんが「ブラが無い」と言って私を睨むのに、圭ちゃんが「私のでよければ」とベージュのババ臭いブラを差し出すのだが、ごっちんは首を振って「どうぞお構いなく」とそれを拒絶するので、圭ちゃんは残念そうに「そう」と言った。ごっちんのTシャツは張り詰め、2つの突起が浮かび上がっており、私と圭ちゃんはそれを見て感嘆の声を漏らした。立派なものです。ああ、とても立派なものです。
 荷造りを終え、チェックアウトを済ました。車へ乗ると、これから帰るのだ、もうこの旅行は終わりなのだ、という感覚が一気に押し寄せ、寂しさを感じる。それはごっちんも圭ちゃんも同じようで、いい湯だったね、また来たいね、と口々に言った。「ところで、れいなは今どこで何をしているのだろうね」私が発したその問いに、ごっちんは「さあ」と答え、圭ちゃんは「スジを通してるんでしょう」と答えた。宿の入口からさも慌てた感じで飛び出して、きょろきょろと辺りを見回しているれいなが、フロントガラス越しに見えた。その手には紫色のブラが握られていて、ごっちんが「よくやった」とそれを誉めたたえた。圭ちゃんがギアをドライブに入れ、れいなを置いたまま、車は出た。置いて行かれたれいなは、きっとまた泣くのだろうが、これは一つの試練なのだ。私とれいなの鉄の絆が、またいずれおれとお前を引き付けることであろう。それまで待っていてくれたまえ。旅は戻ってくるからこそ旅なのであり、戻ってこなければそれは蒸発なのだ。れいなはこの旅行以来蒸発した。私は姫を探し求める勇者になった。
373 :名無飼育さん :2012/03/09(金) 02:45
王家の事情
374 :名無飼育さん :2012/03/09(金) 02:46
 昔々あるところに金に汚い姫がおりました。姫なのだから金なんていくらでもあるだろうというのは端的に言えば庶民の思い込みです。姫の父親である王が厳しい人だった。小さな頃から何不自由ない金に任せた暮らしをさせるのは教育上良くない、という昔気質な、まあ昔のことですから当たり前なのですが、そういう今となってはもはや古臭いとすら思える信念を持った王なのでした。この教育方針が姫には不服でした。王は姫への愛ゆえに、まっすぐな心を持った、高潔な精神を持った人間に育って欲しいという愛ゆえに、姫に不自由な暮らしを強いていたのですが、それが姫の目には「お父さんはれいなのことを愛していないのだっちゃ」という風に映りました。れいなというのは姫の名です。姫の口調が妙なのは、その国の言語がそういう妙な響きを持つ言語だからで、その響きを現代日本語に訳すとするならば、こういうニュアンスになります。別に北九州が舞台なわけではありません。苦心の訳です。
 まあそういうわけで、王の高潔な思想に基づいた教育とは裏腹に、姫たるれいなはかなり安直な、俗っぽい人間に育ちました。父の愛を理解することができず、逆に父を呪いました。しかし当然ながら父を心の底から呪うことなどできません。本当は愛されたいのです。要は金がいけないのだ。今自分の手元に金がないのが、いけないのだ。そういう風にれいなは考え、とにかく金が欲しい、金さえあれば父の愛など不必要であるなどといった、それはそれは惨めな思想を持つ人間になりました。王はこれを嘆き、自分の弟、つまりれいなの叔父にあたる人間に、どうにかれいなを更生してやってくれと懇願しました。彼はひとつ返事で「オッケー☆」と答えました。ペロッ。王はこれに不安を感じましたが、れいなが幼少の頃より最も親しい間柄にあったのは彼でしたから、もう彼に任せる他ないと、半ば自暴自棄になっていました。本来ならば、父親たる自分自身がれいなに説教垂れ、更生させるべきでした。それが親の勤めというものです。しかし王はあまりに高潔な思想を持つがゆえに、自身の教育の失敗を認められなかった。まあ有り体に言えばそういう解釈も可能でしょう。が、もっと単純に言えば、王は、愛すべき娘に説教を垂れて嫌われたくなかったのです。情けない王です。そういう姿勢だからこそ嫌われるのだということが分かっていない。王の弟は、兄のこういうプライドの高さから来る無責任さが嫌いでした。
375 :名無飼育さん :2012/03/09(金) 02:46
 王の弟の名は、正確には少々長ったらしい、いかにも田舎貴族といった名前なのですが、面倒なので、ここでは佐藤と呼ぶことにします。王のことは田中と呼ぶことにします。そして姫のことは先にも述べました通りれいなと呼びます。田中も佐藤もそれぞれ日本では姓にあたるものです。不思議に思われるかもしれません。これには事情があって、それというのも王たる田中は元々佐藤という田舎貴族の長男だったのですが、いわゆる逆玉という奴で、田中王家の婿養子に入ったという経緯です。佐藤家の長たるべき長男が、逆玉ラッキー☆とばかりに簡単に婿養子に入ってしまったあたりも、佐藤には不服でした。兄さんは何もわかっちゃいねえ、男たるものが本来抱くべき高潔さの欠片も持ち合わせていない、器の小さい人間だ、愚物だ、と考えていました。
 そしてこの佐藤というのは他ならぬこの物語の語り部である私なのです。私が田中の命を受け、れいなの前に姿を現した時、彼女は一人の占い師に入れ込んでいました。占い師は老齢の、見かけは人の良さそうなおじいちゃんでしたが、その愛想の良さはどことなく貼り付けたような人工的な匂いがし、私は前々から少し危ないなという感じを抱いていました。占い師はさすが人心把握に長けていて、お金と男親の愛情との両方を、れいなに対して与えていました。私もれいなに対して主にザーメンで表象される男親の愛情を注ぐことには熱心だったのですが、いかんせん田舎貴族のサガという奴で、お金はありませんでした。ほとんど極貧と言ってもいいほどだったのです。一応貴族であるという家の威信だけが頼りでした。あとは兄でなおかつ王たる田中からの援助です。生活という点においては、ほとんど田中頼みでした。むしろ生活資金を得るために、れいなに良くしてやっているという節すらありました。私自身はそれを認めたくありませんでしたが。だってそれでは逆玉ラッキー☆の兄と同じことをしていることになるからです。私は生活の必要に駆られて、仕方なく、兄の援助を頼っているのです。兄のようにほいほいと逆玉ラッキー☆とは違うのです。生活のためです。切実さの度合いが違います。それに、私は本心から、姪であるれいなのことを愛しておりました。兄は自身の高潔さを示すために娘であるれいなを愛しているのです。つまり兄はれいなを愛しているふりをして、実のところ自身の高潔さのみを愛していました。私は違う。私はれいなのことを性的な眼差しで見て、性的に愛しておりました。パンツだって盗りますし、匂いを嗅ぎます。それでオナニーすらする。兄にはそんなことできないでしょう。れいなのパンツでお前はオナニーができるのか、と直接に訊いたことはありませんが、きっとできないはずです。王の意地が、親であるという無駄な内的規制が、それを拒むはずです。バカバカしい。私は兄とは違うのです。兄の名誉欲や自己愛や勝手な自己規制は惨めで、汚らわしいですが、私の性欲は高潔です。
376 :名無飼育さん :2012/03/09(金) 04:19
 まあ私が抱いていた兄への嫌悪感などはどうでもよく、問題は占い師に入れ込んでいるれいなでした。昔はあんなにも私に懐き、互いの性器を見せ合う仲だったのですが、いやもちろんセックスはしていません。我々はもっと高尚な、精神的な愛で結ばれていましたから、セックスなどという即物的で、愚鈍な、劣悪な、動物的な行為には興味がありませんでした。しかしこのところはれいなは占い師にご執心で、互いの性器を見せ合うなどということはもはや言語道断であり、視線を交わすことすら拒みました。これは堪えました。我々の愛は互いに交わし合うその視線の中にあったからです。詩的に言えば、私とれいなとは視線でセックスをしていた。れいなの内斜視の視線のいびつさが、私の精神的陰茎をこすり上げ、私はそのいびつな視線を拾い集めることで、れいなの精神的陰核をこすり上げました。れいながどう思っていたのかは知りませんが、少なくとも私はそういうつもりでした。
「もっとお金が欲しいのだっちゃ、占い師さんはれいなにお金をくれるのに、おじさんは今まで一度たりとれいなにお金をくれたことがないっちゃ」
 れいなは斜に構え、ずっと遠い所を見つめながら、そう言いました。私はどう応えていいものか分からず、黙ってしまう。れいなは私が極貧にあるということを知っているはずなのに。さすがに耐え切れない怒りを感じます。もちろんその怒りはれいなに向けるべきものではありません。れいなが金に汚いのは兄の教育のせいですし、れいなが私にそういう口をきくようになったのは占い師のせいだからです。私はもっぱら兄と占い師を呪いました。が、ほんの少しだけ、れいなのことも呪いました。
 だかられいなが占い師と共に蒸発したという話を聞いた時、少しだけ安堵しました。もうれいなの嫌味を聞いて腹を立てることもなく、その視線が私ではなく占い師の方を向いていることにヤキモキする必要もなくなったからです。れいなのことを愛しているのにも関わらず、れいなのことを呪わずにいられないという境遇が、私には耐えられないのでした。これからは大手を振って、れいなをたぶらかした占い師と、そんな占い師にたぶらかされてしまうようなれいなという人格を形成した兄をのみ、純粋に呪うことができます。
 私はれいな捜索を買って出ました。そのために兄から潤沢な資金を引き出しました。
「れいながあんな男にたぶらかされてしまったのは、あなたの教育が悪かったからですよ。あなたの教育が間違っていたからですよ。れいなには何不自由ない生活をさせてやるべきだった。そうすればあんなに金に執着することもなかった。もっと分かりやすい愛情を注いでやるべきだった。そうすればあんな男のうそ臭い男親の愛情に引っかかることもなかった。しかしそんなことはあなたのプライドが許さなかったでしょう。れいなはああいう人間に育ってしまった。それはもう仕方がないことです。それならば、私にもっと潤沢な援助をすべきだった。そうすれば私のお金と男親の愛情でもって、れいなをあんな男に盗られることはなかったはずです。あなたのプライドの高さから来る無責任が、この度のれいな蒸発の全ての元凶であることは明白である。だがそんなこともまた、今更言ってもどうしようもないことでしょう。なってしまったことはなってしまったことなのだから、私が、どうにかしまょう。兄であるあなたの尻拭いを、引き受けましょう」
 兄は苦い顔をして、私のその演説を聞いていました。怒ると思ったのですが、怒らなかった。王としての威厳という奴でしょうか。くだらないと思います。プライドが邪魔をして怒りたいときに怒れないのだから、まったくもってくだらない。自然な感情の発露を、兄はみっともないことだと勘違いしているのです。バカバカしいにもほどがあります。
 兄は私の手を取って「よろしく頼む」と言いました。私は「オッケー☆」と答えました。
377 :名無飼育さん :2012/03/09(金) 05:02
 私は割と楽観的に考えていました。人をたくさん使えばすぐに見つかるだろう、ぐらいに考えていたのです。あまり深く考えていなかった。しかし四方八方に使いをやり、一週間たち二週間たち、全然見つからないのです。「姫と思しき女の子と占い師と思しき壮年の男がどこそこの広場で相撲を取っていた」などのほんまかいなという怪しげな目撃情報や、「あの占い師は前にもよその国の姫をたぶらかしたことがあるらしい」などのウワサ話ばかり集まります。そんな情報はほとんど無価値です。私は使いの手際の悪さ要領の悪さに憤りました。しかし集まって来た占い師に関するウワサ話を統合していくと、どうやらこの蒸発は、何かしらの政治的な陰謀に基づくものなのではないのか、という疑惑が持ち上がりました。
 それはよく考えてみれば当たり前のことでした。占い師がれいなに金と男親の愛情を注いだその目的というものを、私は全然考えたことがなかったのです。いや、全然考えたことがないというか、その占い師もまた私と同じように、れいなの心と体を手に入れたいと考えているのだろうと、ごく普通に勘違いしていたのです。れいなの性格はともかく、その容姿は不思議と男の性欲をやみくもに掻き立てるところがあって、魅力的でしたから。れいなの容姿や挙動はからくり人形に近いところがありました。全体的に、人間として統合されきっていないというか、部分部分のパーツがそれぞれに独立して、てんでバラバラに動いているような所作の不格好さがあって、それがとても愛らしく、また各パーツが大人の女として成熟した、ふっくらとした曲線ではなく、少女の幼さからくる、ちんちくりんな曲線で構成されているところが、また愛らしいのでした。
378 :名無飼育さん :2012/03/09(金) 05:13
 正直なところ、私は政治的な事情に非常に疎かった。日々の食うや食わずやが私にとっての問題であり、政治など気にしている暇が無かったのです。だから、この疑惑が浮上した瞬間、一気にやる気がなくなりました。れいなのことは気になるが、下手を打って政治的にややこしいことになるのは、れいなが二度と私のものにならない以上に嫌でした。そんなものです。私のれいなに対する愛はそんなものなのでした。これには我ながら驚きました。そして自分をケイベツしました。ひどく情けなく思えた。とりあえず兄にその疑惑の件報告し、「私には政治が分からないのです」と言ったとき、兄はニヤリと不敵に笑いました。その顔、その顔が私はたまらなく嫌いでした。人を見下すときにする顔です。兄は「じゃあお前はもう下がっていろ」と言いました。私は悔しかった。あまりにも悔しかったので、れいなの部屋に侵入し、ありったけの下着類を押収して、家に帰りました。しばらくれいなの下着に埋もれて、何も考えずにオナニーをして過ごしました。
379 :名無飼育さん :2012/03/10(土) 01:15
 そんなある日の昼下がりのことです。ごっちんがやって来て、自涜過多でやつれた私の顔をじっと見るのです。その顔には相変わらず筋の通った美しさがありました。しかし一方でその口元や目元などのパーツの微妙な綻びから「カワイイ!」が漏れ出しており、私は一気に夢から覚めたような心地がしました。
 このごっちんというのはれいなの腹違いの姉にあたりまして、つまり私からすると兄の娘ですから姪にあたるのですが、いつもなんとなく、ごっちんはまるでお姉ちゃんのようだなあという感覚を抱いていました。こう俗世間からは一線を画したような落ち着きがありましたし、年下とはいえど、さほど歳も離れていませんでしたから。私には実の姉がいませんでした。妹もおりません。いるのはクソったれな兄ばかり。考えてみれば、れいなに理想の妹の姿を見て、ごっちんに理想の姉の姿を見ていたのやもしれません。「姉」に感じるその感傷は、いわゆる「母性」とかいうのとは少し違いました。母の愛が私の全体を包み込み支えるものならば、姉の愛はもっと直裁的に、私の飢えた部分を満たす感じがしました。いえ、こう言い換えましょうか、母の愛は私の飢えた部分をそのままに是としてただ包みこむので私をダメにする。姉の愛は私の飢えた部分を自覚させ、そこに水を注いでくれる。
 この時もごっちんはその達観した麗しい瞳で私をじっと見つめ、自涜によって枯れ果てていた隙間に水を注ぎました。そして出し抜けに「一体毎日毎日何をしているのか」と問いました。分かりきったことだろうなあと思いながら「オナニー、オナニーの毎日だね」と答えました。ごっちんにはケイベツという感情がありませんでしたから、「そう」とあっさり答え「それでいいのか」と更に問いを重ねました。
「良くはないね。内側から枯れて、しかも腐ってくる感じがする」
 ごっちんは私の無精髭にまみれた顎にそっと手を添え、このまま一生をゆっくりと枯れ果てさせ、腐らせて過ごすのか、それとも一瞬でも瑞々しい生に満たされたいか。そう言いました。ごっちんのその威厳に満ちた台詞に、私は笑いました。ちょっとクサすぎるなあと思ったのです。
「笑ってんじゃないよ」
 ごっちんはいつになく厳しい口調で、私は「笑ってません」と答えました。
380 :名無飼育さん :2012/03/10(土) 01:47
 気付くと私は兄たる王の御前にいました。兄が「何をしに来たのか」と問います。その見下した顔といったら! 私は口ごもり、ごっちんの方を見ましたが、彼女はそれを無視しました。私は意を決して言います。
「私はれいなを助けに行かねばなりません」
 お前に何ができるものか、と兄が言いました。確かに、もっともなことなのです。でもきっとごっちんがなんとかしてくれます。私が押し黙っていると、兄は「れいなは今群馬にいる」と言いました。群馬! あの蛮族が暮らすという未開の土地です。一度足を踏み入れると決して生きて戻ってはこれぬというまことしやかな噂がありました。聞く所によれば食人文化が未だに根強く残っているとか。れいなの柔肌が切り刻まれ、火にあぶられ、むくつけき男どもの口がそれをむさぼり食う様を想像しました。私はおそろしさに身を震わせ、痛いほど勃起していました。私は恐怖と興奮で喘ぎながら「なぜ」と尋ねました。兄は群馬という土地の政治的な諸事情を滔々と述べましたが、何一つわかりませんでした。ただれいながヤバイということは分かりました。大々的に動くことができないらしい。それならば私とごっちんが乗り込み、見事れいなを奪還して見せようではないか。そして姫を救い出した英雄である私とれいなは結婚するのです。これだ、と思いました。
「任せてください」
 兄は疑わしい目で私を睨みつけ「信用できん」とほざきましたが、大丈夫です。なんといっても私にはごっちんがついています。ごっちんを盾にし矛として、れいなを取り戻してみせます。
「大丈夫です。任せてください」
「お待ちください」
 声のする方を仰ぎ見ると、戦装束で身を固めた圭ちゃんがいました。
381 :名無飼育さん :2012/03/10(土) 02:20
 圭ちゃんは百獣の王です。戦女神などという綺麗なものではありません。もっと動物的な、根本的に血に飢えた獣でした。圭ちゃんは食物連鎖の頂点にいます。その目はいつも血走り、殺してもいい人間を常に探し求めていました。私はこんな野蛮な女は好きではないのですが、圭ちゃんも私のような家の名前にのみすがっているような腰抜けが嫌いなようで、つまり我々は嫌い同士だったのです。
 圭ちゃんは兄に詰め寄り「こんな腰抜けに任せられるものではありません」とほざきました。兄もそんなことは重々承知です。「分かっとるわぼけ」と言うと、圭ちゃんは「ですよね」と言って項垂れ、目に見えてしょげました。そういう分かりやすさが少しかわいらしいのです。だから私は圭ちゃんのことが嫌いになりきれませんでした。それに、彼女にはどこか母性がありました。ダメな子ほどかわいい、と思っていそうな節がどこかにありました。死をも恐れぬ勇猛果敢な部下よりも、いざというときに腰が抜けて役に立たない部下の方を、この腰抜けがなどと叱責、体罰を加えたりしながらも、常に気を回してやっている。その面倒見の良さが彼女をして百獣の王の地位にあらしめているのだ、と私は考えていました。
「ではこうするとどうだろうか。圭ちゃんとごっちんと私で、群馬に乗り込む」
 兄は頷いて「うむ」と言いました。圭ちゃんは「嫌です」ごっちんも「なんで私が」と言いました。私は「ですよね」と言いました。れいな救出計画はここで断念しました。兄は「国ため、れいなには犠牲になってもらおう」と潔いことを言いました。仕方がないことだと思いました。国のためですから。仕方がないのだと思いました。
382 :名無飼育さん :2012/03/10(土) 02:43
「なんの話をしとるっちゃ」
 聞き覚えのある声が響きました。ハッとしてその声のする方へ視線を走らせると、そこにはれいなが確かにおりました。最高に元気そうでした。れいなはツカツカと兄に歩み寄ると「バーカ」と言いました。兄は何がなにやらといった感じで、しどろもどろに「無事で良かった」などと言いました。ごっちんは高らかに笑い、圭ちゃんもまた高らかに笑っていました。ああこれはドッキリだったのだ、と理解するのに、しばらく時間がかかりました。
 れいなは私の方へ歩み寄ると、やはり「バーカ」と言って、ぷいっと顔を背けました。私は猛烈に腹が立ち、そしてこの茶番を組み立てざるを得なかったれいなの承認欲求が猛烈に愛おしくなり、この腕でれいなの体をかき抱きました。おそろしく華奢で、しかし女特有の柔らかさのあるれいなのその肉体を、この腕に抱いたのはもう何年ぶりのことだか、思い出せませんでした。兄が臆病者なのと同じ分だけ、私もまた臆病者でした。精神的な愛などと分かった風なことをほざき、兄をケイベツしながら、同じ事をしていた。それは自己完結していた。私はれいなを通して私を愛していたのでした。れいなの根本的な寂しさに何一つ応えてやらなかったのです。なんてバカなことを。
 れいなは私の腕の中で泣きました。そして「寂しい」と言った。私もまたれいなのその寂しさの中で泣き、でも大丈夫だよ、れいなにはごっちんも圭ちゃんもいるからね。私は、ダメだ。私は、というか、我々兄弟は本当にダメだ。それ以上何も言いようがなく、ただこの両腕とこの胸だけを、れいなに捧げようと決意し、汚らわしい性欲をかなぐり捨て、ただれいなを抱きかかえる、欠けた隙間に水を満たすような揺り篭になろうと思いました。だから私は永遠の童貞なのです。
383 :名無飼育さん :2012/03/10(土) 04:02
春の夜の夢

