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作者フリー 短編用スレ 俺×娘。

1 :名無飼育さん :2004/09/04(土) 23:11
このスレッドは俺×娘。作者フリー短編用スレッドです。
どなたが書かれてもかまいませんが、以下の注意事項を守ってください。
・アップするときはあらかじめ“完結”させた上で、一気に更新してください。
・最初のレスを更新してから、1時間以内に更新を終了させてください。
・できるだけ、名前欄には『タイトル』または『ハンドルネーム』を入れるようにしてください。
・話が終わった場合、最後に『終わり』『END』などの言葉をつけて、
 次の人に終了したことを明示してください。
・後書き等を書く場合は、1スレに収めてください。
・感想、感想への返レスはこのスレに直接どうぞ。
2 :名無飼育さん :2004/09/04(土) 23:15


2時間の飲み放題が終わった。僕らは追い払おうとする店員をかわしてたっぷり三十分グダグダし、重い腰をあげた。幹事が回収した金を数えている。酔い潰れた何人かが、顔を真っ赤にして呻きながら眠ろうとしていた。

騒ぎながら店を出て行く仲間を横目で見ながら、僕は飲み残された酒を友人数人とガブガブ胃に収めていく。追加料金が怖いからだ。ピッチャーにたっぷり残った味のわからないオレンジ色の液体を流し込みながら、後輩のヒロと肩を並べて店の外に消える真里の背中を見ていた。

ヒロは真里に負けず劣らず背が小さく、そのことに対して卑屈なくらいのコンプレックスを持っている。
「男のクセに150ちょっとしかないなんて、女からすればハムスター程度の扱いですよ」
それが酔ったときの口癖だ。

実際、その程度の扱いしかされていない。色が白くもち肌で、一重まぶたのその後輩は、女には見えないまでも、それ以上に男に見えない。そのせいか、なにかと女の子に可愛がられるのだ、羨ましいくらいに。
真里もその例に漏れず、何かにつけてヒロに目をかけている。背の低さのせいか、一緒にいて違和感がないのだと言う。あれで男らしさが見えて、好きになる事ができたらバランスのいいカップルになれる、とも。

僕は、ヒロが密かに真里に想いを寄せていることは知っている。真里といると背の低い劣等感を感じないと冗談めかしていたが、それだけではないだろう。
3 :名無飼育さん :2004/09/04(土) 23:15

 思えば、僕はこうやって真里の背中をずっと見続けてきたような気がする。ピッチャーを片付け、気の抜けてぬるくなった瓶ビールに手に取りながら、そう考える。

 出会いは新入生歓迎のコンパだった。 
 それが大学生になって初めて行ったコンパだったせいか、鮮明に覚えている。同じ席、僕の向かいに真里がいた。綺麗な顔立ちに大きな瞳が印象的だった。金色の染め抜いた髪のせいか、メイクのせいなのか、フランス人形のようだと思った。でも、僕はそのとき、真里のことを西洋こけしだと笑って、怒られたのだ。
 真里はそのことを覚えているだろうか。

 その日、僕は隣の子を口説くのに夢中で、気が付いたときには真里は他の席に移っていた。真里とは学校で擦れ違っては声を掛け合う程度の仲にはなったが、それだけだった。

 僕は別のサークルに入り、そこの二年先輩と付き合うようになった。
4 :名無飼育さん :2004/09/04(土) 23:16

「これだけ飲めば、店も文句言わねぇだろう」
 友達が十席ほどの座敷を見回し、口直しだと言って、残ったサラダをつまんだ。
 僕は忘れ物がないがざっと確認し、そいつと連れ立って店を後にした。幹事が二十万ほどの飲み代を千円札ばかりで払っていた。

 外に出ると、むっとした熱気が肌に張り付く。狭い飲食街の通りを吹き抜ける風は生暖かく、生ゴミのにおいがした。
「いつになったら、秋が来るんだよ」
 騒々しい店の出入り口付近では、小さな呟きなど掻き消されてしまう。きれいな空気を吸いたかった、それと、冷たいノンアルコール。さっき飲んだビールの中に、誰かがふざけたのだろう、ウィスキーが混じっていたからだ。それで想像以上に酔いが加速してしまった。

 とりあえず、道のまんなかで話し込み、通行の迷惑になっている後輩を脇に寄せる。酔い潰れたバカが店の入り口で寝転がっていて、女の子が看病している。僕はそのバカを抱えあげ、裏路地に折れた、人通りの少ない場所に寝かせた。心配そうな顔をして、看病していた女の子がついてくる。襲っちゃえば? などど笑い、女の子を赤面させて遊んだ。

 一度店の前に戻り、入り口付近で嬌声をあげている一団を、背中を押しながら路地裏まで誘導する。押した背中の中に、真里の背中があった。背中を押したつもりだったのだが、真里の背が足りないために頭を小突くような形になってしまい、睨まれた。

 これで僕の役目は終わりだ。壁に背をもたせて座る。誰かが二次会のカラオケを見つけるまで、しばらくここで待機だ。
 後輩の女の子集団が時計をちらちら見ている。終電の時間を気にしているフリをしているのだろう、帰るタイミングを窺っているのだ。終電まではあと二時間以上もある。
5 :名無飼育さん :2004/09/04(土) 23:16

 ふと気がつくと、隣には、陽気に酔っている同級のアホがいた。
「いつもご苦労さ、あ、大変だね」
「おめーが酔っ払うからだばかやろー、こっちも酔ってんのに」
そいつは、恨み言など意にも介さず、僕の視線の軌跡を追った。
「お前、なに嫌らしい目で一年生の女の子、見てたんだよ」
 僕は何も言わずにいると、そのアホが目を覗き込んでくる。
「なに? もしかして酔ってないの?」
「さっき言ったよ、酔ってるよ」
「じゃあ、なに?」
「疲れた」
「疲れたから、一年の子を視姦してるんだ、だれ狙い? 俺、梨華ちゃん」
 もつれた舌で、そう捲くし立ててきた。酔いで想いを誤魔化しながら告白する歳でもないだろうに。
「あの子は無理だよ、もう帰るんだろうし。たぶん真里あたりに、帰るとか言ったんだと思うよ」
「なんでわかんだよ」
 僕は黙って指を指す。駅へ向かう梨華ちゃんの背中が見えたからだ。
 アホはがっくりと項垂れ、大きく息を吐いて呟いた。
「真里、梨華ちゃんには甘いもんなぁ」
「うん、なんか知んないけど、梨華ちゃん、真里にだけは懐いてるよな」
「だよな……」
「真里も、梨華ちゃんじゃなきゃ、普通なら帰さないよな、盛り上がろうとか言って」
 僕は近くにいた後輩の持っていた缶ビールを奪い、アホの前に突き出した。
「飲めよ、もう面倒くせぇから。梨華ちゃんは無理だって、諦めろ」
 アホは何も言わずに、勝手に落ち込んでいる。
 僕はプルタブを引き起こし、一口啜る。そして、アホの前に置いた。
「お前はどうなんだよ、梨華ちゃん」
 僕も梨華ちゃん狙いになっているということになっているのが癪だったが、説明するのも鬱陶しく、そのままにしておいた。そして、
「ダメだよ、終電気にするような女じゃ」
6 :名無飼育さん :2004/09/04(土) 23:18

 新歓以来、たまに会ったときには短い会話をするものの、その回数も減っていった。真里はその頃、入ったサークルの先輩に夢中だった。共通の知人もそれぞれに居場所を見つけ、関係はあってないようなものになっていた。

 初めてのテストも終わりに差し掛かった、うだるような暑い日だった。僕は友人にもらったコピーの束を抱え、図書館に向かっていた。その途中、真里が一人でベンチに座っているのを見つけた。
「どした? 珍しいね、一人でいるなんて」
 真里は僕を見上げると太陽が目に入ったのか、眩しそうに手を翳した。そのせいで、表情はよく見えなかった。
「そっちこそ、珍しいじゃん。勉強? テスト、大丈夫なの?」
 僕は分厚いコピーの束をひらひらと振り、その場を後にした。

 初めて入る図書館は書籍が音を吸い込むせいか静かで、思いの外気持ちのいい場所だった。冷房の効いた部屋の窓側に座り、当然のように眠ってしまった。

 目覚めるともう夜近くで、紺碧の空にオレンジの欠片が散らばっていた。慌てて図書館を出ると、キャンパス内は人影少なく、灯りの消えた建物が不気味なもののように思えた。
 闇と同化するようにして、まだ真里がいた。
 最初は見間違いだと思った。でも、近づいてみると、確かに真里だった。泣いていたのかどうかはわからないままだけど、泣いていたと思う。絶え絶えに 噛み殺すような吐息が、狂おしいくらいに切なげだった。

 僕は黙って真里の隣に座った。 
 真里は一度、僕をちらっと見ただけで何も言わず、ただ俯いていた。
7 :名無飼育さん :2004/09/04(土) 23:19

 どれくらい経っただろうか。けっこうな時間だったような気がするけど、もしかしたら短い間だったのかもしれない。
 おもむろに真里が話し出した。いつも通りの明るい口調が、痛々しかった。
「先輩と別れてさー、知ってるでしょ? あの、付き合っ──」
「うん、知ってる、四年の、ちょっとがっちりした感じの、爽やかっぽい人でしょ?」
「感じとか、っぽいとか、もっとマシな言い方ないの?」
「ごめん」
「まあ、いいんだけ。フラれちゃったんだけど、その理由がひどいんだよ?」
「うん」
「なんかねー、田舎に帰って許嫁と結納しなきゃならないって、って言うの。由緒ある家柄の長男らしくて、まあ金持ちは金持ちだったんだけど、生まれる前から家の決めた相手との結婚が約束されてたって。婚約者いるんなら、最初っから言っとけ、って感じだよね?」

 僕は真里の嘘に付き合った。真里の元彼氏のことを悪く言わないよう気をつけながら、真里の雑言に同意し続けた。

 話の切れ目を待っていたかのようなタイミングで電話が鳴り、僕は真里を見た。真里は、出なよ、と頷いた。
 僕が電話に出ると、真里は立ち上がり、ありがとう、と口で作って手を振った。
『あ、もしもし? いま、平気?』
 電話口の友達は、僕の返答も待たずに話を続ける。僕は電話を切ることもできずに、落ち着かない気分で真里の背中を見ていた。
『あんね、テスト終了間近記念で飲んでるんだけど、お前も来るでしょ? いつもんとこ』
 真里の小さな背中が、闇に溶けるようにしてもっと小さくなっていく。
「行くけど、もう一人誘ってもいい?」
 僕はそう言い、真里を追いかけた。

 その日、真里は始発が出るまで、はしゃぎつづけていた。

8 :名無飼育さん :2004/09/04(土) 23:20

 一次会で飲んでいた三分の一くらいは帰ったのだろう。女の子の数がぐっと減り、半々だった男女比が崩れた。

 僕はポケットに入れたままで潰れた煙草に火をつけ、思いきり吸い込んだ。口がネバネバしているからか、喉がいがらっぽい。目を閉じ、酔いで鈍くぐらつく後頭部にひきずられるようにして上を向いた。
 薄汚れたビル壁にかこまれた夜空があって、輪郭のぼやけた半月が白く浮いている。その視界の中に、ふっと女の子の顔が入った。後輩の子で、かわいくもぶさいくでもないために、名前すら覚えていない。
「あ、あの……先輩は、二次会に行きますか?」
「行くよ」
 それだけ聞くと満足なのか、それだけで精一杯なのか、同学年のグループの中に戻った。

 隣でアホがニタニタと細い目を一層細くさせている。
「お前、二次会で食われちゃうよ?」
「そんなことないよ、人数確認でしょ」
「とぼけんなよ。久しぶりなんじゃないの? 女」
「まだ二年だよ」
「この際だから、真里と付き合っちゃえよ、この際だから」
「そういう勝手な推測は、誤解を生むから……」
「なに? 付き合ってんの?」
「……まだ二年だよ」
 僕はそうくり返すと、燃え尽きかけた煙草を吸った。フィルターまで焼けた煙草に、指先が熱かった。

9 :名無飼育さん :2004/09/04(土) 23:21

 二年前のことだ。真里は僕らのサークルに入り、仲間になっていた。

 真里は例の先輩のあと、僕らの仲間の一人で付き合い始めた。タクミという気のいい奴で、惚れっぽい奴だった。真里に一目惚れだったらしい。秋の初めに付き合いだして、クリスマスまで持たなかった。
 当然のように気まずくなり、タクミが去って、真里が残った。僕らにとって、真里の存在は必要不可欠になっていたのだ。

 真里が仲間に加わってから十ヶ月ほど経った、今から二年前、六月の話だ。僕は入学当初から付き合っていた恋人と別れた。
 僕の卒業を待って結婚しよう。そう半分冗談、半分本気で話していたのが嘘のように、あっけない結末だった。社会人と学生、言葉では簡単な区切りだけど、その意味は全然違う。彼女の言葉だ。
 あの頃はさっぱりわからなかったけど、いま改めて考えると、なんとなくわかるような気もする。

 とにかく、二年ちょっと付き合った恋人は、僕の元を離れた。僕のことが子供に見えて仕方なかったのだろう。
10 :名無飼育さん :2004/09/04(土) 23:21

 僕は失恋の痛手に悩むわけでもなく、落ち込むわけでもなく、至って普通に暮らしていた。それは友達の方が困惑してしまうくらいで、僕にはそれが驚きだった。

 如何にも梅雨といった、緩やかな雨の降り続いた三日目の朝だった。雨に濡れるのが嫌で学校に行こうかどうか迷っていた僕は、ぼんやりと昼頃までベッドで過ごした。ひんやりした空気の感触に、ただ、なんとなく、起き上がろうとする気にならなかったのだ。

 昼を過ぎ、ただじっとしているのも暇だからと、とりあえず学校に行くことにした。部屋を出ると、ドアの脇に真里がいた。足元が跳ね返った雨に濡れ、湿気のせいか髪が少し巻いていた。
 僕に気付いた真里は、オス、と恥ずかしそうに笑いながら頭を叩いてきた。
「起きてるんなら、もうちょっと早く家を出ろよ」

 部屋に真里を招き入れ、近くの自動販売機で買ってきたコーヒーを渡した。ずっと外にいたのだろう、手が冷たくなっていた。
 真里はコーヒーに手をつけずに、ちらちらと僕を窺っていた。
「あのさ、迷惑じゃなかった?」
「なにが?」
「こうやって、押しかけてきちゃったこと」
「迷惑でもないよ」
 よくわからない含みを持たせてしまった。
 渡した毛布に包まっていた真里は、小さく肩を竦めた。
「最近、っていうか、別れてからか、元気ないと思って」
「元気なく見える?」
「失恋のあとっていうのは、普通、落ち込んだり、無意味にはしゃいだりするもんなんだよ」
 少しだけ声を荒げた真里の言葉には、不思議な説得力があった。それは、僕が真里の失恋後の一部始終を見ていたせいなのかもしれない。

 真里がそっと、ベッドに腰掛けた僕の前に来て、弱く笑う。僕の視線は、真里に合わせて自然と上向く。背筋が震えるくらい大人びていて、綺麗な顔だった。
「こういうとき、ちょっとくらいなら感情吐き出してもいいんだよ……」
 そう言って、僕の頭を抱えてきた。
「ちょっとくらい、泣いてみたら?」
 優しい声だった。

 僕は一筋分だけ、失恋の喪失で涙を流した。その後も、涙は止まらなかった。

11 :名無飼育さん :2004/09/04(土) 23:22

 気がつくと、真里が隣にいた。膝を抱え、そこに頭を乗せ、じっと、つぎはぎだらけの道路を見つめている。
「どした?」
「そっちはなにしてんのよ」
 真里の視線は動かない。
「回想」
「なに?」
「就活中の真里。黒髪だった」
 僕が思い出し笑いをしているが、真里はぶすっと唇を尖らせて中空をねめつけている。
「なに? 怒った?」
僕が聞いても何も答えず、黙って缶のウーロン茶を差し出してくる。受け取り、飲んだ。まだ半分ほど残っている。
「全部飲んでいいよ」
 無表情になった声が、拗ねた風に聞こえた。
 ウーロン茶のおかげか、酔いが少し逃げた。

「ねぇ、ときめいた?」
 表情を一変させた真里が大きな目をくりくりさせて、僕を見ている。
「ときめいた?」
「なにが?」
「間接キス」
「なにをいまさら」
「あっそ」
 つまらなそうに下を向いた。
12 :名無飼育さん :2004/09/04(土) 23:23

 二次会の店が決まったのだろう。ゆっくり、ぞろぞろと、集団が動き出す。
 僕も立ち上がろうと思ったけど、真里は膝を抱えたまま動こうとしない。浮かせかけた腰を降ろした。
 真里は俯いたまま、口だけ小さく動かす。
「さっき、ヒロにコクられたよ」
足音と話し声で、聞き取りづらかった。
「コクられた、って言ったの」
「聞こえたよ」
「そう……」

 僕は何も言うことがないから黙っている。真里も何も言わない。嫌な沈黙ではないが、面倒で窮屈だ。意味はないが声を出す。
「あ、梨華ちゃん、帰ったの?」
「なんで梨華ちゃんの話すんのよ」
「いや、なんとなく」
「なにがなんとなくなのよっ」
 真里は言葉と同時にすっと息を吐き、肩の力を抜いた。そして、しみじみと言った。柔らかく微笑んでいる。
「もうすぐ卒業だね、半年なんてきっとすぐだよ」
「うん」
 酔いのせいだろうか、忙しなく話題が切り替わる。口調も素っ気なくなった。
「海に行きたい」
「もう海月ばっかだよ」
「海ってのは泳ぐためだけにあるわけじゃないよ」
「そうだけど」
「連れてってよ」
「今から?」
「今から」
「じゃあ、明日」
「今がいい、私なんて西洋こけしみたいなもんなんでしょ? すぐじゃん、簡単じゃん」

 僕は立ち上がり、真里に手を差し出した。
「行こうか、海」
 真里は少し困ったように、視線を泳がせた。
「でも、着いたら終電くらいの時間だよ? いま」
「泊まるとこなら、いくらでもあるよ」
「え?」
「一回くらい、ヤッとくか」
「そう、露骨に言葉にしないで」

 二次会へ向かう最後尾にいた奴が、僕たちを待っている。
「すぐに追いつくから」
 声を揃えて言い、逆方向、駅に向かって歩き出した。



                                    おわり                        

13 :名無飼育さん :2004/11/12(金) 05:26
面白かった。
これは良いスレだと思うので、このまま終わらすのも勿体無い。
誰か書いてくれんかの〜。
14 :黒い兄弟 :2004/11/12(金) 14:34
アンジェレッタの予言は的中しました。数日後、アルフレドをたずねて
チェルバ横丁にやってきたジョルジョは、黒い兄弟の仲間から
アルフレドが病気で寝たきりだときかされたのです。
 ジョルジョがアルフレドを見舞いにいこうとすると、アントニオが
いいました。
15 :名無飼育さん :2004/11/19(金) 16:40
はいはい。
これで最後まで書いたら褒めてやろうかと思ったが
所詮、お前はそれまでの男だ!
16 :名無飼育さん :2004/11/20(土) 00:11
気分転換にちょっと書きたいんだが、
一括更新出なければいかんかのう?
17 :16 :2004/11/24(水) 04:29
ま、何も書いてないんだから好きにしろ!!
って事かな。
18 :名無飼育さん :2004/11/25(木) 02:12
いいでないでせうか。
どぞ♪
19 :16 :2004/11/25(木) 03:11
んじゃ、遠慮無く。
ちなみに俺=読者様と言う感じで読んでくれたら
幸いです。
後、頭の中では話は完結してんですが、
文章化にちょっと時間がかかるかも。
ま、今月中には完結させようと思うんでご勘弁を。
20 :プロローグ :2004/11/25(木) 03:12
・・・生きている
俺は生きているらしい・・・
神はあいつではなく、俺を生かすことにしたらしい



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・



何故だ・・・
何故、俺を・・・
・・・分からない




・・・・・・分からない

幾ら考えても幾ら探しても見つけ出せない答え・・・・・・
でも・・・俺は生きなければならない・・・
答えを見つけ出す為に・・・


21 :名無飼育さん :2004/11/25(木) 03:13


〜 Cry for the moon 〜

22 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/11/25(木) 03:14
―――――――――――――――
――――――――――
――――――
―――

誰も寄り付かないような林の中に1人の少女と5人の男がいる。

少女は男達に追われている。

走り逃げ出す少女。
少女の逃げかたは、まるで猛獣から逃げ出す動物のようであった。
そして、後方から猛獣が追ってくる――男達と言う名の猛獣が。

「きゃっ!!」

やがて少女は追いつかれる押し倒され
両手、両足を押さえつけられる

男の1人がナイフを取り出し、少女の服を切り裂く。

「や、やめて・・・」

必死に抵抗する少女だが、男4人に押さえつけられては
何も出来ない。

泣こうが喚こうが、少女の悲痛の叫びは誰にも届かない
少女は絶望感でただ、涙を流すしかなかった――。

―――
――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――
23 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/11/25(木) 03:15
(暑い・・・暑すぎる・・・この暑さは異常だ・・・)
(かすむ・・・目が霞んでくる)

照り付ける太陽が俺の弱った体力を消耗させる

(俺はここで死ぬのか・・・)

体に力が入らず、等々、倒れ込んでしまった。

周りに人はいるが、誰も助けようとしない。
無理のない話である。

こんな真夏の暑い日に長袖着ている奴なんて先ずいない。
俺も誰の助けも必要としない。

(死ぬのか・・・それも・・・いいかもな)
(それが・・・運命・・・ならば)

死と隣合わせで生きていた俺は、覚悟が出来ていた。

「大丈夫ですか?」

少し変わった女性の声が聞こえてきた。
しかし、男でさえ声をかけない俺に女なんか・・・。
(幻聴・・・?ああ・・・俺、もう駄目なんだ・・・)

「しっかりして下さい」

(本物か・・・?)
薄らと開いた目には、とても可愛い女の子が――。
益々、死を確信した。

(天女か・・・天からのお迎えか・・・)


――――――――――――――――
――――――――――――――――
――――――――――――――――
――――――――――――――――
24 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/11/25(木) 03:16
――
――――
――――――――
――――――――――――――――



「・・・ん・・・三途の川に着いたか・・・、ここは?」

そこは、三途の川が側にあるとは思えない閉鎖的な世界だった。
そう、まるで部屋の中にいるような感じだった。

「具合はどう?」

後方から女の子の声が聞こえた。
声の主の方を見ると、美人と言える少女が立っていた。
意識を失う前に見た子とは、また違う。

「・・・君は?」
「・・・藤本。・・・藤本美貴」

俺は彼女に自分の名を名乗った。

「ふうん・・・」
「で・・・ここはどこ?」
「私達の家」
「え、君達の家?・・・って事は・・・」

(俺は・・・生きている・・・)
正直の所、生きている実感が感じなかった。

「・・・君が助けてくれたのか?」

俺の問いかけに彼女は首を横に振った。

「・・・じゃあ」
「私は嫌だった。素性の知らない男なんかを家に入れるなんて。
でも、梨華ちゃんが連れて来ちゃったから・・・」

(ん?)

「・・・っで、リカちゃん・・・って」

この時、扉の向こうから何処かで聞き覚えのある声が聞こえてきた。
25 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/11/25(木) 03:17


(ん?この声は・・・)
意識を失う前に天女と間違えた女の子の声だった。
という事は――

「あ、気づかれましたか?」
「やっと目が覚めたよ」

(やっと・・・?)

「3日も寝たきりだったから、もう心配しちゃって」
「3日・・・?」

どうやら3日も俺はここにお邪魔していたらしい。

「それは申し訳なかった・・・」

俺は慌てて立ち去ろうとした。
しかし、立ち上がろうが体に上手く力が伝わらない。

「駄目ですよ。まだ、動いちゃ。お医者さんも絶対安静って言ってたし」
「いや、3日も世話になったんだから、もうこれ以上」

立ち上がろうとするが、体に上手く力が伝わらない。
すると美貴って子が口を開いた。

「うちから出られて、のたれ死なれても困るんですけど」
「美貴ちゃん!」
「迷惑、迷惑って言うけど、迷惑はもうとっくに係っているの。
今更、何日、泊まろうとも迷惑度はそんなに変わんないから」
――と言い残し、その場から立ち去った。

梨華って子は、申しわけなさそうな顔をして話し始めた。

「あの子、普段はあんな子じゃないんですが・・・」
「いえ・・・、それより助けてくれてありがとうございました」
「い、いえ。そんな・・・お礼を言われるほどのことは・・・あ、これ・・・」
――と言いお粥を差し出す。

「・・・、じゃあ、遠慮無く・・・」

俺は素直に食すことにした。
26 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/11/25(木) 03:18
梨華って子が立ち去ってから、俺は再び眠りにつこうとする。

「ちょっと良い?」

美貴って子がやって来た。

「なんだ?」

別に断る理由はなかったので、彼女の話を聞くことにした。

「ええっと・・・、彼女、つまりは梨華ちゃんの事をどう思っている?」
「え?どうってどう言う答えを待っているんだ?」
「良いから答えて」

顔の表情、心音、呼吸から軽い気持ちで聞いている訳ではない事が分かった。

「・・・命の恩人って所かな」
「他には?」
「後は・・・可愛らしい、優しい女の子?」

この答えが出て来た時に、彼女の表情が一瞬変わったようんな気がした。
27 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/11/25(木) 03:21
しばらく沈黙が続く。
空気はとても重苦しい。

「ここに居ても構わないけど、あの子には絶対に手を出さないで」
「は?」

彼女の言い分が突飛過ぎてわからなかった。

「彼女は本当に純粋で、汚れてない子なの。
だから・・・あの子を傷つけることがあったら許さないから!」

言いたい事を言い終えるとさっさと言ってしまった。

(・・・一体、俺が何をすると言うんだ?)

彼女のとても不自然な言動に違和感を感じていた。
28 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/11/25(木) 03:22

続く・・・・
29 :16 :2004/11/25(木) 03:26
誤字がありましたが、見逃して下さい。
最近、少し自分の作品が煮詰まっているもんで気分転換に
ちょっと書いてみました。

まだ続きますが、そんなには長くならないと思います。

気分が乗ったなら、1週間で終わると・・・。
ちなみにこれは金八とブラックジャックを見た時に、
思いついたものです。
30 :名無飼育さん :2004/11/27(土) 07:55
期待。。。
31 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/11/30(火) 06:27
彼女達との生活が始まって、1週間が過ぎた。

風呂の掃除を終え、居間に戻ると藤本美貴が居た。
何かを思いつめているような顔付きをしている。

(あれは・・・!?)

その時、彼女は俺の存在に気づき慌てて捲れていた袖を伸ばし、
睨み付けるような目つきで俺の事を見た。

「な、何よ。そんなところで隠れてこそこそと・・・」
「すまん、もう寝ようと思って・・・」

今の俺の寝床は居間である。
始めは石川さんが自分の部屋を譲ってくれようとしていたが
流石にそれは断った。

「・・・そっか。こっちこそ、ごめん」

彼女は居間から出て行こうとした。

「あ、テレビを見ているなら、構わないよ」
「・・・でも、もう寝るんでしょ?」
「こっちは居候で何も宛てのない状況だから、何時でも構わないよ」
「そう・・・」

しばらく、沈黙が続く。
彼女は俺を毛嫌いしている節があるので、
なるべく彼女の方には視線を合わせないようにした。
32 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/11/30(火) 06:29
テレビには訳のわからない男達がワーワー言っている。
良くは分からないが恋愛ドラマって言う奴らしい。
ただ、何が何だかまったく分からない。

(アイスホッケーをやっている奴が、訳が分からない奴と喧嘩したり、
女が変な軍団に説教したりと何が面白いのやら)

「梨華ちゃんは?」

珍しく彼女の方から俺に対して話し掛けて来た。
多分、初めて会った日以来だろう。

「昨日、徹夜でレポートを書いてたから今日は早く寝るって」
「そう・・・」

会話が終わってしまった。
彼女なりに気を使ってくれているのだろうが話が続かない。
こっちも世間話をしようにも、共通の話題が無いからどうしようも無い。

「ね、どこから来たの?」
「・・・分からない」
「分からないって・・・」
「記憶に無いんだよ」

俺は倒れる前の記憶が、所々失われていた。
ただ、覚えているのは雪山を下って来たって事と
猛暑の中、ぶっ倒れた所を彼女に救ってもらった部分だけ。
(その部分でさえ、夢だと思っていたぐらいだから)

「そっか。ごめん・・・」
「いや・・・」

何かフォローの言葉を入れようとしたけど、
何も言葉が思いつかず、再び、沈黙状態へと戻ってしまった。
33 :16 :2004/11/30(火) 06:32
>30
ありがとう。
でも軽い気持ちで見てください。
もしかしたら、もう今後の展開とかバレているかも・・・。
34 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/11(土) 23:57

「・・・これって、面白いの?」
「え?」

俺は、テレビの方を指した。

「ああ、何か、今、流行っているみたいだね」
「ふうーん・・・・、何が面白いの?」
「え?
 うーん、男女の恋愛とかアイスホッケーにかける情熱とか・・・
 後、主人公が格好良いところとか・・・」
「主人公?格好良い?誰が?」
「え?だから、見たら分かるじゃん

(うーん、格好ねぇ・・・)
(この頭が爆発している奴かなぁ・・・)

「まぁ、格好は良いかも知れないな」
「そうでしょ」
「何と言っても、頭が素敵だ」
「は?誰の事を言っている」

どうやら間違っていたらしい。

「はっきり言って、誰の事だか分かってないでしょ」
「え、う、うん・・・・」

格好良いと言われても誰が誰だかまったく分からない。
皆、同じ顔に見えてしまうのだから。

「ま、私も今日、初めて見たからね」
「え?」
「前から梨華ちゃんに面白いから見てごらんって言われていたんだけど
 この手のドラマは苦手でね」

この手のドラマと言われても、他にどんなドラマがあるのか俺には分からない。

「・・・・なんかお腹空いちゃったな・・・。ねぇ、なんか作ってくれない?」
「え、ああ。何でも良いでしょ」
「うん」

俺は台所へ行き、食事を作り戻ってきたときには彼女はもう既に寝ていた。

(ふぅ・・・やれやれ)

俺は彼女の部屋から布団を取り出し、肩から布団をかけてあげた。

(さて、俺も寝るかな・・・)

俺は仕方がないので、玄関で寝る事にした。
35 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/12(日) 00:07

 「お、おい。俺だ。分かるか?俺のだよ。
  ずっとお前と仲が良かった、なぁ、覚えているか?」

 俺の叫びなど通じない。
 相手にはとっくに理性など無くなっているのだから。

 「なぁ、しっかりしてくれよ。
  俺といつか逃げ出そうって約束したじゃねぇか」

 俺の声はもう届いていない。
 相手はただの野生の動物となってしまったのだから・・・・。
 あいつからしたら、俺は敵の1人にしか移っていないだろう。 

 一歩、また一歩と近づいてくる。
 
 近づく度に俺の死は近づいてくる。
 後ろは完全な行き止まり。
 
 俺は空を見上げた。
 空は満月
 この満月に見守られ、俺は死んでゆくのだろうか・・・・
36 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/12(日) 01:15
 
「・・・・ぃよ。ねぇ、ねぇってば」

目を覚ますと美貴って子が立っていた。

「あ・・・おはよう・・・・」
「おはよう――じゃないよ、まったく。
 今、何時だと思ってんの?」

時計を見ると朝の6時を指していた。

「6時・・・」
「そう言う事を言ってんじゃないの。
 ったく、せっかく今日が祝日だって言うのに・・・・」
「祝日?」
「そう、祝日」

(ああ、休みって事か)
(休みの日に起こされたから、怒ってんのか・・・・)

「そっか・・・・、それは悪かった」

人間、生きている時間は限りがある。

「・・・・ま、良いや。許してあげる。
 それより、お腹が空いちゃったからご飯を作って」

昨日のしんみりした感じとは違って、いつもの彼女に戻っていた。
(ちょっと優しくなったかな?)
取り合えず、それ程、怒ってなかった事にほっとする俺だった。
37 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/12(日) 01:31
彼女はいつもと違って、何故か機嫌が良かった。
いつもはムスッと食事をするだけなのに、俺の料理を"上手い"と言ってくれたり
時折、俺に対して笑みを見せてくれたりする。
俺には絶対に見せなかった表情を今日は見せてくれている。

「・・・・何かあったのか?」
「え?」
「何か機嫌が良さそうだから」

一瞬、呆気に取られた表情を見せる。

「そんなに違う?」

コクリと俺は頷いた。

「そっか。ま、正直に言うと私、あんたの事を誤解していた」
「誤解?」
「そう、誤解。あんたって言うか、男の人?」
「・・・・そう」

俺はこれ以上、聞き返すつもりはなかった。
しかし、彼女は少しづつ話し始めた。
38 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/12(日) 01:37

「男ってさ・・・・基本的に狼じゃん・・・。
 どんなに表では天使の顔を見せても、いつ豹変するか分からない。
 ・・・・ずっと心配だったの」

ここで用意した紅茶を少し喉に入れる。

「梨華ちゃんって、お嬢様だからさ・・・・外の世界の事を全然、知らない。
 大学は共学らしいし・・・・、いつ男によって傷つけられるか分からない・・・・。
 だから正直言って、初めは得たいの知らないあなたを家に入れるなんて反対だった。
 いつ梨華ちゃんを襲うか分からないから・・・・」
「・・・・で、今は?」
「ずっとここまで何もしなかったんだから信用しても大丈夫だと思っている」

何を言いたかったのかは分からなかったが、取り合えず俺の事を信じてくれたらしい。
ただ、襲うだの何だの言っていたが襲う理由が分からない。
そもそも男が狼だの人間を襲うだの言われたが、俺は狼でも無いし、他の人間を襲う生物でも無い。

・・・・正直、ちょっと侵害である。
39 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/12(日) 01:55
その日の夕方だった。
俺は買い物に出かけた時だった。

八重歯がチャーミングな女の子がこっちへやって来た。

「無事だったんだぁ。良かった。キャメイ、どうしようかと思った」
「は?」

(・・・・キャメイ?誰だ?)