 ギターを爪弾いているとドアをドンドンと叩く音がした。出てみると隣人がおり「今何時だと思ってるんですか? いつもいつも」くどくどと説教をされた。「そうそう、大体いつも部屋にいますよね。もしかして引きこもりですか? ニート?」隣人の意地の悪さにいたく傷ついた。私はしょんぼりし、部屋に戻るとギターの弦を一本ずつニッパーでちょん切った。弦は切れる瞬間バチンバチンとでかい音を立てる。ギターなんかもう辞めてやるんだ。れいなが起きてきて「なにしよると」と言った。「隣の人に怒られたから」と答える。全部の弦を切り終えて、力任せにそれをぐちゃぐちゃにしていると指が切れた。「痛いよ」「ガキみたいだっちゃ」れいなは冷たい声で言った。確かにガキみたいでみっともないな、と思った。かと言ってどうしようもない。私が悪いのだ。その罪悪感は指先の痛みに慰められるような気がした。れいなはもう一度ガキみたいだっちゃと言って、私の手を取り、指を吸った。舌が滑らかに絡みつき、そのねばっこい暖かさにぞっとした。
 やめてくれ、と言おうとして、れいなの上目遣いに突き当たった。「ごめんなさい」が口を突き、れいなは「なんで謝るばい」と怒った風に言った。ごめんなさいごめんなさいが堰を切ったように止まらず、「本当にガキみたいだっちゃ」と白けた。れいなは寝た。私は眠れなかったが、窓の外が明るくなってくる頃に寝た。
 起きると、れいなはいなかった。愛想つかされたか、けれども、私が悪いのだから仕方が無い。携帯の連絡先かられいなを消した。全部捨てるか売るかしてしまおうと思った。こういう極端な思考がガキっぽいんだよな、と思いながら、でも仕方がない。ギターを見ると、弦が張ってあった。ヘタクソな巻き方で、私はふと指を見た。赤く小さな点が着いている。もう痛くはなかった。Fのコードを押さえて弾くと、てんでめちゃくちゃな音が出た。弦を張るなら、チューニングもちゃんとしていけよ、と思った。チューニングを合わせて、もう一度Fのコードを弾くと、今度はしっかりと鳴った。
 玄関のドアが開き、れいながそこからひょっこりと顔を出した。「チューニングわからんかったけん」と照れたように言う。れいなの手を取ると、まだ生々しい傷がいくつもついていた。私はそれを口に含み、その指はとても冷たかった。必要なものが多すぎるんだ、と思った。
384 :名無飼育さん :2012/03/10(土) 23:53
麻雀の話

 麻雀、ごっちんの手が積まれた牌に伸び、圭ちゃんがあくびをする。れいなはコカコーラを頼んだ。私はおしぼりで手の指の間を拭った。国士無双をテンパっている。ごっちんが牌を切って、圭ちゃんがロンと言った。食いタン。「あー」とごっちんが言う。「悪いねどうも」と圭ちゃんが笑う。私はがっかりして声も出ない。コカコーラが来た。れいながそれを飲む。一口貰う。炭酸が抜けきっている。「良くねえなあ」「何がだっちゃ?」「コーラ」「まずいばい」「良くねえよ」「しょうがないっちゃ」
 自動卓だった。土曜の夜だからか店内に客は多い。みな陰気な顔で黙々と打っている。「食いタン禁止ね」とごっちんが言った。「食いタンの圭」と圭ちゃんがそれに返した。ふふと鼻で笑う。ごっちんがもう一度力強く言う。「食いタン禁止ね」牌がせり上がってくる。配牌。字牌が多い。れいなのコーラはもう空っぽになっていた。「そんなにコーラばっか飲んでると骨が溶けるよ」「お母さんによく言われたばい」「うそばっかりな」私は手を上げてコーヒーを頼んだ。コーヒーが来た。
 圭ちゃんがまた食いタンで上がった。「チョンボっしょ」とごっちんが怒る。「食いタンの圭」と言ってまたふふと鼻で笑う。ごっちんを指して「一発屋の真希」、れいなを指して「泣き虫のれいな」、私を指して「早打ち」と言った。誰も笑わない。圭ちゃんは「ごめん」と謝った。牌がせり上がってくる。
385 :名無飼育さん :2012/03/11(日) 00:45
今日までそして明日から

 たとえば今日のようなぐずついた日に何も予定がないということは幸いだった。「予定なんていつもないじゃん」とごっちんが言うのだが、ごっちんには分からないのだ。私がいつも予定に追われているということを。しかしそれが一向にこなせないことに日々焦り、焦りが高じて何もできないという循環する毎日を送っているということを。後から振り返ってみれば何にもしなかったなあという日であっても、私は常に予定を抱えており、それには買い物に行くだとか契約を更新するだとか、生活の細々としたことから始まり、仕事を見つけそれに身を捧げるべく腹を括るなどといった、全人生に関わる重大な決断をも含まれていた。未消化の予定はどんどん積もっていく。ただ土日祝日の休日はそんな予定を全て忘れ、普通の人と同じように普通の休日を過ごしてよいと決めていた。私はこの休日の間に精神労働の疲れを癒さなければならないからだった。
 以上のようなことをごっちんに説明すると「あほくさ」と言って捨て置かれた。そうだろう。あほくさいというその感覚も分かるのだ。ただあほくさいと思いながらも、こなすべき予定を一向にこなす気がせず、それによって精神的に疲労しているというのは事実なのだった。圭ちゃんはこの症状を「遅れて来た思春期」だと評した。ごっちんがそれを聞いて笑う。「そんなの中学の頃に済ませたよ」一方圭ちゃんは「マックを辞めて娘。のオーディションを受けた時に済ませた」じゃあれいなはどうなんだ? れいなはしばらく考え「なかなか春にならないっちゃね」と言った。「そうだね」と私は答え、またはぐらかされたな、話の分からないバカなふりをいつまで続けることやら、思ったのだが、明日からもこうして生きていくのだろう。
386 :名無飼育さん :2012/03/11(日) 01:36
 何か楽しいことを考えようと思いました。暗いよ暗いよ! コンビニの店員に万引きの疑いをかけられたぐらいでこんなに落ち込む必要がない。そう、私は万引きの疑いをかけられたのです。あれは昼のことだったでしょうか。あまりにもショックで記憶があいまいなのですが、私は突如として「菓子パンが食べたい!」という欲求に駆られました。セブンイレブンに入って菓子パンコーナーまでぐるりと行ったまでは良かったのですが、商品のバリエーションが少なく、なんてコンビニだ格差社会だ、と私は憤りました。それでも一つ一つパンを手に取り、重さを確かめ、すばやくg/\の計算をしました。金がないのです。結局私の欲望を満たす菓子パンには出会えず、肩を落として店を出ようとすると、「ありがとうございました」ではなく「ちょっとあんた」と実に無礼な言葉を掛けられたのです。ああん? と思い振り向きますと、背の小さい、かわいらしい、おそらく高校生ぐらいと思しい女の子が、私のことを恥ずかしげに睨みつけていたのです。私は一瞬にして事情を理解しました。こいつはおれに惚れているな。その子のぺたっとした胸に白く輝くネームプレートには「田中」とありました。私は「下の名前はなんていうの?」と尋ねました。その子は顔を赤らめながら「れいなだっちゃ」と答えました。我々は手を取り合い、口づけを交わし、事務所の奥に消えて、セックスをしました。
 という風にいけば良かったのですが、振り向いた私の眼前に立ちはだかるのはなんだか気性の荒そうな若い兄ちゃんであり、「万引き」と一言つぶやきました。私は当然のように「してねーよ」と力強く、いや実際、この兄ちゃんのことが怖かったので、「してないです……」と弱々しく答えました。その隙につけこまれた。なぜ正義感に燃える人というのはかくも暴力的なのでありましょうか。私の肩をむんずと掴むと「出せ」と吠えます。店内の客や通行人の視線を感じました。これは冤罪だ、それでもぼくはやっていない。高らかに主張しようとしたのですが、照れくさくてできませんでした。そもそもちょっと信じられなかったのです。何かのギャグかと思った。私は彼と実はどこかで知り合い、いや知り合いというかこういう冗談も笑って流せるような親友なのではないか、などの考えが頭をよぎったというのは嘘で、面白いかなと思って脚色しましたが別に面白くない。とにかく私は混乱していました。なんじゃこのクソガキは、盗っとらへんわ、めっちゃ怖い、と思いました。
 私は事務所に引きこまれました。こういうのはAVの世界だけだと思っていましたから、もしかしたら警察に通報しないかわりにちんこ見せろとか、そういう風に迫られるのではないかとか、そんなことは別に思いませんでしたが、事務所の中は雑然としており、人間の生活の匂いを感じた。AVのセットは安い、と思いました。これが本物だ。これがリアリズムというものだ。私は不安に駆られました。もしかして無意識の内に、盗みを働いてしまったのではないか、という気分になったのです。上着のポケットやジーンズのポケットを上からまさぐりました。何も盗っていない、という当然の事実を把握するのに時間がかかった。いかつい兄ちゃんはその行動を訝しんだのか、また「出せ」と言いました。「だから盗ってねえよ」とすごむことができればよかったのですが「盗ってません……」と弱々しく言うことしかできませんでした。扉がコンコンとノックされ、いかつい兄ちゃんが「はい」と答えると、ごっちんが「万引きってこいつか」と言いながら顔を出しました。「無理だよ。こいつにそんな度胸あるわけないじゃん」ごっちんは高らかに笑い、私はごっちんの胸に飛び込みました。ごっちんが低い声で「この童貞が」と言いました。私は嬉しかった。
387 :名無飼育さん :2012/03/14(水) 04:07
 ごっちんがふらりとやってきて、「おなか空いた」と言った。
「なんにも無いよ。そうめんならあるけど」
「あるんじゃん」
「この時期にそうめんも無いでしょう」
「お腹すいた」
「そうめんでいいの?」
「いやだけど」
 れいなが起きてきてごっちんに飛びついた。あー、れいなはかわいいなー。そう言って頭を撫でた。微笑ましい光景に私は胸を打たれた。
「じゃあ鍋をしよう。材料買ってくるわ」
「お願いしま」
 家を出て、西友へ向かった。確か24時間営業だったはずである。夜はまだまだ寒い。マフラーを持ってくるべきであった。何鍋にすべきだろうか。考えながら、てくてく歩いていると道端に倒れている人影を認めた。もしやと思って近づくとやはり圭ちゃんだった。抱き起こすと酒の匂いが香って、ゲロを吐いた。ラーメンである。喉から地面へ向かって勢い良く落下していく麺を見ていると、食欲が減退した。「勘弁してよ」と呟くと、圭ちゃんは泣き声で「ごめんなさい」と言った。「大丈夫だよ」と答え、家に引き返した。
 家に戻るとれいなが「おかえりだっちゃ」と飛び出して来たのだが、圭ちゃんを見て「くさいばい」と鼻をつまんだ。ごっちんも出てきて「ゲロくさい」と鼻をつまんだ。とりあえずこれを風呂に入れてくれと二人に頼み、服を着替えて改めて鍋の具材を買いに家を出た。
 西友は果たして24時間営業だった。悩んで、白菜とキノコとキムチと豚肉を買った。シンプルに豚キムチ鍋にしようと考えたのである。お餅などにも惹かれたが、いかんせんあまり金がないので、油揚げやもやしなどをそれに追加し、とにかく腹が膨れれば、安くてカサがあればいいのだ。これは翌朝の朝飯も兼ねるので、米と卵も買った。
 家に戻るとすっぱい臭いがした。れいなもごっちんも出てこない。「ただいま」と奥に向かって声を掛けると、風呂場からごっちんが出てきて、お椀と箸をくれた。「鍋ができてるよ」と言う。私は首をかしげたが、風呂場から響くれいなの「うまかー」という声を聞いて理解した。吐いた。
388 :名無飼育さん :2012/03/16(金) 02:25
公園

 れいなが公園で竹馬しているのを見る。なかなか上手いものだ。ごっちんがそれにドロップキックをかましたのでこけた。圭ちゃんがごっちんを叱り、れいなを慰める。れいなは気丈にも「大丈夫やけん」と言い、目に涙を一杯に溜めているのだが、それが零れ落ちることはなく、圭ちゃんはれいなの頭をさすりさすり「偉いね」と言う。その言葉に思わず泣いてしまい、圭ちゃんは「あらあら」などと言いながられいなに胸を貸す。ごっちんは竹馬で遊んでいた。
 砂場にはミキティが居た。ミキティが作るお城をあややが壊す。当然ながらミキティは怒る。あややはミキティの怒った顔を見てにやにやする。ミキティは怒るのがあほくさくなってしまい、もう一度お城を作り始める。それをあややが壊す。何度も繰り返す内、遂にミキティは泣いてしまうので、あややは焦って「みきたんがいけないんだよ」などと言う。「壊されるのが分かってんのに、何度もそうやって構ってほしそうに、お城を作り続けるのがいけないんだよ」などと言う。だがミキティは実は泣いていない。あややを困らせようと思って、泣いたふりをしたのだ。それに気付くとあややは怒ってしまう。ミキティが得意げな顔で「あやちゃん、ごめんなさいは?」と言う。あややはふくれっ面で、か細い声ながら「ごめんなさい」と言う。平和だなあと私は思う。
 梨華ちゃんはブランコをこいでいた。「よっすぃー、背中押して」と吉澤さんを顎で使う。へいへい、とめんどくさそうに、吉澤さんは梨華ちゃんの背中を何度も押してやる。梨華ちゃんは「もっと高く! もっと!」と求める。吉澤さんはちょっと苛立ち、力の限り押した。ブランコはかつて無いほど高く上がり、ぐるりと一周するかに見えたのだが、構造上そのような作りにはなっておらず、ガチャガチャと不吉な音がして、気付くと梨華ちゃんは脳天から地面に落ちていた。「ぐっ」と梨華ちゃんらしからぬ生々しい声が喉から漏れた。当然吉澤さんは慌てる。救急車か人工呼吸か心臓マッサージか。胸元に手を添え、梨華ちゃんの唇に顔を近づけたところで、梨華ちゃんが「あたし、もう死んでもいい」と言う。存外平気なのだ。吉澤さんは涙目だった。
389 :名無飼育さん :2012/03/16(金) 02:26
 あいぼんが木に登っていた。ののたんが下から「あいぼん危ないよ」と声を掛ける。「危ないことあるかい。のんもこっちこいや。ええ眺めやで」あいぼんは得意そうに身を乗り出すのだが手を滑らして落ちそうになる。が、もちろんこれはフェイクであり、あいぼんはののたんの反応を楽しみたかったのだ。ののたんは無反応だった。なんや、つまらんな。思って、下りてみると、ののたんがそれに抱きついた。真っ青な顔をしていた。「あいぼん死んじゃうかと思った」と震える声で、あいぼんはそれに少し感動して泣いてしまった。「泣いとらへんわ、ぼけ」「こら加護! またのんちゃんに悪いこと教えて!」向こうからかおりんの声が聞こえた。
 さゆみんとえりりんはジャングルジムの中にいた。さゆみんが「なんか秘密基地みたいだね」と言う。えりりんは「二人だけの秘密の場所だよ」と囁く。「二人ともそんなとこで何してるの?」とガキさんが訊く。二人の耳にはその言葉は入らない。なにしろそのジャングルジムの中は二人だけの秘密の場所で、そこは二人だけの世界なのだ。さゆみんが棒に片足を掛けて、その斜向かいの棒に手を伸ばして「かわいい?」と訊いた。えりりんは「すごいかわいい」と答えた。えりりんは棒に跨って、股間をすりつけた。「さゆ、えりは、どう? かわいい?」さゆは笑顔で「すっごいかわいい」と言った。「やだ! さゆ大好き!」「さゆもえりのこと大好き!」二人は抱きしめあい、体をまさぐりあった。えりりんがまたがった棒はてらてらと濡れていた。ガキさんは二人の行動を観察しながら、「一体二人は何をしているのだろう?」と理解に苦しんでいた。
 裕ちゃんとなっちはベンチに座って話し込んでいた。「これでいいのかな」となっちは不安そうな顔をした。裕ちゃんがそれに「大丈夫や」と答えた。圭ちゃんが「あたしもそこ座っていい?」と訊いた。圭ちゃんに手を引かれたれいなは不安そうな顔をした。なっちが「田中、圭ちゃんのこと怖がってるよ」と笑った。「バーカ、裕ちゃんのこと怖がってんだよ」と圭ちゃんがそれに返した。裕ちゃんは「うちは怖ないで、なっちの方がよっぽど怖いで」と言った。なっちが頬を膨らませ、裕ちゃんは「ほらこれや、恐ろしい顔や」と言って目を背けた。圭ちゃんがベンチに腰掛けると、向こうの方から「ちょっと三人とも! そんなとこで休んでないで仕事してよ!」と叫ぶかおりんの声が聞こえた。裕ちゃんは笑って「いや、カオリが一番こわいわ」と言った。私が怖かったのは、この風景の優しさだった。
390 :名無飼育さん :2012/03/29(木) 20:19
ミキティ

 ミキティに子が産まれたことをニュースで知ったれいなは、まるで我が事のように喜び、祝いのメールを打っていた。「電話の方がいいんじゃないの?」と訊くと、電話では溢れ出るこの幸福な感情を伝えきれないと言った。それは嘘だ、と思った。私の目にはただの不精にしか見えなかったのである。
「ミキティは娘。のメンバーだったよねえ」
「そうだっちゃ」
「しかもれいなちゃんは結構ミキティを慕っていたような気がするんだよ」
「そうだっちゃ、藤本さんはれいなのかけがえの無い大切な先輩なのだっちゃ」
「普通それぐらいの関係なら、お祝いに駆けつけるぐらいするものなのでは?」
 れいなはピタリと動きを止め、私をじっと見た。そして貴様は何も分かっていないという風に首を振った。
「考えてもみるばい。そうやって娘。のメンバーが続々集まったら、まだ産後間もない藤本さんにとっては、負担だっちゃ。祝うつもりが負担になったら、意味がないのだっちゃ」
 私はこのれいなの発言に心底感心した。何も考えていないようで、色々考えているのだ。確かに産後間もなく、ひっきりなしにかかるに違いない電話を取り、月並みな祝いの言葉に応答するのは大変だろう。出産という大仕事を終えて、ミキティはただゆっくり休みたいはずなのだ。病院のベッドの上で一人目を閉じ、子宝に恵まれた幸せと、旦那の愛と、先に開けた将来を思って、ゆっくりとその幸福を噛み締めるべきなのだ。いかに近い関係の人間でも、その安息を打ち破っていい道理などない。挙句「友人の出産にいち早く駆けつける、電話で連絡を取る私の魂ってとても美しい!」と自分に酔うような人間も、少なからずいるだろう。れいなはそういう人間ではないのだ。れいなのメールは、本当にミキティのことを思っているからこその、メールなのだ。不精なのではない。私は感動した。一見ただの不精にしか見えない行為も、そういう魂の美しさに支えられているのだ。
 れいなはメールを送信した。すぐに返信があった。「おお、早いねえ」と私は言った。れいなは得意そうに「れいなと藤本さんとの間には鉄の絆があるのだっちゃ」と言った。れいなは携帯を開き、読む。首を傾げた。
「よく意味が分からないのだっちゃ」
「どういうこと? ちょっと見せてみろ」
 メーラーデーモンだった。私はれいなを抱きしめていたい。
391 :名無飼育さん :2012/03/31(土) 00:25
公園でのお話がとてもとても大好きです。
どうしても我慢できなくなったのでレスさせていただきました。
いつも楽しく拝読しております。
祝美貴帝出産
392 :名無飼育さん :2012/03/31(土) 12:07
ありがとうありがとう。誰も見ていないのではないか、と寂しさに駆られていました。元気が出た。
393 :名無飼育さん :2012/03/31(土) 12:08
保田さん

 数年前の話である。梨華ちゃんは就活に参っていた。どこの面接に行っても「君には一般職の方が向いていると思うよ」と言われる。確かに、そうかもしれないな。受付に座り、こっそりとお菓子を食べ、時折来客に笑顔を向けるような職が、私には合っているのかもしれない。いや、絶対にそっちの方が合っているだろう。情熱的に仕事に取り組むとかいうことは、私にはできない。自分でもそう思うのだ。けれども、なんとなく、プライドというものがあった。折角四年制大学を出て、一般職なんて、なんだか気恥ずかしい。
「よっすぃは商社に決まったんだってね。すごいよね。尊敬しちゃう」
 ふふっと鼻で笑うその笑みに、いやらしい妬みが滲んでいた。よっすぃは梨華ちゃんのそういうところがあんまり良くないよなあと思っていた。無駄に高すぎるプライドというか、手前勝手に決めた妙な決まりごとというか、ネガティビティというか。人と比較しなければ気が済まないのに、人と比較してしまうこと自体に病んでいるその性格が、あんまり良くないと思っていた。
「私でも行けるんだから、梨華ちゃんだって大丈夫だよ。落ちるとしたら、梨華ちゃんが悪いんじゃない。その会社がどうかしてんだよ」
 有り体の慰めの言葉が思わず口をつく。梨華ちゃんは項垂れた。しまった、と思う。
 梨華ちゃんはよっすぃのそういうところが、妬ましいと思うのだ。その優しさが、余裕ぶりが、どれほど私のプライドを傷つけることか、分かっていない。梨華ちゃんはレシートを丹念に折り、それを折り目に沿ってビリビリとちぎった。
 よっすぃはそれをじっと見つめる。梨華ちゃんの言葉を待っていた。下手に何か言うと、一気に爆発しそうな危うさがあった。
「みんな言うじゃん」
 梨華ちゃんがよっすぃの目をキッと睨みつけてそう言った。よっすぃは慎重に言葉を選び、声色を整えて「何を?」と訊く。
「自信を持てとか、自分を信じろとか、そういう」
「ああ」
「それで自信を持てたら苦労しないわけだよね。ていうか」
「うん」
「そもそも私の性格がこういう、なんていうか、卑屈っぽいというか、プライドが高いっていうか」
「うん」
 梨華ちゃんはバラバラになったレシートをぐちゃぐちゃと丸めた。「まあ、どうでもいいや」
「何でも話してくれたらいいよ」
394 :名無飼育さん :2012/03/31(土) 12:08
 よっすぃのその柔和な微笑が、梨華ちゃんは嫌になった。バカだと思われてる、という気がした。見下されている、という気がした。そしてそう感じる卑屈な自分が嫌でしょうがなくなった。私の魂は美しくない。よっすぃの魂は美しい。もう嫌だ。私はよっすぃになりたい。むかつく。何でも上手くこなしてしまうよっすぃが、とにかく腹が立つ。何の悩みもなさそうな、優しい、その笑顔に腹がたって仕方がない。
「何にも話したくないよ」
 よっすぃは苦笑した。よっすぃの顔は、苦笑という表情であってさえも美しい。梨華ちゃんはその端正な顔にツバを吐きかけて、自分勝手な罵詈雑言垂れてやれるほどの気概があれば、どれほど楽だろう、と考えた。けれどもそんなことができるはずもないから、辛いのだった。よっすぃの顔を、もう見たくないのだった。
「帰るね」
「うん」
 引き止めてくれないのは残酷だと思ったし、優しさでもあるのだと思った。よっすぃは私のことをよく分かっている。子どもっぽいなあと自分でも思うし、そう思われているんだろうということも分かる。席を立って、手を振った。
「じゃあね」
「いつでも連絡しなよ」
 多分こっちから連絡することはないだろう。梨華ちゃんは「しないよ」と答えた。
「よっすぃから、連絡してよね」
 よっすぃは笑った。
「分かった。明日、どっか遊びに行こう。美味しいものを食べよう。夜にでもまた連絡するね」
「うん」
 梨華ちゃんは帰った。よっすぃはその場で、早速メールの文面を考え始めた。どうしたら梨華ちゃんを傷つけずに済むだろうか。ふと圭ちゃんのことが頭をよぎった。圭ちゃんだったら、梨華ちゃんにどういう言葉を掛けるだろうか。想像がつかなかった。よっすぃは圭ちゃんでは無いからだ。それに梨華ちゃんでもない。梨華ちゃんの気持ちはよく分かっているつもりだったが、それでも私は梨華ちゃんではない。私はダメだ、とよっすぃは思った。保田さんになりたい、と思った。圭ちゃんではなくて、保田さんに、よっすぃはなりたかった。
395 :名無飼育さん :2012/03/31(土) 12:44
 もしもアイドルをやっていなかったら、みんな今頃何をしていただろう? 私はふとそう思い、れいなに訊いた。「もし、を考えても意味がないのだっちゃ」と分かったようなことを言う。腹が立ったので殴った。
「お前はきっとスウェットにキティちゃんサンダルを履いてドンキに通うような安い女になってたに違いねえよ!」
 圭ちゃんはそれを押しとどめ「まあまあ」となだめる。圭ちゃんにも訊く。圭ちゃんは「さあねえ。考えないこともないけど、案外すぐ結婚とかしてたかもね」と笑った。なるほど、想像がついた。今頃は二児の母ぐらいであっただろう。
 いしよしはきっと普通に四年制大学に通っていただろう、と想像した。上智、青学、立教、あたりの。まずよっすぃが先に志望校を決め、梨華ちゃんがそれとなく追うわけですね。王道だ。梨華ちゃんの学力はひどいもので、よっすぃと同じ大学に行きたいがために、それはもう勉強する。しかし第一志望には落ちる。涙ながらによっすぃに「落ちちゃった」と告げる。よっすぃは本当は受かっているのだけど、「私も」などと言って、第一志望を蹴り、梨華ちゃんと同じ大学に入学する。それは当然梨華ちゃんには知らせない。しかしある時ふと、吉澤母などの口から、ぽろりと漏れてしまう。「梨華ちゃんと同じ大学に行くために、第一志望蹴ったのよ、バカでしょう」梨華ちゃんはこれにショックを受けるわけですね。それは「よっすぃが私のために……!」という感動などではありません。「よっすぃが私に合わせてレベルを落とした。そういう優しさ、気の遣い方。いつもそう。いつもいつもそうなのだ。バカにされてる」という卑屈な感情を伴うショックであるに違いない。AKIRAにおける鉄男と金田、「金田、いつもお前が目障りだったんだよ。どこにいってもボス面しやがって」梨華ちゃんにとってよっすぃは、憧れでもあるし、抑圧でもあるに違いない。王道だ。腹が立つほどの王道。
 私は上のような妄想に基づく物語を二人に語って聞かせた。圭ちゃんが「なんで私が出てくんの」と訊く。
「そりゃあ圭ちゃんは二人の良きサークルの先輩ですよ」
 私って便利だな、と圭ちゃんが鼻で笑った。便利便利、圭ちゃんはとても便利な女です。圭ちゃんは何と言ってもハロプロの母ではありませんか。ウルトラの母ではありませんか。「私は誰の母にもなりたくないよ」と苦笑した。
「そういう役回りは、裕ちゃんでしょう」
「歳が離れすぎてるからダメだ」
「ひでえな。言ってやろ」
「ごめんなさい」
 れいなは退屈そうに鼻くそをほじっていた。
396 :みおん :2012/03/31(土) 23:09
いつも読んでます
れいなだけでなく圭ちゃんがかわいいように感じます
397 :名無飼育さん :2012/04/03(火) 00:54
圭ちゃんはまるでカバのように愛らしいと思います
398 :名無飼育さん :2012/04/03(火) 00:54
シチュエーション


 例えば新歓期の飲み会に、新入生のれいながやって来たらどうするだろう。れいなはぎこちなく「田中です」などと自己紹介をし、着慣れないスーツの裾などを気にしながら指先ばかり見つめている。「何飲む?」と訊くと、メニューをしばらく見つめた末、「なにがなんだか分からんと」と言った。訛りが生々しく響いた。隣の男が「ぼくカシオレで!」と叫んだので、れいなはその男の声の大きさとあからさまに大学デビューくさい(その男は確実に童貞だと思われた)雰囲気に恐怖したのだろう、消え入るような声で「カシオレ……」と言った。
 れいなは恐るべき人見知りのようだった。何を言っても唇の端で引きつるように笑い、指先に視線を落とす。ほとんど喋らない。「はい」か「いいえ」ばかりで、話は一向に広がらない。隣の男が「全然っす! もう全然っ!」と叫んでいたが、何が全然なのかは分からなかった。
 男はすさまじいピッチでカシオレとカルーアミルクを飲んだ。「こんなんジュースっすよ!」と真っ赤な顔で言うが、完全に出来上がっているのは明白だった。喋る度に舌がもつれ、話題は飛び、席を立つと足がもつれた。ふらりと揺れたその体がれいなの体にぶつかり、れいなが「痛っ」と小声で言った。男は気付かない。ふらふらと数歩進み、その場で吐いた。我々は在学生一同は笑いながらその男を呪った。限度も知らねえクソガキが調子こいてんじゃねえぞ。みな、確実にそう思っていた。
 サークルの幹事長は優しい男で、「まあよくあることだよ」と慰めながらトイレに導いた。男はすいませんすいませんを連呼していた。れいなはゲロ溜りをじっと見つめていたが、その横顔から感情を読み取るのは難しかった。嫌悪なのか、歓喜なのか、憧れなのか、どうでもいいのか、よく分からなかった。
「あいつ最悪だな、ほんと、カンベンしろよ」
 れいなは私のその言葉にハッとして、目が合ったが、すぐに指先に視線を落とした。「さっきから、爪がどうかしたの?」と訊くと、「なんでもないです」と手をおしぼりで隠した。「見せてよ」と言っておしぼりをはぎ取ると、それはそれはかわいらしいお手手だった。色が白く、ふっくらとしていて、丁度桜のつぼみを思い出させた。爪先はなめらかなピンク色につやつやしており、ほのかにラメが瞬いているようだった。「オシャレさんだ」と言うと、れいなは首を横に振って「せいいっぱい」と返した。その時の声色と笑顔が耳と目に焼き付いて、私はれいなを抱きしめていたい。
399 :名無飼育さん :2012/04/03(火) 20:54
ボーノボーノ

 桃子が鼻くそを食べるのを愛理が見咎める

愛理 おい
桃子 なに
愛理 もうちょっと隠すとかさあ

 鼻くそを食べる桃子、ごく自然に、当たり前のように

愛理 おいおい
桃子 なに

 歌い踊りながら現れる雅、とても楽しそうに

桃子 花粉症なんだよう

 口を尖らせる桃子、愛理は呆れ顔をする

愛理 ティッシュ使いなティッシュ、食べちゃダメ
桃子 えー?
雅 どうかしたの?
愛理 いや、聞いてよ、こいつ鼻くそ食べやがった

 そっぽを向く桃子、それを見つめる雅、間

雅 美味しいよね、割と
愛理 えー?
桃子 だよねだよね

 雅の肩にすがる桃子、腕組みをする愛理、不機嫌そうに
 保田が腹をぼりぼり掻きながら現れる、ぼさぼさの髪の毛
 足を止め、三人を不思議そうな顔で見る

愛理 ほら、人が見てんじゃん、みっともない
桃子 美味しいんだよ
雅 そうそう
桃子 ね、そこの人、鼻くそおいしいですよね

 「私?」という仕草をする保田、左右を見回す

愛理 やめなさいよ、恥ずかしい
桃子 ね、そこの人
雅 そうそう
保田 さあ、食べたことないけど

 三人に歩み寄る保田、愛理が近づく

愛理 ですよね
桃子 うそだ!
雅 そうそう

 桃子と雅は二人から距離を取り、肩を抱き合って震える

桃子 そんなの絶対信じないから!
雅 そうそう
愛理 いい加減にして! 二人とも!
保田 ははは

 愛理の肩に手を回す保田、びくりと反応する愛理
 保田は愛理の頭のてっぺんから胸元まで、じろじろと舐め回すように見る

保田 私は脇の下とか舐めたいかな
桃子 あ、分かります
雅 そうそう

 声にならない、息を飲むようにして「ひっ」と言う愛理
 三人は顔を見合わせて笑う、小さく「せーの」で声を合わせて

桃子・雅・保田 ボーノでしたー

 三人は上手にはける、恐怖に満ちた表情でそれを見送る愛理
 間、照明が少し落ちる

愛理 ちょっと待ってよ!

 上手に追いかけてって、幕
 幕が降り切ったところで舞台袖からありったけの爆笑をせよ
 私とれいなは手を繋ぎ、再び幕が上がるのを待っていた
400 :名無飼育さん :2012/04/10(火) 23:09
花を見る

 某大学の前を通り過ぎたところ桜が咲き乱れており、前を行くれいなを呼び止めて「れいなさん、ごらなさいよ、桜がおそろしくキレイじゃないですか」と言った。れいなはぽかんと桜を見上げ「ああ」と、まるで言われるまで気付きませんでした、みたいな反応をした。情けない、実に情けない。れいなには感受性が欠如している。目の前にある日本の四季の美しさ、移ろいゆく諸行無常の儚い美しさに言われるまで気付かないなんて、ああ、なんと情けないことだろう。これだから今時の若者はいかんのだ。
 と、そこに某大学の校門からまるで民族大移動の如く夥しい数の学生が次々と排出された。過ぎ行くうら若き女子大生の太ももがピチピチと真っ青にはじけており、当初私はこれらの太ももの大安売りをたまらない気持ちで眺めていた。太ももの桜吹雪だ! とても美しい! と思った。だが、これらの太ももの間に咲き開く女の花弁はうんこのようにサエない男子大学生に舐められ犯されているに違いなく、それも毎晩のように節操がない。
 始めは男の性欲に嫌気が差していた。男の性欲がこんなにも汚らしくしつこいものだなんて! だがある日を境に女は変わるのである。しつこくねちっこいセックスが気持ち良くなってきたのだ。行為の度、女は「もっともっと」と激しくよがり声を挙げ、「中に出して!」とすら叫ぶ。中に出してデキてしまった場合この女と一生を添え遂げる覚悟がおれにはあるのだろうか? 冷静な考えが一瞬男の頭を過るのだが、快楽に耐え切れず、また始めはあんなに嫌がっていた女がこうも自分から求めてくることに絶大なる喜びを覚え、あっ、気付いた時には中に出している。女は目を細めてまんこに手を伸ばす。垂れてくるザーメンを指ですくい、舐める。その光景が男の性欲をどれほど刺激することか! 二回戦、三回戦、なんのそのである。だがある日急に転機が訪れるのである。
「生理が来ないの」うるんだ瞳に、男はこう思う。あんだけ中に出してりゃそりゃそうだよな、だが納得いかない、おれはまだ結婚したくない。
 しかし口から出る言葉は違った。
「結婚しよう」
「ありがとう」
 女は涙する。愛ゆえに? 違う。永久就職内定ゲットの安心感に、涙するのだ。女は日毎ずさんになり、態度も悪く、男はこれまでの中出しとあの日のプロポーズを後悔し続ける。毎日子どもの顔を見る度に思うのだ。
「お前は何も悪くない、ただ、社会が悪いんだ」
 などというストーリーに思い至るとすぐに憂鬱になった。あの美しい太もももこの美しい太ももも、どれもこれも薄汚れていてとても汚らしい! いずれ腐り果てる運命にあるこの太ももの一時の美しさが何ぼのものであるのか! おれはだまされないぞ!
「なあ、そうだろう? れいなちゃん」
 れいなは「は?」という顔をして、桜吹雪に向けて手を伸ばし、人差し指をくるくるやった。そして「キレイな桜っちゃねえ」と言った。私はれいなを抱きしめていたい。
401 :名無飼育さん :2012/04/11(水) 22:59
花が散る

 雨風共に強く、先日の一件以来妙に桜が気になってしょうがないらしいれいなはしきりに「散るんじゃなかろか」と落ち着きがない。
「バカだねれいなちゃんは。桜は散るから美しいんだよ。諸行無常の儚い美しさだよ。その風情も分からないなんて、まったく最近の若者はこれだから困る」
 れいなは私の言葉を聞かなかった。「なんで桜散ってしまうん?」と首をかしげた。イライラした。そういうわざとらしい振る舞いは嫌いなのだ。
「本当に君はバカじゃないのかね。散るから散るんだよ。そんな子どもっぽい疑問を口にするのがかわいいとでも思っているのか? バカやろう! 浅はかなんだよ! 確かにかわいいよ! しかし私はそういうのは一切認めない主義だ」
「でも、桜散ってしまったら悲しか」
「おい! やめないか! いくらなんでもそれは卑怯だぞ!」
 桜の様子を見に行ってくるっちゃ、とれいなは言った。ぶりっこもここまで極まれば信念を感じさせる。止めなかった。
 れいなは三十分少々で帰ってきた。ずぶ濡れだった。まだ散りきってはなかったばい、と嬉しそうな顔をして言う。
「れいなが見に行ったおかげだっちゃ」
「そうだね、まだまだ桜さんも散りたくはないんだろうね。とりあえずお風呂に入りなさい。濡れたままでは風邪を引いてしまうから」
「そうするばい」
 れいなが湯船につかってういーなどとおっさんくさいため息を吐いているだろう時、私は今週末に花見ができないものだろうかと考えていた。ごっちんと圭ちゃんは誘えばまず確実に来てくれるだろう。たまにはあやややミキティなどとも親交を深めたいものである。だが大所帯になりすぎては気が滅入るし、そもそもそういう予定を立てるということが面倒でもあった。大体桜が今週末まで持つとも思えず、花見をするならば先週末が絶好の頃合いだったのだ。
 そう思い至るとなんだかやる気が無くなってしまい、ちんこをいじった。私は暇になるとすぐにちんこをいじってしまう癖がある。皮を剥きつ戻しつ、陰茎と包皮の精妙な機構とそれが為す運動は何度見ても飽きが来ない。私の未使用のちんこは実に鮮やかな桃色をしていた。幼少の折、皮を不用意に剥きすぎて亀頭が転げ落ちてしまう光景を何度想像したことだろう。それは当時の切実な悩みだった。一度転げ落ちた亀頭を再び然るべき場所へ再び置き直す自信が欠片もなかった。私は私のちんこが恐ろしかった。
 何度か剥き戻しを繰り返している内に勃起した。亀頭はパンパンに膨らみ、竿は固く引き締まった。そうなると亀頭は桃色というより梅干色といったことになり、尿道からじんわりと粘性の液体が漏れてくるようだった。それをひとすくいし、舐めるとやや塩辛く、口の中ですぐにサラサラに解けた。れいなと目が合う。いや、合わなかった。私はれいなの顔を見たが、れいなは私の顔ではなく亀頭を見ていた。
「痛そうだっちゃ」
 私は笑いながら「痛くないよ」と言い、皮を戻し、パンツを引き上げた。さすがに少し照れた。れいなも同様に照れているようで、頬に桜が散っていた。花見はいつがいいだろうか、と思った。
402 :名無飼育さん :2012/04/13(金) 21:21
お花見

 新旧メンバーが織り交ざり、私を中心にして輪になった。彼女らは腰を下ろすと開脚し、下はドドメ色から上は薄桃色まで、色とりどりのラビアを眺めながら、アサヒスーパードライエクストラコールドを飲む夢を見た。
 まんこは口ほどに物を言う。何人かはすでに意地汚く涎を垂らしており、「そんなにこれが欲しいか」とちんこを見せびらかすと、飯田さんは顔を背けながら「いらねーよバカ」と言いつつも夥しく愛液が垂れ、裕ちゃんは「ちっさいな」と鼻で笑いつつも目に見えて陰核が肥大しており、小春は「は?」と凄んで見せたが肛門がヒクヒクしていた。素直じゃない奴らである。小春は多分アナルセックスの方が得意なのだろう。飯田さんは欲求不満なのだろう。裕ちゃんはババアだ。なっちはいなかった。きっとどこかの安い男の家でプレステでもしているに決まっている。
 爽やかな香りが鼻を抜けた。くんくん、あっ! これはさゆのラブジュースの香りだ! 俯いて、頬を赤く染めながら、吐く息はか細く荒く、右手の人差し指と中指を実に器用に使ってクリトリスを擦り上げている。自分のまんこを覗きこむようにして一心不乱に手を動かすさゆはとにかく「一生懸命」という感じがした。精一杯生きているんだ。
 隣に座るえりりんは右手を後ろについて、天を見上げていた。左手の薬指がずっぽりと根本までアナルに突き刺さっている。それを軸に手首が円運動する。ゆっくりと、しかし着々と、堅実な歩みで高みに上り詰めていくのだ。えりりんはこういう時に荒い息を吐くタイプではなく、息を詰めるタイプだった。息を大きく吸っては、ピタリと息を止め、然る後、一気に鼻から息を抜く。緊張と弛緩の連続である。えりりんは酸欠から来る軽い酩酊が好きだった。額に薄く汗がにじんでいる。時折ニヤリとするのが不気味でかわいらしかった。れいなはそんな二人を見つめながら乳首いじりに余念がない。れいなのオナニーはいつも乳首いじりから始まる。まんこは貪欲に糸を引いていて、驚くほど臭い。みんな迷惑する。ラビアの色は桜色で実にキレイなのだから、惜しいものだ。
「子どもは見ちゃダメ!」
 と、ガキさんの声が鋭く響いた。ガキさんのお豆さんはちょっとしたちんこ並にでかく、豆は豆でもさやえんどうであった。それはまた逆剥けになっており、溶けたガラスのように赤かった。触ればきっと火傷をしてしまうほどに熱い。
 鬼の形相で9期10期に向かって、見るなこんなもの見るな汚れてしまうなどと叫びながら、実のところ彼女らの子どもまんこに向けるガキさんの視線もまた、彼女のクリトリスと同様に凄まじい熱を帯びているのだ。それに気付かない私ではない。ガキさんは理性の人だから、オナニーなんかしたことがないし、それは実に不潔な行為だと本気で考えるほどに高い貞操観念を持っている。もはや異常とも言える潔癖さであり気高さであった。たとえばお風呂で股間を洗う時だとか、トイレでまんこを拭く時だとか、自転車に乗っている時など、ふと感じてしまう快感に、ガキさんは常にうしろめたさを感じていた。その気高い貞操観念の抑圧のせいで、ガキさんの視線には常に欲求不満の生々しい熱が篭るのだった。私はそんなガキさんのバカバカしい一途さが好きだった。愛ちゃんはふんふんと鼻歌を歌いながら慣れた手つきでバイブを操って貫禄あるオナニーをキメていた。
403 :名無飼育さん :2012/04/13(金) 21:49
 鈴木香音は諸先輩方のマスターベーションを好奇の目で眺めていた。ガキさんの怒声など一切耳に入らないようだった。自分の股の間にある裂け目の奥がこんな構造をしているということが未知であったし、しかも人によってこうも大きく違うということに、まずは驚嘆した。私の知らないことがたくさんあるんだなあと、自分の不勉強を痛切に感じた。鈴木香音は猛省する。まずは見習うこと、真似をすること、そこから始めなくてはいけない。中指を舐め、尻の穴に入れた。うんこが出るような出ないような不愉快な感覚に、思わず笑顔がこぼれた。
 一方、譜久村聖は慣れていた。ごく普通に、さも当たり前のように、クリトリスをいじり、およそ15歳とは思えぬ艶っぽい声で軽く喘いだ。私はこの光景を以前どこかで見たことがある。それはロマンポルノだった。毎夜毎夜激しく求めてくる旦那が急な出張で数日家を空けた時、彼女は自分の性欲の存在に気付かされ、粛々とクリトリスを擦り上げる。目を閉じ、壁にもたれかかって、割れ目から汁をすくい取りながら、クリトリスにこすりつける。それを繰り返している内に薄く漏れる吐息は軽い喘ぎに変わる。それは演技以外の何物でもない。喘ぐことで、彼女は旦那に抱かれるのだ。譜久村聖は今誰に抱かれているのだろう。それは私には分からないことだ。
 工藤遥と鞘師里保は目を見合わせて、視線は違い違いに下に落ちた。それは照れ隠しでもあったし、好奇心でもあったし、幼い欲情でもあった。工藤遥のラビアは薄く短く、やや茶色がかっていた。そんな色なのか、と鞘師里保は感心した。自分のように薄桃色なのが当たり前だと思っていたからだ。
 工藤遥は鞘師里保の陰毛がまだまだ生え揃っていないことを笑い、そのラビアの透き通るような美しい色味と、まるで蝶々の羽のように薄く広い形に目を丸くした。「変なの」と言った。一方私は鞘師里保のまんこを見て「ももいろクローバー」という単語を思い出していた。工藤遥のまんこの意外なほどの毛深さとは対照的で、とてつもなく爽やかだったのだ。工藤遥のまんこは「うりぼう」だった。
 風が強く吹いている。その風は圭ちゃんが腰を前後上下左右にグラインドさせることで起こっているようだった。暴風雨である。臭い汁が四方に飛び散り、みんな甚だしく迷惑していた。
「おいおい、いくらなんでも酷すぎるよ圭ちゃん」
「ください、すぐにください」と私のちんこをむんずと掴む。そのなりふり構わない振る舞いが好きだ。よしよしと頭を撫でてあげた。圭ちゃんは私のその手を取り、人差し指から薬指まで、丹念に舐めた。上目遣いにゾッとした。まんこ同様、目もまた口ほどに物を言う器官だった。私は圭ちゃんを殴った。お花見はそれで終わった。
404 :名無飼育さん :2012/04/19(木) 05:29
アイドル戦国時代