「ね、行こう」

彼女は俺の手をひっぱり何処かへ連れて行こうとする。

「ちょ・・・ちょっと待った。お前は誰だ?」
「お前って・・・・、キャメイの事、忘れたの?」

悲しそうな顔をして、俺に問い掛けた。
しかし、実際に思い出せなかったので正直に答えた。

「忘れたも何も知らんものは知らん」

すると目をウルウルし出す。
俺が彼女を置いて、先に急ごうとした時だった。

「ふえ〜ん!!」

尚も置いて行こうとするが泣き声が一層、大きくなり皆の注目の的となってしまった。
結局、俺は彼女の号泣を止める為に一度、彼女を他の場所へ連れて行った。
40 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/12(日) 02:10
公園のベンチへ連れ出し、一通りの経緯と
今、彼女達の家に世話になっている事を話した。

「そっか、記憶喪失なんだぁ・・・・」
「あぁ、なぁ、俺って何者なんだ。知っているなら教えてくれ」
「・・・・・記憶喪失だった、思い出すまで知らない方が良いよ」
「・・・・・知らない方がって・・・・」
「・・・・・多分、絵里が言ってもいきなりは信用できないと思うよ」

彼女は立ち上がり、公園のブランコの方へ向かった。

「ね、こっちに来てよ」
「え、ああ」

ブランコの方へ行く。

「背中、押してくれる?」
「ああ」

取り合えず彼女の言う通り、背中を押し勢いをつけた。
(そう言えば、何となくよくこう言う遊びをした記憶があるな・・・・)

「はぁ、懐かしい」
「なんか、俺もそんな気がする」
「・・・・思い出したらで良いから、またやってくれる?」
「・・・・おう」

彼女はしばし、昔を懐かしさに浸っていた感じだった。
41 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/12(日) 02:18
取り合えず俺は、彼女を駅まで送る。
(はぁ、こんな時間になっちゃったな。早く買い物を終わらせなくちゃ・・・・)

「ありがとう」
「ああ」
「あ、そうだ。今、人のうちに厄介になっているんだよね」
「ああ」
「だったら、これ、あげる。絵里が働いている所で貰ったの」
「え?」

俺は彼女から分厚い封筒みたいなのとけったいな模様をした鞄をもらった。

「・・・なんだか知らんが素直に貰っとく。ありがと」
「うん、じゃあ、また何時かね。そうだ。その時はここへ連絡して」

――と幾つかの番号が羅列している髪を貰った。
42 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/12(日) 02:31

「・・・どうしよう」

買い物を終え、彼女から貰ったものを見た俺は
あまりにも凄い物であった為に途方に暮れていた。

「おー、お帰り」

後ろを振り向くと美貴って子がいた。

「あ、ああ・・・ただいま」
「ねぇ、今、何を隠したの?」
「え、いや・・・・何でもない・・・・」
「ふうーん、ま、いいや。何、今日のおかずは?」

その場は特に必要以上に聞かれなかった。
良かった・・・・。
それにしても、どうしよう。
この金・・・。
43 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/12(日) 02:39

「998、999、1000・・・・1千万って、あいつは何もんだ・・・・」

俺でも分かる。
この金の価値を・・・・。

「・・・・ま、今度、返すか」

(待てよ・・・、でも、いずれはここを出なくちゃならない・・・)
(その時は少し使わせて貰うか・・・・)
(それにくれるって言ったんだから、ちょっと減っていても何も言わないだろう・・・・)

自分の中では、貰うのではない。
ちょっと借りるのだと言い聞かせ、自分自身を納得させていた。
44 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/12(日) 02:41


  続く・・・・
45 :タイトル :2004/12/12(日) 02:46
22〜28    第1話 『天国と地獄』
31、32、34〜43  第2話 『夢・・・・』

46 :16 :2004/12/12(日) 02:48
俺って何者?
それは色々な所でヒントが出てます。
(ま、皆、分かっていると思いますが)

それより上げてしまってすみません。
寝ぼけてました。

47 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/13(月) 02:45
 (ここは・・・?) 
 
 とても生活観を感じさせないビルの一角。
 辺りには檻や水槽らしきものが置かれている。
 
 見渡すととても怪しげな装置やホルマリン漬けされている
 人間の死体があった。
   
 ドーン!!
 何かとてつも無く大きい何かが落ちた音がした。
48 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/13(月) 02:45
 
 その音が鳴ると同時に建物全体にひびが入る。
 崩れたコンクリートの破片が少しづつ天井から落ちてくる。
 建物の作りが良い所為かかろうじて持ちこたえているが、
 今にも崩れ落ちそうだ。

 「ふぇーん!!!」

 どこかから泣き声が聞こえて来た。

 (この声は・・・・)

 見ると公園で出会った八重歯がチャーミングな少女だった。

 「大丈夫か!」

 黙って彼女が頷く。

 「他の皆は?」

 聞き返しても怯えて、何も答えない。

 「大丈夫、絶対に助け出してやる」
 「・・・・本当?」
 「ああ、この命に代えてでも・・・」

 この時、遠くの方から声が聞こえてきた。

 「近くに誰かいるぞ、行こう」

 彼女は上目遣いで黙って頷いた。
 俺は彼女の手を引き、聞こえてくる声を頼りに
 その主の元に向かった――

49 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/13(月) 02:47


 「おーい!誰だ、声を出してくれ!!」
 「誰かいるの!!」

 見ると端正な顔立ちで短髪の背は割と高めの子がそこにいた。

 「ああ、俺だ!!!」

 その子は俺の顔を見るや安堵感を除かせた。
 しかし、すぐ表情を戻す。

 「今、何人が無事なの?」
 「分からん・・・、俺が知る限りではこいつだけだ」
 「そっか・・・・、取り合えずhopeとtrueは無事だ」
 
 俺の記憶の無い名前であった。
 この時、等々、建物が崩れ落ちてきた。

 「このまま居たら、瓦礫に押しつぶされてしまう。取り合えず外へ出よう」
 「で、でも、外に出たら奴の」
 「奴の事は俺に任せろ!!」
 「おい、でもあいつは!!!」
 「大丈夫・・・・俺を信じてくれ」

 彼は俺の顔を見る。
 そして、黙って頷いた。

 「おい、行くぞ!!」
 
 するとどこかから2人の子が出てきた。
 一人はキャメイって子とは違う八重歯がチャーミングな子と
 もう一人はおかっぱ頭の子が現れた。

 「俺はお前を信じる」
 「ああ、俺の命を代えてでもお前達を救う。とにかく急ごう」

 俺らは出口の方へ急いだ。
50 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/13(月) 02:49
 
 俺らが出ると同時に建物は崩れ落ちる。
 間一髪、助かったみたいだ。

 しかし、地響きが鳴るぐらいの足音が聞こえてきた。
 その足音は一歩、また一歩と近づいてくる。
 とてつも無く大きい何かが俺らに気づいて近づいて来ているみたいだ。

 (駄目だ・・・・このままだと皆、殺されるだけだ・・・・)

 俺は覚悟を決めた。

 「・・・・分かれよう」
 「え?」
 「このままだと全滅するだけだ。俺が囮になる。」
 「そ、そんな・・・・」
 「俺だったら、あいつが正気に戻る可能性がある。
  もしかしたら、俺ら5人いや6人が助かるかも知れない」
 
 俺の提案に皆、一斉に反対した。

 「何、考えてんだよ!!生きるも死ぬも皆、一緒だろう!!!」
 「そ、そうですよ!私達だって覚悟は決めてます」
 「皆、一緒だよ。いつだって。それに力には自信がある。一緒に戦おうよ」
 「キャメイの事を守ってくれるって言ってたのに、嘘だったの!!」

 (・・・・・この言葉だけで十分だ・・・・)

 「俺は1人でも欠けたら嫌だ・・・・・。あいつも欠けたくないんだ。
  それを分かって欲しい」
 「嫌だ嫌だ、絶対に1人じゃ行かせないもん・・・・」

 八重歯の子が俺に抱きつき放さない。  
するとその光景を見ていた短髪の子が頷き、俺の顔をじっと見る。
 そして・・・・。

 「・・・・俺が囮になるよ」

 短髪の子が死を覚悟した面持ちで申し出た。
51 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/13(月) 02:51
 (ふう・・・こいつは強情な奴だからなぁ・・・) 

 「・・・・分かったよ、だったら、皆で力を合わせて戦おう」
 「ああ、さぁ、皆、行こぅ!!・・・・な・・・・何を・・・・」

 俺は奴の後頭部に軽い手刀を浴びせた。

 「・・・すまん。こいつを頼む・・・・」
 「・・・え?」
 「もし、生きていたら・・・・・にいる・・・・・の所で待ち合わそう」

 俺はそう言い残し、あいつの下へ走っていった――。
 
52 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/13(月) 02:56

ガバっと起き上がると、そこはいつもの風景だった。

テレビにコタツにソファーベッド。
俺はこのソファーベッドで寝ている。

(夢?・・・だよなぁ・・・)

気づいたら、寝汗が半端ではなかった。

(・・・・それにしても・・・・恥ずかしい夢だったなぁ・・・・)

俺は夢の内容を振り返るととても恥ずかしくなって来た。
時計を見るとまだ1時半。
このまま起きていてもしょうがない。

(寝るかぁ・・・・)

俺は再び床についた。
53 :名無飼育さん :2004/12/13(月) 02:56


********************************

54 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/13(月) 03:06
トントントントン
小刻み良く野菜を切る音が、台所に響き渡る。
俺は、その野菜を切るリズムが好きだった。

いつもと変わらぬ朝である。

俺はいつも通り、2人の朝食の用意をしていた。

「あ、おはようございます」

梨華って子が起きてきた。
この子は着替えずネグリジェ姿だったので俺はちょっと目のやり場に困った。

「おはようございます」

俺は軽く会釈をし、再び、目の前にある野菜を切り出した。
55 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/13(月) 03:06
美貴って子があの子の事を心配する気持ちが分かってきた。
得体の知らない男がいるにも関わらず、彼女は俺の事を完全に信じきちゃっている。

彼女は今まで、よっぽど周りに恵まれてきたんだろう。
人に裏切られたりとかした事がないのでは無いか?
だから、こうも人間の事を信用できるのであろう。

でも、俺は彼女にはこのままで居て欲しいとも思った。

裏切られないで済むならそれに越した事はない。
世の中に1人ぐらい人間をずっと信じられる人が居ても良いと思った、
彼女にはずっと天使、いや女神みたいな存在で居て欲しい――と。
56 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/13(月) 03:14

「うわぁ、美味しそう。凄いですね!」

いつものキャピキャピ声で、いつも通り誉める。
俺はこの言葉を聞くたびに、明日も頑張ろうとも思う。

そして、10分ぐらい経って美貴って子が起きてきて、
自分の指定席へ座る。

「おはよう。今日も凄いね」
「おはよう、ま、これぐらいはね」

そして美貴って子が食べ終わり、
美貴って子と梨華って子が出かけると俺の朝飯が始まる。

最近は本当に居心地が良い。
2人とも物凄く親切だし、とにかく俺の事を信じてくれる。

だから、俺は心が痛み出した。
いつまでも居候になっている事を――。
57 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/13(月) 03:24


*******************************************
58 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/13(月) 03:30
(果たして、俺は何者なんだ?)
(本当に彼女達にとって、害を与えない者なのか・・・・)

色々と考えては見るが、全然、結論が出ない。

それもその筈。
自分が何者なのかは、ちっとも分かっていないんだから・・・・。

(そう言えば、今まで見た夢・・・・)

ここ数日、見てきた夢を思い出していた。

泣き叫んでいる夢、追われている夢、仲間と話している夢・・・・etc、
色々とつなぎ合わせてみると一つの話として繋がりが出来ている。

(何なんだ?この夢は・・・・)

思い出そうにも過去の記憶が無いから、思い出せない。

(・・・・・そうだ、絵里って子が知っている筈だ。彼女の電話番号・・・・)

俺は彼女から貰った電話番号を取り出し、受話器に手をかけた。
59 :〜 Cry for the moon 〜 :2004/12/13(月) 03:32


   続く ・・・・・・
60 :タイトル :2004/12/13(月) 03:33

47〜59 第3話 『俺のは正体は?』
61 :16 :2004/12/13(月) 03:57
訂正:
『俺のは正体は?』 → 『俺の正体は?』

――――――――――――――――――――――――
はぁ・・・、寝てねえから辛い・・・。
亀井は茶髪じゃない方が良いよ。

それにしてもあややってすげぇーよな。
何でもソツ無くこなしてしまう。
アドリブも利くし・・・・。

あー、何を言ってんだろう俺・・・・・。

とにかく寂すぃ・・・・・。
62 :名無飼育さん :2004/12/23(木) 23:46
サンタとの生誕祭
63 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:46
やたらと強く、そして純粋な優しさ。
そんな人間の思念を感じた。
しかし、俺には関係の無いこと。

だから無視して、
明日に備え早々と寝につこうか、そう思った矢先
思念に変化が生じた。

悲しみと不安。
この二つの感情が、
決して大きくでは無いけれども思いに乗り始めた。

だから俺は飛んだ。
整備が済み、整えてあったソリの列の中から一つを抱えて。
俺と同じく明日に備えて休養中だったトナカイを一匹、たたき起こして。

たずなを装着し、そりを取り付け
思念を辿りながら、俺は発生源を目指した。

12月23日。
聖誕祭を二日後に控えたときの出来事だった。
64 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:47
―――
65 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:47

辿っていくごとに
不安と悲しみが強さを増していき
それはある一軒家の前に到着したとき最高点を迎えた。

二階のある一室。
カーテンも閉めず、窓も閉めぬまま
その女の子は肩を震わせていた。

スンスンと、時折しゃくり上げ
悲しみにくれ
漏らす小さな嗚咽が俺の耳まで届いてくる。

聖誕祭を近くして、何故あの子は泣いているのだろう。
何故そこまで悲しんでいるのだろう。

泣き続ける少女をじっと見つめたまま
俺はトナカイを少しずつ前進させ、ベランダへと降り立った。
少女は気付かず、涙を流す。

「……どうした?」

これはサンタの世界における禁忌。
サンタは人に姿を見せてはいけない。絶対のルールだった。
そう頭で分かっていながらも、俺は少女に声を掛けた。

ビクリと身体を一際大きく振動させ、
俺を振り向く少女。
瞳は潤み、
目の周りは見るものも哀しくなるほど、赤く腫れあがっていた。
66 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:48
「…だ、れ、っく…ですか?」
「サンタだ」

切なげにしゃくり上げる少女に、俺はそう返す。
おかしな会話だ。
泣きはらす一人の少女の前に、全身を赤で飾った一人の青年。

こんな堂々と名乗っても
かえってくる言葉は大方予想が出来る。
泥棒、不審者、変質者。
サンタを信じていない人間としては、妥当な返答だろう。

しかし、少女は違った。

「サンタ、さん…あ、れ?
 わたし、いつの間に眠っちゃったんだろう」

両頬に手を当てて、自室の床へと視線を落とす。
怪訝な表情で首を左右に傾げるの少女。
その傍らへと、俺は腰を下ろした。

どうやらこの子は、コレを
俺―サンタがいるという現状を、夢だと判断したようだ。
些か不本意だが、夢ならば話しは円滑に進めらるやもしれん。

「でも、どうして、サンタさんが…?」
「君の泣く声が聞こえた。だから来たんだ」

結局夢ということで自己完結した少女は、
キョトンと目を瞬き、俺に訊ねた。
俺はありのままを答え、少女の傍らに腰を下ろす。

「え…」微かな戸惑いと共に漏らした声。
潤んだままの瞳を覗き込み、今度は俺から問うた。

67 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:48
「何故泣いている?
 どうして君はそこまで悲しみに暮れている?」

少女の顔が、歪んだ。そして再び漏れ出す嗚咽。
だが少女は気丈にも、しゃくり上げる中に言葉を混ぜていった。

「れ、なが…れぃなが…わ、たし…」

途切れ途切れに。
単語のみを無造作に並べて、紡いでいく。
聞き取れた単語を整理し、並べてみると、こうだ。

 れいながどこかへ行っちゃった

どうやら
数日前から一番仲の良い友人が急に冷たくなり、
それを言及してる内に、言い争い、絶交までしてしまったのだという。

冷静に考え直し、謝罪を入れようと思ったところ
しかし連絡は繋がらず。
次の日学校へと赴いてみても、その子は姿を現さなかった。

少女はその子とを自分のせいだと思いこみ、
こうして泣き崩れていたという。

「わたし…あの時、どうにかしてて…大っ嫌いって、叫んじゃって…
 れぃなに、何かあったら…わたし、わたし…」

ふむ。低く唸ってから、俺はすくっと立ち上がる。
そして再び本格的に泣き始めた少女を抱え上げると、
伴ってベランダへと歩き出す。
多少強引だが、許していただこう。

「あ、あの…」

涙で濡れた双眸を、キョトンと丸くして。
俺をじっと見つめる少女を、優しくそりの後部座席へと降ろし
俺もたずなを掴んでその前へと座る。

68 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:48
多少元気になった感嘆の声が、背後から上がる。
俺はたずなを一度上下に揺らし、そして言った。

「探しに行くぞ。その友人」
「え…わっ」

音も無く、
夜闇が張る空へと向かって、そりは上昇を始める。
少女の疑念と驚きの声を合図としたかのように
トナカイは空を踏みしめ走り出した。

69 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:49
**
70 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:49

「サンタさん」

イルミネーションが無数に輝く街の、上空。
トナカイに引かれながらキョロキョロと下を窺っていたとき、
背中側の少女が俺に問いかけた。

「なんだ」そちらを振り返らずに聞き返すと、
どこか恐る恐る、そんな感じの声調が流れてきた。

「あの、何でこんなことしてくれるんですか?」

探索作業を一時中断し、
顔の右半面だけが少女に見えるよう、振り返る。
途端、少女が身を強張らせた。

…元来、表情が無いといわれる俺。
そこまで怯えるほどかと、内心僅かに肩を落とした。

「君にとって、今の行為は“こんな”程度のことなのか?」
「……ぁ、いえ、そういうわけじゃあ…」

決して怒っているわけじゃないが、
少女は俺の言葉を聞き、顔を見て身を竦める。
俯きがちになり、それきり黙りこくってしまった。

笑おうとするが、表情筋が上手く動いてくれない。
中途半端は余計に恐がらせることがあるので、
俺は表情を動かさないまま、なるべく柔らかく言葉を紡いだ。

「俺たちがプレゼントを配りに行くとき、
 眠っている子供は皆嬉しそうに笑っている。
 その笑顔が、俺たちを癒し、更に奮い立たせてくれる。
 子供達からの無意識なお礼だと、俺は勝手に解釈している」

71 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:50
だから。
そこで切って、俺は探索作業を再開し
同時に掌を空へと向けた。

刹那、形成される一つの双眼鏡。
驚き眼の少女を尻目に見ながら、それを手渡し、下界を指差す。

「聖誕祭とは子供達にとっても、
 俺たちにとっても
 かけがえの無い一日だ。
 そんな日に、泣き顔なんか見たくないからな」

ふと、少女を完全に見据えて

「聖誕祭間近に、君の悲しみは深すぎる。
 …放っておけなかったんだ」

最後の台詞は、少女を直視することなく虚空に呟いた。

「優しいんですね、サンタさん」

返ってきた声に、再度振り返った。
控えめな微笑み。
しかし、浮かぶ色は声と同じく、愁いを帯びる。

双眼鏡を胸にギュッと押し付けて、
唇もギュッと引き結んで。
少女はポソリと呟いた。

「れいなは…絶対一番に、
 誕生日とクリスマスを祝ってくれたんです」
72 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:50

 今日、誕生日なんです…

聞き取りづらい程、掠れた小さな声だった。
だが俺は確りとその言葉を耳にいれ、俺は少女の肩に手を触れた。
潤んだ瞳が懇願するような光をたたえ、俺を見つめる。

俺は見つめ返すのも程々に、
顎で下界の光り達を指し示した。

「だったら、尚更だ」

言ってから、身体の向きを戻して、たずなをふわりと揺らす。
ゆっくりと走行していたトナカイがかぶりを上下して、速度を上げる。

「きゃ」小さな悲鳴が聞こえた。

「約束しよう。
 今日が終わる前に、君の友人を見つけ出す。絶対だ」

天を駆け、隣町までの距離を一気に詰めていく。
数拍の間があいて

「はい!」

今日一番の、元気な返事が返ってきた。
自然と口角が吊りあがったことは、何となくだが自覚できた。

73 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:51

74 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:51

目付きが悪く、身長は小さい。
髪の毛が外側に向かって跳ねている。
少女から聞いた友人の特徴を頼りに、俺は下界を眺める。

「見えるんですか?」そう聞かれ、
「サンタだからな」簡単にそう返したのは、つい先程のこと。

今では背後の少女も、双眼鏡を覗き込んで、
そりの淵からひょっこりと顔を出している。
一応危ないぞと注意をしておいたので、出している顔は必要最低限だ。

「あれか?」
「え、どれですか?」
「あれだ、あの白いコートの…」
「…違います。れいなはもっと胸が小さいです」

特徴に胸が小さいと追加。
再び捜索に取り掛かる。

だが、聞いただけの特徴での特定は難しい。
この街だけでも何千・何万という人間がいるだろう。
そこから目標の少女を捜しだすという行為は、奇跡に――

「サンタさん!いました、れいなです!」
「何処だ?」
「あっち!ケーキ屋の近くの公園。ベンチに座ってます!」

75 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:51
奇跡か?いや、彼女が友人を想う気持ちが通じたのだろう。
神様というのがいたのなら、そいつは粋なことをする。

「はやく、サンタさん!」
「分かった」

興奮気味の少女の声。肩を揺さぶる小さな両手。
それに答えて、俺はトナカイを進路を変えた。
180度転回。
目標は…あれか。

ブランコとベンチ、それと公衆トイレしかない小さな公園。
そのベンチの一角に、少女の友人らしき人物は座っていた。
傍らに小さな白い箱を伴って、
寂しげに肩を落として視線を地面のどこかに落としていた。

「れーなっ!」

背後の少女が、震えた、でも嬉しそうに声を張り上げた。
今や地との距離は殆どなくなっており、
少女の声は楽々と友人に届いただろう。

「え、絵里?!」

自分の前に降り立った俺達、否。
少女を確認して、驚愕の声を上げる友人。

ガタリ。そりが揺れる。
直後に視線を友人へと流すと、
再会の抱擁が行なわれている最中だった。

友人は未だ驚愕が拭い取れず、しきりに瞬きを繰り返す。
ややあって、二人の身体は離れた。

76 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:52
「れーな!心配したんだよ!
 わたし、れいなに何かあったら、どうし、ようか、と…」
「絵里…」

小さくなっていく語尾に、涙が混じる。
俯く顔、滑らかな傾斜を作る背中。
泣き出してしまった少女に、
友人は戸惑いがちに眉尻を下げた。

「ご、めんねぇ…大っ嫌い、なんて、言ってぇ…ごめんねぇ…」
「あれは…れなも、悪かったと。
 最近、れな、絵里のことば、ものすご意識して…
 思わず避けちゃってた、と…ごめん」

顔を見合わせ、ごめんごめんと言い合う二人。
どうやらこの二人、親友という型だけでは収まりそうにない。
遅かれ早かれ、今は無理だとしても、いずれは、な。

ふと、謝罪の言葉がやんだ。
ジッと少女を覗き込む友人。
悲しげだった表情が和らぎ、微笑の花が咲いた。

そして、再び抱擁を交わす。
きらりと。
友人の目尻に、光を見た。

「れな、あれから何回も誤りに行こうと思っとった。
 でも、勇気、だせんで」

友人は少女の耳元で、自分の想いを伝える。
一言一言終わるたびに、少女の頭は微かに揺れ動いていた。

「こんなんじゃいけん、って思って、この街に来たと。
 美味しいケーキがあるって聞いて、
 絵里に謝った後、
 一番に絵里と誕生日を祝おうって思って…」

77 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:52
 そしたら、帰り道わからんくなって…

苦笑いを浮かべ、友人。もう一度、ごめんと口にする。
間髪おかずに

…ばか

という、嬉しそうな声で少女は返し
「でも…」すぐに悲しげに声を潜めた。

「…これが、れいなと会えたのが、夢じゃなければいいのに…」

身体を離し、ポツリと呟く。
友人は「夢?」と不可解な言葉を反復し、眉を顰めた。
ククッと。
喉の奥で笑いが漏れて、俺は言葉を投げかけた。

「夢じゃないぞ」

クルリと身体を反転させる少女と、
今更ここにいいる俺に訝しげな視線を向ける友人。
驚きと疑わしげな二つの視線を受けながら、
俺は抓ってみろと言った。

「…痛い」

頬を抓り、そう漏らす少女の傍らで
俺を指差し「誰?」と問う友人。
生まれて初めて自然に苦笑を浮かべつつ、俺はたずなを掴んで上下へ軽く揺する。

ふわり。
トナカイとそり、その上に座る俺が宙へと浮いていく。
コレには友人も、流石に驚いて目を丸くしていた。

少女が目を大きく見開いて近づいてくる。

地上から一mほど上がったところで制止をきかせ、
俺は掌をかざし、待てと意志を表示した。

78 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:53
「サンタさん…本物、なんですか…?」

俺はそれに答えず、自然に笑いかけた。
右手を天へと突き上げる。
そして息を思いっきり吸い込むと

「生誕祭だっ!笑っていこうじゃないか!」

柄にも無く、叫んだ。

それと同時に、白銀が舞い始める。
ちょっとはやく、その上反則気味だが
君へのプレゼントを送るよ。

泣き顔はダメだ。やはり笑顔が、最も美しいから。

「あ、あのっ!あり――」

舞い落ちる雪の結晶。
その中で少女は両目いっぱいに涙を溜めて、
しかし満面の笑みで、俺に向かって―――

79 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:53
―――***
80 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:53

「ん…ぅ、ぅん…」

ゴロンと寝返りと一つうち、苦しげに唸って上体を起こした。
薄ぼんやりと映る辺りを見渡し、絵里はそこが自分の部屋だと認識した。
右隣ではれいなが寝ている。
そこで誕生日を二人で祝っていたんだと、思い出した。

ふと、首を傾げる。
夢を見ていた。
何かとても温かい、夢を。
そんな気がするが、どうにも霞がかかる頭の中。

不明瞭な記憶を探るも、思い出せない。

「…」

グチャグチャになってしまった頭をかきつつ、
れいなを起こさないよう静かにベッドを下りる。

ふぁ。思わず身体が震え、声が漏れた。
閉ざされたカーテンをほんの少しだけ開けてみて、納得。
空から舞い落ちる、白銀の結晶。
この寒さは彼らがもたらすものか。

絵里は微笑んだ。
誕生日は最高の日となった。
この分だとクリスマスはもっと最高な一日になるだろう。

息を漏らすように、微かに笑い声を漏らして。
ベッドへと戻ろうと身を翻したとき、視界に映った見慣れない物体。

机の上にチョコンと。
薄暗闇の中に溶け込むような黒のボディ。
掴んで持ち上げると、こちらを見つめる小さなレンズが二つ。

色んな角度から眺めてみる。
と。
突然の出来事だった。

「っ!」

頭の中に過ぎった一つの場景。
それに突き動かされるように、絵里は音を立てカーテンを開け放った。
窓を開け、僅かに雪が積もったベランダに裸足で踏みしめる。

どこか知れぬ、虚空を見つめていると

―――仲良くやれよ

そんな、聞きなれていないはずだが
妙に懐かしい声をが聞こえたような気がした。

思わず、涙が込み上げてきて、
でも確りと笑顔を浮かべて。
雪が下りてくる空を目掛けて、腹の奥から声を張り上げた。

「サンタさん!ありがとー!」

ギュッと、双眼鏡を胸へと押し付けて。
絵里は空をじっと見つめて、笑いかける。

何処からか、シャンという小さな鈴の音が
響いた気がした。
81 :サンタとの生誕祭 :2004/12/23(木) 23:54
fin
82 :16 :2004/12/24(金) 00:08
放棄した訳ではなかったんだけど・・・・ま、いいや。
続けるって言わなかった俺が悪いんだし。
元々のルールは1日で完結だったから。
これ以上は混乱を招くので、放棄します。
83 :サンタとの生誕祭作者 :2004/12/24(金) 00:20
>>82
すいません。
続いているとは知らず、書き込んでしまいました。
話の腰を折り、実に申し訳ありません。
どうか放棄ばかりは考え直していただけないでしょうか。
84 :82 :2004/12/24(金) 06:34
>83
こちらの方こそ、寝不足気味で少し機嫌が悪かった事と
物凄く言葉足らずな発言をしてしまい、不快な思いをさせてしまいました。
その事を先ず、お詫び致します。

で、話の腰を折るって事を書かれてましたが、仮に見ている人が居ても
この事で折れるって事はないと思いますので気にしないで下さい。

それに今回の事で、俺の所為でここで書きたくても書けなかった人が
いるんじゃないか?って事に気づかされました。
そう言う方々にお詫び致します。

連載の件ですが、今、頭が回っていない状態で言葉がまとまらないので
後で自分の見解を書かせて頂きます。
85 :84 :2004/12/24(金) 23:31
連載の件ですが、当初、言った通り放棄をします。

今まで誰も使っている様子がなかったんで
勝手に使っていた訳なんですが、
共有スレをいつまでも独占する訳にも行かないだろうと
今回の事で思った次第です。

再開するにしても、新たにスレを建てて
書くかなっといずれにしてもここでの再開については
考えてないのでここでの連載は終了とさせて頂きます。

最後に長い間、占拠していた事をお詫びします。
86 :84(最後に…) :2004/12/25(土) 05:33
P.S. 83殿へ

今、作品を読ませてもらいました。
面白かったです。
こう言った感じの作品をいつかは書きたいと思ってます。

また、次作品を楽しみにしてます。
87 :名無飼育さん :2004/12/29(水) 21:02
また、静かになってしまった・・・。
83さん、なんか他にネタ無い(面白かったよ。)?
82さん、書いたら?
88 :名無飼育さん :2005/01/18(火) 21:58
ochi
89 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:24

すまない、と彼はもう一度言った。
亜弥はその場を動かず、もう引き留めもしなかった。
彼がそのまま音もなく亜弥の隣を通り過ぎていく。
亜弥は去っていく背中を見送らなかった。
涙を流したくなかった。
90 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:25




夜遅く、一つの人影が地下駐車場を出、外階段を上って喫茶店へ入る。
まだ十代の少女だ。
少女はこんな時間には不釣合いなライトグレーのプリーツスカート、
長袖の白いブラウスにカーディガンという学校指定の制服を着ている。
喫茶店に入ってきた少女を見つけて店内の一番奥窓際に座る男が立ち上がった。
三十代前半だろうか。店には他に客はいない。
だから、変わった組み合わせだなと思う者もそこにはいなかった。
91 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:29

少女、亜弥は黒いナイロンのショルダーをごくゆっくりとした仕草で外した。
そして、席につく瞬間にわざと瑞々しい膝のシルエットを彼に見せる。
彼が咎めるように微かに眉を寄せた。
亜弥は彼のそんな潔癖さが嫌いではなかったから少し微笑してスカートを揺らし膝を隠した。

「……仕事終わったばかりなのに、呼びつけてすまないな」

オーダーを終え、ウェイトレスがカウンターに戻るのを見届けた後、
それまで何も言わないでいた彼が小さな溜息と共に重たい口を開いた。
別に構いませんよ、と返事をしながら亜弥は彼の挙動に目を見張っていた。
呼吸や瞬き、胸の上下運動。
ありとあらゆる動きから亜弥は彼が自分になにを話そうとしているのか読み取ろうとしていた。
彼が亜弥を呼び出すのは異例のことだから、きっと何か改まった話があるに違いなかった。

仕事帰り私用の携帯電話に彼から連絡が入った時、
ただ自分に会いたくなったのだろうかと、そうならばいいな、と願わなかったわけではなかったが
その確率が低いことは先の彼の言葉に乗せられた重みから亜弥は気づいてしまった。
92 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:29

彼はすぐに言葉を交わすのを避けるためか、水を口に運ぶ。
カランと硝子の円筒の中で氷が音をたてる。亜弥もそれに倣った。
緊張で喉が渇いていたから丁度よかったが、咽奥をするすると通り抜ける水は
カルキの味がしてあまり美味しくはなかった。
この喫茶店の水はこんなに不味かっただろうかと亜弥は思いながら彼をチラリと窺う。
彼はテーブルから両手を引き、下のほうでそれを組んだまま、暗い窓の外へ視線を飛ばしていた。
緊張している自身の顔を見つめて叱咤しているのかもしれない。
彼が話そうとしている事が自身にとって、いい話なのか悪い話なのか、亜弥はまだ判断できずにいた。
ただ切り出すのにとても勇気がいる話だということだけが分かる。
だから、亜弥は彼の準備が整うまで敢えて話しかけず、窓を向いたその横顔に
夕暮れが齎す鮮やかな朱に染まった音楽室で、一人ピアノを弾いている彼の姿を連想した。
93 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:30

一回りくらい違う年齢の事とかお互いの立場とか、ごちゃごちゃ煩わしかったから
押さえつけてキスをした。彼の戸惑いを大いに含んだ眼差しは少年のようだった。
94 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:30

「お待たせ致しました」

ウェイトレスがやってきて二人分のドリンクをテーブルに。
彼は亜弥が頼んだ紅茶が置かれるのを見計らって自身の珈琲カップの取っ手に指をかける。
その手が少し震えていて、亜弥は彼の話が悪い話なのだと気づかされた。

「……先生」

思わず零れた声は自分のものとは思えないほど頼りなかった。
その声の余韻が胸を焼くのを覚えながら、
亜弥の脳裏にはあの日の音楽室でのやりとりが流れ始めていた。
95 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:31




ぱたん、と音を立てて背後で扉が閉まった。
かちゃ、と音を鳴らして後ろ手で鍵を掛けた。
ピアノの音色が止まりシンとなる音楽室は、締め切っていた所為か蒸し暑かった。
ピアノの前にいる彼は不思議そうに目を細めていた。
逆光で顔が見えないのだろうと思って亜弥は少しずつ足を動かした。

「松浦?」

目を細めていた彼が確認するかのような声で言った。
ますます不思議そうな顔になった彼を横目に、亜弥はその脇を擦り抜けて窓を開けた。
潮の混じった蒸した風と、蝉の鳴き声が流れ込んでくる。
そうして、亜弥は窓を背にして振り返った。

彼は汗一つかいていなかった。
亜弥は白いブラウスが背中に張り付くのを感じた。
少しも格好よくなんかない。これといった特徴もなく、特に目立つ存在でもない。
そのことが彼に惹かれることと関係あるのだろうか。否。
亜弥は強張りそうになる頬を持ち上げて微笑をつくると、口を開いた。

彼の中にある戸惑いの色が濃くなるのが分かった。
それでも亜弥は構わず言葉を続けた。
96 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:32




亜弥の呼びかけに顔を上げた彼は漸く第一声を発した。
こんなことはもうやめよう、と。
言うべき言葉をしっかり承知した声だった。
亜弥は耳を疑った。
好きだと言った。抱きしめられた。手に入れたと、思った。
欲しくて欲しくてたまらなかったモノをやっと引き寄せられたと思っていた。

「…どうして、ですか?」

声が震える。
指先が血液がいかなくなったかのように冷たくなっていくのを亜弥は感じていた。
彼は悲しげな表情で、けれど亜弥の瞳を真っ直ぐに見つめ返している。
その目が何よりも好きだった。真剣な目が、なにより。
その目に捕えられていたいとすら願った。だが、それが今は怖かった。
自分を突き放そうとしている目。何より怖いと感じた。
逃避なのかなんなのか、あの日の蝉の鳴き声が亜弥の鼓膜で音をたてはじめる。

好きだと言った。抱きしめられた。キスをした。
きつく、きつく抱き合った。
どうしようもなくて涙が溢れた。キスをした。
あのひの、こと。
夕暮れの灯りも差し込まなくなった音楽室は薄暗かった。
蝉の声は変わらずに五月蝿かった。
97 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:32

「……俺は教師で、君は生徒だ。だから」
「もうすぐ卒業するから、そんなこと問題じゃなくなります」

太陽は沈んでいた。
丁度、今、窓から見える景色のように外は暗かった。

「問題なんて…なくなります」

亜弥はもう一度言った。じっと、彼の目を見つめ返したまま。
声の震えは消えていた。彼が何か言おうとして、だが、そのまま視線を落とす。
そんな意気地のない仕草一つでさえ亜弥には愛しかった。