 ごっちんがステージの上で「原色ギャル」などをかわいらしい声で歌い踊ると、男どもは著しく興奮し、奇声を張り上げ、その場でぴょんぴょんと飛び上がりながら手を叩くなどの異常な行動を見せた。それは常軌を逸していた。何かきっかけがあればすぐにでも暴徒と化してしまうように思えた。その公演は2時間ほどぶっ通しで続き、やがて終わった。
 政府公安はこの事態をDVDで目撃する。会議室には全公安部員が集っていた。異常な熱気が漂っていた。頭髪の衰えが目覚しい、今年還暦を迎える公安部長が声を震わせながら言う。「これは国家への反逆行為だ。社会秩序の崩壊だ。見過ごすことはできない」そうだそうだの声が上がり、アイドルは国家的な弾圧の対象となった。アイドルファン達は当然ながらこれに抗う姿勢を取り、一部行動力のある者たちが音頭を取った。彼らが主張するのは主に「信教の自由」であった。
 もちろんアイドル達はアイドル達で結束し、大資本の後押しもあってAKB48,SKE48,NMB48などの大規模な抗争部隊が結成された。一方で草の根の運動もあった。"週末ヒロイン"を標榜するももいろクローバーZなどがその代表例である。
 本来手を取り合って国家的な弾圧に対抗するべきアイドルファンは、ここで二分されてしまった。目的達成のために手段を選ばないノンポリ派はAKB陣営に付き、イデオロギーを重視する者たちは各々思い思いのアイドルの側に付いた。
「思想の無い集団などただの烏合の衆であり、恐るるに足らない。考えても見給え! そもそも電通という大資本が国家の癌であり、この度の弾圧の本質的な原因なのだ! この度のアイドル弾圧は国家的な歪みの氷山の一角であって、我々の勝利はアイドル弾圧のみに打ち勝つことではない。我々の勝利はそんな矮小なところにはない。我々の本当の敵は国家の癌である大資本であり、つまり電通である。AKB陣営に付くことはすなわち電通礼賛であり、国家への反逆を意味する。諸君ら! 恥を知りたまえ!」
 と、ももいろクローバーファンの山上氏はツバを飛ばしながら熱弁した。これに心を打たれ、転向した者も多かったが、AKB陣営のインテリ層はこれを鼻で笑った。
「我々の正義は資本であり、数である。こじはるかわいい。イデオロギーなどもはや古いのだ。あっちゃんかわいい。我々は我々なりの正義を貫くまでのこと。まゆゆの尻の穴が舐めたい」
 血で血を洗う、アイドル戦国時代が幕を開けたのである。我らがハロー!プロジェクトは「争いは好まない」と言って、早々に事業を畳んだ。

 私はごっちんのライブDVDを見ながら、以上のような空想をした。
405 :名無飼育さん :2012/04/23(月) 04:04
4月も半ばを過ぎ

 夜半過ぎ、ふと思い立ってえりりんの家に突撃することになった。れいなは渋り、「外は寒い」「外は雨が降っている」「外は恐ろしいところ」などと文句を垂れたが、「えりりんの家の中は暖かい」「えりりんの家の中は雨が降っていない」「えりりんの家の中は恐ろしくない」と論破してみせると、タクシーで行くのなら可、ということになった。れいなの手を引いて家を出る。
 しとしとと小雨が降り続いており、れいなはわざとらしくぶるぶる震えて「寒か」と上目遣いをした。少し笑う。「寒いねどうも、4月とは思えない」4月とは思えない、と私はここ数年で何度口にしたことだろう。ふと考えた。どうやら毎年言っているような気がした。れいなは「まったくばい」と頷き、コートの襟をぎゅっと立て、そこに顔を埋めてみせた。その仕草が実に女の子らしく、かわいらしかったので、金もないことだし、歩いて向かおうと心を決めた。
 とりあえず歩いていたらいつかタクシーが通るだろうから、と私が繰り返すのに、れいなは段々と機嫌を損ねた。喋らなくなった。足元ばかり見て歩いた。時折足を止める。「早く行くよ」と声を掛けると、遠くを見るように目を細め、顔全体で不服を訴えた。私はこのぬりかべのような表情がとても嫌いであった。青臭いツッパリ具合に腹が立つのである。
「そんな顔したってしょうがないじゃないか」
 れいなは相変わらずぬりかべである。「しょうがないじゃないか」えなりのモノマネをした。笑わなかったので、まあそりゃそうだろうよ、と思った。
「どうすんの? 帰りたいの?」
 尋ねると、れいなはぬりかべのまま「そういうわけじゃなかと」と言った。
「じゃあどうすんの?」
「タクシー」
「だから、通ったら乗るよ」
「どうせウソばい」
「まあそうだけど」
「うそつきは嫌いだっちゃ」
 唐突にれいなが泣きそうになるので、私はやや焦り、分かった。乗ろう乗ろう。金がなんだ。お前を泣かせるぐらいなら、金の1000円や2000円、ちっともおしかないというものさ。ただし明日が絶食となることは覚悟していただきたい。「それはいやばい」ああわがままだ。お前は、なんとわがままな女なのであろうか。れいなは遂に泣いた。私は別に泣かなかった。泣く理由がないからである。
 れいなのつむじを見た。その周辺は黒く、中心部は白かった。頭皮というのは何故かくも青白いのであろうか、と思った。そこを押すと、れいなは裏返るのではないだろうか、という気がしたので、押した。れいながしゃくりあげる。押す。しゃくりあげる。押す。しゃくりあげる。ということを数度繰り返していると楽しくなってしまい、気付くとれいなはもう泣いてはいなかったため、安心した。手を取って歩いた。やはり4月にしては寒すぎるようだった。
406 :名無飼育さん :2012/04/24(火) 02:24
充足感


 えりりんが妙に私にべたべたした。酔っ払っていた。これは酔った弾みの人肌恋しさか、それとも普段は抑えていたけれども本当は、私のことがずっとずっと前から好きだった。酔わなくちゃ素直になれない。という奴なのか。私もまたかなり酔っ払っていた。れいなは寝ていた。正常な判断がつきかねる。
 えりりんは私の腕を取り手を取り、何か細やかなしかし恐らくは深刻なのだろう愚痴を漏らした。内容は全然私の及び知らないことである。恋愛の愚痴であるようでもあったし、人生全体に対する愚痴であるようでもあった。
「こんなことしてたって辛くなるのは目に見えているのにね」
 と、えりりんは何度も言った。こんなこと、が一体どのことを指しているのかよく分からなかった。文脈が追えない程度には酔っ払っている。私はただえりりんに触れられる度、目を合わされる度に、イケるのかそれともイケないのか、そればかり考えていた。
 何時間ほどそんなことをしていただうか。私は梅酒をがぶがぶ飲み、えりりんもまたがぶがぶそれを飲んだ。その内、えりりんの全ての行為や言葉が、本質的には私への好意を示しているような気がしてきた。
 うっとりとしたその目付き、その手つき、胸を押し付けてくる。パンツは見えている。意外にこどもっぽい水玉。劣情に駆られて勢い乳や尻を揉むと嫌がったが、それは拒絶というより、恋人同士の仲睦まじきいちゃつきであるような気がした。私は承認されているような気がした。えりりんに承認されているような気がした。えりりんは私に好意を抱いており、それが今正に表出されているのだという気がした。だが、イマイチ確信には至れなかった。焦れた。イケるのか、イケないのか、どっちなのか。
「なんやねんお前は」
 そう言うと、えりりんは目を閉じたので、それは合図のような気がした。抱きついてキスをすると、拒まれなかった。合意に至った。と、私はそこで確信した。押し倒し、唇を貪り、舌を吸い上げ、顔を離すと、えりりんは酷く幸福そうな顔で、少なくとも私にはえりりんは今幸福そうな顔をしていると認識される程度の表情で、私を見ていた。だから抱きしめて、えりりんの体温と香りと柔らかさに包まれていることに、大変な充足感を覚え、えりりんもまたそうなのであろうと思わせるように私の背中に縋り付いた。足先で寝ているれいなのことを思うと、少し胸が痛んだような気がしたが、この充足感には抗えなかった。私は酔っ払っていた。えりりんも酔っ払っていた。だから誰も悪くなく、ただ酒がいけなかったのである。 
407 :名無飼育さん :2012/04/24(火) 02:55
 目覚めても私は童貞のままだった。当然である。いくら酔っ払っていようとも、童貞は童貞なのである。手際よく服を脱がし挿入するなどという複雑なプロセスが踏めるはずもない。ただちょっと乳を揉んだり股間に指を這わしたりするのが関の山で、あまりよく覚えてはいないのだけど、私の手先がえりりんの核心部分に及ぼうとすると、次第次第にえりりんの態度は硬化し、「やだ!」と叫ぶなどするので、さきほど抱いた私の確信はもはや完全に揺らいでいた。
 ただ抱きしめることや接吻は拒まなかったし、むしろえりりんから積極的に唇を求めて来さえするので、童貞の、実体論者の私からすると、つまりそれは私に為される全ての性的な好意には「私へ対する好意」があるに違いないと考えるナイーブな立場のことだが、そういうロマンチシズムを持ち腐らした童貞の脳裏によぎるのは「だからお前は一体何なのだ」という感情であって、えりりんの行為の先に「私への好意」という実体を感じたくて仕方がなく、つまり端的に言えば私はセックスがしたかったのである。ヤレるならヤリたい。そしてセックスというのは互いの好意が絡みあって上昇していく螺旋なのだ。それが童貞の哲学であった。
 しかし二者の間で交わされる行為の裏に実体的ななにものかがあるという思想は、ナイーブで、ロマンチックで、童貞くさい妄想の産物だった。実体はなかった。関係しかないのだ。
 朝目覚めた時、えりりんの顔がそこにあり、私は昨晩の劣情を引きずって接吻した。えりりんは笑顔を返した。その表情を私は何度も反芻した。私はその時、えりりんの私に対する好意を確信していたのだが、今思えば、その表情は侮蔑だった。童貞への哀れみと蔑みが篭った笑みだった。「童貞ってめんどくさいね」とえりりんは言った。よく意味が分からなかったので問い返すと、「それがもうめんどくさい」とつれない。
「添い寝ぐらいで何か分かったような気にならないで」
 えりりんは悪い女だ、と思った。私はとてつもなく痛い、と思った。れいなを叩き起こして、家を出る時、またねと手を振るえりりんの事務的な表情が更に胸に痛かった。道すがら、私は私でいられる自信がなく、れいなは二日酔いに苦しんでいた。何をしているのだろう。ばかばかしい。もうばかばかしい。何かを期待するのはとても痛いことだ。あらかじめ諦めておくことで、障害に突き当たった時に痛くないというのが私の処世術であったはずが、酒と劣情と期待に一時かどわかされて、バカバカしい。もっと根本的に諦めることだ。もっと根本的に諦めなければダメなのだ。
 れいなが「気持ち悪いっちゃ」と言って道端で吐く。私は私を信じられないし、れいなのことも信じられなかった。もっと抜本的に、れいなのことすらも、諦めてしまわなければいけないような気がした。れいなが吐くのをただ見守り、手をかさない。私は私を抱きしめられないし、れいなを抱きしめることもできなくなった。
408 :名無飼育さん :2012/04/24(火) 18:26
今回の結びは非常に珍しい。
こちらにまで痛みが移ってくるようです。
409 :みおん :2012/04/24(火) 23:09
圭ちゃんはカバのように愛らしいに同意です
二人の関係はどうなってしまうんだ…
410 :名無飼育さん :2012/05/02(水) 02:05
 圭ちゃんがファーストタイムを聞きながら涙を流していたので、ごっちんが音楽を止めた。「なにすんの」「よくないですねえ、よくないと思います」「なにが」「あの頃は良かった、ですか? 思い出に浸るんですか? もう人生をまとめにかかるんですか?」「そういうわけじゃないよ」「じゃあ何ですか?」「いいじゃん、何でも」圭ちゃんは再生ボタンを押した。Goog Morningのイントロのピアノが爽やかで瑞々しい。イエーイ。声も若い。ごっちんの鉄拳が飛んだ。圭ちゃんは翻って裏返った。「だめなんだよ」と言ってごっちんは泣いた。



 私はかおりんに話を聞いてもらっていた。かおりんは私が言い淀む度「で?」と鋭い眼差しで睨みつけるので震え上がった。「おれは何にも決められない人間なんだよ」「で?」「別に。ただそれだけです」「決められるようになればいいの?」「そうね、とりあえず当面の目標はそれです。決断のできる大人の男にですね、私はなりたい」「じゃあ決めかねてる選択肢をいくつか上げてくださいよ」「それがすらすら言えたら苦労しねえな。まずそれが問題なんだよ」「めんどくさいなあ」かおりんは私の目の前に手を差し出し、それをグーに握りしめたので、殴られるのかと思った。身がすくんだ。「カオリが勝ったら、なにもかも諦めること。お前が勝ったら、なにもかも諦めないこと」そう言って、じゃんけんぽん、をした。



 れいなは二日酔いに苦しんだとき、コンビニおにぎりを三つ食べ、ミネラルウォーター(硬水)をがぶ飲みしてから吐けば良い、ということを知っていた。それを実行する。食べて飲んで吐く。それからまたミネラルウォーターで荒れた喉と胃とを洗浄し、ポカリスエットをちびりちびり飲んで寝ていれば、いつの間にか二日酔いは回復しているのだった。寝過ぎからくる貧血で、れいなの足は多少ふらついた。窓を開けると、夜風が爽やかに室内を抜け、毛穴がキュッとしまり、乳首が硬くなるのを感じた。人差し指でそれを撫でると、ますます硬くなるようだった。隣のカトウさん家の明かりをぼんやり見た。眩しかった。



 あややは風呂上りにマニキュアを塗っていた。薄っぺらい男が「それって今塗らなきゃだめ?」と訊いた。あややは答えず、丹念に重ね塗りしては、指を広げてそれを見つめた。「なあ」と肩を掴んだ男に、「ちょっと待ってね」と声を掛けると、何か先端が尖っているものを探し、ボールペンを見つけた。ソフトバンクで貰った奴だった。でっかいお父さん(それは白い犬だ)が付いていて、とても使いにくい。いつ貰ったんだったっけ、と不思議に思った。あまり覚えがない。あややはその位置をしっかり覚えておいた。どうすればそのボールペンを最も素早く的確に手に取れるか、考えた。「いいじゃんネイルなんか、今やらなくたって」「うん、いいよ」そう応えて、あややは体を開いた。ボールペンの先を見つめながら、軽く喘いだ。
411 :さゆ :2012/05/02(水) 02:22
 さゆはかわいいものが好きなの目に優しいものが好きなの心にグッと突き刺さるようなものが好きなのだから鏡を始終見つめてさゆはさゆがかわいいことにくらくらしてしまうのだってさゆはあまりにもかわいいから好きだから目に優しいから心にグッと突き刺さるからさゆはさゆの顔が好きなのさゆはさゆの内面が嫌い。目を瞑ってベッドに潜る時にさゆは不安になるのなぜならさゆの一番好きなものを見ることができないからさゆの嫌いなものを見てしまうハメになるからそれは目に優しくないしさゆの心にグッと突き刺さってエグっていってしまうからさゆは眠ることが好きではないのむしろ眠ることが嫌い。さゆはかわいいものが好きなの目にやさしいものが好きなの心をそっと撫でてくれるようなものが好きなのそれはさゆのさゆによるさゆのための全てなのさゆは何も好きではないのさゆは鏡が好きなのさゆはさゆの顔が好きではないのだってそこにはさゆの内面が滲んでいるからさゆの表面だけをのっぺりと照り返してくれる鏡が好きなのなぜなら鏡は何も映さないからかわいいから目にやさしいからまるで心なんて無いような気がするからさゆはさゆはさゆは何も好きではないの。
412 :名無飼育さん :2012/05/03(木) 02:12
 私はグーもチョキもパーも選べなかった。非常にあいまいなフィンガーサインを供した。「グワシ」とかおりんは言った。彼女はパーを出していた。パーは一番弱いから、パーはグーにもチョキにも負けてしまうものだから。「だけどグワシじゃダメだね、そんなんじゃあダメだよ」私は気持ちを落ち着けて、再度チョキを出した。「いや、後出しもダメだからね」



 圭ちゃんは裏返ったまま「ごとーごとー」と連呼した。ごっちんは「いやです」と言う。「何がいやだって?」「とにかく、いやです」「元に戻してください」「無理です」頼む頼むと圭ちゃんが懇願するのに、ごっちんは「しょうがないなあ圭ちゃんは」と言って、その両耳を掴むとぶるぶる振った。圭ちゃんは感じた。耳が性感帯なのだった。
 圭ちゃんは耳がいい。ふとした声音の震え加減のその裏に、あらゆるものを聞いてしまう。だから聞こえないふりをするのが常態だった。あまりに多くのことを聞きすぎると、圭ちゃんは分からなくなる。自分と他人の境界が分からなくなる。もしかするとこんなのは私の思い込みなのではと、何度も思った。だけれどもいつもいつも圭ちゃんが聞く音は声は感情は正しかった。圭ちゃんは自分が分からなくなる。だから聞こえないふりをする。
 圭ちゃんは感じた。耳が性感帯なのだった。ごとーの言葉は私ではなく、ごとーに向けて言われている。私iはそれが分かってしまう。「しょうがないなあ、ごとーは」「うるさいよ」ごっちんもまた、結構耳がいい子だった。



 あややの腹の中に男の劣情がほとばしる。耳元で荒い息を吐く薄っぺらい男のその耳に、ボールペンを突き立てる。そうしたら男は死ぬだろう。考えていたのだが、当然やるはずがなかった。そんなことをしたら私は人殺しになってしまうから、人殺しにはなりたくないから。だからあややはボールペンの先端に、思いを込めるだけなのだった。お父さん(それは白い犬だ)があややを見ていた。あややはお父さんを見ていた。男は親知らずの痛みをふと思い出した。



 れいなのオナニーはいつも乳首いじりから始まる。肌寒さと性欲の区別がつかなかった。寂しさと愛情の区別がつかなかった。れいなは人差し指を舐め、思い直して薬指を舐めた。これは最近のお気に入りで、人差し指でこすりあげるだなんて、あまりにもはしたなく、侮辱的で、冒涜的で、みじめな気持ちになるから、薬指がいいのだった。
413 :名無飼育さん :2012/05/14(月) 01:51
六畳一間