「…先生」
「……すまない。これは俺自身の問題なんだ」
だから上手く話すことができない、と彼は言った。

「そんなの狡いです…きちんと理由を教えてくれないと私は先生のこと諦められません」

蝉の鳴き声が煩い。
彼は口を噤んだまま、亜弥から視線を外している。
自分の声がちゃんと彼の元に届いているのか心配になってくる。

「……少し、待ってくれ」
やがて、息苦しそうに彼は言った。
98 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:33




二人きりで会う事は滅多になかった。
放課後のデートも、街中でのご飯も、買い物も出来なかった。
人前で気軽に名前を呼び合ったりもできなかった。
その上、亜弥は少しずつ仕事が増えていたから学校にも行けない日が多くなっていた。
会える日は少なかった。
それでも、学校に行ける日は必ず朝電話をして、音楽室で待っていてもらった。
音楽室はいつも蒸し暑かった。亜弥はいつも一番に窓を開けた。
それは、最後に彼とそこで会った時も変わらなかった。
99 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:33

そんなに暑いか、と彼は首を傾げながらも微笑んだ。
暑いよ、そう答えて窓を背にして立っていると、
背後から蒸したちっとも涼しくない潮風が首筋を抜け亜弥の髪をさらりと靡かせた。
それに少しだけ彼が目を細めたのを亜弥は見逃さなかった。

「髪伸ばそっかなぁ…ね、どう思います、先生」
「……ああ、いいんじゃないかな」
「先生はどっちが好き?髪が長い子と、短い子」
「似合ってればどっちでも」

髪が靡く。
その日も蝉の鳴き声は煩かった。
100 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:34

「私、どっちも似合うんですよ」
「そうなんだ」
「だから、先生は私のことが好きなんですね」

冗談めかして言うと、彼は薄く笑むだけで否定の言葉も、肯定の言葉もくれなかった。
ただ彼の真っ直ぐな視線は亜弥を好きだと言っていた。
抱きしめたいと、キスをしたいと言っていた。
それでも、それなのに――彼はその時、抱きしめても、キスをしてもくれなかった。

思えば、その時に気づいていればよかったのだ。
亜弥を抱きしめたがってる彼の指が、腕が、体が、それでも自分に触れようとしないことの意味に――
101 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:35




少し待ってくれ、と彼が言ってから数分、いや十数分が経っていた。
口に出して言えないような理由なのかと亜弥は彼を責めたくなった。
耳の奥で蝉が鳴いている。

「…先生」

煩さに堪えかねて亜弥は彼を呼んだ。
生温い潮風が吹いた気がした。けれど、伸ばした髪は靡かなかった。
彼は亜弥の促しに、唇を噛みしめ、テーブルの端に手を掛けて、
言葉のひとつひとつを軋ませるようにこう言った。

「理由がないと駄目か」

また蝉の鳴き声。風が止んだ。伸ばした髪は靡かない。
亜弥には分からなかった。
どこでどう壊れてしまったのか。彼がどうして苦しそうなのか。
分からなかったが彼がそうしてほしそうだったので、わかりました、と頷いた。
102 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:36

すまない、と彼は静かに言った。
切なそうな、悲しそうな、苦しそうな瞳をしていた。
自分で終わらせようとしている癖にそんな瞳をするのはずるいなと亜弥は思う。
けれど、可哀想で見ていられなかった。
彼の苦しみの原因は自分なのだと分かるから――
原因?そこで亜弥はふと気づいた。
一番大きな問題。亜弥が見てみない振りをし続けてきたモノ。

「…先生」
「……なんだ?」
「違うんだったら違うって言ってください」

そう断ってから亜弥はゆっくり彼の反応を確かめるように訊いた。

「……私の仕事のせいですか?」

瞬間、本人は意識していないだろうが彼の瞳は正直に揺らいだ。
亜弥にはそれで十分だった。
103 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:37

一回りくらい違う年齢の事とか、お互いの立場とか、
ごちゃごちゃ煩わしかったから押さえつけてキスをしたのに、なにも押さえつけられてなどいなかった。
当たり前だ。そんなこと、本当は分かっていなかったわけではない。
それがどれほど大きな問題として二人の間に立ちはだかっていたかをわからないほど亜弥は子供ではなかった。
ただ、素直に諦められるほど亜弥は大人でもなかったのだ。

一拍置いた彼は「違うよ」と亜弥に嘘をついた。
嘘をついてくれた。彼は最後まで大人だった。
だから、大人の振りをして亜弥は彼が行ってしまいやすいように視線を外す。

「…分かりました」
「……すまない」

少ししてそんな声と共に、ぼやけた視界の中にブルーの影がゆらりと動いた。
これで最後なのだと思うと反射的に、本能的に、
亜弥は彼の行く手を阻むように慌てて立ち上がっていた。
彼が微かに眉を寄せる。
104 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:37

「好きだよ、先生」

あの日のように好きだと言った。
抱きしめてはもらえなかった。
五月蝿い蝉の声も生温い蒸した風もそこにはなかった。

どうしようもなくて亜弥は俯いた。
彼が好きなのだろうと思ったから伸ばし始めた髪が肩から落ちた。
視界が歪みそうになった。
彼の顔が泣きそうに歪んでいた。

「すまない」
105 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:37

106 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:38


「そういえば、あの先生結婚するってうちに葉書きとったよ」
「あの先生?」
「ほら、茅ヶ崎の学校の。あんた、いい先生いい先生言うてたけど
 生徒にそんな葉書送ってくるなんてけったいな先生やなぁ」
「他にはなんか書いてた?」
「なんも書いてへんかったと思うけど」
「ふぅん。見せて」
「持って来るの忘れたわ」
「ママのアホ」
「アホってなんや、親に向かって」
「アホアホアホ」
「あームカつくわホンマに。もう味噌汁作ったらんで」
「それはダメ」
107 :名無飼育さん :2005/01/25(火) 14:38

108 :名無飼育さん :2005/03/12(土) 03:37


あごちゅ〜までの距離
109 :. :2005/03/12(土) 03:38


その話を聞いたときは驚くよりも先に笑いが込み上げてきた。

「じゃあ、そういうわけでバイバイ」
なんて手をひらひら振りながら去っていく真希の背中はカッコよすぎるくらいに潔く、
オレは見送りながら、これからは真希先輩って呼ばなきゃいけないのかな、と考えていた。

高校一年生だったオレと、高校三年生だった真希。
真希はサッカー部の先輩、ひとみ先輩の友達で、オレとは挨拶する程度の間柄だった。

ひとみ先輩は試合には出られなかったけどプレイヤーで、よく練習相手をさせられていた。
女にしては、と言うと怒られるけど、ひとみ先輩はかなりの努力家で、高い技術を持っていた。
実力でいうと途中交代で試合に出ても全然おかしくないくらいで、
技術的なものなら、チームでもかなり上のほうにいた。
身体能力が高くて、技術のないオレはちょうどいい練習相手だったらしい。
練習後、たっぷり一時間は相手させられて、それを見にきていた真希と知り合った。
110 :. :2005/03/12(土) 03:39

そして、その夏。仄かに抱いていた恋心をあっさり見抜かれ、
ひとみ先輩を中心とした3年生の悪ノリに遊ばれるみたいに、
おちょくられるみたいに付き合うことになって、まあ、いろいろ……

本当はずっと遊んでいたかったけど、ひとみ先輩から「練習サボるなよ」と
きつく言われたから部活のあと、夏休み中ほとんど真希と会っていた。
が、
「なんか急に勉強する気になった」
と真希は夏が終わると同時に勉強し始めて、その分だけ成績が伸びて、
気がつけば会う時間がなくなっていた。

真希の受験も終わり、春休みはずっと一緒だったけど4月の頭。
「じゃあ、そういうわけでバイバイ」
新たな刺激を求めた真希に別れを告げられた。
「いや、せめてゴールデンウィークまではもたそうよ」
そう食い下がったオレの必死はギャグだったらしい。
真希は笑って、オレの肩を叩いた。
「そう軽く捉えてくれると、こっちも楽でありがたいよ」
本気の恋愛がギャグに終わって虚脱。
111 :. :2005/03/12(土) 03:40



いつの間にか2年になっていて、後輩がわらわらと。
そんなことに気を使う余裕もなく、オレは毎日吐くまで練習、吐いても練習。
心の隙間を埋めるには、体を追い詰めていくしかない。
そんなオレの短絡的な発想は、どういうわけかチームの信頼を得ることになってしまった。

総体の一週間前になって突如としてスタメンに抜擢された。
スタメン落ちは3年生のスグル先輩、オレの方が使えそうな気はするけど、監督に猛抗議。
「監督、ボクじゃなくて先輩を試合に出してあげてください」
「うるさい、もう決まったことだ。実力のある方を使う。当然のことだろうが」
「当然じゃないすよ。ボクが出たって、2回戦勝てるのが3回戦勝てるようになるくらいのもんじゃないですか」

そんなことを言ってたら、落とされたスグル先輩が泣きながらオレを止めた。
「ありがとうな。でも、俺はお前に出てもらって、少しでも勝ちあがってほしいんだ」
「それに、3回勝てば地区予選突破じゃないか」と監督。
「それは例え話でして、スグル先輩に出てもらいたい、っていうことを……」
「バカヤロウ!!」
スグル先輩に殴られた。
遠慮も何もない、ありったけの感情をのせた拳はオレを吹き飛ばした。
112 :. :2005/03/12(土) 03:40
起き上がって気付く。
ああ、こいつらもうダメだ。
青春しちゃってる。
泣き咽ぶ先輩を、涙を堪えた監督が抱きしめてる。

キャプテンが叫んだ。
「スグルのためにも、絶対勝とうぜ!」
間違ってはいるけど、おうっ!! なんて一致団結。

その勢いを借って、チームは破竹の快進撃、とはいかず、
1回戦は0−0のPK3−2でギリギリ勝利。
2回戦は1−0で辛勝。
ボテボテとではあるが死線を潜り抜け、地区代表決定戦。
相手はシードで2回戦を5−1で勝ち上がってきた、それなり強豪校。

作戦は、試合時間60分間を自軍で戦う覚悟で引く。
監督が5バックにして3ボランチなんて驚愕の作戦を授けてくれたけど、
キャプテンと、キャプテンとセンターバックでコンビを組むオレで、新しいことは無駄だと却下。
システムは弄らずに、引いて守ることにした。
113 :. :2005/03/12(土) 03:41

試合当日、オレは落ち着かない気持ちでアップしていた。
これからの試合のせいもあるけど、引退した先輩達も見に来てたからだ。
もちろん、中にはひとみ先輩。
ついでに真希も。
しばらく見ないうちに痩せて、ずいぶん綺麗になっていた。

ストレッチしていると、金髪にしたひとみ先輩が声を掛けてきた。
「お前、試合に出てるんだってな。鍛えた甲斐があったよ」
ついでに真希も声を掛けてきた。
「あんたが活躍なんて、わたしも嬉しいよ。試合、頑張ってね」
あ、オレ、まだ真希のこと好きなんだ、と悲しくなったけど集中力MAX。
これで活躍すれば、真希はオレの元に戻ってくるかも、なんて甘く淡い期待を抱いて。

「……あ、あの、先輩。お茶」
素っ頓狂なタイミングでマネージャーがお茶を渡してきた。
「お、もう新しい彼女ができたのかい」
ひとみ先輩が茶化すと、そのマネージャーは顔が真っ赤に。
それを見た真希が、あはあはと笑う。
「さっすがサッカー部のエースは違うねぇ」
「エースじゃないから、DFだから」
オレはそう言って二人を隅に追いやると、ストレッチを再開させた。
「あの、すいませんでした」
さっきの子が謝ってきたけど、集中してるフリして無視をした。
114 :. :2005/03/12(土) 03:41

真希がどこで観ているのか確認している間に、長い笛の音。
試合開始。
さすがはそれなり強豪校、それなりに強い。
一回戦負けが常のこのチームじゃ太刀打ちできない。
サイドアタックがかなりうまい、いきなり押される、サンドバック状態。
キャプテンが声をかけてDFラインを上げようとするが、
相手はサイドバックまでもが高い位置に出てきて、こっちのサイドバックが吊り出される。
ボランチがサイドのカバーに入って、トップ下がその位置に入って、FWが孤立。
相手チームにいいように回され、DF陣はバタバタ。
サイドを変えられると、修正が間に合わない。
同じ人数での攻守なら、完全に技術の劣るこっちに分が悪い。
ボランチ位置にいたトップ下がサイドのヘルプ。
その間にボランチが元の位置に戻るも、その間には攻め込まれている。
オレとキャプテンは相手ツートップに付きっ切りで余らない。

前半が終わってもいい頃だと思っても、まだ15分くらい。
まだ半分近く残っている。
ぐったりきているが、気付いたことがある。
かなり走らされてはいるが、シュートらしいシュートはまだない。
相手、形を作るのはうまいけど、FWのフィニッシュが下手糞だ。
しっかり体を入れていれば、それほど危険なシュートは打たれない。
ウチのGKでも十分に処理できるレベルだ。
ミドルだけ気をつけるように、ボランチとトップ下を動かす。

相手のリズムに体が慣れてきて、余裕が出てきた。
キャプテンとGKが、集中! と声を張り上げる。
サイドからセンタリングが上がる。
頭で弾き返した。
それを相手FWが拾い、こっちのボランチがプレス、足に当てた。
ルーズボールがオレの近くに。
ノートラップで相手のコーナーフラッグに向けて大きく蹴り出す。
ボールは風に乗り、飛距離を伸ばす。
こっちのFWが出足早く駆け抜け、ペナルティエリアあたりでボールを持つ。
相手DFとの1対1、中にもう一人DF。
キャプテンの指示で、DFラインを上げる。
FWはサイドに逃げながら、前に進む、で、追い込まれた。
相手DFの足に当て、コーナー。
115 :. :2005/03/12(土) 03:42
「あがれ!」
監督のダミ声が響く。
「お前だよ」
一緒にセンターサークルに残っていた先輩がオレに言った。
ベンチを見ると、監督がゴールに向かえと大きくジェスチャーしている。
その後ろで、ひとみ先輩と一緒にいる真希も、監督の真似事をして叫んでる。
「行けー!」
よく通る声だと思いながら、キッカーを見る。
ボールを受け取り、セットしている。間に合う。
ボランチに声をかけ下がってもらい、真希のこんちくしょーと心の中で叫んだ。

ゴール前、ペナルティエリアの外に立った。
オレに気付いたGKが、マークをつけてくる。
ごちゃごちゃしていたゴール前が緩み、僅かながらスペースができる。
オレはカウンターが怖くて、守備ばかりが気にかかっていた。
とりあえずコーナーに参加して、さっさと戻ろうと決めていた。

キッカーがフラッグに触れた、ファーの合図だ。
オレは二アに駆け込む、そのままUターンして守備に戻る、
が、ミスキック、近くにきた、低い。
体ごと投げ出す。
頭にボールの感触。
それ以外にも、頭になんか物凄い勢いで黒い物。
大きな衝撃、何が起こったかわからぬうちに視界が白く濁り、暗転。
116 :. :2005/03/12(土) 03:42

むくりと起き上がり、ピッチを見る。
そして、ベンチ。
スグル先輩が交代用紙を受け取り、軽く跳ねている。
自分の体よりも、スグル先輩が出られることに安心した。
試合前のお茶の子が、オレの頭に氷嚢を当てている。
「先輩、大丈夫ですか?」
心配そうに眉を下げてオレを覗き込む。
「ん? ああ、ちょっとダメかも」
そう言うと、泣き出しそうな顔になった。

オレの周りにいた人だかりの中に、真希がいた。
目が合う。
「大丈夫?」
「当たり前じゃん」
頭ガンガンして最悪だったけど、走っていって監督に言う。
「まだいけます」
「本当か?」
「はい!」
「よし! わかった。行け!!」
ごめん、スグル先輩。
オレ、カッコつけたいんだ。
117 :. :2005/03/12(土) 03:43

試合は膠着したまま後半の三分の二を過ぎたあたり。
酷い気分のまま相手の攻撃を跳ね返し続け、頭がボーっとしてきた。
相手のドリブルに併走していたこっちのサイドハーフの足が攣った。
走りながらバランスを崩し、倒れた。
試合は止まらない。
右から崩される。
サイドバックがドリブラーにチェック。
ワンフェイント、バックはひっかからない、2つめ、追い込んだ
ドリブラーは反転して体を入れ、パスの相手を探す。
相手のハーフが前で余っているが、サイドバックが体を当ててそのコースを切っている。
オレがついていたFWが逆サイドに流れた。
相手トップ下が中に切れ込んでくる。
右サイドでは、まだボールの出所が決まられずにモタモタしている。
キャプテンが足の攣ったハーフに、立て! と叫んでる。
相手のボランチが寄っていく。
味方は全員センタリングに備えてゴール前に集結している。
思い切って中を開け、相手ボランチのコースに突進。
運良く読みが当たり、ボールが来た。
相手のボランチを肩で弾き飛ばし、前を向く。
こっちのFWが2人、相手のDFが2人、遠くにサイドバック。
カウンター。
持ち上がる。
FWは左に流れる。
さらに前進。
一人、DFが寄ってきた。
左に流れていたFWが急ターンして中へ。
ボールを出す。
オレに寄っていたDFがFWを目掛ける。
FWリターン。
再びボールを受け、ドリブルでペナルティエリアに入った。
センタリングしたいけど、オレの技術じゃドリブルで精一杯だ、中など見れない。
GKがじりじりと距離を詰めてくる。
どうにでもなれと思い切り足を振った。
GK真正面、肩に当たって零れた。
ルーズボールを拾ったのは相手DF、初めてのピンチらしいピンチに体が硬い、
大きく空振り。
FWが押し込んだ。
入っちゃった。
そこでオレはスグル先輩と交代。
監督に聞くところによると、かなり動きが悪くなっていたらしい。
118 :. :2005/03/12(土) 03:43

ベンチに座り、戦況を見つめる。
相手、尻に火がついたような怒涛の攻め。
「あと何分?」
隣に座っていたマネージャーの辻に聞いた。
「知らない」
「そう」
後ろで立っていた加護が代わりに答えた。
「あとね、4分ちょっと」

お茶の子が、ベンチに座ったと同時にオレの正面で氷嚢を当ててくれている。
ありがたいけど邪魔だ。
「ねえ」
「……」
「ねえ」
「…え!? あ、はい」
「試合、見なくていいの?」
「いえ大丈夫です。これがわたしの役目なんで」
「そっか」
「そうです」
相手の最終ラインから、ゴールに向かってふわりとボールが入る。
闇雲に蹴ったわりには、GKには届かない、かなりいいところに入った。
スグル先輩が下がりながら飛んだ。
思い切り首を振り、ゴール裏に出した、コーナー。
119 :. :2005/03/12(土) 03:43
あわやオウンゴールというクリアーに、ベンチがどよめく。
「これでスグル先輩、次のプレーでオウンゴールになったら面白いね」
辻がオレを見て、笑いながら言った。
「そんなお笑いみたいなことないって」
そう笑って返すも、途中で声が凍りついた。
うまい具合にコーナーがスグル先輩へ向かう。
難なくクリアー、サイドに出た。

ボールを追って顔を動かすと、お茶の子が目の前に。
目が合って、お茶の子は心底驚いたような顔をする。
「あのさ、氷当ててくれるのはありがたいんだけどさ、後ろに回れば見れるんじゃない?」
「え? あ、わたしがですが?」
「うん」
「そういえば、そうですね」
スローが入り、リターンを受けたスローワーがセンタリング。
飛び出したGK、ファンブル。
キャプテンが蹴り出した。
運悪く、クリアの軌跡にスグル先輩。
いい感じに零れたボールを、相手FWがインサイド。
同点。
そのまま試合終了。
PK負け。
3年生、引退決定。
120 :. :2005/03/12(土) 03:44

泣いている3年生を遠巻きに眺めていると、同じく試合に出ていた2年のシンが隣に来た。
「しょうがないよな」
そう言ってオレの肩に手を置く。
「おまえ、PK外さなかったっけ?」
「だから、しょうがないって」
「まあ、そうだよな」
「PKだもんな」
シンはそう言うと、表情を暗くさせる。
そして、オレに氷嚢を当て続けている子に目を留めた。
「絵里ちゃん、なにやってんの?」
「これがわたしの役目なんで。先輩を冷やすんです」
「もういいよ。こいつ、平気だから」
「そうはいきません」
「大丈夫だって。こいつは絵里ちゃんの厚意に甘えてるだけなんだから」

頭を軽く叩から振り返ると、真希がいた。
口で、ばいばい、と作り、手を振って遠ざかっていく。
その先に、車に乗って真希を呼ぶ男がいた。
オレはドギマギしているお茶の子から氷嚢を奪い取り、冷たい手にタオルを巻いてやった。
「手、冷たいだろ。もう大丈夫だから。ありがとう」
真希を振り返る。
微妙な笑顔を浮かべてオレに大きく手を振り、車に乗りこんだ。
「カッコよかった、ってごっちん言ってたよぉ!」
ひとみ先輩が車の窓から顔を出してそう叫んだけど、全然喜べなかった。

121 :. :2005/03/12(土) 03:44



精密検査が必要だとかで試合後の打ち上げも行けず、
脳に異常はないけれども絶対安静と医者に言われ、
学校に行ったのは試合の三日後だった。
シンをキャプテンとした新チームがすでにスタートしていた。

練習後、監督に呼ばれて少し話したあと、着替えようと部室に戻ると加護がいた。
「何してんの?」
「備品のチェック。3年生から引き継いだから、その確認」
「そっか」
「どうなの、頭は」
「全然平気。元から何でもなかったし」
「三日もサボって失恋の新たな痛手、癒してたんだもんね」
加護は頬を綻ばせ、な! とオレの肩を叩く。
「バレバレですか」
「うん。ごっちん来なきゃ、あんなに頑張らなかったと思う」
「自分のために頑張ったんだよ」
「そうなん?」
「そうだよ。自分のためだよ」
ひとみ先輩のつながりで、加護は真希とも仲がいい。
同じ部活にいて、疎遠だった加護、というかマネージャーと仲良くなれたのは真希のおかげだ。
122 :. :2005/03/12(土) 03:45
加護がその後の真希の様子を知らないかと思い、話すのを待ってたけど、別の話題になった。
「そういえばさ、亜弥ちゃんとたっちー、付き合いだしたの知ってる?」
「ああ、いろんな奴からメール着たし、今日の練習でも聞いた」
「前々から怪しいと思ってたけどさ、引退した途端にだよ?」
「つーか、たっちー別にサッカーうまくないじゃん。いいのかな、松浦先輩」
そう言うと、加護は鼻白み、オレを憐れむような視線を向けてきた。
「哀しい男よね、あんた。サッカーの上手い下手が、男の魅力なん?」
「だって、ここサッカー部じゃん。たっちー、3年なのにたっちーだし」
「まあ、好みはそれぞれ、ってことでよくない?」

「せんぱ〜い、用具室のチェック終わりましたぁ〜!」
明るい声が部室に入ってきて、振り返ると、お茶の子が仔犬みたいな笑顔で立っていた。
オレがいることに気付くと顔を引き攣らせ、慌てて引き返し、出て行こうとする。
「あー、ちょっと待って。自己紹介したら?」
加護に呼び止められ、お茶の子はこっちを向くと、ペコンと頭を下げた。
「一年の亀井絵里です、よろしくお願いします」
「この前、ずっと氷当ててくれた子だよね? オレはね──」
「あ、知ってます」
そう言うと、頭を下げて部室を出て行ってしまった。
123 :. :2005/03/12(土) 03:45
「亀井絵里っていうんだ、あの子」
「あんただけよ、絵里ちゃん知らんの。みんな絵里ちゃん、絵里ちゃんって可愛がってんのに」
「ふーん。つーか、暗い子だと思ってた」
「人見知りするんだって」
「知らなかった」
「ごっちんにフラれて、サッカーばっかしてるからだよ」
「もう落ち着いたよ」
「ま、あんた、今はかなりモテモテだしぃ?」
楽しそうな顔で、オレを小突く。

「モテモテはシンだろ」
「ほんまに知らんの? あの試合、見に来てた子けっこう多かったみたいよ?」
「で、オレがモテるようになったの?」
「悲劇のヒーロー。あの試合見て、泣いた子もいたんだって」
「どうでもいいけどさ、そういう悲劇とか、あんまり広めるなよ」
「なんで?」
「スグル先輩に悪いだろ」
「そうだよね。ごめん」
「おまえが謝ることじゃねぇよ」
124 :. :2005/03/12(土) 03:45



部活に行こうと玄関を出たところで呼び止められ、教職員の駐車場。
人気のいないところ、ではないが車と車の間まで連れられた。
グランドにはちらほらと部員が集まってきている。

目の前には女の子2人。
にきびをもっさり髪で隠した、なのに明るい感じの女の子。
もう片方、背の低い、もち肌の子の背中をしきりに押している。
おせっかいに近いくらいに。
もち肌の子が勇気を決めて息を吸い込むと、オレを見た仲間がひやかしてくる。
「おう! モテんねー」
「お前、練習遅れたらグランド100週だから」
それですっかり怖気づいてしまったもち肌の子は、逃げようとする。
にきびの子が捕まえ、オレに言う。
「ちょっと待っててくださいね」
そして、何やら励ましだした。

オレとしては、このまま逃げてくれたほうがありがたい。
ボーっとやりとりを眺めていた。
絵里ちゃんが部室に向かって歩いていく。
オレに気付き、頭を下げようとして、
女の子2人にも気付き、ハッとした顔をしてダッシュ。
逃げるようにして角を曲がっていった。
125 :. :2005/03/12(土) 03:46
「すいませんね、お待たせして」
にきびの子が、取り繕うようにして言う。
「この子、無理みたいなんで、代わりにあたしが言います。いいですか?」
もち肌の子は、顔を真っ赤にさせて俯いている。
「いいけど」
「あのですね、この子、サチコっていうんですけど、先輩のことが好きなんです」
「そうですか」
「どうですか?」
「どう、って……」
「サチコと付き合ってみたりしてみません?」
「してみません」
「とりあえずでいいんで、付き合ってみません?」
「みません」
軽く苛立ってきて、語調が荒くなった。
敏感に察したもち肌の子は、にきびの子を引っぱった。
「すいませんでした、ありがとうございました」
あまりの必死さににきびの子も状況がわかったのか、諦めたようだ。

去り際、これだけは受け取ってくださいと、弁当箱を渡してきた。
受け取り、溜息ついて車の隙間から出ると、辻がにやにやしてオレを見ていた。
「モテるねー。で、どうなの? OKした?」
「いちいち聞くなよ」
「そんなにごっちんが忘れられないのかい」
「これ食う?」
話題を逸らすように貰った弁当箱を辻の目の前に差し出す。
「いらない。ちゃんと食べてあげなよ」
「夕方に弁当もらってもなー。痛んでそうだし」
「はは、そりゃそうだ」
辻は八重歯を見せて笑い、オレを見上げる。
「なんでこんな奴がモテるんだろうねぇ。絶対間違ってるよね、みんな」
「オレに同意を求めるな」
「あんたさ、硬派とか言われてんだよ? 未練たらたらの女々しい男なのに」
126 :. :2005/03/12(土) 03:46
部室に着くと、絵里ちゃんがぴょこぴょこやってきて、辻に言う。
「せんぱぁい、見てください。ベスト買ったんです」
にこにこしながら買ったばかりだというベストを見せる。
絵里ちゃんはずいぶん部活に慣れたようで、笑顔を多く見せるようになっていた。

「だって。なんか言ってやんなよ」
辻が部室に入って着替えようとしていたオレの手を掴む。
「ん? あ、絵里ちゃん、弁当食う?」
「違うって。亀井ちゃん、あんたに見せたくて着替えないで待ってたんだから」
「辻さん!」
慌てた絵里ちゃんが少し前にやってきた加護に助けを求める。
加護は抱きついている絵里ちゃんの頭を撫でながら、オレに言う。
「亀井ちゃんのベスト、かわいいって褒めてあげなよ」
「加護さん!」
咎めるように加護を突き放し、同じ1年生マネージャーの里沙ちゃんに泣きつく。
「ほら、絵里ちゃんかわいいよ、って言うだけでいいんだから」
「違うってのん。言うだけじゃなく、優しく抱きしめて言わないと」
「そっか。じゃあ、優しく抱きしめて、絵里ちゃんかわいいよ、って言ってあげなよ」

オレは何も知らないフリ。
着替えるから、と部室に逃げ込む。

127 :. :2005/03/12(土) 03:46



季節は流れて夏。

マネージャーが増えて、部員が減った。
オレらに勝った、それなり強豪校が都大会でかなりいいところまで行ったからだ。
それだけじゃなく、負けた相手が全国区の名門校と接戦だったという噂。
勝手に高まっていくサッカー部への期待。
校内で立場の良くなった監督がいい気になった。
いきなり練習がきつくなった。
マネージャーが増えて、その分だけ、部員が減った。

新チームでの選手権大会予選は一回戦敗退。
シンのくじ運が最悪だった。
普通にやっても太刀打ちできないというのに、相手はこの大会のために照準を合わせてきた3年チーム。
結果、1−3で完敗。
得点は3バックまんなかのオレが一人かわしてロングフィード。
シンがDFに競り勝ち、前に出すぎていたGKの頭を抜いた。

3点に抑えようと、1点決めようと負けは負けなのだが、面子は保った、と監督。
相手がその後、7−0、6−0で地区予選を抜けたかららしい。
次の目標は10月末から始まる新人戦。
だから夏休みの残りの10日ちょっとはオフ。
監督と話し合い、シンと押し切ってそういうことにした。
128 :. :2005/03/12(土) 03:47

で、今ここは渚のバルコニー。
学校最寄り駅に6時集合。
連れられるままに電車を乗り継ぎ3時間、ここに辿り着いた。
何やら里沙ちゃんの御爺様の別宅らしい。
電気にガス、上下水道完備、冷蔵庫まである。

「こんなベタ、ありかよ」
新チームになって躍進めざましいタクが呟き、辻が、
「それはそれでええやん」
とヘタクソな関西弁で言った。
オレとしては何だっていい。
青春っぽい夏を過ごしたかったのだ、去年は真希と……
なんて考えて暗くなる前に海だ! といきたいのだが、あいにく雨天。
海は茶色く濁って荒れ狂い、空は重苦しい鉛色。
「地面がそんなに憎いのか、この空め!」
加護が叫ぶも、雨は白く煙って地面を叩くばかり。
129 :. :2005/03/12(土) 03:47
「じゃあ、ボーリングでも行きますか? 来る途中に見つけたんですよ」
間抜けたことを言うのは、シンになついてる一年坊主のマサ。
「それい──」
「てめぇ、オフのときまで球っころのことなんか話したら殺すぞ」
シンが先輩らしく締めたところで話は終了。
何か言いかけた絵里ちゃんが怯えた顔をして、安堵に胸を撫で下ろしたのは内緒。

「じゃあ、とりあえず乾杯でもしますか」
加護がまぁるい顔でサイドボードにあった高そうな洋酒を持ってきた。
当然の如く辻がつっこむのかと思いきや、知らん顔。
「だ〜ぁめですよぉ、お酒なんかー!」
里沙ちゃんが当たり前のことを当たり前に言って、話がまた途切れる。
130 :. :2005/03/12(土) 03:47
みなの視線が集中するのは、一度も発言していない絵里ちゃん、に気を使ってオレ。
「じゃあ、とりあえず飯作ってよ。腹減った」
なにいってんの、こいつ。という辻と加護の冷たい視線。
そういうノリはダメなんだ、と気付いた17の夏。
何も言わないでも作ってくれる女の子、例えば、は特別らしい。

「あ、ごめん。寝坊しちゃいけないと思って、寝てないんだわ。里沙ちゃん、どこで寝ていいの?」
背中に痛いくらいの女の子の冷たい視線、男の哀れみの視線を受けながら、里沙ちゃんに案内されたのは二階の寝室。
「蒲団、そこの押入れに入ってますんで、好きに使ってください」
「わかった、ありがとう」
とりあえず蒲団を敷いて寝てみると、本当に眠かったらしく、あっという間にと夢の世界へ……

131 :. :2005/03/12(土) 03:48

目を覚ますと、部屋の隅で膝を抱えた亀井絵里。
しょぼんと顎を膝にのせ、情けない目でこっちを見てる。
眠ったフリをしようにも、おもいきり目が合ってしまった。
「おはよう」
「……おはようございます」
「あ、うん。おはよう」
そして沈黙。

10分くらい経った。
膝を抱えたまま、じとーっとオレを見ている。
心なしか不貞腐れているようだ。
「あのさ、なんか怒ってる?」
「怒ってませんよ。閉じ込められただけです」
「誰に? って聞くまでもないか」
「はい、聞くまでもありません」
再び沈黙。
132 :. :2005/03/12(土) 03:48

40分くらい経った。
相変わらず膝を抱えたまま、じとっとオレを見つめ、ぶーっと膨れている。
雨はもうあがっているのか、風に混じった海の匂いが濃くなった。

絵里ちゃんが諦めたように息を吐く。
そして、弱々しい口調で話し出した。
「あの、もしかしなくても気付いてますよね、わたしの気持ち」
「もしかしなくても気付いてます」
そう言うと、絵里ちゃんはうるっとなって彼方を見遣り、持ち直してオレを見る。
「先輩、好きです」
「はぁ……」
好きだとは言われても、感情がこもってない、機嫌悪そう、言わされてるのが見て取れて伝わらない。

「でも、先輩はごっちんさんが忘れられないって知ってます。加護さんから聞きました。」
「忘れられない、ってわけじゃないん──」
「ホントですかぁ!」
急に喜色を弾けさせ、前のめりになって寄ってきた。
「じゃあ、じゃあ! 付き合ってくれます?」
「いや、それは無理だわ」
一瞬怯むが、絵里ちゃんにはわけのわからない勢いがついているみたいだ。
「じゃあ近くにいてもいいですか? 怒りませんか?」
「怒らないけど」
「やったぁ!!」
なにがやったぁなのかはわからないが、とても喜んでいる。
えらへらとかわいらしい笑顔で、女の子座りでぴょんぴょん飛び跳ね喜んでいる。
ホントにいいんですか? ホントにいいんですか? と目を輝かせて喜んでいる。
133 :. :2005/03/12(土) 03:48
近くにいて怒らないだけで、こんなに喜んでくれるとオレも嬉しい。
「近くにいても、怒らないよ」
「やったぁ〜!!」
「うん、怒らない」
「うれしいっ!!」
「怒るわけねーじゃん」
「あははっ!!!」
と、まあ、こんなバカなことをやっていては、二人とも飽きる。

急に真顔になった絵里ちゃんが、オレの正面で正座した。
「実はさっき、辻さんに犯してこい、って言われたんです」
そう大真面目に言うもんだから、オレ、
「犯されるくらいなら、犯すよ」
絵里ちゃんの肩を掴み、コロンと押し倒した。
「ぎゃぁぁぁぁ!!!」
断末魔のような絶叫。

ドタドタと階下から駆け上ってくるいくつもの足音。
ガチャリと鍵が開き、まっさきに入ってきたのは好奇心たっぷり笑顔の辻。
次いで、青い顔をしたマサ、マメみたいな顔をした里沙ちゃん。
面倒そうにやってきたのは、タク、シン、加護の順。

オレと絵里ちゃんは二人並んで壁を向いて正座。
「絵里ちゃん、鍵が開いたね」
「そうですね、先輩」
「では、我々は降りようか」
「はい!」
なんて白々しく芝居調で言葉を交わし、悠然と階下へ。
なんだか軽く自棄になっているのは自覚していたが、それは、まあ、それとして……
134 :. :2005/03/12(土) 03:49



夏休みはとうに過ぎ、9月末。
よくよく思い返すと加速のついたテンションで押し切られたような形ではあったが、
そのままの勢いで仲良くなった。
仲良くなった、とはいっても、部活の帰りに喫茶店でナポリタンを食べたり、
お好み焼き屋でカップルセットを頼んだり、ハッピーセットのおもちゃでキャッキャしたり、
終電ぎりぎりの時間にゆっくり自転車を漕いだりするような間柄ではない。
友達以上恋人未満で仲良く話したりする間柄だ。

オレはそのことで非常に不愉快になっている。
明るくなった、とか、元気いっぱいだ、とか、そんな理由で絵里ちゃんがモテだしたのだ。
が、それは問題ではない。
オレと絵里ちゃんは、本当はそうではないのだが、公然の秘密みたいな仲らしい。
だが、絵里ちゃんに愛を告白する男は、鬱陶しいくらいに後を断たない。
一方、女の子全般はオレが絵里ちゃんのものだと諦めているらしいのだ。
フォローにしか聞こえない。どうしたものか、と思案してみるも、答えは簡単。
なんてことはない、フィーバーの過ぎたオレがただモテないだけなのだ。
135 :. :2005/03/12(土) 03:49
そんなことを考えながら廊下をチンタラ歩いていると、後方から強烈な存在感。
身構える。
「お〜すっ! せんぱぁい!!」
どん、って衝撃と共に、横からひょいと顔を覗かせる亀井絵里。
「なんか先輩、今日は元気ないですねぇ?」
この女はいつの間にか言葉遣いがぞんざいになった。
「やぁだ、もう……絵里のこと考えて、眠れなかったんですかぁ?」
とかなんとか言いながら、このこのぉ、なんてグリグリ体を寄せてくる。
オレと絵里ちゃんがこんな風にしてても、誰も何も不思議に思わない。
公然の秘密だからだ。違うんだけど。
136 :. :2005/03/12(土) 03:50

それにしても、いつからこの女は、なんて考えても思い当たる節はひとつしかない。

夏休みが終わり、練習再開の日。
神妙な顔した監督に呼び出され、何事かと思えば、
「お前はこのチームのベッケンバウアーになれ」
との有難いお言葉。
その後、延々と古いビデオを見させられた。

解放されたのは1時間後、飯食いに行こうと約束してた仲間はすでにいなかった。
辻からのメールには、今からきても遅いよ、とにこやかな絵文字つき。
諦めてコンビニでパン買って家まで腹をもたせようと、シャツを脱ぎながら部室に戻った。
「ばあ!」
絵里ちゃんがドアの影に隠れていて、それは忍び笑いでわかってたけど、一応驚いてみた。
「えへへへぇ、驚きました?」
「うん、驚いた」
「でしょ? え? あ、ちょっと!」
そう言って、顔を真っ赤にさせて後ろを向いた。
「あの、先輩、服着てください」
無視して着替え、帰る準備をして部室を出る。
その間、ずっと絵里ちゃんはモジモジと足元ばかり見ていた。

「帰らないの?」
そう聞くと、何も言わずについてきた。
137 :. :2005/03/12(土) 03:50

テールランプの赤が連なり、ゆっくりと流れている。
オレはチャリを押し、絵里ちゃんは足元ばかり見て歩いている。
「家、どっちなの?」
「こっちの方向です」
「じゃあ、後ろ乗りなよ。もう遅いし、途中まで送ってく」
「いいんですか?」
自転車に跨る、絵里ちゃんは困ったように眉毛を下げている。
「あ、あの、乗り方わかりません……」

乗り方を教えると、絵里ちゃんはおっかなびっくりで後輪に足を掛け、
「失礼します」
と緊張したこわばった手を肩にのせてくる。
「ちゃんと掴まっててね。落ちそうになったら教えて?」
「はい」
138 :. :2005/03/12(土) 03:50

漕ぎ始める、けっこう重い。
加護より軽いが、辻より重い。
辻みたいに後ろで騒がないだけマシだけど。
「わたし、重いですか?」
「ちょっとね」
「ごめんなさい……」
「ウソだよ、ウソ。全然軽い」

絵里ちゃんの重さにも慣れ、スピードを上げる。
肩を握っている力が、ギュッと強くなる。
「怖い? スピード落とそうか?」
「大丈夫です。風、気持ちいいし」
「ねえ、飯食いに行かない?」
「えぇ! いいんですかぁ!?」
「オレが誘ったんだけど。親とか大丈夫?」
「はい、大丈夫です! 行きます」
139 :. :2005/03/12(土) 03:50

器用にもんじゃを剥がしながら、絵里ちゃんがオレを見る。
「あの、そういえば、練習で疲れてるのに、よかったんですか?」
「なにが?」
「自転車に乗せてもらって、邪魔じゃなかったかな……って」
絵里ちゃんはボーっとヘラを口に入れる。
「熱っ!」
慌てて水を飲み、顔を顰めて舌をひらひら空中で泳がせた。
そんな絵里ちゃんを見て、思わず笑顔になる。
「邪魔じゃないよ。邪魔だったら乗せないし、誘わないし」
「ホントですかぁ!? 絵里、邪魔じゃないですか?」
と、絵里ちゃんは、あ、という顔をし、オレを窺いながら訂正する。
「すいません、わたし、普段は自分のこと絵里って言うんです」
「ふーん」
「先輩、自分を名前で呼ぶ女の子って嫌いですか?」
「嫌いじゃないよ」
「じゃあ、これからわたし、自分のこと絵里って言っていいですか?」
「いいよ」
「やった!」
顔をくしゃくしゃにさせて笑った。
140 :. :2005/03/12(土) 03:51

──

「やっぱり絵里のこと考えて眠れなかったんでしょう」
ぴょんぴょん跳ねてオレに体をぶつけ、腕を絡めてくる。
振りほどいても無駄なことはわかっているから、したいようにさせている。
正面から、クラスメイトの小川が人を掻き分け、オレの横を駆け抜けていく。
少し遅れて小川を追いかけてきた辻が、オレ達の前で急停止する。
「お、相変わらずベタベタしてんね〜」
「はぁい!」
「廊下で鬼ごっこすんなよ」
「廊下でイチャついでんじゃねぇよ」
辻はそう言ってバタバタと駆けていった。

「そういえば先輩、なにしてたんですか?」
「おまえのこと考えてたんだよ」
オレが真剣な顔で見つめると、絵里ちゃんは驚き、ひいたのか腕を離した。
え? と口をポカンと開けてる。
「前のほうがかわいかったなぁ、って。前のまんまの絵里ちゃんだったらオレ、惚れてたかもしれない」
絵里ちゃんの肩を叩き、残念だったな、と言って教室に戻る。
「ばかぁ!」
そんな叫びと同時に背中を叩かれた。
鈍くドスンッ、ものすごい音に周囲の人がざわめき、オレを見る。
振り返ると、素晴らしいスピードで絵里ちゃんが階段を駆け上がっていた。
141 :. :2005/03/12(土) 03:51



残暑がようやく終わった10月初旬。
大会まで3週間もない。
オレは意識してハードに動き、練習の密度を上げた。
今から体を追い詰めていけば、本番をいいコンディションで迎えられるはずだ。

部室で着替えていると、シンが声を掛けてきた。
「今日、開いてるだろ?」
「なんか約束してたっけ?」
「約束はしてないけど、さっきそういう話になって」
「どこ行くの?」
オレが聞いたところで、外から加護の大声が聞こえてきた。
「パフェ行くぞー、パフェ〜!」
「ぱふぇ〜、ぱふぇ〜、ぱふぇ〜!!」
辻の声も聞こえてくる。
142 :. :2005/03/12(土) 03:51
「オレはいいや」
そう言うと、シンは意外そうな顔をする。
「なんで?」
「疲れた」
「珍しい」
「大会に向けて追い込みかけてるんだよ」

シンは椅子に腰掛けてスパイクの紐をほどきながら言う。
「絵里ちゃんも来るのに」
「いいんじゃない?」
「そんなのんびりしてると、マサに絵里ちゃん取られちゃうぞ」
「なに、マサも好きなの?」
「も、って、やっぱお前、絵里ちゃんのこと好きなんだ」
ストッキングを脱ぎながら、シンが顔を上げる。
「オレじゃなくて。たくさんいるだろ、絵里ちゃん好きな奴なんか」
「ああ、そういうことか」
納得したようなしないような顔でシンはスパイクを脱ぎ、ひっくり返して砂を出した。
オレは鞄を肩にかけ、おつかれ、と部室を出た。
143 :. :2005/03/12(土) 03:51

何食わぬ顔で加護と辻の前を通り過ぎようとすると、鞄を掴まれる。
「なに帰ろうとしてんの? パフェ行こうって言ったやん」
加護がそう言い、辻がオレの鞄をぐいっと引く。
「絵里見れよ。あんな寂しそうな顔して」
辻が指差した方を見ると、絵里ちゃんが緩く唇を結んで、目尻を下げている。
「おまえが帰ろうとする背中見て、あんな顔になったんだぞ?」
そう言って辻がオレの鞄をぶんぶん振り、
「あーぁ、かわいそー」
加護がオレの足を蹴った。

絵里ちゃんはオレたちの視線に気付くと、すぐに笑顔を作り、手を振ってきた。
それを見た加護がしみじみ言う。
「あんな健気な子を飼い殺しにする、ひどい男って誰やった?」
「あんま知んないけど、のん、今そいつの鞄持ってるような気がする」
「こいつかぁ。付き合ってやらないだけでなく、パフェも食べに行ってやらないなんて」
「ひどい男だねぇ」
「人でなしっ!」
「パフェ行くぞ!」
2人に睨まれ、オレは大仰に溜息ついて、がっくり首を下げて地面を見る。
「……わかったよ」
鞄から辻の手が離れる。
「帰ります」
そう言って逃げた。

追ってこないのはわかってたけど、駐輪場まで走った。
自分の自転車のところでゆっくりと減速する。
「よっ」
真希が弱々しい笑顔で立っていた。
144 :. :2005/03/12(土) 03:53

──

どうしようもないな、オレ。
コトが終わって、オレの上で寝る真希を抱きしめていて、思った。
「あんた、またごつくなった?」
「真希は胸ちっちゃくなった?」
「うるさいよー」
真希は、抱きしめているオレの腕を叩いた。
会ってすぐ痩せたことに気付いたが、裸になった真希は痩せたというよりも小さくなっていた。
痛々しいくらいに。

オレに何か聞かれるのを避けるように、真希は話し出した。
「いやね、急に昔が懐かしくなってさ〜」
真希はオレの手を取り、強く握ってくる。
「なんか、このままずるずるいっちゃいそうだねぇ、あ、でも、あんた彼女いるのか」
「いないよ」
「あれぇ? 1年のマネージャーといい感じだって加護から聞いたよ?」
「そっか」
「まだ付き合ってないんだ。なら、わたしとヨリ戻そっか」
何も言えなくなってしまう。
絵里ちゃんの顔がふと浮かんだ。
腕の中にいる真希を思いきり抱きしめる。
真希がオレの元に戻ってきたとは思えないけど、このまま放り出すこともできない。
145 :. :2005/03/12(土) 03:54
「うそだって。そんな真に受けないでよ」
真希は誤魔化すように笑い、オレの腕をほどき、勢いよく立ち上がった。
そして、服を着ながら言う。
「ごめんね、それぞれ違う生活があるもんね。もう会わない」
「なにかあったの?」
真希はオレを見つめ、静かに首を振る。
「何もないよ。本当にただ懐かしくなっただけ」
「なら、いいんだ」

力になりたい、とは言えなかった。
髪を直している翳った横顔の真希が、遠い世界にいる人のように思えたからだ。
146 :. :2005/03/12(土) 03:54



相手GKのドロップキックが風に運ばれて最終ラインにまで届く。
軽い質の軌道は微細に揺れ、落下点を測り違えたストッパーが頭に当てるも、斜め後ろへ。
オレはルーズボール目掛けて走り、飛び、競ったFWを弾き飛ばしてタッチの外へ頭で掻き出す。
入ったスローに、こっちのサイドハーフがチェックに行く。
大きくなったトラップの隙間を狙い、足にボールを当てる。
こぼれを拾おうとするストッパーを押しのけ、大きく外に蹴り出した。
思い切り蹴ったボールはピッチを離れ、遥か遠くへ。
相手がボールを取りに行っている間に、叫んで修正をチームに伝える。
ボランチ2人にもう少し外に位置取るよう、サイドの2人にはDFラインに入るよう言った。

2−1で勝っている、そろそろ試合が終わるはずだ。
スロー、スローワーはリターンをダイレクトで放り込む。
ふわふわと浮いたセンタリングを、頭で大きく前に出す。
トップ下が拾い、シンに出す。
シンは一人かわし、サイドに逃げながら前に進んでいく。
オレはラインを押し上げる。
シンがコーナーフラッグ付近で停止し、DFに背を向けてボールをキープ。
二人に囲まれたところで、DFに当ててコーナーを得た。
たっぷり時間を使い、ショートコーナー。
リターンを受けたシンは、再びコーナーフラッグ付近でボールをキープする。
相手チームのベンチからの怒声がすごい。
シンは鋭く反転し、スペースへ逃げ、再びキープ。
そこで主審の笛が3度鳴った。
147 :. :2005/03/12(土) 03:54

「次勝てば都大会だね」
辻が弾んだ口調で言った。
3回勝てば都大会。
3回勝てば史上初の快挙という、弱小サッカー部。
でも、次の相手は予選免除じゃないのが不思議なくらいの名門校。
次元の違う相手に、けっこう勝負は諦め気味。

「おつかれさまですぅ」
絵里ちゃんがニコニコとボトルを渡してくる。
「今日も勝っちゃいましたね」
そう言う絵里ちゃんは髪をショートにした。

真希と会った翌日、加護から聞いた。
オレと真希が連れ立って学校から出て行くところを、絵里ちゃんが見ていたらしい。
後を追いかけてきてたのだそうだ。
「絵里、バカみたいにはしゃいでたよ」
加護は、真希と何があったのかは聞かず、それだけ言った。
あれ以来、真希とは会っていない。

「だから絵里、言ったでしょ? 今回はいけそうな気がする、って」
絵里ちゃんの態度は何一つ変わらない。
「ベンチ開けよー」
加護が声を掛けた。
「じゃあ、絵里も行きますね」
そう言って、ベンチにあるものを持てるだけ持ち、荷物置き場まで移動する。
オレはスパイクの紐をほどき、ドリンクを飲みながらゆっくりと移動した。
148 :. :2005/03/12(土) 03:55

試合後、会場がここに決まったときから辻が行きたいと言っていた餃子屋に行った。
店に着いたのは3時すぎ、店は閑散としていた。
オレと同じテーブルにはシン、加護と辻。

絵里ちゃんは里沙ちゃんと一年生部員3人と同じテーブルにいる。
不意にこっちを向いた絵里ちゃんと目が合う。
オレは表情を崩さない。
絵里ちゃんは、ふっと頬を綻ばせると、何事もなかったようにテーブルの会話に入っていく。
そのテーブルのマサが、おどけてカラシを目の下に塗っている。
149 :. :2005/03/12(土) 03:55
オレの視線を追った加護が、にやけて言う。
「やっぱり絵里のこと、好きなん?」
「俺もそれ、すげー聞きたい」
シンと加護が、いい加減に認めろよ、とでも言いたげにオレを見る。
「それよりさ、お前ら付き合い始めたんだって? なんで言わないんだよ」
「はぁ? なにそれ、誰が言ったん?」
否定的な口調で加護に聞かれ、オレは気まずそうに水を飲んでいた辻を指差す。
「前にさ、ごっちんと何あった? ってこいつに聞こうと思ったとき、誘導尋問の材料として……」
そう言いながら、いいわけは無駄だと判断したのか、辻はオレの頭をひっぱたいた。
「ったく、空気の読めない奴だな」
「のんが悪いんやろー」
「ちっげーよ、もしこれであいぼんとシンが意識しあって恋が芽生えたとするよ?」
辻以外の3人、言葉につまる。
いつの時代を生きてるんだ、と。
なんだか、とても可哀想な子を見てしまったような気まずい雰囲気。

辻が舌打ちして、あからさまにむくれる。
絵里ちゃんのいるテーブルからは、大きな笑い声が聞こえる。
150 :. :2005/03/12(土) 03:55



地区代表決定戦を明日に控えた今日、
練習は体を軽く動かす程度だったが、DF陣は残って最終確認をしていた。
マイナスの要素は、できる限り排除しておきたい。
ほぼ間違いなく勝てない相手ではあるが、それはまた別の問題だ。

オレは仲間の疲れ具合を見て、切り上げた。
スタメンのストッパー2人と、ゴール前でマークの受け渡しについて簡単に話し合う。

制服に着替えた絵里ちゃんが、ボトルを両手に持ってきた。
「おつかれさまですぅ」
絵里ちゃんのボトルを渡されたストッパー2人は、気を使ってグランドを後にする。
オレも2人についていこうとしたけど、
「いじわるしないでぇ!」
と絵里ちゃんにせっつかれ、息を呑んだ。
壊れてしまいそうで、俺に救いを求めているような切実な顔をしていた。
151 :. :2005/03/12(土) 03:56
「本当は試合前に言うことじゃないかもしれないけど、言います」
緊張しているのか、口調が硬い。
「さっき、マサ君に告白されました。付き合ってほしい、って」
言葉自体には、オレの心を揺さぶるような力はなかった。
けど、絵里ちゃんの発する窒息しそうなくらいに真剣な雰囲気に飲み込まれ、動けなくなった。
「あ、もちろん返事はしなかったよ。試合に影響しちゃ嫌だし……」
そう言って微かに笑ったが、すっと消し、唇を強く噛み締めた。
そして、震える手を握り締めながら、熱を帯びた瞳でオレを見た。
「絵里は先輩が好きです。しつこいくらい、先輩が好きです」

照れくさそうに息を吐き、穏やかに言う。
「ひとつだけワガママ言わせてください」
潤んだ目に涙が膜を張り、藍色の薄暗闇の中、頼りなく輝く。
「明日、絵里のために試合してください。春の大会で後藤さんのために戦ったように、
 絵里のために、戦ってください」
不意にこぼれた涙が意外だったのか、信じられないといった顔で拭った。
「絵里なんかいなくても、先輩は頑張るだろうから、卑怯ですよね。でも、これが絵里の素直な気持ちです」
152 :. :2005/03/12(土) 03:56
恥ずかしくなったのか、くすくすと笑い、オレの肩に手を置いた。
「動かないでくださいね」
舌足らずにそう言うと、背伸びをしてゆっくりと顔を近づけてくる。
絵里ちゃんの吐息がオレの首を撫でる。
唇は顎におさまり、しばらくして離れた。
「えへへ、これが絵里の精一杯」
そう言って、オレの胸に頭をコツンと押し当ててくる。
「ときどき確認しないと、不安になっちゃうんだよ?」
絵里ちゃんは3呼吸分だけ沈黙し、勢いをつけてオレから離れた。
後悔が見え隠れする表情で小さく微笑むと、背を向け歩いていく。


オレは絵里を追いかけ腕を掴み引き寄せ──




153 :. :2005/03/12(土) 03:57
 
154 :. :2005/03/12(土) 03:57
 
155 :. :2005/03/12(土) 03:57
 
156 :IROあせないで :2005/03/18(金) 17:56

さっき真里に別れを告げられてから、そんなに時間は経っていない。
俺と真里は今、夕暮れ時の歩道橋の上を歩いている。
二人とも無言で、歩くペースはいつもより数段遅い。
こんなはずじゃなかったんだ。
俺も真里も、別れる道を選ぶことなんてないんだ。
ただ、俺が真里を不安にさせていたのなら…。
まだ…間に合うのだろうか。
この歩道橋を渡りきって少しだけ歩けば、もう真里の家。
ずっと下を見つめながら歩いていた俺は、フッと顔を上げ、歩道橋から街を見渡す。
夕日は綺麗なオレンジ色で、俺の少し後ろを歩く真里のことを優しく照らしている。
そんな真里を見ていると愛しくもあり、今はそれが切ない。
不意に真里が俺のTシャツの裾をキュッと摘んだ。
真里は本気で俺に向き合ってくれていたんだ…。
なのに俺は、真里をちゃんと見ていただろうか。
今になって大きく膨らんでいく後悔。
二人ともまだまだ無言で、でもそれが二人がとても本気だということを物語っている。
歩道橋の真ん中で立ち止まり、俺も真里も言葉が出ない。
俺は歩道橋に寄りかかり、少しの間目を閉じる。
真里も同じようにする。
真里は今、何を考えているんだろう。
俺が思い出すのは、あの公園での出来事。

157 :IROあせないで :2005/03/18(金) 17:57

俺と真里がまだ出会って間もない頃、この近くの公園のベンチで青臭い夢を語り合った。
真里は歌手になりたくて、俺はまだ何もなかった。
ちゃんと希望を持って生きている真里を見て、俺も頑張らなきゃって思った。
その日もオレンジ色の夕焼けが、俺たちを染めていた。

こういう真里との一つ一つの思い出が、重なって今になっている。
どこで歯車がずれてしまったんだろう。
今となってはもうわからないけど、あの頃から少しだけ、俺は変わった。
正確には真里に別れを告げられたから、俺は変われたんだ。
勇気を振り絞って真里は俺に別れを告げた。
それから俺は、真里に勇気をもらったんだ。
だから聞いてくれ。
俺の、希望を。
覚悟を決めた俺は、ずっと声のなかった二人の空気を破った。

「真里、聞いてくれ」
「………」
「俺、夢が見つかったんだ」

真里はこんな時に何を言うんだ、って顔をして俺を見つめる。
俺はそんな真里を、真剣に見つめ返した。

158 :IROあせないで :2005/03/18(金) 17:58

「真里を守っていきたい。それで良いんだ、それだけで」
「………」
「もう一度告白します。真里…俺と結婚してください」

真里の瞳がだんだんと潤んでくる。
大粒の涙が真里の頬を伝うのと同時に、真里は小さく頷いた。

「おいらも、あなたが好き…ほんとは別れたくなんか…ない…よっ…」

小さな体で一生懸命に、泣きながら思いを伝えてくれた真里をそっと抱きしめる。

「不安にさせてたならごめん」
「うん…」
「きっと…本当に大切な物は失いやすいのかもしれないな」
「もう離さないでね…」
「もちろん」

この気持ち、何年経っても色あせないで。
この勇気、いつまでも色あせないで。
この想い、永遠に色あせないで…。


END

159 :愛してると言えない :2005/03/20(日) 17:31

――いつもと変わらない通学路。
――放課後、いつもと同じようにコンビニで立ち読みをしてから帰宅するつもりだった。
――でもその日は、いつもとは違っていた。

コンビニに入ると、温かい空気が俺を包んだ。
外はすごく寒くて、マフラーとかが手放せない季節。
雑誌コーナーに足を進め、適当に漫画雑誌を手に取り読み始める。
しばらくして女の人が俺の隣に立った。
チラッと覗き見ると、歳は20代前半くらいで、背が高く栗色の綺麗な髪をしていた。
俺は読んでいた漫画雑誌を棚に戻そうと手を伸ばすが、女の人を見ていた所為か手元が狂い、雑誌はドサッと音を立てて床に落ちた。
その音に反応して女の人が雑誌を見やる。
俺も慌てて雑誌を拾おうとした。
だけどタイミングが良くて、俺が屈むのと同時に、女の人も屈んだ。
女の人の髪から良い香りがした。
そして、手と手が触れて。
お互いに顔を見る。
そのまま沈黙が…続くはずもなく、さっさと女の人は手を引いてしまった。
またファッション誌に視線を戻している。
俺は少しガッカリして、小声ですみませんと呟き、コンビニを出た。
外は寒いはずなのに、何故か冷たい風が心地良かった。

160 :愛してると言えない :2005/03/20(日) 17:32

家に帰ってベッドに横になる。
同時に屈んだ時に香ったあの人の髪の香り。
どうしても忘れられなかった。
それに、さっきから触れた指がジンジンしてる。
なんなんだ…これは。
考えれば考える程訳がわからなくなってくる。
まさか恋してるなんてことはないはずだ。
今日初めて会って…会ったと言っていいのかも怪しくて、ただ隣合っただけなのに。
それなのに、何故かもどかしい。
全ての思考を振り切るように、シャワーを浴びた。

次の日も症状は変わらない。
ただ、一つ変わったことがあった。
朝起きると歯茎が腫れていた。
今日、歯医者に行くはめになってしまったことくらいだった。

学校へ行っても普段とは何かが違う。
昨日とは…何か違った。
友達の奥田にカラオケに誘われても、授業で指されても上の空。
こんな自分は初めてだ。
ボーッと見ている青い空に浮かぶのは、あの人の横顔だけ。
見かねた奥田が言った。

161 :愛してると言えない :2005/03/20(日) 17:33

「お前、恋でもしちゃった?」
「え………」

恋なのかどうか、自分でもよくわからない。
また、もどかしさを感じた。
確かめたい、あの人に会って。
…もう一度会いたい。

「あぁ…俺、恋してるんだ」
「何言ってんだよ。カラオケ行くぞー」

無理矢理連れて行かれるような形で、カラオケに行くことになった。
そういえば歯医者。
今は痛みも退いたし今度の機会で良いか。

カラオケで散々歌って、食べて、飲んでいたら、案の定歯が痛み出した。
時計を見るとすでに21時を回っていた。
さすがに解散することになり、俺はその足で歯医者に行った。

「そりゃそうだよな、こんな時間だし」

162 :愛してると言えない :2005/03/20(日) 17:34

歯医者の前についた俺は、納得の声を出す。
もうとっくに診察時間は過ぎている。
中は真っ暗だ。
まだ歯は痛いものの、どうすることも出来ずに帰ることにする。
数メートル歩いたところで、都合の良いことに歯医者を見つけた。

「こんなところにあったっけ」

看板には『飯田歯科』と書いてある。
中を覗くと待合室に人こそいないものの、まだ診察している様子だ。
丁度保険証を持っていたので、この歯医者に入った。

ドアを押し開けると、カランカランと小気味良い音が鳴る。
音を聞きつけたこの歯科の人がやってくる足音がする。

「すいません。もう終わりにするところなんですよ」

そう言ってすまなそうに出てきた女の人を見て、俺は固まった。
…あの人だった。
向こうも俺を見る。

「あ!昨日コンビニにいた子だよね!?」
「…あっ、ハイ」

一瞬話し掛けられてることがわからなくて、返事が遅れてしまった。
憶えててくれたんだ。
それだけのことなのに、妙に嬉しかった。

163 :愛してると言えない :2005/03/20(日) 17:34

「ごめんね。今日はもう終わりにしようと思ってたんだけど……」

本当に申し訳無さそうに、そして困ったようにこっちを見た。
ドキドキと心臓が動いているのがわかった。
耳が火照ってきているのもわかった。

「じゃあ…明日、来ますんで…」

踵を返しさっさと帰ろうとする俺を、あの人が呼び止めた。

「一人くらいなら大丈夫。こっちおいで」

振り返りあの人を見つめる。
微笑んでいた。
胸につけてあるネームプレートが目に入った。

『飯田圭織』

そう書いてあった。
彼女の名前を知った。
もっと知りたいと思った。
彼女を…飯田さんをもっと知りたいと思った。
これが恋なんだと思った。

診察台に寝転ぶと、早速治療が始まった。

164 :愛してると言えない :2005/03/20(日) 17:35

「これは…虫歯ね。ちゃんと歯磨きしなさいね」

当然治療してもらっている方の俺は返事なんか出来やしない。
だから、飯田先生がしゃべってるだけの状態。

「あの時なんの雑誌見てたの?えっちな本かな?」

心の中では必死で違うと訴えているのに、しゃべることは出来ない。

「私普段は立ち読みなんてしないのよ。でもなんでだろう…昨日はしちゃった。昨日ね、私告白しようと思ってたの。でもその人彼女がいたの…。ショックだったな、それで見たくもない雑誌見てたのかも」

…俺だってこんな話聞きたくないのに…。

「ごめんなさい。こんな話あなたにすることじゃないわよね」

そうだよ…。
なんで俺に…。
目頭が熱くなり、勝手に涙が溢れてくる。

165 :愛してると言えない :2005/03/20(日) 17:36

「あら…ごめんなさい、痛かった?」

泣いてる俺を見て、痛いから泣いてると思ったのだろうか。
俺の恋はこんなに短い間に消えるのか…?

「ハイ。治療は終わったわよ、ちゃんと歯磨きして寝なさいね」
「………」

……。
………。
もうこの歯医者には来れないと思った。
胸が痛い。
ズキズキする。
俺はお金を払うと、飯田先生の顔をもう二度と見ないように、全速力で飯田歯科から逃げ出した。

初めての恋で、初めての失恋。
これから先飯田先生と関わることがあったとしても、もう。

愛してるなんて言えない。



END
166 :名無飼育さん :2005/04/22(金) 22:40
突然失礼します。実はかなり昔2chの小説の板で書いてたものですが
つい先日また書きたくなりその続きが出来たのですがここを少しお借りしてもよいでしょうか?
167 :名無飼育さん :2005/04/22(金) 22:51
いいんじゃないんすか〜
168 :名無飼育さん :2005/04/22(金) 23:16
ありがとうございます。では失礼させていただきます。
169 :名無飼育さん :2005/04/22(金) 23:19
はぁ・・・最近ため息がよくでる。
僕は結局安倍さんの告白を断ってしまった。つまり彼女を振ってしまったのだ。
あの日安倍さんは僕に告白をしてきた。だけど僕はその事に返事をすることが
出来なかった。
彼女は僕の返事を聞くとわずかに俯き、そしてすぐに顔をあげいつもの笑顔を見せてくれた。
「そっか。うん、ありがと。これでやっとスッキリしたよ。」安倍さんの
その笑顔を見ているとなにか心の中が少し痛んだような気がした。
その後クラブの県予選などでお互い応援したりされたりしている間にお互い意識する
ことなく普通に話すことが出来るようになった。(相変わらず単純・・・)
そしてそれから暫くたったとある練習後、安倍さんとは帰り道が途中まで一緒なので
何時ものように二人で話しながら帰っていた時、
「今日の練習ホント疲れたよね〜。とくにあの先輩厳しすぎるよー」
「ホントだよ〜もう限界。あれはもう完全なしごきだよ。」
「早く帰ってシャワー浴びたいよ。もう汗でTシャツがグショグショだし」
シャワーとゆう単語に一瞬ドキッと反応してしまった(・・・恥ずかしい)
「あ、私こっちだから。じゃあまた明日ね。」
安倍さんは笑顔で手を振ってくれたがこっちはそれどころではなく下手くそな
作り笑いを作る事しか出来なかった。安倍さんが見えなくなったと同時にその場に
大きなため息を吐き出した。
「なにやってんだろ、ホントに・・・」
あれから安倍さんは何も言ってこない、彼女の中では既に割り切った事なんだろう
か?そして、僕の中で彼女の位置は今何なのだろう?
6月のジメジメとした季節の中でそんなことを思いながら帰り道を歩いているとき
むこうから自転車に乗った子がきた。
170 :名無飼育さん :2005/04/22(金) 23:22
「あれっ?」
「・・・ん?」
あれ、今のって・・・そう思って後ろを振り返ると向こうもこっちを
見ていた。ああ、あいつは・・・
「あーヤスノリじゃん!すっごーい久しぶりー。」
やっぱり・・・ 相手は僕の中学時代のクラスメート、矢口真里だった。
「キャハハハ、ヤス全然変わってないねー。」
「矢口こそ全然、背ぇ伸びてねぇなぁ。」
「うっさいよーあんた。」
矢口とはわりと家が近めとゆうこともあって幼稚園から小、中とも
一緒だったが高校から学校が違い最近ではまったくご無沙汰だった。
「てか、マジ久しぶりだよね〜卒業式以来じゃん。」
とゆうかお恥ずかしい事に僕は中学の時、矢口のことが好きだったのだ。
結局告白するには至らず今では『一時的精神の錯乱』って事にしてるけどね。
「こんな時間にどうしたのさ、部活?」
「ああ、そうだよ。そっちは?」
「私?私はバイト〜」
「ああ、なるほどね、い〜ね〜そっちは学生生活を満喫してるな〜」
「何親父臭い事言ってんのよあんただって部活に精だしてるじゃん。
そっちの方が学生っぽいよ。」
「そんなもんかな?まぁバイト頑張れよ〜。」
バイトにいく矢口を引き止めるのも気が引けたので感動の再会も早々
別れることにした。
「あ、ねぇ?」
「ん?」
「またそのうち家行っていい?」
矢口は幼稚園時代から家によく遊びにきていた。と言っても昔から
玄関からではなく両親がいる部屋から少し離れた一階の離れみたいな所
にある僕の部屋の窓から入ってくるのだが
「?いいよ、つーか遠慮してないで前みたいにきなよ。」
「うんっあんがと!!じゃまたね〜」
「ああ、頑張ってな」
あいつが遠慮するってのも可笑しな事かな。中学時代は夜とかも
ふらっと来ては僕の部屋で馬鹿話したり散歩とか言ってふらふらと
歩き回ったものだ。(田舎だったため煌びやかなネオンが美しい大人の
お店とか青少年に有害な場所はありませんでしたけどね)
矢口と別れた後はそのまま誰にも会わず家に帰った。そもそもそんな短時間にこれ以上懐かしい友達に会う
ほうが怖いよ・・・死ぬんじゃないか僕
171 :名無飼育さん :2005/04/22(金) 23:25
                   その夜


夜23時半過ぎ、健全な高校生にしたら一番ひまな時間かも知れない。
寝るには少し早いしテレビもビミョー。やる事が無いときはホントひま
な時間(えっ?宿題?予習復習?何ですかそれ?(汗 )

コンコン

突然窓が叩かれた。って言っても音があまり響かないようなすごく弱い
音だった。
何となしに窓側までいきカーテンを引くと窓越しに茶色いモノが見えた。
この大きさ あの髪色・・・矢口?
窓際に矢口が立っていた。 何か違和感。
僕が窓を開けると俯いていた矢口はすっと顔を上げた。
「おい〜っす。早速来ちゃった。」
夜でも変わらずハイテンション、ハイボイス、変わってない・・・
「おぉ、バイト終わり?お疲れさん。」
「うん、やっと終わったよ〜。ちかれた〜入れてくれー休ましてくれー
なんか冷たいものくれ〜。」
うん、この無遠慮なとこも変わってねぇ・・
「ハイハイ、麦茶でいいか?」
僕は部屋にある小型冷蔵庫からペットボトルと氷を取り出した。
「ばっきゃろ〜仕事終わりで麦茶なんか飲めるか〜酒持って来い酒ぇ」
「・・・酔っ払いかお前は」
そう言いながらも僕は勉強机の一番下の引き出しの奥から茶色い液体の
入ったビンを取り出した。(何であるんでしょうね?・・・聞かないでください)
「おぉ〜良いのもってんじゃ〜ん」
こいつマジで酔ってんのか?