圭ちゃんは六畳一間の和室に住んでいた。畳がすり切れている。
「だって安いのよ」と圭ちゃんは言った。きまりが悪そうに。
コーヒーが出る。味も香りもないまずいコーヒーだった。
「安い豆使ってんな」
「そうよ。だって安いのよ」
飲み干す。圭ちゃんはラジオを付けた。
「地デジ難民でね」と言い訳がましいことを言った。
ブラウン管テレビが埃を被っている。その上にキティちゃんのぬいぐるみ。
「意外と女の子してるよね」
「でしょ? ユーフォーキャッチャーで取った。200円」
「やっぱそうでもないな」
「なんで」
414 :名無飼育さん :2012/05/14(月) 01:56
私は爪を立てて畳の目を数える。陰毛が挟まっていた。
少し力を込めて引き抜くと、プツリ、とした手ごたえがあって、
その根本に白く透き通った返しが付いていた。毛根である。陰毛の毛根。
私はそれを口に含み、前歯と舌との間でその感触を確かめた。
「ちょっと! やめてよね」
「何の味もしないもんだね」
「当たり前でしょうが」
「がっかりした。なんか、がっかりした」
「よく分かんないけど傷つくわ」
圭ちゃんは蚊取り線香に火をつける。もうそろそろ蚊が出始めて来た。
ライターはそのままタバコの先へ向き、煙が立つ。
メンソールの香りがする、D-SPECの香りがする。
窓が開いている。夏の匂いがする。陰毛は誤って飲み下した。
喉に絡まって不愉快だった。コーヒーがまずい。
415 :名無飼育さん :2012/05/14(月) 01:56
トイレから水音がする。それは小便が便器に滴り落ち、水面を打つ音だ。
「筒抜けだな」
「だって安いのよ」
続いて水がけたたましく流れる音がして、れいなが戻って来た。
「ちゃんと拭いた?」
「もちろんだっちゃ」
「トイレットペーパーがカラカラいう音がしなかったけれど」
「……」
「拭きなさいよ。女の子は小便をしたら拭かなきゃいけないんだよ」
「パンツ履いてるから大丈夫だっちゃ」
「どれ、見せてみなさい」
れいなを押し倒し、股を開かせるとクロッチの部分がずぶ濡れであった。
「全然大丈夫じゃないじゃないか。臭い。最高だ」
「ちょっと、人ん家でそういうことやんのやめてくれる?」
「うるせえな、黙ってろよブサイク」
圭ちゃんはティッシュを二枚取るとそれで鼻をかんだ。ずぶぶぶ、と不愉快な音がする。
れいなは「臭くないっちゃ」と頬を膨らませた。
「くせえよ。鼻が曲がる。最高だ」
416 :名無飼育さん :2012/05/14(月) 02:03
めんごめんご、と言いながらごっちんが戻ってくる。
「コンビニわっかんなくて」
「だから家の前の道をすぐ右に行くんだって。言ったでしょ」
「右ってどっち? すぐってどんぐらいすぐ?」
「それ冗談で言ってる? 本気?」
「マジマジ」
「お箸持つ方が右、すぐってのは玄関を出て……って、ちょっと、ちゃんと聞きなさいよ」
「聞いてる聞いてる」
「バカ」
「うっせ」
れいなは本棚を見ている。どれが面白いか、これは面白いか、
と一々訊いてくるのがわずらわしい。
「どれでもいいから好きなの読めよ」
「どうせ読むなら面白い奴が読みたいっちゃろ」
「知らんわ」
圭ちゃんとごっちんはまだ押し問答をしていた。うんざりである。
「もうお前が行って来いよ」
「なんで私が」
ごっちんが「そうだよ! お前がビール買って来いよ!」と叫んだ。
れいなは扇風機を回して「これ、首が回らんと」と言った。
417 :名無飼育さん :2012/05/14(月) 02:19
圭ちゃんがビールを買って戻ってきた頃には、
もうなんだか「酒を飲むって気分じゃないよね」という感じになっていた。
「折角買ってきたのに」と圭ちゃんは怒ったような寂しいような顔をする。
気の毒になった。ごっちんが「じゃあとりあえず一本」とそれに手を伸ばしたので、
私も「ごっちんが飲むのなら」とそれに手を伸ばした。
「チューハイはなかと? ほろよいとか」
「ビールつってたからビールしか買ってきてない」
「気がきかん人っちゃね」
「なんであんたにまでそんなこと言われなきゃいけないのよ……」
「そうだよ、失礼だよ。いくら圭ちゃんが気が利かんクソ女だとしても、れいなちゃんにそれをなじる権利は無いんだよ」
ごっちんが「そーそー」と同意した。「で、グラスは?」と圭ちゃんを見遣る。
圭ちゃんは唇を噛み締めていた。私は圭ちゃんが気の毒で気の毒でしょうがなく、
「早くグラス持ってこいよクソ女」言ってやった。れいながケラケラ笑う。
「帰れ! お前ら帰れ!」
圭ちゃんが激高するので、
「絶対帰りません」
「圭ちゃんが帰れっつーなら帰るけど、タクシー代出してね」
「チューハイ買って来て欲しいばい」
418 :名無飼育さん :2012/05/14(月) 02:26
私はプルタブを開けた。小気味良い音がする。ああ喉が渇いた。飲んだ。美味かった。
ごっちんも開けた。圭ちゃんも開けた。
れいなは「チューハイじゃなきゃいやばい」とカタクナだったのだが、
圭ちゃんが「うるせえ! ビール飲め!」と更なる激高を重ね、
鼻に缶を押し付けるなどするので、
「分かりました。飲みます。飲みます。飲みますから止めてください」
シオラシクなった。しかしビールが少しこぼれた。
「酒の一滴は血の一滴」とごっちんが激高しはじめ、床を指さして「舐めろ」と言う。
「それは誰に言ってんの?」訊くと、「けーちゃん」と答えた。
圭ちゃんは窮し、
「いやいや、舐めませんから」
「じゃあ、田中ちゃん! お前が舐めろ」
「無理ばい」
「無理と思うから無理なんだよクズ」
どこの体育会だ、と私は思った。
419 :名無飼育さん :2012/05/14(月) 02:38
 床には圭ちゃんの陰毛がたくさん落ちていたので「圭ちゃんの陰毛を5分間の内に何本集められるか」という勝負を始めることになった。私は素早く二本の陰毛を拾い上げる。机の下が狙い目、あとは布団の上が狙い目であった。「普段ここでオナニーしてるんでしょう」と訊くと、圭ちゃんは首を横に振って「しない」と言った。
「じゃあなんで陰毛が落ちるわけ? オナニーするから落ちるんでしょ」
「オナニーしなくたって落ちるでしょ」
「はあ? じゃああなたはオナニーもすることなく陰毛をバラ撒きながら生活してるとでも言うんですか? どうかしてるんじゃないですか?」
「あんたがどうかしてるだろ」
 そんな口論をしている内にごっちんもれいなも着々と陰毛を集めていたのだが、ごっちんが「これさあ、本当に圭ちゃんの陰毛なのかなあ」という素朴な疑問を提出したので、一時騒然とした。
「圭ちゃんの部屋に圭ちゃん以外の陰毛が落ちているということがありえるのだろうか?」
「ありえる。我々のうちの誰かの陰毛である可能性は否定できないのだから」
「れいなはツルツルやけん」
「黙れ」
 私は手元の陰毛の内から一本を選び取り、皆に見せつけて言った。「じゃあこれは誰の陰毛ですか?」「それは圭ちゃんのでしょう」と、ごっちんが断定的に言う。私は次の陰毛を選び「ではこれは?」「それは、誰のでしょうねえ。私か、もしかすると、あなたのかも知れません」これがごっちんの陰毛かもしれないという統計的客観的事実に胸が高鳴った。
420 :名無飼育さん :2012/05/14(月) 02:48
「そうだ、分かったよ。みんな、何本集められるかの勝負は一旦止めて、手持ちの陰毛を机の上に開示してください」
「なんで?」とごっちんが言う。勝負を捨てるのが惜しいのだ。これはブラフだと考えている。机の上に開示した途端、私がその陰毛を横取りすると考えている。違う。ブラフなどではない。私は統計的客観的事実に興味があるのであって、勝負は勝負だが、それは一旦横に置いておいて、この部屋に存在する陰毛という陰毛の、全ての元の帰属していた先のものが知りたいのだ。
「まあ、聞きなさい。まず机の上に全ての手持ちの陰毛を開示します」
「ほう」
「それから、自分の陰毛を、痛いかもしれないが、抜いて、一本ずつ提供してください」
「なるほど」
「れいなはツルツルやけん」
「黙れ」
 私は陰毛を抜いた。力任せであったため三本ほど抜けた。ごっちんがそれを見て「ご立派です」と言う。ごっちんがパンツに手を入れ、陰毛を引きぬく時のわずかに歪んだその顔、それに興奮した。れいなは「ツルツルやけん」と拒んだが、パンツを引っぺがすとケツ穴付近までびっしりと生えていた。「もうちょっと処理とかした方がいいんじゃないかな」とごっちんが神妙な顔をして言う。れいなは「へへっ」と照れた。圭ちゃんは「あほらしい」と拒んでいたのだが、三人がかりでパンツを引き裂くようにして脱がし、「レイプするってこんな感じか」などと言って笑っていたのだが、圭ちゃんは「レイプされるってこんな感じか」と虚ろな目をしていた。剛毛。意地汚く前から後ろまで生え揃った亀の子だわし。そこから力任せに陰毛を引きぬく係は私の仕事だった。握り締め、抜く時、圭ちゃんは軽く喘いだ。「やっぱり、微妙に女の子なんだよね」と言うと、「侮辱だよ」と言って泣きそうな顔をした。すまんすまん、と思った。
421 :名無飼育さん :2012/05/14(月) 02:56
厳正な審査の結果「こんなことをしてもどれが誰の陰毛なのかよく分からない」ということになった。
「まあ分かってたことだけどさ」とごっちんが知った風な顔をする。
「れいなはツルツルやけん」
「いや、ほんとツルツルに処理した方がいいんじゃないの?」
ごっちんはれいなの陰毛の意外な程のアレ具合に心配になったらしい。
「ほら、女の子なんだからさ」ごっちんはれいなの肩に手を添える。説得するような形になった。だがれいなはカタクナである。
「自然のままが一番なのだっちゃ」
「ギャルメイクする女が言う台詞じゃないな」と茶々を入れる。
「メイクはれいなにとって自然なことなのだっちゃ」
「そうですか」
422 :名無飼育さん :2012/05/15(火) 00:53
圭ちゃんが「とっておきがある」と言って出してきたのは魔王という芋焼酎だった。
これは高いんだからと言って自慢気な顔をする。ごっちんは「私焼酎飲めない」と言う。
「日本酒の方が良かった。越乃寒梅」
「無いわよ」
「安い女だからな」と茶化すと、私が安いわけじゃなくて部屋が安いのよと言う。
れいなは携帯をいじっていた。
「なんだよ、誰にメールしてんの」
「絵里に来ないかって」
「はあ? やめろやめろ。あんな女呼ぶな」
「友達だっちゃ」
「クソ女だ」
圭ちゃんが「なんかあったの?」と訊く。そこらへんはさすがと言わざるを得ない。
「何もないですよ。何もないです」
「これはなんかあった感じですねー。いいですねー。青春ですねー」とごっちん、言いながら魔王を注ぐ。
「けーちゃん、氷無いの?」
「二時間待って。作るから」
「待てないですねー。準備悪いんじゃないの? 買ってこい!」
「てめえが買ってこいよ! 私はさっきビール買って来たんだから」
やだやだ、とごっちんはだだっこのようにごねた。
圭ちゃんはふふんと鼻で笑って「しょうがないなあもう」とて家を出た。
私はごっちんにえりりんの話をしようかどうか迷った。
れいなは携帯を閉じる。満足気なその顔を見ると気持ちが挫けた。
423 :名無飼育さん :2012/05/17(木) 19:23
コンパ

 いいんですよと、えりりんが言った。何が「いい」んですって? よく分からなかったから訊いた。とにかく、いいんですよと、えりりんは実に断定的な口調で言った。目が座っている。手に持ったグラスをぐりぐりとこねくり回した。それは男根を欲するあまりの欲求不満な擬似手コキであるように思えた。コイツは酔っ払ってやがるぜ! 酔っ払った女ほど恐ろしいものはない。めんどくさいから関わりたくないのだが、その全ての所作から発される女の色香がたまらなく私に劣情を催させ、その劣情にふらふらとなびいてしまいかねない私の男としての性欲があまりにもみじめで、えりりんの手の平の上で転がされているような、非常に不愉快な感情を抱いた。
 私の連れの男が身を乗り出して「えりりんは彼氏とかいるの?」と訊いた。連れの目は性欲に血走っており、ああ男というのはなんとみじめで醜いのだろう。こうはなりたくないものだ。私は身を引いた。「えっとねえ」と言いながら、えりりんは席を立ち、連れの隣に座った。そして実に簡単に体を預ける。男の手を取り、指を絡ませながら、とろんとした上目遣いで「どうだと思う?」と訊いた。
「いるんでしょ。だってえりりんかわいいし」
「そんなことないよ。かわいい子なんてたくさんいるんだから」
「その中の一人だよね、えりりんは」
 私は酒を煽った。こんなもの見ていられない。こんな安い芝居は見ていられない。さっさとホテルなりなんなりへ消えてしまえばいいのだ。
 さゆと目が合う。「帰りますか」と笑い声で彼女は言い、とろけあっている二人へ向けて侮蔑的な視線を投げた。
「いや、ここで帰ったら負けですよ」
 私は意固地になっていた。このまま二人がホテルへ消えていき、男女の仲になるのもいいだろう。私とさゆが席を外せば、そうなるのも自然の成り行きである。人間というのはそういうものだ。いくら偉そうなことを言っても、所詮はまんこにちんこを入れるために生きているのだ。だがその発端が、目の前で起こってしまったとなれば話は別で、そもそもえりりんはまず最初に私に色目を使ったのだ。もしかすると私がえりりんと男女の仲になったかもしれず、連れの男にえりりんを盗られてしまった、私にもチャンスがあったのに、もしかしたらえりりんは私の方が好きだったのかもしれないのに、そんなことを考えだすととてつもなく裏切られたような気持ちになり切なくなりやりきれなくなり、だからなんとか妨害してやろうと思った。
 さゆは口元を手で覆いながら「負けとか」と言って笑った。
「負けですよ。負けだ。ここで帰ったら負けです。男としてのプライドが」
「そんなものがあるんですか」
「あるんですよ。困ったことに」
「そういうの興味が無い人だと思ってました」
「興味はありますよ。セックスしたい。それもプラトニックな、感情でやるセックスをしたいんです」
「へえ」
「引きましたか? 童貞くさいとか思いましたか?」
「童貞なんですか?」
「そうですね」
「童貞とかはどうでもいいんですけど、ピュアだなって」
「じゃあ、じゃあ話しますけど」
 えりりんが「好き」と言い放つ声が場を割った。それに釣られて見ると、二人は接吻をしていた。家でやれ、ないしはホテルでやれ。ここは居酒屋であり、公衆の場であって、君らが不確かな愛を燃え上がらせ、情事に及ぶ場ではないのだ。だが、えりりんの「好き」に答えて言う「おれも」という連れのその声が目がもはや、えりりんの肉体に対する肉欲ではなく、えりりんの精神に対する情熱で燃えていた。
 さゆはため息を吐き「えりはいつもこれだから」、私は立ち上がって「ちくしょう! 許さねえぞ!」と叫びながら、二人の接吻を引き剥がし、えりりんの唇を奪った。えりりんは拒まなかった。舌が絡みついた。至福であった。さゆと連れと周囲の客の目が、私の身にザクリザクリと突き刺さり、猛烈な後悔と恥辱を感じたが、えりりんの腕が私の背中に回り、唇は一旦引き離され、目が合い、すがるようなその目付きと相俟って、もう一度、今度は連れではなく、確かに私に向けて発される「好き」というその声音に、どうでも良くなってしまい、えりりんの尻をワシ掴んだ。
424 :名無飼育さん :2012/05/17(木) 20:44
観察日記 5/17(木)晴れ

 先生あのね、今日かられいなちゃんの観察日記(漢字合ってますか?)をつけることにしました。れいなちゃんというのはうちの近くに住んでいる女の子で、とてもかわいいです。たまに会うと「おはようだっちゃ」ってへんなあいさつをしてくれるのでオカシイし、かわいいです。れいなちゃんはへんな男の人といっしょに住んでいます。さいしょ、男の人はお父さんなのかなあと思ったんですけど、お母さんはいないみたいだし(父子かていっていうのもあるんだから、それはべつにおかしいことでもなんでもないんだから、そういうことは言っちゃダメだって、そういうのはサベツだって、まえ先生言ってたけど、じゃあどう言ったらいいのか分からないので、こう言わざるをえないのである)、うちのお父さんともなんだかふいんきが違って、なんかちょっときたないし、かっこわるいです。うちのお父さんはかっこいいです。ずっとまえの日記で書いたけど、うちのお父さんは消防士です。人の命を救っているのです。こないだのごはんの時どうりょうが死んだって泣いてました。ぼくはべつに悲しくなかったです。でも悲しそうなふりをしないと怒られるのでいやになります。その日はカレーだったんですけど、ぼくはカレーがとても好きで、いつもなら三杯ぐらいおかわりしても「もっと食べろ」って言ってくれるのにのに、お父さんのどうりょうが死んだって話のときはおかわりすると怒られました。いやになります。ぜつぼうです。カレーを楽しく食べられないかていなんてクズです。そういえば先生がうちのお父さんのことかっこいいって前言ってたのでお父さんに言うと喜んでました。お母さんに言うと怒られました。「いやらしい先生ね」って言ってました。先生はいやらしいんですか? よくわからりません。ぼくはお父さんは好きだけどお母さんはきらいです。お母さんはいつも怒ってます。たまにころしてやりたくなります。ぜつぼうです。れいなちゃんはかわいいので、れいなちゃんがぼくのお母さんだったらいいのになあと思いました。いっしょに住んでるへんな男の人がいなくなって、そのかわりにお父さんがれいなちゃんといっしょに住めばいいのになあと思いました。もちろんぼくもいっしょにです。れいなちゃんはかわいいです。「おはようだっちゃ」とへんなあいさつをしてくれます。れいなちゃんのことを考えるとむねが苦しくなります。ぼくのお母さんになってほしいです。ぼくはいまのお母さんがきらいです。先生のことは好きです。先生もかわいいです。れいなちゃんがだめなら先生がぼくのお母さんになってくれてもいいです。きょかします。しかしげんじつはきびしいのでぜつぼうです。
425 :名無飼育さん :2012/05/18(金) 00:20
キッチン

 夜中にふと目が覚めて喉の渇きを覚えたので、うおー水をよこせーと、北斗の拳におけるモヒカンの真似事をしながら台所へ行くと、ごっちんがシンクの前で膝を抱えてうずくまっていたのでびっくりした。ごっちんはピクリともせず、寝ているかとも思われたのだが「ごっちんなんで居るの」と声を掛けると「居ちゃ悪いの?」と怒った声が返ってくる。悪いこたあないですけれど、どうやって入ったのか、いつから居たのか。問い詰めると「職質みたい、気分悪い」などとご機嫌斜めであり「今何時?」と逆に問い返された。分からんが、十二時は回っているんじゃないでしょうか、と私は返事した。新宿で飲み会が終わったのが十一時ぐらいでそっから電車に乗ったからうんぬんかんぬんと、独り言めいた口ぶりで呟くので、どう受け答えすべきかそもそも受け答えをすべきなのかどうか逡巡している内に「ねえ、ちょっと聞いてる?」と、また怒ったようである。
「聞いてるよ、なんだなんだ、酔っ払ってんのか」
「酔っ払ってちゃ悪いの? なんなのさっきから」
「そりゃこっちの台詞だけども」
「なんで居るのかとか酔っ払ってんのかとかさあ」
「だってそれは当然の疑問でしょう」
「職質みたい、気分悪い」
 ごっちんは顔を膝に埋めて、ああ気分悪い本当に気分が悪い吐きそうなどとまたぶつぶつ言った。
「電気つけていい?」
「ダメ」
「なんで?」
「気分が悪いから」
「トイレで吐いて来なさいよ」
「いやだ」
「なんで?」
「気分が悪いからだよ。何度も言わせんな」
「いやだから気分が悪いなら吐いてしまえばいいのではないですか? とね、私は提案しているわけで、あと電気つけていい?」
「うっせーんだよ。指図すんな、気分悪い」
「なんなのだお前は」
426 :名無飼育さん :2012/05/18(金) 00:20


 ごっちんは顔を上げると、あんたこそ何なのほっといて出てって良かったら死んでとハッキリした口調で、半ば叫ぶようにして言った。これは敵わんぞ。酔っ払った女ほど怖いものはこの世には無いからな。私はふと喉の渇きを思い出し、
「ちょっと、水飲みたいからそこどいて」
「飲めば?」
「そこに居られると邪魔なわけよ。水くめないじゃん」
「知らねーよ知らねーよ知らねーよ」
 腹が立った。こんな女は放っておいて、水飲んでさっさと寝よう。コップを取り、蛇口を
捻るとキュッという無機質な音が響き、ダラダラダラと流水がシンクを打つ音が響いた。水をくもうとした私の腕をごっちんの腕が引き、水がこぼれた。冷たっ、とごっちんが言う。「お前のせいだろうがよ」
「謝れ」
「いやです。絶対に謝りません。このクソ酔っぱらいが」
「私も水飲みたい」
「勝手に飲めばえーんちゃうんか」
 さっきからさあ、とごっちんが不服そうな声を上げる。本当に酔っ払った女はめんどくさい。うるせえな、なんなのだ、もう帰れよお前、言おうとしてごっちんの顔を見ると目が合った。この薄暗さに目が慣れてきたものらしい。水が飲みたい、とまた言う。それは怒っているような声では無かった。どちらかと言うと甘えるような、縋るような声で、その目つきもまた縋るようなものであったように思える。嫌な予感がしたので、飲んだらえーがなと冷たく言った。
「くんでよ」
「自分でやれ」
「酔っ払ってるからさあ」
「知らんがな」
 ごっちんが私の脚に両腕を回して縋り付いた。おっぱいの柔らかさを感じる。私は動揺し、そういうの止めてよね、勃起するだろ、と冗談めかして言ってみると、ごっちんは顔を上げ、私の股間に頬を擦りつけた。
「勃起すんの? 私で?」
「当たり前だろうが」
「ふーん」
 ごっちんの手が股間に伸びるので、その手を叩き落とした。
「女の人は怖いな」
「怖くないよ、やさしーんだよ」
「どこがだ」
「教えないけどね」
 ごっちんはすくりと立ち上がり、私の手からコップを奪い取ると手際よく水をくみ、それを一気に飲んだ。ごくりごくりと水を飲む音が生々しく響き、それに合わせて喉が波打っていくのを、私はただただ呆然と眺めていた。ごちそーさま、とコップを返すと、
「じゃ、帰るわ」
「ああ、帰るの」
「帰るよ」
「帰れんの?」
「帰れるよ」
 そうかじゃあ気をつけてと、私は手を振った。ばいばーい、と何度も言いながら、ごっちんは玄関を出た。水を飲んで一息ついてから、私は猛烈に後悔した。あの流れ、絶対にヤレただろう、と思った。なぜいつもいつもこうチャンスを逃すのか。自らフイにするのか。おれのいくじなし! 私は私を呪った。ズボンを下ろし、パンツも引き下げて、脚に縋りついていたごっちんの体温と、水を飲む時波打つその喉を思い出しながら、未だ勃起収まらないちんこを擦り上げて射精し、せめて想像の中でだけでも思いを果たそうと、ちんこを掴んだところで突然台所の電気が明々と点灯し、まぶしい! れいなが「水をよこせー!」とおどけながらちんこを掴んだ。私は射精した。
427 :名無飼育さん :2012/05/18(金) 03:57
冤罪

 電車、特に意識をするでもなく向かいに座った女の顔を見ているとふいに目が合い、なんだか気まずくなって目を逸らすのだけど、そうすることで「私はあなたの顔をじっと見ていました」と宣言してるような気分になって、それは当然事実とは異なり、なんといっても私はただ何も考えることなく、左右に広がるそのシートの、たまたま私の向かい側、目の前にあなたが居たから、私が前を見ていると必然的にあなたの顔が私の視界に入るから見ていただけで、ほとんどその背景にある窓の外の景色の一部のように、あなたの顔を見ていただけであって、何もあなたの顔を見ようと思ってあなたの顔を見ていたわけではないのだから、なぜ目を逸らさなくてはいけないのだろう。なぜ「私はあなたの顔を見ていました」などと宣言しなくてはならないのだろう。床を見つめながら考えた。
 ザ・コミュニケーション。視線が交差するということは現象としてはただそれだけで、そこに何かしらの意味や意図が常にあるわけではない。ただ目が合っただけだ。深い意味などないのだ。私だって何も考えていなかったのだから、向こうだって別に考えていやしないだろう。私はもう一度気を取り直して顔を上げ、しかし一抹の不安を抱きながら彼女の顔を見ることになるわけなのだったが、彼女は手元の携帯端末に没入していたから安心した。
 彼女のまつ毛は長く、マバタキの度に空気がそよぐような気がした。天然物だろうかつけまつ毛だろうかまあどっちでも長いことには変わりがない。どっちらでも良い。左手で端末をガッチリとホールドし、右手の指先がタッチパネルの上をたまに這う。メールでもしているものと思しい。もしかするとTwitterかもしれないし、Facebookかもしれない。なんだったら私が知らないだけで彼女はそれなりに知名度の高い地下アイドルであったりするかもしれず、だとすればファンからのブログのコメントに返信しているのかもしれない。いずれにせよその慣れきった所作が好きだ。
 彼女は電車が駅に着く度に顔を上げ、入り口の上にある電光パネルを見るようだった。その度に私は目を伏せて「私はあなたの顔なんか見ちゃいませんでしたよ」という風を装う。頃合いを見計らってまた彼女の顔を見る。そして考える。
428 :名無飼育さん :2012/05/18(金) 03:59
 彼女は一体どこの駅で降りるのだろう。ずいぶんかわいらしい顔をしているけれども、やっぱり男がいたりするのだろうか。もしかするとこれからその男の家に行ったりするのだろうか。やっちゃうのだろうか。やっちゃうとしたらどのようにやるのだろうか。彼女から誘うのだろうか。それとも男から誘うのだろうか。仮にやっちゃうものとして、するとなれば今彼女が身に付けている下着というのは何色なのだろうか。どのような生地で、どのようなスタイルのものなのだろうか。ややロリータ、ポップ気味な服装から察するにドギツイ原色やTバックなんてことはないだろう。だからと言って白の綿パンだなんてことも考えにくい。レースも無いだろう。ベージュだなんて、もっとあり得ないことだろう。そうだ、水色だ。水色のパンツが彼女には似合う。彼女の男もきっと水色の下着が好きなはずだ。奇遇なことに、実に奇遇なことに、彼女の男と私とは趣味が近い。
 彼女は男の家に着くなりきっと笑いながら「疲れた」などとため息まじりに言い、男はそんないつも通りの彼女の顔に安心して「おつかれさま」などという優しく慈愛に満ちた言葉を掛けて差し上げるに相違なく、彼女は帰り道に夕飯の材料を買ってきている。「今日は肉じゃがでも作ろうかと思って」そりゃあいい! いいじゃん、おれ肉じゃが大好きなんだよね。男は材料を持ってやる。その間に彼女はブーツを脱ぐ。そのブーツはたっぷり一日履かれた彼女の匂いを蓄えていて、男はその段階ですでにむらむら、さっさと肉じゃが食っちまって、はやく彼女の足の匂いを嗅ぎながらファックしたいぜ、なんて考えているのだが、いい男なものだから、少なくとも彼女の前ではいい男を演じているものだから、「いやあ、お前の肉じゃがが食べられるだなんて、おれは幸せものだよ」なんて言うのだが、彼女は照れ屋なものだから「ばーか」とか言っちゃって、素直ではない。彼女も肉じゃがなどどうでもいいのだ。ファックしたい。ファックしたいから男の家にこうして来ている。私、今日はあなたの好きな水色の下着をつけているのよ。そう言いたいのだ。早く早くファックがしたい。でもそうは言わないのだ。なんとなれば彼女は貞淑で、肉欲の少ない女だから、少なくとも男の前ではそれを演じているから、「じゃあ早速肉じゃが作っちゃうね」ファックしたい、その欲望を二人共包み隠しながら、真心篭ったファック仕立ての肉じゃがが出来上がる。酒とみりんと醤油とファックで味付けされた肉じゃがは実に美味いことだろう。舌鼓を打つ。その間に、私は彼女のブーツをそっと盗み出す。彼女の体と君たちのファックはお前にくれてやるけれども、彼女の今日という一日、何物にも代えがたい本日、「本日の彼女の体臭、レザーブーツ仕立て」、それは私のものだ。それはおれのものだ。彼女の匂いはおれのものだ。
429 :名無飼育さん :2012/05/19(土) 16:39
おっぱい

 保田さんがおっぱいを寄せて上げるブラジャーをつけようとしており「ちょっと、見てないで手伝ってよ」と振り向きざまに言うので、そうかそうかよしよしとて不恰好に回された後ろ手を取った。「手持ってどうすんの、ここ持ってここ」「保田さんの手あったかいです。かわいいです」「いや、そういうのいいから」
 私は示されるがままに両ホックを手に取った。ぐいぐいと引くのだが、どれだけ無理をやっても物理的にこれを閉じるのは不可能であり、その両ホックは永遠に咬み合わないように思われた。「これサイズ合ってないんじゃないですか」「小さめのを無理につけるのが盛るポイントなんだよ」「そういうものですか」「そういうものです」「でも無理ですよ」「無理だと思うから無理なんだってば」「無理ですよう」
 保田さんは眉をしかめて「ああん?」と言った。恐ろしい顔だった。「無理ですよう、じゃねーよ。かわいこぶってんじゃねーよ」「ぶってるんじゃないですよう。かわいいんです」「そうですか」「そうです」「もういいや」
 私の手を払いのけると、ふんっと息を飲んで、一気呵成にホックは閉じられた。私は驚嘆した。手品か何かを見ているようだった。保田さんが私の方へ向き直ると本来は平面に近いはずの圭ちゃんおっぱいがたゆんたゆんと揺れていた。「すごいですね」「これが熟練の技ってもんよ」「本当にすごい」私は保田さんのたゆんたゆんな圭ちゃんおっぱいを指でつついた。「尊敬しな」「しませんけど」「なんで」たゆんたゆん。保田さんは「人の胸をおもちゃにすんじゃないよ」と笑ったが、むしろ私が保田さんにおもちゃにされたいような気がした。
430 :名無飼育さん :2012/05/19(土) 16:39


 ほい、まず息を吐き切って、はい止めて、もうちょっとそのまま、うーん、もっと息吐けないの? と保田さんが言った。無理です、と私は答えた。無理じゃねえよ、無理だと思うから無理なんだよ、あんたも私のように魅惑の盛りおっぱいになりたくないの? なりたいです。私も保田さんみたいに魅惑の盛りおっぱいになりたいです。じゃあもう一回やるよ、はい、息吐いて、もっと、もっと息を吐いて、これ以上吐くと内蔵が潰れちゃうよおんあはあんって、ぐらいまで吐いて、ほらほら、もっともっと、まだだよ。まだ足んねえよ。私はクラクラした。「無理です。死んじゃいそう」分かんねえ奴だな、無理だと思うから無理なんだってさっきから言ってんだろ。それに喋れるってことはまだ息を吐ききってないってことだ。限界を突破するんだ。限界を突破した先に魅惑の盛りおっぱいが「無理です」「ああもう、うるせえな! 黙ってろ!」空気を抜いてやる。お前の空気を抜ききってやるよ。私の口が何かによって塞がれ、それと同時に何かが突っ込まれる感覚がし、それが保田さんの唇であって舌であることが期待されたのだったが、大変残念なことに私の視線の先には掃除機があった。スイッチがオンされる。ぶおおおんとけたたましい排気音が鳴り、空気どころか内蔵が全て持っていかれるような狂おしい苦痛を感じた。魅惑の盛りおっぱい、全ては魅惑の盛りおっぱいのためなのだ。保田さんの目は崇高なる使命感に燃えていた。私は保田さんの肩に手を掛けると、その目に訴えた。死んじゃう! いいんだよ、死んだっていいんだよ、むしろ死んでからが本領というものだ。肉体の限界を突破した先に私たちの愛があるんだ。私は保田さんの言っていることがさっぱり分からなかった。死んでしまったら終わりである。全然意味が分からない。保田さんはどうかしている! 私はもっと普通に、尋常に、保田さんの愛を感じたいのだ。おっぱいを揉みしだき、まんこを音立てながら舐めてほしいのだ。「どこがいいの?」「そこがいいです」「そこじゃ分かんないな」「まんこ!」そういうやりとりをしたいのだ。私はそういうことをしたいのだ。そういう意味合いでおもちゃにされたいのだ。保田さんのやることにはついて行けない。だって死んじゃったら終わりである。掃除機を止めて! 魅惑の盛りおっぱいなんてどうでもいい! お前は分かってないよ。何にも分かっちゃいない。おもちゃにされたいって言ったのはお前だろう。なのに何故拒むのか。魅惑の盛りおっぱい! それを作ってやろうというのだ。これが私の愛なのだ。お前は何も分かっていない。死んでも当然だ。私は絶頂に達した。
431 :名無飼育さん :2012/06/05(火) 02:43
愛してると言ってくれ

 飲み会、桃子は隣りに座った男に「ももちあれやってあれ」と無茶な振りをされ、あれってのはなんなんだよあれってのはよ、思いながら、「ももちです♪」「うっわーマジでやったよ、クソさみー」「なによう、そんなこと言っちゃダメだよ♪」「ははは、うぜー」ああ何をしているんだろう私は、死にたい、と考えていた。死にたいというのは言い過ぎとしても、こんな飲み会からはさっさとおさらばしたいと思っていた。そもそもハナから気が乗らなかったのだ。男どもが愛理目当てであるのはあまりに明白で、愛理に直に声かけるのはためらわれるものだから、桃子経由ならいけんじゃね? いーねー、まあああいうキャラも一人ぐらい居たら、面白いんじゃね? 興味ねえけど。ああいう女嫌いなんだよね。そんな会話があったのだろう。私はダシに使われたのだ。そんなことは承知の上ではあったのだが、生来のサービス精神の旺盛さからなんとなく男どもが気の毒になり、性欲の包み隠し方も知らない彼らがいじらしく哀れな生き物に思え、サービスしてやりたいと思い、その結果がこれか。こんなもんか。男どもは所詮こんなものか。クソガキが。やりたいだけのクズどもが。
 愛理は二杯目のカクテルで既にとろんと酔っ払っていた。男の手が肩に回ろうとも、さほど気にしないようだった。むしろそれを好んでいる節さえあった。桃子は男どもの分かりやすさに辟易したし、しかし愛理よ、お前もそんな感じか。そんな安っぽそうな男、そんな精神のどこかが根本的に低そうな男にベタベタと触られて、お前はそれでええのか。乙女の純情はないのか。乙女の恥じらいはないのか。乙女のプライドはないのか。私は帰るよ。もう帰ります。好きにしたらええのんや。責務は果たしました。後はよろしくやってくださいや。私は帰る。耐えられない。つまらない。あんたはホテルなりなんなり、行ったらええのや。精神のどこかが根本的に低い男にヤラれてしまったらええのや。
 財布を取り出して「じゃ、ももちはお先にしつれーしまーす♪」と言おうとしたところで、横から腕が伸びた。「何財布出してんの?」「え? 帰ろうかと思って」「なんで?」「ほら、明日も早いんで」「愛理ちゃんはへーきだって言ってたよ。おんなじグループでしょ?」「芸能界色々あるんでー」「帰るなよ」そのまま腕はぐるりと首に巻き付いて、酒臭い吐息が顔にかかった。「な、帰るなよ」桃子は顔をしかめ、男の顔を見た。その顔の奥底に、たぎるような性欲の奥底に、精神のどうしようもない低さが覗いているような気がしたのだが、「まだもうちょっとぐらい大丈夫だろ。お前が帰ると寂しいじゃん」ああそうか。これは寂しさという名前を与えられるべき感情だったのか。そう思うと目の前の男が妙にいじらしく、かわいらしく思え、桃子は横目でチラリと愛理の様子をうかがった。愛理は笑いながら、カクテルを舐めていた。何を考えているのだかよく分からない、座った目をしている。
 桃子は座り直して「分かった」と答えた。男が喜ぶ。そしてビールを注いでくる。一つも美味いと思えないビールだったが、一息に飲んだ。喉から胃へ向かってストンと落ちていく炭酸が爽やかで、嫌いだった苦味はあまり感じなかった。すぐに胃のあたりがじんわりと熱を帯び、アルコールが頭の先へ回っていく感じが、実にダイレクトに感じられた。もしかするとビールは美味しいのかもしれない。私は何か間違っていたのかもしれない。そんな気がした。男の腕がまた改めて肩に回り、それが別に嫌な感じがしなかった。しょうがない、という気がしたし、むしろ私は私でそれを喜んでいる、という気がした。向かいの男が「ももち踊ってー!」と叫んだ。いやなこった、なんでてめえの指図で踊らなきゃならないんだ、私は仕事でやっているんだ、踊ってほしけりゃギャラ払えよな、でも、しょうがない、おまえたちきみたちあなたたちは、ちょっと、あまりにも、哀れで、いじらしく、愛おしすぎる。
「じゃ、ももち踊りまーす! ほら、愛理もいっしょにやんだよ。こらてめえ! 愛理の体に馴れ馴れしく触んじゃねえよ! ぶっ殺しますよ!」
 桃子と愛理は踊った。拍手拍手ビールビール。桃子は男どもの赤ら顔を見回しながら、誰か私に愛してると言ってくれ、と思った。
432 :名無飼育さん :2012/06/10(日) 23:18
乱暴と電話

 れいなが暴漢に襲われたという電話を受けた私は居てもたってもいられず矢継ぎ早に質問をまくし立てた。いつ? どこで? 誰が? どうやって? どこまでの行為に及んだのか? 電話先の警官は「まあ落ち着いて下さい」と半ば呆れた声で言ったのだが、これが落ち着いていられるものですか!
「お気持ちはお察します。しかしれいなさんはご無事ですので、ええとまずは何でしたかね?」
「いつ?」
「そうですね、さきほどです、ほんの数十分前」
「どこで?」
「荻窪です」
「なぜ荻窪なんかに?」
「知りませんよそんなこと、本人に聞いてください」
 れいなが電話に出た。げんきげんきだからだいじょうぶばい、というようなことを言っているようなのだが、舌がもつれごうごうと鼻息のような音がするのでまるでよく分からなかった。酔っぱらっているようだった。元気で大丈夫なら良いのだけれど、なんでお前は荻窪なんかに居たのか、と訊くと、荻窪はいいところ、そう、とてもいいとこなのだっちゃね。コイツはだめだ。お話にならない。警官にかわれ。いやばい。お巡りさんはとても悪い人、悪人面をしているのだっちゃ、れいなはこのおっさんに乳を、そこまで言ったところで「あ、もしもし? ご用はお済みですか?」と警官が出た。さっきの、れいなの言葉をどう解釈すべきなのか、いささか迷った。
「れいなは酔っ払っていますね」
「そうですね、とても酔っ払っていますよ、危ないですよ、こんな時間に酔っ払った若い女の子が一人でね、しかもかわいらしい、猫のように愛らしいではないですかこの子は、ほんと、気をつけないと、さっきだってぼくがたまたまパトロールをしていなかったら、危ないところだったんですよ」
「危ないというと、つまりどういうことなのですか?」
「それはあれですね、あんまり大きな声でも言えないですが」
「いいですよ、言って下さい、構いやしないですよ、われわれ二人の仲でしょう」
「それもそうですね、それもそうだ、つまりあれです、セックスです」
「ああ、セックスですか、やっぱり、想像はしていましたが、そうか、セックスですか」
「そう、セックスですよ、危ないところだった」
「ほんと、良かったですよ、お巡りさんがたまたまパトロールをしてくれていて」
「いやいや、これが仕事ですからな」
「ご立派です、立派なお仕事です」
「ありがとうございます。では」
 電話が切れ、私はれいながこれから警官に犯されるだろう様子を想像してオナニーをした。いっぱい出た。
433 :名無飼育さん :2012/06/11(月) 10:33
飯田さん