それから一時間ぐらい僕は床、矢口は僕のベットに座ってベラベラと
お互いの近況やクラスメートのそれからを語り合った。
「えっ!!あいつら別れたの?」
「う〜ん卒業式終わった後呼び出してあやちゃんがふったみたいよ。」
「はぁ〜まぁあいつもかなり自分勝手好き勝手やってたからなぁ・・・」
「でね、これはタカ君に聞いたんだけど何でもあの男あやとの復縁狙ってるみたいよ。」
「はあぁ?あいつ懲りてねぇの?」
「うん、なんかストーカーぽくね・・・」
「犯罪者にはなるなよ・・・あいつ」
(これらの会話はまったく関係の無いフィクションです)
172 :名無飼育さん :2005/04/22(金) 23:27
「ふ〜なんか酔いまわってきたかも・・・」
・・・そりゃ話しながらパカパカ飲んでりゃなぁ。なんでもバイト先の
居酒屋でも何杯か飲んできたらしい。
「大丈夫か?吐くならトイレ行けよ。」
「う〜ん・・・はきたくは無いけどなんかぁ〜・・・あ〜」
矢口はうめきながらベットの上でもぞもぞと伸びたり蠢いたりしてる。
その度に、なんつーかミニスカートから覗く足の間からチラチラと
布が・・・赤と白のチェック・・・グレイト(…僕も酔ってきたのだろうかOTL)
「ん〜・・・ねぇヤス?」
「んんっ!?どうした?」
「あたしってどうかな?」
「はぁ?」
「あたしっていい女かな?ちゃんと頑張れる女かな?」
矢口はそう言いながら立ち上がり近づいてくると僕の前でしゃがみ顔を
同じ高さに持ってきた。
「どっどうしたよ?」
照れ隠しに笑ってみたけど効果は無かった。
「あたしは強いかな?」
言い終わるとともに矢口は僕のほうにもたれかかってきた。
思わず支えると矢口は僕の腰あたりに抱きついてきた。
「・・・心臓の音聞こえる」
「っっ!!!」
僕は声にならない声をあげた。
矢口が僕に抱きついてきた!?あの矢口が泣きそうな目で僕を見た!?
ただ、僕は何も考えられず矢口の頭に手をおいた。
重さを感じさせないように、優しく。
お互い何も言わずしばらくずっと同じ体制のまま固まっていた。
僕にとっては2時間にも3時間にも感じられるような時間だ。
矢口は何も言わない。泣いてもいないようだった。
ただずっと一定の呼吸音だけが聞こえた。
173 :名無飼育さん :2005/04/22(金) 23:47
「矢口?」
この状況に耐えれず僕は声をかけた。矢口からの返事は無い。
なんとなく僕は頭に置いている方とは反対の手で背骨のあたりを
スーッっとなぞってみた。昔からこいつはこれが弱かったっけ。
「ぅんっ!!」
可愛らしい声をあげて矢口は寝返りを打ってこちらに顔を見せた。寝返り?
「すーすー…」
寝ていた、矢口は。いつから?おい・・・
「なんじゃそりゃあ・・・」
僕は天井を見上げると深い深い溜息をついた。
さっきまでの自分の混乱は何だったのだろうか・・・一気に冷めた。
矢口はまだ寝息を立てている。
「おーい、おねぇさん起きてーく・だ・さ・い。」
「…くー」
起きる様子は無い。僕は矢口の頭から足まで視線を動かした。
スカートが半分捲くれてチェックが・・・このまま胸とかスカートの
中とかいたず(・・・黙れ僕。イタズラハイヤズラ)



174 :名無飼育さん :2005/04/22(金) 23:48
あれから、まったく起きない矢口をベットに寝かしてタオルケットをかけてやると僕は残っていたウイスキー
の後始末をして学習机のいすの上で夜を過ごした。意識がなくなる前にそのうちソファ位買おうとか思った
とか思わなかったとか。

朝、いつもより早い時間に目が覚めた。変なとこで寝たせいか体の所々が痛い。
ベットのほうを見るとまだ矢口は寝息を立ててスヤスヤ眠っている。
さすがに朝から昨日のような気分にはなれず出来るだけ音を立てない
ように鞄に部活で荷物を詰め込んだ。
大体の朝の準備が終わってもまだ矢口は目覚めない。やれやれ・・・
僕はベットで寝ている矢口の顔を覗き込んだ。
「・・・眠り姫様、君は僕が知っている女性の中で一番強い女だって
思ってるよ。なんかよくわかんないけど頑張れよ。」
・・・・言ってみて自分が恥ずかしくなった。僕は伸びをすると
窓の外を見た。どうやら今日はいい天気になりそうだ。梅雨時期の
天気予報もたまには当たるもんだ。

その後・・・

AM7時ごろ、僕の部屋は矢口の寝起きの絶叫とゆう名の大雨が到来した。
・・・・・・カミサマ、夜のうちに表に捨てといたほうがよかったですか?・・・・・・
175 :名無飼育さん :2005/04/22(金) 23:51
終わりです。お貸し頂きありがとうございました。
176 :名無飼育さん :2005/04/23(土) 23:14
面白かったですよ〜。
出来れば続きも期待しても良いですか?
177 :名無飼育さん :2005/04/25(月) 01:39
>>176さん
ありがとうございます。そう言って貰えるのは嬉しいんですけど俺の場合、電波か
何かを受信できないと書けないのでいつになるか・・・頑張ってみます。
178 :名無飼育さん :2005/04/28(木) 00:51
まったく電波がきません・・・169にのせたものの1話ですがお借りしてのせさせてください。
・・・少しは受信のアンテナが働くかもしてないので・・・

「ねぇヤス君って好きな人いるの?  なつみ 」
僕はいま人生で最初にして最大の問題にぶち当たっている。
その問題とは、この僕が生まれて初めて異性に告白されたとゆうものなのだ。
(メールだけどね)
しかもその相手とは同じ陸上部の同級生である安倍なつみさんなのだ。
「いや〜特にいないなぁ、そっちはどうなん。 ヤス」
ちなみに彼女とは入部当時からの付き合いでよくメールで練習の愚痴を
言い合ったり(大体喋るのは彼女、僕は聞き手に回っていた。)していたが
昨日の夜、いつもの様にメールをしていると徐々に話はそっち方向に流れていった。
「なっち?なっちはねぇ、好きな人いるよ。好きな人がヤス君って言ったたら
どうする(笑) なつみ」
初め僕はおちょくられていると思いこっちもふざけた感じで返しました。
「きゃ〜マジでー ってんなことぁない(w  ヤス」
現実だとこんなサブイ事口が避けても言えないんですがメールだと何故か気が
大きくなってしまう性格なんです。
「あはは、ヤス君最高(笑)中学生のときはやっぱ付き合ってたんでしょう」
自慢にはならないが僕は小、中ともなったくモテた覚えが無い。
よくて仲の良いトモダチどまりだ。
「まっさか〜(--;)悲しい事に全くもてた覚えなんかありませんよ(/_\)ヤス」
すると安倍さんはすぐにふっかけてきました。
「え〜意外!?ヤス君って優しいからけっこーもてると思ってたんだけどな〜 なつみ 」
・・・む,お世辞とはいえ嬉しいぞ。(単純なんです)
「いやー最近はまったく青春してないっすよ   ヤス」
「へーじゃあもし私が付き合ってっていったらどうする。(w    なつみ」
えっ・・・一瞬ドキッっとしたが、どーせまたおちょくってるんだろうと思い
ふざけた返事をした。
「う〜ん難しい問題だなー。とりあえず三日三晩ほど考えさせて頂けないで
しょうか?先生。   ヤス」
さすがにこんなメールばっかだと怒るかなぁなどと思っていると安倍さんから
返事が返ってきた。
「うん(^‐^)解った。待ってるね(はぁと)それじゃぁおやすみー(-_-)zzz」
ふぅ何かけっこードキドキする文章が多かったな。
僕が安倍さんさんと付き合ったら・・・考えれないや、僕が安倍さんの彼氏に
なるなんて・・・

                 数日後、部活の帰り話をしていて

「そういえばヤス君この前返事聞かしてくれないかなぁ?」
「この前?」
「うん、その・・・私が付き合ってって言ったらどうする?ってやつ」
その言葉にドキッとした。僕はもう忘れかけていたし、どうせ安倍さんのシャレ
かなって思っていたから。
「先にこんな事言ったら悪いんだけど私、ヤス君の事好きなんだ・・・
本気だから・・・だから返事聞かせて?どうなったってなっちちゃんと聞くから」
安倍さんが真剣な顔でこっちを見てきた。よく見たら小さな耳が紅くなってきている。
         ・・・・・・カミサマ、時を止めてくれ・・・・・・

終了です。お邪魔しました。
179 :名無飼育さん :2005/04/30(土) 10:32
う〜ん続きがきになりますね〜。
できればもっと期待します。
よろしくお願いします
180 :名無飼育さん :2005/05/07(土) 04:25


スイートルーム


 その男は、君に出逢ったのは偶然だけど、君の声に惹かれたのは必然だ、と言った。声
を褒められたのは久しぶりだったので、それだけでついていってもいいと思ってしまった。
それに、その男が名前は忘れてしまったけどだいぶ前に見て子宮が疼いた外国の俳優を日
本人にしたらこんな感じなんだろうな、と思ったからだ。その俳優はマフィアなのに敬虔
なカトリック信者で、内容はよく憶えてないけど孫が生まれるとかなんとかがきっかけで
自分の仕事を嘲って悩んでいた。
「そんなに怖がらなくてもいいから」
 男は笑顔でもないけど無表情でもない、たぶん経験から知っているんだろう初対面の女
の子に警戒させない表情でおいらを向いた。
181 :名無飼育さん :2005/05/07(土) 04:25
 新宿の、名前は知らないけどロケバスの中から何度も見たことのある大きなホテルの最
上階にある部屋は想像していたよりもずっと豪華で広くて、その分だけ無機質に感じた。
おいらの面積はせいぜいベッドの四分の一くらいなので、余計にそう感じるのかもしれな
い。こんな贅沢があるのは知らなかったし、彼と来てみたいとも思ったけど、こういうお
金の使い方をすると今まで仕事をしてきて貯まった分がすぐになくなってしまう気がする。
「やっぱり嫌ならこのまま帰ってもらっても構わないけど、このことを誰にも言わないという
ことだけは約束してほしい」
 おいらは黙って頷いた。こっちも、そうしてもらわないと困る。
男は満足したようにクーラーに挿してあったワインを抜き、一緒に置いてある真っ白な
布巾でボトルの水気を拭うとグラスに注いでおいらに差し出した。受け取って一口飲む。
お酒の味はよくわからないけど、たまに飲むようなお酒の雑な感じはしなくて、刺激の少
ない、でもちゃんとした味がしていい余韻と香りがあったからこういうのがおいしいワイ
ンっていうんだろうな、と思った。
182 :名無飼育さん :2005/05/07(土) 04:26
「恋人、いるのかな」
「はい」
「そうだよね。君みたいなかわいい子に、男が寄らないはずがない」
 彼は世界でただ一人おいらのすべてをわかって受け止めてくれる人で、そういうことを
友達に言うと、矢口は現実を知らないとか男ってものをわかってないとかバカで羨ましい
とか笑われるけど、それでもよかった。周りの人がどう言おうと、彼は世界でただひとり
おいらのすべてをわかって受け止めてくれる人だからだ。優しいし面白いし趣味というか
フィーリングが同じだし、おまけにかっこよくて背が高くて人気上昇中の俳優だ。これ以
上ないってくらいの彼だけど、おいらみたいなかわいいかかわいくないかでいうとかわい
いけどいまいちパッとしない顔立ちで、背も低くてぽっちゃりしてるというか筋肉質で、
肌はやわらかいと思うけどずんぐりしていて物を知らないモーニング娘。でもない女の子
が相手でいいのかな、と思うときがある。彼は娘。を辞めるきっかけになった人だけどや
っぱり大切だし、これからも付き合いは続いていくと思うけど、おいらにとって必要な人
なのかどうかはわからない。ふと沸いてきた劣等感みたいなものと相まって、そう考える
ようになった。時間があるというのはやっぱりよくない、前みたいにウンザリするくらい
仕事で忙しくて物を考える暇なんてなくてようやく遊ぶ時間が取れる、というくらいのほ
うがちょうどいい。
「恋人の手前、こういうのは抵抗あるか」
 男はそう言いながらキャビアを指に山盛りに取り、おいらの口に捻じこみ掻き回してき
た。こういうのは初めてだったからビックリして泣きそうになったけど、口の中に塩辛い
味がしてこれはおじさんの指がそうなのか、それともキャビアの塩気なのかを考えていた
ら泣かずに済んだ。
183 :名無飼育さん :2005/05/07(土) 04:26
 指が外れて息が苦しかったことに気付いて大きく息をしていると男がおもむろに服を脱
いで、やっぱりセックスするんだと今更ながらに感じてシャワーを浴びに行こうとすると
腕を掴まれた。
「君はシャワーを浴びなくてもいいんだ」
「でも、汚いし」
「いいんだ」
「おいら、さっきトイレにも行ったし」
「おいら?」
 男は首を傾げたけど、わたしをおいらとを呼ぶことには興味がないようで、君はシャワ
ーを浴びないほうがいいんだと言って、履いてるジーンズのボタンを引き千切るようにし
て開き股間に鼻先を押し付けてきた。
184 :名無飼育さん :2005/05/07(土) 04:26
 そういえば、自分のことをおいらというクセがついたのはいつからだろう。たぶん自分
を矢口真里だと紹介する必要がなくなったからだと思うんだけど、お母さんとかいろんな
人にもういい年なんだからやめなさいと言われていたし、もう娘。メンバーとしてキャラ
を作る必要もないからわたしに直そうと思ったんだけどなかなかうまくいかない。そうい
うことは考えてもうまくいかないことだし、意識して直るようなものでもない、男に尿道
のあたりをべちょべちょになめられながら天上を眺めていると、誰かに旅行に行って気分
転換でもすればいい、と言われたことを思い出した。たぶんカオリだったはずだ。娘。に
いると長い休みなんて取れるはずないからいい機会だと思ったけど今はゴールデンウィー
クで、休みを組み合わせれば10連休になるらしい。まだ娘。にいたころ、梨華ちゃんとだ
ったと思うけどそんなことを話していて、おいらたちには関係ないね、なんて溜息ついて
いたことが遠い昔のように思える。本当だったら今ごろ梨華ちゃんの卒業のコンサートに
出ているはずだったんだけど、おいらはただの暇な22歳で新宿のホテルで知らないおじさ
んとセックスしている。
185 :名無飼育さん :2005/05/07(土) 04:27
             客として梨華ちゃんの卒業するところを見たい、と事務所の人に
言ったら、これいじょう石川の卒業を霞ませてどうすると怒られた。よく考えたらその通
りだ。梨華ちゃんの卒業だけじゃなくて新メンバーの子のお披露目だというのに、おいら
のことで情報のスペースを裂かれたくはない。でも、心のどこかで紙面に載りたい自分が
いる、忘れ去られてしまうのが怖いのだ、あれ以来テレビもラジオもインターネットも新
聞も見ていないけど、お父さんがこっそり買っていたスポーツ新聞に新メンバーの子が決
まったという記事があってそこにおいらの名前があったのには安心した。
 舌が離れたな、と思ったらばんざいするような恰好で両手をベッドのパイプに括りつけ
られた。男はおいらの裸をまじまじと見つめると脇にむしゃぶりついてきた。荒い呼吸の
隙間に男の息が匂ってきて臭かったけど、不思議と愛しい気持ちになった。さっき、男の
おいらを見る目が縋るような弱々しいものだったからかもしれない。執拗な愛撫はゆっく
りと下まで降りてきて、男はおっぱいを揉んだり撫でたりしながらおいらの中に固くて尖
った舌がめりこませてきた。体が勝手に反応して腰がビクンと浮き上がった。急に彼に申
し訳なく思えてきた。
186 :名無飼育さん :2005/05/07(土) 04:27
 おいらは結局、結果的にかもしれないけど彼を選んだということになるんだろうけど、
それは彼との未来のほうを取ったということじゃない。彼とのこれまでを否定したくなか
った。じゃあ娘。は彼よりも大切じゃなかったのかというと、そういうことでは絶対にな
い。娘。と彼のどちらがおいらを必要としていたのか、というだけのことだ。たくさんの
女の子が影響しあうモーニング娘。は誰かがいなくなって困るということはあっても、動
けなくなることはない。変化があるだけだ。それは明日香のときも彩っぺのときも紗耶香
のときも裕ちゃんのときもごっちんのときも圭ちゃんのときもなっちのときも辻加護のと
きも圭織のときも同じだった。おいらが辞めたのは突然でなんの準備もなかったけれど、
それでもただの変化であることにはかわりがない。
「ピル飲んでるから生でもいいよ」
 コンドームをつけようとしている男がひどく哀れに思えてきて、優しさを見せてみた。
こうやってスイートを取れるくらいの経済力があるくらいだからきっとそれなりの地位も
与えられているだろうに、こんなちっちゃい22の女に手錠を嵌めてベッドに括りつけない
と逃げ出されるのではないかと不安で仕方ないような可哀相な男なのだ。
187 :名無飼育さん :2005/05/07(土) 04:28
「おじさん、歳いくつ?」
「どうして?」
「なんとなく。聞いてみたくなった」
「51」
「お父さんよりも上か……」
 お父さんという言葉を出した瞬間、おいらの中にあったちんこが大きくなった。そうい
うことを言ったら萎むものだと思っていたけど、違うみたいだ。安心したというか、納得
したというか寂しくなったというか、複雑な気持ちになった。そういえば、男には綺麗な
ものを汚したい欲望があると彼が言っていた。娘。時代は純真を装っていた。おいらがそ
れを汚してしまったんだろう。男はきっと汚したいだけで、汚れた女の子は好きじゃない。
これまでを振り返ってみてそう思った。
「おじさん、歳のわりにはいい体してるね」
「そうか?」
「うん。鍛えてるの?」
188 :名無飼育さん :2005/05/07(土) 04:28
 男は腰を振るのをやめ、恥ずかしそうにジムに通っていると言った。食事も制限して鍛
えているというのに家族は誰も気付いてくれない、とも。やっぱりおいらのにらんでいた
通り、男は可哀相な人だったんだ。そうわかると途端に楽になって、なんだかおいらはお
じさんを救ってあげる女の子で、こうやってセックスしてあげるのは聖しいことなんじゃ
ないかと思えるようになった。足でおじさんの腰をきつく挟んでおいらに密着させてあげ
た。そのせいかはわからないけど、おじさんはあっという間に果ててしまって、これから
もう一回やるのか、やるとしたらたくさん気持ちよくさせてあげようとか、もしかすると
優しく髪を撫でてくれたりするのかなとちょっと期待したけれど、そんなことはなくてお
じさんはちんことまんこをティッシュで軽く拭くとシャワーを浴びに行って戻ってくると
冷蔵庫から水を取り出して飲み、そそくさと服を着ておいらの手錠をはずし、明日の朝10
時までに部屋を出てくれればいいからと言って札束を置いて帰っていった。
189 :名無飼育さん :2005/05/07(土) 04:29
 おいらは裸のままテーブルに置いてある札束に買われたんだという思いばかりが強くな
って悲しくなったけれど、それは心が揺れ動くというよりも冷たく固まっていくといった
感じだった。梨華ちゃんはもう卒業し終えたのだろうか。いくらここが高いところにある
といっても武道館なんて見えるはずもなく、それにどこにあるのかもわからない。シーツ
を体に巻いて窓のほうに近付いてみたけど夜を遮断するガラスにはおいらの姿が映るだけ
で、目を凝らして遠くのほうを見ようと思ったけど窓ガラスについた水滴がネオンを乱反
射させるからうまくいかない。せめて声だけは届けばいいと喉を震わせようとしたけれど
感情も一緒に吐き出されてしまいそうで、きっと泣き崩れてどうしようもなくなってしま
うんだろうなと思ったからただじっと自分と見つめあうことしかできなかった





                                               おわり
190 :わらびもち :2005/07/15(金) 22:50
朝方、ごっちんが何の連絡も無しに「眠いー」と言いながら家にやって来た。
おれは「今何時だと思ってんだよバカ」と半ば冗談のようにして言ったのだけど、
ごっちんは「バカとかさ、酷いじゃんかさ」と言って泣きそうな顔をした。
おれはコイツ大分酔ってやがるなと思いつつ
「ごめんごめん、ジョークだって、とりあえず上がれよ」
とだけ言って、ごっちんをそのままに台所に行って熱いお茶を入れた。

お茶を入れ終わってもごっちんが中々来ないので何やってんだかと思って玄関に見に行くと、
ごっちんは玄関でブーツを脱ぎながら寝ていた。「おいおいこんなところで寝るなよ」
そう言うだけでは起きないのは分かっているので、ごっちんのブーツを脱がすと、
半分おぶるような形で、ごっちんの肩を抱きかかえて立たせた。ごっちんはまた「眠いー」と言った。
「眠いんならこんなとこじゃくてソファーで寝ろ」そう言ってもまだ玄関先でコックリコックリと
眠ってしまいそうになるので、肩を貸してソファーまで連れて行った。
ごっちんは何度も「眠いー」と呟いた。呟くたびにアルコール臭い息がおれにかかった。
おれは酒が飲めないので酒の匂いは嫌いなのだけど、なんだか良い匂いだなと思った。
ごっちんの横顔を盗み見ると、眠たそうな顔が妙に色っぽくて、少し勃起した。

ソファーにごっちんを寝かせると、ごっちんは深い深呼吸を一つして「お茶が飲みたい」と言った。
おれは用意していたお茶をごっちんに渡すと「熱いから気をつけて」と言った。
ごっちんは分かってるという顔をすると、身体を起こしてお茶を2口啜った。
おれは「わらびもち食べる?」と訊いた。ごっちんは首を横に振って「いらない」と言った。

おれは冷蔵庫からわらびもちを出すと、一人でそれを食べた。ひんやりして美味かった。
ごっちんはしばらくお茶を啜りながらおれがわらびもちを食べているのを見ていたけれど、
「やっぱちょうだい」と言って、おれが食べようとして爪楊枝に刺していたもちを
横からパクッと食べた。「お前眠いんじゃないのかよ、早く寝ろよ」と言うと、
ごっちんは「いーじゃんべつにー」と言って笑った。その笑顔が本当にかわいくて、
おれはまた少しだけ勃起した。


−了−
191 :ROLL :2005/07/17(日) 04:42
高校二年の初夏。クラスメイトで、わりと長い付き合いになる友人の新垣里沙は
がっくり落ち込んでいた。

マックで向かい合わせに座る俺たちの中央には一枚の紙切れ。
これが新垣の家に届いた時、こいつは『天にも昇る』って感じで浮かれてたもんだが。

「連絡、来なかったなあ……」
「しょうがないんじゃねえの。二万人くらい募集あったんだろ」

新垣がうつろな目で見つめている紙切れは、アイドルグループの新メンバーを
募集していたオーディションの、二次審査通過を伝えるものだった。
書類審査と、各地方ごとの簡単な歌審査を新垣はくぐり抜け、意気揚々と三次審査を
受けに行ったのは二週間前。

審査に合格していれば、昨日のうちに連絡が来るはずだった。

そして、さっき本人が言ったとおり、新垣にその連絡はこなかった。

「まあ、食えよ。冷めるぞ」
「うん……」
「おごりなんだから、ありがたがって食えよ」
192 :ROLL :2005/07/17(日) 04:42
今日、登校したら新垣があまりにも落ち込んでいたので、少なからず気心の知れている
俺はなんだか可哀想に思って、親切にも慰めるためにおごりでマックをご馳走して
やった。
週二回、コンビニのバイトをしているとはいえ、ビッグマックセットにアップルパイまで
つけてやるのは、遊び盛りの高校二年生にとってはちょっとした痛手だ。
そこまでしてやっているのに、新垣の表情は晴れない。

もそもそとビッグマックをかじる新垣。なんだか見てると苛々した。
普段のこいつは、こんな暗いヤツじゃない。
もっと明るくて、面倒見がよくて、サッパリした性格のいいヤツだ。

こんなふうになるなら、いっそオーディションなんて受けなきゃよかったんだ。
元々、俺は反対していたのだ。
どうせ受かるわけないんだから、余計なショックをくらわないようにと忠告して
やったのに、新垣はそれを押し切って履歴書と歌を吹き込んだテープを送ってしまった。

その結果がこれだ。

「……あんたの言ってたこと、当たっちゃったね。
やっぱりあたしなんか、アイドルになれるわけないか」

唇の端にタマネギのかけらをつけた新垣が弱々しく笑った。
193 :ROLL :2005/07/17(日) 04:43
「なん、やめろよそういうの。
二次審査までは行ったんだから、結構いいとこまでいけてたんだろ」

俺の方が正しかったのに、今の新垣を見ていると勝ち誇るわけにもいかず、
慰めてやったりなんかしている。
ああ、俺ってなんていい奴なんだ。

新垣は、寂しそうにも見える笑い方で、小さく首を傾げた。

なんだか調子が狂う。いつもならこんな弱音なんて吐かないヤツなのに。
どっちかっていうと俺が落ち込んでる時に、バーンと檄を入れてくるようなのが
合ってるのだ。

言葉が見つからなくて、ズーズー音を立てながらコーラをすする。

「あーあ。うまくいけば、かっちと一緒に歌ったりできたのになー」

俺が気まずくなったのを察したのか、新垣は空元気そのものな声でひとり言った。
194 :ROLL :2005/07/17(日) 04:43
かっちっていうのは、新垣が受けたオーディションの迎え先であるグループ、
『ローリング娘。』の看板メンバーだ。
俺はそのグループについて詳しくないが、嵯根かつみという名前くらいは知っていた。
新垣はそのかっちの大ファンらしく、コンサートにはそいつの顔写真がプリントされた
うちわを振り回してるんだそうだ。

あと俺が知ってるのは、もう一人の看板である湖東沙紀(通称こっちん)くらいだが、
正面でアップルパイを食べ始めているこいつは、全員の生年月日と出身地と
好きな食べ物と特技を暗記している。
馬鹿だ。そんなのを覚えるくらいなら、英単語のひとつでも覚えればいいのに。

とはいえ、俺の方もプロ野球の選手なら20人や30人、顔と名前を一致させて、背番号まで
そらで言えるのだが。
実はあまり変わらないのかもしれない。

ちなみに『ローリング娘。』ってのは、「ローリングソバットのようにキレのある
グループ」ってことで、プロデューサーが名付けたのだと、新垣に聞いた。
そのプロデューサーも相当馬鹿だ。
195 :ROLL :2005/07/17(日) 04:43
「受かりたかったなあ……」

ボソッと新垣が呟いて、俺は凝りもせず、コーラをズーズー吸った。

目の前のこいつは、古くから付き合いのある、ダブルマックセットとアップルパイを
おごって慰めてやっている野球部(補欠)のイケメン(自称)をほっといて、ひとり
ぼんやりと溜息をついていた。




 
196 :ROLL :2005/07/17(日) 04:43
新垣と知り合ったのは中三の春、クラス替えで同じクラスになってからだ。
席は窓際と廊下側で離れていたが、出席番号が並んでいたので日直の仕事とかを
一緒にやってるうちに、よく話すようになった。

その頃の俺といえば野球に青春を捧げていて、正直に言えば女の子とまともに
喋ったこともなかったのだが、新垣はあまり女っぽくなかったので気楽に話せた。

最初の頃は本当に、単なる友達だった。
しかし、いかんせん野球に青春を捧げていた、女に免疫のない童貞のこと。
仲良くなった女友達に対して、ちょっとそういう方向に感情が動くのも仕方ないことだ。

同じ野球部に彼女持ちのレギュラーがいて、ずっと羨ましく思ってたことも、
俺の感情に拍車をかけた。
補欠だが、一応ベンチ入りはしてるし、練習試合とかならバッターボックスに入る
チャンスもあった。
やはりそんな時、彼女からの声援があったりしてほしいじゃないか。

が、それからの三年間、新垣にそういうことを伝えたことはない。
匂わせることすらなく、単なる友達として接している。

今の関係が気楽だってのがでかい。
うまくいってもいかなくても、きっと俺たちの関係は、今とは違うものになって
しまうだろう。
それを惜しむ気持ちがあって、俺は新垣に言えずにいた。
197 :ROLL :2005/07/17(日) 04:44
悶々とした健全な悩みを抱えながらも日々は過ぎていく。

今日は土曜だ。コンビニのバイトが入っている。
野球部の練習を終えてから一度帰宅し、シャワーを浴びて着替えてからバイト先に向かう。
接客する以上、清潔感は大事だ。

裏口からコンビニに入って、シフトを交代する人に挨拶してから制服を着込む。
身体作りは好きなほうなので、身長はそれほど高くないものに、俺の体格は見るからに
ガッシリしている。
それを買われて、日が暮れてから深夜までのシフトに入れてもらっていた。

レジに出ると数人の客がたむろっていた。中途半端な時間のせいか、そんなに忙しくは
ならなそうだった。

ピンポーンと、自動ドアに連動しているチャイムが鳴って、俺は「いらっしゃいませ」と
声を上げた。
入ってきた客の方へ目をやると、なんと新垣だった。
新垣も俺を見つけて「あっ」と口を開ける。

店内は混んでいない。新垣はまっすぐレジまで来ると、カウンター越しに俺と向き合った。
198 :ROLL :2005/07/17(日) 04:44
「オッス。ここでバイトしてたんだ」
「ああ、もう半年くらいやってんぞ」
「へー。あんまりこの時間に出歩かないからさぁ、知らなかった」
「ま、週二日だけだしな」

店長もマネージャーも、もう帰っている。もう一人の店員は俺と同じバイトだから、
こんなふうに私語をしていても叱られる心配はない。

俺はフライドポテトやからあげを入れるためのビニール袋を、商品を入れやすいように
細くまとめていきながら新垣と会話をしていた。
こういうのを用意しておくと、会計の時に便利なのだ。

「おまえこそどうしたんだよ、こんな時間に」
「ん、化粧水切らしちゃって。もうスーパーも薬局も閉まっちゃってるでしょ?」
「なんだよ、化粧なんてしてんのか」
「違うよ。顔洗った後とかつっぱるのがヤで、化粧水だけ叩いてんの」

新垣はなぜか、ちょっとだけ慌てた様子で言った。

「ほー。女って大変だな」

俺なんてヒゲを剃った後にも何もしてないってのに。

新垣は化粧水だけ買って帰っていった。「あんたもちょっとは気ぃ遣ってみたら?」と
去り際に言われた。
気ぃ遣えって言われても、頭は部の規則で坊主だし、眉毛剃るのはなんとなく男らしく
ない気がして嫌だし、ニキビ跡はどうしようもないだろうし、服装だってそんなに
悪くはない、と思う。

いったいどこに気ぃ遣えってんだ。

とりあえず、上がる時に、髭剃り後のクリームだけ買ってみた。
199 :ROLL :2005/07/17(日) 04:44


 
200 :ROLL :2005/07/17(日) 04:44
バイトと部活で疲れていたせいか寝坊をしてしまい、俺は全力で自転車を漕いでいた。
途中で新垣を見つける。あいつは自分の足で走っていた。

「おーい! にいがーき!」

ペダルを漕ぐ足を止めないまま、大声で呼びかける。
新垣が振り返って、俺を見つけると片手を大きく振り上げた。

俺は新垣に追いつくと、走る速さに合わせて自転車の速度を調整して隣に並んだ。

「おい、後ろ乗れ」
「え、いいよ」
「いいから。遅刻すんぞ」

腕を掴んで止めて押し切る。
新垣はちょっと迷ったようだが、結局自転車の後輪にある突起に足を乗せた。

女の子にしても小柄だといえ、人をひとり乗せてペダルを漕ぐのは楽じゃない。

ぜえぜえ言いながら校門の見える位置まで辿り着き、そのまま校門をくぐり抜けようと
したところで新垣が俺の肩をバンバン叩いた。
201 :ROLL :2005/07/17(日) 04:44
「ちょっと、止めて!」
「あぁ?」
「いやもう止めてってば!」

わけがわからないまま俺は自転車のブレーキを握った。
キキッと自転車が急停止するのと同時に、新垣は後ろから飛び降り、「ありがとっ」と
忙しい口調で俺に告げて走り去ってしまった。

「……なんだぁ?」

もしかして、俺との間に妙な噂を立てられるのを嫌がったんだろうか。
それはちょっとショックだ。しかし、女ってのはそういうのを気にするらしいから、
しょうがないのかもしれない。

軽くなった自転車を進めていくと、さっきまで全力疾走していたはずの新垣が静かに
歩いていた。
遅刻寸前だってのに、なにやってんだ?

校門では、週番がチェックをしている。風紀委員の……なんてヤツだっけ、たしか
隣のクラスのヤツだ。

俺は新垣を追い越して校門に入った。
何の気なしに新垣の方へ振り向くと、あいつは週番に軽く会釈をしながら挨拶していた。
202 :ROLL :2005/07/17(日) 04:45
――――おいおい。ちょっと待ってくれよ。

女に免疫がないし、いまだに新垣以外の女友達もいない俺だが、いくらなんでも
あんな顔してりゃわかるって。
新垣の顔は、俺が一度も見た事のない顔だった。

『単なる友達』の俺には、一度もしたことのない、柔らかな笑顔だった。

どうせショックを受けるんだからしない方がいい。
俺が新垣に言ったことだ。
でも、こりゃもう後の祭りってやつだろ。
自転車に乗せてなんかやらなきゃよかったって、思ったってもう遅い。


 
203 :ROLL :2005/07/17(日) 04:45
知らず知らず、溜息が洩れる。
放課後になるまでその状態から立ち直れなかった。
そうしたら当然、新垣だって気付くわけで、心配そうな顔で近づいてきた。

「ちょっと、どうしたの?」
「……なんでもねえよ」

お前に好きな奴がいたって知ってショックだった、なんて言えるわけがない。
ぶっきらぼうに答えて、新垣から目をそらす。

「元気ないっぽいけど」
「なんでないって」
「そう?」

いいからさっさと帰れよ。俺はいま、お前といたくないんだよ。

そんな俺の願いむなしく、新垣はパンと手を合わせて、はしゃいだ声を上げた。

「よし、今日は買い物に行こうっ」
「……はあ?」
「こないだは私が元気付けてもらったからさ、今度は私が気晴らしに付き合ってあげるよ」

おいおい、勝手に話進めんな。
買い物っつっても、別に欲しいものなんてないし、金もない。
204 :ROLL :2005/07/17(日) 04:45
そう答えると、新垣は「ウィンドウショッピングでも楽しいもんだよ」と笑った。
ほんとは自分が買い物したいだけなんじゃないのか?