 「田中れいなと一緒にバンドをやりたい女子メンバー募集」のオーディション会場で飯田さんがスピーチ、つまり前説を垂れる。下は15から上は22までのうら若き、夢見がちな乙女たちの、憧れと不安でキラキラ光るその瞳に対して、いいか、貴様らはクソだ。クソ以下の存在だ。芸能界に憧れて、アイドルに憧れて、しょうもない自意識を満たすために貴様らはここにいる。自意識はクソだ。貴様らはそのクソの回りをいつまでもぐるぐる回り続けるハエだ。貴様らは何者にもなれない。この会場にいる内のほとんどがこの一次選考で落ちる。なぜならば貴様らがクソ以下のハエだからだ。どうして真っ当に生きようと思わないのか。どうしてこんなオーディションに来てしまったのか。さしたる覚悟もなしに、アイドルになろうなど、なぜ思ってしまったのか。貴様らには覚悟が足りない。一切の覚悟や信念というものが欠けている。芸能界を舐めてはいけない。アイドルを舐めてはいけない。ハロプロを舐めてはいけない。モーニング娘。を舐めてはいけない。田中れいなを舐めてはいけない。私を舐めてはいけない。貴様らはクソだ。クソ以下のハエだ。私は偉い。絶対的に貴様らより優れている。なぜならば私は飯田圭織であり、私はモーニング娘。のために死ねるからだ。貴様らは死ねるか? 無論モーニング娘。のために、とは言わない。貴様らはモーニング娘。になるためにここにいるわけではないからだ。田中れいなのために、田中れいなと一緒に組むバンドのために、死ねるのか? 死ねないだろう。貴様らは自分の自意識のためにしか死ねない。哀れな存在だ。クソのために生き、クソのために死ぬ存在だ。私の話を聞いても、それでもまだこのオーディションを受けたいと思う奴は手を挙げろ! いないのか? おい! そこのツインテール! お前は田中れいなのために死ねないのか? 「無理です。私は私のために生きていますから」それだからクソなんだ。自分のために生きようなどと思うのならば、まっとうに仕事をしろ、高校を出て、大学を出ろ。そして年上の金持ちを捕まえて結婚しろ。子どもを産め。幸せな家庭を築け。それがクソにお似合いの人生だ。自分のためにしか生きれないクソにはお似合いの人生だ。今すぐ回れ右して家に帰れ、そして勉強しろ。おまえ、いくつだ? 「15です」まだ間に合う。すぐに帰れ。すぐに帰って英単語を覚えろ。いい大学に入れ。そうだな、慶応か、上智がいい。サークルに入れ。そこで理系の男を捕まえろ。文系は駄目だ。クズだ。おい! そこのピアス! お前はいくつだ? 「22です」今何をしている? 「音楽やりながらフリーターしてます」最低だ。お前はもう取り返しがつかない。諦めろ。なんとかして稼ぎのいいサブカル男を捕まえろ。「いやです」お前は何のためになら死ねるんだ? 「音楽のためになら死ねます」最低だ。音楽のために死ぬだなんて最低だ。クソ以下のハエの中でも最も救いようもないハエだ。いいか、よく聞け、我々には音楽なんて不必要だ。音楽はしょうがなくやっているんだ。アイドルが歌って踊るのは、別に歌や踊りが好きでやっているわけではない。アイドルがアイドルとしてステージ上で機能するためには歌か踊りか裸しかないんだ。それ以外に道があるものなら、それ以外の道を取るに決まっている。お前はダメだ。クソだ。音楽のために死ぬようではだめだ。アイドルのために死ね。モーニング娘。のために死ね。私はモーニング娘。のために死ぬ。だからお前もモーニング娘。のために死ね。いいか、貴様らはモーニング娘。のために死ぬんだ。それ以外のことで死ぬのは許さない。それ以外のことで死にたいのなら家に帰れ。結婚して幸せな家庭を築け。私からは以上である。
 つんく♂は飯田さんからマイクを受け取ると、まず苦笑した。それから「ま、飯田が色々派手なこと言いよったけど、楽しくやれるメンバーが見つかればいいな、とおれ個人は思います」と言った。飯田さんがつんく♂をものすごい目で睨んだ。れいなはステージのすみで恐怖に震えて縮こまっていた。
434 :名無飼育さん :2012/06/17(日) 21:00
家庭教師のトライ

 れいなが女子高生の折、私はれいなママに頼まれていくらか勉強の面倒を見たことがあった。その当時は私もまだ博士課程の大学院生であったということもあって、親戚からの信頼や尊敬は厚く、「あそこの息子さんは本当に出来が良い」末は博士か大臣か、ほんとうに、それぐらい牧歌的な時代であり、私もなんとなくそれで人生どうにかなるような気がしていたのだったが、それはまあそれとして、れいなと私との面識は薄く、正月や法事などで顔を合わせるぐらいのもの、言葉を交わすとしても軽いあいさつ程度、私は姪であるれいなの成長の目覚ましさに毎年目を見張っており、酔っ払って寝入ってしまったフリをしながら、白くおもちゃのような太ももの間から覗くパンツを飽かず眺めている。れいなが中学生の時分には、年齢なりの、パステルカラーの、綿生地の、子どもらしい柄のパンツなどであったものが、年を重ねるにつれ、キラキラするサテン地のようなシルクのパンツになり、色はドギツい原色になり、時折クロッチ部分の両脇から天使の羽が覗いていたりと、しっかりと大人の階段を登って行っているれいなのパンツと股間に対して、切なさと劣情を覚えていた。
 そんな折の依頼であったから、私はれいなのカテキョを二つ返事でOKした。れいなママは「あなたに見てもらえるのだったら安心だわ」と何度も同じ事を繰り返すので、「ぼくに任せて貰えれば安心ですよ」と何度もそれに応えた。週に三度、田中家へおじゃまし、二時間程度勉強を見る。その後でご飯を頂いて帰る。報酬は気持ち程度でいい。とはいってもいつも10万近く包んでくれていたから、貧乏学生である私にはとても助かったし、それ以上に週に三回もれいなの傍につきっきりで居ても良いということがすばらしかった。れいなの頭の悪さには辟易したが、女子高生たるれいなの髪の毛から制服から芳しく香る若き甘い体臭にクラクラし、何度押し倒してしまおうかと思ったことやら分からないが、そのあたりに関してのれいなの女の勘は鋭敏であり、ふいに伸びをして「疲れたばい」などと言いながら、いたずらっぽい上目遣いを投げたりし、その声が目が私の行動を抑圧するので、「そうかね、疲れたかね、じゃあ一休みしよう。お茶もらってくるよ」しどろもどろに言いながら、部屋を出て、おれのいくじなしおれのいくじなし、女子高生ごときにいいように手の上で転がされているとはなんと情けない、押し倒してしまえばいいんだ、後のことなど知ったことか、おれは今が大事、今が大事、人生いつも今が大事、そのはずなのに、なんなのだ一体、ふざけんなよ、バカにしやがって、小娘ごときが、思いながら、風呂場へ直行すると、洗濯カゴの中かられいなのパンツを探しだして、それの匂いと味をしっかりと確かめてやり、臭い、苦い。お前の身体それ自体はおれの思うままにならないかもしれないが、お前のパンツはいつでもおれの手中にあるのだ。ギンギンにいきり立ったちんこを素早く取り出して素早く発射し、何食わぬ顔をして、お茶を手にれいなの部屋へ戻るのだった。「長かったっちゃね」と、全てを見透かしたように言うれいなに、「ああ、うん、ちょっとトイレに行っててね」と言い訳がましく言う私を、私はいつも俯瞰した視点から見て、机に向かってれいなと私、私はれいなの犬のように馬のようにれいなの傍にへばり付いていて、私の首元から伸びる手綱はいつもれいなの手に握られている。なんだこのクソガキめ、be動詞も分からないくせに、因数分解もできないくせに、西洋と東洋の区別もつかないくせに、「日本は西洋なのだっちゃ? 東洋なのだっちゃ?」「バカじゃないのか。日本は東洋です」「なんでばい?」「知らんよ、覚えろ」「理由がないと覚えられないのだっちゃ」「東にあるからだよ」「東って右? 左?」こんな小娘に手綱を握られている私は、いったい何なのか、とてつもなく情けない気分になり、さっき嗅いだれいなのパンツの匂いと、舌先で確かめた味を思い出し、貴様はそんな風に全てを見透かしてるふうだけども、おれはお前のパンツの匂いも味も知っているんだぜ、おれはお前に負けていない。「いいから、勉強するよ」そう言って仕切りなおした私の目をぐりぐりと覗き込んで、れいなは意地悪そうに笑いながら「意気地なし」と言った。トライ。
435 :名無飼育さん :2012/06/27(水) 01:52
6月

 所用を済まして家に帰るとれいなが食パンを焼いているところだった。「お腹すいたの?」「別にそういうわけではないっちゃ」年頃の娘のやることはよく分からんなあと思った。私は服を着替えてコーヒーを淹れた。れいなはパンが焼きあがる様子をずっと見守っている。私はそのれいなの横顔をぼんやり眺めた。タバコを吸う。れいなはキッと私を睨みつけるとタバコの害を切々と説き始めた。タバコは放射能よりも悪い。そうですか、と思った。「パンは見ていなくていいの?」と尋ねる。焦げ臭い匂いがした。案の定焦げていたから、れいなは泣きそうになり、「焦げてしまったと」と言ってうつろに泣いた。「食べたかったの?」「別にそういうわけではないっちゃ」じゃあ何故泣いたのだろう。私にはよく分からない。「こうやって包丁で焦げをこそげ落とすといいんだよ」私は華麗なる手つきで食パンの表面をザリザリと落として見せた。れいなはそれが気に入ったらしく、やらしてくれやらしてくれと、私の手から包丁を奪うと、ぎこちない手つきで同様にやってみせた。「上手上手、れいなちゃんは手先が器用だねえ」そう褒めるとれいなは嬉しそうに頬を緩ませ、「これぐらいのことはお茶の子さいさいなのばい」と得意げになった。私はコーヒーを飲んだ。タバコを吸った。れいなは食パンの焦げをこそげ落としている。まだ夕方だった。私はれいなの横顔を見ている。額に汗がにじむようだった。その汗を舐めたいと思った。そういう6月の後半だった。
436 :名無飼育さん :2012/06/27(水) 02:00
説教

 ごっちんが私を叱った。きっかけは些細な事で、私がごっちんの足を踏んづけたのに、謝らなかったことだ。「常識がない」とごっちんは怒った。まさかごっちんに常識のことで云々されるとは思っていなかったので、私はたいそう驚いたと言うべきだろう。その時の私の顔といったらきっとカワウソのようにキョトンとしていた。「だいたいあんたはなってないんだよ、人生全体がなってないんだ」ごっちんはまるで安い芝居の台詞のような言葉を、安い芝居の演技のような調子で、妙にハードボイルドな感じで言った。「そんなになってないかな」「なってないよ、まるでなってないよ。普通足を踏んだら謝るべきだし、普通人生はもっとちゃんと目標を持って生きるべきだよ」そうなのか! と私は目からうろこが落ちたような気分になった。人生は目標を持って生きなければならない! 知らなかった! 「ごっちんの人生の目標ってのは何なの?」尋ねると、ごっちんはふふっと鼻で笑って「なんだろうねえ」と言い、アイスコーヒーに突き刺さったストローをぐるりと回し、「好きに生きること」と言い放った。それがまた妙に安い芝居じみていて、そんな安い芝居じみた人生を生きるぐらいなら、目標なんていらないんだ、と思った。けれども別に言わなかった。「そうかあ」と納得したふりをして、おれは今猛烈に圭ちゃんに会いたいぞ、と思った。
437 :名無飼育さん :2012/06/27(水) 02:17
 圭ちゃんはなんだか妙に疲れていた。挨拶代わりに「痩せたね」と言うと「やつれたのよ」と言ってにこりと笑った。「仕事が大変でね」と言うのだが、どのような仕事が、どのように大変なのか、ということを、圭ちゃんは私に話してくれたことがないのだった。それは少し寂しいことだった。ただそれが圭ちゃんのダンディズムというか、美学なのだ。そしてその圭ちゃんの"語らなさ"を、私はとても好んでいるのだった。だから深くは訊かない。「最近は何してんの?」訊くと、圭ちゃんは「ああ」と言うと視線を宙に泳がせて、「何してんだろうね」と笑うのだが、その笑みが先ほどとは異なって、"にっこり"ではなく"じっとり"、もっと言えば自嘲的なもののように見えた。「疲れてんね」「疲れもするよ」「なんで?」「言ってもしょうがないから言わない」「寂しいじゃん、話して下さいよ。おれと圭ちゃんの仲でしょ」「そんな仲よかったっけ」「ひどい」圭ちゃんはハハッと軽やかに笑うと「冗談」とまた軽やかに言った。それに少し安心して、私は昨日れいなが食パンを焦がした話をした。圭ちゃんはうんうんと頷いて、ビールを飲んだ。何もかも上手くいかないのだが、何かが上手くいっているような気がした。これでいいのだ、という気がした。れいなのことを喋りながら、私は実はえりりんのことを考えていた。えりりんの唇のことを考えていた。でもそれは言わないでおこうと思ったから、「それでその食パンはどうしたの?」私はふと戸惑って、「食べたよ」「誰が?」「おれが」「美味しかった?」「こおばしかった」「ジャムを塗るといいんだよ」「そんなハイソなものは家にはないよ」「買いなさい」「水虫が治らないんだ」「病院に行きなさい」「病院は怖い」「怖くないわよ」「怖い」「なにが」「色々怖いんだよ、人生とか、人生とか超コワイ」圭ちゃんは不思議そうな顔をして「死ぬの?」と訊いた。「死にません。そりゃ死ぬときになったら死ぬけれども」「じゃあ大丈夫だよ」何が大丈夫なのかよく分からなかったけれども、圭ちゃんが大丈夫だと言うのなら大丈夫なのだと思った。安心した。「最近楽しかったことは?」圭ちゃんが訊いた。私はれいなのことを思い出した。「なにもないよ」「何考えてた?」「私はれいなを抱きしめていたい」圭ちゃんはビールをぐいと煽ると、そりゃいいね、と言って笑った。安い芝居のようだった。安心した。
438 :名無飼育さん :2012/06/27(水) 02:40
バンドやろうぜ

 れいながバンドを始めるというので、私もバンドを始めたい気持ちになっていた。れいなには負けるまい、という思いがあった。勝ち負けをどうつけるのかはよく分からなかったが、とにかく、負けないのだ。「勝つのではない、負けないのだ」れいなは私の宣戦布告に"はてな?"という顔をした。それが誰の言葉だったか、私はよく覚えているのだけど、どうせれいなに言っても分かるまい。れいなは本なんか読まない子だ。読んだとしても星の王子さまとか、そこらへんに決まっているし、それも最初の数ページで挫折するに決っている。文字ばかり書いてある紙の束なんか、れいなには何の価値もないのだ。そう、そんなことはどうでもよく、私はバンドをやりたい気持ちになっていた。れいなには負けるまい、と思っていた。問題はメンバーだった。私はギターでもベースでもドラムでもボーカルでもイケる、無駄に多機能な人間だったので、よく器用貧乏器用貧乏と揶揄されるのだったが、器用貧乏の何がいけないのか! という気持ちで、私は率先して器用貧乏になっていた。どのみち貧乏なのだ。何一つものにならないのならできる限りのことに浅はかながらも手をつけていた方が、色々楽しいに決っているのだ。私のことを器用貧乏と揶揄する奴は専門バカだ。そういう気持ちで、だから、つまり、私はバンドをやりたい気持ちになっていた。問題はメンバーなのだった。
 私のイメージでは、ごっちんはドラムに向いている気がしていた。リズム感に秀でていそうだとか、そういう理由ではなく、ごっちんのような華やかな、動きの大きい女の子がドラムを叩くと、ひどくサマになるのだ。いや、実際サマになるのだかどうだかはよく分からないのだが、とりあえず、私はごっちんがドラムを叩くサマを見たいと思った。だからごっちんにはドラムをやってもらいたいと思った。それから圭ちゃんはギターだった。アーティスト的なギターではなく、職人的な、クラフトマンシップに溢れるそれである。ステージの奥に控え、黙々とリズムギターをタイトに刻み続けるような、圭ちゃんは、私のイメージではそういうギタリストだった。そう考えていくと私は必然的にベースをやらざるを得ず、ではボーカルは誰、ということになると、私の脳裏に浮かぶのはさゆ以外にありえなかった。さゆは天才的なボーカリストだった。さゆは天才的なへたくそだった。さゆが歌えば地軸すらノリノリでブレブレになるのだ。そういう壊滅的で破壊的で天才的なボーカリストなのだった。私はごっちん、圭ちゃん、さゆに一斉送信でメールを送る。「バンドやろうぜ!」ごっちんは「めんどくさい」と返すだろう。圭ちゃんは「楽器できないから」と返すだろう。さゆは「Perfume歌いたいなあ」と返すだろう。崩壊だ。このバンドは終わりだ。計画倒れが目に見えている。それでも私は負けないのだ。れいなになんぞ負けていられないのだ。アコースティック・ギター、エピフォンハミングバードアーティストモデルを手に取り、私は"Memory 青春の光"のコードを弾いた。つんく♂の真似をしてねっとり、じっとりと歌った。メモは破って捨てていいよぉぅ、でも最後まで読んでよねぇ。れいなが鼻歌でそれに合わせた。満足を覚えた。
439 :名無飼育さん :2012/06/28(木) 01:13
こんな夢を見た。

私は宇宙服を着ていた。ごっちんも宇宙服を着ていた。
それが真っ暗な、おそらくは宇宙空間なのだろう、しかし先を行くごっちんの姿ははっきり見えた。
尻がエロかった。妙にピッタリと身体に張り付く銀色のボディスーツ。
宇宙服と言うよりはウェットスーツと言った方が近いのかもしれない。
遠くに座礁したスペースシャトルが見える。我々はそこへ向かって泳いでいた。
私はごっちからどんどん遅れた。どんなにかき分けてもスカスカとして手応えがない。
ごっちんはどうしてああも華麗に泳ぐのだろう。不思議でならない。息が苦しい。
「遅れてるよ」と耳元でごっちんの声がした。「分かってる」と答えた。
通信が入る。視界の右半分にワイプが出る。そこには黒人のおっさんが映っていた。
ボブだ、と私は思う。ボブは非常に淡々とした調子で「もう死にます」と言った。
死ぬのもいいだろう、だが諦めるのが早すぎる。
諦めの良さはそれはそれとして一つの美しさではあるのだが、
しかし諦めの悪さも時として美しいものだ。
特に生死がかかっているとなれば、なおさらである。
「死ぬな」と私は言った。ごっちんがそれに被せるように「そうだよ」と言う。
ボブは「もういいんだ」と途端に泣きそうな顔をした。思わず涙腺が緩んだ。
ごっちんがシャトルに到着したらしい。「間に合った!」という声が耳元で響く。
私はまだスカスカと中空を漕いでいた。シャトルもごっちんの後ろ姿ももう見えない。
死のう、と思った。死んで詫びよう。お父さんとお母さんに詫びよう、と思った。
視界のワイプに映ったボブがごっちんと抱き合っていた。あまつさえキスすらした。
おれは悔しかった。悔しかったので唇を噛んだ。しょっぱかった。おれは泣いていた。死にたくない。
440 :名無飼育さん :2012/06/28(木) 16:40
ボブって昔いたな…
ここの小説を読んでいると、誰か知らない人(勿論「私」のこと)の人生を垣間見ている気分になる。
好きです。いつも読んでます。
441 :名無飼育さん :2012/07/03(火) 23:58
好きと言ってもらえて嬉しいです。射精しました。
442 :名無飼育さん :2012/07/03(火) 23:59
ロックンロール

「田中、今の娘。に足りんもんは何か分かるか?」とつんく♂が言った。
「分からないです」「ロックがたりへんねん」
つんく♂がしばしば口にする「ロック」とか「熱さ」とかいったよく分からないものに、
ものごとの原因を求めるのは問題を曖昧化させるだけだ、とれいなは考えている。
「そうは言ってもよく分からんっちゃ……」「分からんでええねん」
つんく♂は「考えるな、感じろ、や」と言ってにやりと笑った。
もうやだなあ帰りたいなあとれいなは思った。

バンドを組まされることになったのは少々迷惑だった。
れいなはただただ「私は歌が好きです」と言っていただけなのに、
「ロックやな。自分ロックやで。バンドやろか。メンバー募集したるわ」
ということになったから、ほんとうにこの人の頭の中はどうなっているのだろう。
「田中はどんなバンドが好きなんや? 例えば」
れいなは考えた。よく分からなかった。SCANDALは好きだった。
「歌が好きです」
「ただ歌が好き。その熱い思い。ロックやな。自分ロックやで。これ以上なく」
つんく♂は満足気に頷き、手元のメモ用紙に「ロック」と書いた。
もしかするとこの人は馬鹿なんじゃないだろうか。
つんく♂は「ロックロックこんにちはやで」と言ってゲラゲラと笑う。
れいなは今後の自分の人生について不安を覚えた。
443 :名無飼育さん :2012/07/04(水) 00:24
 私はつんく♂さんの「娘。にロックを注入する」という鶴の一声によってモーニング娘。に加入することになった。それはあまりにも突然の出来事だった。家の前にバンが停まり、つんく♂はそこから降りてくるなり「お前、ロックか?」と言った。私はよく分からないながらも「ロックは割と好きです」と応えた。「割と好き、その"割と"が実は意外とロックなんや」まったくわけが分からなくて笑ってしまった。バンに乗せられる。「どこへ行くんですか?」「お前はな、モーニング娘。になるんや」なんですって! モーニング娘。になるのは私の昔からの憧れだった。飯田さんに理不尽な説教をされたいと思っていたし、その理不尽な説教に思わず涙してしまう私を、圭ちゃんがそっと慰めてくれ、私は圭ちゃんのその優しさに理想の姉の姿を見て、圭ちゃんのその薄い胸で泣くのだ。ごっちんはその胡散臭い光景を見てつまらなそうに「ああやだやだ」とぼやき、いつも持ち歩いているあたりめをゴリゴリと食べるのだ。「カバンの中がイカ臭くって」と藤井隆に向けて語るごっちんの姿を、私は今でも鮮明に思い出せる。カバンの中が"イカ臭い"、その台詞を聞いて藤井隆は「イカ臭いって」と大いに笑ったのだった。ごっちんはカマトトぶっていた。"イカ臭い"という言葉が暗に想起させるザーメンの匂いを、ごっちんはよく知っている。「でもさあ、ザーメンはカルキの匂いだよね。イカ臭いのはどっちかっていうとチンカスの方だと思う」と吉澤さんが冷静な指摘をする。それは全くなのだった。私はザーメンにイカ臭さを感じたことがない。イカ臭いのはイカである。ザーメンの臭いはそういう生臭さではない。もっと青々しい、梅雨時の水草が発する臭いだ。「どっちも嫌いじゃないよ」とごっちんは言った。吉澤さんは「チンカスは無理だな」と言った。梨華ちゃんが赤い顔をして「もう二人とも何の話してるの! 辻も加護もいるんだからね! 子どもの前でそんな話しちゃあダメだよ!」加護はどろりとした目をして「うちらはもう子どもじゃあらへんもん」と言った。もう子どもじゃないのだ。そう、もうその時から、とっくの昔にザーメンとチンカスとカウパーの味ぐらいは知っているのだ。大人だからだ。あいぼんはその頃にはもう大人の女だったからだ。「チンポ吸うよりタバコ吸ってた方がマシや」というのが加護の口癖だった。辻はそういう加護に憧れ、何度かタバコを吸ってみるなどしてみたのだったが、どうも煙が肺に入る感覚が好きになれなくて「のんはチンポの方が好きだな」そう言った。圭ちゃんはこの会話に胸を痛めていた。芸能界がこの子たちを壊したのだ、と思っていた。この胸の痛みは忘れない。芸能界を憎んで生きていく。そう決めたから、圭ちゃんは意地のようになって、歌や舞台やサックスなどの芸に磨きを掛けることによって、逆説的に芸能界に恨みを晴らしていくのだ。人生をそれに捧げよう、と思っていた。
 バンがとある建物に横付けされた。つんく♂さんがキーを抜きながら言う。「とりあえずメンバーと顔合わせんことには始まらんからな」つんく♂さんが先導して、私はそれに着いて行く。辿り着いたのは、全面ガラス張りの、少し狭い感じのするリハーサルスタジオである。扉を開けると汗の匂いがほのかに香った。それは十代の娘たちの若い匂いだ。みな動きを止めて、つんく♂さんと私のことを見た。れいなが不思議そうな顔をして声を発した。「どうしてここにいるっちゃ?」私は胸を張って言う「私はモーニング娘。です」
444 :名無飼育さん :2012/07/04(水) 01:03
あやや