そこで気付いてしまった。
もしかして、これってデートって呼べるもんなんじゃないのか。
まあ新垣の気持ちは置いといて、そう考えたら悪くないと思えてきた。

「しょ、しょうがねえな」
「決まりね」

二カッと笑い、新垣が頷く。

「じゃ、出発」

鞄を持って教室を出て、俺の自転車を駐輪場から引っ張り出し、校門を出るまでは
並んで歩いて、ひとけがなくなってから新垣が自転車の後ろに乗った。

颯爽と走らせてショップの詰め込まれたショッピングモールへ向かう。
特に目的がない、という俺の意見を聞いて、新垣がそこを提案した。
洋服やアクセサリー、CDから本まで揃っているので、目的がなくても退屈しないだろうと
踏んでの選択だった。
205 :ROLL :2005/07/17(日) 04:45
まずはカジュアルファッションのショップを覗く。
わりとリーズナブルなブランドだが、シャツとかけっこういい感じのものが多い。

「ねえねえ、あんたって身長いくつ?」
「え? ……170くらい」

春の身体測定では168.4センチと出ていたが、見上げてたらわからないだろうと
サバを読んだ。
168.4センチは「170くらい」の範疇に入るはずだ。たぶん。

新垣はシャツを何枚か選んで手にすると、俺の身体に一着ずつ当ててきた。

「うーん、ごっついからあんまり明るい色じゃ似合わないね」
「そ、そうか?」
「だからって黒とかじゃますますいかつくなっちゃうし」

新垣は次々とシャツを取っていく。
本気で選んでくれるつもりなんだろうか。
そりゃ嬉しいが、もうちょっと値段とか気にしてほしいと思わなくもない。
206 :ROLL :2005/07/17(日) 04:45
結局新垣は、白っぽいシャツに、青で細いストライプが入ったシャツを選んでくれた。
「なかなか爽やかでいいんじゃないのぉ?」からかうように言われたが、俺も悪い気は
しなかったので、「そう?」と笑った。
値段が俺の財布で収まる数字だったのも助かった。

レジに持っていく時、新垣はもう一着抱えていた。
俺には似合わないと言った、黒のシャツだった。

「これ、プレゼント用に包んでもらえますか?」

俺が会計を済ませた後、新垣は黒いシャツを示して、店員に聞いていた。
メンズだし、俺が買ったのと同じサイズだったから新垣が着るんじゃないだろうとは
思っていた。

贈る相手なんて、俺には関係ないことだ。

「お父さんが来週誕生日なんだ」

だから、関係ねえっつってんだよ。
207 :ROLL :2005/07/17(日) 04:46
それから俺は、不機嫌を悟られないようにゲーセンで遊び、UFOキャッチャーで
取ったぬいぐるみを新垣に渡してやって、コーヒーショップで軽くベーグルを食って、
帰る事にした。

「今日、サンキューな」
「なんのなんの」

新垣は上機嫌だった。家の前まで送ってやったが、その間ずっと、シャツが入った
袋を大事に抱えていた。

わーってるさ。俺は単なる友達で、メンズの洋服買いに付き合わせるのに丁度良くて、
身長が好きな奴と同じくらいだったってだけのことなんだ。

そりゃわかってんだが。
そりゃねえよ、新垣。

そりゃせつねえよ、新垣。
208 :ROLL :2005/07/17(日) 04:46


 
209 :ROLL :2005/07/17(日) 04:46
週が明けた月曜日、新垣はいつもより可愛かった。
別に惚れた欲目とかじゃない。
新垣はうっすらと化粧をしていた。教師に見つかってもそんなにきつくは怒られない
程度のナチュラルメイクだった。

それでも、化粧をしている事に変わりはない。
新垣が少しでも自分を良く見せようとしている事に、変わりないんだ。

いつも使っている鞄の他に、なんだか大事に包まれた紙袋まであるんだから、
もう疑いようがない。

いつぞやの週番に、告白するつもりなんだろう。

「あーあ」

俺は溜息をついて、ビーカーを洗う手を止めた。

ここは化学準備室だ。窓から中庭が見える。中庭はこの学校の告白スポットだった。
おそらく、新垣もそこであいつに想いを伝えるんだろう。

俺は化学教師に準備室の掃除をしたいと、自ら申し出ていた。
しょうがないだろう。平気な顔して部活に出れるほど大人じゃないし、どうしたって
気になってしまうのだ。
210 :ROLL :2005/07/17(日) 04:46
別に邪魔しようってつもりはない。ここは二階だ。叫ぶ程度ならできるが、そんなこと
したら新垣に嫌われてしまう。

ただ、どんなもんなのか見てみたいだけだ。

ビーカーを洗い終えて水を切り、布巾の上に伏せておく。
風紀委員会のミーティングはもう終わったはずだから、そろそろ来る時間だ。

手を拭いて、窓際の壁に張り付く。
そっと下を除くと、新垣はもう来ていた。
キョロキョロとあたりを見回して、用のある相手が来るのを、そして関係ない人間が
来ないのを願っているようだ。

あー、くそ。

五分くらいして、例の週番がやって来た。
身長は俺と同じくらいだが、ガタイは全然違う。秀才タイプというかなんというか、
女みたいに細っこい身体をした奴だった。

新垣はああいうのが好きなのか。そりゃあ俺のことなんか気にもしないはずだ。
声を出さないで笑ってから、悲しくなった。
211 :ROLL :2005/07/17(日) 04:46
「こ、こんにちは」
「どうも」

傍目にもわかるくらい、新垣は緊張していた。
対して、相手はなんとなく余裕がある。こんなところに呼び出されたら、新垣の目的は
もう判ってるだろう。
ひょっとして、今までもこういうシチュエーションを経験してるのか?

新垣はあの袋を抱えている。リボンのついた、丁寧な包装のされたシャツを引き出し、
週番に差し出した。

「あの、今日、誕生日だって聞いたんで……」
「ありがとう。よく知ってたね」
「と、友達が教えてくれまして……」

同い年のやつに使うもんじゃない敬語だ。
俺は腕組みをしながら、テンパっている新垣と余裕しゃくしゃくな週番を見物していた。

「それで……よかったら、私と、あの」

私と、の「と」で、新垣の声が裏返った。
それを笑ったのか、週番の口から小さな笑い声が出てきて、新垣は顔を真っ赤にして
俯いた。

週番はごまかすように咳払いをして、
「ごめんね、嬉しいけどその気持ちには応えられないんだ」
と平坦な口調で言った。

新垣はますます俯いて、プレゼントを差し出していた手を下ろした。
212 :ROLL :2005/07/17(日) 04:47
「ほんとにごめん。じゃあ」

あっさりと、週番は姿を消した。
新垣はその場に立ち尽くしていた。

いてもたってもいられず、俺は化学準備室を飛び出した。

向かう先は……教室だ。

野球部で鍛えた脚力をすべて行使し、誰もいない廊下をひた走る。
速く、一秒でも速く教室に辿り着きたかった。
新垣の鞄は教室に置きっぱなしにしていた。だからあいつは、必ず教室に戻ってくる。

あいつが戻ってくる前に着くのは当たり前として、切れた息を整える時間も必要だ。
俺はただひたすらに走った。

ドアのところに手をかけて身体を止め、勢い良くドアを開けて自分の席に滑り込んだ。
椅子を引き出してどっかと座る。
全力疾走だったうえに、階段を駆け上がったりしたので、ずいぶん呼吸が乱れていた。
深呼吸をして落ち着こうとするが、新垣が戻ってきたらと思うと、いやに気が逸って
なかなか元通りになってくれなかった。
213 :ROLL :2005/07/17(日) 04:47
何度も深呼吸を繰り返し、額に浮かんだ汗も引いた頃、カラカラとかすかな音を立てて
ドアが開き、新垣が教室に入ってきた。
「よう」俺はなんでもないように言った。

「あれ、どうしたの?」

顔を上げた新垣の化粧は崩れていた。新垣自身は気付いていないようだ。
普段は化粧をしないから、そういうことに気が回らないんだろう。

「いや、ちょっとな」
「忘れ物?」
「ま、そんなとこ」

「そっか」新垣は持っていた袋を机に置いて、椅子に腰掛けた。
そのまま机に突っ伏す。俺は黒板を睨みつけたまま黙っていた。

セミの声がうるさかった。失恋なんて秋にするもんだ。
風情も何もあったもんじゃない。

「……ねえ」
「あん?」
「なんか喋ってよ」
「なんかってなんだよ」
「なんでもいいから」

俺は黒板から新垣に視線を移した。
214 :ROLL :2005/07/17(日) 04:47
俺、お前が好きなんだけどな。

俺、ずっとお前が好きだったんだけどな。

毎日ヒゲ剃った後にクリームつけてるし、お前が選んだシャツ、自分で手洗いしてんだ。

オーディション、受けて欲しくなかったんだ。

お前にどっか行ってほしくなかったんだ。

お前に好きな奴がいるって知って、嫌だったんだ。

ごめんな、お前がフラレて、ちょっとホッとしたんだ。
215 :ROLL :2005/07/17(日) 04:47
「……あーあ」

ちくしょう。

「なあ、新垣」
「なに?」
「ダブルマックおごってやろうか」

ま、野球に青春を捧げた童貞が言えることなんて、こんなもんだ。
216 :ROLL :2005/07/17(日) 04:48


――――END
217 :名無し飼育さん :2005/07/19(火) 11:41
君僕のガキさんと彼がこんなところで登場するとは…
相変わらずの複線張りには脱帽です。
HPも見ていますのでこれからも執筆頑張ってください。
218 :匿名 :2005/07/22(金) 08:49
衝撃でした。でもそれは、とても嬉しい方向に。
あちらも、他のも、読んでいました。
きっと、今、一番好きな作者さんだと思います。
ありがとうございました。
219 :名無飼育さん :2005/08/18(木) 11:59
かなり前に書いてたものです。3話が出来ましたので載せさせてください

季節は回る。どれだけ永遠の時間を求めても残念ながら世界には時間が、日本には
四季があり待ち望もうが望まなかろうが暑い日も寒い日も大体同じ位のペースで
やってくるしどれだけ嫌な時間でも何時かは終わりがやってくる。


要はようやくうっとおしい梅雨が終わったたわけで、今じゃ散々待ち望んだ太陽が
嫌というほど顔を見せてくれる夏が来たわけで、僕の高1としての一度っきりの夏
が来たわけで・・・(この長ったらしい説明文も夏の暑さで頭がヤラレテいるわけ
で・・・)


「もう、歩きたくない・・・誰かタクシーか籠を呼んでおくれ。」
今は学校の帰り道、僕はいつものように安倍さんと一緒に帰っている。ちなみに今
のセリフは僕の少し前を歩く安倍さんに僕が言った言葉だ。
「も〜う、家まで後少しでしょ。頑張んなきゃ。」
そうゆう安倍さんは少し足元がぎこちないながらもしっかり歩いている。僕はと
言えば全身筋肉痛でフラフラのガタガタなんだけどな・・・なんだこの差は?
ちなみになんで僕がヒーヒー言ってるかを説明すると夏休みまで後数日と迫っている
今の時期、僕達の所属する陸上部は夏の大会へ向けて追い込みをかけている。
3年生にとっては最後の大会になることもあってか顧問や先輩方の気合の入り方も
尋常じゃない。朝連から放課後の練習まで激しい檄や呻き声や怒声が響きあい入り
たての一年も大体は泣きがでている。もちろん僕もその例外ではなく毎日続くこの
ハードワークに足だけではなく背中も腹筋も筋肉痛で毎日こうして帰り道で安倍さん
に泣きついていたりするわけで・・・(・・・かっこ悪い)
220 :名無飼育さん :2005/08/18(木) 12:03
「先輩達が張り切るのはわかるけどさ・・・高校から陸上やり始めた
僕にはちょっとキツイよ。安倍さんはすごいね先輩達のに付いて行ける
し僕みたいにヘコたれないしさ。」

僕の言葉に安倍さんは大きく首を横に振って否定した。

「ううん、全然!!なっちもけっこーきついよ。でもなっちはさ中学の
ときから陸上やってたからそれなりに筋肉とかペース配分とかが出来て
るだけだよ。ヤス君ももうちょっとしたら筋肉もついて来るし少しは
マシになると思うよ〜。」

そう言いながらも$100万の笑顔を振りまいている。なんかますます
余裕っぽく見えてきた・・・。

「そんなものかな?自分では筋肉痛だけで筋肉ついた感じしないよ。」
「自分じゃ自分の変化なんかはわからないものだよ。大丈夫、ヤス君は
4月のころに比べると大分フォームとかも整ってきたし後は体が慣れて
きたらなっちなんかすぐ追い抜いちゃうよ。」

そんなもんなんだろうか?自分が安倍さんよりもはやく?駄目だ想像で
きない。

「なんかそれ曙がヒョードルに1R、KO勝ちするより難しいような・・・」
「あはは、そんなこと無いよ。ヤス君凄いもん。ホラ、もう家まで後
少しだよ。」

確かに、いつの間にかいつもの別れる交差点まで来ていた。

「あれ、いつの間に?話しながらだと案外早いものだね。」
「うん、それじゃ又明日ね〜。」

そう言いながら安倍さんは走りながらこちらに手を振っている・・・余
裕あんジャン

「うん、またね〜」

僕も手を振り返す。うん、やっぱり。
僕は安倍さんの走っていく後姿を見ながら確信した。やっぱり安倍さん
の走る姿は綺麗で力強い。フォームとか姿勢もそうだが安倍さんの走り
にはなんとなく力強さがある。それくらいは素人の僕でも分かるくらい
だ。
僕は向きを変えると自分の家に向かって歩き出した。・・・やっぱり体
が重い。
さっきは安倍さんと話しながらだから少しは楽だったかも知れないけど
今は体が言うことを聞かない。

そりゃそうだ、駄目馬は目の前に人参でもたらしとかなきゃ走ったりは
しないものだ。
221 :名無飼育さん :2005/08/18(木) 12:07



「へ〜ヤスって大会出るんだ。」
ここは僕の部屋、声の主は前回からまた頻繁にうちに寄り付くように
なった矢口お嬢だ。

「いや、出るかどうかは分からないよ。まだオーダーは発表されてない
し。」

僕はベットの上で寝転びながら矢口の話に答えている。矢口はと言うと
僕がこの前の誕生日に買ってもらったビーズソファーに陣取りふかふか
感を楽しんでいる。・・・いいんだけどね、寝転んでたほうが楽だし・・・
「ふーん、でもあんま部員いないんでしょう?じゃあでる可能性はあるんじゃない?」
矢口は僕が入れた麦茶を啜りながら言った。お嬢よ・・・だからあんた
ミニスカートでゴロゴロすんなや・・・

「かもね。でも僕より速い人はいるからなんか微妙だわ。」
「ふーんそんなもんなんだ。でもまぁ、一度しかない青春ってやつを
謳歌してるじゃん。」

矢口はおどけた喋り方をした。こいつなりに応援してくれてんだろ
うか?からかってるだけ?

「何じゃそりゃ、おばちゃんくさいぞ。」

僕の言葉に矢口は立ち上がるとベットに片足を乗せ僕の目の前にずいっ
と足をだしていきり立った。

「なにをー!!このハリのある肌が目に入らぬか!!こんな足のほそー
ーーーーくてピチピチなおばちゃんがどこにいるんだ。」
「・・・確かに細いねーそれに身長で考えるとスラッとながいねー
身・長・で考えると。」

僕は矢口のほうを見ずに答えた。見れるわけが無いでしょ。見ると見え
るし(シツコイ)

「うっさい馬鹿ー。気にしてるのに〜」

矢口はそう言いながら足をおろすと唸りながら2、3歩後退した。
僕は軽く鼻で笑うとベットから起き上がり軽くストレッチしながら
いった。

「あ〜あ。なんか体動かしたい気分だ。少し散歩しないか?」

僕の言葉に矢口は頬を膨らまし嫌そうな顔をした。昔からの癖だ。

「え〜外熱いじゃん。」

矢口の言い分ももっとも。7月にもなると昼は暑いけど夜も暑い。
心地いい空間なんてクーラーの効いた部屋かどっかのお店ぐらいだ。
もっともここらへんじゃあるのはコンビニか漫画喫茶ぐらいだけど。

「どーせここいても暇だし、寝てばっかだと明日の筋肉痛が更にひどく
なる。ついでに送ってってやっから付き合えよ。」

僕のぶっきらぼうな言い方に矢口は脹らましていた頬から空気を抜きな
がらゆっくりと立ち上がる。

「やれやれ、こんな可愛い子を誘い出す言葉に、暇だから、かよ。男と
してのれーぎってもんがなってないなぁ。」

僕はその言葉に苦笑いで答えた。
222 :名無飼育さん :2005/08/18(木) 17:24
夜の散歩、最近は部活やらなんやらで忙しく(基、疲れ果てて)こうし
てゆっくり歩くのは久しぶりだった。
後ろを歩く矢口のほうを見ると暑そうな顔をしながら自分の手持ち鞄を
漁っている。

「実際こうやって歩くのは久しぶりだな。」

僕は顔を前に向けてぽつりと言った。

「ん〜ほうだね〜。」
矢口はいつの間にか目的の物を見つけたらしくそれを口に咥えたまま
返答した。

「暑かったら吸わない方がいいんじゃねぇの?」

すぐにむっとした声が返ってくる。

「しょうがないじゃん、体に言ってよ〜」
「ニコ中」

騒々しくなった。やはり口は災いの元だな・・・

後ろがまだギャーギャー煩いながらもフラフラと歩いてるうちに案外
遠くのほうまで来ていた。なにやら懐かしい景色。僕は矢口のほうを
振り向いて言った。

「ここ覚えてるか?ガキの頃暴れまくった高台。」

矢口は僕の横までくると同じ方向を見た。子供の頃の遊びを思い出すと
まず一番に思い出すのがここで遊んだことだった。矢口や他の友達と
あの高台からダンボールで下まで滑り降りる。ただそれだけがあの頃は
とても楽しく面白かった。矢口のほうを見ると先ほどまでの不機嫌は
どこに行ったのか微笑みながら懐かしそうな顔をしている。

「ね、少し中はいってみようよ。」

矢口の提案に僕も快く頷く。
昔より外灯が多くなったがあの頃と何も変わっていない。何かむず痒い
気持ちになったが嫌ではない。すると矢口が突然にししっと不思議な
笑い声をだして笑い出した。

「何だよ一体?」
「べーつに〜ただ、あんたさっきから頬緩みっぱなしだよ〜。」

からかうような声で僕の頬を突付きながら矢口が言う。

「おもえもなぁ〜」

調子を合わせるように矢口の頬を軽く抓む。矢口も僕もそのまま声を
潜めて笑いあった。


223 :名無飼育さん :2005/08/18(木) 17:31
「あ〜そういえばさ、昔あの高台の上に行くとたま〜にジュースとか
えっちぃ本とかイロイロ捨ててあったよねぇ。」

確かに合ったホントに・・・イロイロと

「あれってやっぱあそこはカップルの溜まり場なのかナァ〜。」

矢口はさっきの笑みとは性質の違ったニヤニヤとした顔に変わってる。
・・さっきの爽やかさはどこいった。
僕は「かもな」と言いながら高台を見上げた。どうやら矢口の予想は
あたった。

「ほれ、ちょうどいい感じの二人がいるぞ。」
「あーほんとだお熱いね〜全く。しかも両方ジャージ姿だし。ヤンキー
かスポーツマンカップルかな。」

矢口がまたオバチャンモードに入ってきた。僕は軽くため息を吐くと
もう一度高台を見上げる。
そのときちょうど雲に隠れていた月と近くにあった外灯が高台の二人を
照らした。

「あれ、・・・・」

あの人はアベサン、もう一人はオトコノヒト



...ダレですか?

矢口は未だ横でオバチャンモードにはいっていたが僕はそれどころじゃ
なかった。向かいの男と楽しそうに会話をする安倍さんの顔から
どうしても目を逸らす事が出来なかった。体が今まで以上に重くなった。


ナァ・・・ナンナンデスカイ?コノエンシュツハ・・・?コノキモチハ・・・?



224 :名無飼育さん :2005/08/18(木) 17:32
終了ですお邪魔しました。
225 :名無飼育さん :2005/12/12(月) 05:38
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
226 :金曜日のあいぼん :2006/02/11(土) 18:03

金曜日のあいぼん
227 :金曜日のあいぼん :2006/02/11(土) 18:04

詳しい事は言えませんが加護ちゃんことあいぼんが
とある事情によってしばらく活動休止する事になりますた。
なんて神妙な面持ちで言おうとすると事情通ぶった奴が
「ははーん。俺は知ってるよ。その理由を。
あいぼんは栄養を蓄えて冬になると冬眠するのさ。
あのおっぱいは動かぬ証拠!ってぷにょぷにょ動くけどな。うへへ」
なんて酔っ払いの勢いで言うのだけれど実際にはそんな
ラクダみたいな事じゃ無くて簡単に説明すると
まあぶっちゃけ葉巻の類似品を口に咥えただけなんだけね。
って言ってる僕は葉巻とゴマキの違いも良くわからなんだけどさ。
誰か説明してちょんまげ。なんて言ったら本当に誰か来て
「クリントンが浮気したとき葉巻を不倫相手のあそこに挿入した事から
葉巻は男性性器の隠語となったのです」
なんて知識人ぶった顔で平気で嘘を言うんだけど僕は騙されないよ。

えっとなんだっけ?そうそう結論から言うと週間金曜日みたいな名前の
なんとかいう雑誌に載った記事はほぼ間違いないんだよね。
で、なにが間違っているかというと加護ちゃんが手に持っていたのは
煙草なんてものではなかったと言う事ですよ。

実はあれは発煙筒なのれすよ。
228 :金曜日のあいぼん :2006/02/11(土) 18:05

アイドルと言うのは想像以上に危険が危ない仕事で
例えばストーカー。例えばスポンサーとの肉体接待。
まあ肩揉みとかしてお小遣いを貰うんだけどね。
「あいぼん愛い奴じゃ。ワシにも揉ませておくれ」
なんて酔った勢いで襲い掛かるスポンサー。
「あきまへんスポンサーさん。今日はそんなつもりやおまへん」
なんて関西訛りで言いながら必死で抵抗するあいぼん。
でもあいぼんは乙女だし力も無いし運動不足なんで逃げ切れない。
息を切らしながらあいぼんを追うスポンサー。捕まるあいぼん。
あいぼんは泣きながら許しを乞うもスポンサーは許さず。
スポンサーは夢と希望と金と犯罪に塗れて薄汚れた両の手で
あいぼんの柔らかな肩を激しく揉んで揉んで揉みまくった。
なんて感じで肩の揉みあいになったら大変だ。
そんなところパパラッチされちゃったりしたら
『元モー娘。の加護ちゃんレストランで揉み合いになる』
なんてまるで暴力的な事件を巻き込まれたみたいな記事に
なってしまわないとは言い切れないので
気をつけないといけないですよ。って僕は誰に言ってるのかしら。

そうそう実はあれは僕が持たせた発煙筒だったのです。
229 :金曜日のあいぼん :2006/02/11(土) 18:06

知らない人が居たら困るので説明すると
発煙筒とは文字どおり煙を発する筒なんだけど
どうして発煙筒なんか持たせたのかと言うと
ほらあんまり若い子は知らないかも知れないけど
日活ロマンポルノとかそういう映画のセリフであるんだけど
女優さんがえっちをするシーンで「焦げちゃう」って喘ぐんだよね。
淫らでとっても官能的なニュアンスで。
焦げるってのは火の近くや高温の場所に
燃えやすい物がある時に起こる現象なんだけど
格言にある通り、火の無い所に煙はたたない訳ですよ。
逆に言うと煙のあるところに火があるんだよね。
なんて人が真剣に説明してたら脂ぎった中年のおっさんが、
例えるなら加護ちゃんと一緒にいた男みたいな人が
「つまり発煙筒とは男性性器の隠語じゃよ」
なんて僕の説明の段階をいくつか飛ばして言うので
僕はこれ以上説明する気になれないんですね。
230 :金曜日のあいぼん :2006/02/11(土) 18:06

まあ発煙筒。これを持たせた理由は護身ですよ。
加護ちゃんはああ見えて巨乳なんだけど結構ロリっぽいし
色白だし日本人の男の7割くらいが性の対象にする存在だから
僕は心配になったのさ。
でも若い女の子が発煙筒を持ち歩いてたらなんか変じゃん。
それならピンクローターのほうがありえると思うよ。僕は。
オシャレじゃん。まあ見つかったらシャレにならないけどね。
あはっ。ここ笑うところ。笑わなくてもいいけどね。
で、僕は考えたわけさ。女の子が持ち歩いても不自然じゃない物を。
その結論が煙草のパッケージですよ。
天才だと思ったね。それならマッチやライターを持ってても自然だし。
唯一の問題は加護ちゃんが未成年の巨乳の女の子って点だけ。
まあ加護ちゃんはああ見えて大人びたところがあるし
煙草は大麻や覚せい剤みたいに所持してるだけで
捕まるような物じゃないから大丈夫思ったわけよ。
231 :金曜日のあいぼん :2006/02/11(土) 18:07

で、ある日加護ちゃんはスポンサーとお食事に行ったんだけど
僕はその事前に加護ちゃんに説明した訳さ。
「危なくなったらこれに火をつけるんだ。
火がついたら煙が出る。煙を見たら僕が助けに行くよ。いいね?」
僕がヒーローな気分になって真剣な面持ちで説明してるのに
加護ちゃんはなんだか浮かぬ顔。
僕は当然どうしたの?何を心配してるの?って。聞いたさ。
そしたら加護ちゃんは言うのさ。
「あほかぼけ。外やったらええけど室内や地下ならどうするんや」
まあこんなに関西弁じゃなかったけどこんなニュアンスだったよ。
確かにそうだ。加護ちゃんは相方と違ってIQが高そうだな。
まあもうIQがどんなに高くて出れないんだけどね。
あのIQなんとかってクイズ番組には。あはっ。たぶんね。

僕は悩んだよ。仕方ない。スポンサーにお願いしてみる?
「中は嫌や。お願い外に出して」って。あ。うわ。
なんか既にスポンサー契約が成立した後みたいな感じ。
232 :金曜日のあいぼん :2006/02/11(土) 18:08

で、考えたんだけど段々なんだか面倒になって来たから
「もしもの時は室内でも発煙筒を使えばいいよ。
仮にレストランなら店員が慌てて飛んできてくれるだろうし
スポンサーも驚いて手品かなにかと勘違いしちゃって
性欲なんて忘れてお小遣いをくれるかも知れないし
なんて言うの?まあヤバかったら抵抗すればいいよ」
と投げやりに言った。
加護ちゃんは普段は菩薩っぽいくせに今日は不動明王みたいな顔で僕に
「おいおっさん。あんじょう考えてくれな言わすぞ。こらハゲ」
と凄むので仕方なく考えたよ。
貞操の危機時における自衛法について。

まあ先に股間に何か異物を突っ込んでたら
それ以上他には突っ込まれないと思うから
葉巻でも突っ込んでおけばそれで解決すると思うけど
加護ちゃんはアイドルだからイメージもあるだろうし
今から葉巻を用意するのは難しい。
233 :金曜日のあいぼん :2006/02/11(土) 18:10

うぬ。さっそく手詰まりだ。まあいいや。いくら考えても机上の空論。
とりあえずリハーサルしながら考えてみよう。

僕は加護ちゃんに「ぅおぉぉ」と言いながら襲い掛かった。
加護ちゃんは危機を感じてさっとポケットから発煙筒を取り出す。
「うらあ!ダイナマイトが百五十屯やでわりゃあ!」
って僕も良くわかんないからそういうのは止めて。
まあ発煙筒を出すと。でマッチで火をつけると。
どうしてライターではなくマッチかというと
なんかライターって煙草に火をつける道具って気がしない?
マッチって仏壇でご先祖様にお線香。ってイメージしない?
しないか?でも加護ちゃんライターの火をつけるの上手だね。
そりゃ毎日使ってたら上手くもなるよね。あはは。やっぱマッチね。
でも最近の発煙筒って火が要るのかしら?
まいいやこれは火をつけるタイプだしね。
234 :金曜日のあいぼん :2006/02/11(土) 18:10

加護ちゃんは困ったよ。そりゃそうだ。
マッチは両手を使わないと火をつけられないし
発煙筒も持たなきゃいけない。
実はね今まで黙ってたけど僕は手が3本あるんだ。
見せようか?え?いいの。どうせちんちんだろうって。
加護ちゃん困るなあその黒柳さんみたいな先回りトーク。
そうだ下ネタついでに良いアイデアが浮かんだよ。
発煙筒をその大きなおっぱいで挟んだらどうだい?
加護ちゃんは発煙筒を挟むがために巨乳になったんだよ。
そうに違いない。え?違う?男の人に揉んで貰うためにあるの?
加護ちゃんいいなあ。その若者らしい核心をついた発言。
でもそういうのはテレビでは禁止だよ。メルヘンメルヘン。

で、試行錯誤の末、発煙筒を口で咥える事にしたんだけど
それに火をつけてスポンサーを威嚇しているところを
パパラッチに盗み撮りされてしまって後の祭り。なむなむ。
235 :金曜日のあいぼん :2006/02/11(土) 18:11

236 :金曜日のあいぼん :2006/02/11(土) 18:12
あいぼんさんおめでとう。



誕生日スレが無かったんでここに貼ります。
素敵な大人になってください。
237 :名無飼育さん :2006/02/11(土) 18:13

238 :匿名 :2006/04/26(水) 00:30
美勇伝の新曲PVを観て。
239 :匿名 :2006/04/26(水) 00:31
それは梨華がキッチンへお茶の支度をに立ったときだった。
彼女が持ってきたDVDをリビングで見ていて、彼女の――正確には彼女たちだけど――艶やかな姿を楽しんでいた。
それはそう珍しいことじゃなくて、彼女はとある一件があって以来、頻繁に自分の仕事が形になったものを持ってくる。
僕は、ふと立ち上がってキッチンの彼女をしばらく黙ってのぞき見ていた。

240 :匿名 :2006/04/26(水) 00:32

「んもぅ」

急に振り返った梨華が“怒ってるんだぞ”って見せるように、小さな手を握って振り上げる。
僕は自分の行動を見咎められたことにばつが悪くなって、謝罪の代わりに笑って見せた。

「なぁに? さっきからジッと見て」
「っ……」

すぐに手を下ろした梨華が、笑いながら聞いてきた。
僕は自分の感情を口にしかけたけれど、あまりに子供じみた気持ちだったから言葉にするのをやめてしまった。
241 :匿名 :2006/04/26(水) 00:32

「なんか言いかけたでしょ。ちゃんと話して」
「いや、その……特にたいしたことじゃないんだ」

ありふれた言い逃れをしてごまかそうと思った僕。
僕を見つめてニッコリと口角をあげて笑ってみせた梨華。

「約束でしょ?」
「……いや、だけど」
「“約束”、したもんね」
「したけど……」
「ね?」

敵わなかった。
ニッコリと微笑むその笑顔に。
なによりも“約束”という言葉に。
それが心の底から求めているのではないと解っていても、それでも僕は逆らうことはできなかった。
242 :匿名 :2006/04/26(水) 00:33

「いやだから……あのね」
「ん?」

笑顔のままで、小鳥のように首をかしげて喉を鳴らす問いかけ。
それが僕にどれほどの効果があるのか、知っててやってるのも解ってる。
彼女は無邪気に卑怯で、狡猾に愛らしかった。

「こないだもそうだったんだけどさ」

僕は未だ流れ続けている彼女たちのDVDを指さして言った。
彼女はヒョイと僕の身体の向こうをのぞき込んで、“それが?”と言いたげな顔だ。

「新曲なんだよね?」
「そうだよ。まだ売ってないんだからね」
「ありがとう。いや、そうじゃなくて」
「なあに?」
「だからね、その、い……」
「い?」
「衣装がさ、きわどいんじゃないかな」
「あっ……」

梨華は小さな声を上げて、恥ずかしそうに目線をそらした。
口に出してこそしまったものの、その後の展開なんてなにも考えてなかった僕は困ったという代わりに腰に手をやる。

243 :匿名 :2006/04/26(水) 00:33

「いや、ごめん、忘れて」
「えっと……」
「気にしないように。解った?」

あえて話を変えようと言ったこの言葉が、致命傷になったと気がついた。
梨華は照れくさそうにしていた表情を、ゆっくりと違う種類のものに変えていく。
それは悪い言い方だけど、こう……しまりのない表情というべきものだった。
とろけてしまいそうなくらい嬉しげな顔で笑う梨華は、僕の指に自分の指を絡ませ、くねくねと身体を揺らせる。

「それはぁ、もしかして……ヤキモチぃ?」
「……違いますぅ」
「またまたぁ」
「違う」
「正直にぃ、ほら、言ってごらんなさい?」

こうなってくると、この娘は一味違うテンションで僕を攻めてくる。
244 :匿名 :2006/04/26(水) 00:35
だけど、逆にこんな状況になれば、僕が落ち着いてくるということを彼女はまだ学習してないらしい。
黙ってされるがままでいる僕を、動揺してるとか、困っていると受け取っている彼女は、僕の手ごと腕を振り、さも楽しそうに話してくる。

「そっかぁ、へえ〜……ヤキモチだぁ。ふふっ♪」
「……そう」
「え?」
「そうなんだ。僕は梨華のあんな姿をみんなに見せたくないんだ」
「え? ち、ちょっ――」

こうするとこうなる。
とても解りやすい反応は、だからこそ好ましく愛おしいと感じさせてくれる。
今まで自分の中に、そういった嗜好があるとは思っていなかったけれど、梨華だからこそだろうか、僕は僅かにサディスティックな顔を浮き上がらせる。

「誰にも見せたくない。僕以外の誰にも。ファンクラブ限定だろうがそんなの知ったこっちゃないんだ。僕は……」
「た、拓己? そんな……」
「ましてやこんな、ビデオクリップとして出回るなんて……気が狂いそうになるんだっ」
「で、でも……だって」

彼女は困惑しながらも、喜びを顔ににじませて、その表情と同じように、艶のある唇から出る言葉も複雑な色合いをしていた。
ここらでひいてあげようと、僕は表情を緩ませて、両手に余裕で収まる梨華の腰に腕を廻した。

245 :匿名 :2006/04/26(水) 00:36

「あっ、ん……」
「ごめん、ウソ」
「え……?」

腰に廻した腕のせいで、少し反り気味の姿勢で上目遣い。
これは意図してのものではないらしい。

「それだけでそんな気持ちになってたら、梨華と付き合ってなんかいられないだろ?」
「そ、そう……?」
「ん。それは理解してるつもりだから。大丈夫」
「そ〜お?」
「うん」
「……よかった。ホントにそうだったらどうしようかと思っちゃったもん」

腕の中で笑顔を浮かべている梨華は、本当にそんな心配をしていたらしくて、心からホッとしたという柔らかな笑顔。
246 :匿名 :2006/04/26(水) 00:36
僕はそんな彼女を見ているうちに、“あぁ”と、どこかそれが当然だというように口を開いた。

「嫉妬深いなんて思われたくないから言わなかったけど、実は少しだけ思ってる」
「え?」
「ちょっと他の人には見せたくないなって」

笑いながらそう話した僕は、どうも複雑な顔をしていたのだろうか。
梨華は小さく吹き出して「んっ」と微かに頷いた。

「なに?」
「ううん。可愛いなぁって思ったの」
「…………」

なにも言えずにいる僕を見て、腕の中で身体を揺らすくらいに笑いはじめる梨華は子供みたいに可愛かった。
でも……口元を押さえた手の隙間からちらちらと垣間見える唇の艶が、どうにも抑えがたい欲求を湧き上がらせた。

「ふふっ……っ、ちょ、ちょっと、待っ……んっ」

湧き上がった欲求は、火にかけられたヤカンが笛のように鳴りだすまで消えてはくれなかった。
247 :匿名 :2006/04/26(水) 00:36



248 :匿名 :2006/04/26(水) 00:37

ではまたいつか。
249 :お好み焼き :2006/05/22(月) 18:39


「つーかさ、アンタ分かってんの?」


ぺしっとそれをひっくり返す音。
ジュージューと香ばしい匂いがしてくる。
小さなヘラでピシッと指差された。
整った顔の眉間に皺が寄っている。




「好きな子こういうトコに誘ったら後悔するよ」


そんな事をでかい声で言うもんだから、
それまで騒がしかった辺りが一瞬だけ水を打ったように静かになった。


普通その場で言う事ではないだろう。
その中にはカップルも居るのに。
それは彼らに対して失礼である。


だけどそういう事を平然とやってのけるのがこの女…藤本美貴だ。



俺はその場の空気に
耐えられなくなって何も言えずに俯いた。
250 :お好み焼き :2006/05/22(月) 18:40

店を出ると辺りはすっかり暗くなっていた。
夏が迫っているとはいえやはり夜が近づくと少し肌寒い。
隣では寒がりの美貴が小さくくしゃみをしていた。
その美貴を横目で見ながらさっきの事を思い出す。


「てか何で?」
「んー?」

さっき言えなかった疑問詞を鼻を啜る美貴に
ぶつけてみると美貴は不思議そうに首を傾げた。
その仕草がかわいらしくて、一瞬だけときめいてしまったのは秘密だ。


思えば俺が美貴のことを好きになったのは
こういうふとした瞬間だったと思う。

普段は綺麗なその顔に反して男らしくてサバサバしてるくせに
たまにこうやって可愛いところを見せるから。
こいつのこういうところは本当に、ずるい。

どうせ、美貴は俺の事なんかこれっぽちも
意識していないのだろうけれど。

つい美貴の顔をじっと見ていると美貴が眉間に皺を寄せ始めて
なんだよ気になるだろこのウスノロというような顔に
なってきたので慌てて口を開く。



「さっきの、お好み焼き屋で」


もう一つ言葉を付け足すと
美貴はああというように何度も頷いた。


何だろうと俺は少し身構える。
すると美貴は俺の目をじっと見て口を開いた。
ドキッとして美貴の顔を見つめ返す俺に投げつけられた美貴の言葉は、
しかし、俺を愕然とさせるものだった。

251 :お好み焼き :2006/05/22(月) 18:41








「だって歯に青ノリつくじゃん」







そう、美貴はあっけらかんと
デリカシーも何もない言葉を
当たり前の事を言うような顔で言った。

252 :お好み焼き :2006/05/22(月) 18:43

「…は?」
「アンタ見たい? 好きな子の歯に青ノリがついてんの」
「……………」
「だってどんなに可愛くても笑ったら歯に青ノリついてるんだよ?」
「…それはちょっと……」
「でしょ? だからやめとけってんの」


項垂れる俺をよそに美貴は
アハハハハと豪快に笑っている。

ちくしょうこの女、と涙目で
美貴を見たけれど美貴は笑い上戸なところが
あるからそれには気づかないまま笑いっぱなしだった。

それを見て俺は何かそういう状況じゃないはずなんだけど、
楽しそうに笑う美貴の横顔が月明かりに照らされて綺麗だと思った。

正直俺はガサツな方なので、
美意識とかそういうのはあまり持ち合わせていないが
それは本当に、とてもとても綺麗だと素直にそう思えた。

綺麗という言葉は、こういうときの為にあるものだろうと思う。
この言葉を作った先人達はこんなに切ない思いを抱えただろうか。

月明かりの少しひやりとした夜の中で
美貴はとてもとても綺麗に笑っていた。

253 :お好み焼き :2006/05/22(月) 18:44

それは、
本当に、
とても、
綺麗で。



だから、思わず口に出してしまった。

254 :お好み焼き :2006/05/22(月) 18:45

「…なぁ美貴」
「んー? 何ー?」
「…俺はお前の歯に青ノリがついてても構わないぞ」
「………はぁ? 何それサイテー、美貴が嫌だっつの」

ありえなーいなんて言いながら
相変わらず楽しそうに笑う美貴には
俺のさり気ない告白には気づく気配も無い。
もちろん、俺が内心ヘコんでいる事にも。
分かってるさ、いつものことだ。
255 :お好み焼き :2006/05/22(月) 18:45

「あ」

少しいじけていると俺の半歩前を歩いていた
美貴が何かを思いついたようにこっちを振り返った。
何だろうと俺が顔をあげると美貴はにっこり笑って言う。
それはそれはものすごく可愛い顔で。



「でも美貴はあんたの歯に青ノリついてたらすっごい嫌だな」



そうやって、情け容赦のない事を
笑顔で言ってくる美貴は無意識のうちで
とことん俺に対してトドメを刺してくる。
256 :お好み焼き :2006/05/22(月) 18:46

しかし、俺はこのくらいではめげない。
というか、この程度でめげていたら
ハナっから美貴の事を好きにはなれないと思う。


…とは言っても、
やっぱり悲しくなって
しまうのは仕方の無い事で。


相変わらず俺の事を見ない美貴に。
相変わらず空回りしてばかりの俺に。
相変わらず輝き続ける月の光に。


今度からはもうお好み焼きに
美貴を誘うのはやめようと
心の中で悔し涙を落としながら
固く拳を握る俺が居た。



終わり。
257 :名無飼育さん :2006/05/23(火) 06:09
>>238 美勇伝の新曲PVを観て
これは・・・倉庫の続きなのですね。
PV、僕もそう思いましたw

>>249 お好み焼き
さりげない相思相愛っぷりが素敵です(萌
続きキボーですw
258 :名無飼育さん :2006/05/24(水) 15:07
拓巳って……美容師さんのの続きですか!?
259 :名無飼育さん :2006/05/27(土) 14:20
>>258
そうでしょうね
まだ続いたりするんでしょうか
260 :愛と誠 :2006/10/05(木) 17:02
高橋は『秘密基地』に急ぐ。

― 久しぶりだな

吉澤さんから鍵を借りればいいんだけど・・・
あの人の性癖はちょっとついてけない。
ふつう私が石川さんから借りるんだけど、
きょうはさゆが借りれたみたい。

中澤さんがどういう手段を使ったのか知らないけど、
個人レッスン場という名目で確保したの隠れ家。
関連会社が所有しているワンルームマンション。
5部屋も確保できる中澤さんって凄い!

中澤さん自身は、このごろ別のいい場所を手に入れたみたい。
それで私も自由に使えるようになった。
261 :愛と誠 :2006/10/05(木) 17:05
部屋のチャイムを鳴らす。

「さゆ、開けて。」
「どうぞ、愛ちゃん」

さゆみはバスローブを着ていた。

「シャワー浴びるね。」

返答を待つことなく、愛は風呂のほうに向かう。


シャワーを浴びて部屋に行くと、さゆみは既にベッドに横たわっていた。
ベッドの脇に座るとさゆみが身体を起こす。
掛けていたタオルケットがはだけて、胸が露わになる。

「しないの?」
「したいの?」
「だから来てるんだけど。」
「しなよ。自分で。」
「えっ?」
「ほら、もう勃ってるじゃん。」

さゆみの乳首を摘むと身体が反応する。

「はぁっ。」
「ほら、自分でやってみな。」

胸を揉みながら悶えているさゆみの表情を楽しむ。

「したことあるでしょ?やってみて、見たいし。」

揉んでいた手を放し促す。

「しないの?」

さゆみはしばらく見つめていたが、我慢できなくなったのか、
自分の胸に手を置き足を少し開き、もう片方の手をそこに伸ばした。

「あぁっ・・・んっ・・・。」

さゆみの掌が胸を揉み、そこに入れてる指は激しく動きだす。

「あっ、あっ。」
「気持ちよさそう。」
「やぁぁっ、んっ。」

愛はさゆみの足を大きく開かせ、正面からその行為を見た。

「一回、自分で逝ってね。したらしてあげるから。」

胸を揉む手が、そこをかき混ぜる手が激しくなる。

「さゆ、すごいー。」
「あぁっ、あっ、あぁイクっあっあっ、ゃぁぁっ。」

そこから透明の液体が噴出したのと同時にさゆみが逝った。
愛はさゆみの身体を起こすと少し離れた。

「さゆ、脚開いて。」

返事を待たずに、さゆみの膝をぐいと広げた。

「ああ……」

すると茂みの下からピンクの割れ目があらわになる。
愛の右足が伸びていって、さゆみの股間に近づいていった。


足の親指がさゆみのあそこにぐいっと押し当てられた。

「あっ!」

指は不器用に上下しながら浸入口を捜す。

じゅぷっ、

と音を立てて乱暴に入ってきた。

「ふあぁぁ!」

手とは違って手加減のきかない力強さで、足の指が押し入ってくる。
足の指は付け根まで入っていた。
長さこそ足りないが、もぞもぞと中で動き回り、
そのたびにさゆみは悶えてしまう。
ちょん、と蹴るように指を突き上げる。
さゆみは仰け反らせてしまう。
愛はようやく指を抜いた。
じゅぽんっ、いやらしい音が鳴る。

「ご褒美をあげる。」

愛は右足を持ち上げてべたべたに濡れた指をさゆみの口元に突き出した。

「これ、舐めなさい。」
「え?」
「何してんのよ!」
「愛ちゃん……むぅぅぅ。」

愛は指を強引に口に押し込んだ。
さゆみは涙を浮かべながら愛を見ていたが、

ちゅぱ……れろ…ちゃぷ……

足の指を舐め出した。
さゆみはすこしづつ頬が紅潮していく。

「もういいわ。」

愛は足を元に戻す、そして近づく。
脱力してベッドに横たわるさゆみの横に愛はひったりと寄り添う。
262 :愛と誠 :2006/10/05(木) 17:08
その数日後、愛は男の子を連れていた。

― 桃ちゃんに感謝しなくちゃ

桃子に友達の弟を紹介してもらったのが、ここにいる誠だ。
さゆみも佐紀に同じように紹介してもらったようだ。
ふたりでどちらが「白馬の王子様」に相応しい男の子に仕立てられるか、
競うようにあの『秘密基地』に連れ込んでいる。


下で仰向けになっている誠、その股間に顔を埋めて身体を逆にして四つん這いになっている愛。
愛の口の中で膨らみ続ける誠の肉棒、愛のあそこに誠が必死に舌を這わしている。
誠は快感に流されながらも、愛の腰を掴み、愛液で溢れるあそこを舐め回している。
愛は肉棒の先端の粘膜に舌を絡ませると、そこがピクピクし始めた。

「うっ…はぁ…逝くっ・・・」

誠が息を漏らすと、愛は脈打ちだした肉棒の根元を両手で握り締め、
口いっぱいに肉棒を咥えこむ。
次の瞬間、誠は愛の口の中に射精する。
愛はそれをすべて口の中に含むと身体を反転させる。
そして誠の頭を抱えると唇を合わせる。
愛は口腔内のすべてを誠に注ぎ込む。
誠の口の中で愛液と精液が混じり合う。

「どぉ、おいしい?全部飲んでね。」

誠はしばらく見つめていたが、観念すると目を閉じて飲み込む。

「はいよくできました!」

愛は再び唇を合わせると、舌を強引に割り込んでくる。
混ざり合った汁の残滓を舌で絡めとると、それを味わう。
すると誠の舌も愛の口の中に侵入して、舌と舌を絡める。
互いに口腔内を味わいピチャピチャと音をさせながら唇を舐めまわす。
誠の中の熱が高まってきたところでふいに愛の唇が離れた。
263 :愛と誠 :2006/10/05(木) 17:09
これから先が本格的な調教だと気合を入れた愛は、誠の口に唇を落とすと、
愛は誠の下半身のほうに顔を移動する。
口は玉袋のほうに舌を這わせていく。
そして口に含むと甘い飴玉のように舌で転がしてみる。
萎えていた肉棒が硬くなり始めると裏筋を舐め上げてコンドームをはめる。
愛は誠のほうに振り向くと腰を降ろしていく。

「……ん」

愛は腰を上下に動かすとそれに反応するように誠も腰を突き上げる。

「あぁ、愛ちゃ・・・うぅうッ・・・」
「はぁ、まだ・・・だめ・・・」

愛は不意に腰を浮かす。
そしてまた腰を沈めると、右足を伸ばして、誠の半開きの口元に持っていく。

「指全部、舐めて。」

誠は愛の指を小指から順に親指まで丹念に舌を遣って舐めていく。
愛の右足の指が唾液でべとべとになると、
右足を引っ込めて左足を伸ばす。

「こっちも舐めて。」

誠は左足の指も同じように丹念に舌を遣って舐めていく。
すると愛は誠の肉棒を抜いて腰をあげた。
誠は不満そうな顔をしていたが、愛は無視してシャワーを浴びにいく。

― 男に甘い顔をするとつけあがるからね。
264 :愛と誠 :2006/10/05(木) 17:10

*******************************************
265 :愛と誠 :2006/10/05(木) 17:11
ベッドの上で梨華はキスをしながら、愛の服を脱がしていく。
すべてを剥ぎ取ると梨華は愛の顔をを見て微笑み、
立ち上がってソファにかかっていた布を持ってきた。
そして愛の目を布で覆った。
さらに愛の手首をそれぞれベッドの端に括り付ける。

「梨華ちゃん・・・重ちゃんと何かあった?」
「何もないわよ!」

―――うそだ!

愛は知っていた、梨華がこんなことをするのは、さゆみに反撃を食らったんだ。
普段は梨華がさゆみを一方的に攻めてばかりだけど、ふいに攻められてしまうことがあるのだ。
そうすると愛に対して道具を使ったりするのだ。
でももとの原因は愛にある。
愛とさゆみは互いに攻めたり、攻められたりを繰り返してるけど、
時々愛は一方的に攻めるだけで終わってしまうことがある。
するとその不満が梨華にむかうのである。
それを知っているから、愛は内心笑ってしまうのである。
そして梨華の性的刺激に心をときめかすのだ。
しかしだいだい何をするかはわかっている。
氷の解けた雫を乳房の真ん中や股間の敏感なところに落としていく。
そしてその欠片で敏感になったところを撫で回していくのだ。
266 :愛と誠 :2006/10/05(木) 17:12
梨華は愛の両足を広げた。

ブウウウウゥン

「・・・?」

下から何か小さな機械の音が聞こえてくる。
音にベッドの上の亀ちゃんの身体がビクいた。

「いしかわさん・・・?」
「石川さんじゃない!!」

―――この隠れ家では、愛称で呼び合う決まりだった!

「いっきまーす!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

愛のあそこは、突然強い振動に見舞われる。
あそこの刺激が電流となって、
全身を震わせたみたいだった。
身体ががくがくと震えはじめる。
梨華は愛の膝の裏を持ち上げて、
お尻を左右に開いて、そこに小さな機械を突っ込む。
さらに愛液でぐちょぐちょになったところにも挿入される。

「ひゃあ、愛ちゃんどんどん入っていくよ。」
「やぁぁっぁあっ。」

身体はどんどん異物を受け入れてしまう。
それが『愛』の中で小刻みに震えて、快感の波となって愛を襲った。
身体を捩り逃れようとするが、梨華は愛の尻に舌を這わす。

「やぁぁだめっ、あっ、あっ・・・。」
「ん?気持ちいでしょ。」
「よくない、嫌!」
「じゃぁ別のことする。」

梨華は愛の目隠しをとる。
そして愛に何かを咥えさせた。

―――これは?

「おしゃぶり、好きなだけしゃぶっていいよ。」

確かに口内にはゴムのような柔らかいものが挿入されている。
しかし取っ手の部分は、異様に太く長い。

―――何よこれ・・・

「よいしょ!」

梨華が愛の顔にまたがった。
そして取っ手の先に自分の秘部をあてがった。

「ああん・・・気持ちいい!」

梨華はゆっくりゆっくり腰を降ろしていく。
愛の口から生えた突起が『梨華』にささっていった。
その異様な光景に愛は総毛立った。

―――?

愛は異変に気づいた。
口の中にぬるぬるとした液体が溜まっている。

「愛ちゃん・・・はぁ・・・この取っ手ね、小さな穴が開いてるの。」

おしゃぶりの先から梨華の愛液が、愛の口内に垂れていた。

「どぉ、私の・・・おいしい?」

愛の鼻をつまんだ。

「んんっ!」
「ほらっ、ちゃんと飲んでね。」

愛は観念すると目を閉じて、目を閉じて飲み込む。

「はいよくできました!」

梨華はおしゃぶりを愛の口から抜いた。
そして二つのローターのコードを同時に一気に引き抜いた。
縛っていた手首を解いて愛を起こす。

「どうだった?」

愛は梨華を睨み付けていた。

「よっすぃーみたいに、ペニスバンドは使わないよ。
 でも・・・まこっちゃんと経験済だった?」

梨華は微笑む。
愛は目を伏せる。

―――したことないよ・・・

ひとみと麻琴とれいなは、ペニスバンドで楽しんでいるようであった。
でも麻琴と愛は、舐め合い触り合う関係でしかなかった。
愛はもっと深い関係になりたかった。
267 :愛と誠 :2006/10/05(木) 17:13
「まこっちゃん、海外で・・・だいじょうぶかな?
 やぐっちゃんみたいなことにならないかな?」

梨華は愛の横に寝そべって口を開く。
268 :愛と誠 :2006/10/05(木) 17:14
「やぐっちゃんは、本物志向が強かったから・・・」
「それに裕たんはヘタレだし。」
「よっすぃーだったらよかったのかな?」
「どうかな?・・・・・
 白馬の王子様の調教はうまくいってる?」

愛は驚いて梨華の顔を見る。
269 :愛と誠 :2006/10/05(木) 17:15
「あっ、ごめん・・・」
「いいですよ、梨華ちゃん。いまのところ順調ですから。」
270 :愛と誠 :2006/10/05(木) 17:16
正直、順調かどうかわからなかった。
ただ時間をかけてゆっくりやっていく予定だから、焦ってはいない。
さゆみもそう考えているだろう。
271 :愛と誠 :2006/10/05(木) 17:17
「私も白馬の王子様を探そうかな・・・
 でも『おばさん』だから、もう無理かな・・・」
「そんなことことないです!」
「ありがと。」

梨華は愛の額にキスを落とす。
272 :愛と誠 :2006/10/05(木) 17:17

END
273 :名無飼育さん :2006/11/09(木) 18:11
>>226の文…
ある小説と似ているんですがパクり?
274 :名無飼育さん :2006/11/09(木) 18:12
>>226じゃなくて
>>266やった
275 :名無し募集中。。。 :2006/11/11(土) 20:12
>>273
マジレスするとTMネットワークのデビュー曲
「金曜日のライオン」からぬっちしたよ
276 :れいなと・・・ :2007/01/17(水) 15:58
黒板倉庫『真の御言葉』の続き
ttp://mseek.nendo.net/black/1110274995.html
277 :れいなと・・・ :2007/01/17(水) 15:58
れいなの元に2年の年月を経て、あの間抜けな男の霊が現れた。

「2年間の御無沙汰でした。
世の中の不条理にお嘆きの貴方にお答えしましょう。」

「あんたなんか知らん!」

若いれいなにとって、2年前の事なんかすっかり忘れてしまっている。
278 :れいなと・・・ :2007/01/17(水) 15:59
それでも男の霊は話を続ける。

「自然は原理原則に従って動いている。
そのように見えない、つまり例外があるように見えるけれど、
それは人間の分類の方法に間違いがあるし、
その例外も理論的に説明できる。
これは創造世界が神の摂理に従っているということである。
しかし堕落した人間社会には、説明できない事柄が数多く存在している。
たとえば言語の文法にしても・・・
279 :れいなと・・・ :2007/01/17(水) 16:00
延々と説明を述べている霊なのだが、
そんなもの聞いてられないれいなは、さっさと眠ってしまったとさ。
2年たっても進歩してないというか、退化しているどうしようもない霊である。
280 :れいなと・・・ :2007/01/17(水) 16:00
E N D
281 : :2007/02/19(月) 14:47
緊張で指を震わせながら、クリック。
繋がらない。もう一度クリック。
ざあっ、と数字が羅列されたページにようやくネットが繋がる。
おれは自分の番号を探した。00666、この番号さえあれば今春から大学生になれる。

悪魔の数字は、発見できなかった。
282 : :2007/02/19(月) 14:48
「お前、春からどうするんだ?」
「……浪人します」
「そうか、それも青春だ」

学校に出向き、報告すると担任はそう言った。
進路指導室に歩みを進める。見たくもない偏差値ランキングが貼り出されたその部屋には
がやがやと同じ学年の生徒たちが集っていた。

「おい、どうだったんだよ」

肩を叩かれ振り向くと、赤ら顔でにこにことした同じクラスの男子だった。
どうだった、ていうのはもちろん大学入試の結果のことだろう。つまり合否。

「落ちた」
「マジでぇー?」
「マジ」

もう一度、肩をぽんとたたかれたがそれを、「慰めアリガトウ」と払いのけ、
進路指導室に入った。奥のパソコン周辺に人だかりができている。
きっとネットで発表されている合否を確かめているのだろう。
泣いている女子数人がいる。果たしてそれは嬉し涙か、悲しみの涙か。

「次、K大学見るぞ」

みんなで確認とは悪趣味だな、とも思った。
人だかりは秩序なく群れているようにみえて、しかし実はちゃんとしきたりのような
ものがあったらしく、列が入れ替わる。
同じクラスだった女子の亀井さんがひょこひょことパソコンの近くに寄っていくのがみえた。
283 : :2007/02/19(月) 14:48
「学部は?」
「総合政策です」
「番号を読み上げて」

亀井さんが6桁ほどの番号をすらすらと言うのをおれは出入り口付近で見ていた。
パソコンの前の教師がカタカタとキーボードを叩く。

「……」

無言で教師がパソコン画面を指差した。
その指先を見た亀井さんは、ぺこっと一度頭をさげ、おれの方に、いや出入り口の方に歩き出した。
ああ、と思った。

--
顔を伏せて、どんどん亀井さんが近づいてくる。
出入り口を塞ぐように立っていたおれは慌てて足を踏み出し、通る隙間を空けてやった。
周りなど見えてないかのようにさっさと亀井さんは進路指導室から出てしまう。
ざわざわと女子が話し始める。話の内容までは聞き取れなかったが、察しはついた。
きっとあの様子じゃ、おれと同じく亀井さんも、ってとこだろう。
数分、ほけっと突っ立っていると、パソコンの前の教師がこちらを見て、「どうだったんだ!」と言った。

「落ちました!」

そう叫んで、進路指導室に背を向けた。
あの教師には世話になったけど、結果は駄目だった。
女子の群れにまざるのも嫌だったし、周囲の哀れみの目線に耐えかねておれは廊下を走った。
二階の廊下を走りぬけ、下りの階段を5段上からジャンプ。くるっと曲がってもう一度ジャンプ。
スピードは緩めず一階の廊下も走った。

上履きのままグラウンドの隅まで走り抜ける。体育倉庫のそばで立ち止まり、校舎を振り返った。
あばよ、あと数日でおれは卒業。なにもかも考えるのが嫌になってその場にごろんと寝転がる。

「バーカ」

誰にともなく呟いた。
284 : :2007/02/19(月) 14:48
「独り言?」

聞き覚えのある声が降ってきた。
閉じた瞼を開けると、亀井さんがおれのすぐ隣にいた。

「……どっから来たの?」
「そこ」

亀井さんは体育倉庫を指差した。目が赤かった。

「泣いてるの?」
「泣いてないよ」

否定の返事。

「なんで体育倉庫なんかに」
「部活のあと、いつもここで泣いてたの。怒られたときとか」
「今日も泣きに来たわけだ」
「泣いてないってば」

亀井さんは素直じゃなかった。
遠くに見える通学路の桜が、狂い咲きをしていた。
285 : :2007/02/19(月) 14:48
286 :温泉 :2007/03/25(日) 06:20
温泉
287 :温泉 :2007/03/25(日) 06:20
あいぼんから電話があったのは、いつになく生暖かい
奇妙な2月の半ばの頃だった。
僕が受話器を耳に当てるとあいぼんの官能的な声・・・って
その時点ではまだ官能的な声は出してはいなかった。
あいぼんは淡々と事務的に僕に用件を伝えてきた。
そうだ今の彼女はアイドルじゃなくてアップフロントなんちゃらの事務職員。
デスクワーカー、デスクワーク子ちゃん。ちなみに僕も事務職だ。
具体的に言うとあいぼんのマネージャーだったのさ。
つまりこのまま僕とあいぼんが結婚すれば職場恋愛になっちゃうのさ。
だが残念ながら僕らはそうはならなかった。
あいぼんに僕とは別に好きな人が居るのは知っていたし
僕を好きになる人はここ数十年この世に存在していないのも知っている。
だから僕もあいぼんからの電話に対し極めて冷静に対応した。
288 :温泉 :2007/03/25(日) 06:21
「温泉?どうして?」
僕が説明を求めるとあいぼんは黙り込んだ。
理由を聞かれたくないのだ。知っている人は知っていると思うが
あいぼんは現在、とある問題を起こして事務所から
自宅謹慎を言い渡されているのだ。
つまり温泉は自宅じゃないし生活圏じゃないので行ってはいけないのだ。
「駄目だよあいぼん。君はもうすぐ復帰するんだからもうちょっと・・・」
「だからや」
「え?」
さすが関西弁。凄みのある声に僕はガクブルしてしまって言葉を失った。
そこにあいぼんの声が雪崩れ込んでくる。
「ええか。うちはアイドルや。アイドルはべっぴんさんでないといかん。
温泉って言えばなんや・・・・温泉たまご肌や。・・・わかるな」
うん。大体は。つまり温泉に行きたい訳だね。
僕は嬉しかった。あいぼんが復帰に前向きになっている事が。
で、僕は何をすればいいの?あいぼんに問いかけるとあいぼんは
待ってましたとばかりに即座に答えた。
「親戚になって欲しいんや」
289 :温泉 :2007/03/25(日) 06:21
あれは東京では桜が開花する前の3月半ば。
僕は愛車のアクセルを踏んだりブレーキを踏んだりしながら
某群馬にある温泉宿にたどり着いた。
親戚になって欲しいと言われた時には心底驚いた。
え?家族じゃなくて?結婚したらきっと幸せにするよ。
と僕が答えると、あぼかボケ。お前は単なるエキストラや。
といつものキュートな声で返された。

目的の温泉宿の前に着くともうあいぼんが居た。
変装用のめがねが良く似合っている。
というか変装とわかる時点で駄目なんじゃないかという気もする。
横には謎の男性。知らない人だ。誰だ?
「誰?」
「親戚や」
「そうなんだ。じゃあ僕は?」
「親戚」
なるほど。今日は親戚の会合だ。そうだそんな気がしてきた。
僕とあいぼんは親戚じゃない赤の他人だった気がするけど
あいぼんの家はややこしいから親戚である可能性は否定できないしね。
290 :温泉 :2007/03/25(日) 06:21
あいぼんの横に居るヒゲの男は煙草をひたすら吸っていた。
どんどん吸殻が足元に生み出されてゆく。
ああ、きっとこの世から煙草を消し去る運動をしている人だな。
きっとこの人は良い人だ。あいぼんの親戚だから間違いない。
「他の親戚はどないしたんや?」
「遅れて3人くるよ。僕の知り合いだけど」
「そうか。じゃあ先に風呂でも行こか」
あいぼんはそう言うと煙草の男と手を繋いだ。
仲むつまじい親戚に支えられて復帰するあいぼん。
世間は今、とめどなく降るこの雪のように冷たく厳しいけれど
これがいつか桜吹雪となってあいぼんを祝福してくれるはずさ。
僕は記念写真でも撮っておこうと思って何枚か写真を撮った。

温泉街はそこらじゅうに湯煙が揺らめいていて幻想的だった。
その中に居るとあいぼんはまるで妖精のようだった。
妖精は自らも煙を生み出していた。え?あいぼん。
どうやら煙草撲滅運動に参加しているみたいだ。
参ったなあ。あいぼんは妖精だったのか。
僕はとりあえず記念写真を撮った。
291 :温泉 :2007/03/25(日) 06:22
zzz
292 :温泉 :2007/03/25(日) 06:27
少し遅れましたがあいぼんさん
お誕生日おめでとう。



誕生日スレが無かったんでここに貼ります。
素敵な大人になりましたね。
293 :名無飼育さん :2007/03/25(日) 17:52
作者さんのコメントがなんか怖えぇ

お話は大変面白かったです
ぼんさん19歳おめでとう
294 :名無飼育さん :2007/05/25(金) 22:56
自慢の娘。
295 :名無飼育さん :2007/05/25(金) 22:56
「おーい。行ってくるから、留守番頼むぞ」
奥から元気な返事が聞こえてきた。
アパートを出て、中学生になったばかりの娘とバス停に並ぶ。
今日は、待ちに待ったモーニング娘。のオーディションの日だった。
296 :名無飼育さん :2007/05/25(金) 22:57
私は、子供のころからうだつのあがらない人生を歩んできた。
学校の勉強は得意ではなく、スポーツも苦手だった。
どうでもいい雑学やコンピュータの知識はそれなりに培ったが、それも人並み程度だ。
唯一の趣味が、モーニング娘。のコンサートを観に行くことだった。
私が見始めたころには、彼女たちの勢いにも陰りが見えていたので、
それを公言すれば、同級生たちに何を言われるかわからない。
苛められるのが怖くて、息をひそめて生きていた。

学校に通うのも億劫になり、私は外界との接触をなるべく避けた。
パソコンのモニターには世の中の出来事が映されている。
それでじゅうぶんだった。
欲しいものがあれば、商店街に出なくても、ボタン一つで届けてくれる。
私は物欲が乏しいほうだったので、散財したのは写真やDVDビデオくらいだった。
それでも、私の狭い部屋をどんどん占めていく。
どこを向いても、彼女たちが私に微笑んでいる。
297 :名無飼育さん :2007/05/25(金) 22:57
父母は何も言わなかった。
やがて年老い、入退院をくり返し、やがて姿を見せなくなった。
それは、私にとってモニターに映る出来事となんら違いはない。
私は親の遺した資産を処分し、都内の安アパートに移った。
固定資産税が高く、家賃を払ったほうがましだったからだ。
コンサートへ行く以外、部屋を出なくなった。

次第に、舞台で見せる彼女たちの輝きに耐えられなくなってきた。
暗く狭いアパートに帰ると、いっそう気分が悪くなる。
これは彼女たちのせいではない。誰のせいでもない。
どうしようもない人生を選んだのは私だ。
しかし、このままでは面白くない。
コンサートだけではなく、もっと私の気分を晴らしてくれるものを作らなければだめだ。
298 :名無飼育さん :2007/05/25(金) 22:57
私と、彼女たちのつながりを増やせばよい。
そうすることで、彼女たちが放つ輝きのおこぼれに、私もありつけるはずだ。
どうするか。
299 :名無飼育さん :2007/05/25(金) 22:58
私は、当然ながらファンクラブ会員だった。
年間の購入金額がかなりの水準を超えると、特別会員になる権利が与えられる。
年間の会費は、ふつうのアイドルのそれとは比較にならないくらい高額だった。
しかし、特別会員になることで、通常では入手できないグッズ類を購入できるようになる。
例を挙げれば、彼女たちの使ったタオル、彼女たちの髪の毛、……。
これらはネットオークションにも流れない逸品だ。
私には興味のないものばかりだったが、それらを争うように買い漁る会員もいるという。

ある日、特別会員だけが閲覧できるネット通販のページにそれが目についた。
『ハロプロ・メンバーの卵子を特別価格でご提供!』
はじめは、彼女たちが作る玉子焼きを売っているのかと思い込んだ。
ところが、画像を見ると様子が違う。
理科の教科書に載っている、顕微鏡から撮影したようなグロテスク写真だ。
なんとなく全体的に青っぽく、中央に白く丸いものがある。
まさしく、彼女たちの「らんし」だった。
300 :名無飼育さん :2007/05/25(金) 22:58
こんなもの、誰が何に使うのか。
私は使う。使わなければならなかった。
この卵子と、私の精子で、子供を作る。
結婚してくれる人なんかいないが、現代はもはやそのような時代ではない。
金を出せば、腹を貸してくれる女の人はいくらでもいる。
不妊症に苦しむ夫婦でも、「子供」を作ることができる。
ならば、相手となる女性がいなくても、独身男性が「子供」を作ってもかまわないはずだ。
金を出せば済むことだ。
排卵剤で苦しい思いをしながら、彼女たちが卵子を売るのも、金のためだ。
私は迷うことなくボタンをクリックした。
301 :名無飼育さん :2007/05/25(金) 22:59
それから十数年が経った。
子供はすくすく育った。育て方などは、ネットで検索すればいくらでもでてきた。
親バカではなく、この娘はかわいらしい顔立ちをしている。
小学生くらいの年頃になったら、歌とダンスの教室に通わせた。
この娘を「娘。」にするためだ。
そうすることで、私の思いは満たされる。
私の遺伝子を半分受け継いだこの娘がステージでスポットライトを浴びるということは、
私がスポットライトを浴びるのと同義だ。
それだけが、私のささやかな希望だった。

オーディションでは、二次審査まで通っていた。
三次審査では、親を交えての面談があった。
メンバーになるための傾向と対策はじゅうぶん積んである。
娘は娘。になれる才能がある。
当然だ。私はあまたのハロプロ・メンバーの中から、石川梨華のそれを選んでいた。
まさしく親譲りの才能があるはずだ。
もちろん、歌の良し悪しではない。
302 :名無飼育さん :2007/05/25(金) 22:59
面談が進む中、手ごたえを感じていた。
娘。の親として、金品に執着している様子を見せてはならない。
この事務所はいろいろな場面で手痛い目にあっている。
私は、見映えはよくないが、努めて謙虚に応えた。
三人いる審査員のうち、二人は愛想のいい反応を見せた。
もう一人は一言も話さず、じっと私のほうを見つめていた。
嫌な汗が流れてくる。
この男は、私の何を見ているのか?