 あややが「最近つまんなくて」と言った。私もそれに大いに同感であり、「何か楽しいことはないもんかねえ」「無いよ、何かって何」「それが分かったら苦労しないよ」「ふーん」あややは興味無さそうに、携帯を開いたり閉じたりした。「なに? メール?」「いや、なんか来てないかなって」「なんか来たら震えたり音が鳴ったりするものでしょう。そういうものでしょう携帯って」「そうだけどさ」そうなんだけど、そうたなんだけどねえ、と小声でぶつぶつと繰り返した。その気持ちは分かるような気がした。「携帯が良くないんだと思うんだよね」「は? 何の話?」「最近つまらんって話」「ああ、なんで?」私は私なりのメディア論を概説した。昨今のメディアの発達により、人間は会わなくてもコミュニケーションが取れるようになった。文字なり、声なりでコミュニケーションが可能になった。場合によってはテレビ電話のようなことも可能である。だがそれは決して好ましいことばかりをもたらしてはいない。会わなくても、色んなことができてしまう。それが癌だ。「特に用事はないんだけどなんとなく人と会いたい、コミュニケートしたい」という欲求が人間にはあるのだ。人肌恋しさ、という言葉を私はそう解釈している。各種携帯端末によっていつでも連絡可能であるということによって、我々は会わなくなった。ちょっとした用事なら携帯端末によるコミュニケートで済むのだ。人と会うというのは、それでは済まない、もうちょっと込み入った用事の時に「わざわざ」会うのだ。特にこれといった用事も無いのに「わざわざ」会うだなんて、甚だしく非効率的なことのように思える。だから人と会わなくなる。癌だ。現代人は常に寂しさを抱えて生きている。「ああそうそれで」とあややは言った。「いや別にだからどうっていうわけじゃないんだけどね」「今こうして話してるのも非効率なの? 会わなければよかった? 私と話してるこの時間は無駄?」「いや、むしろこういう一見無駄にも思える時間が人間にとって大切だっていう話で……」「へえ」あややは手を前に突き出して、テーブルをぽんぽんぽんと叩きながら「へえへえへえ」と言った。懐かしいな、と思った。「境界線みたいな体が邪魔だね〜って曲が昔あったよね」「ああ、川本真琴だっけ」「たぶん」「それが?」「すごく分かるような気がするんだけど、体っていう境界線がなかったら、やっぱりそれもそれでつまんないんだろうね」「人類補完計画だ」「は? そういうのよく分かんない。オタクきらい」「アイドルが何を言うのか」あややはもう一度力を込めて「オタクはきらい」と言う。それから私の目をじっと見て「でも好きだよ」とぼそりと言った。惚れそうになった。
445 :名無飼育さん :2012/07/04(水) 01:26
誘い

 れいなが「服を買いに行きたいばい」と言った。「行ってくれば?」と応えた。れいなはあれやこれやの理由をつけて、一人では行きたくない、というようなことを主張した。今日は雨だし、明日もきっと雨のような気がするし、もし何かあって夜遅くなってしまったら、私はまだまだ夜道を一人で歩くには危ない二十代前半の女の子だし、荷持を持ってくれる人が必要だし、ほら私の手の片方は、多分右手だと思うけれど、今日は雨だから、傘を持つことになるし、傘を持ちながらカバンも持って、買い物の荷物を持って、そんな時に、もし後ろからレイプ魔に襲い掛かられたら、ひとたまりもなく、私はヤラれてしまうに違いないっちゃ。というようなことを、長々と喋った。「だからつまり私についてきて欲しいと、そういうことをれいなちゃんは言わんとしているわけかな?」「そういうわけではないっちゃ、一人では行けない、ということを言っているのだっちゃ」「じゃあ行かなかったらいいんじゃないの」「でも服を買いに行きたいのだっちゃ」「行ったらいいじゃない」「一人では行けないのだっちゃ」「だからそれは私について来て欲しいってことでしょう」れいなはグッと言葉に詰まり「バカ!」と叫んだ。その声があまりも切実に、私の鼓膜を貫いたので、申し訳ないことをした、と思った。「分かった、れいなちゃんが何を言わんとしているのかが分かったよ」れいなはそっぽを向いている。「れいなちゃん一人では買い物なんて大変だろうから、ほらこんな雨の日だし、傘で手が塞がってしまうものね。荷物が持てないでしょう。もし両手が荷物で塞がっているときに、背後からレイプ魔なんかに襲われたりしたら、抵抗できなくて、ひとたまりもなくヤラれてしまうものね。それは心配だ。心配で心配でたまらない。れいなちゃんがヤラれてしまうところを想像するとたまらなく興奮する。私はお前がレイプ魔に抵抗もむなしくヤラれてしまうところが見たい。驚きのあまり声も出ず、買い物袋を手放すこともしないまま、自分の上にのしかかって、黙々と腰を振っている男の、その顔をただただ呆然と見つめるしかない、その時のお前のその表情が見たい。どんな顔をするのだろう。泣くのだろうか。歯を食いしばって耐えるのだろうか。それともちょっと良くなってしまって、恍惚をその顔に称えるのだろうか。まったく想像がつかない。その時の声は? セックスをするときに、いや、レイプされるときに、れいなちゃんはどんな声を出すのかな? おじさんがついていってそれを確認してあげよう」「やっぱり行くのは止めておくばい……」「いい子だ」私はれいなを抱きしめていたい。
446 :名無飼育さん :2012/07/05(木) 00:30
夏来にけらし

 あややが「もう夏だねえ」と言った。涼し気なワンピースを着ている。「そのワンピースかわいいね」と私が言うと、あややは「どこが?」と言って不機嫌になったので驚いた。「何か気に触ったのなら言ってくれ、服を褒められて嫌がる女なんていないと思っていたよ」「不愉快だよね」「だから何が」あややはそっぽを向いて「ねえごっちん」と言う。ごっちんはうとうとしていた。あややはもう一度「ねえごっちん」と言う。ごっちんはあくびを一つして「ああそうだねー」と答えた。やる気がit's so easyな感じだった。れいなは足元の砂粒を数えている。「砂粒なんて数えてなんか楽しいの?」と尋ねると「つまらんばい」と答えた。それでこそお前はれいななんだ、と思った。
 四人で海を見ていた。「もう夏だから海を見に行きましょう」と言い出したのは元を辿ると圭ちゃんだった。私は「海なんか見て何が楽しいのか」と反論したのだけど「夏といえば海、海といえば水着ギャル」「行きましょう」という流れで、来たのだったが、水着ギャルなんぞまだまだおらず、カップルがいちゃいちゃと水遊びをしているぐらいのものであり、私はひどく気分を害した。「来なければ良かった」「じゃあ帰ればいいじゃん」「そういうわけにもイカンだろう、圭ちゃんを待たなくっちゃあ」あややはまだどこかしら不満気であり「来ないよ。来るはず無いじゃん」と言った。「なんで?」「知らないけど」と言うその口ぶりが何かを知っている風だった。「ごっちん何か知ってんの?」訊くと、ごっちんはまたうとうとしていた。きっとこの人は何も知らないのだろうなあという気がした。れいなは砂に指を突き立てて、砂浜にいくつもの穴ぼこを開けている。「それ楽しいの?」「つまらんばい」やっぱりお前はそれでこそれいななのだ、と思った。
 変わり映えがしないのだ。何が楽しいのか波は寄せては返し寄せては返しし、あまりの終わりの無さに苛立ちすら覚えた。それはほとんど中学生の自慰のような感じだった。途方もなく虚しくなるのだ。何度射精しても射精したりない気がした。おれの本当の射精はこんなものじゃないはずだ。もっともっと、本質的に何かを満たすような射精というのがあるはずなのだ。そういう気がいつもした。あややが「ねえ」と言った。「なに?」「ねーえってばねーえ」「だからなんですか」「つまんないやつ」あややも砂に指を突っ込んでは穴ぼこを開け始める。「心外だな、面白い話してあげようか?」「いらない」「まあそう言わずに」「じゃあしたらいいじゃん」「いやまあ特になにもないんですけどね」「やっぱつまんないやつだ」「そうかもしれません」ごっちんが大きなあくびを一つして「ねむい」と言った。ぐいぐいと伸びをした。あややが笑って「知ってるよ」と答えた。「海入りたくないですか?」とごっちんが言うのに「入ったらいいよ、入ればいいじゃん」とあややが冷たく答えた。じゃ、いってきますとごっちんは服を脱ぎ捨て、なんと準備のよろしいことだろう、下には水着を着ていた。「中学生かよ」とあややが笑った。私はごっちんの尻をじっくりと眺めた。ホットパンツを脱ぎ捨てる時に、股間のクロッチのあたりが淫靡に歪む様を脳みそに焼き付けた。「オナニーしたいなあ」「したらいいじゃん」「していいんならするけど」「止めないよ誰も」「じゃあ失礼してそうさせてもらおうかなあ」私はちんこを取り出し、もうそれはすでに志も半ばといった感じで勃起していたのだが、二三度こすりあげるとみるみるうちに努力未来ビューティフルスターな感じに勃起した。卓越していた。私の勃起力は卓越していたと言っていいだろう。れいなの視線を感じる。れいなもまたホットパンツの上から密かに股間をすりあげているようだった。「おっ、奇遇ですね」「照れるばい」それでこそお前はれいななんだ、と思った。あややが舌打ちをした。「つまんない」と言った。
 ごっちんの尻が海辺へ駆けていく。揺れる尻肉。それを何度も反芻して、眼底にごっちんの尻肉が満ちるようだった。私はごっちんのホットパンツを手にとって匂いを嗅いだ。アリエールの匂いがした。それはとても爽やかだったが、これではまるで中学生の自慰のようではないか、と私は思い、隣でれいなの息が荒くなり、あややはため息をつき、ごっちんは波打ち際で寝そべって、やはり彼女もまた海に向かって股を大きく広げ、オナニーをしているようだった。オナニーなのだった。今日はとにかくオナニーなのだ。そう思ったので、あややに「ご一緒にどうですか。Join us!」声を掛けたのだったが「絶対に嫌だ」とケーベツ的な口調で言った。私は射精した。夏が来たんだ、と思った。
447 :名無飼育さん :2012/07/05(木) 02:40
知らない人の靴を履いて

 飲み屋を出たのが25時を回ったあたりだったから、もうきっと今は26時ぐらいだろうと思う。今日あった嫌なことを思い出しながら歩いた。なぜか分からないが人から馬鹿にされる。なぜか分からない、というのはまあちょっとした嘘で、分かりきっていたのだけど、あまり認めたくない自分の欠陥、そういうものから目を逸らしていたいものだから、人から馬鹿にされるとたいそう気分が悪くなる。「そういうことじゃあダメだよ」と、年下の女からなぜ偉そうに説教をいただかなければならないのか。興奮してしまう。私は私なので、あなたではないので、あなたはあなたなので、そう言って差し上げたくなるのだが、それを言ったところで負け犬の遠吠え、それはひどく醜くあさましいこと、そういう風に思っているから、超然とし、余裕ぶって、実のところ内心はカリカリと焦っており、とにかく何かしら認められたいと、そういうことを考えているのだが、もっと罵ってくれ。「バカじゃないの」とあややが言った。「バカですもの」と答えた。それはそれは得意げに言った。しかし私の心はしくしくと泣いていたのである。とにかく私は何もしたくなく、何もできるとは思えず、ただ超然と余裕ぶって、自分の欠陥から目を逸らし続けて、そうこうしているうちに何もしないまま人生がつるつると滑っていくが如く、目の前の道はのっぺりと薄暗い。
 コンビニを見つけて入った。店員がゾンビのようにのろのろと立ち上がり、いらっしゃまいせ、と申し訳程度の小声で言う。ビールを買って帰る。歩きながら飲む。今日あった嫌なことを思い出しながら歩いた。飯田さんが髪をかきあげかきあげ言うには「男ってのはさ」そこから先の言葉を何一つ思い出せなかったのでびっくりした。酔っ払っているのかもしれないなあと思った。嫌なことなんて何もなかったのかもしれないなあと思った。目の前の道はのっぺりと薄暗いわけではなくて、むしろほんのりと明るいのだ。
 家に帰って靴を脱いだ。玄関に腰掛けて靴紐をほどこうとするとそれはクロックスだった。いやあこれはたいそう愉快なことだなあと思い、「れいなちゃんれいなちゃん!」とその口にするのもはばかられる忌まわしきその名を叫び、「なんとね」と目をこすりこすり出てくるれいなの名状しがたい醜悪なパジャマ姿が召喚され、私はとうとう嬉しくなってしまい、感極まって、「ほら見てごらんよ、私は知らない人の靴を履いて帰ってきてしまったよ」言ったそばから涙声になってしまったのだけど、れいなが「あっそ」と言って自室に帰ろうとするので、なんでお前は分からないんだ! と思ったし、私はそういうれいなを抱きしめていたい。
448 :名無飼育さん :2012/07/05(木) 03:57
でんでけでけでけ

 三人でバンドをやろうと言い出したのは絵里だった。れいなは最初乗り気ではなかったけれども、さゆが「やろうやろう!」という感じだったので、れいなも「やるっちゃねやるっちゃね!」という感じになった。絵里は嬉しそうに「そうだねやろうやろう!」と言ってぴょんぴょん跳ねた。れいなとさゆは目を細めて「かわいい……」と思った。
 まずパートの割り振りが行われたのだが、ここでいきなり深刻な問題に直面した。みんなボーカルがやりたかったのだ。三人とも「バンドといえばボーカル」という感じだった。そもそも誰一人としてバンドミュージックに詳しい人間がいなかったのである。「そういえば昔つんく♂さんってバンドやってたらしいよ」とさゆが抜け抜けと言った。絵里は「そうなんだ」と深々と頷き、れいなは「へー」と興味なさげだった。
いずれにせよ、そういうレベルの認識だったのである。バンドをやるとかどうとかいう前に、三人はもっとバンドミュージックを聞く必要があった。
 時代はITである。絵里はスマートフォンを用いて「有名なバンド」をgoogle検索した。たくさん出てきた。よく分からなかったので、少しめんどくさくなってきた。「ねえ、バンドってすごくたくさんあるんだね、やっぱ無理かもしんない……」絵里が悲しそうにそう言ったので、さゆはなんだか気の毒になってしまい、「そんなことないよ! できるよ!」「無理だよ……」「できるってば!」「むり……」「大丈夫! さゆがついてるから!」「……ほんと?」「ほんと! さゆに任せておきなさい!」「分かった! さゆだいすき!」「さゆも絵里のことだいすき!」れいなは目を細めてこの光景を見た。忸怩たる思いがした。「私は無力だ」と思った。
 いつだって物事には挫折がつきものである。諦めなければ何か方法があるものだ。「よく分かんないからつんく♂さんに聞こう!」そう言ったのはさゆだった。絵里もれいなも「そこまでしてやりたくないな……」と思ったのだったが、一度「絵里の願いを叶えてあげたい」という義憤に駆られたさゆを止めることはできなかった。義憤というのは恐ろしいものである。物事をややこしくするのはいつも義憤である。
 つんく♂はさゆの話を聞いて「そんなもん適当にやったらええやないか……」と呆れたが、「でもバンドをやりたいっちゅうその気持ち、ええやん? すてきやわ。どうしていいか分からないからおれに聞くっちゅーその姿勢も、まあよくよく考えてみたら、お前らなりの情熱のあらわれかも知れんな。でもバンドっちゅうのはな、人にどうこう言われてやるもんやないねん。バンドがやりたい! っちゅうその気持ち? 情熱っつーの? 勢いっつーの? それが一番大事で……」
 ありがたい説教は二時間に及んだ。さゆは後悔した。れいなと絵里はさゆを少しだけ憎んだ。そして三人はつんく♂をとても憎み、結果バンドというものをひどく嫌悪するようになった。結局つんく♂のバンド論は三人の胸にネガティブな印象しか残さなかったとも言えるのだが、しかし見ようによっては、つんく♂は三人にとてつもなく大事なことを教えてくれたとも言えるのである。それは「よく分からないものには首を突っ込むな」という教訓である。三人はもう二度とバンドの話なんてするまい、とそれぞれの心で固く誓った。だかられいなのバンドオーディションが決定したとき、れいなの携帯は二度震えた。「ごしゅうしょうさまです」とさゆから、「がんばってね」と絵里から。れいなはその夜一人枕を濡らした。そして「私は無力だ」と思った。私はそんなれいなの心の痛みを舐め慰め、優しく抱きしめて差し上げたいと思った。
449 :名無飼育さん :2012/07/07(土) 07:17
VS

 「なんで?」と石川が言ったのに、三好は「え、なんででしょうね。分かりません」と答えた。「は?」「え?」「なにそれ意味分かんない」「え? なんでですか?」「私が"なんで"って聞いたのにさ、なんで"なんででしょうね"って聞き返されなきゃいけないわけ? おかしくない?」「ああ、そうですかね。ごめんなさい」「あ、それね。それも良くないよね」「はい? それってなんですか?」「そうやってすぐにごめんなさいとかすいませんとか言うの! だってへんじゃん。全然ごめんなさいともすいませんとも思ってないくせに、それってうそじゃん」「いや、思ってますよ」「思ってないよ絶対」「なんで石川さんにそんなことが分かるんですか? 人が何考えてるかなんて分かんないでしょ?」「分かるよ、分かるもん」「どうしてですか?」「声の感じとか、言い方とか、そういうのでだいたい分かるんだよね。私そういうの敏感な方だから」「そんなことないと思いますよ」
 石川は露骨に不機嫌な顔をした。「あんたに私の何が分かるわけ?」「いや、私は石川さんのことなんて全然分からないです」「じゃあ勝手なこと言わないで!」「じゃあ石川さんも一々私に突っかかって来ないで下さい」「そっちが悪いんじゃん、いつもいつも、私の気に触るようなことばっかり」「私石川さんのこと分かんないんで、何が気に触るのかとかも分かんないです」「それぐらい察しなさいよ、後輩でしょ」「いま先輩とか後輩とか関係あります? なくないですか? 人としてどうかって問題じゃないですか?」「は? そんなんで芸能界やってけると思ってるわけ? 先輩後輩が全部じゃん。私だって先輩には気遣ってるし、ほとんどそれが全部っていうか」「だからって先輩が後輩に気を遣わなくていいってことにはなりませんよね別に。それに石川さんが芸能界のことを何だと思ってるのかは知りませんけど、私は別にそうは思わないので」「でも実際、実際そうだからね。私だけの思い込みとかじゃないもん」「石川さんがそう思ってるなら思ってるで構わないので、私は別にそうは思わないので、石川さんがどうだろうと別にどうでもいいし」「そんな言い方ないんじゃないの? 私は三好のためを思って言ってあげてるのに、そんな言い方ってさあ」「知りませんよ。余計なお世話ですよ。いっつもいっつもどーでもいいことでめんどくさいんですよ。なんなんですかあんた」「そっちこそなんなの! 後輩のくせに!」「先輩も後輩も関係ないっつってんだろ!」「じゃあどうしたらいいのよ!」「謝れよ!」「ごめんね!」「いいよ! こっちこそごめんね!」「いいよ!」
 二人は仲良しである。

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