審査会場を出ると、そこには多くの参加者たちが列を作っていた。
私は、しばし立ち尽くした。
参加者たちは、ハロプロ・メンバーの誰かに似ている娘と男親ばかりだった。
みな、私と同じことを考えていたのだ。
あの審査員が私をじろじろと見ていたわけがわかった。
遺伝子の半分は問題ない。もう半分のほうをじっくり吟味していたのだろう。
私は、成人病の品評会のような男だった。
303 :名無飼育さん :2007/05/25(金) 22:59
私は重い足取りでアパートに帰った。
娘は何も知らないまま、今日の結果を待っているだろう。
私のせいで、私の娘は娘。になれないというのに。
「ただいま」
ドアを開けると、まだ小学生の息子が泥だらけになって飛び出してきた。
「またサッカーしてたのね。ほら、早くお風呂に入りなさい」
娘が息子の背中を押して、風呂場に連れて行った。
304 :名無飼育さん :2007/05/25(金) 23:00
娘と息子は仲が非常に良い。
年は娘のほうが一つ上でおっとりしているが、息子は活動的で外で遊ぶのが大好きだ。
この息子は、私の実の息子ではない。
兄弟がいたほうが娘の教育に良いと思い、孤児を引き取ったのだ。
施設の話によると、息子はいわゆる「赤ちゃんポスト」に投函された赤子だった。

私は、そのときのことを懐かしく思い、ダンボール箱を押入れから出した。
そこには、施設からもらった当時の品々を残してある。
息子が、捨てられたときにつけていたという前掛けもあった。
ふと、裏返すと、そこに「(0^〜^)」とマジックで書かれていた。
305 :名無飼育さん :2007/05/25(金) 23:00
私は嘆息を漏らした。
息子は、娘と同じく、娘。の遺伝子を半分受け継いで生まれてきたのだ。
私と同じく、今日の参加者の娘たちと同じく、自分の遺伝子を持つ娘。を得るために。
だが、この子は男に生まれてしまった。
用無しとなったから、捨てられたのだろう。
ひどいことをする親がいるものだと思う。
306 :名無飼育さん :2007/05/25(金) 23:00
風呂場から、二人の声が聞こえてきた。
ベッドに横たわり、考える。
石川梨華の遺伝子だけではだめだった。私の遺伝子が半分あってはいけなかった。
では、石川梨華と吉澤ひとみの二人の遺伝子を持つ娘ならどうだろう?
私の遺伝子は四分の一になる。
もう四分の一は、どんな人間だかは知らないが、私より見目のいい男ではないだろうか。
試してみる価値はありそうだ……。


307 :名無飼育さん :2007/05/25(金) 23:00
おしまい
308 :名無飼育さん :2007/05/26(土) 05:20
不思議な感じで惹きこまれてしまった。
おもしろい!続き激しく希望です。
309 :名無飼育さん :2007/08/05(日) 17:10
ERIKA MY LOVE
310 :名無飼育さん :2007/08/05(日) 17:12
えりかと会って、俺は生きる希望が出てきた。
えりかの整った顔を見るだけで、元気が出てくる。

胸のふくらみの先端を含んで、舌で転がすと、
よい反応を示してくる。

「岡ちゃんの方がよさそうだな」

同じグループの子の名前を言ってみたりする。

「大きけりゃ、いいんでしょ!」

拗ねた顔をする。

「冗談だよ」
と俺は笑う。
311 :名無飼育さん :2007/08/05(日) 17:13
えりかのスタイルのよい裸体は、俺の余裕を失わせる。

両膝の裏に手をかけて、太腿を大きく押し広げる。
その中央の濡れて輝く部分に唇をつける。

愛液が噴出してくると、次を急ぐように肉棒を突き刺す。
えりかの反応をうかがうこともなく、腰を激しく動かす。
312 :名無飼育さん :2007/08/05(日) 17:13
最後の瞬間を向かえ、すべてを吐き出した後、身体を離す。
えりかのあそこから俺の粘液があふれ出している。
そこに口をつけると、思い切り啜る。
俺とえりかの混ざり合った液体をきれいに舐め採っていく。

二人に想いが詰まっているように感じて、
非常においしい。

最近ではえりかに口移しで流し込んでやっている。
313 :名無飼育さん :2007/08/05(日) 17:14
いつも「えりか」って呼んでるけど、
今日は付き合ってる前のように「梅ちゃん」って呼んでみた。

ちょっと不満そうな顔をする。

「愛してるよ、えりか」

少しだけ機嫌を直してくれた。

そんな梅田えりかが、俺は大好きだ!
314 :名無飼育さん :2007/08/05(日) 17:15
 E N D
315 :名無飼育さん :2007/08/06(月) 05:37
kimo`./?,:"::
316 :名無飼育さん :2007/08/07(火) 00:30
純愛に'kimo'って、なんだ!!
317 :名無飼育さん :2007/08/07(火) 10:13
純愛とエロの違いが解らないのね?
318 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:18

二人はテーブルを挟み向かい合って席に着いていました。
年の頃は二十代の半ばほどの男性。
そして二十代前半の女性。

二人は幾分――特に女性の方が――目を引くかもしれませんけれど、世間並みのカップルに見えると思います。
その二人が交わす会話。
ざっくばらんに交わされる会話は二人の気が置けない関係を如実に表しています。
それを会話というのならば、ですけど。
319 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:19

「でね、結局あたし一人で買い物に行くことになったわけ」
「そっか」
「別にね、それで怒ってるわけじゃないんだけどー」
「うんうん」
「そりゃあっちにしてみればさ、彼が予定を空けてくれたんなら嬉しいのはわかるじゃん」
「だな」
「ましてや元々は無理だとか言われてたってゆーなら余計にだよ」
「そうなるかな」
「でもさ、じゃあたしの予定はどうなるのって話だと思わない?」
「そりゃそうだ」
「でしょー? あーゆーとこ自分勝手なんだよね」
「うんうん」
320 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:19

彼の相槌に彼女の話が止まり、彼もケーキを突いていたフォークを止めます。
彼の前にはアイスコーヒーと、半分ほどに減ったケーキが一皿。
彼女の前にはアイスアップルティーと、僅かにクリームが付く空いた皿が一枚。
321 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:20

「聞いてないでしょっ」

彼女が小さくテーブルを叩き、三枚目の空いた皿が硬質な音を立てました。
彼はおそらく内心では苦笑いを浮かべながらも精一杯に真摯な表情を作り言い訳の言葉を探すようで。

「いや、聞いてる。あゆみ。全然聞いてるから。先へどうぞ」
「ったくもお、なによっ」
「だから聞いてるってば。石川が悪いよ。うん。そういうことだって」
「全然テキトーじゃん」
「そーんなことないって」
「あるよっ。またこいつこんな話してんかよ、とか思ってんでしょ」
322 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:20

……彼女、柴田あゆみの怒りが矛先を変えたことを察した彼は、いよいよ本格的にご機嫌を取らなければならないと考えたようで。
きっと頭の中で慌てて並べ立てる言い訳に自身で失望し、結局ただ一言だけを口にしたのです。

「…ごめんなさい」
「ほらぁ、もういいよ」

あまりに素直に謝られ、やり場のなくなった憤りをアイスアップルティーにぶつける柴ちゃん。
ガシャガシャとストローで掻き回される砕氷を呆れたように見ながら、彼はあまりに目論見通りに進んだ展開に笑みをこぼしました。
323 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:21

こうやって付き合うのに慣れた様子の彼はコーヒーを口にして間を取る様子で。
彼女は笑われたと気づきながら、こうして付き合ってもらっていることを自覚しているために引き際を弁えているようでした。

さて、なんとなくお解りのことかと思われますが、彼と彼女は恋人同士ではないのです。
……今はまだ。

周囲から見れば、そうでないのが不思議なほどに仲が良くなり、頻繁に連絡を取っているようで、こうして二人で会ってもいるけれど、二人はいまだに“友達”のまま。
お互いにお互いをどう想っているのか、どう考えても――特に彼女の方が――気づいているようではなくて。
逆に、だからこそこうした関係のままでいられるのかもしれません。
324 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:21

「しかしさあ」
「なに?」
「ほんと石川のこと好きだよな」
「なっ――、別にっ。そんなことないよ。梨華ちゃんの方が寄ってくるんだってば」
「ほうほう」
「ち、違うんだからね。ホントに」
「だってなんだかんだ言っても嫌いじゃないんだろ?」
「それは……、嫌い、じゃないけど。でも――」
「いいじゃん、別に。仲のいい友達がいるってのはいいことだろ」
「そう、だけどさ。……あ、そっちもそうだったりするの?」
「まあそうだな」
「ふうん…」

……彼女は妙に納得した風で。
彼もそれでよしとでも考えたみたいに笑っていました。
325 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:22

「それにしても俺も暇だよな」
「なに急に」
「こうやってあゆみが愚痴るのに毎度毎度付き合っててさ」
「なに笑ってー。だったら付き合ってくれなくたって結構ですっ」
「そうできりゃいいんだけどなあ」
「え?」

……彼の様子が少しだけ変わったようです。
それは、そう……

「なんで俺、こうやって付き合ってんだろうな」
「なんでって……そんな――」
「理由なんて一つしかないよなあ」
「そ…、それって……」
326 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:22

どうやらこれは、二人にとってとても大切な分岐路になるのでしょう。
多分、必要以上に長く続いた“仲の良い友達”から、先へ進むために互いが探り合っていたタイミング。
327 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:23

「石川の代わり、俺でよくない?」
「え……?」
「石川といる分の時間、少し俺に分けてくれたらよくない?」
「だっ――、でも…、そんなの……」
「だー、ったく」
「な、なに…よう」
「愚痴ってるとき一緒にいるだろ」
「…うん」
「笑ってるときだってあったよな」
「そりゃそうだよお」
「まだ見たことないけど、泣いてるときも一緒にいたいなあ」
328 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:23

もう彼女は言葉を挟もうとも思っていないようです。
少しだけ緊張した面持ちで続ける彼の言葉に、ただ素直に耳を傾けています。
329 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:24

「楽しいときも、哀しいときも、怒ってるときも。
 俺が一緒にいられたら嬉しかったりするんだけど。あゆみは嬉しかったりしねーのかな?」
「わかんない。でも……嬉しい、かも」
「…っよし! じゃあこれからもよろしく」
「……よろしく」

彼が笑って差し出した手を、躊躇いながらではあるけれど笑顔で受け入れた。
この瞬間、二人にとって今までとは全く違う時間が始まったんです。
きっと、どれくらいかは解らないけれど、長く続いていく素敵な時間が。
330 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:25

 …………
331 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:25

「ね、拓己」
「やっと収まるところに収まったみたいだね。梨華のカンも当たるもんだね」
「でしょ? なんかわたしもホッとしちゃった」
「そう? そうか…、そうだね」

そうささやきあいながら私たちは微笑みました。
はにかむように笑いあう二人の姿を見つめながら。
332 :『Continue』 :2007/10/07(日) 22:26

 end.
333 :匿名 :2007/10/07(日) 22:28

知り合いに書いたものですけど。

同じ世界の片隅でこんなこともあっていいなあ。
的な。
334 :名無飼育さん :2007/10/08(月) 00:41
いやぁ、なんだか素敵だなぁと思ったら匿名さんでしたか。
納得です
335 :名無飼育さん :2007/10/08(月) 05:06
大切な人を取られたような気持ちになり
ちょっと切なくなりました。
336 :愛してると言ってくれ :2009/06/05(金) 07:22
ごっちんがパンを食べるので、僕はおにぎりを食べた。
「コーヒー飲む?」と訊くと、ごっちんは一旦頷いてから「あ、やっぱ牛乳がいい」と言うので、
僕は席を立ち、冷蔵庫へ向かい、ドアを開け、牛乳パックを取り出し、それを手渡すと、
ごっちんは「ありがと」と言ってそのまま飲んだ。喉がごくごくと音を立てるようにして動いた。

「ごっちんさー、コップ使いなよ、汚いよ」
「全部飲むもん」
「そういう問題じゃなくて」
「そういう問題じゃん」
「なんつーか見栄えが悪いよ」
「今更何言ってんだか。大体おにぎり食べながらコーヒー飲むとかそっちのが変」

ごっちんはふんっと鼻で笑って鼻糞をほじった。僕はごっちんがほじった鼻糞の行く末について、
鼻糞がどのようにしてごっちんの鼻の穴の中で生育して現在の状況に至ったのかということについて、
ごっちんの鼻糞にはもしかすると鼻毛が絡まっていたりして、若干不透明な薄緑色、
口に含むと若干の塩辛さを伴いつつもその歯ごたえ、ごっちんを目の前にしてごっちんの鼻糞を食べる、
そのことにおける背徳的な感情!ということを考えながら「の」の字を描くようにしてコーヒーを淹れた。
ごっちんは僕がコーヒーを淹れる様を見ながら鼻糞をひとしきり丸め終えるとそれをポイと灰皿に捨てて、
「やっぱりコーヒーもちょうだい、カフェオレにするから」と言うので、僕は三人前のコーヒーを淹れた。

僕はブラックコーヒーを飲み、ごっちんはカフェオレを飲んだ。
ごっちんは「牛乳が冷えてるからぬるい」と文句を言ったけれども、
僕は「そんなこと知ったこっちゃないよ」と笑って、牛乳をレンジでチン、
二杯目のカフェオレはホットで「やっぱ熱い方がおいしいね」とごっちんが頬を緩めるので、
僕も「そうだよね」と言って、冷めてしまったコーヒーを手の中でぐるぐると回した。


おわり
337 :愛と・・・? :2009/06/22(月) 16:31
>>260-272 の続き

あれから3年位後・・・
あの『秘密基地』は、いつの間にか高橋が事実上占有していた。
338 :愛と・・・? :2009/06/22(月) 16:32
がきは結局つけあがる・・・

『白馬の王子様』に相応しい男の子は、いなかったようである。
そしてもう名前を忘れてしまうほど昔のことになってしまっている。
339 :愛と・・・? :2009/06/22(月) 16:33
高橋が相手にしているのは、まことと呼ばれている四十過ぎの冴えないドラマーである。
十数年前はかなり売れてたバンドにいたが・・・今でも所属しているのだが、
今ではバンドはほとんど活動していないこともあって、ドラムをほとんど叩いていない。
その上、あるメンバーのように音楽プロデューサーにもなれなかった。
それでも何とか芸能界で生きてはいけてる。

そんな男であるが、高橋はベッドの上での振る舞いが気に入ってるので、満足しているようである。
タネナシなのも最高であるが、妻帯者なのはちょっと気に入らないようだ。
340 :愛と・・・? :2009/06/22(月) 16:34
たがいに横向きで相手の股間に顔を埋めているふたり。
高橋の口の中で膨らみ続けるまことの肉棒、高橋のあそこにまことが必死に舌を這わしている。
まことは快感に流されながらも、高橋の腰を掴み、愛液で溢れるあそこを舐め回している。
肉棒の先端の粘膜に舌を絡ませると、そこがピクピクし始めた。

「うっ…はぁ…逝くっ・・・」

まことは息を漏らすと、高橋の口から遠ざかるように少し腰を浮かす。
次の瞬間、高橋の顔に精液をぶちまける。
たっぷりとぶちまけると、身体を反転させる。
341 :愛と・・・? :2009/06/22(月) 16:34
まことは高橋の顔を舐めて綺麗にする。
顔を両手で優しく包み込んで
ペロペロと鼻を瞼を頬を唇を・・・
順々に舐めていく。
最後に高橋の唇の中に舌を入れて絡めてから離れた。

「綺麗だよ」

まことは高橋を抱き寄せて横になった。
そして膝を高橋の両脚のひらくように割り込んでいった。
高橋の泉の湧き出るところに肉棒を奥まで突っ込んだ。
342 :愛と・・・? :2009/06/22(月) 16:35
ゆっくりと抜き挿しを繰り返すうちに、しだいに激しいピストン運動になった。
それとともに二人の喘ぎ声が大きくなり、クチュクチュって音が部屋中に響いた。

絶頂に達するとまことの股間はピクピクし始めた。

「うっ…はぁ…逝くっ・・・」

暫く動きが止まり、喘ぐような息だけが聞こえていた。
343 :愛と・・・? :2009/06/22(月) 16:35
まことは横向きの二つの体を、自分が上になるようにしてから肉棒を抜いた。
高橋の股間に口を寄せると、あそこから溢れ出す液体を音を立てて吸い上げた。
すると高橋はまことの腰を引き寄せ横向きになると、
まことのヌメヌメになったまことの肉棒を咥えて、音を立てて吸った。

おたがいに相手のものを綺麗に舐めあげると、起き上がって口を合わせた。
そして唾液で混ぜ合わせた液体を交換し合った。
344 :愛と・・・? :2009/06/22(月) 16:36
こんな二人の関係はいつまで続くかわからないけど、
スキャンダルになるまで変らないのかも・・・
345 :愛と・・・? :2009/06/22(月) 16:37
346 :愛と・・・? :2009/06/22(月) 16:37
347 :愛と・・・? :2009/06/22(月) 16:37
348 :愛と・・・? :2009/06/22(月) 16:37
349 :愛と・・・? :2009/06/22(月) 16:38
E N D
350 :T MY ME :2010/05/13(木) 14:57
上記『愛と・・・?』の続きのようなもの
351 :T MY ME :2010/05/13(木) 14:58
愛は思う。

唇にそっと指を近づけてくる男は、赤ちゃんに指を吸わせたことがあると。
そして自分のあそこだと想像してるに違いない。
もしかしたら実際やっているかもしれない。
352 :T MY ME :2010/05/13(木) 15:01
遠い日に間違ったものを咥えてたような気がする。
男のあれを含んだ時、発射されたものが口の中に広がる度に、
ますますそう思えてくるのであった。

記憶から忘れたことがわずかによみがってくる感じ。
それが嫌でこのごろ従順で健全そのものにしか見えないかわいい子と楽しんでいる。
その舞美もわたしと同じような記憶のかけらを持っているみたい。
そして彼女の兄もそうであるらしい。
353 :T MY ME :2010/05/13(木) 15:02
この兄妹に怪しい関係を感じるけれど、
何度か互いを触れ合い舐め合った以上のことはないと言っているので、
そういうことにしてあげてる。
舞美は深い関係になることを望んでなかったから、
指一本挿入することはない。

それでも頭の中ではすごい厚意をやっている妄想をして、
それで十分満足している。
354 :T MY ME :2010/05/13(木) 15:03
ふとあの男の言葉を思い出す。
「つんくはいい思いをしたんだろうな。
それも同時に歯のない口を二つもあるなんて・・・」
その妄想の下で私の口にぶちまけてた。

でも同時に二つも必要ないだろう、
男と女で違いがあるわけないだろうし。
それより年子くらいの方が、長く楽しめるだろうと思うのだが。
355 :T MY ME :2010/05/13(木) 15:04
時には男になりきって、妄想しては快感を味合うことが出来ればと思っている。
だって私は女優だもの。
356 :T MY ME :2010/05/13(木) 15:05
E N D
357 :名無飼育さん :2010/10/20(水) 00:19
亀井絵里はここのところひどく心が荒んでいるのでした。
なぜかというと、それはもちろん娘。を卒業せねばならんからで、
えりりんは特にそれを語ることはしないわけだし、下手をすれば
「卒業はいい機会だと思う」などと前向きなことを言うのだから、
傍目から見るとそれが理由なはずがないじゃないか、とか思うのかもしれいなだが、
れいな。そういえばれいなという奴がいたな、田中れいなという奴だ。
あれはブログをトチ狂ったような頻度で更新する女であるが、
あいつは一体どういうつもりだ? まったくもう、ケシカランではないか。

亀井絵里はそういうれいなのトチ狂ったブログの有様を見て、あらあらまあまあと思っているのであり、
非常に憎らしい気持ちでいて、僕なんかにこっそりと「れいなのブログを見てるとイライラする」と、
ものすごい内向的なため息をつくので、まあそう言うなよ、えりりん、君が一番カワイイ。
ああそうありがとうねと微笑むのだ、亀井絵里という奴は。それでれいなの悪口とかもう言わない。
そういう時におれはなんてふがいないのだろうと悲しくなるのです。

えりりんはペットボトル飲料を飲むときに、ちょっと口をすぼめる癖があって、
それはちょっと淫猥に映るから、やめなさいと僕は常日頃注意していて、
えへへとか言って、八重歯を見せて笑うのだけど、その時の目線はウツロで、
今一体この子は何を考えていたのかな? と思う。

絵里ちゃん絵里ちゃん、今何考えてたの? と訊くと、ああうん、れいなのことかな、と言った。
どうしてまた、れいなのことなんか考えているんだい、れいなのこと嫌いなんだろ?
そんなことないよ、嫌いなわけないじゃん、ずっと、娘。に入ってからずっと一緒にいてさ、
嫌いになるわけないじゃんか、バカにしてんの。娘。を、バカにしてんの。
えりりんはぽーんとペットボトルを投げ捨てて、窓を開けてため息ついた。
娘。卒業とかいやに決まってんじゃん、バーカ、と誰に言うでもなくつぶやいた。
ぼくはえりりのケツのあたりをやんわりと撫でた。エッチと言われた。
そうだねえ、風が吹いたんだよ。

おわり
358 :七夕について :2012/07/09(月) 22:19
織姫様と彦星様が年に一度の逢瀬を重ねるという言い伝えの七夕だった。
「一年に一度しか逢えないだなんて辛すぎる……、しかも雨が降りやすくそれすら叶わないのが度々だなんてかわいそうすぎる……」
と同情的な、感動的な物語としてそれは流通していたが、私はそれは違うと思っていた。
なんとなれば彼らは星であり、星の命はほぼ無限であり、ほぼ無限であるところの星たちにとっての一年など、
我々の感覚からしてみれば一日かそれ以下ぐらいのものであろうと推察され、だから全然、別に辛くもかわいそうでもないのだ。

えりりんに上記の説を語ったところ、彼女はにこやかに頷き「なるほど」と言った。
「でも恋人同士ってのは一時足りとも離れたくないんですよ、一日だって、たとえ数時間だって、離れるのが辛いんですよ」
「なんだ、知ったふうなことを言いやがって。えりりんに織姫様と彦星様の何が分かるっていうんだ!」
「そりゃあ分かりませんけど、でもそれぐらい想像できますよ」
「私にはさっぱり想像できませんね!」

えりりんは眉間にシワを寄せて「なんでちょっと怒ってるんですか?」と言った。
なんでだろう、よく分かりませんが、私は女がまるで恋愛の全てを知っているかのように語るその語り口が嫌いなのだ。
「いらいらするんだよ」
「牛乳でも飲みますか?」
「飲まない。牛乳飲むと下痢するんだよね。お腹弱くって」
「したらいいですよ。下痢したらいいです」
「なんでそういうひどいこと言うの? 下痢するのってつらいんだよ?」
「知ってます」
「うそだ! えりりんにおれの下痢の辛さが分かるはずないでしょう! だっておれはおれだしえりりんはえりりんなのだから!」
「そりゃそうですけどね、でも、想像ぐらいできるんですよ」
「その想像がなんぼのもんじゃい! 想像でものを語るのをやめてくれ!」
えりりんは「別に」と言って、
「想像でものを語る以外にしようがないし、それで人からどう思われようが私の知ったことじゃないし、もうあんまり興味がないんですよ。人が実際どう考えてるかなんて、ほとんど、まるで、興味がないんです。私は私の想像力の限界の中で生きていくんです」と続けた。
その口調はたいへん毅然としており、それだけで私は負けた気分になった。これだから賢い女は嫌いなのだ。
「えりりんなんて嫌いだよ」
私がそう吐き捨てると、えりりんはかつてないすばらしい笑顔を見せ「ありがとうございます」と言った。

おわり
359 :ガラス製の感傷 :2012/07/15(日) 21:27
「その棚に飾ってるものはなに?」と尋ねるとごっちんはそれを手にとってぐるりと一周見せてから私に手渡してくれた。それは硝子で出来た猫の置物だった。「これは何?」今一度尋ねると「それは私だよ」とごっちんが言ったので、私はそれをそっとポケットに押し込み、ごっちんが口笛を吹いた。

「二度と会いたくない」と言ったあややはそんなことまるで忘れたかのように出迎えてくれた。あまつさえ三つのビー玉をくれる。朱色の曲線が玉中に踊り、それを透かして見ると世の中がよく見えた。「どうにも手放せなくって」あややが含み笑いをするので、私は礼を言う。ポケットから猫の置物を取り出して玄関に置いてきた。

解剖台の上のミシンと雨傘の偶然の(幸福な)出会い。その子はぴょこりと頭を垂れて「お久しぶりです」と言ったから、「誰だろう?」と思ってよくよく見るとさゆだった。桃色のワンピースを着ている。それはひらひらと風になびき、とても涼しげだった。その一方で額は汗でしっとりと濡れ、前髪が幾本かへばりついている。舐めたいと思った。「えりりんはどうしたの?」「川の畔に置いてきました」ビー玉を一つあげる。

ガムを噛んでいたらめまいがした。今日の私は昨日見た夢を思い出すことができる。明日になれば今日見た夢を思い出すことができる。ビー玉を二つ手の中で転がしている。

電車の吊革が揺れるのを眺めていた飯田さんがふいに髪をかきあげてため息をつく。色っぽい(じれったい)目元が濡れ、「どうしたの?」と訊くと「昨日食べたご飯のことを思い出せる? 私は全然思い出せない」とても辛そうにそう言った。「昨日はチキンラーメンを二袋食べたよ」「いいね、チキンラーメンはいいね。卵を乗せて?」「そうそう、卵を乗せて」「CMみたいに上手くはいかないよね」「あれは卵を常温に戻しておいてやらないとダメなんだよ」「そうか、へえ、そうなんだ」飯田さんは目を細めた。ビー玉を一つあげる。

一つだけ手元に残ったビー玉を透かして太陽を見ていたら目の前が真っ暗になった。声で分かる匂いで分かる体温で分かる。れいなが私の首に腕を絡め「ちょっとそこまで」とせがむので、私はれいなを背負っててくてくと歩いた。「ここでいいっちゃ」のその声に肩の荷が下り、れいなは私の手を取って、そこからビー玉をもぎ取った。「返しなさいよ」「これはれいなのものばい」「ダメだよダメだ」その声が届いたのか届かなかったのか、分からないけれども、私にはもう何もない。


おしまい
360 :おっぱい :2012/09/07(金) 03:01
 おっぱいパブに行くと保田がいた。ぺらぺらの、下品な紫色のワンピースを着ている。お隣失礼します、と言って腰を下ろした時に、小さな声で「よっこいしょ」と言ったのを私は聞き逃さなかった。化粧が全体的に安っぽく、見るからにくたびれきっており、疲れているのかと問うと、それでもお金が必要だから私は頑張らなくてはいけないんだ、というようなことを言った。そんなことを訊いたわけではない。そう、今日は忙しくってね。そうか、大変だなあ。そういった、なんでもない会話をしたかったのだ。お前の生活のことなどどうでもよい。お前の人生のことなどどうでもよい。私は他人のそういったことに関してまるで興味が無かった。興味がないというか、興味を持ちたくない、と言った方が正しいのだろう。そういう、生活に密着した、人生に密着した話というのを聞くと気分が滅入ってしまうのだ。やっぱ色々大変ナンだなあと、つい思いふけってしまい居た堪れなくなるし、自分の人生についても果たしてこれでよいのだろうか、あんまりいいとは思えないが、別に悪いわけじゃない。ただ漠然とした、これではいけないのではないか、このままではなし崩し的に、何も果たせず何も得られないまま、ただなんとなく悪くない人生、決して良いわけではないが、悪くない人生、そういうのはなんだかちょっとつまらない気がした。焦っていた。焦りを感じるのだ。ガラにもなく。何かに向けて頑張っている人などを見るとげんなりした。それが実際成功しつつあろうが失敗しつつあろうが、その何かに向けて頑張るという行為それ自体が、あまりにも輝かしく思える。対照的に、私の人生に態度はなんなのだ。なめているのか。こんなことではダメだ、という気分になる。とにかく早くおっぱいが揉みたかった。
 店内の照明がパッパッとフラッシュを焚いたようなものへ変わる。BGMが一際やかましくなり、割れた音声、店員がなにやらがなっている。何を言っているのだか皆目分からないが、おっぱいタイムに突入したことは明白であった。周りの客たちの上に、次々と嬢がまたがり始める。保田も私の上にまたがった。丁度対面座位のような格好になる。服の上からおっぱい揉む。保田はアッなどと息を漏らしたが、ちょっと演技がかっている感じがあからさまで、不愉快な気分になった。直接触って、などとほざく。絶対にイヤだと答えた。演技が下手だな圭ちゃんは、そう言うと、知ってる、でも私は頑張らなくちゃいけないんだ。やめてくれ、辛くなる。もうおっぱいを揉む気がからきし起こらなかった。抱きしめていいかと訊いたら、いいよと言うので抱きしめた。女の体温はなぜかくも心地よいのだろう。その小さい胸に頬ずりすると柔らかい桃の匂いが香った。
 良い匂いがするけれども、一体何をつけているのか、こんな匂いの香水があるのか、訊くと、これは何々なんたらというもので、香水じゃないんだ、香水の匂いは嫌う人がいるし、舐めたりした時にたいへん苦い、だから何々なんたらというものを愛用している、これはいたく評判が良い、舐めても苦くない、誤ってつけすぎても臭くならない、など、業務上の知恵を話してくれた。私は感心した。どれ、と言って脇の下を舐めてみると、甘い味がした。この甘いのも、その何々かんたらというもののお陰なのか、問うと、それは私の汗が甘いから、と答えて笑った。冗談を言う時は笑ってはいけないのだよ、人を笑わせようと思うときは、自分で笑ったらダメなんだよ、知ってた? 知っておくといいよ。保田はマジメな顔で参考になった、気をつける、ありがとう、と言った。その時の顔の美しさといったら、思わず惚れてしまいそうなぐらい、凛々しかったし、キュートだった。
361 :おっぱい :2012/09/07(金) 03:02
 相変わらずおっぱいを揉むということはどうでもよかった。でもせっかくだから、あんた何しにきたの、おっぱいパブに来て、おっぱい揉まないとかもったいないでしょ、揉みなさいよ。保田は私の手を取って、無理矢理に服の中へ突っ込ませた。あまりおっぱいという感じはしなかった。ただとにかく暖かく、何か手応えがあるので、これが乳首か、と問うと、そうそれが乳首だ、と答えた。立ってはいなかった。立っていない乳首の手応えというのは妙なものだ。なんだかとても頼りない。せっかくだからさ、乳首吸うよ。保田は肩紐を取った。おっぱいがお目見えする。こぶりな、かわいらしいおっぱいだった。そこに顔を寄せ、吸うと、やっぱり甘かった。圭ちゃんの乳首甘いよ、言ってみると、そうでしょうね、母乳が出ているから、と答えた。顔を見る。まんじりともしない真顔だった。冗談? それともほんとう? 保田はふふっと笑って、冗談よ、子持ちに見える? 見えるな、二人ぐらいいてもおかしくない。シングルマザーという感じがする。水商売でもやんなきゃ、とても育てられんだろう。同情するよ。悲しくなるからやめて、結婚したいのよ、相手がいないけれど、相手さえ見つかればいますぐにでも。じゃあ結婚しようか、おれは金とか甲斐性とか何もないけれど、結婚にはなんとなく憧れているんだ。甲斐性がない男はダメ、いやだ、それじゃあ何のために結婚するのだか分からない。結婚をするために結婚するんだよ、みんながみんな男の甲斐性を求めて結婚をするわけじゃない。それもそうかもしれないけれど、私は違う、私は男の甲斐性と結婚する。愛は? 愛はないの? 愛なんていらないわよ、この仕事で間に合ってる。ああ、そう、そりゃあ強いね、おれも愛はいらないと思う、身体がぽいとそこにあればそれでいい、むしろそれが愛だ。なに言ってんだかわかんないよ。おれも分からない。
 しばらく乳首を舐めていると立ってきたので満足した。やっぱり乳首は立っていないと頼り甲斐がない。せっかくの乳首なのだから、立っていないと。指でいじりながら、この店はキスはあり? 尋ねると、キスがダメな店なんてあんの? と答えた。分からない、たまにキスを拒む嬢がいるからね、前ひどいめにあった。それはかわいそうに、私は拒まないわよ。じゃあするよ。いいよ。という流れでキスをした。私はキスをして、舌を絡めるよりも、歯を舐めるのが好きだった。人間の身体の中で、一番頼り甲斐のある部位だと思う。保田はちょっと嫌がって、なんでそんな歯ばっかり舐めるの? と訊いた。なんとなく、頼り甲斐があるから、と答えた。頼り甲斐があるから舐めるってどういうこと? 分かんない、知らないけど、歯を舐めるのが好きなんだよ。ああ、そう、人には色々あるからね、私はふつうに、舌を絡めるのが好き、それも相手から積極的に絡められるのが好き、求められてるって感じがして、満たされる気がする。じゃあ、と言って私は保田の舌を積極的に舐めた。
 店内の照明が通常のものに変わった。久しぶりに保田の顔を見た気がした。ブサイクだな、と言うと、知ってる、でも頑張らなくちゃ、と言うので、辛くなった。5000円払って帰ってオナニーして寝た。

おわり
362 :-俺と娘。の夢物語 2nd- :2014/11/09(日) 22:57

「せんぱ〜い♪」

振り返ると、まーちゃんが猛烈な勢いで、こっちに突っ込んできた。

「うわぁ!!」

飛びついてきたまーちゃんをキャッチする。

「おはようございますぅ〜♪」
「お、おはよう、まーちゃん。危ないから走るのは止めようね?」

無邪気な笑顔に許してしまいそうになりながらも、先輩として叱るところは叱らないとね。

「えぇ〜、面白くないですか?」

まーちゃんは、不貞腐れるように、頬を膨らませて、眉毛をハの字にする。

「面白いけど、怪我しちゃ嫌でしょ?」
「…はぁ〜い」
「まーちゃん!!」

大きな声で慌てるようにまーちゃんを追いかけてきた、石田さん。

「おはようございます、先輩。まーちゃん、いきなり楽屋を出たから何事かと思ったじゃん」
「おはよう、石田さん」
「むー」

何故か、僕をにらみつけるまーちゃん。

「ど、どしたの?」
「先輩、あゆみんには怒らないんですか?」
「え?」

怒った顔のままのまーちゃん。少し、考えてから気付いた。

「あぁ〜、そういうことね。石田さん、廊下は走っちゃ危ないから、気をつけなきゃ
 ダメだよ?」
「え?あ、は、はい!! すいません!!」

自分と石田さんのやり取りを見て、にっこり微笑むまーちゃん。

「ふふふ〜、あゆみん怒られた〜」
「まーちゃんのせいでしょ!」
「違うもーん。まーのせいじゃないもーん」
「いやいや、まーちゃんも怒られてるから」

僕の突っ込みに、え?って顔をするまーちゃん。そして、次の瞬間。
363 :-俺と娘。の夢物語 2nd- :2014/11/09(日) 22:58

「あ、みにしげさんだ!!」

廊下の奥の方で、道重さんを見つけたまーちゃんは、怒られたことなんてなかったかのように、僕の横を駆け抜けた。

「あ!! こら、まーちゃん!!」
「きゃーーーー♪」

楽しそうに走って道重さんに向かっていくまーちゃん。

「はぁー。ホントに、すいません」

僕に、申し訳なさそうに謝ってくる石田さん。

「ううん、いいのいいの。石田さんも、大変だね」
「そうですね〜。ホント大変です」

そう言いながらも、石田さんの目は、優しくまーちゃんの後ろ姿を見つめていた。
そして、石田さんがまーちゃんの後を追っかける。

「石田さん、気をつけてね」

僕の掛けた声に振り向いた石田さんは、ニコッと笑顔になると、まーちゃんを追いかけていった。

道重さんに、勢いよく抱きついたまーちゃんは、僕に怒られた様に道重さんに怒られたことは言うまでもない。
364 :-俺と娘。の夢物語 2nd- :2014/11/09(日) 23:03
とある板で、書かせていただいていた者です。
復帰作ということで、どこに書いたらいいのかわからず、ここに書かせていただきました。

今後も、ここに書かせてもらえたらいいなと思います。
何か、要望がありましたら、リクエストよろしくお願いします。

一応、主人公は、9.5期ということで設定しておりますので、リクエストの参考にどうぞ。
365 :管理DD :2016/02/10(水) 21:15
test

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